台北週報2079号(2003.1.16)
一つの目標」と「二つの重点」に邁進
陳水扁総統「二〇〇三年元旦祝辞」全文
陳水扁総統は二〇〇三年一月一日、総統府において「元旦祝辞」を発表した。以下はその全文である。
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本日は中華民国九十二年元旦であり、われわれは新年を迎えるにあたり、過去を厳粛に検討し、真摯に前進しなければなりません。
過去一年、全員が非常な苦労をしました。外的には国際政治も経済も変動の行方が不透明となり、内的には解決が必要な問題が山積みしました。重なる逆境と挑戦の中、台湾が生存と勝利を得るには一層の努力が必要です。苦境を乗り切るため、悲観も足並みの乱れも許されません。政府と国民は一致団結し、共に難関を克服し、国家の前途と国民の福祉のため、進歩と繁栄への道を見い出さねばなりません。
新年開始の本日、私は「一つの目標」と「二つの重点」を提示し、この一年の共同努力の方向とします。「一つの目標」とは「国民をさらによくする」ことで、「二つの重点」とは「経済第一」と「構造改革」です。
政府は国民のために存在します。不況の中に国民の挫折と不満は統計数字よりも、日常の生活から直接実感するものとなっています。各種の数字は、経済がすでに底を打ち上向きになったことを示しています。しかし国民はまだ実感できず、現状に満足しておりません。私は、台湾人民の困難克服と勤勉の精神は一時の挫折によって砕けるものではないと確信しています。国民と政府が共に困難に直面しているとき、さらに堅固な精神をもって国民の切実な願望を掌握し、人々の最も切迫した問題を解決して行かねばなりません。
就業の問題、治安の問題、民生上の問題等々と、いずれも市民生活に直結しており、中央と地方が共に責任を持ち、各レベルの行政府が市民の関心事を的確に把握し、果敢に処理して行かねばなりません。当然末端労働者、農漁民、失業者など比較的劣勢にある人々は、適切に擁護しなければなりません。困難な中に、国民が未来に希望を持てば国家もまた希望を持て、国民がよくなれば台湾の前途もまたよくなります。
当然、国民がよくなるには全員の努力が必要であり、それによって台湾もまたよくなります。過去二年余、新旧の世紀と政権交替の過程に、これまで長期に内在してきた諸問題が噴出し、加えて世界景気の低迷、国内の政党交替による混乱、国家の境遇、政府の環境等々と、内外ともに切迫していたと言えます。しかし原因の如何にかかわらず、私は国民に選出された指導者としてすべてに責任を負う所存です。野党は各自の役割に本分を尽くし、責任を回避する者はいないと信じております。
われわれは与野党が協力しあい、行政、立法に良好な相互連動を示すことを願っております。ただし執政者としては、反省のなかに自己の責任を求めて行かねばなりません。本日私は「経済第一」と「構造改革」の二大重点政策を提示しましたが、これは民意の趨勢のみならず、政府と政党が将来への指標としなければならないものでもあります。
「経済第一」では、行政院は「経済発展諮問委員会」のコンセンサスを基礎に、各種の経済振興策を具体化します。ここに列挙はしませんが、必ず実行します。昨年十月、国民党が「当面の台湾経済情勢、問題と対策」を提示しましたが、私は連主席に親書を送り感謝を表明しました。その方策の多くは経発会のコンセンサスによるものであり、行政部門はすでにそれらを具体的政策となし、関連法案も立法院に送付しており、与野党が将来の経済政策に高度の共通項を得ているものと思われます。当面の急は与野党がさらに力を合わせ、立法院での法案通過を加速することです。
