台北週報2076号(2002.12.12)
金融改革は不退転の決意で
改革のリスクは政府が軽減に努力
政府は目下、金融改革を鋭意進めようとしている。その一環が旧来からの不良債権を抱えた農会金融部門の改善である。だが農民側はこれによって融資が受けにくくなるとして反発し、11月23日に台北で10万人デモを打った。これに対し陳水扁総統は、農会改善は農民のため旧来の悪弊を除去するためのものであることを強調し、引責辞任を表明した游錫?・行政院長を慰留し、游内閣によって引き続き改革が進められることとなった。
●改革の道に妥協はない
陳水扁総統は十一月二十一日に開催された「二十一世紀民主体制発展国際会議」開幕式に出席し、祝辞のなかで目下内政最大の懸案である改革問題に言及し、「政府は改革推進に断固たる決意をしており、少々の抵抗や反対があったからといって計画を縮小したり変更したりすることは決してない。だがこの決意は、異なる意見には耳を傾けないというものではない」と語った。同時に「改革にリスクはつきものであり、当然陣痛もともなう。こうしたリスクや陣痛は、政府ならびに与党が責任を負うものであり、われわれは断固としてそれを受け入れ、また受け入れなければならない。もしこのときのリスクや犠牲が、ある一定の国民の生計を脅かすなら、われわれは厳粛かつ慎重に、政策を再検討するだろう」と語った。
さらに陳総統は「私が政権を担当して以来、長年にわたる積弊や疾病が一つひとつ明らかになってきた。これらの難題に対し、政府は畏縮もしないし回避もしない。これは選挙民に対する公約でもあり、台湾に対するわれわれの使命感でもある。改革に第二の道はなく、政府の改革に対する決意と意志は、日々堅固になっている」と述べた。また「私の総統就任以来、国内では与野党の対立が深まり、中国の軍事的脅威もますます強まり、産業は初めて市場の全面的開放という強大な圧力を受けるところとなり、加えて国際経済の長期的不況が重なり、これらが国内の改革計画の進捗に重くのしかかり、問題をいっそう複雑なものにしている」と指摘した。
同時に「こうした状況のなかで、時には政府の改革への計画に不足する部分があり、認識が足りなかった部分もあったかもしれない。これらはすべてが政府にとっては反省材料となるものであり、進捗状況を見ながら再検討し、修正を加えなければならない。これは責任ある政府として、当然やらねばならないことであり、それは妥協でも譲歩でもない」と強調した。また「非常な困難のなかに各種の改革は断固として実行しなければならない。なかでも国会改革、行政改革、金融改革、教育改革は政府の最も重要な課題である。この四大改革には常に大きな困難と抵抗に遭遇するだろうが、社会の各界が包容力をもって改革への新たな状況を創出することを望む。分裂と抗争を団結と協調に代え、理性と善意をもって対立に代え、共に国家の改革事業に最大の努力をし、台湾の繁栄と進歩のため互いに協力しあうことを望む」と表明した。
《台北『自由時報』11月22日》
●農漁民が改革反対のデモ
金融改革の一環として、政府は旧来からの放漫経営と乱脈融資によって多額の不良債権を抱えている農会(農協に相当)や漁会(漁協に相当)の金融部門を政府の管理下に置き、全国の農会と漁会の大規模な統廃合を断行し、融資部門を縮小して不良債権を整理する改革政策を打ち出していた。これに対し農漁民側は「融資が厳しくなり生活権が侵害される」として反発し、農漁民の連合組織である「農漁民自救会」の呼びかけにより、農民を中心に漁民も加わった約十万人が十一月二十三日、台北に集まり中正紀念堂から総統府まで約三時間にわたりデモ行進した。デモは「農業圧迫は国を滅ぼす」、「農民万歳」などとシュプレヒコールしながら、終始整然とおこなわれ大きな混乱はなかった。
なお、コースに面した国民党本部ビルでは「農為邦本(農業は国の基本)」との大看板が出され、デモ隊通過のときには、連戦・国民党主席が姿を現してエールを送り、政府批判を繰り返し叫んだ。国民党と親民党も金融改革を叫んでいるが、政府与党による「金融再建基金設置および管理条例部分修正案」などの法案には反対している。
農漁会の融資部門は長期にわたって地方閥による勢力に牛耳られており、一般的にそこから派生する諸問題は軽視できないとされている。今回のデモには与党民進党の執政能力が問われると同時に、野党の国民党と親民党にとっても、本気で金融改革を支持しているのかどうかを問われるものともなったようだ。
《台北『自由時報』11月24日》
●農漁民への手当は必要
今回の農漁民デモに対する見方はさまざまあるが、中華金融業務研究発展協会理事長の任にある張平沼・金鼎証券集団総裁は新聞社のインタビューに応じ、「農会と漁会内部の地方閥問題には相当メチャクチャなものがある。だが、農会と漁会の融資部門による農民や漁民の個人個人に対する貸し付けは確かに福音となっている。かれらの借りる額は十万元、二十万元(約四十万円、八十万円)といったもので、巨額なものではない。もし改革によって融資部門が銀行なみのシステムになれば、かれらは従来の条件で融資を受けられなくなる。かれらが街頭にまで出てきた問題点の所在はここにある。個人的見解だが、違法分子は取り除かねばならないが、農漁民への生活支援は必要だ」と表明した。
来年の景気動向への予測については、張総裁は「景気の予測には難しいものがある。現在はきわめて予測困難であり、来年は今年よりよくなることを願っている」と語るにとどまった。
《台北『経済日報』11月26日》
●金融改革は正確な方向
大規模農漁民デモが発生したことについて、游錫?・行政院長は引責辞任を表明したが、陳水扁総統は慰留につとめ、一部の経済関連閣僚の交替のみで、引き続き游内閣によって各種改革が進められる見通しとなった。これについて方仁恵・国策顧問は十一月二十三日、「政府が積極的に金融改革を進めているのは正確な方向であり、游錫?・行政院長が辞任する必要はなく、陳総統も内閣更迭の必要はないと表明している。ただし農民との意思疎通を強化し、農民の考えを理解してその利益を考慮すべきだ」と述べた。
また方顧問は「今回の農漁民デモの主な原因は、金融改革への啓蒙が不足し、一部政界の中傷に遭ったところにある。陳総統は再三にわたって、金融改革は農漁会を潰そうとするのではなく、これまでに空洞化され体質不良となった融資部門を整頓し、実際に農漁民のためになるよう改善するのが目的であると表明している。陳総統も農家の出身であり、農民と同じ視線に立っている。農民を犠牲にするようなことは決してない」と強調した。
前行政院経済建設委員会主任委員である陳博志・台湾シンクタンク理事長も同日、「農漁会改革は社会全体のコンセンサスを得ており、デモに参加した農漁民も『改革支持』のスローガンを掲げていた。内閣に誤りはなく、細則について若干の異なる意見があるだけだ」と、内閣更迭の必要性がないことを主張した。
