台湾が直面する地球温暖化の脅威と異常気象の発生率の増加
台湾の気候の変化は地球の気候変動の一部であり、その変化の速さや上昇幅は、世界のその他の地域と類似している。温度から見た場合、台湾全島の平均気温は20世紀初めより上昇傾向にあり、1970年代以降の上昇幅はより顕著となり、地球の平均気温の変化と同様の傾向にある。
100年以上前からの観測記録が完全に残る台北、台中、台南、恒春、台東、花蓮の6地点の気象観測点におけるデータから分析すると、台湾の都市部の年平均気温は1911年~2009年の間に1.4℃上昇しており、その上昇率は、10年間で0.14℃であった。ここ30年(1980年~2009年)の気温の上昇スピードは顕著に加速しており、10年間における上昇幅は0.29℃であった。これは100年間の平均値のほぼ2倍にあたり、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書の結論と一致している。
世界の降水量については、降水量の大小はさまざまな要因と地域的差異の影響によるが、IPCC第4次評価報告書によると、変化のスピードと幅についての根拠となるデータが明確に示されてはいないが、台湾の降雨日数が減少傾向であることに注目すべきと指摘された。台湾の年間平均降雨日数は1911年~2009年の間に10年あたりの平均で4日少なくなっており、1980年の後は10年あたりの平均で6日減少している。四季の中ではいずれも降雨日の減少傾向が見られたが、そのなかでも特に夏季の落差が最も大きかった。
海面の高さの変化については、IPCC第4次評価報告書によると、1961年~2003年の間に、地球の海面の高さは毎年平均で1.7mm上昇している。しかし、1993年~2003年においては毎年平均3.1±0.7mm上昇しており、上昇スピードが加速していることがわかる。台湾は周辺海域の験潮点のデータによると、1993年~2003年の台湾付近の毎年平均の海面上昇スピードは5.7mmで、過去50年間の2倍であった。この数値は地球の平均をはるかに上回っている。
台湾は太平洋の西端の東アジア島嶼群の中間点の近くに位置し、気候的には亜熱帯と熱帯の大気の影響を同時に受けることから、台風、豪雨、寒波、干ばつ等の激しい気象の襲来を特に受けやすい。台湾の特殊な地理的位置と、100年以上続く気象観測点に蓄積されたデータは、地球の気候変動と海洋の生態変化を観測する重要な拠点となっている。
台湾は高密度の地面気象観測網や、ドップラー・レーダー気象観測網、気象衛星データ受信システムなどが揃っているほか、30年近くの数値予報の経験に加え、ここ2年間で使用を開始した数値気候予測モデルによる短期気候予測を行っている。さらにアジア太平洋経済協力(APEC)の気候センター(APCC)の多モデル予測プロジェクトへの加入や、APEC台風・社会研究センター(ACTS)の設立などを通してアジア太平洋地区の台風予報・警戒システムを強化しているなど、東アジア地区の異常気象の予報およびアジア地区の3~6カ月の短期気候予測を行う能力を持つ、アジア太平洋地区における数少ない国の一つである。
これは台湾が気候のデータ収集面で重要な役割を発揮しているのみならず、気候シミュレーションおよび予測の面で優れた現代化の基礎を持っていることを示すものである。これらの予測データは、国が気候変動への適応を進める際の、政府の災害予防、資源分配計画等の政策決定や執行の際の極めて重要な参考データとなるものである。台湾がもし国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の関連組織に参加できるなら、より効果的な関連データを国際社会に提供でき、とりわけ東南アジア地区の国々の関連資料の理解および運用に寄与できるはずである。
《2011年10月19日》