中華民国(台湾)は国連の専門機関への有意義な参加を希望
第63回国連総会が2008年9月16日より開催されるにあたり、わが国の友好国17カ国は米国東部時間8月14日午後、わが国のために「中華民国(台湾)2,300万人の国連専門機関の活動に有意義に参加する基本的権利を審査する必要がある」と題する案を、第63回国連総会の臨時議事日程に「補充項目」として組み入れることを求め国連総会に提出した。今年の友好国による提案の主軸は、国連専門機関の活動に台湾2,300万人の有意義な参加を受け入れるよう建議し、国連総会での通過を求めるものである。台湾の外交部も同15日、台湾が国連の各専門機関へ有意義な参加を希望していることについて以下のプレスリリースを発表した。
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一.はじめに
グローバル化の時代において、経済、文化、教育、衛生、交通、金融、情報通信、環境保護、永続的発展、人権、反薬物、反テロといった人類の福祉と密接に関連する各問題は、各国が力を合わせ協力することにより効果的な解決が得られるのである。国連の専門機関は各国が世界的な問題を共同で処理する最も重要なプラットフォームであり、「普遍化」の原則に基づき、国際社会のすべてのメンバー国が参加する機会を持っていることが肝要である。
中華民国(台湾)は1971年以降、国連およびその専門機関が主導する各会議、システム、規約に参加することができず、国連機関の運用システムの重大な漏れ穴となっている。
我々は国際社会が、台湾の国連の専門機関への有意義な参加が国際社会に対してプラスの影響を及ぼすことを十分に理解し、支持してくれることを希望している。さらには台湾両岸は双方の関係改善に尽力しており、また一方で我々は、中国大陸側が2,300万人の台湾住民の切なる願いを理解し、台湾が国連の専門機関への有意義な参加を勝ち取るにあたり、善意および弾力性を示し、共に平和と繁栄を創出していくことも希望している。
二.台湾が国連の専門機関へ参加すべき理由
(一)国連の専門機関への参加は台湾住民2,300万人の基本的権利である
『国連憲章』によると、国連の使命は「基本的人権、人間の尊厳および価値と男女および大小国家の同権に関する信念をあらためて確認する」としており、また『世界人権宣言』第2条では、「いかなる人の権利と自由はその属する国または地域の政治上、管轄上または国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない」と謳っている。これに基づき、2,300万人の台湾住民は、世界のその他の国の人々と共に国連の専門機関へ参加する基本的権利を分かち合うべきなのである。
(二)台湾が国連の専門組織に参加する必要がある
国連の専門機関が処理する世界的に関心を寄せる問題はいずれも人類の福祉に関するものであり、台湾が関連する会議、システム、専門家による活動に参加できないことは、その国民の福祉に対しきわめて深刻な影響を及ぼすものであり、世界人類の全体的な利益をも妨げるものである。
たとえば、台湾の「世界保健機関(WHO)」への加盟獲得の努力は長年にわたっているが、WHOは現在まで台湾と防疫関連についての直接連絡および相互連動を確立していない。台湾はWHOが行う各種の技術的な会議および活動においても深刻な制限を受けており、台湾は即時的に最新の医療衛生情報を得ることができず、新型肺炎(SARS)といった深刻な疫病の爆発的感染時にも協力を得られなかった。そのほか、台湾はすでに2006年5月において、2007年6月15日より正式に発効となる「国際保健規則(IHR)」も自発的に前倒しで実施し、何度も自主的にWHOに対し疫病状況の情報を報告してきたが、WHOからはいずれも回答はなく、2,300万人の台湾住民および台湾に居住あるいは通過する外国人の公衆衛生上の権利の保護に実際面でマイナスとなっている。このように台湾は防疫の漏れ穴となっており、国際社会にも有害となってしまう。
また、「台北飛行情報区(Taipei FIR)」は東南アジアの中枢に位置し、合計12本もの国際航空路線および4本の国内航空路線があり、管制空域面積は176,000平方海里、年平均4,000万人の旅行客が台湾に出入国し、さらには約170万トンの貨物を処理し、世界の航空安全に不可欠の一環となっている。しかし、台湾は「国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization,ICAO)」の会議およびその活動に参加することができず、関連する飛行情報を即時的に得ることができず、国際規範に合わせて制定した民航法規および各措置は、地域の航空路線の完全な計画にマイナスであるのみならず、世界的な航空の保安に対してもマイナスの影響を及ぼすものである。
また、台湾は世界第10位の海運国であるが、「国際海事機関(International Maritime Organization,IMO)」に加盟できないことから、その関連する会議に出席し、最新の情報を得ることができないのみならず、海運を管轄する台湾の行政機関が発給した海員証もしばしば真偽を疑われ、国際的な海上輸送は次第に他国に移行され、台湾の海運業の発展にとりきわめてマイナスとなっている。
(三)台湾は国際協力への参加および国際社会に貢献する意思と能力がある
台湾は世界第18位の経済国であり、対外投資も世界第20位に列せられており、経済的な実力は十分にある。それを海外援助に善用し、台湾の経済成長と民主主義発展の実現に成功した経験は、多くの発展途上国の参考に提供できるものであり、台湾は援助と協力により世界のその他の地域に貢献することも願っているのである。以下では、それぞれ「海外技術協力と援助」「国際医療と災害救助」「緊急の疾病に対する予防と治療」といった3方面について説明を行う。