《台北『自由時報』11月24日》
●金融改革は断固推進
陳水扁総統は十一月二十四日、高雄で「金融改革を断固推進してこそ農民の利益が守られ、農漁会が競争力を養うことができるのだ。農会の融資部門改革には多くの知恵をいっそう集中し、多数が受け入れられる方途を検討したい」と語った。
さらに「農会融資部門の問題は前政権の残したものであり、だから金融改革が急務となっているのだ。現政権は、古い体質の農会によって農民に苦労をかけることはできない。したがって早急に融資部門の問題を解決し、農漁民の利益を守らなければならないのだ」と強調した。
《台北『中国時報』11月25日》
週間ニュース・フラッシュ
◆医療条例を修正し安楽死を容認
末期患者の安楽死の是非をめぐって台湾でも十数年にわたり論議されてきたが立法院は十一月二十二日、「安寧緩和医療条例」部分修正案を採択した。同修正条例には、末期症状の本人が希望する場合、医師が生命維持装置をはずすことを容認し、安楽死を認めることが明記されている。
《台北『聯合報』11月23日》
◆観光は外貨獲得の重要な無煙産業
陳水扁総統は十一月二十三日、花蓮タロコ渓谷マラソンに参加したあと台東県関山鎮の自転車専用道を視察し、「観光は世界各国が重視している無煙産業であり、就業の機会創出と外貨獲得にも有益である。中央と地方、さらに民間が協力しあって観光産業を盛り上げることを望む」と、台湾観光立国への意欲を示した。
《台湾『青年日報』11月24日》
◆キッド級駆逐艦三年内に引き渡し可能
米国防総省は十一月二十二日、台湾にキッド級駆逐艦四隻と付属の対艦、対空ミサイルの売却を通知した。総額は人員訓練費を含み八億七千五百万ドルである。これによって台湾の立法院が同予算案を承認すれば、三年以内に引き渡しが可能となる。
《台湾『青年日報』11月24日》
◆台湾本土の戦後五十年史「台湾全志」を十年計画で編纂
国史館台湾文献館は来年度より十年計画で台湾本土の戦後五十年史「台湾全志」を編纂することになった。同全志は一九八一年までの記録がまとめられた「台湾省通志」と異なって金門、馬祖を含み、政治、経済、社会、文化のほか、自然環境、軍事も含まれる。
《台北『自由時報』11月24日》
◆日本外務省が課長級以上の国家公務員台湾派遣禁止の内規排除
日本の外務省は十一月二十二日、昭和五十五年に他省庁の職員も拘束するものとして、課長職以上の国家公務員の台湾派遣を禁止する内規を定めたが、台湾との実務関係を考慮し同内規を排除することを固めた。同内規は両国実務関係発展の障害になっていた。
《東京『中央社』11月26日》
◆ベルギー議会が台湾との友好促進
ベルギー上下両院台湾訪問団一行は十一月二十五日、陳水扁総統と会見し、「ベルギー下院は目下、台湾を支持する決議案可決に向かって動いている。台湾が当然あるべき国際的地位を得るよう望んでいる」と表明した。
《台北『自由時報』11月26日》
◆親民党が台北、高雄市長選挙後に「救台湾大連盟」結成
宋楚瑜・親民党主席は十一月二十六日、「十二月七日の台北、高雄市長選挙のあと、『救台湾大連盟』を結成する」と発表した。消息筋によれば、同連盟は次期総統選挙を睨んだ布石と見られ、野党の親民党、国民党の立法委員のほか、与党民進党の施明徳、許信良、張博雅、陳文茜の各立法委員も合流すると言われている。
《台北『中国時報』11月27日》
◆国連加盟にも早急に国家人権委員会開設を
楊黄美幸・外交部研究設計委員会副主任委員は十一月二十六日、台湾には政治保護法もなく人権が完全に擁護されているとは言えないとして、「早急に国家人権委員会を開設し、国際社会で台湾の人権のイメージを高めるべきだ。国連参加にもこの措置は必要である」と語った。
《台北『自由時報』11月27日》
◆陳水扁総統が服部礼次郎・交流協会会長と会見
陳水扁総統は十一月二十七日、日台経済貿易会議のため訪台した服部礼次郎・交流協会会長と会見し、双方の関係強化、景気回復などについて話し合った。
《台北『中国時報』11月28日》
政府は金融改革を断固堅持せよ
台湾再生のため游内閣の奮闘を強く望む
台湾の金融関係の積弊は、すでに大ナタを振るった切開手術が必要なところまできている。財政当局は金融の巣窟を整理整頓するため、一兆五百億元(約四兆二千億円)の金融再建基金を準備しようとしているが、このことからも問題の重大さが分かろう。経済における金融は人体でいえば血液に相当し、その循環が不調ならたちまち万病が発生する。このため陳水扁総統は、再三にわたって金融改革の必要性を強調しているのである。金融改革は現在、政府の最急務の一つであり、それの国家総合経済に与える影響は大きく、外資を台湾の金融市場に呼び込む重要なカギともなるのだ。そこには成功あるのみで失敗は許されない。だが農漁会(農漁協)金融部門の改革は、十一月二十三日の農漁民大規模デモにより大波に見舞われ、行政院長、副院長、財政部長、行政院農業委員会主任委員らの引責辞任表明を招いた。それらがすべて認められれば、まるで出陣はしたが勝利を見る前に討ち死にということになる。
大規模デモは平穏裡に終わったが、与党は冷静に検討し反省する必要がある。このデモは与党に何を啓示していただろうか。与党はこのデモから何を学んだだろうか。デモ隊は先頭に「農業と共に生きる」と大書した横断幕を掲げ、個々の幟には「生存を守り尊厳を守れ」、「改革支持、(農漁会の)消滅反対」等のスローガンが書き込まれていた。このことから農漁民は金融改革に反対しているのではなく、手段に反対していることが見て取れよう。かれらをデモに駆り立てた根本原因は、WTO加盟による農業への衝撃、農産品価格の下落、農家収入の減少であった。加えて世界景気は低迷し、国内産業が中国に移出して失業率は上がり、農家の非農業による収入も減少した。そこに農漁会の融資部門の整理が導火線となったのである。
陳総統も游院長も農家の出であり、農漁会金融改革の目的は、国家総合経済発展のため、農漁会金融部門の信用を回復し、多数農漁民への金融を容易にするためであることは疑いない。だが、改革の推進には念入りな検討と周到な準備が必要だ。もし改革の目的が、農漁会金融部門の貸付が一部の地方勢力に牛耳られるのを防ぎ、一般の農漁民への貸付が阻害されるのを防ぐためであることが明確であったなら、大多数の農漁民の支持を得ていただろう。二年余り前、選挙民が民進党政権を選択したのは、民進党による改革を望んだからである。ここでもし改革が鈍化するなら、支持者の失望を呼び、台湾はますます沈滞するだろう。われわれは改革の大事業が中途半端に終わることを望まない。今回の大規模デモによって游内閣が下野する必要はなく、大多数の民意も游内閣の改革継続を支持しているのである。
