台北週報2107号(2003.8.7)
世界に届けたい台湾国連加盟の声
国際社会の安定・平和と繁栄のために
国連憲章はその前言において「国連の使命は、基本的人権、人間の尊厳と価値、男性、女性や大国、小国の平等な権利への信念をあらためて断言することである」と力強く謳っている。
台湾(公式には中華民国)の政府と二千三百万の国民も、同様の理想を大事にし、堅持しているが、われわれは三十年以上にわたって国連に代表を送ることを拒否され続けている。
この不公平は、世界共同体の価値あるメンバーとしてその責任を全うする権利を台湾から奪い去っていることになる。このため台湾は、わが国の国民が当然得るべき権利、すなわち国連への参加と代表権を求めているのである。
中国の共産主義者が中国大陸を制圧し、一九四九年に中華人民共和国を成立させたとき、中華民国政府は、台湾、澎湖、金門、馬祖ならびに付属する数多くの小島―総じて台湾として知られる領土に移った。それから半世紀以上の間、台湾海峡の両岸は別々の政治実体として統治されてきた。このなかで台湾は独自の外交政策を実行し、独自の国防を保持し、世界の国々と公式の外交関係、あるいは友好的で実質的な関係を結んできた。したがって台湾との政治、経済、貿易、さらに教育、文化等に関するすべての国際協定は、台湾における政府のみと交渉され、各種の条約、協定、取り決めが調印され、今日に至っているのである。
政治的な分野を見れば、台湾は自由で闊達な民主主義社会を育て上げた。政府は一九八七年に戒厳令を終結させ、民主的なプロセスを拡大するための政治改革を次々と打ち出した。その流れにおいて一九九六年、台湾は最初の正副総統直接選挙を完遂した。さらに二〇〇〇年の総統選挙では、過去五十年にわたった国民党の政治に終止符を打ち、勝利を収めた民進党へ平和的に政権が委譲された。こうした台湾の民主的社会に対し、米ニューヨークに本部を置くフリーダム・ハウスは、米国と並んで報道の自由がある自由国家であると位置付けた。
現代的な民主主義国家として、台湾は自由と人権を十分に尊重していることは言うまでもない。陳水扁総統は就任に際し、台湾に国際人権システムを取り入れることを公約した。この目的に向かい、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」と「経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約」が、その批准のため立法府に送付するとともに、二〇〇二年三月には「男女雇用機会均等法」を制定し、さらに「国家人権委員会」も設立した。こうした人権擁護発展のなかに、今年二〇〇三年には「一九九三年人権に関するウィーン国際会議」に基づき、国家人権推進計画を鋭意実施に移した。
また、順調な経済発展と技術の進歩が、社会全体に繁栄をもたらし、台湾を世界的な経済大国に押し上げた。世界銀行による二〇〇〇年GNPランキングでは台湾は世界第十六位となり、外貨保有高では世界第三位となった。台湾はまた、貿易取引高では世界で十四番目に位置し、IT製品の輸出では世界第三位となっている。スイスのコンサルタント会社であるBusiness Environment Risk Intelligence は、台湾の投資環境を世界のトップファイブに入ると位置付けている。さらに二〇〇二年一月の台湾のWTO加盟により、市場の開放と国際経済協力の拡大が進み、経済は引き続いて発展するものと見られている。
このように国家の主権、民主政治の発展、それに人権擁護や経済成長のどの面から見ても、台湾は国連のメンバーとしての基準を満たしていると言えよう。しかしながら、台湾はいまだに国連に正当な地位を得ることを拒否され続けているのである。この事実は、台湾が国連加盟国として世界に貢献できるさまざまな機会を奪っていることを意味し、同時にそれは、国際的な損失と言わねばならないのではないか。
かつて海外から台湾への援助と支援は、初期の段階として台湾の発展に大きな役割を果たした。台湾の国民は、この温かい行為へのお返しをし、台湾が積み重ねた成功への経験と繁栄を、国際社会の中で各国と共に享有しなければならないという責任を感じている。これにより、最近の援助プロジェクトとして、アフガン難民への援助物資提供、アフリカでのエイズ予防、二〇〇一年のエルサルバドル地震被害に対する三十名の救護人員の派遣等々が挙げられる。台湾はまた、数多くの技術や医療関係のチームを組織し、世界中に農業、衛生、また産業の分野等で協力活動を推進してきた。こうした実績において台湾が国連のメンバーとなれば、政府やNGOは、国際社会の他のメンバーとの間により一層効果的かつ効率的なチャンネルを持つことになり、協力態勢を今まで以上に拡充できるようになるのである。