1.海外への技術協力と援助
台湾は『国連ミレニアム開発目標』が採択した貧困と飢餓をなくす優先目標の実施に引き続き尽力している。台湾は国際社会とわが国の発展経験を喜んで分かち合うことのほか、投資、融資、技術協力などの方法を通して関係国への協力および友好国へのインフラ工事、社会発展、農業発展、企業発展などの計画を行うものである。台湾の発展援助活動は「国際合作発展基金会(International Cooperation and Development Fund T aiwan,ICDF)」が主体で行っており、現在合計29カ国のパートナー国に34の長期技術援助団を派遣し駐在している。
2.国際医療と災害救助
台湾は多くの国際組織からはずされており、国際協力に十分参加できないでいるが、力の限りを尽くし各種の可能なルートを駆使し、世界の多くの国々に全力で協力している。もし、国連の専門機関が台湾の国際関連への参加努力を受け入れた場合、その効果はさらに拡大するはずである。
台湾は毎年約100,000トンの米を外国への人道援助用に備蓄しているほか、台湾およびその民間団体も積極的に国際的な災害救助および被災後の再建活動に参加しており、この2年間の主な事例は以下の通りである。
(1)2006年12月アフリカ・ケニアの大水害:台湾は緊急医療隊を現地に派遣し救援活動を行ったほか、24,000張の蚊帳を贈った。
(2)2007年3月6日、インドネシア・スマトラ島大地震:台湾はただちに医療隊を組織し被災地区に駆けつけた。
(3)2007年4月2日、ソロモン諸島沖での大地震による津波発生:台湾は医療隊を組織し、200kgの医薬品を携えただちに被災地区に赴き救援活動を行うと共に、近隣の海域で操業中の台湾の漁船を集め、その船で医療隊および物資をソロモン諸島の近くの島まで運び救援活動を行った。
(4)2008年5月4日、ミャンマー大型サイクロン:「中華民国捜索救助総隊」はただちに隊員を現地に派遣し救助活動の協力を行った。また、台湾政府も20万米ドルを贈り、災害後の再建復旧活動に協力した。
(5)2008年5月12日、中国大陸の四川大地震:台湾政府は翌日ただちに「緊急救援小委員会」を結成し、特殊捜索救助隊を組織し被災地区での救援救助活動を行うと共に食料物資を提供した。政府、企業、国民による義援金総額は約2億2,000万米ドルに達した。
(6)2008年6月14日、日本の岩手・宮城内陸地震:台湾政府はただちに被災状況が深刻であった宮城および岩手県に各300万円の震災義援金を贈った。
3.緊急疾病の予防と治療
全世界で鳥インフルエンザ発生の脅威に備えている中、台湾は2005年7月に60万粒の「タミフル」のカプセルをベトナムに贈呈した。台湾はまた、医療専門家をブルキナファソ、インドネシア、チャドにそれぞれ派遣し、鳥インフルエンザの予防と治療に協力した。
2006年12月19日、アフリカ・ケニアで「リフトバレー熱(Rift Valley Fever,RVF)」の疫病が猛威を振った。台湾はただちに医療、公衆衛生の専門家による派遣団を組織し、現地で防疫活動に協力し、2007年2月5日に任務は順調に達成された。
(四)台湾の国際社会への参加が両岸協議の進展に役立つ
中華民国(台湾)の「海峡交流基金会」と中華人民共和国の「海峡両岸関係協会」は2008年6月12日~同14日、北京において協議を再開し、週末の旅客チャーター便運行および大陸の観光客による台湾訪問について順調に協議を達成させ、両岸の良好な相互連動のためのさきがけとなった。また、中華人民共和国は最近、台湾の国際組織への参加問題に善意を示しており、もし中国大陸側が善意を実行に移し、台湾の国連の専門機関への有意義な参加を支持ならびに協力してくれたならば、両岸の友好協議の流れをより一層形作るものとなり、各議題の協力のきっかけを切り開くものとなる。
両岸の往来および相互連動が日増しに緊密化していることで、双方はさらに航路の設定および疫病情報の交流、予防治療などの重要な国民生活に関連する議題について協力していく必要があり、それにより両岸住民の利益および福祉を確実に保証することにプラスとなるのである。もし、台湾が国際組織への多方面で参加が可能になれば、関連する情報が即時に取得可能となり、両岸は国際規範に関する既存の基礎の下、共に関心を寄せる議題についてコンセンサスを達成できることになるのである。
(五)台湾の国連の専門機関への有意義な参加はアジア太平洋地域の平和と協力にプラスとなる
グローバル化の趨勢はすでに国家間の相互信頼を深め、地域内のメンバー国は各機能的および専門的な議題を統合的に行う傾向がますます顕著となっている。国連の専門機関が処理する議題は、機能的および専門的に行われ、台湾海峡両岸における争議の棚上げにプラスとなり、共通の関心事の議題について対話と協力を行い、それにより誤解を減らし、衝突を事前に避けることになる。そのため、台湾が国連の専門機関への有意義な参加はアジア太平洋地域の衝突を軽減させるのにプラスとなり、さらには地域の安定と繁栄をより促進していくものとなる。
三、結論、漏れ穴を補い、平和共栄を図る
今年5月以来、台湾海峡の両岸関係は和解のチャンスが訪れ、双方のトップは争議を棚上げし、共にウィンウィンの関係を創出することに尽力して行きたいと正式に表明し、この発展は国際社会において歓迎と期待で迎えられた。
国連のシステムは現在、いかにして台湾がこの最も重要な世界的組織に参加するかを追求することが肝要であり、台湾の国連の専門機関への有意義な参加は「普遍化」の原則によってのみ実現でき、そうしてはじめて地域の平和と繁栄も確保できるのである。
【外交部 2008年8月15日】