台北週報2106号(2003.7.30)
台湾は香港の動向に重大関心
国家安全条例は一国二制度の崩壊
中国は香港に押し付けた「香港基本法」に基づいて「国家安全条例」を通過させようと香港立法会に圧力をかけている。これに対して香港市民は50万人デモをもって反対の意思表示をした。このため香港立法会は中国に指示された予定を変更し、7月7日の採択を見合わせた。いま香港の将来は重大な岐路に立たされている。こうした香港の動向に台湾は強い関心を示しているが、以下はこの半月における政府と立法院の動きである。
中国は董建華・香港特区行政長官を叱咤し、あくまで香港基本法第二十三条に基づく「国家安全条例」を成立させようとしている。香港基本法のうち、同条項は九七年七月一日以来、香港のみならず香港の将来に注目する国際社会において最も敏感な問題となってきた。同条項の内容は「反逆、国家分裂、反乱の扇動、中央政府の転覆、国家機密の窃取、外国の政治性組織の香港での活動、香港の政治性団体が外国の政治性団体と連携すること」の七項目を禁止事項と定めている。これが法制化された場合、香港の将来はどうなるか。
●台湾・香港の関係発展を望む
これについて中国の香港回収六周年になる今年七月一日、行政院大陸委員会は以下のプレスリリースを発表した。
○ ○ ○
大陸委員会はまず、人間の基本的人権はすでに世界の貴重な普遍的価値観となっており、現代化されたすべての国家において、国民の基本的人権は法制度によって保障されており、反民主的政府のみが、立法の手段を講じて国民の基本的人権を制限し、自己の政治目的を達成しようとするものであることを指摘する。
香港が「国家安全条例」の形式によって香港市民および香港に往来する外国人の言動を制限しようとしていることについて、われわれは前述の立場を表明するものである。もしこの法案が原文通り通過したなら、香港市民の人権に対し一大障害となるばかりでなく、各国と香港との交流にも影響を及ぼすであろう。したがってわれわれは、この法律による制限の下に、香港の自由と繁栄の将来に憂慮の念を抱かざるを得ない。
われわれは、中国が一九九七年に香港市民に「一国二制度」の五十年不変を公約したことに対し、多くの香港市民が期待を持っていたことを指摘する。しかしこの六年間、われわれが見てきたのは、香港の現状が絶えず変わり、香港市民のマスコミ関係、司法関係などの面において現有していた基本的人権が徐々に侵食される姿であった。しかも今日、「国家安全条例」草案は、香港市民の言論の自由に大きな制限を加えるものであり、われわれが憂慮するのは、香港民主主義の原動力が深刻な挫折を味わうことである。
香港は台湾と中国との往来に重要な役割を演じており、われわれは特に香港特区政府に対し、台湾と香港の各種の交流を重視し、双方の往来を退化させないばかりでなく、各界が多くの疑念を抱いている今日、香港が双方の交流を重視している旨を自ら表明し、現状を後退させるのではなく、すでにある基礎と慣例の上に、双方の関係をいっそう発展させるよう呼びかけるものである。
【行政院 7月1日】
●香港民主主義の後退を憂慮
中国の香港回収六周年になる七月一日、香港市民五十万人が基本法第二十三条法制化反対の街頭デモを敢行したことは、世界的に注目されるところとなった。
これについて陳水扁総統は二日、「香港が中国に復帰してよりまだ六年というのに、香港のすべてが変わろうとしている。基本法第二十三条に基づく『国家安全条例』がもし通過したなら、香港はかつての台湾の権威主義時代に逆戻りしてしまうだろう。政府を批判すれば国家反乱罪に問われ、死刑あるいは無期懲役になり、そのような人を知っていて報告しなければ七年の懲役になった。香港は今そこへ逆行しようとしている」と憂慮の念を示した。
また游錫堃・行政院長は同日、「香港市民が大規模デモを敢行したのは、中国政府が基本法第二十三条を根拠に『国家安全条例』を制定することを香港特区政府に迫り、香港市民の基本的人権を大幅に制限しようとしていることに抗議するものであった。このことはすでに国際社会の大きな関心を呼んでいるが、台湾社会も十分に関心を持ち、警戒感を持たねばならない」と語った。
同時に「香港市民大規模デモの背景には重大な意義がある。まず、中国が推し進めようとしている『一国二制度』はまったく不可能であることを示している。つぎに、香港市民が本来享有していた基本的人権がこの六年間で徐々に剥奪され、香港市民がすでに『一国二制度』に対し完全に幻滅を感じていることを示すものである」と指摘した。
さらに「自由民主の価値観は世界の普遍的なものであり、台湾国民は権威主義から民主主義に進んだ経験を持っており、香港市民の心情が十分に理解できる」と述べ、国民に対し「全力をあげて香港市民が基本的人権と自由を守ろうとする行動を支持すべきだ」と呼びかけた。また政府の関連部門に対しては「国内ならびに国際社会が『一国二制度』の欺瞞性と危険性を十分理解するよう活動し、『民主一制度』こそが中華民国と中華人民共和国の平和と共栄をもたらすものであることを啓蒙しなければならない」と語った。
《台北『自由時報』7月3日》
●立法委員多数が香港支援表明
台湾団結連盟立法院党団は七月八日、香港市民の基本法第二十三条法制化反対運動を支援するため、中国国務院(gov@solution.org.cn)と香港特区政府(irc@isd.gov.hk)に抗議のメールを発信する「一人一通」運動を展開しようと台湾国民に呼びかけた。この運動は台連だけでなく、超党派による立法委員が発起人になっている。
このうち陳建銘・台連党団副幹事長は同日、「香港市民の今回の運動は『一国二制度』の神話を打破するものであり、台湾の国民投票法制化の重要性を示すものである」と表明し、同党の廖本煙・立法委員も「中国は『一国二制度』の五十年不変を公約したが、六年にしてそれは崩れようとしている。われわれは香港市民の自由民主擁護の運動を支援するとともに、台湾で『公民投票法』がまだ通過していないことを問題とし、自己の権利を確保する活動を強化しなければならない」と語った。
発起人の一人である親民党の秦慧珠・立法委員は「香港立法会が基本法第二十三条に基づく『国家安全条例』を採択したなら、それは中国が進めた『一国二制度』の崩壊を意味し、台湾と中国の統一条件を踏み潰し、台湾を『独立』に向かわしめるものとなる」との警戒感を示した。また国民党の孫国華・立法委員は、「中国が『国家安全条例』を持ち出したのは、火に油を注ぐようなものである。香港は中国化するのではなく、中国が香港化すべきだ。今回の香港の市民デモは中国に対する一つの警鐘であり、台湾への圧迫も停止すべきである」と強調した。
《台北『自由時報』7月9日》
●今後の動きを見守る
香港立法会は七月七日、香港市民の強い反対により、中国の押し付けた「国家安全条例」の採択を見合わせた。こうした香港の昨今の動きに対して、康寧祥・国家安全会議秘書長は七月十四日、「すでに民主化を促進したわれわれとして、香港の民主化運動に重大な関心を寄せざるを得ない。香港の民主化運動は、台湾が一九八〇年代に国内外からの圧力によって民主化を促進したのと同じである。中国の新指導者層が香港の最近の動きにどう対応するか、十分に観測する必要がある」と関心の高さを示した。