改革とは当然リスクが発生し、既得権益者の反発や抵抗を招くものである。このため改革には理想と正当な目的のほかに、周到な準備と的確な推進が必要である。それでこそ成功もするのだ。慎重な計画のあとに行動を起こすことが必要なのだ。今回の金融改革には政府・与党内にも雑音が多く、合意が得られていなかった。この状況で外部との協調がうまく行かなかったとしても不思議はない。かつての国民党の執政を見てみよう。党首脳部のやり方が民意と乖離していたとしても、その政策決定の構造には見るべきものがあった。国民党の政策は総統府、行政院、あるいは党のいずれが提出したものであっても、中央常務委員会を通過すれば立法院党団はその政策を支持し、行政院の大きな後ろ盾となり、内部に雑音や異論の発生することはなかった。中央常務委員会がコンセンサス形成の場となっていたのである。現在の与党・民進党も早急に党内意見集約の場を設け、政策執行の前に十分な検討を重ね、ひとたび政策を決定したなら各自が個々の理念や主張を展開しないことである。内部の理念や主張に不一致があれば、その執行に齟齬を来し改革は失敗に終わるだろう。今回のデモから、与党はこの点を学ぶべきである。
(文=王塗発・台北大学経済学科教授)
《台北『自由時報』11月26日》
新財政部長に林全氏が決定
行政院農業委員会主任委員には李金龍氏
政府が推進する金融改革に農民と漁民が強く反対し、十一月二十三日台北で大規模なデモがおこなわれ、その混乱の責任をとる形で李庸三・財政部長と范振宗・行政院農業委員会主任委員が引責辞任した。後任人事をめぐって調整が続けられていたが、游錫?・行政院長は同二十七日、新財政部長に林全・行政院主計長を、農業委員会主委には李金龍・動植物防疫検疫局長をそれぞれ任命したと発表した。これにともない、空席となった主計長のポストは当面は劉三錡・主計処副主計長が代理を務め、動植物防疫検疫局長については李金龍氏の就任後、自身で決定することになっている。
今回の人事異動について、連日各界とメディアから高い関心が注がれていたことについて游行政院長は、「まるで一日が一年のように感じた」と語り、速やかに人事を決定できたことに安堵を浮かべた。さらに、人選については連日陳水扁総統に合って協議し、人事決定の過程を逐一報告していたことを明らかにした。
●林全・新財政部長「五年ないし十年で財政収支を安定させる」
財政部長に任命された林全氏は同日、「今後『安定の中に進歩を求める』を原則に施政を進め、財政部の業務も改革もすべて、金融、保険、証券においても廃止の方向に片寄ることのないよう、各方面に考慮しておこない、政策推進にも市場への打撃を避けなければならない」と語った。さらに「五年から十年以内に政府の財政収支のバランスをとることは経済発展諮問委員会のコンセンサスであり、かならずこれを達成したい」と強調した。
また、以前みずから証券取引所得税の復活を提案したことについては「これは理想であり長期的目標でもあるが、すぐにやらなければならないというものではない。どの政策にも執行には優先順位があり、また税制を変更する際は市場への打撃を避けるよう考慮しなければならない。 今後正式に財政部長に就任後、各界および財政部の同僚の意見も踏まえ、税制について具体的な見解を述べたい」と語った。
【林全氏プロフィール】
一九五一年 江蘇省江陰県生まれ
(学歴)輔仁大学経済学部卒業、政治大学財政研究所修士、米イリノイ大学経済学博士
(経歴)政治大学財政学部・財政研究所教授、台北市財政局長、政治大学財政研究所長、現職は行政院主計長
●李金龍・農業委員会主任委員「農民、漁民との対話を増やしたい」
行政院農業委員会主任委員に任命された李金龍氏は同日、「プレッシャーだが、危機は転機でもある」といまの心境を語った。さらに、近日中に開催予定の全国農業金融会議について「オープンな姿勢で各界の意見を伺い、会議の結論を確実に実行すると同時に、農会・漁会を掛け橋とし、両会を通して農・漁民との対話を増やしたい」と述べた。
また「游行政院長から人事の打診があってから三十分ほど考えて引き受けることを決意した。農業に対する関心と興味に加え、游院長に励まされて結論を出した。私が游院長と同郷の宜蘭出身だということと今回の人事は関係ない」と強調した。
【李金龍氏プロフィール】
一九四七年 宜蘭生まれ
(学歴)中興大学園芸学科卒、独ハノーバー大学園芸学修士・博士
(経歴)行政院農業委員会技士、同委員会輔導処長などを経て、現職は同委員会動植物防疫検疫局長。
《台北『自由時報』11月28日》
ニュース
ライオンズクラブ台湾正名
「中華」を廃し「台湾」使用
台湾正名(台湾の名を正す)運動が進むなか、国際ライオンズクラブの名称問題が円満に解決した。沈竹雄・国際ライオンズクラブ中華民国総会理事長は十一月二十五日、福島(Kay K.Fukushima)国際ライオンズクラブ総会長と協議の結果、すでに双方が協定書に調印し、国際ライオンズクラブにおけるわが国総会の正式名称を『三百複合区台湾(MD300,TAIWAN)』とすることに決定した」と発表した。
台湾の国際ライオンズクラブにおける名称については、昨年中国が政治的干渉をし、「中国」の名を使用せよと圧力をかけてきた。このため台湾のクラブメンバー六百人が今年七月に年次総会が開催された大阪で平和的なデモ活動を行うなど、中国へ抗議するとともに台湾正名運動を展開した。台湾のライオンズクラブは三百支部三万五千人のメンバーを擁し、国際総会への年間納入基金も百万ドルに及んでいる。
《台北『自由時報』11月26日》
日台経済会議レベルアップ
両国関係の実情に一歩近づく
台湾の亜東関係協会と日本の交流協会の主導により、台北で十一月二十七日、第二十七回日台経済貿易会議が開催され、台湾から許水徳・亜東関係協会会長以下七十余名、日本からは服部礼次郎・交流協会会長以下三十八名が参加した。これまで日本側からの公務員の参加は外務省の規制により課長クラスまでであったが、今回は経済産業省通商政策局審議官が出席し、同会議のレベルが両国関係の現状に基づき、ようやく一段アップした。許会長は祝辞のなかで「今回の会議では、日本側からの協議項目の提案がはじめて台湾側を上回った。別の角度から見ても、日本政府と各企業はますます台湾を重視するようになってきた」と述べ、服部会長は「双方の相互補完関係はますますレベルアップする趨勢にある」と語った。同会議ではWTO問題、農業問題、技術協力、知的財産権問題などが二日間にわたって話し合われた。
《台北『中央社』11月28日》
日本で高まる台湾重視の声
21世紀日本外交の基本戦略