台湾の経済は同時に、グローバルな競争、大陸の吸引力、歴史的な慣習という三大課題により深刻な挑戦に直面しており、猶予の時間はなく、失敗も許されません。政府と民間、労使、与野党を問わず、経済と国家の競争力向上のため、改革を通して過去の慣習を打破し、行政効率と企業の競争力を高め、台湾を深刻な試練から脱出させねばなりません。
「経済第一」と「構造改革」は相互に関連しています。国民がいま最も強く望んでいるのは、金融改革、教育改革、司法改革、政治改革であると言えます。
金融改革推進は、金融環境の安定と台湾への投資の信用にかかわるだけでなく、公平な社会の実現にも関係し、台湾が世界の貿易大国に躍進できるか否かのカギともなるものです。過去一年余、政府は地方金融改造に大きな一歩を踏み出し、一時的な波風はあったものの、改革への決意は微動だにしていません。過去の執政者は台湾を、特権階層への過剰融資、不健全な融資の社会にし、「金融大盗が肥り、無垢の民が痩せる」という一幕を演じてきました。これは座視しえず、ふたたび演じさせてはなりません。すべての重大金融事件は検察機関が迅速に捜査し、司法の審判も国民の社会正義の要求に応え、金融犯罪の発生を効果的に阻止しなければなりません。こうしてこそ、金融改革推進の目標を持続でき、金融再建基金による金融問題解決の計画も有意義なものとなるのです。
人材は国際競争力の基礎であり、次の世代が台湾の将来の興亡を決定します。台湾の教育改革は十年近くにわたり、一部の目標はすでに達成しておりますが、改革変動の過程において多くの実施と適応の問題が生じています。教育改革は後戻りできません。生徒、親、教師が実施に対し最も影響を受けます。中央から地方までの教育当局は各界の意見を掌握し、当面の実施と教育方法に対し検討改善の余地があると言えます。改革のなかにコンセンサスを求めてこそ、教育百年の大計を早期に軌道に乗せることができるのです。
いま、司法改革が再度社会から注視されています。私は翁司法院長および全司法関係者の社会的貢献を高く評価しています。国民の司法と正義への期待は切実であり、関係者の責任もまた重大であります。私は、目下立法院で審議中の「司法院組織法」修正案が与野党の支持により早急に通過し、裁判所と訴訟制度の革新が加速されることを望んでいます。
米同時多発テロ発生以来、新たな国際秩序構築が進められており、国際戦略情勢に大変化が生じています。中華民国も国際社会の一員としてこの外に身を置くことはできません。過去一年余、わが国は積極的に国際反テロ活動に参与し、相応の人道支援もしてきました。グローバルな反国際テロの中に、われわれは反テロこそ改善への道であり、民主こそ政治の本道であることを認識しました。これは三芝戦略会議で得た重要な結論です。今後とも台湾は志を同じくする盟邦および世界の友人らと連携し、世界民主化の実現に尽力します。
昨年十一月、中国共産党は「十六大」を挙行し、権力交代と政党改革を行いましたが、この成果をわれわれは楽観視しています。両岸が安定した進歩を維持してこそ、両岸人民の最大の福祉となるのです。
その理由は、われわれも中国当局が、国家の発展を持続させるには制度の透明化が不可欠で、人民の社会参加の機会をつくることが必要で、そうしてこそ長期安定への基礎ができるということに覚醒するよう願っているからです。中国大陸の発展持続は、大陸にも台湾にも、アジアと世界にとっても重要なことです。もし適当な機会があれば、大陸の指導当局および社会各界と、台湾の豊富な民主への経験を分かち合いたいと願っております。
過去二年余、政府は一貫して両岸関係安定のため尽力し、現状打破の機会を求めてきました。私は、海峡両岸は「善意による和解、積極的協力、永久平和」の原則により、共同で両岸関係の良好な発展を進めなければならないという、就任以来の立場を堅持しています。和解、協力、平和を前提にしてこそ、「五つのノー」の公約が守られるのです。