さらに「民主化の過程において、理想と現実の格差は常にともなうものである。香港の五十万人市民デモを中国の指導者たちは注目しはじめているが、それがどの程度のものになるか。中国は董建華を更迭し得るか、また香港市民が要求している立法会議員の普通選挙実施にどの程度応じられるか。これらが今後の香港民主化の進展を見る重要な要素となろう」と指摘した。
《台北『中国時報』7月15日》
ニュースフラッシュ
◆全米熱帯マグロ委員会に加盟
外交部は七月十日「政府はさきごろ『アンティグア協定』に署名し、台湾は『漁労実体』の身分で全米熱帯マグロ委員会の正式加盟国となる」と語った。これにより台湾の国際組織への加盟は十九となる。
《台北《自由時報》7月11日》
◆両岸関係条例修正後、両岸航空貨物の直航を開放
蔡英文・行政院大陸委員会主任委員は七月十一日「両岸関係条例修正案は早くて九月末に完成する。一旦可決されれば、適時両岸の航空貨物の直航を開放する」と語った。
《台北『経済日報』7月12日》
◆金門大橋、早くて来年着工へ
国内最大級の海底トンネルとなる金門本島と小金門を結ぶ「金門大橋」工事が、早くて来年にも着工の運びとなった。九月に計画案が行政院に送付され、来年上半期に着工、二〇〇九年完成を予定している。水深二十一m、全長五・四㎞で、開通後は金門本島と小金門との移動時間がこれまでの一時間からわずか五分となる。
《台北『聯合報』7月19日》
◆米国から空対空ミサイルを購入
消息筋によると、台湾は今秋にも米国から中距離空対空ミサイル「AIM—120」を購入し、来年実弾試射をおこなう。同ミサイルの試射が米国以外でおこなわれるのは初めてで、中国の軍事脅威に米台が協力して対抗することに意義があるとしている。
《台北『中国時報』7月14日》
◆高齢化が急速化
行政院主計処によると、台湾は十年前に高齢化社会となって以来、年々急速に高齢化が進んでおり、昨年の六十五才以上の高齢者の全人口に占める割合は九%に達し、十年前の二倍となった。
《台北『中国時報』7月16日》
◆国際コンペで観光コースを整備
政府の観光客倍増計画に合わせ、交通部観光局は国際コンペ方式で日月潭、阿里山、北部海岸、恒春半島の四カ所の観光コースを整備する考えを明らかにした。総工費は十六億五千万元(約五十七億七千万円)を予定している。
《台北『経済日報』7月16日》
◆下半期の経済成長率は上昇へ
林信義・行政院副院長は七月十五日「雇用拡大案も議会を通過し、SARSも終息した。今年上半期の製造業機械の輸入額も前年同期より約二割増加しており、景気も徐々に回復している。今年下半期の予測経済成長率は四%を上回り、年平均で三・一%となるだろう」との見方を示した。
《台北『自由時報』7月16日》
◆観光客の消費税還付、十月から実施
行政院は観光客に対する消費税の還付を十月から実施する。外国籍観光客が同一商店で三千元(約一万円)以上買い物し、三カ月以内ににそれらの商品を携帯し出国することが条件で、観光客は税関に消費税還付を申請する。
《台北『経済日報』7月16日》
◆台北港コンテナ倉庫建設BOT案、八月に契約調印へ
林信義・行政院副院長は七月十七日、台北港コンテナ倉庫建設のBOT案は八月にも契約調印し、投資総額は二百八億元(約七百三十億円)で、これにより今年一〜八月のBOT方式での公共建設工事費は七百億元(約二千四百億円)に達すると述べた。
《台北『経済日報』7月17日》
◆航空産業に一万七千人の雇用創出
行政院は七月十六日「航空産業発展方案」を可決した。これにより、今後十年間で航空産業の生産高を現在の約一千九百億元(約六千六百億円)から約三千五百億元(約一兆二千億円)に拡大し、新たに一万七千人の雇用を創出するとしている。
《台北『民生報』7月17日》
再建に向け飛び立ち繁栄を再現する
陳水扁総統が九・二一再建活動を評価
しばらくSARSへの対応のため社会の目は九・二一中部大地震の再建問題から遠ざかっていたが、陳水扁総統は七月十三日、中部地区を視察するとともに、行政院九・二一再建委員会が南投県中興新村で開催した「再建に向け飛び立ち繁栄を再現する」チャリティー・バザーに出席し、以下の談話を発表した。当日のバザー収益金十二万元(約四十二万円)は一人暮らし老人を対象とした福祉団体に贈られた。
○ ○ ○
一九九九年の九・二一大地震は台湾中部地区に甚大な被害をもたらしましたが、三年余にわたる再建活動ならびに多くの人々の辛苦と努力により、再建地区はすでに旺盛な活力を取り戻しており、九・二一大地震の暗い影はもう人々から離れたと大声で言えると思います。台湾はすでに再建に向け飛び立っており、これからは繁栄を再現する段階に来ております。
これについて私は、中央関係省庁、地方自治体、各種民間団体が再建のため協力しあい、積極的に再建活動を進め、今日の新たな状況を見るようになったことに、最高の敬意と感謝の意を表明いたします。同時に、この再建区が繁栄のための全国の模範区となることを期待します。
現在、再建工作の九五%以上が完成しております。たとえば再建の必要な学校は二百九十三校でしたが、このうち二百八十九校がすでに完成しました。このうち政府によるものが百八十五校、民間支援によるものが百八校となっております。再建率は九八・六%に達しております。ここで特に注目すべきは、慈済功徳会(仏教系慈善団体)の支援によるものが五十校に及んだことです。残り四校を含め、今後の教育関連の再建工作は教育部が引き継ぎ、責任をもって推進し、四校の再建は今年中に完成する予定です。
今後の再建工作は、作業効率向上のため、内政部、経済部、教育部、交通部、行政院環境保護署、行政院衛生署、行政院農業委員会が各分野の専門に応じて継続することになります。これら関係省庁の今後の努力に期待するとともに、各業務の引継ぎがスムーズに進むことを希望します。「再建四年完成」の政策目標に変化はなく、その到達日として行政院再建委員会が目標としている来年五月三十一日には、胸を張って国民の皆様に再建の成果を提示できることを期待しております。
当然ながら、私がここで強調したいのは、再建の工作はそれをもって終了するのではなく、この作業はあくまで永続的発展を目指した長期的なものであり、再建区においていかなる未完の業務といえど、政府が義務として責任を持ち、再建工作を続けるということです。私はここに改めて、行政院九・二一再建委員会および各関係省庁が今後の再建活動において各種の状況を掌握し、民間と関連するいかなる問題をも適切に解決し、この再建地区に新たな社会を作り上げることを期待します。
