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  中国の軍事拡張と台湾の防衛戦略⑧「二〇〇四年国防報告書」概要 - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
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中国の軍事拡張と台湾の防衛戦略⑧「二〇〇四年国防報告書」概要


中国の軍事拡張と台湾の防衛戦略⑧
「二〇〇四年国防報告書」概要

四、台湾に対する軍事的威嚇(続)


  〔具体的に可能な戦術〕


  (一)威嚇戦‥これは武力を背景とした威嚇により、政治、経済、国民の精神面に圧力を加え、それを順次強めるというものである。手段としては正規と非正規、軍事と非軍事的手法が併用される。その特徴は、最少の犠牲をもって最大の政治目的を達成するところにある。


  ①軍事大演習による圧力‥心理戦の範囲内のもので、沿海部に大兵力を集中し、火力を誇示するとともに散開演習なども行い、場合によっては島嶼揚陸演習も行い、それらをメディアによって喧伝し、台湾の民心に動揺を与え、戦わずして屈服させようとする。


  ②インターネットによる攪乱‥コンピューター・プログラマーさらにハッカー・グループを活用して台湾の政治、経済、軍および各メディアのホームに侵入し、不正な書き込み、改竄などにより混乱を惹起させ、民心の不安感を増大させる。


  ③航空機、艦船による挑発‥戦闘機や軍艦によって台湾海峡中間線を越境し、警告あるいは威嚇の行為を行い、台湾海空軍の動きに圧力を加え、台湾軍将兵の防衛精神および士気を疲弊させる。


  ④局部封鎖による脅迫‥軍事演習あるいはミサイル試射により台湾の一部シーレーンもしくは一部島嶼部の周辺を航行禁止水域に指定し、実質的な部分封鎖による圧力ならびに脅迫を加える。


  ⑤全面封鎖作戦の実施‥台湾本島の周辺水域および空域を航行禁止区域に指定し全面封鎖を宣言する。同時に戦闘機、潜水艦を台湾のシーレーンおよび港湾近辺に派遣し、もしくはシーレーン、本島水域に機雷を敷設する。この全面封鎖により台湾を窒息させ投降を促す。

  (二)攪乱打撃戦‥通常戦によらず、奇襲あるいは遠距離精密攻撃によって台湾軍の指揮・コントロールシステム、ならびに政治、経済中枢部の連絡網を麻痺あるいは破壊し、殲滅前に台湾の反撃力を奪う。


  ①インターネット作戦‥ハッカーやコンピューター・ウイルスなどによるインフォメーション・ウォーフェアを展開し、台湾の軍関係、金融センターなどのコントロール網を混乱させ、台湾当局の戦略および戦術立案機能を麻痺させる。


  ②ミサイルによる波状攻撃‥戦術弾道ミサイルや巡航ミサイルによる波状攻撃を敢行し、台湾の政治、経済の中枢、C(4乗)―ISR機能(注一)、主要軍事施設を壊滅させ、台湾の反撃力と士気を崩壊させる。


  ③統合精密攻撃‥戦術弾道ミサイル、巡航ミサイル、無人攻撃機、さらに海空軍の攻撃部隊を併用し、台湾陸海空軍の拠点に精密攻撃を加え、台湾の反撃力と余力を殲滅し、揚陸作戦の準備を整える。

  (三)攻略戦‥現段階では中国の陸海空軍は台湾直接侵攻の能力を保持していないが、装備を年々更新し、演習も頻繁に行い、総合戦力は向上しつつある。将来的には高性能最新兵器および大兵力を動員し、前述の各種作戦を前段階として台湾本島に本格的な攻略戦を仕掛ける可能性は否定できない。


 中国の軍事動向は以上であるが、近年同国の経済は飛躍的に成長し、同時に台湾の独立への傾斜に憂慮を深めているとはいえ、外国勢力の関与、台湾民心の大陸からの離反、さらに各種攻撃兵器の準備不足などの要素から、短期間内で台湾に全面攻撃を仕掛ける可能性はきわめて少ない。したがって中国は現在、軍備増強を精力的に進め、とくに非対称型戦略に力点を置いている。これと並行し、国際社会においては各国にあらゆる機会をとらえ「一つの中国」を遵守して台湾との政府間接触をしないよう要求し、とりわけ米国に対してはブッシュ政権の台湾武器輸出政策を非難するとともに、三つの共同コミュニケ(注二)遵守と米台軍事交流の中止を要求するなど「米国を通じて台湾を制御する」策略を進めている。


