陳水扁総統、WHO加盟について国際記者会見で語る
陳水扁総統は5月11日、総統府において「台湾の世界保健機関(WHO)加盟について」をテーマとした国際記者会見を開催し、同時にテレビ回線を通して、ジュネーブの報道メディア記者と衛生中継での質疑応答を行った。この記者会見では先に陳水扁総統によるあいさつがあり、その後、台北およびジュネーブの二カ所の記者団からの質問に総統がそれぞれ回答した。以下は国際記者会見における内容である。
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本日、再びテレビ回線を通して台北およびジュネーブの皆様と共に同時に対談できることは無上の喜びであり、まずはじめに皆様の参加とご支援に感謝いたします。
昨年のこの時をはっきりと覚えておりますが、私もテレビ衛星中継会議の方法で欧州各国からのオピニオンリーダーや学者、専門家の皆様により、台湾がいかにして国際社会に参加するかというこのテーマ、とりわけ「世界保健機関(WHO)」が開催する会議への参加と活動について、広範な意見交換を行いました。一年を隔て、本日我々は再び集まりましたが、今年、我々は新しい考えと行動をおこし、「台湾の名義でWHOへの加盟」を正式に要求しました。
皆様もご存知の通り、2300万人の台湾の国民の健康と生命の集団的人権を確保するため、我々はWHOへの参加を起こしてからすでに十年が経ちました。これまではWHOへ参加することができるためとして、政治的争議の回避可能な選択をし、「衛生実体」の概念で「WHO年次総会」へのオブザーバー参加を希望してきました。
長年にわたり、台湾の友好諸国及び米国、日本等の国々から大きな支持を獲得はしたものの、中国の横暴な横槍により、具体的な成果はありませんでした。近年来、米国、日本および欧州連合(EU)等の主要諸国には、台湾がWHOのオブザーバーとなる前に、WHOに関する会議と活動に「有意義な参加」ができるようにと一層の支持をいただくようになりました。しかし、最近明らかになった情報によりますと、中国とWHOが2005年に署名した「秘密の備忘録(MOU)」には、もし台湾の医療公衆衛生専門家がWHOの開催する技術的な会議および活動に参加を希望した場合、会議の5週間前に、WHOに必ず申請を提出し、中国衛生部の審査承認を経なければならないと明白に規定しているとのことです。また同時に、それは個人の身分として出席し、職責地位はは所長以下でなければならず、しかも会議資料は一律に「中国台湾」の専門家と明記する必要があり、いたるところで台湾を矮小化、押さえつけ、政治的干渉と操作により、いわゆる「有意義な参加」はその意義を完全に失わせるものとなっております。
4年前に台湾で新型肺炎(SARS)が猛威をふるい、2300万人の台湾の国民は、その命をもって世界防疫システムの外で拒絶された心痛な経験を引き換えにさせられました。SARSが猛威をふるった初期には中国のさまざまな妨害とボイコットにより、猛威をふるってから6週間後になってようやくWHOの医療衛生の専門家が台湾を訪れ、関連する協力を提供するといった状態でした。台湾はこの時、SARSウイルスとの戦いの中におり、346人の住民が感染し、73人がこれにより尊い命を失ったのでした。
疾病の防疫には漏れ穴があってはならず、衛生医療はボーダレスでなければなりません。SARSは新型の伝染性疾病で、一つの国が単独で対処できるものではなく、グローバルな防疫システムによる共同協力に頼る必要があり、そうしてこそ、その脅威と被害は最小限に食い止めることができるのであって、これこそまさにWHO設立の最も主要な目的と主旨なのではないでしょうか。ところが中国の圧力により、台湾は長期にわたりWHOの外に排除されているばかりか、台湾を世界防疫システムの唯一の漏れ穴あるいはブラックホールにさせ、さらには2300万人の台湾の国民を常に各種の新しい伝染病による死の脅威の下にさらさせています。これは不公平なことであるばかりか、非人道的でもあります。
近年では鳥インフルエンザの拡散の危機が再度、各国の高い関心と憂慮を引き起こしています。WHOが発表した資料によると、今年3月末までに、中国、インドネシア、ベトナム、タイ、カンボジア及びラオスの六カ国では、合計230件の人類が鳥インフルエンザH5N1ウイルスに感染した症例が発生し、死亡者が144人、致死率は62%の高さになっていることが明らかになっています。
