台北週報2083号(2003.2.13)
游内閣が就任一周年新段階に
経済振興など五大政策を鋭意推進
游錫堃・行政院長が1月27日、就任一周年の記者会見をおこない、同29日には行政院が立法院に送付する今後一年間の「施政報告」を採択した。そのなかで游院長は黒金の一掃、教育改革、雇用拡大、観光振興、投資奨励の五大政策を明示した。また、来年3月に予定されている総統選挙については、現在まったく考慮しておらず、今は経済振興と改革政策推進に全力を傾注すると強調した。
●経済再生に全力
游錫堃・行政院長は一月二十七日におこなった就任一周年記者会見において、景気回復と三通(両岸直接通商、通航、通信)問題について、「三通は経済再生の万能薬ではない。この問題は国内で十分討論すべきで、慎重に進めなければならない。これは両岸の協議によって実現されるべきものである。わが方は三通に対し十分な誠意を持っており、万全の準備もすでにできており、いつでも交渉のテーブルに着くことができる」と述べ、三通について消極的ではないことを明示した。さらに「交渉はいつまでにやらなければならないという時間的制限もないし、いかなる議題についても話し合える。場所もどこそこでなければならないという制限はない」と語り、今後十分な時間をかける姿勢を示した。
三通への基本姿勢については「台湾を深く耕し、グローバルな戦略思考をもって、中国に対し積極開放、有効管理の政策を適用する」と、従来の姿勢に変化のないことを明らかにした。同時に「三通の交渉は政府対政府の専権事項であって、公権力の行使である」と述べ、あくまで政府主導で行うことを明確に示した。さらに、中国との交渉についてはあくまで「対等と尊厳」は貫く決意であることも再度表明した。
また、春節(旧暦正月)に運航した両岸間のチャーター便について「これの運航は問題もなく順調に進んだ。今後、端午節(旧暦5月5日)と中秋節(旧暦8月15日)にもこれを前例としてチャーター便運航を認可するかどうかは、大陸委員会が関係省庁と協議し、新たな考えを示すことになろう」と表明した。
●五大施政方針を鋭意推進
景気については「すでに発進の準備はできており、風待ちといったところだ。風さえ吹けば帆を張って出航できる」と語った。具体的な数値については、今年の目標経済成長率を三・五パーセントに設定し、失業率は四・五パーセントにまで押さえ込み、民間参加による公共建設は一千億元(約四千億円)を予定していることを明らかにした。
同時に本年の重点政策を黒金(暴力団と金権政治)の一掃、教育改革、雇用拡大、観光振興、投資奨励の五項目を設定していることを明らかにした。
このうち社会治安の確保と黒金の一掃については、行政院が関連法の立法化を急ぎ、滞っている黒金案件の処理を迅速に進めるとともに、暴力団組織の壊滅と禁止薬物の取締りを強化すると明言した。
投資奨励については、本年度の重大投資の総額を一兆二千億元(約四兆八千億円)とし、奨励策によって台湾国内に総本部を設置する企業の数を百四社から二百五十社に引き上げ、開発研究センターを国内に開設する企業数を四十二社から六十八社に拡大させることを目標にすると表明した。また自由貿易港区の開設を加速し、立法措置を完了してから二カ月以内に進出企業の受付を開始する体制を整えることも、投資奨励策の主要目標として掲げた。
教育改革については、入試の簡素化と公平化、多元化を原則とした制度改革の推進を掲げた。さらに青少年の英語能力の全面的向上を図り、同時に語学力の地域間格差をなくすため、地方から優先的に外国人教師を導入していくことを明らかにした。観光振興策については、本年の外国人来台観光客の目標数を三百万人に設定することを明らかにした。この目標達成のため、韓国籍を含むノービザ制度の拡大、および観光客のショッピングに対する免税ならびに税払い戻しを実施すると表明した。
●副総統候補は考慮せず
また過去の総統選挙を見た場合、李登輝総統・連戦副総統、連戦総統・蕭万長副総統候補と、当時の与党ではそのときの行政院長が副総統候補となっている。このことから游錫堃行政院長が来年三月に予定されている総統選挙に、陳水扁総統と組み副総統候補として出馬するのではないかとも見られている。これについて游院長は「陳水扁総統と私は緊密な関係にある。ただし私が副総統候補になる計画はないし、考えたこともない。これまでも総統選挙のことを念頭に置いたことはない」と語った。同時に「現在は経済再生と改革の推進に専念する」と強調した。
《台北『聯合報』1月28日》
●経済再生に全力
行政院は一月二十九日、次期国会における行政院長の「施政報告」を採択した。主たる内容は游院長が一月二十七日におこなった就任一周年記者会見で表明した内容を文書化したものとなった。この「施政報告」は二月一日に立法院に送付される。
それによれば、今後一年は経済の安定成長を図り、就業の機会増大を促進し、さらに環境保護の強化を進めるという三大政策が行政の支柱に据えられる。これに関連する具体的目標は、本年の経済成長率を三・五二パーセントとし、国民一人当たり平均所得は一万三千三百五ドルとなり、失業率は四・五パーセントに抑えられ、消費者物価指数の上昇率は〇・八パーセントとされている。
このときの院会(閣議)においても、游錫堃・行政院長は補足として「社会治安の確保と黒金の一掃、教育改革、就業の機会増大、観光振興、投資の奨励を今年の五大重点政策に据える」と表明した。さらに游院長は「『挑戦二〇〇八年―国家発展重点計画』を促進し始めてより、その効果は陸続と現れている。この他にも投資の台湾優先政策の具体化を貫徹し、公共建設を拡大して就業の機会を増加させ、新経済構造への転換ならびに企業家の発展に有利な環境を創造する」と強調した。
「施政報告」は、今年の台湾経済の動向を「昨年の国際経済は復調の傾向を示し、それが台湾にとっては輸出額増大となって現れ、経済成長の主たる根源を成している」と説明し、これを明るい見通しの根拠としている。今回の「施政報告」が目標として提示した数値を昨年のものと比較すれば、経済成長率は昨年実績の三・二七パーセントから三・五二パーセントに引き上げられ、国民一人当たり平均所得は昨年の一万二千八百五十一ドルから一万三千三百五ドルへと上向き設定されている。
さらに游院長は院会において「行政院は海外からの観光客倍増計画を鋭意推進する。昨年の来台観光客は延べ二百七十六万人であった。前年比四・一七パーセントの増加で、これは世界各国の経済が低迷しているなかにあって得難い数値である」と述べ、経済上向き状態にある本年、観光客倍増計画の達成可能なことを示唆した。
《台北『自由時報』1月30日》
●経済成長率目標達成は確実か