また台湾は、世界共同体の責任のあるメンバーとして、テロリズム、麻薬取引、組織犯罪や環境破壊といった国際的な問題と闘う役割を担うことも望んでいる。しかしながら、国際的問題の解決には全ての国々との協力が不可欠である。この点から見ても、台湾が国連のメンバーでないということは、国際的パートナーとの協力を推進するための重要な手段を否定されていることになるのである。こうした状況は、早急に行動を起こさなければならない活動についても、その過程を不必要に複雑化させ、また、そのような緊急かつ重大な問題を取り扱うための努力を妨げてもいることになるのである。
台湾における中華民国は、主権独立国家である。だが、台湾とその二千三百万国民は、今日に至ってもなお国連の外に置かれたままの状態を強いられている。その結果として、台湾は国際共同体の責任あるメンバーとしての役割を充分に果たすことができないまま今日に至っているのである。台湾は、その実質的な国際的能力と卓越した政治的、経済的業績を持ちながら、この運命に苦しんできたのである。今こそこの間違いを正さなければならない。台湾は国連のメンバーの中で正当な地位を得るため、努力を継続するであろう。
【台北駐日経済文化代表処 7月】
行政院国民投票実施への説明
民主を深め国民の声を明確にするため
総統府と行政院は目下、国会改革問題、WHO加盟問題、第四原発問題の是非を問う国民投票の実施に意欲を示しているが、游錫堃・行政院長は7月17日、「行政院が実施する公民投票実施要点」(本文中では『公投実施要点』と表記)を発表した。さらに行政院は同21日、行政院が「公投実施要点」を策定して国民投票を実施することの正当性を示す「全国性公民投票実施要点の説明」を公布した。以下はその全文である。
一、行政院(内閣)が「公投実施要点」を策定し、国民投票を実施するのは合憲かつ適法である
(一)憲法の趣旨に合致(合憲)
①国民主権の理念具現を促進し、基本的人権を実現する‥わが国憲法第二条は国民主権の理念を明確に掲げており、かつ第十七条で国民が創制(法制定)および複決(法案に対する審査)の権利を有すると明記しており、わが国憲法が直接民主制度を認めていることは明らかである。国民投票を通して国民の意思を明らかにすることは、犯すことのできない国民の基本的権利である。だが過去の一党独大の権威体制により、五十数年にわたってこの基本的権利は実現されず、憲法の規定は文面だけのものとなってきた。行政院が「公投実施要点」を作成し、国民投票の実施方法を策定するのは、国民が早期にこの基本的権利を行使し、国民の意思を明確にし、国民主権の理念具現を促進するものであり、憲法の主旨と要請に合致するものである。
②法整備の前に行政機関が、国民の基本的権利実現を主動することに違憲問題は生じない‥国家機関(立法、行政、司法を含む)はすべて、国民が基本的権利を実現するのを支援する憲法上の義務を負っている。もし「創制複決法」もしくは「公民投票法」が早急に法制化されれば、国民が国民投票によって意思を明確にするという基本的権利はおのずと実現されるものとなる。この基本的権利実現のための法制化が五十数年にわたってなお完成されない時、行政機関がその権限の範囲内において、国民投票という基本的権利の実現を促そうとするのは、決して違憲とは言えない。たとえば、憲法は国民の知る権利を保障しているが、「行政行使法」あるいは「政府情報公開法」が立法化される前に行政機関が関連の実施規定を策定し、国民の知る権利を具現したとしても、それは決して違憲とはならない。
③立法院(国会)が長期にわたって創制複決あるいは国民投票の法制化を実現しないのは、「憲法の付託」に対する違反であり、立法の怠慢である‥憲法第百三十六条は「創制、複決の両権の行使については、法律を以て定める」と規定している。この規定は法理論にいう「憲法の付託」であり、国民の創制(法制定)と複決(法案に対する審査)の権利を実現するため、立法院は憲法による付託を受けているのであり、立法の義務を負っているのである。これは立法院が憲法第二十四条によって「国家賠償法」制定の義務を負い、第百三十条と第百三十三条によって「選挙罷免関連法」制定の義務を負っているのと同様である。