台湾の地理的な位置関係により、以上に述べた六カ国とは往来がきわめて頻繁であり、毎週往来する航空便数は1183便にもなります。また、「台北飛行情報区」には合計13もの主要な国際航空路線が航行し、毎年20万便近くの航空機が台湾を離着陸し、しかも台湾に出入国する国内外の旅客は毎年2500万人近くにもなります。
これらのデータは、台湾で万一不幸にも何かの疫病が発生した場合、きわめて短期間のうちに世界各地に伝染し、しかも世界的な衛生安全に対し深刻な衝撃となることを、明確にわれわれに語っているのです。台湾が全面的かつ友好的に国際的な公衆衛生システムに参加し、相互に密接な協力をしてこそ、台湾及び世界の一人一人の健康と安全を確保することができるのです。
本日、台湾から4年前にSARSに感染した生存者3名がジュネーブに到着しており、彼らが自らの経験と証言とにより、国際社会が台湾の遭遇している不公平な待遇を重視するよう、また同時に、台湾がこの世界的な防疫の漏れ穴になっているという内憂と脅威をより一層直視するよう喚起することを希望しています。
我々は台湾が積極的にWHOの正式加盟国として受け入れられ、世界防疫システムの唯一の漏れ穴が迅速に繕われてこそ、2300万人の台湾の国民および加盟する全ての国の人々の健康と生命が最も完全に保証されるものであると深く認識しています。
私は4月11日にWHOの陳馮富珍(マーガレット・チャン)事務局長へ書簡を送り、台湾の名義でWHOの加盟申請を要求しました。しかしながらWHOの事務局は台湾が主権国家でないことを理由にそれを拒否をしたのです。
WHO憲章およびWHO年次総会の議事規則によると、台湾が主権国家であるかどうか、WHO加盟国の資格があるかどうかはWHO事務局が直接認定してよいものではなく、全体の加盟国にゆだね決定されるべきものとなっております。
1968年、東ドイツではWHO加盟要求の申請を提出しましたが、直ちにその主権国家としての地位を疑問視されました。しかし、当時のWHOの事務局長は東ドイツの申請案を加盟各国に通知し、さらにはその年のWHO年次総会の議事日程に入れ、東ドイツがWHO加盟国とするかどうかを加盟国全体による共同で決定すべきだと公表しました。
1968年から71年にかけ、東ドイツの加盟獲得の努力はずっと挫折していましたが、1972年、WHOの事務局長がWHOの年次総会規則に基づき、東ドイツをWHOの年次総会にオブザーバーとして招聘し、1973年のWHO年次総会においてついに東ドイツをWHOの正式加盟国にする決議がなされました。
我々はWHOの事務局長および事務局が台湾の提出した申請を公正に処理し、台湾の加盟問題を今年度のWHO年次総会に移し討論されることを心より期待します。また同時に、WHOの全加盟国、とりわけ欧州連合の各国がこの同じ道理の精神に基づき積極的に東ドイツの例を引用し、台湾が一日も早くWHOの加盟国となり、加盟前にまずWHO年次総会へのオブザーバー参加がかなうよう希望します。
2004年以来、台湾のメディアは終始、国連の欧州総部によりWHO年次総会の取材を拒否されていますが、今年も例外ではありませんでした。しかも、その理由は、なんと「台湾のパスポートは受け入れられない」というものでした。このような行為は報道の自由に対するこの上ない侮辱であるばかりか、さらには2300万人の台湾の国民の身体的自由の徹底的な剥奪でもあります。台湾のパスポートは全世界のあらゆる国において、台湾と正式な外交関係があるなしに関わらず、これまでずっと拒否に遭ったことはありません。
先に台湾メディアの取材権を奪い、その後、さらに進めて台湾の国民の所持するパスポートの有効性を否定する。国連の欧州総部のこのような不当な措置に対し、私は台湾政府および全国民を代表し、きわめて厳正なる抗議と糾弾を表明します。
同時に欧州記者協会が台湾メディアの取材権を守るため、長年にわたり絶えず正義により公正な言論を行なっていただいていることに、私も特に欧州記者協会(AEJ)のPeter Kramer国際幹事長 および全ての会員の皆様に衷心よりの感謝と最高の敬意を表わします。わが国には「正しい道理はもとより人の心の中にある」という諺があります。生命の価値にはいかなる人も制限や剥奪をすることはできません。邪悪と強権は、一時は運良くまかり通るかもしれませんが、人類は正当な道理と正義の堅持について、永遠に屈服できるものではありません。われわれは手を携えさらに奮闘し、健康的で、すばらしく、幸福な明日を求めるために引き続き努力してまいります。
【総統府 2007年5月11日】