台北週報2081号(2003.1.23)
日本との関係を一層強化
陳水扁総統が年頭に対日関係重視を強調
陳水扁総統は1月6日、企業関係の表彰式において元旦祝辞で提示した政策を改めて説明するとともに、企業が「根を台湾に残す」ことを強調した。また8日には総統府資政と国策顧問を対象にした国政諮問座談会でも重要政策を説明した。さらに陳総統は9日、在台日本人会の新年会に出席し、日本とのFTA締結ならびに日米台による安全保障同盟の構築を提唱し、対日関係を重視している姿勢を示した。
● 重要な「台湾優先」政策
陳水扁総統は一月六日、総統府において第三回「工業永続精鋭賞」ならびに「卓越成就賞」を受賞した中華汽車、統一集団など企業九社の首脳陣と会見した。このなかで陳総統は、「政府は投資優先、経済優先、台湾優先という『三つの優先』政策を貫徹する。とくに台湾への投資優先については、政府が今年上半期に投資商談会を開き、積極的に企業の投資を誘致し、また投資障壁の排除に努め、国際的大企業の台湾での発展をうながし、さらに台湾を企業のオペレーション・センターとなし、台湾から世界に業務を展開する態勢をととのえ、台湾の永続的な発展を追求する」と表明した。さらに「近年来、政府は再三にわたってさらに多くの企業が根を台湾に残し、この土地でいっそうの努力をするよう提唱している」と述べた。
これに対し、出席した高清愿・統一集団総裁は、「台湾の投資環境はまだまだ改善の余地があり、障壁除去をなおいっそう進める必要がある」と指摘した一方、「新政権は旧政権にくらべ、すでに多くの政策を推進している。工業区の税減免は旧政権時代にも提議してきたが、当時の政府はまったく反応しなかった。新政権は早急にこれを考慮するとともに、その他の措置も積極的に推進している」と評価した。
これに対し、陳総統は「政治の役割とは、良好な経営環境や効率の高い行政サービスを提供することである。産業の発展にさらに有益な方途があれば提示して欲しい。引き続きこの土地で皆様と共に努力していきたい」と語った。
また陳総統は、行政院が昨年発表した「挑戦二〇〇八年―国家発展重点計画」にも言及し、「この計画の四大支柱は、第一に人材育成への投資、第二に新たな研究開発への投資、第三に世界的販路開拓への投資、第四に生活環境改善への投資である」と述べた。同時に「これらの目的は、台湾をハイテク産業による『緑のシリコン・アイランド』となし、優れた投資環境と生活環境を創出し、優秀な人材の需要を満たし、各産業が研究開発と競争力を強化できるようにすることである。こうすれば国内企業は安心して経営に専念でき、同時に海外からの投資も呼び込むことができる。良好な環境によってこそ、企業は永続的な経営ができ、国家もまた永続的に発展するのだ」と語った。同時に「私は今年の元旦祝辞のなかで『一つの目標、二つの重点』を提示したが、一つの目標とは台湾人民の生活をさらによくすることであり、それは当然、企業の経営環境をさらによくすることも含まれている。二つの重点とは経済第一と構造改革である。両岸関係においては、平和と安定の維持によって、さらに好ましい投資環境を創出したいと願っている」と語った。
《台北『工商時報』1月7日》
●「一つの目標、二つの重点」
陳水扁総統は一月八日、総統府において「国政諮問座談会」を開催し、元旦祝辞で表明した「一つの目標、二つの重点」政策をあらためて強調した。同座談会には呂秀蓮副総統、陳師孟・総統府秘書長、ならびに辜振甫、孔徳成、曾永賢氏らの総統府資政、黄崑虎氏らの国策顧問ら三十数名が参加した。
陳総統はこれら総統府資政ならびに国策顧問らのこれまでの助言、献策に感謝の意を表明するとともに、「一つの目標、二つの重点」を説明したほか、「国際社会の一員としての責任を果たし、国際反テロ行動を支持し、両岸関係の安定と平和を維持することも、今後の政府の重要政策である」と強調した。
また、呂秀蓮副総統は「目下台湾は過去の負の遺産、両岸関係、経済のグローバル化等々といった厳しい挑戦に直面している。この重要な時期において台湾自身がグローバル化しなければ、それこそ局地化してしまうことになるだろう」と指摘し、さらに「政府がいまやらねばならないことは、あらゆる障害の除去である。このため皆様とともに今後とも尽力していきたい」と語った。
重ねて、呂副総統は「台湾は『世界の台湾』であり、徹底的にグローバル化してこそ、台湾を不敗の地にすることができるのである。また、DPP(Democracy ProsperityPeace)すなわち民主、繁栄、平和こそがわれわれの最大の努力目標であり、陳総統の元旦祝辞の精神もまたここにある」と強調した。
《台北『自由時報』1月9日》
● 日米との安全同盟関係を
台湾省日僑協会と台北市日僑工商会による新年会が一月九日、台北市内の国賓ホテルで開催され、陳水扁総統、林信義・行政院副院長、江丙坤・立法院副院長、許水徳・亜東関係協会会長、馬英九・台北市長らも出席し、ともに祝辞を述べた。
このなかで陳水扁総統は、日僑協会、日僑工商会が日台両国関係強化に貢献してきたことを高く評価するとともに、「台湾と日本の関係強化はアジア地域の安全、民主、経済発展促進の基礎になるものと確信している。そのため私はこれまで機会あるごとに、アジア太平洋地域の安全、安定、民主の拡大と強化および経済の協力関係促進を呼びかけてきた。安全、民主、経済は、アジア太平洋地域の平和と繁栄を確保するための三大支柱となるものである」と語った。同時に「今日、北朝鮮の核兵器開発への姿勢が朝鮮半島の平和に及ぼす影響、中国経済と政治改革の将来への不確実性、さらに東南アジア諸国の民主の強化と経済発展等々の問題は、台湾と日本の両国に共同の利益と挑戦を構成するものである」と指摘した。
さらに陳総統は「強化された日米安全保障同盟は東アジア地域の利益に合致するものであり、台湾も日本がアジア太平洋地域の安全保障問題において、さらに積極的に、またいっそう建設的な役割を担うよう期待している。台湾は、日米同盟の二国間関係および多国間協力関係の構造が、国際反テロおよび人道上の安全問題にいっそう貢献することを望んでいる。また台湾は、日・米・台の民主主義の三カ国が『安全同盟関係』を締結することを希望している」と表明した。
同時に「台湾は民主化のモデルとして、日本と協力しあって東南アジア諸国の民主強化、ならびにアジア大陸の民主化、とりわけ中国の民主化に協力したいと願っている。このため台湾は、日本とともに『アジア民主同盟』を結成し、共同でアジア太平洋の民主グループを構成したいと望んでいる」と語った。
中国の経済発展がアジア太平洋地域の経済に及ぼす衝撃については、陳総統は「これについては、台湾は日本をはじめ近隣諸国と共同で考慮しなければならない。二国間あるいは多国間での協力を通じ、どのようにしてアジア太平洋地域の永続的なバランス維持と発展を促進するか、とくに東南アジア経済の発展については、いかにして以前のような金融危機の再来を防ぎ、どのように民主化を推進していかねばならないかを考えねばならない」と語った。