小泉首相の私的懇談会「対外関係タスクフォース」(座長・岡本行夫内閣参与)は十一月二十八日に「二十一世紀日本外交の基本戦略」と題した報告書を首相に提出した。台湾海峡両岸問題について同報告書は「日本は一九七二年に中国との国交を回復し、中台関係については『日中共同声明』の枠組みによって対処してきたが、この三十年で台湾は大陸反攻のスローガンを降ろし、民主化を達成し、APECとWTOにも加盟した。中台関係にも変化があり、日台関係も一定の変化をするのは自然の趨勢である。交流協会は三十年の経験を総括し、日台関係強化の研究をする必要がある」と強調している。さらに経済については、東アジア経済統合を理想とし、拡大する中国の影響力との間にバランスを保つため、ASEAN、韓国、台湾との自由貿易協定(FTA)締結を核としてそれらとの協力関係を強化すべきだとしている。
《東京『中央社』11月28日》
駐外代表処の改名まだ困難
台北代表処から台湾代表処
簡又新・外交部長は十一月二十八日、立法院外交委員会において親民党委員の「最近海外の独立派と国内の一部政党が台湾正名運動を展開し、外交部に駐外機関の『台北経済文化代表処』の名称を『台湾代表処』に改名するよう要求しているが、現段階でその可能性はあるのか」との質問に対し、「『台北経済文化代表処』を『台湾代表処』に改名するのは実際上いくらかの困難をともなう。なぜなら、この名称の変更は台湾側が一方的に決められるものではなく、わが国外交部と相手国との十分な協議が必要であり、それによってはじめて決定されるべきものだからだ」と答弁した。
同時に「『台湾』への改名ができれば、その効能は大きい。made in Taiwan を考えれば、それは明白だ。外国人が台湾を認識するのにも非常に便利だ。しかし、改名には別の事情がともなう。それはきわめて高度な政治的な問題だ」と語った。
《台北『中国時報』11月29日》
奇妙な中国のミサイル撤去条件
『青年日報』(11月25日)
程建人・駐米代表は十一月二十一日、立法院で、江沢民・中国国家主席が十月の訪米時に、ブッシュ大統領に対し「米国が台湾への武器売却を減らせば、台湾海峡のミサイル配備を凍結または撤去する」と自ら提案していたことを証言した。程代表は「この件について首脳会議ではそれ以上の討論には及ばなかった」と指摘しているが、江沢民の発言が本当に誠意あるものだとすれば、国際社会に対し堂々とミサイルの無条件撤去を宣言し、世界および地域の認証を得るべきであろう。なぜなら地域の安全を脅かす殺傷兵器の撤去には、本来いかなる条件もつけられるべきではないからだ。中国がミサイルを撤去すれば、地域の平和と安定に寄与するだけでなく、両岸関係の発展に大きなプラスとなることは確かだが、中国はこれをいわゆる密室取引によって交渉すべきではなく、まして交換条件など出すのは筋違いというものだ。
事実、江沢民の発言は、米国の台湾に対する武器売却をけん制するための一時的ポーズに過ぎず、真の目的は米国の顔色と政策を伺うことだと思われる。米国の台湾向け武器売却を阻止することは、一貫して中国の対米外交の要であった。昨年以来、米中間の外交、軍事交流において、銭其?、胡錦涛、江沢民の訪米に至るまで、中国は毎回「『台湾問題』は米中間の最も敏感な「核心問題」である」と強調してきた。この『核心問題』こそ、「米国の台湾向け武器売却に反対し、台湾を軍事的に孤立させ、国際社会から抹殺する」ことにほかならないのである。
幸い、中国のこうした横暴な策略が、国際社会や米国に受け入れられる可能性は極めて少ない。なぜなら、台湾への武器売却は「台湾関係法」およびレーガン元大統領の「六つの保証」に基づく米国の主権行為であり、これは決して中国の干渉に左右されるものではないからだ。また中国は台湾への武器売却に関し、常々米国に不満を表し「内政干渉」だと批判している一方で、年々軍備を拡張し、各国から高性能武器を購入し、その予算は二年続けて世界第二位である。さらに近年は東南沿海部での軍備を強化し、幾度となく軍事演習をおこない、地域と国際社会の強い懸念を引き起こしている。そのような国が他国の武器購入に干渉する資格などないことは、誰の眼から見ても明らかである。
台湾に照準を合わせた中国のミサイルは、台湾のみならず地域全体の安全を脅かすものであり、すでに各国の批判が高まりつつある。日本や米国の国防白書には中国の軍事的脅威が指摘され、欧州議会ではそのミサイル撤去が絶対多数で可決された。こうした状況のなかで、中国が一時的ポーズでミサイル撤去を宣言しても、その横暴さを浮き彫りにする以外に何の効果もないということだ。
われわれは、中国が東南沿海部からのミサイル撤去によって誠意を示すことを否定はしない。しかしミサイル撤去要求は無条件で宣言され、武力による両岸関係の解決自体が放棄されねばならない。偽りの誠意を装い、米国の台湾向け武器売却を妨害するような手段は取るべきではない。中国は両岸の現実と平和を希求する国際社会の流れを直視し、平和平等の精神に則り、真摯な態度で両岸交渉を促進すべきであり、両岸人民の福祉とアジア太平洋地域の平和と安定のため、両岸関係の健全な発展を阻む諸問題を一日も早く解決しなければならないのだ。
三通が呼ぶ波紋を常に警戒せよ
『自由時報』(11月27日)
行政院大陸委員会と海峡交流基金会はこのほど、中国に進出している企業代表を多数招聘して座談会を開き、来年旧正月に帰国する際のチャーター便運行について同意に達した。この決定は、従来の大陸委員会の方針より小三通のルートをさらに一歩広げることとなった。小三通を利用しての往来は、これまで福建省の台湾企業に限られていたが、政府はさらに門戸を開き、すべての台湾企業に上海からのチャーター便または厦門から小三通経由での帰国を認めようとしている。こうなれば、小三通は実質的にその実施範囲を拡大することになる。
法務部の「金門、馬祖小三通年度専案調査報告」ではさきごろ、小三通開放後、中国の不法入国者や台湾の指名手配中の者などが金門と馬祖で起こした犯罪案件は、小三通開放前の二・八倍にまで膨れ上がり、台湾の治安に大きな影響を与えている事実をようやく指摘した。法務部では近くこの報告を大陸委員会に提出する予定だが、これは金門と馬祖の小三通を今後も継続するか否かの判断材料となり、また政府の三通開放政策に対する重要な参考資料となるだろう。法務部の調査報告は、いかなる角度から見ても、小三通拡大にはさらに慎重に取り組む必要があることを示すものである。
