中華民国は太平島を領有しており、「国連海洋法条約」により付与された排他的経済水域および大陸棚の権利を有する
近年、南シナ海地区の主権争議が続き、2013年1月にフィリピンは「国連海洋法条約」附属書7の規定に基づき、中国大陸に向けて提訴した南シナ海仲裁案に関して、2015年11月24日から30日の第2段階の弁論の中で、事実を捻じ曲げ、法律を曲解し、太平島が「岩礁」であり「島嶼」ではなく、12カイリを超える海洋の権利を享受できないと主張した。これに対して、行政院および外交部は何度も声明を発表し、歴史的、地理的、国際法などのいずれの面から見ても、面積0.51平方キロメートルの太平島は、南沙諸島最大の自然形成された島嶼であり、人類が居住でき、経済生活をも維持する能力を有しているのみならず、「国連海洋法条約」第121条の島嶼の要件に合致している。したがって、中華民国は太平島に「国連海洋法条約」で認められている領海、隣接区、排他的経済水域と大陸棚の完全な権利を有している。
2015年12月12日、陳威仁・内政部長(内相)が関連省庁の関係者を伴い、太平島に上陸し、埠頭および灯台の竣工式を行った。さらにその場で、井戸水の取水と試飲を行い、水質が非常に良好であることを証明した。この日の昼食は、島に原生または駐在員が栽培した野菜と飼育している家禽を用いた。これらのことから太平島は、人類が居住し続け、経済生活を維持できる自然条件を備えていることを十分に証明できる。
国内外の専門家や研究者が太平島が島嶼である事実を調査している
より科学的な方法論で太平島が確かに島嶼である事実を証明するため、行政院農業委員会は2016年1月22日~23日に水質、土壌、植生、法政などの専門家による調査団を派遣し、島の自然および農業生産環境の実地調査を行ったほか、1月23日に林永楽・外交部長、夏立言・行政院大陸委員会主任委員、魏国彦・行政院環境保護署長、並びに陳純一教授、宋燕輝研究員、王冠雄教授、陳荔彤教授、林正義研究員ら国内外の法政学者、フィリピン紙「マニラ・ブレティン」コラムニストのホセ・ザイデ氏、米国「戦略国際問題研究所(CSIS)」の「アジア海事透明性イニシアチブ(AMTI)」ディレクターであるグレッグ・ポリング氏らによる視察団が太平島に上陸し、井戸、自然植生、農場、観音堂、住民の遺跡などを調査し、太平島の太陽光発電施設、灯台、埠頭、通信設備、南沙医院などの施設を参観した。
島の水源は飲用可能であり、澎湖本島より地下水の水質が良好である
今回の調査団の上陸調査における水文水質調査によると、現在太平島で汲み上げることができる井戸は4カ所あり、サンプル分析検査の結果、そのうち一つの井戸水は水温が約28℃、導電度が838μmho/cmであり、溶解性固体が418mg/Lであった。以上のデータから島の水源は淡水であり、人間の飲用に適しており、しかも澎湖本島と比較して地下水の質がさらに良好であった。
土壌は自然に化育され、原生植物と農作物の生長に生かされている
土壌資源調査については、草生地区、椰子の樹生長区、野菜栽培区、海岸林区、低木区など島の5カ所の異なる用途の土地についてそれぞれ土壌の断面を抜き取って調査を行い、土壌の基本特性および形態の特徴を理解し、土壌サンプリングおよび実験室での必要な分析を行った。その結果、この土壌は自然生成され、原生植物および農作物の生産に活かされていることがわかった。島の土壌の組成と断面の特性から主に2種類の土壌があった。一つは、主に太平島の外縁部に存在し、表土は濃い灰色で、枯れ枝や落ち葉を豊富に含み、下層に鳥糞層はなく、その表土20cmは主に粗い砂に植物の枯れ葉と落ち葉が混じり、土壌が構成されており、豊富に植物の根を含み、石灰質の特性もあり、20~60cmの深さではサンゴ礁の風化した物質となっていた。もう一つの土壌は、主に太平島の内縁部にあり、表土は黒色で、豊富に枯れ枝と落ち葉を含み、20cm以下には鳥糞層の特性があった。表土から40cm以内の主な成分は、砂土に枯れ枝と落ち葉が混じり、茶色の塊になった鳥の糞が夾雑し、完全な土壌構造を形成している。有機質の含有量が比較的高く、植物の根を豊富に含み、石灰質の性質も持ち合わせている。上述の2種類の自然生成された土壌は天然林および農作物の生長に活かされている。
天然資源が豊富で、その種類は106種に上る
植生調査および土地利用の部分において、今回フィールドワークの方式で、太平島の異なる植生類型の植物資源について、人間が生活するために産出され、使用できる関連の産物および分布範囲を記録した。調査結果によると、島に原生する天然植生は生い茂り、海岸の原始林の繁茂密度も高く、しかも林の下部にはシダ植物のホウビカンジュが生長しており、森林環境が安定し効果的に水源が涵養され、森林の蒸散を抑え土壌の腐植質を補填していることがわかる。野生のヤシ、パパイヤ、バナナは島全体の各所に分布し、一年中収穫でき、人類が居住し、経済生活を維持できる要件を構成している。文献および今回の調査結果を経て、島の植物は、主に熱帯の海岸漂流林で、合わせて46科106種の陸域植物が記録された。そのうち高木が20種、低木が16種、つる性植物が17種、草本植物が53種であった。島には胸高直径が100cm以上ある樹木が、モモタマナ、ゴバンノアシ、ハスノハギリ、テリハボクなど、よく見られる熱帯高木4種が147株で、樹齢は100~150年のものが多い。島最大のハスノハギリは4,5階の高さに達し、樹囲は907cm。その他の野生の作物は、ヤシ、パパイヤ、バナナの木があり、そのうちヤシは約500本、年間生産量は約1,500個で、ヤシの風味は絶品で、低木層に生長しているパパイヤ、バナナはそれぞれ約50本あり、年間収穫量は200~300kgで、果実は香り高く濃厚である。長きにわたり、駐在軍人らがこれら島の各種資源を利用し、各種熱帯の野菜・果物を栽培してきた。トウモロコシやサツマイモなどの主食作物や、オクラ、カボチャ、ヘチマ、ニガウリ、キャベツなど10数種類の青果が栽培され、生長状況は良好である。また、島では警備犬6匹、ヤギ12匹、ニワトリ180羽が飼育され、犬が夜間の警備に当たっているほか、ニワトリとヤギは食用され、鶏卵で栄養を補充することもでき、生活に欠かせないものとなっている。
