台北でAPEC保健カンファレンス、医療情報の共有について話し合う
台湾北部・台北市のホテルで8日と9日の両日、医療情報の共有をテーマとするAPEC国際カンファレンス「（APEC Conference on Medical Information Sharing for Enhancing Medical and Disease Management」が開催された。米国、カナダ、オーストラリア、ペルー、ロシア、日本、韓国、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナムなど13のAPECエコノミーを代表するゲスト約40名が参加し、各国の健康保険制度や医療情報共有の現状について意見を交換した。また、会場には海外の政府関係者、駐台在外公館の関係者、産官学各界の関係者ら300名以上が足を運んだ。
今回、この国際カンファレンスが台北で開催されることになったのは、2018年にパプアニューギニアで開催されたAPEC（アジア太平洋経済協力）保健作業部会（HWG）で、台湾の衛生福利部中央健康保険署（=国民健康保険制度を管轄する中央省庁）の李柏璋署長が台湾の国民健康保険制度と最新のクラウド医療情報技術について報告し、APECのエコノミーから高い評価を受けたことや、衛生福利部（日本の厚生労働省に類似）の陳時中部長（=大臣）が世界保健機関（WHO）総会の開催期間、台湾の医療分野での経験について情報を発信し続けたことなどがきかっけ。APECから10万米ドルの経費助成を受け、企画や各方面との連絡に半年の時間を費やした結果、台北市内で国際カンファレンスを開催するに至った。
カンファレンスでは、「医療情報の交換技術をヘルスケアの改善に運用することの世界的傾向と成果（The global trends and achievements of applying medical Information exchange in healthcare improvement）」、「医療情報の収集、共有、使用、データセキュリティに関する戦略と見解（The strategies and views on medical information collecting, sharing, using and data Security）」、「病院/公共部門のヘルスケア強化のためのICTの応用（Applications of ICT in strengthening healthcare in hospitals/ public sectors）」の3つをテーマにパネルディスカッションが行われた。
衛生福利部中央健康保険署の李柏璋署長によると、今年5月にスイス・ジュネーブで世界保健機関（WHO）総会が開催された際、衛生福利部の陳時中部長が現地に足を運び、欧米諸国や新南向政策対象国（=東南アジア、南アジア、オーストラリア、ニュージーランドを含む18カ国を指す）の保健担当大臣と積極的に会談を行った。その結果、多くの国の保健担当大臣が、台湾で実施されているクラウドを使った医療情報の共有に高い関心を示し、ぜひ政府関係者を台湾に派遣し、その成功の経験を学びたいと強い意向を示した。今回の国際カンファレンスのテーマは、まさに世界保健機関（WHO）やAPECなどの組織が現在関心を寄せている議題であり、且つ台湾にとっての強みであると言える。
台湾は、医療ケアの品質を高めるため、医療機関による健康情報の共有プラットフォームを確立し、患者を中心に見据えたヘルスケアを推進している。中央健康保険署は2013年、クラウド技術を使った薬歴情報共有システム「PharmaCloud（中国語では「雲端薬歴」）」を確立し、各患者の薬歴情報を記録できるようにした。このシステムは2016年、さらに機能を増やし、名称を「NHI-MediCloud System（中国語では「健保医療資訊雲端査詢系統）」に変更した。このシステムの導入によって2014年から2019年6月までの期間、台湾は薬剤の重複使用を減らし、約3.7億台湾元（約12.4億日本円）の経費節約を実現した。これは同時に国民の受診や服薬の安全確保にもつながり、保健資源の使用効果を最大化するという目的を達成している。こうした効果は、現在海外で行われているクラウド技術の医療応用による費用対効果管理において、最も具体的な成功例となっている。
また、米国の経済誌『CEOWORLD』は、世界89カ国のヘルスケアシステムを評価する記事で、台湾を「１位」に格付けた。台湾の点数は100点満点中78.72点で、2位の韓国、3位の日本を上回った。今回の国際カンファレンスでも、この評価について言及された。
李柏璋署長は、台湾の評価が韓国を上回った要因について、韓国では医師の国民健康保険加入率がわずか50％であることを挙げた。また、韓国では政府と医師団体との意思疎通がうまくいっておらず、医師によるストライキも頻繁に発生している。一方台湾は、医師の国民健康保険加入率が93％と高く、健康保険制度に対する信頼度が非常に高い。また、休日診療の実施や医療機関の規模に応じた患者の分散を促す政策が奏功し、質の高い医療サービスを提供できるだけでなく、医療資源の浪費を防いでいる。
なお、台湾では国民健康保険制度に対する国民の満足度が86％に達している。
Taiwan Today：２０１９年８月１３日
写真提供：衛生福利部、中央社
台北市で8日と9日の両日、医療情報の共有をテーマとするAPEC国際カンファレンス「（APEC Conference on Medical Information Sharing for Enhancing Medical and Disease Management」が開催された。米国、カナダ、オーストラリア、ペルー、ロシア、日本、韓国、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナムなど13のAPECエコノミーを代表するゲスト約40名が参加した。