台湾経済研究院は一月二十四日、今年の予測経済成長率を、昨年十一月に三・二七パーセントとしていたのを三・五パーセントへと上方修正した。また中華経済研究院では同数値を三・六パーセントと、行政院の目標を上回る見通しを立てている。 台湾経済研究院では、今回の上方修正の根拠を、高速鉄道への投資増加、政府による製造業への新規投資の五年間免税措置、科学産業の機械設備および原料の輸入に対する関税減免措置などを挙げている。
《台北『経済日報』1月25日》
週間ニュース・フラッシュ
◆台北―札幌に定期便運行
日本の 国土交通省航空局は一月二十三日、日本と台湾が台北―札幌間定期便運行について合意に達したと発表した。現在エバー航空が運行している台北―札幌間のチャーター便が定期便に昇格し、これにより同社の日本定期便航路は東京、大阪、福岡を含む四路線に増えることとなる。
《台北『中央社』1月23日》
◆国家安全会議が緊急体制
陳水扁総統は一月二十四日、国家安全会議および行政院の関連省庁の首長を招集し、米国の対イラク最新情勢について意見交換し、各省庁の対応策を確認した。また国家安全会議に対し旧正月前に緊急対応体制を整え、情勢の分析と判断をするよう指示した。
《台北『聯合報』1月25日》
◆旧正月明けに国・親交渉へ
連戦・国民党主席は一月二十四日「次期総統選挙に向け詳細を検討するため、旧正月明けには宋楚瑜・親民党主席と面談し、早急に共通認識を得たい」と述べ、遅くとも四月には国民党の候補者を決める意向を示した。また総統、副総統両候補を国民党から出すことは勝利につながらないとしてこれを否定した。
《台北『中国時報』1月25日》
◆ケタガラン学校は三月開校
陳水扁総統は一月二十四日、ケタガラン学校の校長就任が内定している陳師孟・校長らと面談し、同校を今年三月から正式に開校することを決定した。
《台北『自由時報』1月25日》
◆イラク攻撃に備え五カ条
游錫堃・行政院長は一月二十七日、「米国のイラク攻撃に対し陳水扁総統は国家安全会議とすでに討論した。行政院は国際反テロ活動を支持し、『反テロ活動支持、国際活動への適切な参与、国内政治と経済秩序の安定、テロ攻撃への対策準備、僑民の安全確保』の五カ条を提唱する」と表明した。
《台北『自由時報』1月28日》
◆正名には全国民の同意必要
正名(台湾の名を正す)運動を推進する僑民団体および国内の民間団体が、海外駐在代表処の名称を「台湾」に正すよう政府に要求していることに対し、游錫堃・行政院長は一月二十八日、「一部の民間団体は本件を非常に重視しているが、台湾正名については全国民の同意を得るべきだ」と指摘した。
《台北『自由時報』1月28日》
◆教師と親の七割が「連考」復活希望
『遠見雑誌』が全国七十校の生徒とその親、教師を対象に実施した「全国教育改革大調査」によると、七割以上の親と教師が「教育改革は支持するが『連考』(大学統一試験)の復活を希望」と回答したことが分かった。九年一貫教育に対しては九割の教師が「教育の妨げになる」、約六割の親が「内容が不明確」と回答した。
《台北『中国時報』1月28日》
◆簡体字書籍の輸入、販売などが解禁へ
行政院大陸委員会は一月二十七日、簡体字の学術書籍の販売解禁について基本的に同意し、新聞局が提出した「大陸地区出版物、映画フィルム、影像作品、ラジオ・テレビ番組の台湾への輸入、出版、販売、制作、上映、展覧許可法」の修正草案に同意した。
《台北『聯合報』1月28日》
◆独立派が8インチウエハー技術の流出に抗議
政府が8インチウエハー工場の対中移転を解禁したことに対し、台湾教授協会をはじめとする独立派団体が強くこれに反発し、失業者のこれ以上の増加を阻止するために解禁の延期を要求するとともに、産業が台湾に根を張る必要性を訴えた。同団体らは近く大型デモによる抗議もおこなう予定だ。
《台北『中国時報』1月29日》
深まる台湾資本の中国流出
貿易依存の高まりにからむ三通問題
●バランス欠く両岸の資本移動
財政部証券・期貨(先物取引)管理委員会がこのほど発表した最新統計によれば、二〇〇二年第三・四半期までに中国に投資した台湾の上場企業は五百六十七社にのぼり、このうち三十二社が昨年第二・四半期のうちに投資し、合計額は二千二百四十八億元(約八千九百億円)で、同第二・四半期に百八十七億元(約七百億円)増加していることが明らかになった。これら対中国投資企業のうち、資本が台湾に還流した額は昨年第三・四半期までの統計では三十二億三千万元(約百三十億円)にすぎず、両岸間の資本流動がまったくアンバランスになっていることが明白となっている。
最近8インチウエハー製造工場を中国に建設する申請をし、経済部が原則認可した台湾積体電路の例を見れば、同社がこのために中国に投資する予定総額は八億九千八百万ドルで、このうち三億七千百万ドルが台湾から持ち出されることになっている。このため同社の中国進出に対して、台湾内部では目下異論が噴出している。
ここで注目されるのは、前述の上場企業五百六十七社の投資合計額が二千二百四十八億元(約八千九百億円)であるのに対し、台湾積体電路の台湾持ち出し分が三億七千百万ドル(約四百四十五億円)というのは決して大きな比例を占めるというわけではないが、このあと台積電が前例となって中国に投資する電子関連企業が続出するかもしれないという点である。このことから、いま台湾国内では半導体産業に雪崩現象が発生した場合、産業の空洞化がますます加速するのではないかと懸念する声が強まり、政府が資本の流出に対しどのような有効管理政策を打ち出すかが社会の焦点となっている。
《台北『自由時報』1月25日》
●中国との関係は慎重に
台湾積体電路の中国進出に政府が原則同意し、また両岸間に春節直航チャーター便が運航されることになった状況につき、呂秀蓮副総統は一月二十四日、「中国には台湾に対する敵意が充満している。現在、台湾最大の危機は、台湾住民が敵意の充満している中国を台湾の最も近しい国、あるいは祖国と見誤ることである」と指摘した。
さらに台積電の件に関して、「政府は従来、ハイテク産業の中国進出に対して『積極開放、有効管理』の政策を打ち出したが、現在では『有効管理、積極開放』に転じる必要がある。台湾団結連盟は台積電の8インチウエハー工場の中国建設に強く反対しているが、これは台湾を愛する姿勢から出た声であり、尊敬に値する」と述べた。同時に「政府は台湾優先政策をさらに強化し、企業が台湾に根を下ろすことをいっそう強く奨励するよう希望する」と語った。
台湾団結連盟では一月二十三日、台積電の中国投資について、游錫堃・行政院長に、資本と技術の台湾流出を防ぐ観点から、「科学技術保護法を立法化した後にウエハー工場の中国投資を認可すべきだ」と申し入れた。同時に台連は三通問題に対し「中国が台湾を承認してこそ、話し合うことができる」との姿勢を改めて強調した。
《台北『自由時報』1月24日》
●対中国依存増加に規制必要