このほか、陳総統は「日本と台湾の自由貿易協定の締結を急ぎ、これによって台日両国は経済改革を加速していくべきだ。日本と台湾が経済政策に歩調を合わせて自由貿易区を形成し、アジア太平洋地域の民主主義諸国における『経済共栄体』が早期に実現することを望む」と述べた。
また馬英九・台北市長は、日本語で最初の挨拶をしたあと、中国語で「昨年一年間、私は日本の経済関係者との座談会、あるいは日本人学校の園遊会に参加するなど、日本の皆様と多くの交流を重ねてきた。台北市当局の任務はサービスを提供することであり、台北市在住の日本の皆様が、市当局に要望があれば電話一本で応じたい」と語った。
《台北『中央社』1月9日》
週間ニュース・フラッシュ
◆五大資金コントロール策を実施
大陸への投資を「有効管理」するため、行政院はこのほど、違法投資を取締まる専門処理グループの設置、検挙ポスト設置、違法賞与取締り、資金収支システムと納税情報システム構築、投資企業への再登記呼びかけ、現管理体制の検討と見直しなどを含む五つの資金管理策の実施を決議した。
《台北『経済日報』’02年12月31日》
◆零細企業への支援策開始
経済部は二〇〇三年一月から、「零細企業創業融資」策を実施する。四十五~六十五歳までの融資申請者が従業員五人以下の零細企業を起業する際、政府が金利の五%を補填し、残り三%の負担で最高百万元(約四百万円)の融資が受けられる制度で、中高年失業者の支援をねらいとしている。
《台北『経済日報』’02年12月31日》
◆民間の公共建設参加を奨励
昨年十二月三十一日、民間の公共事業請負を奨励する第一回「金擘賞」の授賞式がおこなわれ、游錫堃・行政院長は挨拶で「民間の公共建設請負は政府と民間の新たな協力を促し、政府の支出を削減し、政府、企業、国民三者ともにメリットがある」と述べた。
《台北『経済日報』1月1日》
◆日本のメディアが直航問題を取材
中国民航が批准した旧正月の直航チャーター便計画が日本のメディアの注目を集めている。一月四日、蔡英文・行政院大陸委員会主任委員は読売新聞のインタビューで「直航問題を『国内問題』とする中国側の発言は認められず、定期便の運行には時間が必要だ。三通解禁後の影響について近々一部報告を公表するが、中国側も台湾に資本や人材を投入すべきだ」と述べた。
《台北『中央社』1月4日》
◆二〇〇三年世界台湾人大会は台北で開催
郭重国・世界台湾人大会秘書長は一月六日、二〇〇三年の世界台湾人大会は三月十五~十八日の四日間、台北で開催し、「台湾のアイデンティティ確立と新憲法制定」を全会一致で決議することを目指すと発表した。
《台北『自由時報』1月6日》
◆台湾正名運動連盟が国名表示の明確化要求
五・一一台湾正名(台湾の名を正す)運動連盟は一月七日、記者会見を開き、台湾の一部メディアが海外からの報道を翻訳する際「TAIWAN」は「台湾」に、「CHINA」は「中国」に表記を徹底していないことを指摘し、正確な表記を訴えた。同連盟では全国民に監督を求めEメールやFAXで投書を募る予定だ。
《台北『自由時報』1月7日》
◆中国が三社のチャーター便運行に同意
中国はさきごろ批准した遠東航空に続き、一月六日、チャイナエアラインと華信航空の旧正月の直航チャ―ター便について同意した。二社は今後早急に交通部民航局に本件を申請する予定だ。往復の航路については各社とも香港で一時着陸する。
《台北『中国時報』1月7日》
◆伝統産業に五年間の免税
景気振興と国内投資促進のため、立法院院会(国会)は一月七日、「産業のレベルアップ促進条例の部分条例修正案」を採択した。二〇〇二年一月一日~二年間に新規投資または増資した伝統産業に対し、五年間の所得税を免除する。
《台北『工商時報』1月8日》
◆台・米ともに潜水艦購入延期を否定
台湾が財政困難のため米国からのディーゼル潜水艦購入を延期または数量削減するという台湾メディアの報道に対し、台・米はともにこれを否定し、「台湾が直面している脅威が変わらない限り、潜水艦の購入数量が減ることはあり得ない」と表明した。
《台北『中国時報』1月9日》
失業者救済案の真意と価値について
游錫堃・行政院長
行政院が立法院に特別予算枠で提出した「公共建設拡大案」および「公共サービス雇用拡大計画」が大きな論議を呼んでいる。世論調査によると、国民の六割以上が両計画に賛成しているものの、議案提出の動機やその効果について疑問視する意見や、負債を子孫に残すのではと危惧する声もある。これまで行政院はこれらの問題について逐一説明をおこなってきたが、ここであらためて失業者問題全般に対する政府の見解を示すとともに、両議案の提出の真意とその価値について説明したい。
●根本の改善には末端の改善が必要
失業者問題を解決する根本には経済振興という目的がある。政府の「挑戦二〇〇八」十大投資計画は、人材の質の向上、および産業、環境、文化の各方面における競争力の全面強化を通して台湾の構造転換を図ろうというもので、二十一世紀台湾がハイテク情報社会に生まれ変わり、国際社会で新たな地位を獲得できれば、失業者問題もすぐさま解決できるはずである。根本を改善するには時間を要し、構造転換の過程で生じる失業者問題は決して単純なものではない。失業者問題の背後には数知れぬ多くの家庭の不安があり、かれらはすでに待ったなしの状態にある。もちろん政府もこの問題を座視することはできない。
●ポジティブな雇用対策
先進国の失業者対策は、すでに保険金の支給という従来のネガティブな姿勢から、職業訓練や雇用機会の提供などを通して職場への復帰を支援するというポジティブなものへ変化している。台湾も一九九九年に失業保険制度を実施して以降、失業者に保険金の支給を行っているが、民進党政権は二〇〇〇年十二月、給付対象となる失業者の適用範囲を拡大し、増大する失業者の生活を支援してきた。
失業率の右肩上がりの上昇に際し、政府は職業訓練の体制を再整備し雇用の促進をはかる一方で、次々と雇用機会も提供してきた。具体的には、二〇〇一年初頭から〇二年五月まで、計二万五千人の短期雇用機会を提供した。この間、一部の機関や団体で雇用の執行過程において不正などが見られたが、それはほんの一握りに限られ、関係者にはすでに厳しい処罰を行った。このことは、二万人の雇用提供という全体からみると小さな問題であり、損失のどちらが大きいかは明白である。にもかかわらず、政府のこうしたポジティブな雇用対策が正確に伝えられらず、「公平さに欠ける」として反対する意見が一部にある。
経済成長率が二〇〇二年末にマイナスからプラスに転じはしたものの、市場の好転だけで大量の長期失業者が短期内に就業できるとは思われない。このため、政府は「公共建設拡大案」と「公共サービス雇用拡大計画」の二つの案を打ち出し、失業者問題を解決しようとしているのだ。失業保険金の支給というネガティブな対応から雇用支援というわれわれのポジティブな政策への転換は、社会のニーズに応えると同時に、世界の趨勢にも合致したものである。
