中華民國105年国慶節祝賀レセプション挨拶
2016.10.6
ご臨席の皆様こんばんは。本日は大変お忙しい中、九州・山口各地から大勢の方々のご臨席を賜り、心から厚く御礼を申し上げます。
さて、4日後の10月10日、我が中華民國(台湾)は建国105年の国慶記念日を迎えます。20世紀の初頭、中華民國建国の父・孫文は清朝を倒して共和制の樹立を目指すため、日本を根拠地に革命運動を推進しました。孫文の革命に対する日本人の支援、中でも九州人の活動は際立っており、熊本県荒尾の宮崎滔天、福岡の玄洋社・頭山満、長崎の梅屋庄吉などの支えがなければ1911年の辛亥革命は成功しなかったといっても過言ではございません。今年は孫文生誕150年、辛亥革命から105年、そしてわが中華民國では5月20日に、新しい蔡英文政権が船出をいたしました。新政権は、日台関係を極めて重視しております。新政権の対外経済貿易戦略である「新南向政策」について、皆様には是非ご理解とご支援をいただきたくお願い申し上げ、台湾と日本とはこれまでの良好な関係の基礎の上に立ち、いっそうの前進と発展をすることができると確信しております。本日ここ九州福岡において、常日頃から我が国をご支援頂いている皆様とともに、中華民國の105回目の誕生日をお祝いできますことを、大変嬉しく光栄に存じております。
私は、2013年4月1日に総領事として福岡に着任し、あっという間に3年半が経ちました。この3年半で、鹿児島65回、熊本70回、宮崎50回、大分45回、佐賀35回、長崎30回、山口40回と、九州・山口の各地を訪問し、公用車の走行距離は7万キロを超えました。表敬訪問した市町村は、人口1万人以上のところでは50ヶ所以上にのぼり、どこを何回訪れても素晴らしい場所ばかりです。中でも特に、東京のような大都会にはない温かい人情と友情、これこそが醍醐味でございます。今から33年前の1983年、鹿児島県金峰町でのホームステイがきっかけで、私と九州との縁は始まりました。それ以来ずっと九州のファンであるわけですが、まさか福岡辦事處の處長として九州と深く関わることになるとは夢にも思いませんでした。改めて「縁は異なもの味なもの」とつくづく感じている次第です。
お陰さまで、この3年半、台湾と九州・山口地区との経済・貿易・観光・文化・芸術・スポーツ・青少年などの交流は、大幅な進展を見せています。お話したいことは数え切れませんが、特に本日は3つのことについてお話をしたいと思います。1点目は“台日の人的交流”、2点目は“青少年(次世代)交流の強化”、3点目は“「日本精神」という絆”についてです。
まず、両国の人的交流についてですが、ご承知の通り、大変活発でございます。昨年、訪日した台湾人は367万人、訪台した日本人は163万人、合計で530万人もの往来がありました。福岡県内のホテルには45万8千人の台湾人観光客が宿泊し、大幅な伸び率でありました。今年は熊本地震の影響で、九州への台湾観光客が一時減少したものの、現在では“風評被害”も落ち着き観光客も戻ってきております。九州への台湾人観光客は増加傾向にあるといえ、その要因として一昨年11月に台湾国内で刊行された九州専門の旅行雑誌「美好九州」により九州旅行がブームになったこと、また毎年台北で開催される「台北国際旅行博覧会(ITF)」を活用した積極的な宣伝活動などが挙げられます。成功例を紹介しますと、大分県の別府市は3年連続でITFに出展され、トップセールスにより、以前は年間6千人だった台湾人観光客が昨年は10倍の6万人にまで回復いたしました。皆様にはもっともっとITFを活用していただければ、まだまだ観光客は増えると思っております。
台湾人の日本旅行の人気はもとより、日本の皆様による台湾旅行も大変な人気でございます。昨年の年末年始、日本人の海外旅行先は台湾が1位、そして今年のゴールデンウイークでも台湾が1位でありました。このような観光交流が出来ておりますのも、お互いに好感を持ち、お互いに信頼し合っている証であると心から嬉しく思っております。私が着任した年、2013年の祝賀会では2013年の人的交流は350万人を初めて突破するだろうと申し上げました。今年2016年は、このままでいけば、実に過去最多の600万人もの往来が実現するでしょう。これも偏に本日ご臨席の皆様の我が国への格別のご支援の賜物と深く感謝を申し上げます。
次に、“青少年(次世代)交流の強化”についてです。台湾には、「日本語族」「日本語世代」と呼ばれる年配者が多くみられます。一方日本にも、台湾生れ台湾育ちの「湾生」といわれる方が大勢おられます。しかし、戦後71年が過ぎた今、「日本語族」「湾生」の高齢化がすすみ、日台関係の絆が薄れるのではないかと心配されています。次の世代に相互認識・相互理解を推進するために、私が3年半前に着任してから一番力を入れて進めてきた仕事は日本の高校生の台湾への修学旅行です。これまでに2回の修学旅行セミナーを開催し、九州山口地区における修学旅行生の数は、2014年に12校・1200名だったものが、2015年に19校・2200名、そして今年は28校・5000名になりました。実施した高校の先生方からは、現地の高校生との生きた交流を通して、大変良い教育旅行となっているという話も聞かれます。また台湾では、アニメやファッションなどを通じて日本にあこがれる若者「哈日族(ハーリー族)」が増えており、新しい親日世代の出現といわれています。
これまで、台日関係は、日本語世代に頼っている部分もありましたが、これからは次世代を担う若者が友好のバトンを握り、次につなげていかなければなりません。ぜひ台湾へ修学旅行にいってもらい、現地の若者との様々な体験や交流を通じてお互いを知ることで、未来の良好な関係の礎となる確かな友情を育んでいただきたいと思っております。
次に、“「日本精神」という絆の大切さ”についてです。私は機会あるごとに、「日本精神」についてお話をしておりますが、皆様は台湾映画「KANO」をご覧になられたでしょうか?昨年、日本の映画館でも上映され、各地で自主上映会も開催されました。DVDも出ておりますので、是非ご鑑賞いただきたいと思っております。申し上げたいのは、この映画に描かれている「日本精神」は今でも台湾に息づいていること、そしてこの「日本精神」こそが、両国を結ぶ目に見えない強い絆であるといえるのではないかということです。
私が尊敬する日本の評論家に日下公人先生という方がおられ、著書の中で「暗黙知」という言葉を使っておられます。私は、「暗黙知」とは「日本精神」のことだと思っておりますが、現代においては見えにくくなっていると感じております。しかしそれらの心のあり方は、父母・祖父母から子や孫へ、脈々と日本人の中に確かに受け継がれているものです。印象深い日下先生の本の一節をご紹介します。「学校で教わったことに代わって、子供の頃、父母や祖父母から聞いた話が耳に復活してくる。日本人の暗黙知が蘇ってくる」という部分です。皆様におかれては、日本の若い世代の心の奥底に眠っている「暗黙知」すなわち「日本精神」を呼び起こしていただき、確実に未来につなげて欲しいと思っています。日本精神を失わない限り、日本は世界のリーダーとして発展していくことが出来ると私は信じておりますし、中華民國と日本、切磋琢磨し、未来永劫、互いに発展を続けていくことが出来ると確信をしております。
結びに、台湾と九州山口の関係の益々の発展、および中華民國台湾と日本国の国運隆昌、ご臨席の皆様の益々のご健勝とご多幸を祈念いたしまして、私の挨拶に代えさせて頂きます。どうも有難うございました。