北米台湾人医師協会の医師団、無償医療のため自費でパラグアイへ
台湾出身で米国在住の医師によるチームが今月14日、無償での診療や治療のため南米のパラグアイに出発する。診療の対象は数千人に達する見通し。こうした活動は、外交部(日本の外務省に相当)が国際社会参与を目指す上でアピールしている「Taiwan Can Help」の人道主義精神に合致するもの。
中華民国駐ロサンゼルス弁事処の朱文祥処長は6日、同医師団への団旗授与記者会見に出席、報道陣に対して「これらの医師たちはシュヴァイツァーの精神を備えている。台湾の持つ高度な医療技術だけでなく、人道的な思いやりの精神も世界に示してくれるだろう」と期待した。
今回パラグアイに向かうのは北米台湾人医師協会(North American Taiwanese Medical Association , NATMA)の医師団で、各診療科の医師の他、歯科医、鍼灸・マッサージ師、薬剤師、アシスタントなどで総勢47名。様々な医療器材24箱、医薬品10箱を持ち込む。渡航費などはいずれも参加者が自ら負担する。無償医療活動は5日間の予定で、1日に約800人から1,000人を診察する。パラグアイの大統領夫人オフィスと保健省が同医師団に対応し、今回の活動に協力することになっている。
NATMA基金会の許正雄董事長(理事長)は、これまで十数回にわたって無償医療活動に参加してきた中で最も印象的な出来事として、グアテマラで全身にこぶが出来、人前に出られなかった患者が外科医による手術を受けて嬉しそうに笑顔を見せたこと、そして敗血症で高い熱を出し、運ばれてきた時にはすでに意識を失っていた子どもが救急処置で一命を取り留めたことを挙げた。
また、NATMAの邱俊杰総会長はニカラグアの学校で活動した時のことが最も印象に残っている。その時修道女が連れてきた子どもは括約筋の先天的な欠陥で、しゃがむと腸が床まで垂れ下がったといい、邱総会長は「とてもかわいそうだった」と振り返った。無償医療では設備に限りがあるため、医師たちはその場でお金を出し合い、この子どもが大規模な病院で治療を受けられるよう援助したのだという。邱俊杰総会長は、「医療に携わるには、生まれつきの『人を助けたい』という心が必要だ。それこそが医師団の原動力なのだ」と話した。
国連気候変動枠組条約締約国会議(COP24)は3日からポーランドで開かれている。中華民国外交部は現地の電車広告で、「気候変動に対抗する取り組みに台湾は貢献する(Combating Climate Change, Taiwan Can Help)」と訴え、国際社会に積極的に参与していこうとする態度をアピールしている。「Taiwan Can Help」というフレーズに呼応し、NATMAが長年実施してきた無償医師団は今回、中華民国(台湾)にとって南米で唯一国交を結んでいる国のパラグアイを活動場所に選んだ。人道精神の発揚の他、外交的にも極めて有意義な取り組みとなる。
NATMAの医師団は2005年にスタート。これまでにグレナダ、コスタリカ、パナマ、ハイチ、ニカラグア、ドミニカ共和国、ベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス、ミャンマー、カンボジアなどで無償医療活動を行った。
Taiwan Today:2018年12月10日
写真提供:中央社
台湾出身で米国在住の医師によるチームが今月14日、無償での診療や治療のため南米のパラグアイに出発する。台湾による思いやりの発揮と共に、外交的な意義も期待されている。写真は団旗の授与記者会見の模様。