馬英九総統が「東シナ海平和フォーラム2013」で東シナ海平和イニシアチブの意義を語る
馬英九総統は8月5日、「東シナ海平和フォーラム2013」の開会式に出席し、挨拶を述べた。以下は、その要旨である。
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2012年9月に日本が釣魚台列島(日本名:尖閣諸島)の“国有化”を宣言したことは、同列島の主権争議を蒸し返し、東シナ海の緊張を高めた。そこで私は昨年8月5日に「東シナ海平和イニシアチブ」を提起した。今日は、ちょうどその一周年にあたる。
「東シナ海平和イニシアチブ」とは、「国家主権を分割することはできないが、天然資源は共有できる」を基本理念とし、各方面が主権争議を棚上げにするコンセンサスの下、平和と協力の精神で共同開発の可能性を模索し、一歩ずつ資源共有の目標を達成していくものである。
過去、ヨーロッパの北海をめぐっても、各国間で主権争議があったが、平和的な協議を通じて、国際法廷に基づいて境界等の原則を確定し、共同開発と資源共有を実践し、「ブレント原油」(Brent crude)という国際的に知られるブランドとなった。このような成功モデルは、関連各国を平和共存、資源共有へ向かわせたほか、東シナ海問題の処理についても大いに参考になるものである。また、近年、欧州連合(EU)が推進している「統合的海洋政策」(Integrated Maritime Policy)は、海洋環境と資源等の全面的な管理と活用の措置による環境、経済、社会の持続可能な発展を追求したものであり、これも手本となるものである。
「東シナ海平和イニシアチブ」は『国連海洋法条約』にある「暫定的な取決め」(Provisional measures)の原則に基づくものであり、提起して以来、各国および日本からも重視されたことは、わが国が争議を平和的に処理し、資源を共同開発する主張が、国際社会からの支持を得たことを証明するものである。
わが国は昨年11月より、日本と漁業交渉を展開し、そして今年4月10日に双方が『台日漁業協議』に調印し、40年にわたる争議が解決した。これによって、双方は台湾本島の2倍もの大きさの水域を共同使用できるようになり、さらに相手方の法律による拘束を受けず、わが国の漁民は百年来の伝統的漁場での操業を制限されることがなくなった。この取決めには、取決めの各規定が、双方の主権および水域の主張を損なうものではないことを確認する「ディスクレーマー条項」が盛り込まれている。政府が「主権を犠牲にして漁業権と交換」することはない。この取決めは「東シナ海平和イニシアチブ」の精神に合致するのみならず、この理念を初めて具体的に実践したことで、東シナ海の漁業秩序の構築に寄与するものとなった。
わが方が主張する「主権争議の棚上げ」は、「主権の棚上げ」ではない。各方面は主権を主張してもよいが、最も重要なことは互いが一時的に争議を棚上げし、資源開発の協力に専念するというものである。また、台日間で新たに設置された「台日漁業委員会」では、引き続き日本側と主権およびその他水域の漁業操業等の問題について話し合いを続ける。
「東シナ海平和イニシアチブ」は、まず台湾と日本、台湾と中国大陸、日本と中国大陸の「3組の2者間対話」からそれぞれ始め、そしてコンセンサスが得られた後、「1組の3者協議」へと向かうことを提唱している。先日、調印された「台日漁業協議」は、その具体的成果といえる。
わが国とフィリピンは、今年6月に漁業会談に向けた第1回予備会議を開き、双方は紛争の処理に武力を絶対に用いず、トラブルが発生した際には直ちに相手国に通知することに合意した。これによって紛争拡大のリスクが大幅に下がり、今後台湾とフィリピンの水域で漁民が撃ち殺されることが二度と発生しないと信じている。
「東シナ海平和イニシアチブ」には、「東シナ海」という地名が入っているが、その他の地域に適用できないわけではない。実際に、中華民国政府は南シナ海の主権も主張しており、その情勢は東シナ海よりも複雑である。そこで、わが政府は南シナ海にも「東シナ海平和イニシアチブ」と同様のアピールを適用することを排除するものではない。中華民国は、両岸から東シナ海、南シナ海へと、着実にこれらの海域を「平和と協力」の海に変えていき、これからも新しい時代の「責任あるステークホルダー」および「ピースメーカー」の役割を果たしていきたい。
【総統府 2013年8月5日】
写真提供:中央社