すべての台湾企業に対し小三通ルートでの帰国を許す今回の決定は、現在の試験的小三通ルートを強行に拡大することであり、いささか無防備と言わざるを得ない。現行の小三通実施方案では、経済部で登録した福建省の台湾企業に限り小三通を利用できると定められている。台湾企業のなかには正規の登録を拒む者もあり、正確な投資状況が把握できず、台湾経済のブラックホールとなっており、産業と資本の空洞化を招いている。それにも関わらず進出企業にだけこうした特例を認めることは、まじめに納税している国内企業や一般国民の疑問を招くであろう。なしくずしに小三通拡大を認めれば、やがては中国側から同等の要求が出される恐れがある。さらにこうした傾向が続き、三通の範囲が無限に広がれば、中国に「トロイの木馬」を上演させることになりかねない。チャーター便と小三通の開放は、表面的には台湾企業の便宜のためだが、実際には中国の直行便開放戦略につながるのである。政府はこうした危険を直視した上で、両岸往来ルートの拡大に関して国防、経済への影響を十分に考慮し、慎重に対処すべきである。
法務部と国防部は小三通、大三通に対し懸念を表明しており、大陸委員会の民意調査や政策分析からも、中国の台湾政策は敵意に満ちていることが見てとれる。こうした評価にも関わらず、大陸委員会は依然方針を変えず、台湾企業が上海からのチャーター便または厦門からの小三通ルートで台湾に帰国することを許そうとしている。
国内でさきごろ発生した十一万人の農民によるデモ行進は、政府省庁間のコミュニケーション不足がその主な原因であったが、政府は対中国経済貿易政策を考える時、国家および経済の安全を熟慮する必要がある。
現在、労働者が失業の脅威に晒され、農、漁業界が危機に直面している原因は、国内の産業不振と経済衰退であり、台湾企業の中国進出に伴う経済資金の流出によるものだ。この悪循環を突破できない限り、台湾経済の未来は楽観できないと言えよう。ここ一年、政府は経済振興に向けて新たな政策に取り組んでいるが、その効果はまだ出ておらず、反面、両岸関係促進を主張する潮流に流されつつある。台湾の産業経済を根本から救うためには、「三通だけが台湾を救う」という手法に頼らず、その弊害を見極めることが肝要なのである。
九年一貫教育は今後も継続
入試の多元化は今後も推進、英語教育の地域格差を是正
黄栄村・教育部長は十一月二十五日『青年日報』のインタビューに応え、現在多くの問題が指摘されている小中学校の九年一貫カリキュラムと小学校の英語教育のあり方などについて語った。このなかで黄教育部長は「教育改革は今後も継続推進し、九年一貫カリキュラムも改めるべき点は改めるが、決して中止しない」と明言した。さらに「大学や高等職業学校の増設、教育基本法の制定などを含む教育改革の目標は徐々に実現しており、高校入試の多元化も徐々に完成しつつある。九年一貫カリキュラムについては一部に技術的な問題があり改善しなければならないが、それらは教育改革の達成に問題とならない。つまり、それらの問題は実施後に発生した技術的問題であり、今後も勇気をもって改革を継続推進するため、教育部は決してこれらの問題をおろそかにはしない」と強調した。
また「教育は持続的で長期にわたる作業であり、明確な方向と積極的な行為をもって推進しなければならない。一九九四年四月十日に教育改革を求める大規模なデモが行われて以来、政府はそれら改革の主張に耳を傾け、教育改革審議委員会を設置するとともに、教育改革検討報告書を提出した。その後、林清江・前教育部長の時代にはさらに十二項目にわたる教育改革行動案を提出し、それらの改革案の多くはすでに実現している。九年一貫カリキュラムの実施には二年間の試行期間があったが、現在の多くの問題は実施して初めてわかったものだ」と述べた。さらに「カリキュラムの配置、英語教育開始学年の引き下げなども、その多くが技術的な問題であり、教育部はこれらの問題についてすでに積極的に見直しを行うと同時に、必要な措置をまとめている。今後これらの問題が一つずつ解決されれば、九年一貫カリキュラムの実施もきっとうまくいくと信じている。
なかにはこれを中止すべきだと主張する人もあるが、いま中止したら生徒にとって不公平だ。現在は教育改革の過渡期であり、問題の発生は避けられない。しかし、改革に対し教育部は単に火消し、もしくは補強の役割に甘んずることなく、改革推進を通じて、過去から続いた構造的な教育問題を調整し、これがうまくなされれば九年一貫カリキュラムの実施もスムーズにいくと思う」と強調した。
また「この八年間、台湾の教育は確実に大きく進歩した。高等教育を例にとると、以前は五十数校しかなかった大学が、現在は百六十数校に増え、大学進学率も二〇%から四三%に上昇し、すでにOECD加盟国のトップレベルを上回る水準にある。また、台湾の学生がここ数年、世界の各種コンテストで優秀な成績を挙げていることも、国内の教育が確実に進歩していることを証明している」と述べた。
台湾の教育の未来については「三年以内に高等教育の中身を九年一貫カリキュラムからスムーズに移行できるよう調整するとともに、高等職業学校の地域化を拡大し、十二年義務教育の基礎を確立したい。また、英語教育と情報教育における地域格差是正に今後も取り組んでいく。教師の退職と補充、および少人数クラスなどの構造的な問題についてもかならず解決策を見い出す。しかし、これらの政策にあわただしく取り組むべきではない。政策の多くはまだ協議段階にあり、来年には具体的な計画を提出できるだろう」と語った。以下は、インタビューでの一問一答である。
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問:英語教育の開始時期が小学三年生に引き下げられる。あなたは生徒の父母や学校に対し、英語教育の開始時期を無制限に引き下げないよう呼びかけてきたが、多くの自治体では一年生から、また一部では幼稚園から開始しているところもある。このため、生徒の英語力に差が出てきているのが現状だが、教育部はこれにどう対応していくか。
答:教育部の政策は小学校の英語教育は一、二年生では不必要で三年生から開始し、これを二〇〇五年度から軌道に乗せたいと考えている。もし英語教育を重視しすぎて、もともと優先されるべき国語がおろそかになれば本末転倒であり、両者の位置付けを明確にする必要がある。英語教師の育成については、各大学が試験などによって、または日本のように外国から英語力と資格条件に合った人材を招聘する方法も考えられる。予備校で短期間で養成された英語教師の資質については教育部の管轄範囲ではなく、労働委員会の管轄となる。小学校の英語教師となるには教師の資格がなければなれない。
問:九年一貫カリキュラムを今後も推進することには反対の意見もある。郭為藩・元教育部長は「しばらく実施を見合わせるよう」主張しており、生徒の父母からも多数問い合わせがきている。黄部長はあくまで実施を堅持する考えか。
答:九年一貫カリキュラムの実施は中止しない。これは政策の問題であり、教育は連続性をもつものだ。実施から二年目の今年は小学一、二、四年生と中学一年生が新しいカリキュラムのもとで勉強することになる。もしこれを見合わせれば、児童らの授業内容に空白が生まれる。今年問題が多く指摘されたのは、教師が新しいカリキュラムでの授業に適応しなければならなかったためだ。