経済部国際貿易局が一月二十八日に発表した統計によれば、昨年一年間の中国に対する輸出依存度が輸出総額の二五%を越え、さらに貿易黒字幅二百八十億ドルのうち、二百四十億ドルが中国から得たものであることが明らかになった。
これに対し、経済部の黄志鵬・国際貿易局長は同日、「台湾の中国に対する輸出依存度の増加は、注意を要するとともに、ある種の行動を採らねばならない時期に来ている。これは国家経済の安全保障と貿易構造にとって危険な状況であり、中国への依存度を軽減する措置が必要だ」と指摘した。同時に「二〇〇八年の北京オリンピック、二〇一〇年の上海万博開催で中国の吸引力が増すことが考えられ、中国に対する貿易依存度の軽減は非常に困難なことだが、有効な手はあるはずだ」と語った。
《台北『自由時報』1月29日》
台日が安全保障情報の交流を強化
日本の陸上自衛隊OBが駐在官に
財団法人交流協会の台北事務所に、元陸上自衛隊将官クラスであった長野陽一氏がこのほど「主任」として着任した。日本の自衛隊関係者が台湾に駐在するのは、一九七二年の日台断交以来初めてで、産経新聞(一月二十一日付)によれば、長野氏の身分はすでに民間人だが事実上「防衛駐在官」の派遣となり、台湾との安全保障情報の共有を睨んだ人事と思われる。
以下、同報道によれば、台日間には今まで防衛に関する情報の交流がなかったが、現在は台湾海峡の安全保障問題などアジア情勢について双方でさらに意思疎通を図る必要に迫られている。今回着任した長野氏は、防衛大学出身、総合幕僚会議情報運用調整官、情報本部計画部長などを歴任し、北海道千歳市第一特区団長を最後に昨年十二月に退官した。階級は陸将補(少将)であった。
同産経新聞によれば、長野氏は今後、台湾の防衛状況について分析、収集にあたるとともに、台湾国防当局と意見交換もおこなう予定である。また現在台湾には、米国在台協会に複数の米軍関係者が駐在しているほか、韓国、シンガポールなどからも国防部門出身者が民間人の立場で情報収集活動をおこなっており、これら各国との情報交換も重要な任務となる。
さらに、昨年十月、中国海軍のミサイル駆逐艦がはじめて沖縄と台湾の間の海域を通過し、日台ともに米軍経由でしか情報確認できなかったという異常事態が発生するなど、周辺事態の迅速な対応が急務となっている現在、日本側は台日間の防衛情報交流を強化する必要性を重視しているものと思われる。
《台北『中国時報』1月22日》
●台日間の安保交流に新たな一歩
日本政府が自衛隊OBを台北の交流協会に赴任させたことで、台湾では両国間の安保交流への関心が高まっている。
黄昭堂・台湾独立建国連盟主席は「水面下でおこなわれていた台日間の地域安保関係を公にすることとなり、聡明な決断である」とこれを評価している。総統府国策顧問も兼任する黄昭堂主席は一月二十二日、メディアのインタビューに答え「退役少将の台北駐在は一九七二年の断交以来初めてのことだ。台湾側も近日中に日本へ将官を赴任させる予定で、こうした交流には大きな意義がある」と述べ、「台湾は本来、日米防衛ガイドラインの範囲に入っており、これはすでに確認されている原則である。退役少将の着任はむしろ遅すぎた感もあるが、この決断自体は聡明な判断だと言えよう。これは今後の台日間の安保交流の一助となり、また日本自身と東アジア地域全体の安全に寄与するものとなるだろう」と語った。
黄氏はさらに「日米ガイドラインの『周辺事態』の定義について、日本は『事態発生の性質によって判断するもので、地理上の範囲によるものではない』としている。この精神に則ったからこそ、日本は日米ガイドラインの範囲をペルシャ湾にまで拡大し、ペルシャ湾地域の平和維持に協力した。なぜなら不安定なペルシャ湾情勢もまた、日本の安全に打撃を与えうるからである。それならば日本の近隣国で緊密な関係にある台湾海峡もまた、当然その範囲内に入ることになる。台湾海峡で一旦問題が生じれば、日本は決して蚊帳の外にいることはできない。事態を注意深く観察し、問題を回避するために、日本が台湾の関係機関に将官クラスあるいは相応の階級の人員を派遣することは、軍事的に敏感な状況を把握するためには当然のことだ」と強調した。
日本が台湾との安保関係強化を望む理由について黄主席は、「主な要因は、中国が日本と地域の安全にとって脅威となっていることが挙げられる。去年十月、中国は日本の沖縄と台湾東海岸の間の公海にミサイル駆逐艦を通過させ、中国海軍の軍事力を『近海』から『大洋』に拡大したことを誇示した。また中国の東南沿岸には数百基のミサイルが配備されている。これらのことすべてが、中国に対する日本の警戒を招いている」と分析する。
また「中国がこの数年、軍事予算を拡張し続け、台湾海峡沿岸で数百基のミサイルを台湾に向けて配備していることは、日本をはじめその他のアジア諸国にとっても大きな脅威となっている。米同時多発テロ後の国際テロリズムの横行も、日本のアジア地域における安全保障の責任をさらに重くした。日本には台湾海峡を含む地域の安全を積極的に維持する責任がある」と強調し、「この数年における中国の大規模な軍拡は、表面的には台湾を標的としているが、実際には太平洋対岸の米国に照準を合わせている。台湾は中国沿海の出口を遮る位置にあるため、中国は直接米国に向けられない矛先を、まず近隣の台湾と、米国と同盟関係にある日本に向けてくるのだ。日本はこれに対し警戒心を持たねばならない。今回台日の地域安保交流に、ある種の協力と暗黙の了解ができたことは、双方の実質的関係の発展と捉えることができる」と分析している。
《台北『中央社』1月22日》
●現政権の努力は評価すべき
自衛隊OBの交流協会着任に関し、台湾団結連盟副秘書長で組織部主任の陳鴻基氏も一月二十二日、台湾と日本の実質関係発展についてコメントしている。
台日研究学会秘書長を務め、日本近畿大学で法学博士の学位を取得した陳氏は、「台湾と日本の関係は特殊であり、地理的に近いということのほか、歴史や文化の上でも深い繋がりがある。双方の経済、貿易、文化など各分野の交流も非常に活発であるが、一九七二年の断交後は、政治的に制限された関係となった。台湾政府はこの不利な局面を打破するために、さらに努力をする必要がある。」と指摘する。
またこれまで政府が日本との実質関係発展のためにしてきた努力について、前政権と現政権を比較し「現在の民進党政権の努力は、過去の国民党政権を上回るものである」と述べ、「国民党政権では、李登輝前総統が日本に深い理解を持っており、台日の実質関係発展を特に重視していた。だが残念なことに李氏以外の、例えば行政院、あるいは外交部などでは対日関係発展を促進するために実質的行動を起こしてはいなかった。民進党政権成立後、陳水扁総統は台日関係、それも双方の地域の安全保障関係をかなり重く見ている」と語った。
