台湾の政府が取り組む詐欺犯罪撲滅の決意と努力およびその成果
詐欺犯罪を撲滅することは、長きにわたり台湾の政府における重要な施政目標の一つである。インターネットの自由化およびグローバル化により、詐欺事件は集団化、組織化の流れが進み、電信、通信テクノロジーなどが結びついた新形態の電子詐欺犯罪も発生している。台湾では現在、詐欺犯罪撲滅の決意を実践するため、「犯罪捜査および予防の精確化」、「異なる政府機関・関連機構のリソースの統合」、「関連法制を整備するための法改正の積極推進」などについて取り組んでいる。
一、犯罪捜査および予防の精確化
詐欺犯罪の捜査にあたり、元犯罪者の前科等をデータベース化し、出入国時間の長さや場所、旅客名簿等の特徴をビッグデータを用いて分析し、台湾の駐外公館が現地の警察と協力し、犯罪集団が海外で詐欺行為をはたらく拠点の所在地をつきとめるのに役立てられるとの考えから、現在、台湾高等検察署が国際電信詐欺犯罪データベースを構築する計画を進めており、これにより効果的に犯罪の撲滅を図っていく。
二、異なる政府機関・関連機構のリソースの統合
台湾と駐在国の検察・警察との協力を積極的に進め、台湾側が取締った電信詐欺の経験を提供するため、「任務型警察連絡官」計画を推進し、海外で関連警務機関と協力を強化する。
外交部は国内外の情報を速やかに主管機関と相互通報できるよう「在外国民の国際電信詐欺事件に係る警戒、逮捕拘置、送還の通報」制度をつくり、関係機関および各駐外公館がそれに従って対処できるようにする。これらの政府省庁を超えた警戒通報メカニズムを通して、早めに協力を進めることにより、電信詐欺犯の世界各国における犯罪拠点の設置を未然に防ぐ。
国際的電信詐欺事件の捜査を進めるため、台湾高等検察署が2016年4月28日に「国際的電信詐欺回収プラットフォーム」を設置し、各地の検察、警察、調査局の捜査能力を統合し、公私機関が犯罪収益の調査と回収に協力できるようにし、同種の犯罪を徹底的に取締る。
三、関連法制を整備するための法改正の積極推進
台湾では2014年の刑法改正により、詐欺罪を厳罰化した。さらに、詐欺集団の不法所得を徹底的に剥奪するため、資金洗浄(マネーロンダリング)防止法の改正も行われ、2017年6月より施行された。また、詐欺の犯罪集団に対処するため、「組織犯罪防止条例」が2016年に改正された。
台湾は米国、フィリピン、南アフリカなどの国々と刑事司法相互協力協定を締結しているが、その他多くの国とは同様の刑事司法相互協力協定が未締結であることから、「国際刑事司法互助法」草案を作成した。これは刑事司法互助の規範を定め、台湾が執行する関連事項についての基本的な法的根拠とし、外国との刑事司法相互協力の要請や執行にも寄与するものとなる。
四、国際協力と交流の努力
法務部は2014年1月28日に正式に「アジア太平洋地域の犯罪による不法所得回収機構ネットワーク」(Asset Recovery Inter-Agency Network of Asia/Pacific, ARIN-AP)に加盟した。同ネットワークを活用してアジア太平洋各国の司法機関と情報を交換し、司法の互助機能を向上させ、犯罪による不法所得を回収するプラットフォームとする。また、法務部および同所属検察機関の関係者が積極的に関連国際会議および活動に参加することを通して、海外の関連機関との連携が強化され、犯罪収益を差し押さえる必要がある際に迅速対応ができ、これにより犯罪の誘因を徹底的に無くしていく。
五、改善された措置と成果
前述の改善措置が実施されたことにより、各地方裁判所の電信詐欺事件の判決は、量刑が1~2年に引き上げられている。2015年以降の70%以上の判決確定事件は、いずれも1年以上の懲役刑が下されている。このように、台湾の司法は、電信詐欺犯罪に対して厳罰化する趨勢となっていることがわかる。
《2017年10月19日》