九年一貫カリキュラムについていま多くの問題が出ている原因を、私は別の科目に吸収統合された部分だと考えている。現在問題の指摘されているのは、芸術と人文、社会科などの科目の統合と全体の授業との兼ね合いだ。正直なところ、私は現在の教科書は以前よりよく編集されていると考えており、親はあまり心配しなくてよいのではと思う。しかし、台湾の主流の価値は公平さと正義を強調すること、そして親は子供にスタート地点で出遅れないようにさせているという二点にある。これら価値観の問題がこじれると、永遠に解決できなくなってしまう。実際には教師が授業を行っているのだから、親は教師を信頼し、過度に干渉しないようにすべきだ。しかし、台湾の教育はもしかしたら親が熱心に教育に参画し、こうした価値観があるからこそ、台湾の学生全体の資質が世界のその他の国々よりバランスがとれているのかもしれない。国民全体が広く教育問題に関心を持っていることを考えれば、完全に解決する必要はないのかもしれない。
《台北『青年日報』11月26日》
●小学三年生からの英語教育を二〇〇五年度から実施
黄栄村・教育部長は十一月二十一日、全国の小学校での英語教育開始学年を三年生からとし、二〇〇五年度から全面的に実施すると発表した。
教育部の統計によると、全国二十五の県と市のなかで、現在九年一貫カリキュラム実施要項に基づき五年生から英語教育を開始しているのは宜蘭県など十の県市だけで、残りの十五の自治体では四年生以下で実施しており、なかでも台北市など八つの県市では一年生から実施している。小学校の英語教育については、開始時期の不統一により生徒間の英語力の格差を生み出し、また英語教育の環境が整っている都市とそうでない地方との格差の問題も指摘されている。黄教育部長は近く「英語教育推進委員会」を発足させ、英語教育の全体計画を策定するとともに、九年一貫カリキュラムの実施要項を見直す考えを明らかにした。
英語教育開始学年の引き下げで問題となるのが英語教師の確保だ。黄教育部長は今後再度全国で小学校英語教師検定試験を開催し、少なくとも三千五百人の合格者をプールし、各県市にそれぞれ派遣する形をとり、これにより僻地へも十分に教師を配置でき、都市と地方との格差を是正できるとしている。
また、教育部では欧米やオーストラリアなど英語圏の国立大学や学術機関に対し、英語教師の資格をもつ人材を派遣してもらうことで協議を進めており、また国内では労働委員会と協調し「就業サービス法」の改正作業を進め、外国籍の教師が公立の小中学校で教える法的根拠を整備することにしている。できれば実施予定より一年早い二〇〇四年度には、全国の約二千六百の小学校と約七百の中学校で、一校あたり外国籍の教師を一人ずつ配置したい考えだ。
●基礎英単語一千語を公表
また教育部は中学校で生徒が学習すべき基礎英単語一千語を年内に公表し、高校受験の基礎学力試験問題の根拠とすることにしている。
《台北『青年日報』11月22日》
「タロコマラソン」に一万二千人参加
陳総統も参加、渓谷の大自然をバックにランナー快走
花蓮のタロコ渓谷で十一月二十三日、「第三回タロコ渓谷国際マラソン」が開催された。世界唯一の渓谷マラソンとして知られ、五キロコースに六千人余り、ハーフマラソンとフルマラソンには外国人選手百五人を含む約五千七百人が出場し、合計約一万二千人が大会に参加した。今年は政府の「観光客倍増計画」の後押しと、中華汽車のスポンサー協力のもと積極的なPRが奏功し、前年の出場者三千五百人を大幅に上回る大規模な大会となった。
前日の夜半過ぎに降った雨が大理石でできた岩肌を洗い流し、樹木の緑がひときわ冴えわたる渓谷の大自然をバックに午前七時、陳水扁総統が放ったピストル音を合図に、選手が一斉にスタートした。陳総統はこのあと、林信義・行政院副院長、陳哲男・総統府秘書長、林徳福・行政院体育院会主任委員らを伴い、みずからも一・五キロを快走し、タロコ渓谷の自然を満喫した。
フルマラソン男子の第一位は台湾の呉文騫選手で、タイムは二時間二十三分九秒、初出場で大会新記録をマークした。また、同女子の第一位は日本の市川美歩選手で、タイムは二時間四十八分二十九秒、こちらも大会新記録を達成した。日本国内と米国の大会にもたびたび参加している市川選手は「こんなに美しいコースは初めてで、まるで絵の中を走っているようだった。熱い沿道の声援にとても励まされた。来年もぜひ参加したい」と喜びを語った。なお、前回第一位でゴールした日本の能登晴美選手は第三位だった。
また、親善大使としてフルマラソンに参加したタレントの間寛平さんは、阪神淡路大震災直後、悲しみを力に代えようと呼びかけ、神戸から東京までの六百五十キロを走った経験に基づき、「タロコマラソンでも台湾の人々の力の結集を実感した。親善大使として、今後もタロコマラソンを積極的にPRしたい」と感想を語った。
大会の模様は間さんのレポートで近く日本のメディアでも紹介されるほか、世界最大のドキュメンタリーチャンネル「Discovery」も大会の全記録とタロコ渓谷の美しい大自然の模様を、来年四月以降アジア地域で放送する予定だという。
マラソン協会の陳華恒・秘書長は「参加者が前年より一気に三倍も増えたことは喜ばしい反面、責任はさらに重くなった。今年の成功で来年はさらに多くの参加者が見込まれる。増え過ぎると大会の進行などに支障が出る可能性もあり、いかに両者のバランスをとっていくかが今後の課題だ」と語った。
《花蓮『民生報』11月24日》
十月の出入国二ケタ成長
十月の台湾から海外への旅行者、および海外から台湾への旅行者数は前年同月より、ともに二ケタの増加となった。これは、おもに昨年九月の米同時多発テロ事件直後にあって旅行者が激減したためで、今年一~十月の総計では台湾から海外への旅行者が前年同期より四・二九%増加し、海外から台湾への旅行者の減少幅は同四・八八%に抑えられた。
十月の海外への旅行者数は約六十三万八千人で、前年同期を一六%上回った。旅行先のトップは香港で約二十三万八千人、次いでマカオの約十一万七千人と続き、日本は三位で約七万一千人だった。一~十月の総計は約六百四十四万七千人で、このうち日本への旅行者数は約六十八万六千人だった。
一方、海外から台湾への旅行者は十月が約二十一万九千人で、前年同月を一三・八八%上回った。とくに日本の旅行者が約八万七千人と同三一・五八%も増加し、十月の単月では過去最高となった。このうち旅行の目的別では、観光が三五・三六%、業務が一九・九九%それぞれ増加した。なお、最近は女性の旅行者が増える傾向にあり、三三・九八%を占めている。一~十月の総計は約二百十万八千人で、前年同期より四・八八%減少し、このうち日本からは同約七十九万八千人で、前年同期を四・〇七%下回った。台湾は今年、日本からの観光客百万人突破に向けて積極的にキャンペーンを展開しているが、米同時多発テロ事件の影響で予想よりも旅行者数が伸びず、年内の百万人突破は難しいと見られる。