かつて国民大会代表および立法委員を務めた経験もある陳鴻基氏は「陳総統は日本との関係を非常に重視しており、すでにある基礎の上に、互いの交流と協力関係を積極的に強化する姿勢を貫いている。民進党で台日友好協会が設立されたほか、外交部では対日工作小組が組織され、総統府でも総統府秘書長が台日関係定期会議を主宰している。これらはすべて、陳総統が台日関係強化を重視していることを証明しており、対日関係を改善しようとする台湾の決意の表れだと言える」と述べた。
日本の政界とも多くの人脈を持ち、頻繁に連絡を取っている陳鴻基氏は「陳総統は台日の実質的関係の発展のために積極的に努力しており、日本側もこれを重く受け止めている。こうした状況は両国の実質関係をさらに一段階レベルアップさせる助けとなるだろう。日本と中国の間には国交があるものの、この数年中国の軍事予算は増加し続け、軍備を拡大しており、日本に大きなプレッシャーを与えている」と述べた上で、「日本は中国の強大な圧力に直面しているため、今後は米国と緊密な交流を図っていくほか、台湾との協力および交流を深めていく必要がある。台湾側も陳水扁総統がこれに応える形で対日関係を重視している。これは台湾自身はもとより、日本にとって、また東アジア地域全体の安全保障にとって非常に大きなメリットとなる」と分析している。
さらに、台日断交三十年後初めて日本の元自衛隊の退役将校が台北の日本交流協会に主任として着任し、台湾からもまもなく将官が日本に派遣されることについて「こうした交流の意義は深い」と語っており、「民進党政権が成立後、台湾と日本の政治家の相互訪問と交流はますます頻繁になっており、この関係は将来さらに大きく発展する可能性がある。台湾と日本の実質的関係は、今後も引き続き強化され、拡大し続けていくだろう」と強調した。
《台北『中央社』1月22日》
二〇〇七年に危険度増す中国の軍拡
米国の中国問題専門家が近著で研究成果発表
米ジョージ・ワシントン大学の中国問題専門家であるデビッド・サンバーグ教授が、『現代化の中の中国軍』と題する近著のなかで、「台湾問題の武力解決は、中国軍現代化の原動力の一つになっている。実際に台湾侵攻作戦を開始するかどうかは分からないが、中国は二〇〇七年にはこの方面の作戦準備を完了する」との研究成果を発表した。
同書の台湾関連の要点は以下の通りである。
中国は米国を第一線の潜在敵国と見なしており、特に米国が台湾海峡両岸問題で台湾を支持していることから、中国軍は台湾問題を解決するために、米国と一戦交える心の準備をしている。台湾の現有あるいは将来保持しうる軍事能力に対し、中国軍が想定している台湾侵攻作戦は、挑発、封鎖、空中戦と海戦、台湾本土攻撃、上陸作戦の五段階である。
一九九〇年代の初期に発生した第一次湾岸戦争は、中国軍にきわめて大きな衝撃を与えた。その後発生したバルカン半島でのコソボ紛争、二〇〇一年に米国がアフガニスタンに対して発動した反テロ戦争など、いずれも中国軍に啓示したものは大きく、構造問題として中国軍が現代化に向け発進する起爆剤になった。
特に米軍が何度か推進した対外作戦のあらゆる準備およびその過程は、中国軍が研究すべき主要な目標となった。その第一は、もし米軍が作戦を開始し中国軍と衝突した場合、中国軍はいかに有効な対抗手段をとるかである。第二は、米軍のハイテク兵器を駆使した局地戦争の展開を研究し、それを応用し中国軍にとって可能な台湾侵攻作戦のあり方を検討することである。
ここでサンバーグ教授は「この五年間における中国軍の現代化のスピードとその成果は、その前の二十五年間の収穫よりも多いものとなっている。中国軍の戦力増強と拡充は、経済発展と並行しているものではない。中国は何のために軍備を拡充し、どこに至るかを十分に認識している。その歩みは着実で計画的だ」と指摘する。
同書の説明によれば、中国の軍部は軍事力増強にとって重要なのは官僚、文化、技術、社会などソフト面からの支援であることを十分に理解している。米国がペルシャ湾、コソボ、アフガニスタンの局地戦争において、ハイテク兵器を駆使して指揮、管制、通信、偵察、情報などの総合的作戦を進めたことを、中国軍は注視している。
ここでさらにサンバーグ教授は、「目下中国軍の拡大にとって不足しているのはハード面であり、ソフト面は急速に拡充してきている。台湾の軍事力がハード面は一定量充実しているが、ソフト面に不足しているのと対照的である」と指摘する。
現在中国は海峡に面した沿海部に毎年五十基ずつ短距離弾道ミサイルを配備し続けており、二〇〇五年にはこれが六百基に達する。これも中国軍の準備作戦の一環である。これが二〇〇七年に中国軍が台湾侵攻作戦を発動することには直結しないが、中国が台湾武力侵攻の能力を備えたことを意味し、北京の指導者に選択肢を一つ与えることになる。
中国軍のハイテク兵器の装備は米国、EUなど先進国に十年から二十年遅れているが、近年ロシアから戦闘機、潜水艦、駆逐艦などを陸続と導入しており、スホイ戦闘機はライセンス生産までおこなっている。やがて中国軍は空中給油機、空母、早期警戒機等を配備し、それは今後五年で完成し、すでに保持しているミサイル技術と相俟って、東アジアの軍事バランスに大きな影響を与えることになろう。
サンバーグ教授は「中国軍が将来米軍と肩を並べることは考えられないが、中国が今日の軍備現代化のスピードを維持したなら、今後二十年以内にEUおよび日本などの軍事力と拮抗あるいは超越することになろう」と指摘している。
《ワシントン『中央社』1月30日》
ニュース
新幹線で日本が再度受注
受注総額は五千億円以上
台湾の新幹線建設の最終区間の軌道工事を三菱重工業など七社からなる日本連合が再び受注し、一月二十三日東京都内のホテルで、台湾新幹線の事業主体である台湾高速鉄路(台湾高鉄)と日本連合との間で調印式が行われた。
台湾新幹線は台北―高雄間を九十分で結ぶもので、二〇〇五年の開通を目指している。五つに分割した工区のうち、日本連合は第一区を除く四区間すべての受注に成功した。日本は軌道工事のほか「七〇〇系のぞみ」の車両と信号・通信システム、運行管理システムなども受注しており、受注総額は五千億円を上回る。
調印式では殷琪・台湾高鉄会長が「日本連合が工区の大半を受注したことで、台日協力のよい基礎が築かれるだろう。開通まで二年余りしかなく、日本連合の技術と能力が試されていることはもちろん、日本の新幹線の初の海外輸出としての期待も大きい」とあいさつした。
《東京『聯合報』1月24日》
企業の台湾立脚呼びかける
南科園区に管理局開設
一月二十六日、南部科学工業園区内に管理局が開設された。南部科学工業園区は台南県新市の一期、二期を合わせた千三十八ヘクタールと、高雄県路竹基地の五百五十二ヘクタールで、このうち新市一期が八割方開発済みで、二期と路竹基地は現在公共設備の敷設工事が進められている。半導体大手の台湾積体電路と聯華電子は同地に8インチウエハー工場を稼動させており、近く12インチ工場も建設する予定だ。