●社会資本の累積
「『公共建設拡大案』は単に建造物を残すだけ、また『公共サービス雇用拡大計画』は単純労働のみを提供し、その投資効果は低く、そのために起債する意味はない」との意見もあるが、私はそうは思わない。
長期の失業者が希望と闘志を失い永久に職場から遠のけば、個人、家庭、社会に対する損失は計り知れない。このため、長期の失業者に希望を持たせるため臨時の仕事を提供し、職場復帰への環境を徐々に支援していくという意味で、りっぱな投資の価値があると考えている。こうすることで家庭の悲劇も減少し、貧富の差も縮小でき、社会の安定を促し、無形の「社会資本」を累積することができるのだ。直接国民総生産(GNP)のような形でその効果を示すことはできないが、投資効果がないということは決してない。
さらに「公共サービス雇用拡大計画」については、各部会(省庁)の施政計画で実施が盛り込まれた事業計画は繰り上げて実施するよう指示している。失業者の雇用と国家建設計画を結合することで、効果はさらに高まるだろう。このように、細心の配慮で策定された計画には社会的価値(文書のコンピュータ化などを通して電子政府を定着させる、平地に植林し緑地化して環境美化を促進するなど)、失業者に対する価値(仕事を通じて自信を持たせる)などが挙げられる。それらは、「挑戦二〇〇八」計画に盛り込まれた文化的価値と生態に配慮した環境整備の内容とも一致しており、人間を根本に据えた経済発展の視点を反映したものである。
●時機を逃さず問題に取り組む
一部で「なぜ政府はもっと早く雇用対策を打ち出さなかったか」と批判する声もあるが、景気が下がり始めた時期の対応は、あくまで正常なやり方で景気回復を図るべきである。世界経済はここへきて徐々に回復に向かっているが、国内にはさらに大量の失業者が出ている現在こそ、政府が積極的に介入し保護する時期が来たと言えるのだ。
これまでの経験からみて、三~四月に失業率はふたたび上昇するだろう。対策を講じる時機を逃し失業者問題をコントロールできなくなれば消費が減少し、さらに多くの失業者が出るだろう。一旦ドミノ倒しが生じると、失業率を抑制することは非常に困難だ。このため、すみやかに両計画を実施することが失業者を救済することにつながるのだ。
私が深い感銘を受けた言葉に、英国の経済学者マーシャルの「『温かい心と冷静な頭脳』が必要だ」という一節がある。施政には冷静な頭脳をもって効率と効果を計算しなければならず、政府の二つの雇用計画にはそれが綿密になされている。だが、より重要なのは、温かい心をもって経済的価値の背後にある人間の価値というものを感じ取ることである。何万本もの電話が各地の職業紹介所に殺到しているとき、われわれは人々の叫びを耳にしているのだ。失業者は仕事を必要としているのであり、社会に貢献したいと欲しているかれらを、われわれは失望させるわけにはゆかないのである。
(完)
両岸交渉は経済優先すべき
上半期が交渉再開の好機
陳水扁総統は元旦祝辞のなかで両岸関係について「(両岸)直航とそれに関連する経済問題についての交渉から開始し、両岸経済がともに発展できる共同利益の第一歩を踏み出すことができる」と述べたが、これについて許勝台・台湾区電機電子工業同業公会理事長は同日、「両岸問題が早期に進展し、政府が直航を開放したなら、企業は輸送や時間などのコストを節約でき、市場における競争力を強化できる」と語った。
さらに許理事長は「両岸問題の解決が遅々として進まない最大の原因は、両岸とも経済より政治的要素を優先して考慮しているからだ。もし両岸が経済振興に全力をあげるつもりなら、政治と経済の優先順位を逆にすることで、交渉の障害は半減するはずだ」と指摘し、両岸問題は経済を優先すべきだとの考えを強調した。
●上半期が両岸交渉再開の好機
一方、行政院大陸委員会の蔡英文主任委員は「陳総統の元旦祝辞の内容は、政治面で両岸は平和で安定した枠組みが必要であるとの見解を示すと同時に、両岸直航と台湾企業の権益など経済問題についても実務的かつ具体的で、より善意のある政策を打ち出したと言える」と述べた。さらに「民進党政権以降この二年余りの間、両岸の交流はさらに頻繁となり、相手のやり方もさらに熟知するものとなった。とくに、この二年余り、小三通をはじめ投資保障協定や大陸の観光客受け入れ問題などにおいて、具体的な交渉を行っただけでなく、双方に経済的利益をもたらした。中国はさきの「十六全」で政権の平和的移行を完了し、両岸関係もすでに安定してきている。われわれは二〇〇四年の総統選挙までまだ時間的余裕があり、今年の上半期が両岸交渉再開の好機と見られる」と指摘した。
また両岸の交渉議題の優先順位について蔡主委は「交渉すべき議題が多く、両岸双方にそれぞれ優先したい議題があるはずだ。相互尊重の立場から、われわれの意見だけを公表することは差し控えたい。両岸が交渉の席についたとき、改めて議論したい」と述べた。
《台北『中央日報』1月2日》
ニュース
駐日代表が新年の展望語る
台日関係の更なる強化を
羅福全・台北駐日経済文化代表処代表は一月六日、官邸で新年会を主宰し、挨拶で「過去一年において、国際環境の変化と双方の努力のもと、台日両国の各分野における交流はますます頻繁となった。この関係が二〇〇三年にさらに一段階強化されることを期待する」と述べた。新年会には在日僑胞団体や日本交流協会の幹部、代表処の職員など、約百名が出席した。
羅代表は、昨年日本各界が台日関係促進に果たした努力に謝意を表し、「国際情勢の変化は台日関係強化に有益であり、両国が共通の国家利益に基づきいっそう緊密な関係を築くことを期待する」と語った。さらに僑胞界の各種交流活動への支持に対し政府を代表して謝意を述べ、僑胞が台日関係促進のため果たした橋梁の役割を称えるとともに「新しい一年も引き続き両国の関係が強化され、活動空間が拡大されることを期待している」と強調した。
《台北『自由時報』1月6日》
国・親協力で総統選挙へ
連戦氏が政権奪回に意欲
最大野党である国民党の連戦主席は一月七日、台北で毎日新聞のインタビューに答え「二〇〇四年三月の総統選挙には野党の統一候補者を選出し、総統と副総統は国民党と親民党から一名ずつ推薦する」と述べた。
連戦氏は「馬英九氏を副総統候補に推す声が高いが、宋楚瑜・親民党主席も出馬の意志があるため、両党間の協力に支障をきたすのでは」との問いに対し、「親民党、新党とも国民党から別れた党派でいわば同族であり、基本理念も類似している。国親両党の共通認識は団結し総統選挙に勝利することだ」と答え、「候補者選出の時期は党内制度により今年八月までに決める予定だが、野党団結に向けて出来るだけ早急に決定したい」と語った。連戦氏自身の出馬についてはコメントを控えたが、「今回の総統選挙は台湾の未来を救うため非常に重要だ。国民党主席として責務を果たし国家と社会に貢献したい」と政権奪回に意欲を示した。
《台北『中国時報』1月8日》
米中台の平等互恵は民意