《台北『民生報』11月19日》
来来台湾
「台南市観光パスポート」が発行
台南市は、市内観光名所の入場券、ホテル宿泊代、飛行機代、食事代などが無料、または割り引きになる「観光パスポート」を発行した。
一枚九百九十九元(約四千円)で販売されており、このパスポートで喜悦飯店または玉麒麟飯店での無料宿泊と五カ所の観光地(赤?楼、延平郡王祠、安平古堡、億載金城、徳記洋行)の観光、筏下りとバードウォッチングを楽しめるほか、グルメ百元(約四百円)クーポン券、カラオケボックスクーポン券、テレホンカード、飛行機代千六百元(約六千四百円)分の割り引き、さらに旅行保険もついて、総額約四千元(一万六千円)相当の内容となっている。有効期限は一年間で、全国のレンタカーサービス所で販売しているほか、インターネットの「奇摩旅遊網」「MSN旅遊網」「易遊網」などのホームページ上でも予約購入できる。
《台北『民生報』11月22日》
「第十回台北国際旅行展」開催
第十回台北国際旅行展が十月二十三日~二十六日まで、台北世界貿易センターで開催された。今年は世界五十一の国と地域が参加し、五百二十四個のブースが設けられ、期間中、約八万五千人の入場者があり、過去最多を記録した。
出展数の最も多かった日本は六十一個のブースを使い「Excitement Japan」をテーマに積極的にPRを展開した。ブース内に桜や紅葉、雪景色などのポスターを配し日本の四季の美しさを演出、各地の物産品も展示され、連日多くの人で賑わった。とくに東北地方の人気が高く、温泉を組み込んだ各種ツアーに人気が集まった。
一方、台湾は今年不景気を反映し、出展した観光業者の数は少数だった。ホテル業界はこぞって大幅な割引宿泊券を打ち出し、多くの顧客を引き付けた。例年なら各地方自治体、民間も単独で出展するところを、今年は共同出展するケースが目立った。とくに花蓮県と台東県が共同で出展した「花東館」では、先住民の歌と踊りで会場を盛り上げ、ホエールウォッチングや温泉などに人気が集まった。また、ブースの一角には花蓮の特産品である餅の実演と試食コーナーが設けられ、販売も行われた。
このほか、台北市は市内観光地の入場料やレストランでの食事代が割引になる観光パスポートを打ち出した。一千元(約四千円)相当の内容で、一枚九十九元(約四百円)で市内のコンビニなどで販売されている。
《台北『民生報』11月26日》
知本温泉がリニューアル
台東の温泉地として有名な知本温泉の老爺酒店が、創立十周年を記念してこのほど大規模なリニューアルをおこない、新たなスパ施設を設けたほか、宿泊客だけでなく日帰り客への温泉サービスを始めた。
リニューアルは約五千万元(約二億円)かけて四百坪の敷地に大型の天幕をかけ、そのなかに二十七種類ものスパ施設を設けた。それらは滑り台やジャンプなどの嗜好性風呂、ハーブ風呂、バブルジェット風呂、瞑想室のある風呂などさまざまで、浴槽の材質も身体によいとされる麦飯石のほか大理石など、四種類あるという。
老爺飯店はこれまで落ち着いたイメージを重視してきたが、十周年を機に施設の機能性と開放性を強化し、宿泊客以外でも気軽に利用できるようにした。
《台北『民生報』11月20日》
「日本の心、台湾の心写真展」開催
百年にわたる台湾と日本の関わり
十一月十九日~二十四日まで、東京の銀座ロイヤルサロンで「日本の心・台湾の心写真展in東京銀座」が開催され、約一世紀にわたる台湾と日本の関わりを映し出した写真百四十点が展示された。今回の催しは日華文化協会の主催であり、台北駐日経済文化代表処をはじめ、(財)交流協会、亜東関係協会、(財)中日文教基金会、東京国際大学付属日本語学校、産経新聞社、日本アジア航空 の後援によって開催された。
十一月十八日には、一般公開に先立ち、同会場にてオープニングセレモニーがおこなわれた。台北駐日経済文化代表処の羅福全代表は挨拶のなかで「最近、一世紀にわたる台湾と日本の関係を常々認識させられている。展示された写真を拝見し、この百年は長いようで短かったと感じた。特に高雄、台南など台湾南部の駅の写真が多く残っており感慨深かった。今後もこの台日関係を次世代に繋げていきたい。写真展の主催者側のご尽力に謝意を表すとともに、この歴史を決して忘れてはならないと強く認識している」と語った。また日華文化協会の栗林会長は「今回の写真展開催には、日華議員懇談会の亀井先生をはじめ多くの方々のご協力を頂き謝意を表したい。本写真展は日華文化協会設立三十周年の記念行事であり、百年にわたる台日の歴史を、数千枚のなかから選ばれた貴重な写真を通して振り返る企画である。また、同じ場所を写した今と昔の写真を展示し、時代の変化を感じられるよう工夫した。この写真展を通して互いの理解をより深め、心の絆が強められれば嬉しい」と述べた。
写真展では、一九二〇年代~現代にわたるさまざまな写真が展示された。写真の比率から見ると、台湾で写された日本統治時代の写真が多く、台湾と日本の関わりを知る上で貴重なものが数多く見られた。特に多かったのは旧総督府、駅、病院、学校などの建築を写した写真で、日本統治時代当時の写真と、別の用途で使用されている現在の写真とが上下に並べて対比され、その変化に興味を惹かれた。また旧台湾製糖や台北製茶試験場、北投温泉公共浴場などの写真も展示された。一方、弁髪で日本語の授業を受ける学生たち、農家で作業する当時の纏足した女性や校庭でラジオ体操する児童など、往年の人々の暮らしを写した写真も印象的だった。一九二〇年代の基隆の町には、浅田飴の看板や和服姿の婦人も写っており、台日の文化の結びつきが色濃く感じられた。一方、日本での写真には、東京銀座の今と昔の写真をはじめ、今年五月に台北で初のプロ野球公式戦を開催したダイエー王監督の写真も展示されていた。
展示会の開催期間中は毎日百人以上の参観者が訪れ、台湾と日本の百年に思いを馳せた。なかには台湾での古い写真に「自分が写っていた」と名乗り出る人もいたという。
今回展示された写真には芸術作品としてもレベルの高いものが多く、日華文化協会では今後写真集の発行も検討しているとのことで、実現が楽しみである。
(取材:本誌編集部・葛西)
数字で見る台湾
台湾の個人資産が四小龍のトップに
シティバンクが十一月十三日に発表した「二〇〇二シティバンクアジア資産大調査」の結果報告によると、二〇〇〇年末~二〇〇一年末の台湾国民の個人資産合計は七千八百三十億元(約三兆一千億円)で、「アジア四小龍」の第一位となった。