また私はここにおいて、皆様に大きなニュースを発表します。それは再建委員会が再建工作への感謝の意をこめて「感恩紀念公園」を建設する予定を立てておりますが、その場所が今われわれが立っているこの場だということです。その公園は、九・二一大地震再建工作に携わったすべての政府ならびに民間の方々に対する感謝を表明するためのものであり、それをこの中興新村に設ければ、それは新たな活力を生む場となるでしょう。再建地区は山紫水明であるとともに、梨、桃、葡萄、茶などが豊富であり、多くの人々で賑わうことを期待しております。
【総統府 7月13日】
陳水扁総統が国民投票実施に意欲
「公民投票法なくとも投票は実施できる」
陳水扁総統が国民投票実施への意欲を示すとともに、来年三月二十日に予定されている総統選挙についても言及した。
●国民投票実施に向け努力
陳水扁総統は七月十四日、総統官邸において与党・民進党立法委員との懇談会を開き、同八日から十日までの立法院臨時会において、民進党が主体となって財政経済四法案を採択したことを高く評価した。この与党立法委員との懇親会には、陳総統のほか呂秀蓮副総統、邱義仁・総統府秘書長、張俊雄・民進党秘書長らも出席した。
この席で陳総統はまず「民進党は過去から現在まで、一貫して改革を推進し、きわめて短い期間に多くの成果を収めたが、これからも情熱と理想を持ち続けなければならない。現在もっとも重要なのは、民主改革を深めることである。このため党団は風雨の中に身を置き、政策を打ち出し、改革を推進して行かねばならない」と党の使命を強調した。
同時に立法院本会期においても臨時会においても紛糾し採択されなかった「公民投票法」の問題に言及し、「国民投票は憲法によって付与された国民の権利であり、『公民投票法』は一つの過程にすぎない。それは世界の普遍的価値観であり、公民投票法がなくとも国民投票は実施できる。公民投票法がなければ国民投票が実施できないという問題ではない」と表明した。このあと「民進党は一貫して国民投票実施に向け前進しなければならない。与野党が共に公民投票法を支持できるかどうか、これが台湾民主主義の潮流の分水嶺となる」と明言した。
さらに「野党(国民党、親民党)は公民投票法を葬り去ろうとしているが、民進党が全力をあげてこの法制化を促進するよう望む。世論調査によれば、五七%の国民が総統選挙の時に国民投票を実施することに賛成している。このように国民投票実施はすでに主流の民意となっているのだ。このため私は『国民投票推進委員会』の設置を考慮している」と明らかにした。この上で「二〇〇四年の主要な任務は公民投票法の推進であり、これは総統選挙より重要だ。国民投票にかける議題は、立法委員の数を減じる国会改革問題。国民の意思を明示するWHO加盟問題、存廃を問う第四原発問題の三点である」と争点を明示した。
また陳総統はあと八カ月に迫った総統選挙にも言及し、国民党と親民党の野党連合による連戦・宋楚瑜陣営が「第二回目の政党交替」を標榜していることに対し、「(第一回政党交替とは)似て非なる論法だ。第二回政党交替を提示しているのは、その実は、ある人、ある政党にとって、政党交替が受け入れられないからである。第一回目の政党交替はまだ完成しておらず、多くの改革の問題が阻害されてまだ進展していない。だから選挙期間中にもこれを推進しなければならない」と語った。
●総統選挙への熱気高まる
総統選挙への熱気がしだいに高まるなか、総統府は積極的に総統と与野党立法委員との懇談会をセットしていこうとしている。民進党立法院党団の陳景峻・執行幹事長は同日、「陳総統は民進党の立法委員だけでなく、次には台湾団結連盟の立法委員も招きたいとしている。さらに総統には、国民党本土派の立法委員を招く意思もある。しかし国民党サイドにはかなり厳しい反応があるようだ。食事を共にしたからといって、相手を分断しようとしているのではない。国民党は緊張する必要はない」と語った。
総統府上層部筋によれば、七月末にも総統と台湾団結連盟立法院党団との懇談会が開かれ、総統選挙における民進党と台連との戦術的役割分担が話し合われるもようである。両党の執行部では、選挙活動の役割分担について、まず立法院党団同士が話し合い、それでコンセンサスが得られなかったなら游錫堃・行政院長と黄主文・台連主席が話し合い、最終的には陳水扁総統と台連の精神的指導者である李登輝前総統との話し合いによって最終決定をするという線で合意に達している。
《台北『中国時報』7月15日》
ニュース
台湾は香港を鏡にすべき
香港議員が台湾の会議に出席
香港立法会の瀏恵卿議員は七月十二日、「国家安全条例の法制化で問われているのは『一国二制度』で掲げている香港人による香港統治、および高度な自治の信憑性だ。台湾の国民は目を見開いて今回のわれわれの争議を観察すべきだ。もし、北京と香港特区政府がうまくこれを処理できず、『一国二制度』の高度な自治の公約が実践されなければ、台湾は香港を鏡としなければらない」と語った。
これは、台湾民主基金会が主催したテレビ会議に瀏恵卿議員が出席し述べたもので、香港で現在、言論の自由を弾圧する国家安全条例の法制化をめぐり大きな社会問題となっている最中でのこうした発言にはリスクを伴うが、「あえて香港と台湾はもっと理解し合わなければならない」との思いがあったという。
瀏恵卿議員は八月中旬に群策会主催の「国家安全条例に関するシンポジウム」に出席する予定だ。
《台北『自由時報』7月13日》
宋楚瑜氏が国民党会議に出席
古巣で昔の上司の歓待受ける
親民党の宋楚瑜主席が七月十六日、連戦・国民党主席の招きを受け、国民党幹部が集まる食事会に出席した。四年前総統選挙に出馬するため、国民党を脱退して以来、初めて古巣を訪問するとあって、国民党本部には多数のメディアが押しかけた。
宋氏が以前国民党在籍中、責任者を務めた各セクションの幹部らによる食事会という形をとりながら、会には同党大老の李煥氏や、九六年総統選挙に出馬するため離党した陳履安・元監察院長らも出席した。
宋氏はわざわざそれらかつての上司に向かって「私は以前あなた方の補佐役として分をわきまえ、慎重に任務を全うしました」と挨拶すると、出席者から一斉に大きな拍手が起こった。宋氏はさらに「四年前、国民党は指導者と一般住民との間に距離があったために政権を失った。今回国民党と親民党が組むのは地位争いではなく、中華民国のために尽くしたいとの思いからだ」と強調した。
《台北『中国時報』7月17日》
中国が国際秩序を破壊
各国の台湾僑民への旅券発行に注文
中国はこのほど世界各国に対し、台湾僑民へパスポートを発行する際、出生地欄に「中国」と記入するよう要求し、そうしなければ中国への入国ビザを与えないと語った。一部の国が台湾僑民へ発行するパスポートの出生地欄に「台湾・台北」などと記入しているのは「一つの中国」に違反するとしたもので、これについて石瑞琦・外交部スポークスマンは七月十七日「国際慣例と規範に違反すると同時に、パスポート発行国の主権に対する冒涜であり、中国のこうしたやり方は国際秩序を破壊するものだ」とのコメントを発表した。