両岸は各自に未来への青写真を提示していますが、今日私は「平和安定の相互連動構造」の構築を現段階での共同努力の目標とするよう提議します。新世紀を共に経済発展の場とするよう、良好な長期交流の環境を構築しましょう。第一歩を踏み出してこそ、協議を通じて両岸直航ならびに関連した経済諸問題に着手でき、文化と経済の交流をさらに進められ、相互信頼の上に民主、対等、平和の原則を堅持し、共同で長期的な問題を処理できるのです。
台湾に自信を持ち、困難を恐れず敢然と進みましょう。成功はすぐ眼前にあります。
(完)
週間ニュース・フラッシュ
◆ イネゲノム解読プロジェクトが完了
台湾、日本など十カ国から成る「国際イネゲノム塩基配列解析プロジェクト」でこのほどイネゲノムの解読が完了し、食料問題解決に大きな一歩となった。台湾は解読の八%を担当し、日、米、中国に続く貢献を果たした。
《台北『自由時報』’02年12月19日》
◆立法院長が連・宋連合支持
国民党副首席の王金平・立法院長は十二月二十二日、次期大統領選
挙に向けた連戦・宋楚瑜両氏の連合を公式に支持し「政権奪回と国民の安定した生活のために、両者の連合は不可欠である。連戦氏の当選を切望する」と語った。
《台北『中国時報』’02年12月22日》
◆国民党が李登輝氏の「外来政権論」に反論
李登輝前総統が「連戦率いる国民党は外来政権だ」と指摘したことに対し、曹永権・国民党政策会執行長は「台湾は民主国家であり、国民党が外来政権だという発言こそ台湾人民を侮辱している」と批難した。国民党内部では李氏発言への反発が過熱し、次期総統選挙では李氏と一線を画す態度を示している。
《台北『自由時報』’02年12月24日》
◆二〇〇三年の経済成長率は三・六%
中華経済研究院が十二月二十三日に発表した最新予測では、二〇〇三年の経済成長率は三・六%で、国内各機関の予測のうち最も楽観的数値となった。
《台北『経済日報』’02年12月24日》
◆ 行政院が国際工商ネットワーク構築
政府の「経済第一」政策に合わせ、行政院はこのほど「工商サービスネットワークプロジェクト」を採択し、二〇〇三~〇七年まで、二十四時間体制で各種情報を提供する国際工商ネットワークサービスを実施することを決めた。このシステムにより、交通費や人件費など、毎年約五億元(約二十億円)のコスト削減が可能になる見込みである。
《台北『青年日報』’02年12月24日》
◆旧正月の直航チャーター便が申請手続きへ
今年旧正月の両岸直航チャーター便運行について、チャイナエアライン、遠東航空、華信航空の三社が十二月二十七日、中国民航に対し正式に申請した。エバグリーン、立栄航空、復興航空もこれに続き申請する予定だ。
《台北『中国時報』’02年12月27日》
◆ 国家の安全は自らの手で
湯曜明・国防部長は十二月二十六日、「中国の台湾に対する武力威嚇が続く限り、国家の安全はわれわれ自身が支えていかねばならない。国民が一致団結し強固な防衛意識を持ち、軍全体が訓練を強化し確固たる国防力を蓄積してこそ、台湾海峡の安定が得られるのだ」と述べた。
《台北『青年日報』’02年12月27日》
◆民進党立法委員が「台湾産経建研社」を設立
FTA締結の促進と外資誘致、国内投資環境整備のため、民進党立法委員有志はこのほど、二百名以上の産・官・学および政界の精鋭で構成される「台湾産経建研社」を設立した。
《台北『経済日報』’02年12月28日》
◆台湾史を中学の課程にも導入
教育部はさきごろ、九年一貫課程審議委員会において、中学校の教育課程に「台湾史」を組み込むことを正式に決定した。これにより小中学校を通して台湾に対する認識を育てる授業内容が大幅に強化されることとなった。
