外交部:釣魚台列島問題で、台湾が中国大陸と連携しない理由
釣魚台列島(日本名:尖閣諸島)の問題をめぐり、中華民国(台湾)が中国大陸と協力または連携しない理由は以下の通りである。
(一)両岸双方が主張する法的論拠が異なるので連携は難しい
1.わが方は、『カイロ宣言』が台湾及びその付属島嶼(釣魚台列島を含む)を中華民国の領土とする基礎となる法的文書であると主張している。1952年に『中日和約』(日華平和条約)が調印され、中華民国と日本との間で台湾及びその付属島嶼の主権移譲の法的手続きが完了したが、その中には当然ながら釣魚台列島も含まれる。1945年から1972年まで、米国が『サンフランシスコ平和条約』に基づいて琉球(沖縄)等の島嶼を信託統治していた期間、釣魚台列島は日本統治下にはなく、いかなる国の名義による統治も受けておらず、米軍による信託統治に主権上の意義はなかった。わが国民は、特に漁民がこの島を日頃から使用し、干渉を受けることもなかった。そのうえ、米軍は『中米共同防衛条約』に基づき、台湾海峡の防衛協力を行っており、わが国は米国と交渉する必要もなかった。
2.中国大陸の立場は『カイロ宣言』を希薄化し、「中華民国」への言及を避け、なおかつ『サンフランシスコ平和条約』および1952年の『中日和約』を否定するものである。『日“中”共同声明』及び『日“中”友好平和条約』はいずれも、台湾及びその付属島嶼の主権移譲の法的手続きに言及しておらず、その主張の法的根拠が不足している。また、中国大陸は琉球が米軍に信託統治されているのは違法であり、日本に返還すべきであると認識していた。
3.したがって、双方は『サンフランシスコ平和条約』と1952年の『中日和約』の立場が異なることは明白であり、各々の国際法解釈があり、しかも国際社会に対して別々の主張で周知されてきたように、『禁反言の法理(エストッペル)』に基づけば、双方はこの点について連携できない。
(二)双方の争議解決構想が異なり、双方が連携を進めることは難しい
1.馬英九総統は2012年8月に「東シナ海平和イニシアチブ」を発表した。わが方の立場は、釣魚台列島の紛争は交渉(協議)、調停(斡旋)、仲裁または訴訟等の平和的方式で解決するというものである。
2.中国大陸はこれまで、わが方の「東シナ海平和イニシアチブ」に前向きな回答をしていない。また、国際裁判所に解決を委ねることにも反対しており、さらには平和的解決の具体的構想を提案していない。中国大陸は、これまでにインド、ソビエト連邦、ベトナムなどの国と5回にわたる領土戦争を起こしている。双方の紛争解決に対する構想が異なるので、連携することは難しい。
(三)中国大陸はわが方の統治権を承認しておらず、わが国は中国大陸と協議できない
わが国の立場は、釣魚台列島が台湾の付属島嶼であり、中華民国固有の領土であるというものである。中国大陸は中華民国政府が統治権を有しているという事実を否定してはならず、両岸が平等な地位で釣魚台列島の紛争解決メカニズムに参加することを排除してはならない。さもなければ、双方が釣魚台問題解決のために連携することは難しい。
(四)中国大陸の介入の動きが台日漁業会談に影響することから、わが方が連携することは難しい
わが国が提案した「東シナ海平和イニシアチブ」は、「対立から対話へ」、「対話を通じて争議を棚上げする」の方式で、先に日本と漁業会談を通じてまず漁業問題を解決し、漁民の権利を守っていくことを望んでいる。中国大陸側は、台日漁業会談における双方の主権に抵触するいかなる話し合いにも明確に反対しており、わが方と日本側との協議に干渉している。
(五)両岸は東アジア地域のバランスと国際社会の懸念を考慮する必要がある
わが国は東アジアの第一列島線の重要な位置にあり、中国大陸は近年全力で海、空軍の軍事力を増強し、第一列島線を突破しようとしている。長期にわたり、わが国は米、日と政治、経済、国防の分野で高度な共通利益を共有しているが、両岸がこの件で連携することに対して、米、日その他の隣国は重大な懸念を表明しており、わが国と米、日との両者間の協力関係および東アジア地区の政治および軍事バランスに影響することでもあるため、特に慎重にあたるべきである。
【外交部 2013年2月8日】