さらに「ビザの発行は主権国家の行為であり、文明国が認める国際規範でもある。中国のビザ発行について他国が意見を述べることではないが、申請者の出生地の記述によってビザの発行の可否を決定するというやり方は、いかなる国でも聞いたことがない」として、中国に対し即刻停止するよう呼び掛けた。
《台北『中央社』7月17日》
呉淑珍夫人が欧州歴訪出発
ドイツ、バチカンなどを訪問
呉淑珍・総統夫人が七月十六日、九日間の欧州歴訪の旅に出発した。ベルリンなどで開催される台湾の故宮博物院所蔵品の「天子の宝」展開幕式典と、その関連イベントに出席するのが主な目的で、ドイツのほかイタリアやバチカンを訪問し、陳水扁総統に代わり、ローマ法王の関連式典にも列席し、同二十三日に帰国する予定となっている。
呉淑珍夫人は翌十七日、最初の訪問地ドイツで、駐ドイツ代表ら政府関係者をはじめ多数の台湾僑民に大きな拍手で迎えられたあと、ナショナル・ギャラリーに向かい、来年故宮博物院の特別展に出品される作品郡を鑑賞した。
このあと参観した東西冷戦の象徴だったベルリンの壁の前で呉淑珍夫人は、台湾と中国の関係をかつての東西ドイツになぞらえて「国民は民主を選択し、最後には民主が勝利する。ベルリンの壁がそれを証明している」と語った。
【総統府 7月17日】
SARS後のアジア情勢と台湾
台湾シンクタンク国際事務部主任 頼怡忠
台湾で猛威をふるった新型肺炎(SARS)は、七月上旬に世界保健機関(WHO)が「流行地域指定」を解除したことで収束に向かっている。今回のSARS禍が台湾やアジア地域に与えた影響は深刻であり、台湾は教訓を学びとり、万一の事態に備える必要がある。
● 過度の中国投資はリスク大
まず言えるのは、今回のSARS禍によって、中国のリスクの高さが露呈されたということだ。SARSがこれほど蔓延した原因は、中国の医療システムにではなく、権利や責任の所在が不透明な政治システムにこそある。また、こうした政治体制に支配されている経済も、政治的な影響を強く受け、非常に不安定である。今日、台湾企業を誘いこむために数々の約束をしても、次の日にはそれを反故にするかもしれない。このため、中国では、コネや口利きが横行する。現在、台湾の対中国投資は、対外投資全体の四分の一以上を占めるが、これは、米国、日本、韓国の対外投資に占める対中国投資の割合をはるかに越えている。このことは、台湾が不安定要素の高い大陸に過度に投資するリスクが、すでに無視できないレベルになっていることを示す。また、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、世界各国は中国に対し、公平な市場ルールを守るよう圧力をかけており、今後、コネや口利きに頼った台湾企業は淘汰されるにちがいない。台湾は今こそ、中国の不透明な政治環境がもらたす問題を直視し、その経済環境に対して全体的な評価を下すとともに、中国におけるチャンスとリスクについて正しく把握すべきなのだ。
● SARS後のアジア経済秩序
SARSを通して、アジア各国政府の危機管理能力が浮き彫りになった。台湾は現在、対中国投資の分散という課題に直面しているが、アジア各国の経済環境の違いや未来像を理解し、各産業における各国間の相対的な優劣を把握するとともに、協力の可能性をさぐるべきであろう。ベトナムなどでは、中国との往来を封鎖することでSARS被害を小さくしたが、この方法は、SARS防止に明らかに効果があった。このことは台湾にとって大きな教訓となる。
一九九八年の金融危機や二〇〇一年以降のテロ問題の影響を受け、アジアが全体的に力をなくしていたところに、さらにSARSが蔓延し、大きな被害をもたらした。一日もはやくアジア全体にかかわる問題を再開しなければ、地域の安定に大きなマイナスとなるだろう。SARS後のアジアの経済秩序は、すでに戦略的リーダーの真空状態という状況を示している。もし適切に処理できなければ、アジア経済は、中国と日本という二つの力の綱引きに巻き込まれ、経済分野における米国のリーダーシップをますます必要とするようになろう。よって、アジア全体の発展にプラスとなる議題を提出し、アジアの経済秩序の回復に貢献することができるかどうかが、台湾がSARS後の世界において、アジアにおける存在意義を高めるとともに、中国の企図する国際的な孤立から抜け出すカギとなるのだ。
● アジア地域の整合が急務
SARSおよび一九九八年のアジア金融危機は、中国と直接関係するものだ。中国当局は今回、SARSに関する情報を隠蔽し、アジア太平洋地域に大きな混乱をまねいた。また、一九九六年から一九九七年にかけて、中国が一方的に人民元を切り下げたことは、アジア金融危機の導火線となった。この二つの例からわかるように、一九九〇年代以降の「アジア問題」は、「中国問題」が適切に処理できなかったことが原因なのである。SARSの教訓をいかに生かして、中国問題の処理のためにアジア太平洋地域各国の協力を引き出すかは、台湾にとって非常に重要な問題となるだろう。
SARSウイルスがアジアに与えた影響については、今後評価が下されるであろうが、台湾は今回、八十人もの尊い命を失った。いかにして同様の悲劇の再発を防ぐかは、今後の発展のためにも、台湾がぜひとも考えねばならない責務なのだ。
《台北『自由時報』7月10日》
農業振興には流通ルート拡充が必要
蕭万長・総統経済顧問小組召集人が提言
総統経済顧問小組の召集人に就いている蕭万長・中華経済研究院理事長は、七月十日の第一回顧問小組会議で陳水扁総統に都市再開発問題、中小企業金融問題等について提言したが、ポストSARS時代の十四日、メディアのインタビューに応じて農業問題の重要性を指摘した。以下はその質疑応答の要旨である。
○ ○ ○
問‥第二回顧問小組会議では総統にどのようなことを提言されるか。
答‥次の会議では農業問題が中心となろう。わが国経済の工業化後、農業は劣勢に置かれ、さらにWTO加盟による市場開放で大打撃を受けた。かつて台湾農業は政策が成功して台湾経済に大きな貢献をした。だが現在、農業はなぜ低所得分野に入ってしまったのか。このカギは農業技術にあるのではなく、国内に産品流通ルートが確保されていないからだ。台湾農業には市場経済としての経営理念がなく、優れた産品を生産しても、その販売方法を知らない。工業で言えば、製品は短時間で消費者の手に届けることができる。産業そのものが販売ルートを確立しているからだ。農業部門にはこうした構造がなく、米国の農業のように産品の生産過剰の折には海外に販路を広げて値崩れを防ぐといったようなことができない。このため農業の販売ルートを確立することが、農業政策の当面の急務である。
問‥台湾経済の今後をどう見るか。政府にはどのような経済政策が必要と思うか。
答‥景気はすでに復調している。輸出入、工業生産、国内消費、投資など各種指標は上向き傾向を示している。だが今日の台湾の経済環境は変化しており、新たな思考による政策が必要だ。私は台湾経済の活力回復のため、三つの方向を提示したい。