張俊雄氏が各国VIPと会談
民主進歩党の張俊雄秘書長は一月八日、「国防安全保障と制空権の拡大」シンポジウム参加のため来台した米国、イギリス、日本、シンガポールなどの各国来賓と会談し、台湾の安全と両岸関係および地域の発展について意見を交わした。
張秘書長は「平和で安定した両岸関係とアジア地域の発展は、台湾が今後発展するための基礎である」と語り、米国、中国、台湾三国の関係について「米中台三国間における平等互恵の関係は、台湾国民の主流な意志である」と強調した。また「中国は台湾に対する武力威嚇を放棄し、両岸の平和的関係を構築する契機とすべきだ」と呼びかけた。さらに「米国は今後も一九七九年の『台湾関係法』に基づき、防衛を目的とする台湾への武器供給をおこない、台湾海峡の対話を促進し、民主、平等、平和の原則に則って平和安定の相互枠組みを構築し、共に長期的問題を処理するべきである」と表明した。
《台北『中央社』1月8日》
両岸軍事力は中国に偏り
元米国防次官補が指摘
ブルックス元米国防次官補は一月九日、「中華人民共和国の軍事現代化は台湾をしのぐ勢いであり、台湾海峡両岸の軍事バランスは中国側に偏りがみられる」と述べ、「台湾が国家の安全保障問題を克服することは、米国の利益と完全に合致している。しかし実際の戦闘体制に入れば、初期作戦は台湾の軍隊が自らこの責任を担わねばならず、台湾の軍は相応の戦闘準備を整えておく必要がある」と強調した。現米ヘリテージ財団アジア部主任の軍事専門家ブルックス氏は、この日「国防安全保障と制空権の拡大」シンポジウムで講演をおこない、「中国の軍備増強、国際的孤立、国防システムの改革、旧官僚体制および経済環境の悪化は台湾の国防における五大問題であり、台湾は相応の措置を講じるべきだ」と強く指摘した。また中国に対し「米国の台湾に対する安全保障は『台湾関係法』に明文化されており変わることはない」と述べた。
《台北『聯合報』1月9日》
武士道による「台湾精神と日本精神」
李登輝前総統記念講演全文
昨年十二月十五日、東京で「日本李登輝友の会」(阿川弘之会長)の設立大会が開催された(本誌二〇七八号参照)。当日、インターネットを通じて蔡焜燦・台北李登輝友の会会長が東京の参加者に祝辞を述べるとともに、李登輝前総統は武士道を根幹とした「台湾精神と日本精神」と題した講演をおこなった。以下は蔡焜燦氏の李登輝氏を改めて紹介する祝辞と、李登輝講演の全文である。
台湾の父・李登輝氏 蔡焜燦氏挨拶全文
日本の皆様、蔡:燦でございます。皆様ご多忙中にもかかわらず「日本李登輝友の会」の設立にご参加いただきまして、まことにありがとうございます。心より、お祝いの言葉と御礼の言葉を申し上げさせていただきます。
わが敬愛する李登輝先生は世界の民主主義国の人々からも、「ミスター・デモクラシー」と称されているほど、立派な方でございます。そしてわれわれ二千三百万の台湾人からは、「台湾の父」とも尊称されております。今日の「日本李登輝友の会」の設立については、私は日台両国のこれからの交流に対して、大きな意義があるものと確信しております。李登輝総統は総統を退かれたあとも、齢八十でございますが、なおかくしゃくとして、台湾と日本、日本と台湾の交流の深まりに努力されております。
皆様、台日断交後三十年になります。心ある日台の人々はどのような思いでありましょうか。かつては歴史を共にした台湾と日本ですが、近くて遠い国になっております。私は今日の「日本李登輝友の会」の設立は、二〇〇三年からの日台交流に大きく貢献するものと思っております。不可能を可能にした、無血の革命と言われた台湾の民主化、それから政権の平和移行を実現した台湾の李登輝先生は、身を退かれたあとも日台交流に意を注いでおられます。
李登輝先生は以前、「もし私に訪日が許されるなら、私は”奥の細道”を散策して、日本の心に触れたい」と申されておりました。深く日本を愛し、深く日本の文化を探求されている李登輝先生は、このように感動的な言葉を述べられました。「日本の心に触れたい」━━なんとすばらしい言葉ではありませんか。本来なら“奥の細道”を散策されるべきなのですが、いまのところは如何ともしがたく、非常に遺憾に思っております。どうぞ皆様、本日の「日本李登輝友の会」の設立を契機として、日台間で李登輝先生の“奥の細道”の散策を実現させようではありませんか。
本当にわれわれの日台交流は、われわれが担い、もっと先、われわれの孫のその孫の代まで続けていかなければならないと思っております。これをもって私の挨拶の言葉を終わります。
「台湾精神と日本精神」 李登輝前総統講演全文
「日本李登輝友の会」の阿川弘之会長、副会長の皆様、理事の皆様、執行部の皆様、ご来賓の皆様、こんにちは。ただ今ご紹介いただきました李登輝です。本日の「日本李登輝友の会」の設立にあたり、心からお祝いを申し上げます。
台湾と日本は地理的に近いだけでなく、両国民の間ではさまざまな、そして豊かな交流が行われてきました。私はこのような両国の親善関係の維持と発展を目指すという貴会設立の趣旨に、全面的に賛同するものであります。
さて、このように密接な交流が行われてきたことから、台日両国民には文化的にも精神的にも非常に近いものが感じられます。しばしば台湾人は日本人に、あるいは日本人は台湾人に、それぞれ親近感を持っていると言われるのもそのためなのでありましょう。これは国際関係の上においては、非常に得難いことなのです。
そのようなことから、このたび貴会の事務局から「台湾精神と日本精神」と題する講演を依頼されたわけですが、このテーマは、将来における両国のより良き関係を考える上で、きわめて重要なものかと思われます。そこで本日は、台湾人と日本人が共有するところの、精神面における特性なり長所なりを取り上げ、そのようなものを今後いかに発展、発揚させて行くべきかを、会場にお集まりの皆様とともに考えることができればと思っております。
さて、日本及び日本人特有の精神は何かと問われれば、私は即座に「大和魂」、あるいは「武士道」であると答えるでしょう。「武士道」は日本人にとっては最高の道徳規範です。しかもそれは日本人にだけでなく、世界にとってもきわめて貴重な財産であると考えているのです。
現在人類社会では、台湾海峡やパレスチナ、アフガニスタン、イラク、朝鮮半島など、各地において危険な動きが増大しています。さらに政治や軍事の面だけではなく、経済の面においても、世界同時不況の予兆が高まっています。このような危機的状況を乗り切っていくためには何を精神的指針とすべきかを考える時、私は迷わず日本の「武士道」を挙げたいと思っています。「武士道」とは人類最高の指導理念であると言って過言ではないのです。
しかしまことに残念ながら、世界が今最も頼りとするべき日本では、「武士道」も「大和魂」も一九四五年の終戦以降はほとんど見向きもされず、足蹴にされている状態にあります。もちろんその背景には、日本人の戦争という「過去」に対する全面否定、つまり自虐的価値観というものが大きく作用しているのでありましょう。「武士道」などと言えば非人間的、反民主的な封建時代の亡霊であるかのように扱われている状態です。