管理局開設式典をみずから主催した陳総統は挨拶のなかで「南部地域はこれまで土地と労働力を集約させた重工業と石油化学工業が主要産業で、北部との格差があった。科学園区の設立により南部産業がレベルアップし、南北の格差も是正されるだろう。この不景気のなかで同科学園区の業績は二倍に伸びている。企業は中国に投資する前にまず台湾に投資すべきで、それには南部科学工業園区がふさわしい」と強調した。
《台北『中国時報』1月27日》
米がキッド級売却に同意
台湾の意向に沿い一五%減価
信用性の高い情報筋によると、米国防部は台湾が求めていたキッド級駆逐艦四隻の売却額および装備現有維持について同意したという。
台湾は立法院が通過した予算内での売却を求め米国がこれに応じたため、台湾は当初より約一五%、額にして約四十三億元(約百七十億円)分安く購入できることになった。実際に台湾に売却されるにはまだ時間がかかると見られているが、国内では米国が台湾との軍事、安全保障での協力に対し極めて大きな善意を見せたとして高く評価している。
また、米経済学者の論評によると、米国政府は二〇一〇年に台湾にイージス艦を売却することですでに同意しているとしており、キッド級駆逐艦はそれまでの代替措置と位置付けている。キッド級駆逐艦の購入については国内の与野党および学界で意見が激しく対立していたが、米国の決定により論争は収まるものと見られている。
《台北『自由時報』1月27日》
米議員がWHO加盟支持を提出
EUも台湾の加盟を期待
米下院「国会台湾連線」の四人を含む九人の下院議員が一月二十九日、台湾の世界保健機関(WHO)へのオブザーバー参加を米国は支持、協力し、国務長官が米代表団にそのための指示をおこなうよう要請する内容の法案を連名で議会に提出した。台湾のWHO加盟への支持と協力を求めた米議員による法案の提出は、今年で三年連続となるが、昨年三月に提出された法案は上下両院で可決されたあと、ブッシュ大統領の署名を経て効力を得たものの、国務省は今年四月「WHO加盟国の台湾への支持率が低いため、実現は困難だ」との報告している。
一方、EU対外関係委員会のパッテン委員長はこのほどメディアのインタビューに応え「EUは『一つの中国』を原則としているが、台湾の国際機関への加盟を一貫して支持している。WHOにも加盟し、台湾が国際援助と衛生問題でより活躍することを期待している」と述べた。
《ワシントン『中央社』1月30日》
台湾の誕生―フォルモサ
十七世紀の台湾、オランダ、東アジア展開催
●台湾を主体とした文化の意義
国立故宮博物院、教育部、ならびに中国時報社の共催による「台湾の誕生―フォルモサ:十七世紀の台湾、オランダ、東アジア」展が一月二十三日、台北の故宮博物院で開幕した。このフォルモサ展は関係者がおよそ二年の歳月をかけ、国内外の三十四カ所の公・私立博物館ならびに個人から借り受けた三百点を越す文物が、①船舶と甲板(十七世紀の台湾と諸外国を結ぶ主要な交通機関)、②アジア地区(台湾を軸とした東アジアの動向)、③オランダ(貿易を通しての東進)の三大テーマに分類して展示されている。
展示品のなかには、オランダでは国宝クラスの「鄭成功とオランダの投降協議書」をはじめ、十七世紀の油絵、武器、鹿皮製の地図など、普段では見られない貴重な文物が含まれている。それら実物がシミュレーションと融合し、時空を越えて十七世紀の台湾と東アジアの関わりを再現している。
この特別展を担当した故宮副研究員の林天人氏は「この特別展は台湾・オランダ文物展が発想の出発点になっており、その後多数の関係者、研究者らの努力と、台湾をはじめとする関係各国の博物館、学術機関などの協力によって開催することができた。台湾を主体とした文化の意義がこの特別展から汲み取れるはずだ」と語る。さらに林氏は「台湾史は長くはない。だが米国史の二倍は超える。台湾の人々においても、台湾の歴史は十七世紀に始まると知ってはいても、その時代についてはあまり詳しくない。故宮博物院が今回、全力をあげてこの特別展を開催したのは、人々の台湾史への興味を喚起し、知りたいという願望を満たすためである。今回展示した三百点を越す文物は、偶然当時の台湾に発生した歴史をあらわすものではなく、そこから十七世紀の台湾が歴史の十字路の上に位置していたことが理解できるだろう」と語る。
●「台湾を認識する」教育の一環
教育部でも、全国の小・中学校に「台湾を認識する」教育の主要過程の一環として、このフォルモサ展を参観するよう奨励している。
杜正勝・故宮博物院院長も二十三日、「これは故宮博物院が初めて、台湾の社会と土地に入り、対話し相互連動した文物史料展である。このフォルモサ展は台湾の民衆にとって重要な意義がある。台湾には数千年におよぶ先住民社会の歴史があるが、十七世紀になってから多元的文化と多数のエスニックグループの時代に入った。
この時期に非常に多くの文化がこの土地で混在し、成長したということは、十七世紀から二十一世紀の今日に至るまでの歴史において、重要な意味を持つものである」と、この特別展の意義を語った。
●台湾人としての意義を体得
陳水扁総統も初日の一月二十三日にこの特別展を参観し、「これはすばらしい。全国の人々が故宮博物院に来てこのフォルモサ展を参観し、台湾人としての認識を強め、この土地に住む意義を体得してほしい」と語った。さらに「台湾は小さいが、十七世紀の台湾はすでに東アジア貿易のなかで重要な地位を占めていた。現在台湾経済は世界不景気の影響を受けているが、悲観することはない。歴史を見つめ、今日の世界構造のなかで自己の位置を見極めれば、時代の流れを掌握することができる。これが歴史の啓示である」と述べた。
なお、この「台湾誕生―フォルモサ:十七世紀の台湾、オランダ、東アジア」展は四月三十日まで無休で開催されている。問い合わせは故宮博物院℡〇二・二八八一・二〇二一。
《台北『中国時報』1月24日》
温故知新で台湾の活力を見る
中国時報』(1月24日)
故宮博物院と中国時報社の共催による「台湾の誕生―フォルモサ:十七世紀の台湾、オランダ、東アジア」展が開幕された。この特別展は国内外の博物館から貴重な文物を借り受け、十七世紀の台湾を明瞭に再現するものである。重要なのは、この歴史の再現を通し、人々がこの台湾に住んでいることを自覚し、同時にそれを啓発することである。
十七世紀というのは、先住民の社会を一時的にヨーロッパの植民者が占拠し、さらに漢人移住民が主体性を形成していった時代である。この当時、明朝は海禁を施行し国力も衰えていたが、沿岸住民は自ら船団を組んで東アジアに進出していった。同時に大航海時代に入ったポルトガル、オランダ、スペインなどが東アジアに進出し、多くの貿易拠点を設けた。日本も対外貿易が盛んで、台湾はそれら三種類の勢力が交差する貿易の交差点となっていた。当時、台湾はまだ中国の版図に入っておらず、したがってこの時期を「台湾の誕生」と言えるのであり、同時に東アジア貿易の中心地となっていたと言っても過言ではない。