まず公共建設拡大によって生活レベルの向上を図ることだ。経済発展は手段に過ぎず、目的は生活レベルの向上と社会福祉の向上である。汚水の流れる地下道、老朽化した地域社会など早急に改善しなければならない。そうしたところの公共建設を拡大しなければならない。美しい環境を子孫に残すのはわれわれの責務であり、この方面への投資は日本、米国、シンガポールに及ばない。
次に知識型経済の導入によって競争力を強化しなければならない。台湾経済の形態を在来型、ハイテク型、大企業、中小企業、あるいは農業、工業などと分類すべきでない。すべてにおいて知識型経済の比重を高めなければならない。たとえば蘭の花だが、かつては一つの茎に花が一つに開花期も一週間程度だったが、現在ではハイテク技術と品種改良により五、六十の花が咲き開花期も約三カ月に及んでいる。このことからも知識型経済が農業の起死回生策になることが分かろう。
第三は秩序ある経済文化の確立である。自由開放の市場経済の中で、政府が経済向上を追求するとき、社会正義の原則も追求しなければならない。社会が開放されればされるほど、厳格な法の適用が必要だ。米国では、国家そのものが開放されており、その分、法の適用も厳格になっている。立法院は早急に主要な財政経済関連法案のすべてを採択し、公平な経済社会確立に貢献すべきだ。
問‥立法院は臨時会で行政院が提出した財経六法案のうち四法案を可決したが、これをどう評価するか。
答‥提出された六法案のうち、四法案しか通過しなかったことは、専門的な見地から言えば、理想にはまだ遠いといったところだ。民主政治には学習の段階が必要であり、この過程に代価も払わなければならない。
問‥自由貿易港区を設置することになったが、これをどう見るか。
答‥政府はすでに候補地を上げているが、自由貿易港区に隣接した地域と港区内との関連はどうするか、まだ詳細な検討が必要だ。自由貿易港区には物、人、金が自由に進出でき、優遇税制も適用されるとの概念があり、一般地域との概念と大きく異なる。管理面からも、法によってこれの境界を明確にしておく必要がある。個人的には、台湾すべてが自由貿易区になるのがよいと思う。
《台北『経済日報』7月14日》
文化創意産業の付加価値で利益倍増を
文化を産業化することの問題点と台湾のメリット
台湾管理学会と『経済日報』は七月八日、企業代表や政府関係者を招き、「文化創意産業の高付加価値化」をテーマに座談会を行った。以下は、その要旨である。
科学技術を手段に、生活を根拠に 葉惠青・経済部主任秘書
近年、先進国では文化創意産業が大きく発展し、英国では一九九七年から文化創意産業が推進され、二〇〇一年の統計では多額の収益と百万人規模の就業人口を創造している。
文化創意産業の発展に対する台湾のメリットは、過去の情報産業の発展によって産業の競争力が作り上げられ、科学技術の応用力があり、活力のある創業家がいることである。
文化創意産業は特殊な産業で、専門分野のサービス業に帰属することができる。なかでも科学技術能力は重要なカギであり、科学技術の応用能力に文化芸術が内包することが、基本的な生産要素であり、強い原動力となる。イタリアの革製品やアパレルが優れたデザイン力を持つのは、革製品の製造技術が優れていることによる。このように、文化創意産業には周辺産業との強い集約性が必要である。台湾には高い情報科学技術力があり、これが生み出す産業集約効果は、今後の文化創意産業の大きな基礎となる。
文化にいかに価値をもたせるか 王俊博・智冠科技公司会長
個人の創作は産業にはならない。分業化すれば作品力は弱まるが、価格は大きく低減する。商品には、市場価格という現実が対峙している。
文化に設計と創意が加わり、商業化されることではじめて価格がつく。古い時代の小説も、改編されテレビの画面に出ることによって高い価値が生じる。文化創意産業として、文化と芸術の融合の代表的製品はゲームソフトである。
二十年前、ゲームソフトは九割が外国製で、中国を題材にした内容のゲームは一つもなかった。当社では一九八四年から創作コンテストを実施し、若者が中国文化を題材にゲームを創作することを奨励してきた。
こうして当社が発売した「三国演義」は大ヒットし、中国人が最も好むものはやはり中国文化であることが証明された。文化には親和力があるからである。
その後、当社では中国文化を題材にしたゲームを中心に開発し、中国小説を題材にした多くのヒット作を生み、市場では輸入ゲームとの差別化をはかっている。
創意の商品化は、ゲーム産業ではかなり成功していると言える。古い文化に創意と技術を結合して、現代の若者の好む商品を創造し、文化創意を余すところなく発揮する産業となっている。過去に存在した海賊版問題も、現在では多くがオンラインゲームの開発に進んでいるため、海賊版問題は解決できる。しかし、競争は激しく、結局のところ、市場規模の大きさが、文化創意産業の発展の重要なカギとなるだろう。
文化創意産業に定義と位置づけを 陳郁秀・行政院文化建設委員会主任委員
文化創意産業の劣勢に対応するには、販路拡大の関連法令によって、情報の保護を提供すべきである。
文化創意産業とは、創作と生産と商業化とが結びついたものであり、内容の本質には、無形資産と文化概念という特性があり、知的財産権が保護され、それを、製品あるいはサービスの形で現したものである。文化産業は創意産業とも言え、経済分野においては未来型産業である。
文建会では、文化創意産業を次の十項目に区分している。視覚芸術、音楽と演芸芸術、文化施設、工芸、映画、テレビ・ラジオ、出版、広告、デザイン、デジタル娯楽。このうち、前者の四項目は、文建会が担当し、テレビ・ラジオと出版、広告は、その性質上、新聞局が担当する。デザインとデジタル娯楽は経済部が担当している。実際には「創意文化産業」には二つの意味がある。一つは前述の十項目で、もう一つは文化創意製品の付加価値である。工業や情報製品も文化創意産業の一貫である。
現在、台湾はグローバル化の時代に直面し、経済モデルを知識経済や文化経済へと転換させている。地方文化の特色を生かし、生産から販売までの各分野で産官学界が協力してはじめて、優れた創意文化産業が作られる。だが、文化創意産業は、主計処の経済統計では「その他」に分類され、その認識度も低い。これは、発展にとってマイナス要素である。
文化も価値を生み、利益を生み出す 黄営杉・台湾管理学会常務理事
文化に創意を加えれば一連の生産活動が発展する。しかし、技術なしの、概念のみでは成り立たず、芸術と同時にニーズも考慮しなければならない。消費者に文化の素地があり、文化創意が商品化されてはじめて、市場が存在する。
現在、台湾では、産業を発展させるさい、公共資源投資によって初期段階のリスクを軽減し、人材と企業投資を支援する手法が可能である。政府が過度に介入すべきではないと考える学者もいるが、それは先進国の角度から見た理論である。先進国の立場からすれば、途上国で見られる政府介入が少ないほうが、自分達の優位性が保てるためである。私は、創意文化産業の発展が始まったばかりの段階では、政府の積極政策が必要だと考える。