  直接台湾に対する作戦として最近目立つものとしては、真偽さまざまな軍事情報を放出するなど、心理戦と情報戦を展開していることが挙げられる。これらのことから、近未来に考えられる中国の対台湾戦略は威嚇の継続、局地封鎖、さらに「三戦」(注三)強化による台湾内部の混乱醸成が挙げられる。国民はこのことを重視し、心防(精神の防衛)を強化しなければならない。


  (注一‥英単語の頭文字を取った用語で、指揮、統制、情報、コンピューター・システム、諜報、監視、偵察を指す。


   注二‥一九七二年の米中上海共同コミュニケ、七九年の国交関係樹立コミュニケ、八二年の八・一七コミュニケを指し、いずれも「一つの中国」の原則遵守が謳われている。


   注三‥心理戦、世論戦、法律戦)

 


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 これまで紹介してきたように「二〇〇四年国防報告書」は第一章から第四章までが中国の動向に費やされ、第五章と第六章が台湾の国防政策と軍事戦略になっている。以下は国防組織、人材、教育、法規、福利厚生、軍民連携などが記され、全二十六章の構成になっている。このうち第五章と第六章の前言と概要は以下の通りである。

 


  〔第五章「国防政策」前言〕


 今日の国際情勢は複雑で危険な要素がからみ、それらがわが国の安全保障にも大きな危険をもたらすところとなっている。だがグローバル化と多角的な国際経済関係の進展が、わが国の安全保障の整備にとって無限の契機をもたらすものとなっている。この現状から、国防部は実務的に今後の変化に対応するため、機会を掌握し、当面の国家安全政策を基軸とし、国家安全目標に依拠して国家利益維持のため国防政策を練り、もって国家の安全を確保する。


 グローバル化、IT化の今日、国家の安全は、単に軍事面における安全から、外交、両岸、経済、科学技術、心理、環境、危機管理などを含む広義の面に広がっている。わが国の国家安全政策の目標は、これら総合面の安全を維持し、国家の永続的生存と発展を確保し、国民の最大福祉を創造するところにある。

 


  〔第六章「軍事戦略」前言〕


 軍はもとより「戦争防止」「国土防衛」「反テロ」を基本目標とし、「有効な抑止力、専守防衛」の能力を整える以外に、「ハイテク化、優勢保持」を目標とし、陸海空三軍の整合を進め、精鋭化、効率化、戦闘力強化による現代化軍隊を創り上げ、国家の安全を確保する。


 軍の戦略構想は基本戦略構想と防衛作戦指導から構成される。その目的は三軍の戦力を統合し、連合作戦の効果を発揮し、効率的に台湾・澎湖・金門・馬祖防衛の任務を遂行するところにある。

 


  〔第五章、第六章の概要〕


  一、わが国の国家利益のため、わが国の生存と発展を確保し、国民の安全と福祉を維持し、自由、民主、人権を保障する。国家の安全目標とは完全な国家主権の維持、国家の永続的発展の保障、台湾海峡での軍事衝突防止、アジア太平洋地域の安全と安定への協力を含む。


  二、現段階におけるわが国の国防政策は「戦争防止」「国土防衛」「反テロ」を基本目標としている。その具体的方針は、国民の国防参加への範囲拡大、国民防衛理念の強化、危機管理システムの健全化、ハイテクによる現代化軍隊の構築、国防と民生の合一政策推進、国防科学技術の研究開発強化、周辺諸国との安全保障協力の開拓、徴兵制度とボランティア代替制度の併用推進、統合作戦指揮系統の確立、統合作戦演習の推進、軍構造の法制化、将兵の福利厚生の充実などである。


  三、わが国が対岸(中国)に対して呼びかけている軍事相互信頼システムの構築は、次の三段階構想によって進められる。①短期的段階‥双方善意を示し、異なる部分は据え置き共通点を求める。②中期的段階‥ルールを確立し相互信頼関係を強化する。③長期的段階‥敵対意識を解消し平和を確保する。


  四、軍の危機処理は政府の政策指導により、全方位の安全確保を図るため反テロを貫徹し「危機予防、状況掌握、緊急対応、迅速処理、危機拡大防止」を確保する。


  五、台湾における現段階での基本戦略は「有効な抑止力、専守防衛」である。「軍事における革命」思考によって精度、量、戦力ともに効果的な反撃能力を整える。


  六、将来の目標を「ハイテク化、優勢保持」に置き、現代化された高度な防衛力を確立する。

【国防部 2004年12月14日】