報告によると、世界経済が低迷するなか、アジアの個人資産は増加傾向にあり、台湾家庭の個人資産成長率は、二〇〇一年では前年同期比で五ポイント増であり、「アジア四小龍」の個人資産成長率平均を上回った。四小龍での成長率の順位は、トップが韓国で八・九ポイント増、二位が台湾、三位がシンガポールで〇・七ポイント増、香港はマイナス四・六ポイントの大幅減で最下位となった。米国の個人資産成長率は同期比でマイナス七・七ポイントである。シティバンクでは「台湾の一般家庭七百万戸のうち、二百九十万戸が投資可能資産一万ドル以上の個人資産を持っており、個人資産成長率の増加はこうした個人富裕層によるところが大きい」と分析している。
《台北『聯合報』11月14日》
台湾の論文発表数は世界第十七位
行政院主計処はこのほど、昨二〇〇一年にSCI(科学技術分野の主要な学術雑誌に掲載された論文のデータベース)に登録された台湾の論文は一万六百三十五本で、前年同期比で千四百十一本増加し、世界第十七位となったことを発表した。この結果について主計処では「研究発表は産業向上の主な原動力であり、論文の増加は研究成果の向上を顕著に表している」とコメントしている。同処によれば、昨年SCI登録論文の数が最も多かったのは米国で二十五万百二十八本、二位が日本の七万五百七十四本、三位がイギリスの六万七千八百十三本で、中国は八位となった。この他、台湾のEI(工事分野の論文データベース)への登録数も年々増えており、二〇〇〇年の統計では前年比百八十八本増の四千八百七十八本で、世界第十位となった。
また二〇〇一年における米国の特許取得件数では、台湾は六千五百四十五件、米国、日本、ドイツに続く世界第四位となった。
《台北『青年日報』11月4日》
台湾の行政の電子化は世界一位
米国のブラウン大学がさきごろ発表した「二〇〇二年世界電子政府調査報告」で、台湾の電子政府ネットワークサービスが全世界百十八カ国のうち第一位となったことがわかった。この調査はブラウン大学が二年に一度、世界各国の政府を対象に、ウエブサイトの充実や、Eメールによる質疑応答システムなど、ネットサービスの内容と機能を評価するものである。調査対象となるのは総統府、行政院、立法機関、内閣省庁など国の行政決済機構や医療、税務、交通運輸、旅行関係機関のウエブサイトだ。今回、台湾の総合得点は七十二・五点で、二位以下の韓国六十四点、カナダ六十一・一点、米国六十・一点を大きく上回り、去年の二位から堂々のトップを獲得した。昨年一位の米国は今年四位となった。
《台北『民生報』10月31日》
若者の一八・五%が「月光族」
星報が発表した最新の報告によると、若者の一八・五%が月々の収入を月末までに使いきってしまう「月光族」であり、五人に一人の割合でこの傾向にあることがわかった。本調査は十一月二日~三日夜まで、台湾の十八歳~三十歳九百二名を対象に訪問形式でおこなわれ、信憑性は九五%、誤差±3%である。
今回の調査によると、六九・六%の若者が「多少でも貯蓄がある」、一三・二%が「負債がある」、一六%が「貯金も負債もなし」と応えた。また一八・二%の若者が「一定期間買い物をしないと我慢できない」と答え、このうち女性は二七・五%、男性は八・一%であった。「買い物せずに耐えられる期間」については、「一週間」と答えた人が二二・六%、一六・五%が「半年」、三一・一%が「一カ月」と答えた。「今一番ほしいもの」はトップが「車」で二〇・五%、次が「家」で一五%、「洋服」七・一%、以下パソコン、デジタルカメラ、携帯電話などとなっている。
《台北『民生報』11月25日》
お知らせ
「怡友会」特別講演会
在日台湾人の医者の親睦会である「怡友会」が、設立十五周年を記念し、特別講演会を行います。憲法の権威で、政治の「国師」とも呼ばる李鴻禧教授と、行政院衛生署の徐醒哲・代署長を招き、お話を伺います。
日 時 12月22日(日)午後4時~9時 ※台湾語で講演
【講演会】午後4時~6時半
【忘年会・懇親会】午後6時半~9時
会 場 ホテルオークラ別館B2 曙の間(東京都港区虎の門2ー10ー4 Tel;03-3582-0111)
参加費(講演/一般:一千円、学生・留学生:無料。懇親会/一般:一万円 学生・留学生:六千円)
問合せ 怡友会事務局(Tel:0280-57-1193 田代)
春 夏 秋 冬
とうとう師走に入り、街に出てもせわしく感じられはじめた。とくに今年は「日中国交30周年」がお祭り騒ぎなどではなく、成熟した国際関係に入るきっかけになって欲しいと願っていたが、まだその入り口にも達しなかったようだ。歴史の押し付けによって日本をいつまでも呪縛しつづけておきたいからだ。それが台湾にも仕掛けられようとしている。
この夏、日本で『国姓爺合戦』という中国映画が封切られた。どうやら30周年記念行事の一環として製作されたようだが、現在の中国の性質を物語っているようで、その意味において興味深いものがある。ここに新進の映画評論家として知られる田中秀雄氏の評論を紹介したい。氏はまず「この映画を一風変わった武侠映画として観るには少々無理がある」と述べ、次のように論評する。
「どう考えてもこれは歴史映画として作られており、明に忠節を尽くした鄭成功の波乱万丈の物語だからである。しかしその忠節の内容はというと、我々の史的常識からいって、余りにも唖然とするものばかりである。簡単にいえば、オランダに占領され、非人間的扱いを受けている台湾とその住民を救うために、日中混血の若き英雄=鄭成功が大活躍をするのであるが、その台湾出撃の根拠、その理由は、台湾が有史前から中国のものだったということである。台湾を明のために取り戻すことは当然の権利なのだというのである!
鄭成功の父である鄭芝龍は押し寄せてくる清の軍隊を前に、彼らに寝返るのだが、その理由がまた台湾なのだ。『二千七百年も前から台湾は我らのものだった、それを明は失ってしまった。そんな情けない王朝に、忠誠を尽くすいわれなどない』というのである! 清の康熙帝となると、鄭成功の台湾出撃は我が家臣の行動であり、彼によって台湾が回収されるなら、それはまたわが喜びである、とさえいう! ご都合主義なのである。勝手に歴史が改変されてしまうのである」
この映画の内容がどのようなものか、およそ察しがつかれたものと思う。日本で上映されたものの、ほとんど話題にもならなかったのは幸いだったが、中国で見た人々はどうだろう。これを史実として受け取ったなら、そこからかれらの台湾観は生まれよう。つまり中国は、自分たちの都合のいいように歴史まで改竄し、国民まで洗脳してしまう性格を持っている。その一端を、この映画は証明しているようだ。日本ではその術策に嵌っている人は多い。いま台湾にも、それが仕掛けられようとしている。共に注意を要する。
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