東京で写真家・阮義忠さんがトークイベント、写真とエッセイで台湾の歴史や文化を紹介
台湾を代表するドキュメンタリー写真家の阮義忠さんの『人と土地 台湾1974–1986』日本語版(みすず書房)刊行記念トークイベントが26日、台湾文化センター(東京都港区虎ノ門)で開催された。同書は阮義忠さんの作品としては初の日本語版であり、文化部の「翻訳出版奨励計画」(台湾のオリジナル書籍を翻訳出版する海外の出版社に対する助成プログラム)の支援を受けて出版された。東京で行われたトークイベントは、阮義忠さんと同書の翻訳者である栖来ひかりさんの対談形式で行われた。阮義忠さんが厳選した10枚の写真を取り上げ、その1枚1枚に込められた物語を紹介するとともに、1970~1980年代の台湾社会の暮らしや人々の姿をどのようにカメラで記録してきたかを振り返った。
阮義忠さんは台湾を代表するヒューマンドキュメンタリー写真家であり、長年にわたり台湾の庶民の暮らしや生活文化をテーマにした創作活動を続けてきた。国立芸術学院(現在の国立台北芸術大学)の教員を務めたほか、写真雑誌『攝影家』を創刊し、2024年には第43回「行政院文化奨」(奨は日本語の賞の意味)を受賞した。『人と土地―台湾1974–1986』には、戒厳令下の1974年から1986年にかけて台湾各地で撮影した85点の写真が収録されている。「成長」、「労働」、「信仰」、「返郷」(帰郷の意味)の4章構成で、当時の台湾の暮らしを記録するとともに、後年に執筆したエッセイを加え、写真と文字によって当時の時代の記憶を描き出している。
例えば本書の表紙を飾る作品「老天給的礼物」(天からの贈り物)は、阮義忠さんによると「全作品の中で最も撮影が難しかった一枚」だという。この写真を撮影したのは戒厳令時代。屏東県旭海にある、軍の基地に隣接した小さな村でのことだった。当時は、いつカメラやフィルムの提出を求められたり、撮影そのものを禁止されたりしても不思議ではない時代だった。写真は宙返りをする子どもたちの姿を撮影したものだが、その一瞬を捉えるには、タイミング、場所、そして人との巡り合わせという、あらゆる条件がそろう必要があった。阮義忠さんは、「本当に優れた写真とは、決して写真家一人の力だけで生まれるものではない。被写体、環境、そして巡り合わせがあって初めて成り立つものだ。そのため、この作品を『天からの贈り物』と名付けた」と語った。
日本語への翻訳を担当した栖来ひかりさんは、台湾在住の日本人文筆家だ。2006年から台湾に住み、旅や執筆、翻訳活動を通じて台湾の文化や歴史を日本の人々に紹介してきた。著書に『日台万華鏡 台湾と日本のあいだで考えた』があり、柯宗明作『陳澄波密碼』(邦題:『陳澄波を探して 消された台湾画家の謎』)などの翻訳も手掛けるなど、日本における台湾文化の普及に大きく貢献している。トークイベントでは本書の訳者として、また台湾に長年暮らす観察者としての視点から、阮義忠さんが取り上げた作品の時代背景や歴史的文脈を補足し、ドキュメンタリー写真、歴史、文化といった多角的な視点から台湾を見つめるきっかけを参加者に与えた。
Taiwan Today:2026年7月28日
写真提供:文化部
ドキュメンタリー写真家の阮義忠さんの『人と土地 台湾1974–1986』日本語版(みすず書房)刊行記念トークイベントが26日、東京都内で開催された。阮義忠さんが厳選した10枚の写真を取り上げ、その1枚1枚に込められた物語を紹介した。
