台湾出身の直木賞作家、東山彰良さんの講演会が開催

東山彰良さん（右）、天野健太郎さん

　第１５３回直木賞を受賞した台湾出身の作家、東山彰良（本名：王震緒）さんは１０月４日、東京・虎ノ門にある台北駐日経済文化代表処（駐日代表処）台湾文化センターにおいて開催された講演会の中で、受賞作品『流（りゅう）』執筆について、２年前にミステリー小説の『ブラックライダー』を書き上げたことで、発想力のみを頼りにゼロから物語を紡ぎあげることができるという自信につながり、『流』を書き上げることができたと語った。

　講演会は、「『流』が描く戦後台湾、家族そして青春」をテーマに、翻訳家の天野健太郎さんが聞き手となり、東山さんに受賞作品『流』を執筆したきっかけや創作秘話、自身のルーツ、子供の頃について質問する形式で進められた。

　『流』の主人公は東山さんの祖父がモチーフとなっており、それについて東山さんは、以前から祖父の話を書こうと思っていたが、それを書くには自身の記憶だけでなく、父親や周りの大人たちの記憶も辿っていく必要があるが、それを書き上げるだけの力が自分にあるかどうかわからなかったという躊躇と共に、家族の思い出に手を付けて、納得のいかないものを書き後悔してしまうのではないかという恐れもあり、実現しなかったと説明した。

　当日は朱文清・駐日代表処台湾文化センター長が、「台湾には『台湾の光（誇り）』という言葉があるが、直木賞を受賞した東山さんはまさに『台湾の光』」と紹介した。

«２０１５年１０月５日»