しかし、日本を苦悩させている兇悪犯罪の増加、学校の荒廃や少年非行、失業率の増大、官僚の腐敗、指導者層の責任回避と転嫁など、国家の根幹をも揺るがしかねない今日の由々しき事態は、武士道という道徳規範を国民精神の支柱としていた時代には、決して見られなかったことなのでした。つまりこれらの諸問題は、戦後の自虐的価値観とは決して無関係ではないということなのです。ですから「武士道」の否定は、日本人にとっては大きな打撃と言わざるを得ません。もちろんそれは、同時にまた世界の人々にとっても、大きな損失であると言うこともできるでしょう。
私は台湾人であり、日本人から見れば外国人ですから、日本に対してここまで言うのはどうであろうかという気持ちもありますが、ただ一人の人間として、やはり良いものは良い、悪いものは悪いと言うべきだと考えております。それに私は日本の教育も受けておりますから、日本の良いところはよく知っているつもりです。だから本日は私の信じるところをはっきりと述べてみたいと思います。
「武士道」とは日本人の精神であり道徳規範だと申しましたが、それは単に精神、生き方の心得であるというだけではなく、日本人の心情、気質、美意識であると言ってよいかと思います。さらに言えば勇気や決断力の源泉になるものであり、そして生と死を見つめる美学、哲学だとも言えます。
私は日本の統治が始まってから二十八年が経った一九二三年、現在の台北県三芝郷に生まれました。当時の日本の教育システムは実に素晴らしいもので、古今東西の先哲の書物や言葉に接する機会を、私たちにふんだんに与えてくれるものでした。また「教育勅語」には、「人間はどのように生きるべきか」という哲学的命題から、「公」と「私」の関係についての指針が明確に教えられていました。そのため旧制中学、高校時代は、学校教育や読書の影響もあり、自己修練の気持ちが強くなるとともに、「いかに生きるべきか」ということから、さらには「死とは何か」という大命題までを考えるようになったのです。人間は「死」というものを真剣に問い詰めて初めて「生」を考えることができるものです。つまり死生観について、当時の私は懸命に考え続けてまいりました。
そうした中で出会い、そして多大な影響を受けたのが新渡戸稲造先生の哲理、理論でした。そしてその中でも強い衝撃を受けたのが、その著書である『武士道』だったのです。新渡戸先生の『武士道』は、「日本の魂」を外国人に理解させるため、アメリカで英文で書かれたもので、一八九九年に初版が刊行されるや、世界中で大好評を受け、国際社会にデビューしたばかりだった日本の声価を一気に高めています。アメリカのセオドア・ルーズベルト大統領がこれを読んで大感激し、数百冊を購入して世界各国の要人に一読を薦めていた話はよく知られていますが、高校時代の私にとってこの書は、まさにカーライルの『衣装哲学』を止揚(アーフヘーベン)するものであり、死生観に関する私の疑問に明快な解答を与えてくれるものでした。
例えばそこで出てくる本居宣長の「敷島の 大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」や、吉田松陰の「かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ大和魂」といった和歌などは、人間は死んだ気になって全力疾走すれば、どのようなことでも成し遂げることができるということや、「生きるための死」というものを私に教えてくれました。
『武士道』で新渡戸先生は、武士道の徳目としてまず「義」を挙げています。「義」とは一言で言えば卑劣な行動を忌むということです。そしてそれは個人や「私」的なレベルに閉じ込めるべきものではなく、必ず「公」のレベルにまで引き上げて受け止めなければならない観念です。
そして次は「勇」です。「勇」は「義」と密接に結び付くもので、義のためではない勇気など全く価値がありません。昭和天皇の「降り積もる 雪に耐えて 色変えぬ 松ぞ雄々しき 人もかくあれ」の御製などは、まさにこの「勇」と「義」を止揚したものにほかなりません。
さらには愛である「仁」があります。そしてそれと密接に結び付くもの、つまり他人の感情を尊敬することから生じる謙虚、慇懃の心である「礼」があり、「礼」には絶対不可欠なものとして「誠」を挙げています。そして日本人が人倫の最高位に据えてきた、名誉の掟というべき「忠」があります。このような徳目が不即不離のものとして渾然一体となったものが武士道であると、新渡戸先生は説いているのです。
「武士道」という言葉が一般に定着したのは実は明治時代後半のことで、新渡戸先生の『武士道』の刊行などは、その契機になっていたようです。もともと「武士道」なるものが形成されたのは江戸時代のことです。天下泰平の世において、サムライの戦闘精神が、文化的に形式主義の磨きをかけられたものがそれでした。これに対して新渡戸先生の『武士道』が説くところのものは広義の「武士道」とでも言うべきものです。つまり副題に「日本の精神」とあるように、武士を中心とする日本人の精神一般についてなのです。
世界に誇る日本精神の結晶である「武士道」の形成について新渡戸先生は、日本で営々と積み上げられてきた歴史、伝統、哲学、風俗、習慣があったからこそだと言っています。もちろん武士道の淵源の一つとして中国の儒教の影響も挙げておりますが、実際は中国文化の影響を受ける以前からの、大和民族固有のものだと論じております。
死生観の上から言えば、儒教には「死と復活」という契機が希薄で、物事を否定するという契機がありません。だから儒教は「生」に対する積極的な肯定ばかりが強くなるという危険を孕むもので、善悪を定めた道徳でありながら、死生観をはっきりさせていないため、人間個々の生きる意義と、そこに建てられる道徳との間にかなりのずれが生じているのです。儒教は「文字で書かれた宗教」とも言われ、所詮は科挙制度とともに皇帝型権力を支えるイデオロギーでしかなく、人民の心に平安をもたらすものにはなりませんでした。そのようなものを大切に推し戴いてきた中国人は、結局空虚なスローガンに踊らされ、それで満足してしまう、あるいは面子ばかりにこだわり何の問題をも解決もできないばかりか、かえって価値観を錯乱させてしまうわけなのです。
新渡戸先生はクリスチャンです。彼は士族出身でもあり儒教的な教養を積んできたわけですが、結局は儒教における死生観の不在から、キリスト教に道を求めたのではないかと思います。そしてキリスト教という新たな道徳体系の下で、武家時代の物理的かつ現実的な権力を維持するための狭義の武士道ではなく、精神的かつ理想的な生き方を追求するためにある、しかも未来永劫に通じる道徳規範としての、広い意味での「武士道」の価値を再発見したのです。彼によって再発見された「武士道」は、日本人の「不言実行あるのみ」の美徳であり、「公」と「私」を明確に分離した、「公に奉じるの精神」とも言って良いでしょう。もちろんそれは、中国文化とは全く異質のものです。