《台北『自由時報』’02年12月29日》
◆直航は人材と資本の流出を加速
行政院大陸委員会の蔡英文・主任委員は十二月二十九日、「現在台湾と中国の貿易関係は偏っており、直航開放は台湾の資本と人材をさらに中国へ流出させるため、法による安全措置が必要だ」と述べ、警戒を呼びかけた。
《台北『工商時報』’02年12月30日》
外資の台湾誘致を強化
「外国企業誘致委員会」を設立
林義夫・経済部長は昨十二月二十七日、『工商時報』のインタビューに応え、国内投資の減少に歯止めをかけるため、近く経済部内に「外国企業誘致委員会」を設置して投資環境の改善をはかるとともに、今年十月に「国際企業招致大会」を開催し、外国企業の誘致を図る決意を語った。以下はインタビューの要約である。
問:二〇〇二年の国内投資が低迷したのは世界不況が原因か、それとも中国の吸引力か。
答:確かに二〇〇二年は国内の民間投資も外国企業の投資も振るわなかったが、それでも前年に比べて好転し、一~十一月の民間の新規投資総額は約六千九百億元(約二兆七千億円)となり、目標の九九%に達した。中国の吸引力の影響を受けているのは台湾だけでなく日本や東南アジア、欧州や中南米も同様だ。われわれは自分たちが生存できる利益を追求し、国内の投資環境を改善し産業の投資を推進する一方で、技術の研究開発を強化し、国内投資に対する意欲と自信を高める必要がある。
問:投資環境改善の具体策は。
答:近く部内に「外国企業誘致委員会」を設置し、多国籍企業のトップを招き、台湾の投資環境について意見を求め環境改善の参考とするほか、十月に「国際企業招致大会」を開催し、台湾の今後の建設計画を説明し、外資の誘致を図りたい。
問:中国での〇八年のオリンピック、および一〇年の万博開催という大きなビジネスチャンスに、政府は国内企業をいかに支援していくか。
答:オリンピックと万博開催は都市建設、不動産、観光、運輸、情報・通信、体育用品、広告の各産業に大きなビジネスチャンスをもたらすだろう。われわれもこのチャンスを生かすため今後専門チームを発足させ、中国の台湾企業のレベルアップを指導し、中国における台湾ブランドの確立を支援していきたい。
問:世界の主要国はそろって自由貿易協定(FTA)締結に積極的だが、台湾が締結したい優先国は。
答:現在各国ともFTA締結に力を注いでおり、世界的な経済共同体が形成されつつある。FTAの締結対象から外れることはすなわち国際社会からの孤立化を意味し、われわれも積極的に主要各国との締結交渉を行っている。とくに、アジアでのFTA締結に各国とも凌ぎを削っており、必要性も高い。台湾はパナマとの締結が決定しており、一月に正式に調印する予定だ。
《台北『工商時報』02年12月28日》
台日関係はより緊密に
羅福全・駐日代表が一年を振り返り語る
羅福全・駐日代表は十二月二十四日、駐日台湾記者団との懇談会で二〇〇二年を振り返り、台湾と日本との関係について「この一年で、より緊密になった」と語るとともに、「二〇〇三年はさらに発展してほしい」と期待を述べた。
羅代表は「日米関係の安定と米国の台湾への厚い支持は、台湾と日本の共同利益の拡大にプラスとなるものだ。冷戦下の台日関係においては日本の国会議員の間に『どちらか一方を支持し、もう片方に反対する』という姿勢が見られたが、現在は次第になくなりつつあり、とくに若い議員には『国家の利益』に基づいて問題を考える傾向があり、台湾に対する関心は以前より高まっている。さらに日本の外務省が十一月、課長クラス以上の台湾への訪問を解禁したことから、台日の交流レベルが高まった。今日の両国の交流は戦略的問題について協議する実質的なものとなっており、このことは台日双方が具体的な問題を理解するのにきわめて重要である。われわれとしても今後とも引き続き台日両国の共同利益に基づいた双方の協力関係の増進に努力していきたい」と語った。