観音堂は島に駐在する軍人の精神の拠り所であり、墓碑は先人の活動を証明する遺跡である
人文史跡について、今回の訪問団は、太平島の観音堂も訪れた。ここは島の駐在員らの精神的な拠り所となっている。1959年に台湾から分霊され、最初に建立したときには、わずかに現地の建材で建てた大きな神棚に似せた外観で、廟の柱は缶詰をつなぎ合わせて作られたものに過ぎなかったが、その後島の駐在員により何度も改修され、今日の観音堂の姿となった。観音堂の近くでは清朝時代の古い墓が発見されたほか、日本が「新南群島」(南沙諸島の一部島嶼)を台湾総督府の管轄に組み入れ、高雄州高雄市に編入された時期に太平島に上陸した人の記念碑や、中華民国が1946年12月12日に南沙の太平島を接収した際に建立した「太平艦到此」(太平艦がここに到達)の記念碑がある。これら上記の事実は、太平島で古くから人類が活動していたことを示すものであり、同島が人類の居住を十分に維持できる有力な根拠である。
島に上陸した学者は太平島が「島嶼」であることに一致して同意した
このほか、同訪問団に参加した国内の研究者らは、今回南沙・太平島を訪問し、我が国政府がこれまで平和的に南シナ海を経営してきた成果を実際に見て、太平島が「国連海洋法条約」第121条の「島嶼」の要件に合致しており、人類が居住のための経済生活を十分維持できることを深く理解した。上述の科学的データが示すように、太平島に現存する井戸の水質は極めて良好な淡水であり、島の駐在員の需要を満たしている。同島の原生土壌の土質も良好で、原生植物の生長ならびに食用作物の栽培に十分用いることができる。また、十分な青草を産出し、食用のヤギなどを飼育することもできる。太平島にある観音堂は島の駐在員の信仰の需要を十分に満たし、現存する住民の遺跡は歴代住民が同島で活動していた痕跡を示すものである。上述の数々の事実から、我が国の研究者らは一致して太平島は絶対に「島嶼(island)」であると同意するものであり、人類が居住し続けるための経済生活の要件を十分に維持できるのであり、フィリピン側が主張する「岩礁(rock)」などでは決してない。
我が国の研究者は、フィリピンが「国連海洋法条約」第121条第3項の解釈は、一方的な観点でしかなく、国際法学会の普遍的な賛同は得られないばかりか、いかなる国際判例の支持も得ておらず、信じるに足りないものであると指摘している。仮にフィリピン側の一方的な解釈によると、米国が排他的経済水域(EEZ)を主張しているベイカー島(淡水を産出しない無人島)やキングマン・リーフ(満潮時の水面からの露出面積がわずか0.012平方メートル)、日本もEEZを主張している沖ノ鳥島(面積約8平方メートル、極めて小さく、農作物もなく、無人島である)、そして淡水を産出せず、集雨に依存する多くの島国のいずれもEEZを主張してはならないが、その影響は計り知れず大変なことである。したがって、国際社会の多くの国の権利に影響を及ぼし、不必要な紛争や衝突を引き起こさないためにも、仲裁裁判所はこの議題については慎重に当たり、詳しい調査を経ない状況でフィリピン側の一方的な言い分を妄信してはならない。
我が政府は専門家に向けて我が国が平和的な方式で自身の法的権利を守る努力を説明している
我が国政府は招待した訪問団参加者らに、太平島の淡水および現地の食材で作った料理を振る舞い、島に平和的に建設された施設や文化史跡を参観し、中華民国政府が平和的な方式でその法的権益を守っており、そして我が国政府が歴史的に平和的な南シナ海政策を採ってきたことを説明した。これにより、我が国政府が2015年5月26日に「南シナ海平和イニシアチブ」を提起したことを国際社会が評価し、中華民国の南海における存在および権益に関心を持ってもらい、適切な方式で我が国を南シナ海における多国間協議のメカニズムに組み入れることを通して南シナ海の平和と安定の維持に役立つことができるよう期待している。
以上から、今回の専門研究者らの実地上陸視察の後、中華民国政府は改めて太平島が南沙諸島最大の自然形成された島嶼であり、人類が居住し続ける経済生活を維持できる「国連海洋法条約」第121条の「島嶼」の要件を満たしていることを改めて表明するものである。中華民国政府は太平島が島嶼である事実を断固として護持し、これを否定しようとするいかなる主張も、太平島の島嶼としての地位を損うものではなく、「国連海洋法条約」に基づく海洋の権利を享受するものである。各当事者が南シナ海の目下の緊張情勢を緩和しようとするなら、我が国政府が提起した「南シナ海平和イニシアチブ」を参考にし、「主権は分割できないが、資源は分かち合える」の原則で、平和的な話し合いを通して争議を解決し、南シナ海を「平和と協力の海」へと共に変えていくべきである。
【外交部 2016年1月23日】