蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督が日本初上映のVR映画『蘭若寺の住人』を語る

蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督が日本初上映のVR映画『蘭若寺の住人』を語る

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VR映画『蘭若寺の住人』上映会の会場(写真提供:芸術公社、佐藤駿撮影)

 台北駐日経済文化代表処台湾文化センターは日本の特定非営利活動法人「芸術公社」と協力し、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督とHTCによる華人界初のVR映画『蘭若寺の住人』(原題:家在蘭若寺)を2月11日~21日に「シアターコモンズ’21」のイベントで日本初上映した。2月16日には蔡明亮監督を招いたオンラインによるアーティスト・トークを開催し、VR映画制作におけるエピソードを共有した。

 台湾文化部(文化省)は近年、産業における文化とテクノロジーの応用と開発を積極的に支援しており、特に5GやVR(バーチャル・リアリティー/仮想現実)の応用を民間の力とつなぎ合わせて共に推進していくことを望んでおり、『蘭若寺の住人』はその一つの成功例だといえる。新型コロナウイルス感染症の影響による国境を越える移動や芸術文化交流における多くの制限を乗り越えるべく、今回は感染予防と実施効果を両立させることを前提としたうえで、第74回ヴェネツィア国際映画祭VR部門にノミネートされた『蘭若寺の住人』を日本で初上映した。開催期間中に計45回上映され、台湾の文化テクノロジー分野の成果と素晴らしさを各国に紹介することができた。

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蔡明亮監督(写真提供:芸術公社、張鍾元撮影)

 今回のオンラインによるアーティスト・トークでは、蔡明亮監督と、その作品を長年にわたり注目してきた中村佑子監督による対談が行われた。対談の中で蔡監督は、VR技術を映画の美的感覚を高めるために撮影に用いた経験について、制作プロセス、場面設計、創作概念などを詳細に解説し、この作品がコロナ禍において人生と病気について改めて考えさせる作品であり、日本の観客が初めてVR映画を鑑賞したときの驚きの反響がうれしかったと語った。

 さらに蔡監督は、VR映画と一般の映画を撮る際の異なる点およびその過程において直面する数々の課題についても語った。マレーシアで生まれ育った少年だった蔡監督は、両親が胡椒を栽培する兼業農家で、兄弟姉妹が多く、3歳の頃から祖父母と暮らしていた。祖父母が映画好きであったことから、耳や目に入ってきた映画の世界に触れるようになり、それは楽しい時間だった。マレーシアで観た映画は商業映画であったが、台湾に来てからはちょうど戒厳令解除で、政治情勢や言論の自由が緩和に向かう状況の下、日本の黒澤明監督や小津安二郎監督の作品を含む各国のアート映画に触れることができ、台湾のこのような自由な空気が蔡監督の映画撮影の方向性に影響を与え、市場やチケット売上に左右されず自由な意志で創作に取り組むようになった。蔡監督は「1992年に撮った『青春神話』(青少年哪吒)以来、外部から制限や操縦されて映画を創作したことはなく、ただ自分の撮りたいように映画を撮ってきた。自分の映画監督人生には十分満足しており、何ら遺憾なことはない」と強調し、最後に「私はまだ引退はせず、引き続き映画創作の道を突き進んでいく」と宣言した。

 台湾文化センターは2017年より東京都港区役所、ゲーテ・インスティトゥート東京ドイツ文化センター、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、オランダ王国大使館および「芸術公社」と提携し、「シアターコモンズ」の文化パートナーを生み出すプロジェクトに参加している。今回は「Bodies in Incubation 孵化/潜伏するからだ」をテーマに、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)を用いた体験を通して、各国の代表的なアーティストとともにポストコロナ時代のVRとARの活用による今後のアート表現の可能性について探った。

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蔡明亮監督とのオンラインによるアーティスト・トーク(写真提供:台湾文化センター)

《2021年2月22日》