この時代、台湾はオランダの植民地となったが、海上に勢力を張っていた鄭成功が大陸の拠点を失い、台湾、澎湖に目を向け、オランダ勢力を駆逐した。これは東アジアにおいてヨーロッパ殖民勢力が敗退した最初であり、同時に台湾で漢人勢力が主力となったことをも意味する。さらに鄭氏政権の滅亡によって、この時期に台湾は中国の版図に入った。明らかにこの時代は明朝、オランダ、鄭氏政権の興亡が大きな影響を与え、さらに台湾が主体性を示し、同時に漢族文化を吸収していった時期ともなるのである。
ここで注目されるのは、鄭成功とオランダ側との協議書である。それは、勝者が敗者を全面否定する中国の歴史とは異なっていた。基本的に両者は平等意識と包容力を示すといった状況下に、オランダ植民者は尊厳をもって台湾から引き揚げていったのである。
十七世紀の東アジア海域の歴史において、台湾は地の利から貿易の中継地となり、さらに全中国で最も国際化の進んだ地域となっていた。同時にこの時代は、オランダ時代と鄭氏政権時代を経て福建、広東から大量の移住民が入り、各種族の融和が絶え間なく進んだ時期とも言えるのである。
このフォルモサ展によって、人々はこの土地に対する新たな発見をするものと確信している。台湾の誕生を認識し、その歴史が国際勢力の消長と密接不可分であることを知ると同時に、国際的な目を持つことこそが、台湾の基本的な生存の道であることも認識することになるだろう。また、人々は台湾が十七世紀においてすでに東アジア貿易の中心地となっていたことを知り、同時に今日の政府が進めている、台湾をアジア太平洋オペレーション・センターにし、国際運輸の中心地にしようとする政策が、四百年前の再現であることも知るだろう。
だが、四百年後の今日にそれを実現するには、移民史が教える通り、包容力が必要なこともこの歴史から学ばねばならない。各出身別によって構成される台湾社会が、どう相互に包容力を発揮し活力を維持するかが、今日のわれわれに与えられた課題なのである。
来来台湾
馬祖に「南竿空港」開港
馬祖島に一月二十三日、北竿空港についで二つ目の空港となる「南竿空港」が開港した。
四年の工期と総工費約二十二億元(約八十八億円)をかけて完成した「南竿空港」は、広さが三十八ヘクタール、滑走路の長さは約千五百メートルで、最大五十六人乗りの小型機が離着陸できる。管制塔もターミナルビルも福建北部に伝わる伝統建築の赤レンガ造りとなっており、馬祖地域の特色をよく現わしている。
同日行われた開港式にはこの日初めて馬祖島を訪れたという游錫堃・行政院長をはじめ林陵三・交通部長ら主要関係閣僚、軍関係者、各界代表のほか地元住民も出席し、総勢千人近くが集まるなか銅鑼の演奏に合わせて龍と獅子舞が奉納され、賑やかに開港を祝った。
このなかで游院長は「馬祖島は台湾本島からやや離れた場所にあり、発展にも多くの制約がある。南竿空港の開港で南竿地域の交通が便利になるだけでなく、馬祖島の観光発展にも大きなプラスとなる」と期待を述べた。
馬祖島の政治や経済、文化の中心は南竿地域にあり、人口の七割が集中している。これまで南竿地域の住民は空港のある北竿まで船で渡り、空港で飛行機に乗り換えて台湾本島へ移動するしかなかった。
今後台北―馬祖島間は立栄航空が北竿、南竿の両空港合わせて一日往復十八便を就航させる計画で、このうち台北―南竿間は十二便が予定されている。
南竿空港の開港は馬祖と大陸の福州を結ぶ小三通に対しても重要な役割を担うと期待されている。立栄航空は大陸の台湾ビジネスマン向けに小三通と台湾本島への航空便をセットにしたパックのほか、一般の観光客向けに台北と北竿または南竿往復の航空券と馬祖島での一泊二日の旅行がセットになったパック(一人約三千三百元〔約一万三千円〕から)を打ち出している。
《台北『民生報』1月24日》
日月潭「桜まつり」開催中
日月潭の九族文化村で、一月十八日から「桜まつり」が開催中だ。
園内に植えられている桜の樹は二千本を越え、台湾中部では最大規模を誇る。桜の樹の下で聴くピアノ演奏や花見をしながら楽しむ茶芸、桜の花の創作料理を味わうなど関連イベントも盛りだくさんだ。三年目の今年は、日本との交流を図る目的で二月九日に日本桜協会のメンバーと「ミス桜」を招き、日本から持ってこられたさまざまな種類の桜の苗木約五十本が園内に植樹される予定で、同日は日本人旅行者の入場料が無料となる。このほか、二月十五日には石川県の「よさこい祭」と山形県の「花笠音頭」の踊りも披露されることになっている。
今回「桜まつり」に招待された日本桜協会は戦前から世界各地に桜の樹を贈る活動を行っており、現在台湾の桜の花見の名所となっている阿里山や陽明山、大雪山などは、みな同協会が贈った桜の樹がもとになっている。台湾への桜の樹の贈呈は長い間続けられたが、なぜか十年前に中断したまま現在に至っている。このため、主催者側はこれを契機にふたたび日本との桜交流が再開され、日本人観光客が増えることを期待している。
「桜まつり」は二月二十八日まで開催され、期間中は台中市から九族文化村まで午前七時から一時間おきに専用バスが運行される。
《台北『聯合報』1月27日》
桃園国際空港に新交通システム
桃園国際空港内に一月十八日、新交通システム(MRT)が運行する。二つのターミナル間を移動するもので、空港でのトランジット客や見送り客、空港職員らが利用できる。ラッシュ時は二~四分、それ以外は四~八分に一本の間隔で運行され、片道わずか九十秒で移動でき、ターミナル間の移動がスムーズになる。
MRT運行にともない、管制区域内の送迎バスは運行停止となるが、管制区域外の送迎バスは引き続き二〇〇三年の七月まで運行される。
《台北『聯合報』1月12日》
英語教育強化の試みと問題
外国人英語教師の積極招聘と習熟度別授業の導入
●外国人教師四百~六百人を招聘
国際化を進めるため、政府は学校での英語教育を重視する方針を打ち出している。これに基づき教育部では現在小学五年生から実施している英語教育を、二年後には三年生まで引き下げることを決めている。現在も学校によっては専門の英語教師が不足しているが、二年後に必要とされる英語教師の数は全体で約二千人とされており、このうち国内で供給できる人材は約千八百五十人で、残りの約百五十人が不足すると予測されている。
国内の英語教師の不足を補うとともに、とくに僻地の英語教育を強化する目的で、教育部は外国からの英語教師を千人規模で積極的に招聘することを検討している。しかし、外国人教師に支払われる報酬が月六~九万元(約二十四~三十六万円)と国内の英語教師に比べて高すぎることや、文化的弱者の立場にある僻地の児童に、強力に外国人教師の教育を受けさせることへの批判が出され、大きな論議となっている。