また「日本政府は積極的に国際問題に参与し、世界のテロ事件や朝鮮半島問題にすみやかな対応をとった。安全保障問題に対する重視も含め、こうしたマクロな環境は台日フォーラムや台日米安全保障フォーラムの推進にプラスとなる」と強調し、さらに「日本がFTA締結問題において指導的役割を発揮できるかどうかが大きな問題だ」と指摘した。
このほか「米国が日本との関係強化を望んでいるのは、中国が現代化路線を歩むかその逆なのか、さらには北朝鮮が日本と平和協定を結ぶかそれとも対立するかなど、アジアに多くの不確定要素があるからで、米国は日本との関係を強化することで、それらの不確定要因を安定させようとしている」と指摘するとともに、両岸関係について「台湾は全力で改善に努めているが、このことは決して中国に台湾への武力侵攻の口実を与えるという挑発的なものではない。日本は両岸問題に大きな関心を持っており、両岸が平和的に問題を解決することを望むと何度も表明している。台湾海峡の安定はアジアの安定と平和に密接に関係しており、現在のマクロ環境はアジアの平和と安定に有利と言える。われわれとしても今後引き続き両国の共同利益の基礎のもとに協力関係の拡大に努力していきたい」と強調した。
《東京『中央社』02年12月25日》
●日本は閣僚の台湾訪問解禁すべき
張栄豊・国家安全保障会議副秘書長は十二月二十一日、「台日断交三十年の回顧と展望」と題する座談会に出席し、あくまでも個人的な意見と断ったうえで「台湾と日本の交流の枠組みは一九七二年の両国断交時を基礎としているが、それ以後三十年来の国際情勢はすでに大きく変化しており、現在それを見直す時期に来ている」と指摘し、「台日の交流はさらに創造的なものでなければならない」と述べたうえで、日本に対し閣僚クラスの台湾訪問解禁を呼び掛けた。
張国安会副秘書長は「三十年前の断交時に設けられた台日交流の枠組みは、日本が双方の官僚の接触を認めないなど行き過ぎた面がある。 台湾は華人社会で最初の民主国家となり、両岸がアジア大平洋経済協力会議(APEC)と世界貿易機関(WTO)に同時加盟するなど、国際情勢はすでに冷戦下の環境から脱している。両岸の閣僚トップがAPECやWTOで正式に接触できるというのに、なぜ日本は三十年前の枠組みを堅持するのだろうか。日本の外務省は最近になってやっと課長級以上の台湾訪問を解禁したが、大臣の訪問も解禁すべきだ」と強調した。
《台北『中国時報』02年12月22日》
釣魚台の主権問題について
外交部プレスリリース(二〇〇三年一月二日)
日本の『読売新聞』が一月一日付で、日本政府が昨二〇〇二年十月以降、釣魚台(尖閣)諸島の五つの島のうち「釣魚台」「南小島」「北小島」の三つの無人島の民有地を所有者から年間二千二百万円で借り上げたと報道したことについて、外交部は同日、台北駐日経済文化代表処に対し、同報道の真偽を日本政府に確認し、合わせて釣魚台諸島の主権が中華民国にあるとの厳正な立場を表明するよう指示した。
鄭博久・外交部亜東太平洋司長は翌二日、再度羅福全・駐日代表に電報を送り、日本の関係省庁(総務省および外務省)に同報道の真偽を確認し、中華民国政府の同報道に対する関心と厳正な立場を示すよう指示した。また、高英茂・外交部政務次長も三日、日本交流協会台北事務所の内田勝久所長と会見し、中華民国政府の関心と厳正な立場を表明し、これを日本政府に伝えるよう要請した。
第二次世界大戦終結後、釣魚台諸島は米軍の管轄下に置かれ、一九七二年米国が釣魚台諸島および琉球諸島の行政権を日本に委譲した際、中華民国政府は抗議の声明をおこなうとともに、わが国の釣魚台諸島に対する主権を宣言した。一九九九年わが国は領海線を公布し、釣魚台諸島を中華民国の領土とした。釣魚台諸島の主権問題が持ち上がるたびにわが国政府は外交の場で同諸島が中華民国の領土の一部であることを強調し、すでにこの問題は国際社会の高い関心を集めている。