ここで注目すべきことは、この「武士道」には教義も成文法もないということです。あるものと言えば有名な武士や学者のわずかな格言などだけなのですが、これは一体何を意味していたかといえば、つまりそれほどまでに「武士道」が、すでに日本人の血となり肉となって定着していたということでしょう。
だからこそ私は、終戦後における日本人の、価値観の百八十度の転換を非常に残念に思うのです。今日の日本人は一刻も早く戦後の自虐的価値観から解放されなければならないと思うのです。そのためには日本人はもっと自信と信念を持つことです。かつて「武士道」を築き上げた民族の血を引いていることを誇るべきなのです。そうすることで初めて、日本は世界のリーダーとしての役割を担うことができるのです。
次に台湾精神について述べてみましょう。台湾精神と言ってもそれをどのように定義するかはなかなか難しいことなのです。戦後の台湾は久しい間、中国大陸から渡ってきた国民党政権に統治され、その間中華世界の伝統的な政治システムである皇帝型権力構造が持ち込まれました。中国の政治文化はあくまで政権の維持と強化のための文化ですから、法治ではなく人治であり、「公」と「私」の区別は不明確です。「中国化」の政策の下でそのような価値観が台湾人に押し付けられ、その結果社会には腐敗が蔓延し、人々のモラルも著しく低下しました。
そこで私は総統に就任後、民主改革を推進したのです。台湾における民主化とは単に自由と民主の問題だけでなく、自ずと台湾のアイデンティティという問題も招来するものなのです。なぜなら台湾人は歴史的に自分たちの政権を持ったことがなく、この国の主人公であるという意識が必ずしも充分に育っていなかったからです。それまで台湾人の国民精神と言えば、中国人のそれであると決めつけられていましたが、アイデンティティを考える上で、当然台湾人独自の文化、精神とは何であるかを振り返らざるを得なくなりました。
台湾の民主化の過程において注目すべきは、台湾人社会が人治から法治へ比較的に整然と移行していることです。法治社会の実現には、人々の間に遵法精神が根付いていることが前提条件となりますが、台湾人はそれをすでに日本統治時代に身に付け、戦後の人治社会の価値観には完全には染まっていなかったのです。大陸の中国人であるならば、まずは遵法の精神とは何であるかから始めなければならなかったでしょう。
台湾は周りを海に囲まれた島国であり、閉鎖的な大陸とは明らかに異なる海洋国家としての歴史コースを歩んできました。東アジア航路上に位置することから、早くから貿易中継基地として繁栄もしてきました。原住民であれ荒波を越えて渡ってきた漢人の移民であれ、海洋的色彩の強い文化を持っていたということは容易に推測できます。まず海洋国家である日本の文化が台湾に入ってきた時、台湾人はまたたく間にそれを吸収しましたが、それに反して中国の大陸文化が結局根付かなかったのもそのためではないでしょうか。
また山岳、平地の原住民は諸種族に分かれ、漢人の移民も言語がさまざまであるように、複数のエスニックグループが存在しました。また西洋や日本などを含む外来政権からさまざまな文化的影響も受けてきました。そのほか、台湾の社会が開拓移民によって切り開かれ、発展してきたことも忘れてはなりません。こうした歴史的要因から、台湾の文化は多元的かつ多重的なものとなったのです。
同時に人々には進取、冒険の精神、克苦奮励の精神が育まれることになりました。台湾人は一生懸命頑張るといった意味の「打拚」(パーピィア)という言葉を好みます。この「打拚精神」が今日の台湾の繁栄を支えていることは疑いない事実です。
また「武士道」を尚武の精神として捉えるなら、タイヤル族に代表される原住民にもそのような伝統はありました。大東亜戦争において台湾原住民の高砂義勇隊が見せた勇猛精神、自己犠牲の精神はよく知られているところです。
さらに言えば、よく指摘される台湾人の「日本精神」(リップンチェンシン)がありますが、これも台湾の国民精神の重要な一つだと言わなければなりません。これは日本統治時代に日本人に学んだ、ある意味では純粋培養されたとも言える勇気、勤勉、奉公、自己犠牲、責任感、遵法、清潔といった諸々の良いことを指すものですが、実はこの言葉が人口に膾炙したのは恐らく戦後からで、中国からきた統治者たちが持たないところの、台湾人の近代的国民としてのこれら素養、気質を、台湾人自らが誇りを以って「日本精神」と呼んだのです。
言うなれば、この「武士道」としての「日本精神」があったからこそ、台湾は中国の人治文化に完全に呑み込まれることがなかった、抵抗することができたともいえます。これがあったからからこそ、この近代社会が確立されたともいえるのです。このように考えれば「武士道」というものは、台日を含むアジアの近代建設の原動力であったことが理解できます。
しかし、やはりそれでも戦後の台湾は、中国文化による悪弊を免れることはできませんでした。社会では公私の混同や実利主義の横行、モラルの低下といった悪弊が蔓延し、大きな問題となっています。それにはやはり、中国化政策の中での台湾のアイデンティティの損失が大きく影響しています。それは日本の終戦後の自己否定つまり伝統文化の否定からくる価値観の混乱と、全く同じ状況なのです。精神的な伝統や文化の重みを理解しようとせず、皮相的な進歩ばかりに関心を集中するのは現代社会の通弊だと言うこともできます。
そこで私は総統就任以来、積極的に「心霊改革」を提唱してきました。心霊とは精神のことで、それを変革することによって社会を古い枠組から脱出させ、そして新しい発想で新しい活力をどんどん生みだそうということです。これは政治改革よりも更に困難なことです。知識人には「理性」ばかりで「実践」が見られない、つまり理屈ばかりをこねて、一向に行動を起こさない傾向が目立ちますが、この改革はまず実践あるのみなのです。
そこで新渡戸先生の『武士道』です。私は「公」の精神を主軸に台湾人のアイデンティティを確立して行くためには、この一書をテキストにするのが一番良いと考え、実際これを用いて台湾各界の人々に「公」と「私」の問題を語っているところです。そのようにすることによって、かつて日本の「武士道」に学び、現在も心に潜在しているはずの台湾人の精神を呼び戻せるはずだと考えているのです。
同じように日本人に対しても、あらためて「武士道」を見直し、かつての誇りある日本人のアイデンティティを取り戻して欲しいと私は思うのです。私は余生を台湾に捧げることを決意しておりますが、それと同時に日本を励ますことも、自らの使命だと考えているのです。
私はかねがね“奥の細道”を歩きたいという希望を語ってきました。それは芭蕉の『奥の細道』に表わされている「わび」、「さび」こそ、日本人本来のうるわしい心情であり情緒だと思っているのです。私はいつの日にか日本の人たちとそこを訪れ、そうしたものを一緒に再確認したいと楽しみにしているのです。