こうしたなか、英語教育の専門家らで構成されている「教育部英語教育諮問委員会」は一月十八日会議を開き、「外国人英語教師の招聘はメリットよりデメリットが大きい」とする見解をまとめ、教育部に対し計画の見直しを要請した。委員からは「日本や韓国の失敗例からもわかるように、外国人教師のなかには英語は話せても指導法のわからない人が多い。また英語に対する文化的優越感の強い人もあり、そのために国内の教師がかれらの尻拭いをさせられることになる。同じお金をかけるならさらに多くの国内の教師の育成に使うべきで、あるいは国内にいる外国人をボランティア教師として募ってもよい」などの意見が出された。
これに対し范巽緑・教育部次長は「外国人教師の招聘はまだ検討段階に過ぎず、教育部としては専門家の意見を踏まえ、外国の政府や著名大学、学術機関などと長期にわたる協力関係を築くことで教師の質を確保していきたい。当初予定していた千人規模の招聘は行わず四百~六百人程度とし、小規模で試験的に実施する。招聘する外国人教師についても、かれらの文化的優越感をもって児童の台湾への意識を損なうことのないよう、具体的には台湾に興味を持ち、中国語を学ぶ意欲のある人材が相応しい」との考えを示した。
また、呉財順・教育部国教司長は「今後は国内の教師を主とし、外国人教師は補助的な役割とする。つまり、外国人教師は第一線には立たせず、国内の教師の育成や協調役となってもらうつもりだ。かれらの報酬が高いとの指摘もあるが、外国人には二〇%の税金が課せられており、しかも招聘期間は一年間で、その他福利厚生がないため、国内の教師の給料とそれほど違わないはずだ」と強調した。
●ボランティア教師十八人が派遣
外国人教師に対する報酬が高すぎることが論議を呼んでいるなか、金車教育基金会はこのほど米国の教育機関を通じて、無報酬のいわゆる「ボランティア英語教師」十八人を招聘した。十八人は旧正月(二月一日)以降、嘉義と南投両県の僻地の小学校に半年間派遣される予定で、食費と宿泊費は両県が負担することになっている。
十八人はいずれも意欲にあふれる若者で、中国語は話せないものの、すでに英語の基礎のある五・六年生を対象に授業を行い、しかも一人ひとりに国内の英語教師がサポートにつくため問題はないという。
●英語と数学で習熟度別授業
ところで、学校現場では児童生徒の英語と数学の学力の違いの大きさが指摘されており、このため教育部では都市部の一部の小中学校を対象に試験的に習熟度別の授業を実施している。このうち台北市至善中学校では、成績をもとにクラスを三つに分け、学期ごとに試験を実施し、クラス替えを行っている。
習熟度別授業の導入により、できる生徒は効率がよく、またできない生徒も無理のない授業内容となり、生徒の成績も伸びていることから、親からも好評だという。
《台北『聯合報』1月19日ほか》
台湾の放送と日本の関わり
統治時代~現代を繋ぐ密接な関係
十二月二十一日、新日台交流会では、約二十年間放送の仕事に従事され、台湾の放送事情に精通しておられる佐藤研さんをお招きし、台湾の放送について講演して頂いた。以下はその要旨である。
○ ○ ○
台湾では今、毎日のように日本の番組が観られ、哈日族(ハーリーズー)と呼ばれる日本好きの人々が大勢いる。台湾の放送が発展し、こうしたブームが起るまでには、戦前からの日本との深い関わりが影響していた。今日は台湾の放送と日本の関わりというテーマで話したい。
●前史―戦前のラジオとテレビ
台湾で最初の放送が始まったのは、NHKの前身である東京放送局の開局と同年の一九二五年である。この年は台湾の日本統治三十周年で、総督府で開かれた記念展覧会でラジオの試験放送を始めたのが始まりだったという。その三年後の二八年には総督府直営の台湾放送局が開局し、台湾でのラジオ放送が正式に開始した。一九三一年にはNHKの別法人という形で社団法人台湾放送協会が設立された。翌三二年には台南放送局、三五年に台中放送局、四十年には民雄に百キロワットの大電力放送局が開局した。当時使われていたNEC製の設備はその後改修工事を経て、今も使われているそうだ。日本統治時代の鉄道や建物は語られることが多いが、放送のインフラも今に引き継がれていることがわかる。そして日本の敗戦後、台湾放送協会の建物や設備はすべて中華民国政府に接収され、中華民国政府の放送協会となった。これが中国広播公司(BCC)として現在も続いており、基本的には戦前の台湾放送協会の放送施設が多少の改修や改築を経ながら現在に至っている。また当時の放送言語は日本語、台湾語、客家語などであった。
一方、テレビはというと、一九六二年に台湾テレビ(台視、TTV)が開局した。日本では一九五三年にNHKが開局されたが、その九年遅れで、NHKと民放の放送網が完備し、部分的にカラー放送も始まった頃にようやく台湾のテレビがスタートしたわけである。台視は台湾省政府五〇%、民間資本五〇%で創設されたが、そのなかには日本電気NEC、東芝、フジテレビといった日本の資本も入っていた。その縁で今でも台視とフジテレビは業務提携を結んでおり、非常に密接な関係が続いている。一九六九年には中国電視(中視)、七一年に中華電視(華視)が開局し、ようやくその後長く続いたいわゆる「三台」時代がスタートすることになる。台視から中視設立までには七年間のブランクがあり、今でもナンバーワンのテレビ局というと台視を挙げる人が多い。また三社とも半官半民とはいえ、実際は国民党支配の力が強く働いており、官制のテレビというイメージが非常に強かった。一九六十年代には台湾で中国の北京語を普通に解する人は少なかったと思われ、テレビが人々に伝えるメディアとしてうまく社会状況にマッチして機能していなかったというのが、六十年代、七十年代、あるいは八十年代半ばまでであり、特にテレビ放送ではその傾向が強かったと思う。
●新しい「第四台」の時代
そういう状況を経て、八十年代後半にはいわゆる「第四台」の時代が始まる。第四台というのは第四チャンネル、第四のテレビ局という意味で、実際には一九九七年開局の全民民間電視台(民視、FTV)がそれに当たるが、それ以前に八十年代半ば、実は私が一番初めに台湾に行ったのが一九八七年だが、すでに第四台というのが語られていた。第四台というのはあるときはビデオ、あるいはケーブルテレビ、NHKの衛星放送や香港からのスターテレビを指していたことがあり、要するに「三台以外のチャンネル」という意味で非常に幅広く使われていたようだ。
