呉伯雄・国民党主席が東京で日本メディア記者と会見
来日中の呉伯雄・中国国民党主席は12月9日午前、東京都内のホテルで日本メディアを対象に記者会見を開き、台湾与党の対日政策を説明した。
このなかで、呉主席は台湾の世界保健機関(WHO)参加に関して、「台湾の人々は確かに適当な国際空間を求めており、台湾のWHO年次総会のオブザーバー参加は、代表権の問題ではなく、人道問題だ」と強調し、日本に対して引き続き支持を求めた。
呉主席は、WHOオブザーバー参加について欧米各国がすでに支持を表明し、中国大陸との関係改善も進んでいることから、「来年は進展が見られる可能性が高い」との見方を示した。
中国大陸の胡錦濤・総書記に対する印象について、呉主席は「両岸関係について、ほかとは異なる考えを持っており、約束した事は実現する」と述べ、10年間中断していた海峡交流基金会(台湾)と海峡両岸関係協会(中国大陸)の対話が復活し、4項目の協議内容に合意できたことは台湾の経済にとって重要なことであるとの認識を語った。
また、呉主席は年に一度開催される中国国民党と中国共産党による「国共フォーラム」(両岸経済貿易文化フォーラム)が非公式の意見交換の場になっているとして、今月末に開催される「国共フォーラム」に国民党主席として出席する意向を明らかにした。
今後、総統が与党党首を兼任する可能性について、呉主席は「台湾は内閣制ではなく、党員全体の投票で選出されている」と指摘する一方で、次の任期の国民党主席を総統が兼任することについては「排除しない」との立場を表明した。
呉主席は、両岸の現状は台湾独立を奨励せず、統一の条件も揃わないことから、両岸関係を改善すると同時に米国から自衛の武器を購入するなど、「われわれは非常に慎重に両岸問題を処理している」と強調した。また、呉主席は「(両岸の緊張緩和によって)日本もホッと一息ついているのではないか」と指摘し、両岸の緊張緩和が日本や米国の利益にもなるとの認識を示した。そのうえで、呉主席は「台湾はトラブルメーカーなどではなくピースメーカーである」と強調した。
台日関係について、呉主席は「私の父は九州帝国大学の医学博士であり、私の兄は東京に住んでいる」と話し、台日間の密接な人的往来があることから、「台湾と日本は特殊なパートナー関係であり、大事にしていかなければならない」と強調した。また、記者会見に同席した詹啓賢・国民党副秘書長(元行政院衛生署長)から、呉主席が12月8日に北里大学を訪問し、これまでの台日医療協力への貢献に感謝の意を示し、引き続き協力を要請したことが説明された。
12月8日に中国大陸の海洋調査船が釣魚台(日本名:尖閣諸島)の海域に侵入したことに関して、呉主席は「釣魚台は台湾宜蘭県に属する」との政府の基本的立場を改めて表明したうえで、「主権問題は棚上げして、共同開発を希望している。これは台湾と日本の問題であり、複雑化することを望んでいない」と強調した。
呉主席は、遊漁船「聯合号」が日本海上保安庁の巡視船に衝突された事件に関して日本側が合理的な賠償を認めたことを評価し、「われわれは(釣魚台問題に対して)平和的、理性的に処理し、武力衝突はさせない」と強調した。さらに、両岸関係についても、「天災や地震はコントロールが困難だが、両岸は戦争が起きないよう共に努力することができる」と語った。
このほか、台湾で今年好評を博した映画「海角7号」について、呉主席は「台湾の文化、歴史をよく理解できる映画だ」との感想を述べ、同映画が中国大陸でも上映されるよう期待を示した。
《2008年12月9日》