これを以って、私の講演を終らせていただきます。ありがとうございました。
(完)
経済を第一に両岸問題は冷静に
『自由時報』(1月2日)
陳水扁総統は元旦祝辞のなかで、「経済第一」「構造改革」「平和安定の両岸構造確立」を重点政策として明示した。間違いなくこれらはわが国が直面している試練であり、不可避の問題である。
近年、国際政治と経済は急激に変化しており、さらに中国の要素も加わり、わが国の生存と発展に新たな問題をもたらしている。わが国を虎視眈々と狙っている中国は、わが国内部の問題に狙いをつけ、武力による威嚇を強めると同時に、経済による統一戦線工作を強化し、与野党ならびに国民の国家に対するアイデンティティーを分断させようとしている。
この状況に与野党は冷静に対処し、深謀遠慮をもって台湾の将来を考えるべきである。だが残念ながら、与野党は共に対立を繰り返しているのが現状だ。その結果、経済政策、構造改革、国家へのアイデンティティーに対する考えの相違がますます深まっている。こうした状況は、台湾にとって百害あって一利もないものである。
ところが野党は中国への投資の大幅開放と三通の積極的開放を主張し、経済当局もこれに同調して資金の海外移転を奨励し、国内産業の振興への資金振り向けを怠り、台湾経済再生を遠のかせてしまった。中国への投資を主張する者はいわゆる経済の「グローバル化」を根拠にしている。だがそれは自国経済の問題点を省みず、グローバル化を妄信しているにすぎない。産業と資本の一方的な中国移転は単なる「中国化」であって、「グローバル化」ではない。国内経済の問題点は十数年来の積弊によるものであり、ここで「中国化」を「グローバル化」にすり替え、企業や個人の無秩序な対中国投資を喧伝したのでは、台湾経済の空洞化を進めるばかりである。台湾が経済の自主性を喪失し、中国に生死を握られるところとなったなら、台湾はどうなるだろうか。まさか対中開放を主張する人々は、それを望んでいるわけではあるまい。
今やらねばならないことは明白である。まず国内経済構造を改革し、競争力を高める以外にない。目を外よりも内に向けることだ。そうしてこそ、両岸関係にも有利な状況が創出できるのである。
さらに中国は目下、表面上は繁栄しているが、内部には深刻な問題を抱えており、台湾経済の希望の拠り所などではない。まして三通が台湾を救い、企業は中国に進出しなければ倒産するというわけでは決してない。それは逆であって、台湾の未来は台湾経済の自主能力にこそかかっているのであって、さらに民主と法治の強化にこそあるのだ。民主の台湾と専制の中国との間にあって、これこそ台湾にとっての最大の安全弁となるのである。陳水扁総統が「国民の力を結集し、経済第一に全力を傾注し、構造改革を推進する」と表明した意味はここにある。
過去二年余、与野党ともに両岸問題で対立を繰り返し、産業の萎縮、経済の停滞、失業率の増加といった国内問題に心血を注ぐことはなかった。与野党は陳水扁総統の「経済第一」政策貫徹の表明を契機に、両岸問題は冷静に対処するようにしなければならない。そうしなければ、産業は中国に握られ、国家のアイデンティティーは危機に瀕し、台湾は本当に国家として世界地図の中から消えてしまうことになろう。
来来台湾
「懇丁風鈴祭」が開催中
交通部観光局が、一年を通じて月ごとに地方の祭をビッグイベントとして紹介している「台湾十二大地方祭事」のうち、一月のイベントである「懇丁風鈴祭」が一月一日~二月八日まで開催される。
台湾の最南端に位置する懇丁は美しい紺碧の海と珊瑚礁に囲まれ、夏はマリンスポーツのメッカとして賑わうが、秋から冬にかけては山から風が吹き降ろし、観光シーズンとしては不向きと考えられていた。しかし、この山風を逆手にとり観光ビッグイベントに発展させ成功しているのが昨年から開催されている「風鈴祭」だ。
今年は四千坪の広さの夏堤邑沙灘に場所を移し、さまざまな趣向をこらした十のパビリオンが設置される。このうち「風鈴テーマ館」には世界から約三百個の特色あるさまざまな風鈴が、また「創作風鈴館」には食器や流木、パソコンの部品といった身近な生活用品を使ったオリジナルの風鈴約八十点が展示される。
このほか、山風と風鈴、波などのさまざまな自然音がもたらすヒーリングに注目した「風鈴SPA」、音程の異なるさまざまな風鈴の音を聞き分けて出口を探す「風鈴迷宮」などもあり、大人から子供まで楽しめるものとなっている。
各パビリオンとも期間中、午前九時から午後九時まで参観できる。詳細は交通部観光局のホームページ(http://www.tbroc.gov.tw/)上でも紹介している。
《台北『民生報』02年12月25日》
台湾―韓国に定期チャーター便
台湾が韓国と断交して十年。この間、両国航空機の直航便は就航停止の状態が続いていたが、十二月二十二日、台湾の復興航空が断交後初めて台北と韓国の襄陽との間に定期チャーター便を就航させた。
台北―襄陽の定期チャーター便は今年二月十八日まで、毎週火曜、木曜、金曜、日曜に各一便ずつ、計三十八便が就航される予定で、三泊四日のツアーが一万六千九百元(約六万七千円)などとなっている。
両国間の直航便はこれまで国泰航空と泰国航空が就航しているだけで、旅客のニーズに対し便数が絶対的に不足していた。昨二〇〇二年一~十月の台湾から韓国への旅行者数は約十万一千人で、前年同期より約三%増加した。
《台北『民生報』02年12月23日》
澎湖空港に国際線が就航
澎湖空港が二〇〇三年の元旦付で国際空港となったのを機に、マカオ航空が一月三十一日~二月三日台北―マカオ往復チャーター便を就航させる。
チャーター便は百五十人乗りの飛行機で、旧正月(二月一日)の前後にあたることから多くの利用客が見込まれている。
澎湖空港は昨年九月に大規模な改修工事を終えてリニューアルオープンしたばかりで、国際空港の認可を得た澎湖県はこれを機に観光振興に力を入れており、マカオ以外にも現在日本やシンガポール、香港などの航空会社に対し路線の開設を要請している。
《台北『民生報』02年12月7日》
南台湾観光文化食堂車が運行
南台湾の観光に一役かってもらおうと、ユニークな観光列車が十二月十九日、お目見えした。
この「南台湾観光文化食堂車」は台湾南部の八県市が合同で運行するもので、各県市が一両ずつ受け持つ八両編成となっている。車両ごとに各地の歴史や文化の特色が打ち出されており、たとえば台南市の車両の外観には清朝時台湾を支配していたオランダ人を駆逐した英雄・鄭成功と、同時期の砲台遺跡「億載金城」がデザインされ、一目でそれとわかる趣向となっている。
各車両ごとに食堂車が付き、しかも車内で各地の特産物を販売するというユニークなもので、各車両には二十の座席が設けられている。
初日観光列車は屏東―嘉義間で運行され、途中停車駅ごとに盛大なオープニングセレモニーが催された。この観光列車は今後南台湾の観光行事に合わせて不定期で運行される。
