戎総領事による「台湾南部地震に支援する日本の方々へのメ－セッジ」

台湾と九州の絆

戎(えびす)義(よし)俊(とし)
2016年2月9日　

　2月6日午前3時57分（日本時間午前4時57分）頃、台湾南部・高雄市を震源とするマグニチュード(M)6.4の地震があった。倒壊した建物は８棟、これまでに42人の死亡が確認された。倒壊した建物の中には依然120名ほどが取り残されており、懸命な救出活動が続けられている。地震発生からのこの数日間、私は、九州各県・市・町などの地方自治体及び民間の友人達からの慰問や激励の電話やメール、義援金などを次から次へと受けた。言葉では言い表せないほどの感謝と温かい友情を感じている。

　台湾と九州とは、歴史的にみても非常に深い関わりを持つ間柄である。日本統治時代には1万人あまりの九州人が、教師・技師・医師という公務員の身分で台湾に渡り、仕事をし生活をした。台湾で恋愛し、結婚し、子供をもうけた彼らはその青春のほとんどを台湾で過ごし、それは人生の黄金期だったといっても過言ではない。戦後、彼らが日本に帰国してからも、彼らの記憶の中にはいつも「台湾」という大きな塊、信念があり、その塊が永遠に消えてなくなることはないのである。　

　テレビ画面を通して見る台南地震の惨状を見て、多くの日本人が我々と同じように心を痛めているのを肌で感じ、日本人の心と台湾人の心がうまく絡み合っていることを感じている。2011年3月11日の東日本大震災への日本からの恩返しと言われるが、台湾と日本の国民同士にある感情は、極めて自然発生的かつ有機的なものなのである。日本人の台湾への関心、慰問、義援金、救援活動などのどれもが自発的なものであり、真心から行われているものである。　

　この数日間、私は行く先々で「台湾は大丈夫ですか？私たちに何かお手伝いできることはありませんか？」と日本の方から声をかけていただいた。台湾と日本の心と心はつながっている。そしてその絆はますます強くなり、切っても切れないものとなっているのである。2015年（昨年）、400万人もの台湾人が日本を訪れたこと、先般の年末年始に日本人の一番人気の海外旅行先として台湾が選ばれたことの深層心理はここにあると思っている。