八七年に戒厳令が解除され、政府の目標が軍備最優先から社会資本の充実へと変わり、技術の進歩で国民所得も高くなってきた時期、それが八十年代後半から九十年代であり、メディアの状況も大きく変化した。八十年代には家庭用ビデオ機が開発され世界的ブームとなり、台湾でも八十年代半ばから徐々に普及してきた。日本では八十年代半ばからレンタルビデオ店が出てきたが、台湾ではその頃まずMTVという、カラオケボックスのような小さい部屋で借りたビデオを観るという店が流行り始めた。ここにあったのはほとんどがハリウッド映画だったようだ。その後家庭にビデオが普及しレンタルビデオ店ができると、日本のテレビドラマも多数出回るようになり、非常に多くの人が観るようになった。当時日本はバブルの中後期でいわゆるトレンディードラマ全盛期だったが、戒厳令が終わり都会の若者が自由な雰囲気を満喫し始めた頃で、日本のトレンディードラマのほうが台湾の三台のドラマよりも身近に感じられたのではないかと思う。もうひとつの第四台、日本のNHK衛星放送が始まったのは一九八四年である。難視聴解消のために、衛星を上げて山奥や沖縄などの離島向けに放送していた番組が簡単なアンテナとチューナーだけで受信できたため、日本の衛星放送を観る人が八十年代後半頃から爆発的に増えた。当時は日本より台湾のほうが視聴者が多かったほどである。三台で日本のテレビ番組が解禁されたのは一九九二年の台視開局三十周年のことで、「北の国から」が解禁第一号で放映されたことを覚えている。また、九三年に「有線電視法」が制定され、ようやくケーブルテレビが合法化され、チャンネルが大幅に増えた。
●哈日族、WTO加盟と台湾のテレビ 日本というものを台湾のメディアで制限していた状況が変わり、国民党のメディア政策のなかでの日本の立場ががらりと変わったのが九二年だが、その後は日本専用チャンネルも出てきた。五十年の日本統治で残っていた日本文化と、八十年代以降のメディアの自由化で増えた日本の番組、これらが今の「哈日族」の下地となったのだと思う。
かつて台湾は発展途上国で、番組の売り込みをしても高く売れないというイメージがあったが、今や台湾のテレビ局は、日本のテレビ局にとってお得意様的存在で、日本のほとんどすべての番組が台湾の版販対象になっている。日本の番組は専門チャンネル以外に台湾の地上波でも放映されているので、買い手は非常に多い。また最近の特長として、台湾では韓国のドラマがよく放映され、人気も高まっている。韓国ドラマの制作能力向上もさることながら、韓国側でも台湾を大きな市場として重視し売り込みを強化したためで、今後は番組の売り込みに際し価格競争が厳しくなるだろう。ただ、日本の番組はドラマ以外にバラエティや紀行などジャンルが豊富なため、シェアとしてはまだ大きいと言える。国交がないために、台湾での著作権保護が受けられない状況が続いていたが、それも去年台湾がWTOに加盟した後は正常な状態になりつつある。日本にとって台湾は今後も大きな市場になるだろう。また二年前トーハンと角川書店が創刊したタウン情報誌「台北ウォーカー」などにも、日本の映画やTV番組表が掲載されているが、台湾の社会で、今いい意味で現代の日本が定着してきていると言える。
喜ばしいことに、台湾のWTO加盟で著作権保護の概念はだいぶ浸透し、台湾の人々の法律に対する概念が変わった。以前はCD店に行っても半分くらいコピー商品だったが、去年六月にはすでに激減していた。反対に中国では、WTO加盟後も依然として認識が低く、海賊版を作り続けているし、香港、東南アジア、先進国のシンガポールでさえも海賊版はなかなか減らないのに比べて、台湾では目に見える変化が起きている。
もともと日本人が創設し、国民党が接収してきた台湾の放送界だが、今ようやく台湾人が台湾人のための放送をする時代になり、そのなかで台湾だけでなく、日本をはじめ各国の番組を視聴する時代になったと言えるだろう。
《取材:本誌編集部 葛西》
お知らせ
日華資料センター 第45回新日台交流の会
第45回新日台交流の会は、哈日族など台湾の最新の若者文化をはじめ、伝統と歴史の息づく台湾文化の多元性を、さまざまな角度から解き明かします。
日 時 2月22日(土)午後3時~
テーマ 台湾文化様々
ゲスト 梶山憲一氏(フリーランス・ジャーナリスト)
※ 参加費無料
会場・問合せ 日華資料センター
〒108-0073 東京都港区三田5-18-12
TEL 03-3444-8724
FAX 03-3444-8717
E-mail:chuka@tkb.att.ne.jp
[交通]地下鉄南北線・都営三田線「白金高輪」二番出口徒歩三分/都営バス「魚籃坂下」徒歩一分
春 夏 秋 冬
各新聞社の記者が台湾に常駐するようになってから何年になるだろう。それ以前は、日本のマスコミに台湾はほとんど登場しなかったし、出たとしても現実知らずで実にトンチンカンな記事が多かった。だが、各紙が台湾について定点観測するようになってからは、ブラックユーモアなのか、それとも記者がもともと非常識なのか区別のつかないような、いい加減な記事はなくなった。なくなったどころか、本誌にとっても大いに参考になる記事が増え、非常に有難く思っている。ところがつい最近、かつてを彷彿させるような論に出会い、懐かしく思うとともに吹き出してしまった。本誌読者の方々なら、どのニュースかもうお判りだろう。そう、ある経済学者の「中華連邦」論である。
その学者が近著で発表した「中華連邦」論に拠れば、2005年か2007年、遅くとも2010年には中国と台湾が統一して「中華連邦」を結成するそうな。その理由は、両岸経済の一体化にあるという。なるほど、台湾企業の対中国投資は増え、貿易量も増えて経済による相互依存も高まりつつあることは事実だ。だが、人類の歴史は経済的要素だけで構成されてきたのだろうか。もし人類がエコノミック・アニマル的な知能しか持ち合わせていなかったなら、またそれを前提としたなら同学者の「中華連邦」論は成り立とう。だがその前に、人類の歴史からフランス革命もアメリカ独立戦争も明治維新も、発生し得なかったことになる。同学者は台湾ならびに両岸問題に対する情報が余りにも不足しているだけでなく、歴史の本質への認識も足りないようだ。
また「中華連邦」論では、台湾は中国の一部分になるのではなく、中華連邦の一部分になるのであって、平等であるばかりか重要なパートナーになるそうな。今の世で、両岸問題についてこれほど空虚な理屈を口にするのは相当な勇気がいるだろう。公民を習い立ての中学生でも、ある程度日々の新聞に目を通していたなら、ここまで的外れなことは言わないはずだ。この経済学者先生はどうやら、今日の中国と台湾の政治体制が異なり、価値観も異なり、また中国は何を目的とし、一方の台湾はどのような社会を望んでいるかをまったくご存知ないようだ。もしこの学者先生とやらの視野がもう少し広かったなら、「中華連邦」などという荒唐無稽な論は立てられなかったろうし、まして台湾の道を限定するような傲慢な論は表明されなかっただろう。一国の将来に言及するには、もっと的確な情報と慎重さが必要だ。
(K)