《高雄『民生報』02年12月20日》
全方位演劇「八月の雪」台湾公演
東西文化が融合した新しい舞台芸術
ノーベル文学賞受賞者で原作者の高行健氏が監督した舞台劇「八月の雪」が、十二月十九日、国家戲劇院で、世界公演の初日を迎えた。
この日、舞台では京劇俳優の葉復潤、曹復永、呉興国らが京劇風の台詞を西洋のオペラ音楽に合わせて語り歌い、東洋の京劇と西洋のオペラとが絶妙に融合したこの新しい舞台芸術は、これまでにない視覚・聴覚効果によって、千六百人の観客を新鮮かつ衝撃的な感動で捉えた。陳水扁総統も本公演に訪れ、公演終了後には出演者全員と記念撮影した。
監督の高氏が「全方位演劇」と称するこの作品は、三幕九場から成り、唐の高僧「慧能」の生涯と二百五十年に亘る禅宗仏門の盛衰を描いたもので、「慧能」が物質的執着を捨て、悟りを開くまでがつぶさに語られていく。無我の境地を表すために、舞台照明はモノクロを基調に水墨画などを使い、神秘的な雰囲気をかもし出している。また音楽は中国出身でパリ在住の作曲家・許舒亜氏が手がけた。合唱団五十人、オーケストラ九十人にパーカッション四人を含む大編制で、フランスの指揮者マーク・トラウトマンがこれを指揮する。俳優陣は豊かな経験を持つ京劇役者が中心となっている。主人公「慧能」の二十歳~八十歳までを演じる呉興国は、映画「宋家の三姉妹」や演劇「欲望の城」などで国際的知名度も高い台湾の俳優だ。
監督の高行健氏は、五年越しでこの舞台の準備を進め、公演に際しては三カ月前の九月中旬に台湾入りして集中稽古を開始した。京劇俳優を起用した理由を、「この作品の舞台化には、身体能力も声量もある京劇俳優が一番理想に近かった」と語る。しかし舞台ではマイクをつけずにオーケストラを圧する声量をキープしなければならないため、高氏は役者たちに京劇の伝統的発声法をすべて捨てさせ、舞台全体に響かせるための発声方法をゼロから指導したという。またこの舞台を台湾で制作した背景については「東洋と西洋の文化が融合し共存する台湾だからこそ、この作品を創り上げることができた。台湾だけがその土壌を持っていた」と強調する。さらに「本公演は行政院文化建設委員会の協力のもと、総勢約四百名の国を超えた共同作業によって実現した。これは二十一世紀を切り開く新しい挑戦であり、伝統芸術の改良でも否定でもなく、東西文化が完全に融合した舞台芸術なのだ」と熱っぽく語った。
作曲家として二十年のキャリアを持つ許舒亜氏は「高行健氏と私の創作理念は完全に一致している。すなわち良い音楽に現代と古典の区別はないということだ。『八月の雪』には中国の伝統哲学と禅の思想がふんだんに盛り込まれ、また一方で西洋哲学と戯曲の真髄を兼ね添えている。これは今までどんな演劇にも表現できなかった」と語る。舞台を鑑賞した文化建設委員会の陳郁秀主任委員も「全身に鳥肌が立った。この作品の成功は創作芸術の未来に大きな一歩となった」と高く評価する。
五日間の公演チケットはすべて販売と同時に売り切れとなり、このため公共テレビでは文化建設委員会と高氏の許可を得て、舞台の全幕を一月二十五日に放映する予定だ。また「八月の雪」の製作現場を一年がかりで追ったドキュメンタリー番組も一月八日夜に放映される。
「八月の雪」の世界初公演は、全世界の芸術界からも注目を集め、米国、オランダ、フランスやアジア各国のオペラハウスやメディア関係者が大勢この作品を見るために来台した。高氏は「皆さんのご支持に心から感謝する。忌憚ないご意見を頂き今後に生かしたい」と述べている。台湾公演終了後は二〇〇三年十月にフランスで初演を迎える予定だ。
《台北『中央日報』‘01年12月20日》
お知らせ
タイペイ ゲームショウ二〇〇三 視察ミッション参加者募集
アジアの人気コンテンツが一堂に会するマルチメディアの祭典「タイペイゲームショウ」の視察と、参加コンテンツ各社トップとの懇談や情報交換を目的とした視察ミッション参加者を募集しています。二月十九~二十二日の三泊四日の予定で、Game Star Awardの表彰式およびレセプションへの参加、およびオンラインゲームメーカー、モバイルコンテンツプロバイダー、CGプロダクションなどの企業訪問を計画しています。このほか台北市内の電脳街、ネットカフェ、ソフトが売られているナイトマーケットの視察・散策も予定しています。また、製品探し、台湾への売り込み、技術提携など具体的な目的がある場合、商談の個別アレンジも可能です。
問合せ・参加申込み 台北市コンピュータ協会
http://www.tcatokyo.com/mission01(TGS2003).htm
春 夏 秋 冬
日本経済は目下多難であり、加えてイラク情勢のほかに北朝鮮問題も緊迫の度を増している。まさに日本は「悪の枢軸」をすぐ近くに持ち、内憂外患という他はない。小泉首相には抵抗勢力を排し、いっそうの指導力を発揮してもらいたい。ひるがえって日本の隣国台湾はどうであろうか。本コラムでもすでに何度か指摘してきたが、日本以上に厳しい状況に置かれている。
陳水扁総統は元旦祝辞(本誌先週号参照)のなかで「経済第一」「構造改革」、それに対中関係での「平和構造の確立」が今日の台湾にとっての重点政策であると表明した。現地有力紙の自由時報は翌2日の社説の中で、この政策を完遂しなければ「台湾は本当に国家として世界地図の中から消えてしまうことになろう」(本誌13頁参照)とまで言い切っている。
昨年末、陳水扁総統はインドネシア非公式訪問を予定していた。目的は台湾経済と東南アジア経済の関係強化促進である。ところがこの計画が直前に明らかになると同時に、中国はインドネシア当局に猛然と働きかけ、つまり圧力をかけ、インドネシア政府にビザ発給を拒否させてしまった。そこには中国からのインドネシアへの数億ドル単位の経済支援も提示されたと言われている。昨年7月、ナウル共和国に承認相手を台湾から中国に切り替えさせたのも、恫喝と金銭という同様の手法によるものだった。つまり中国は、あらゆる手段をもって台湾を封じ込めようとしているのだ。しかも中国は、台湾が自主路線を歩み、自己の意に副わねば武力を用いるなどと言っているのだ。
その究極の目的は、「統一」という名目の下に台湾を併呑するところにある。これを見れば、中国こそイラクや北朝鮮以上に「悪の枢軸」と言わねばならないだろう。その政体もまた、北朝鮮やイラク同様に一党独裁国家なのだ。これを眼前に経済再生を進め、構造改革を推進し、かつ平和を維持していかねばならないのだから、その苦労は日本の比ではない。
この中国に対し、日本はいまなおODAを提供しつづけている。これは中国の平和を乱す台湾併呑作戦への支援となりはしまいか。しかも中国は、東南アジア市場において日本経済を脅かし、かつ日本産業空洞化の元凶ともなっているのだ。日本の政財界もマスコミも、また市民社会も、北朝鮮問題同様にこの中国問題にクールに関心を持つべきではないのか。日本の将来にとって、このほうがさらに深刻かつ重大な問題のはずなのだ。
(K)