「疾病に国境なし」、タイとミャンマーの国境で働く台湾の医療チーム
衛生福利部(日本の厚生労働省に類似)は4日、「第3回国際医療典範奨(=国際医療功労賞)」の受賞者を発表した。今年同賞を受賞した奇美医療服務社(Chi Mei Medical Service、略称CMMS)が、近年の国際医療協力活動の取り組みについて語った。
奇美医療財団法人奇美医院職業医学科(=産業医学科)の医師で、奇美医療服務社の主任を兼務する黄建元氏によると、奇美医療服務社が生まれたのは2007年、奇美医院と外交部(日本の外務省に相当)が実施した国際医療ボランティア計画がきっかけだった。奇美医院内で医療チームが組織され、中米ニカラグアでボランティア診療を行うことになった。医療資源に乏しい環境に足を踏み入れたメンバーたちは大きな衝撃を受けた。この経験は、メンバーたちのその後の仕事に対する考え方を大きく変えた。
計画に参加したメンバーたちは、その情熱をもとに同年、奇美医療服務社を設立した。医師、看護師、臨床検査技師、ソーシャルワーカー、事務員らが参加した。最初のうちは、すべてポケットマネーで旅費をまかなった。
台湾でのボランティア診療、救助活動をはじめ、奇美医療服務社はこの10数年間で20カ国以上の国々を訪れて医療協力活動に取り組んできた。また、タイとミャンマーの国境近くにある小さな病院、ネパールのヒマラヤ山脈の山間部や、インド北部の難民キャンプなどでも活動を行ってきた。現在は奇美医院が医療設備、衛生資材、薬品などの医療資源を無償提供している。
黄建元氏が最も印象に残っているのは、2010年に訪れたタイ中西部のへき地にあるKwai River Christian Hospitalという病院を訪れたときのこと。ミャンマーとの国境付近にある小さな病院で、政局が不安定なことから武装した兵士たちがあちこちにいた。
この病院は宣教師が建てた病院だった。300キロメートル圏以内には、ほかに外科医のいる病院がなかった。外科医がいるとはいえ、実は麻酔科の医師が不在で、いわゆる手術室といっても、開放的な空間があるだけで、手術用の手袋は何度も洗って再利用している状況だった。麻酔器でさえ、あれこれ部品をつなぎ合わせたようなもので、せいぜい出産に対応できる程度の簡単な医療設備しかなく、緊急時には麻酔なしで手術するしか選択肢がなかった。
この地域の人々が安心して治療を受け、病気やケガの痛みを回避できるよう、奇美医療服務社は2010年以降、麻酔科の医師を現地に定期的に派遣するようにした。これにより、早産で生まれた双子の赤ちゃんとその母親など、重症患者の命を救うことに成功した。2013年以降は、年に2回医師団を派遣し、へき地の村落で巡回医療サービスを提供している。
黄建元氏によると、近年、奇美医療服務社の取り組みにようやく政府も目を向けるようになってきた。現在では衛生福利部や病院の助成を受けられるようになり、メンバーが自費で海外渡航する必要がなくなった。黄建元氏は、国際医療ボランティア活動を通して、台湾の高い医療レベルを海外の人々に知ってもらうことが、台湾にとって最良の国民外交になればと期待を寄せている。
台湾は国際社会や外交上、多くの課題に直面している。しかし、台湾の多くの医療従事者が「疾病に国境なし」という情熱をもって活動している。たとえ国交がない国であっても、彼らは喜んで支援の手を差し伸べ、異国のへき地へ入り込み、奉仕を行っているのである。
Taiwan Today:2018年6月5日
写真提供:黄建元氏提供、中央社
衛生福利部(日本の厚生労働省に類似)は4日、「第3回国際医療典範奨(=国際医療功労賞)」の受賞者を発表した。今年同賞を受賞した奇美医療服務社(Chi Mei Medical Service、略称CMMS)は、タイやミャンマーのへき地などで国際医療協力活動に取り組んでいる。