アジア調査会「東アジアの安全保障と日本、台湾の役割」国際シンポジウムが開催

　「東アジアの安全保障と日本、台湾の役割」と題する国際シンポジウムが９月５日、アジア調査会の主催により東京・内幸町の日本記者クラブホールで開催された。

　同シンポジウムには、パネリストとして台湾から何思慎・輔仁大学教授が出席し、スティーブン・Ｍ・ハーナー元米国外交官、川島真・東京大学准教授、坂東賢治・毎日新聞東京本社編集編成局次長らとともにアジア情勢を議論した。また、司会はアジア調査会の長田達治・常務理事が務めた。

　冒頭で挨拶した台北駐日経済文化代表処の沈斯淳・駐日代表は、「馬総統が昨年８月５日に提起した『東シナ海平和イニシアチブ』に基づいて、今後引き続き平和的な話し合いの精神の下、関係各方面との対話を進めていきたい」と述べ、また国際民間航空機関（ＩＣＡＯ）、国連気候変動枠組み条約（ＵＮＦＣＣＣ）、環太平洋パートナー協定（ＴＰＰ）などの台湾の国際参加についても日本の協力を呼びかけた。

　同シンポジウムのなかで、何氏は、釣魚台列島（日本名：尖閣諸島）周辺海域の日本の一方的な防衛力強化は、中国大陸当局を退かせることにはならず、逆に強化することになるだけだと指摘し、いたずらに対立をエスカレートさせず対話による平和的手段で紛争を処理する「東シナ海平和イニシアチブ」の重要性を強調した。そのうえで、「東シナ海平和イニシアチブ」の初歩的な成果として「台日漁業協議」の締結に至ったとして、「中華民国（台湾）は東アジアの平和利益を創出する日本のパートナーであり、日本と民主的な価値観を共有する隣国である」と述べた。

　ハーナー氏は、釣魚台問題に関して「米国のニクソン大統領と中華民国（台湾）の蒋介石総統の時代に残された問題。米国は釣魚台の施政権を日本に返したが、主権は返していない」と指摘した。

　坂東氏は、日華平和条約調印、中華人民共和国国連加盟、日中国交樹立、戒厳令解除、中国ミサイル演習、馬英九総統当選など、毎日新聞の紙面に掲載された台湾の歴史的ニュースを振り返りながら、日本から見た台湾観の変化を分析し、イデオロギーにとらわれない台湾との関係が広がってきたとの見方を示した。

　川島氏は、岐路に立っている東アジアの安全保障空間において、各パネリストの発表で共通するのは、より一層敵対心、衝突を煽ったり、やっつけるべきだという議論はなく、いかにして国益を追求しながら、この地域の平和・安定・発展を維持するかが大事であるということだったと指摘した。

《２０１３年９月９日》

アジア調査会「東アジアの安全保障と日本、台湾の役割」国際シンポジウムが開催

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