(完)
ニュース
国家共同体の価値観提唱
国民意識結集が未来への鍵
陳水扁総統は十二月十九日、中華文化復興運動総会第三回第五次委員及び諮議委員会議に出席し「民主化かつ自由化された多元的社会において、社会の共同発展と進歩を促進するカギは、国家共同体の正しい価値観を構築することである。輝ける未来を追求する全国民の意識を結集してこそ、政治と経済の改革のために有利な条件と基盤を創造することができる」と強調した。
さらに「近年、国内各地で文化基金会や文化館などが設立され、全国的かつ国際的規模で芸術文化活動が活発化してきた。またこの二年、政府は国民の強い期待に応え、一貫して政治、経済分野での改革を推進し、常に人々の士気を高めてきた。旧体制や旧い観念などの障害もあるが、新年を迎えるに際し、台湾の改革はすでに新たな発展段階に入っている。国家共同体の正しい価値観を構築した上で、さらなる国家の発展と繁栄を目指す」と決意を語った。
《台北『青年日報』′02年12月20日》
アイデンティティ確立を急げ
李登輝前総統が本土化強調
十二月二十二日、宜蘭県「李登輝友の会」が設立され、李登輝前総統は会場に集まった約千人の会員の前で「いま本土政権がようやく成長し、外来政権を退けた。連戦らの独裁を認める外来政権には二度と政権を取らせてはならない」と語った。
友の会設立について李前総統は「国民が台湾を愛し、台湾のアイデンティティを持つことが本会設立の使命である。特に二〇〇八年は中国がオリンピック開催国となるため、何らかの方法で台湾に圧力をかけてくることは間違いない。台湾を主体とする主権と文化観を構築することこそ火急の任務だ」と強調した。李前総統はさらに、「国際及び両岸関係が複雑化するなか、李登輝友の会は台湾を前進させるための重要な組織となる。台湾は中国のものではなく世界の一部であり、自由民主体制のもと、国民は台湾の本土派政党を選択する権利を持っている」と述べ、一層の台湾化を強調した。
《台北『自由時報』02年12月23日》
連戦・宋楚瑜会談で共通認識
総統選挙への協力体制確認
連戦・国民党主席と宋楚瑜・親民党主席が十二月十四日、台北・高雄市長選挙後初めての会談をおこない、二〇〇四年の総統選挙には共同で候補者を選出することを確認した。また国内外の問題について幅広く意見交換し、三つの共通認識に達した。その要旨は次の通りである。
一、現在政治が乱れ、台湾経済の不調により国民は苦しみ、国家は空前の危機に直面している。両党は野党勢力を結集し団結してこの局面を解決する。二、両党主席は「経済振興」「政治改革」「両岸安定」を急務とし、引き続き意思疎通を図り、具体的解決策を模索する。三、中華民国憲法体制の維持と、国家全体の発展促進および責任ある政治力発揮という共同理念に基づき、両党主席は政党間の隔たりを超え全面的に協力する。総統選挙に向けて共同で民意に沿った人選をおこない、強固な施政体制を構築し、国家と国民に対する責任を果たすべく尽力する。
《台北『中国時報』′02年12月15日》
蔡同栄氏が「台湾正名」強調
海外駐在機関の名称統一提案
十二月二十七日、台湾住民と国際社会における台湾のアイデンティティ強化のため、民主進歩党と台湾団結連盟の立法委員有志による「台湾正名(台湾の名を正す)運動」の大規模なデモが台中でおこなわれた。これにさきがけ、蔡同栄・民進党立法委員は十二月二十五日、「台湾正名」実現の第一歩として、海外駐在機関の名称統一を提案した。