知的財産権は重要課題 蕭麗虹・芸術文化環境改造協会理事長
文化創意産業は将来を担う若者に大きく依存する。台湾の若者は大陸の若者より国際化しており、古典も理解し、創意性があり、製品に個性がある。その点で、台湾は文化創意産業の発展に適していると言える。文化創意産業は多くの項目に分れるため、推進するさいには個別の分野に優先順位をつける必要があり、それは世界の潮流から判断することになる。英国はわずか十年の間に現代的な文化創意産業を創生したが、その成功の陰には一連の対策があり、これは我々も研究する必要がある。
文化人にとって、版権は最重要課題であり、これは専門家にその業務を任せる必要がある。また、芸術作品を量産化するさいにも、専門家にその評価を委ねるべきである。
私は、先ず「文化」を産業にし、その後、創意文化産業を推進することで、創造の内部にある文化の特色を重視した政策が表現できると考える。文化創意産業の価値決定は難しいが、投資リスクは科学技術分野より遥かに小さく、多くが個人の芸術家であるため、どれだけの投資が必要かという概念もない。しかし、産業界として投資する価値は大きい。
多元的文化と創意が台湾のメリット 林営泰・長康技術学院校長
台湾はかつて多くの製品の世界最大の加工王国と言われた。現在はそれは他者が取って代っているが、もしこれらの技術が、文化やデザインや創意と結び付けば、他者に代替できるものではなくなる。かつて台湾は世界最大量のスポーツシューズを生産していた。米国のスポーツ文化は販路拡大の手法を通じて、スポーツシューズを流行に変え、ブームにし、産業文化を形成した。これは台湾も見習うべきである。
文化を持つ製品は、往々にして当地の文化の特色や材料、デザインを備え、特殊な生産方式や創意によって生産される。台湾の伝統文化を相関する産業と結び付けて、文化観光産業に育て上げることもできる。また、台湾の美食文化を創意によって美食文化産業に育て上げることも可能である。
英国の文化創意産業の成功の陰には、デザイン教育の低年齢化がある。文化デザインの創意の価値は、その「生活化」にあり、「生活化」してはじめて専業化が成り立ち、それによって創意の価値の観念が確立する。そのためには、デザインの価値を確立しなければならない。今後、台湾のデザイン教育も低年齢化させることで、消費者のデザイン意識を向上させ、ハイレベルのデザイン人材の専業化が可能となる。
私は文化創意産業には、創意する人材、過程、場所、製品の四つが必要だと考える。政府は文化創意産業を促進し、創意の可能な環境を作るべきだ。学術界は教育を通じて学生にいかにして創意するかを教育し、学生の創意能力を育成すべきである。産業は創意性のある製品の生産リスクを積極的に負担すべきだ。
《台北『経済日報』7月11日》
台湾投資フォーラム二〇〇三のご案内
現在、参加企業を募集中
台湾は十七世紀オランダ人による統治時代から、すでに東アジアにおいて重要な中継港として発展し、四百年後の現在も西太平洋地域の中枢という重要な位置にある。とくに、長年の経済発展で蓄積された潤沢な外貨準備高、重厚な経済力、卓越した科学技術力は、台湾の高い国際競争力のバックボーンと言える。英経済紙「エコノミスト」が発表した「世界ビジネス環境ランキング」で、台湾は第十八位にランクされており、アジアでは第三位にある。
近年、政府は国内投資を奨励するため、各種の規制を緩和し、障害の排除に努めてきた。現在、国内景気も徐々に回復し、国外からの投資も増えつつある。グローバル化の時代に入り、台湾はより戦略的に重要な地位を占めるようになっている。
【国内投資の優遇措置】
①産業高度化促進条例
ハイテク企業に対し五年間の営業所得税を免除。輸入貨物を保税倉庫に保管し、再輸出している業者には二%の港湾建設費を免除する。
②〇〇六六八八措置
工業区土地を使用するメーカーに対し、賃貸料を一、二年目は免除、三、四年目は四割免除、五、六年目は二割を免除する。
③海外のハイテク技術者への優遇
海外のハイテク技術者が台湾で就業する際、審査により一人毎月五〜八万元(約十七万〜二十八万円)を補助し、六年間の居留を認める。
④外国のR&Dセンター設立を奨励
外国の技術者の台湾出張や国内でのR&D設立費用などを助成する。
【台湾の人材の優位性】
①外国人の台湾での就業規制を緩和
外国人の台湾での就業者数の規制を緩和し、ハイテク技術者に対し給料などの助成をおこなう。
②高等教育の普及
二〇〇三年度より大学および専門学校の合格率は一〇〇%を超え、十八才〜二十一才の高等教育就学率はすでに日本を上回っている。
【インフラの優位性】
①自由貿易港区の実現
自由貿易港区計画は、区域内での
企業の自主管理と貨物の迅速な運輸、スムーズな商務活動を保障する。
②陸空海設備の完備
現在、台北と高雄の空港にそれぞれ大型貨物センターを建設中。将来は北、中、南部の空港および港が連結され、高速・快速道路建設も年々整備が進んでいる。
【台湾企業の成功例】
台湾の生産および研究開発力への期待から、企業が台湾にオペレーションセンターを設立する動きが高まっている。経済部工業局の統計によると、二〇〇三年一月現在、百五社の企業がオペレーションセンター設立認可を得ている。
①金衣生技公司
「金衣生技公司」は台湾卜蜂とインドネシア卜蜂の合弁会社として昨年末に設立された。これにより、世界各地に広がる卜蜂グループの生産基地を統合し、台湾卜蜂が同グループのバイテクセンターに位置付られた。今後五年間に投資する金額は一千四百三十万ドルが見込まれており、株式市場への上場も検討中である。
②華新科技公司
華新麗華グループ傘下にある華新科技公司は、台湾で一億五千万ドルを投資し、世界の営業・運輸オペレーションセンターおよびR&Dセンターを設立した。同社は今後一千人以上の雇用創出を見込んでいる。
③神達機構
神達機構は台湾に営業オペレーションセンターを設立することをすでに発表し、今年同機構が台湾で製造するハイクラス製品は三割に達する。来年には一億ドルを投資し、同製品のR&Dセンターを台湾に設立する予定だが、すでに台湾で一千人以上が研究開発に従事している。今後研究開発センターの設立により、世界の大手メーカーとの協力関係がさらに深まるものと期待されている。
④トヨタ自動車
日本のトヨタ自動車は、台湾を東南アジアおよび中国市場の左ハンドルR&Dセンターおよび生産基地と位置付けており、台湾における設計と生産力はトヨタのアジア太平洋ブロックにおいて重要な役割を担っている。
⑤巨大機械
自転車製造で世界最大規模を誇る巨大機械の研究開発本部は台湾にあり、欧米各地のR&Dセンターと協調しながら、世界での共同開発と分業体制を採っている。同社の世界戦略において、台湾における製造と販売は極めて重要な位置にある。
●フォーラム参加企業を募集中
政府は外資導入により台湾の国際競争力を高め、国内の雇用促進と世界との経済協力を拡大するため、大規模な企業誘致大会「台湾投資フォーラム二〇〇三」を開催する。
