台湾のノーベル賞「唐奨」、授賞式開催
台湾の実業家、潤泰グループ(Ruentex Financial Group)の尹衍樑総裁がノーベル賞を参考に創設した「唐奨(TANG PRIZE)」の第3回授賞式典が21日に台北で行われた。授賞式典には8名の受賞者および代理人が出席し、国内外からの代表者の祝賀のもと、賞が授与された。
唐奨は2年ごとに受賞者を選出し、第3回となる今年は、6月に受賞者が発表された。
第3回唐奨受賞者8名の受賞者と受賞コメントは次の通り。
「バイオ医薬賞」:トニー・ハンター(Tony Hunter)博士
発がん遺伝子のチロシンキナーゼ(TK)を発見し、その細胞内シグナル伝達経路を切断すると、がん細胞の増殖を抑制することができると判明、がん細胞の増殖を抑制する分子標的薬「チロシンキナーゼ阻害薬」研究の第一人者。授賞式では「当時、実験中に面倒くさくて新しい溶剤を調合しなかったことが、チロシンキナーゼの発見につながった。怠けることも一種の美徳につながることがある」とユーモアのあるスピーチを披露した。
「バイオ医薬賞」:ブライアン・ドラッカー(Brian J. Druker)博士
25年前に分子標的治療という分野ががん治療の未来に役立つと確信したブライアン・ドラッカー博士だが、当時は否定の意見も少なくなかった。そのため、薬剤メーカーを説得して臨床試験を行うことにかなりの労力を費やした。「階段の全てを見る必要はない。とにかく最初の一歩を踏み出せばよい」という米国で人種差別の撤廃に生涯をささげたキング牧師の名言を引用してスピーチを締めくくった。
「バイオ医薬賞」:ジョン・メンデルソーン(John Mendelsohn)博士
授賞式には息子のジェフ・メンデルソーンさんが代理で出席。父について「とても好奇心旺盛で、今回自ら台湾を訪れ各分野の著名人たちと交流できないことをとても残念がっていた。座右の銘は「only connect」(結びつけることが一番重要だ)というもの」と代理であいさつした。
「漢学賞」:ステファン・オーウェン(Stephen Owen)氏
唐獎を受賞したことはとても光栄だが、これは一つのエピソードに過ぎないと語ったステファン・オーウェン氏。唐獎受賞は、一度立ち止まって自分の研究の意義を見直すきっかけになったと語ったステファン・オーウェン氏は「知識は絶えず流動し変化し、構築と解体を続ける。学者として永遠に新たな解釈に直面していかなければならない」との見解を示した。
「漢学賞」:斯波 義信氏
歴史学者の斯波義信氏は「かつての歴史学界では、中国大陸を中心として研究が行われてきた傾向にあるが、自分は中国大陸とその周辺の発展に注目しており、あまり重視されていない商業や都市の歴史、そして職業構造の変化に重点を置いている。唐獎の授賞は大きな励みになり、若手の学者が関連分野において更に掘り下げた研究を続けていく助けになれば」との喜びを語った。
「法治賞」:ジョセフ・ラズ(Joseph Raz)氏
ジョセフ・ラズ氏は「自分の研究は理論に比重を置いたもので、歴代の唐獎受賞者にまだまだかなわない。各界に法を守るよう呼びかけている。法律は透明性、安定性、予測可能性を市民の生活に提供している。政府はそれをよりどころにし、公務員の汚職問題などを改善することができるほか、市民もそれに基づいて自分の生活を計画することができる。」と法治国家のメリットをアピールした。
「永続的な発展賞」:ジェームズ・ハンセン(James E. Hansen)氏
ジェームズ・ハンセン氏は、化石燃料は、人類に多くの利益をもたらしたが、気候変動問題などももたらしていると述べ、早く改善策を講じなければ、取り返しがつかない結果になると警鐘を鳴らした。ジェームズ・ハンセン氏はまた、唐獎の賞金で本を出版し、若者に対して自分の未来ため発言するよう激励したいとした。
「永続的な発展賞」:ベアーラブハドラン・ラマナサン(Veerabhadran Ramanathan)氏
気候変動研究家のベアーラブハドラン・ラマナサン氏は、「私の大地の母、私の山河、あなたたちを踏みにじったことをお許しください」という3,000年前から語られるサンスクリット語の一文を引用し、地球温暖化の危機にさらされている今、行動さえすれば、最悪の結果を避けられるかもしれないと訴えた。
Taiwan Today:2018年9月25日
写真提供:唐奨サイトより
第3回唐奨授賞式典に出席した受賞者および代理人。それぞれ受賞の喜びや将来の展望などをスピーチした。