蔡氏は「まずは各海外駐在機関の名称をすべて『台湾代表処』に一本化し、これに引き続き、台湾は新しい名称によって今後国際組織への加入を検討していくべきだ」と述べ、さらに「李登輝前総統の『二国論』、陳水扁総統の『一辺一国』論が提唱され、国民の『一台一中』に対する意識は高まり、世論調査ではすでに八割以上の国民が『台湾は中国の一部ではない』と答えている。『台湾正名』の道は険しいが、台湾の生存と発展のために必ず通らねばならない道なのである」と強調した。
《台北『中央社』′02年12月26日》
お知らせ
横浜中華街春節イベント
●春節燈花:1月17日~3月2日
中国のお祝いの漢字を記したイルミネーションで、光のアーチが皆さんをお迎えします。
● 春節前夜祭:1月31日
カウントダウン及び深夜0時より奉納獅子舞(横濱中華學院グランド)
●中華街各店舗春節特別企画:2月1日~15日 各店舗ごとに趣向をこらした特別企画をおこないます。
●民族衣装パレード:2月7日
中華街全域で実施 午後4時~5時半 山下町公園→関帝廟通り→福建路→西門通り→中華街大通り→南門シルクロード→山下町公園
●採青(獅子舞):2月8日
中華街全域で実施 午後3時~
●龍舞(湾龍隊): 2月11日
山下町公園 ①午後2時 ②午後3時
● 元宵節 採青(獅子舞):2月
15日 中華街全域 午後3時~
問合せ 横浜中華街http://www.chinatown.or.jp/6event.html
春 夏 秋 冬
昨年は「日本李登輝友の会」結成大会で暮れた。会の目標は会則にある通り「李登輝氏の日台運命共同体理念に賛同し、文化交流を主とした新しい日台関係を構築する」ことだが、当面の具体的な目標は、当日会場で何度も聞かれたように、李登輝氏の“奥の細道”散策の実現であろう。今年こそそれの実現されることを願ってやまない。
もう一点、これも当日会場で多くの方々が言っておられたことだが、日本社会での台湾に対する認識がまだ足りず、台湾社会においても日本語世代が社会の第一線からしりぞき、親日派が少なくなりつつあるということへの懸念である。こうした懸念の払拭ももちろん「友の会」の目標の一つである。だが、これはそれほど懸念することでもないのではないか。
話はさかのぼるが、60年安保のころ、学生もマスコミ界も一部をのぞき、「反米」一色に染まっていた。だがその一方で、ラジオの電リク番組でいつも聞いていたのは、コニー・フランシスやニール・セダカやパット・ブーン、それに熱中した映画はカーク・ダグラスやユル・ブリンナーやヘップバーンの主演作であった。左翼思想にかぶれた者でも「反米」デモで汗を流したあとは「恋の片道切符」や「砂に書いたラブレター」に痺れ、西部劇を見ては手をたたいて喜んでいたのである。知らずアメリカ文化というものに染まっていたのだ。それに当時の日本では、これを米国の「文化侵略」だなどとケチなことを言う者はいなかった。きわめて自然に受け入れていたのである。現在、日本社会の第一線にあるのは、その世代の人々である。そして今日の日米関係はどうであろうか。幕末以来、もちろん利害上の軋轢はあるものの、総じて今ほど良好な時代はないのではないか。しかも双方が無理をしているのではなく、自然体としてそうなっている。この絆は強い。
これを思えば、今日の台湾の「哈日族」の意義は大きいのではないか。かつてアメリカのポップスや映画やファッションにあこがれていた世代は、いわば日本の「哈米族」だったのだ。もちろんそれの影響力は目に見えない。しかし強い。この点から見れば、台湾で今日「哈日族の教祖」と言われている哈日杏子さんの存在意義は、いかなる大掛かりな文化使節団よりも大きいのではないか。ひるがえって日本はどうか。固いことを言うよりも、ジュディ・オングさんやビビアン・スーさんに、日本の青年層の目をもっと台湾に惹きつけて欲しい。
(K)