大会では世界で活躍する著名な学者、専門家を多数台湾に招き、国内外企業トップとの座談会を予定している。また、台湾にとって競争力のある十二の分野(半導体とマイクロ・エレクトロニクス、映像ディスプレイと光電子、精密機械、素材と特殊化学、技術サービス、運営本部・R&Dセンター、バイオテクノロジーと保健、通信、貿易と物流、交通と公共建設、観光とレジャー、金融と保険)についてセミナーを設け、それぞれの分野で台湾に投資している外国企業から直接、台湾での投資経験を語ってもらい、参加企業の投資への理解を深め、ビジネスチャンスの足掛かりとする。また、会場には政府各機関の担当者が常駐し、台湾の「六カ年国家発展計画」に基づく各分野での投資ビジネスチャンスについて展示と紹介をおこない、企業の専門的な質問にも応対する。
大会最終日には、工業研究院や科学園区の視察をはじめ、同園区内著名企業代表との座談会も計画している。特定の政府機関や企業への訪問希望にも、個別に対応する。
●台湾投資フォーラム二〇〇三
日 時 十月十九日〜同二十二日
会場・内容 台北国際会議中心
一日目(歓迎パーティー)
二日目(多国籍企業と世界の学者、
専門家との座談会、セミナー)
三日目(国内企業家による座談会、
セミナー、感謝パーティー)
四日目(主要機関の視察ほか)
問合せ 台湾投資フォーラム事務局
TEL(〇二)二七二五五二〇〇
FAX(〇二)二七五七六六一〇
http://www.investintaiwan.org.tw
Email:investintaiwan@cetra.org.tw
教育関連ニュース
幼稚園からの義務教育
二〇〇六年度へ延期
教育部は七月十日、全国教育局長会議において、義務教育を現在の小学校より一年早く、幼稚園から実施する政策を、当初の計画より一年延期し、二〇〇六年度(二〇〇六年八月〜二〇〇七年七月)から全面的に実施すると発表した。
教育部によると、金門島、澎湖島、馬祖島と台東県の蘭嶼、緑島、屏東県の琉球については先に二〇〇四年度にも実施し、二〇〇五年度には先住民族の居住する五十四の町村で実施、二〇〇六年度に全国実施に拡大する考えだ。
五才の幼稚園児から義務教育を受けさせるにあたり、教育部では公立の幼稚園児については一人当り毎学期五千元(約一万七千円)、私立の幼稚園児については同一万元(約三万五千円)を助成することにしている。
義務教育を一年繰り下げて実施することによる経費は、該当する幼児の数を年間三十万人と仮定すると、毎年五十四億五千万元(約百九十億七千万円)にのぼると見られている。教育部では、現在専門家に依託し、「六才児基本能力指標」を作成中で、そのなかには言葉の表現力や算術力などが含まれている。
《台北『民生報』7月11日》
大学入試、合格率八割以上
大学入学試験の一つである「大学指定科目考試(試験)」が七月三日に終了した。受験生はこの試験の成績に応じて志望校を決定し、七月末に各大学に願書を提出する。今年は各大学で推薦入学や申請入学枠に空が生じ、その分が指定科目考試による合格数枠に上乗せされるため、同試験の合格率は昨年の八〇・四一%を超える八二%以上となる見込みだ。
大学の増設が相次ぐなか、各大学ではあの手この手で優秀な学生を一人でも多く獲得しようと懸命だ。東海大学では優秀な学生に対し四年間で最高百万元(約三百五十万円)の奨学金を支給するとしており、逢甲大学でも夏休みの米国留学費を全額補助する制度を打ち出している。
《台北『聯合報』7月15日》
来来台湾
来年の彰化フラワー・エキスポに向け本格始動
●有史以来の最大規模
来年一月から三月にかけて、中部の彰化県で「二〇〇四台湾フラワー・エキスポ」が開催される。台湾で行われるフラワー・エキスポとしては、過去に例のない大規模なものとなる予定で、二十六ヘクタールの敷地内にはテーマ館、映像館、五大庭園、グルメ・ストリートなどが並び、見て遊んで食べて楽しめる趣向を計画しており、国内外から百万人以上の観光客を見込んでいる。
世界一のフラワー王国を誇るオランダには、さまざまな色のチューリップ畑が広がり、街中の建物の軒先きや郊外の小道にも多くの花が植えられている光景はとくに印象深い。政府は彰化県を「国家花卉園区」に位置付け、将来台湾を「東洋のオランダ」に発展させる計画で、来年のフラワー・エキスポは台湾のフラワー王国への第一歩となるものだ。
七月十日、台北市でフラワー・エキスポ開催に向けた記者会見が行われ、開催内容が紹介されると同時に、参加企業の誘致が正式に公表された。翁金珠・彰化県長は「彰化県は台湾最大の花卉生産県で、全国の花卉の七割を供給している。今回のエキスポは決して日本やオランダに遜色のないものとなるはずで、これを機に台湾の花卉産業を世界に通用するものとして発展させたい」と抱負を語った。
●フラワー・エキスポの概略
「二〇〇四台湾フラワー・エキスポ」は一月十七日〜三月十四日まで、彰化県渓州郷の渓州農場で開催される。花卉のバイオテクノロジーに植生と文化を融合した展示をおこない、春節(旧正月)やバレンタインも期間中にあたる。
テーマ館には電照菊の花で縁取られたトンネルを配置し、映像館の外観は一輪の満開の花をイメージし、三台の映写機を使って百八十度のスクリーン上に映画を放映する。五大庭園の一つ「ヨーロッパ式庭園」には、フランスのシャンソン・スタイルと英国風カントリーロマンを演出し、両側にハーブ畑とバラのアーチを配置し、幸福な花嫁のイメージを体現する。園内ではハーブティーのサービスがあり、花あふれる園内では結婚式も挙行できるという。
一方、「台湾庭園」では昔の農村と赤レンガの伝統的な閩南建築を配置しレトロなイメージを体現し、「児童庭園」には緑の芝生に「ジャックと豆の木」をイメージした蔓の梯子がかけられ、童話の世界を体験できる趣向となっている。このほか、「熱帯庭園」にはトーテムを配置し、勢いよく流れる滝が熱帯のイメージを盛り上げる。「リラックス庭園」は禅の要素を取り入れ、現代人のストレス解消を謳っている。
フラワー・エキスポの入場チケットは七月十日から前売券が発売されており、インターネット(www.2004flowerExpo.comまたはwww.ticket.com.tw)で受け付けている。
●花卉栽培の盛んな彰化県
彰化県は台湾の花卉栽培の故郷で、田尾、永靖地域ではあちこちに花畑が広がり、栽培面積は約五千ヘクタールに及んでおり、全国の約半数を占め、全国一の規模を誇る。栽培面積から見れば全国の花卉の約七割を供給できる量を維持しており、彰化県は台湾の主な花卉および苗木の生産と流通センターの役割を果たしており、国内の樹木と苗木の総生産量の九割を占める。政府は今後五年間に十二億五千万元(約四十三億七千万円)を投入し、彰化県を「国家花卉園区」として発展させる計画だ。
フラワー・エキスポの開催にあたり翁金珠・彰化県長は「エキスポに出展する花卉や資材はすべて彰化県から調達し、人員の六割以上は同県から動員することで、彰化県の花卉産業と地方の繁栄に役立てたい」と話している。ちなみに、エキスポ開催後の用地は、「花卉貿易展示センター」ないし「花卉生産専用区」として発展させるか、「農産物産直販売センター・輸出市場開拓センター」などへの利用が検討されている。
《台北『民生報』7月11日》
中台経済交流の現状と今後の課題
第47回「新日台交流の会」で講演会
「新日台交流の会」は七月二十日、石田浩・関西大学経済学部教授を講師に招き、「中台経済交流の現状と今後の課題」をテーマに講演会を開催した。二十代から六十代までの二十五人が参加し、質疑応答では活発な意見交換がなされた。以下、この講演の内容を紹介したい。
現在の中台経済交流の進展は、台湾の民主化、本土化の流れの中で起こったもので、経済的要因として一九八五年のプラザ合意、政治的要因として一九八七年の戒厳令解除が挙げられる。これらにより、台湾経済の対中依存は急速に拡大し、台湾の自立と国際活動空間の拡大にとって不安要因となっている。台湾の経済活動の中心は中国にシフトしつつあり、こうした現状に対して国民的なコンセンサスが必要となっているが、台湾住民および政府が自分たちの将来をどのように考えるのかについて明確な発言はない。台湾住民のコン センサス、つまり台湾住民自身は何を望んでいるのかが不透明なまま、中台の経済交流のみが増えているのである。
●中台経済交流の推移と現状
陳水扁政権は、対中投資規制を緩和し、李登輝政権時代の「急がず忍耐強く」から「積極開放、有効管理」に政策を転換した。産業界の「三通」に対する要求は、SARS問題で中断する形となっているが、代わって物流(貨物輸送チャーター便)の直航が取り沙汰されている。
台湾の対中貿易と対中投資は確実に増加しており、対中貿易収支も大 幅な黒字となっている。二〇〇二年度の対中投資は、対外投資件数の約七七%、投資額の約六六%を占めている。対外投資件数と金額の推移を見ると、一九五二年から二〇〇二年の累計で、一位が中国、二位が英領中米、三位が米国となっている。このほか、中国向けの電話通話時間や観光客も、交流の拡大にともない、大幅に増えている。
一方、中国の主要国との貿易額と貿易収支の推移を見ると、対米と対香港で黒字、対韓国と対台湾で赤字となっている。外資による対中直接投資の国別比率は、第一位が香港・マカオ、第二位がヴァージン諸島、第三位が米国、第四位が日本、第五位が台湾であるが、第二位のヴァージン諸島には台湾資本が相当数含まれており、台湾経済の対中依存度の拡大が看取できる。
●台湾はどの道を選択するのか
台湾では、一九八六年の民主進歩党の結成と一九八七年の戒厳令解除によって、一連の民主化が進展し、国際的に高く評価された。民主化の流れの中で、国民党の党営事業の解体、公営企業の民営化、教育改革による国家アイデンティティの形成、インフラ建設促進による生活の質の向上などが進んでいる。
台湾経済のパフォーマンスを見ると、経済成長率は鈍化しており、一九九六年以降のGNPおよび国民一人当たりGNPは停滞し、成長の原動力であるIT産業は一時の勢いを失っている。
こうしたなかで、台湾と中国の経済的な結びつきはますます強くなっている一方で、台湾の「運命共同体」を今後どのように建設するのかは大きな課題である。しかし、実際には、政治(理想)と経済(現実)との乖離が拡大しており、「政治の対中離反」と「経済の対中依存」という矛盾が起こっている。
台湾紙『聯合報』が二〇〇三年五月におこなった世論調査では、「中台の経済交流は速すぎる」が三一%で、二〇〇二年十二月の調査より約一五ポイント増加した。二〇〇四年三月二十日におこなわれる総統選挙において、対中政策が具体的な争点となるのか、また台湾住民はどのような選択をするのかを注視したい。
《取材:玉置充子》
お知らせ
台湾映画情報
●『藍色夏恋』」(あいいろなつこい)
侯孝賢、楊徳昌(エドワード・ヤン)、蔡明亮の名監督に続く台湾映画の旗手として注目されている易智言(イー・ツーイェン)監督の作品。誰もが経験する初恋の切なさを描き多くの人の共感を呼んだこの青春映画は、台湾では昨二〇〇二年九月に公開されるや、並み居るハリウッド作品を抑えて大ヒットを記録し、大きな話題となった。郷愁を漂わせる台北の街並を背景に、若者たちの揺れ動く気持ちと戸惑いを繊細かつ爽やかに描き、二〇〇二年、東京国際映画祭、カンヌ映画祭など世界の名だたる映画祭で大絶賛を浴びた。主演の桂綸鎂と陳柏霖の二人は、ともに映画初出演ながら、そのみずみずしい演技が映画の魅力を高めている。
日 時 7月26日(土)よりロードショー
会 場 東京・日比谷・東宝映画街(℡ 03-3591-1511)
春 夏 秋 冬
いま台湾は活気に満ちている。SARS禍が去り、制御していた社会の各階各層が、水を得た魚のごとく一斉に本来の動きを取り戻した。SARS以前よりも活力がみなぎっていると言ってよいだろう。それもそのはずで、すべての面において国際競争の激しいなか、SARSによって受けたマイナスを早急に取り戻さなければならないのだ。直接SARSに冒されなかった日本では、この緊迫感は体感できないのではないだろうか。
たとえば、今回最も打撃を受けた産業の一つに観光がある。SARS期間中、激減した観光客の回復を目的に、7月8日に台北駐日代表処で記者会見が開かれた。このとき台湾観光協会が日本の消費者1,000人を無料招待すると発表し、翌日の日本の各紙はこのニュースを、驚きをもって報じていた。これもポストSARSにおける台湾の活気を示す一つだが、別に驚くほどのことではない。1,000人無料招待は企画の一部であり、このほか日本のメディア、旅行業界関係者を対象にした「500名台湾視察ツアー」や一般消費者5,000人を対象にした超格安ツアーが予定されているのだ。それに台湾の政府が国際観光客誘致キャンペーンに投じる総予算はおよそ10億円で、そのうち40%前後が日本向けに投入されるとあっては、その意気込みの大きさと日本重視の姿勢が十分汲み取れよう。
数字で見れば、今年4月の日本からの訪台客は前年同月比56%減となり、5月はなんと90%減であり、6月は95%(推定)も減少しているのだ。これを元に戻すには大変な苦労が必要だろう。WHOによる一片の安全宣言だけでは足りないことは明らかだ。そのための努力であり、活力なのだ。当然、台湾各地の観光地でもさまざまなイベントが計画されるなど、個々の業者も相当な努力をしている。
これらから考えれば、今が台湾観光の一番いい時期かもしれない。なぜなら、これまで以上に活気に満ちた台湾を見ることができるからだ。しかも、SARSから学んだことの一つとして、公衆衛生の観念の向上があり、この面でのインフラ整備は目下国策として政府が進めており、再建への熱気とともに、安全面においても以前よりさらに安心して旅行できる地域になっているのだ。もちろん日本から台湾への旅行者が増えるということは、台湾からの訪日者増大にも直結する。それが日本経済にもたらす影響にも大きなものがあろう。SARSという豪雨に襲われ、それによって両国の往来が一層増えることを今後に期待したい。
(K)