もし立法院が長期にわたって「国家賠償法」や「公職人員選挙罷免法」を決議制定せず、国民の選挙権、罷免権、国家賠償請求権が実現しなかったとしたなら、それは憲法の根幹を空洞化させるものとなるのは必定である。したがって、立法院が五十数年を経た今なお、創制複決あるいは国民投票の法制化を実現しないのは、まさに憲法の基礎を揺るがすものと言わねばならない。立法院のこうした状態は、まさしく憲法違反を構成するものであり、これを座視することはできない。一部の立法委員(国会議員)は、行政院は憲法第百三十六条の規定に違反していると指弾するが、それはこの条文の意味と自己の憲法上の義務をまったく理解していないからである。
④行政院が「公投実施要点」によって国民投票を実施しても、その結果は立法院を拘束せず、法的拘束力も持たず、立法権を侵犯するものとはならない‥国民投票はその効力によって二種類に分けることができる。すなわち法的拘束力を持つものと、それを持たないもの(法理論上にいう『参考意見としての国民投票』)の二種類である。法的拘束力を持つ国民投票は、たとえば憲法改正や法律が国民投票によって成立する場合であり、その結果に行政府も立法府も違反することはできない。この場合の国民投票は、憲法あるいは法によって実施されなければならない。憲法第百三十六条の「創制、複決の両権の行使については、法律を以て定める」との規定が、すなわちこの種の法的拘束力を持つ国民投票を指す。他方の法的拘束力を持たない国民投票は、その結果は行政あるいは立法部門に対して法的拘束力を構成しないが、それは国民による意思表明となり、政治的な正当性を有し、行政府も立法府もそれを尊重することによって、政策決定あるいは政策推進の重要な参考とするものである。行政院が「公投実施要点」を策定し、民意の趨勢あるいは民意の支持するところを知り、行政機関が政策推進の参考もしくは根拠とするのは、決して立法院に対する法的拘束力を構成するものとはならない。したがってこの種の国民投票の実施は立法権の侵害にはならず、まして権力分立制度を破壊するものとはならない。王金平・立法院長(国会議長)はマスコミに対し「行政院が『公投実施要点』を策定して国民投票を実施するのは、行政権の範囲内のことである」と表明したが、これは行政院の見解と一致するものである。
(二)現行法の規定に違反せず(適法)
①どの現行法も行政機関が国民投票を主動するのを禁じておらず、行政院が「公投実施要点」を策定し国民投票を行っても法に抵触しない。
②もとより「法による行政」は法治国家の基本的原則だが、この原則はあらゆる行政権の行使がすべて法に依拠したものであることを要求したものではない。特に給付行政あるいは公共政策に関する事項は、一般に行政部門の専権事項と見なされている。司法院第四四三号解釈は、「国民の自由の制限に関する決定は、法に依拠しなければならない」としているが、行政院が「公投実施要点」を策定するのは国民の権利制限とは異なり、一部の者が司法院のこの解釈を根拠に、行政院による「公投実施要点」を策定するのは違法であると批判するのは当たらない。
③「公投実施要点」は国民投票における「事務配分」および「事務処理」の一般的規定に関するものであり、国民の権利、義務に対するものでなく、「中央法規標準法」第五条の「国民の権利、義務については、これを法律で定めなければならない」との規定に抵触しない。
④各行政機関が民意調査を行い、それを施政の重要な参考とする場合、それが法に依拠しなければならないということはない。行政院が「公投実施要点」を策定し国民投票を実施するのは、性質上民意調査の強化に類似するものであり、法に依拠する必要性はない。ただし行政院が実施する国民投票は、一般の民意調査にくらべ、さらに慎重かつ正確に行われなければならず、投票者が対象の問題を十分に理解するため、投票前に討論会もしくは説明会を開き、また国民主権の意義を明確にする必要がある。これは一般の民意調査機関にできることではなく、代行できるものでもない。
二、「公投実施要点」は行政規則であり、法によって立法院の審査に付す必要はない
(一)「公投実施要点」は国民投票の事務配分と事務処理に関する一般的な規定であり、行政院の行政機関および所属公務員に対する業務規則であり、「行政組織法」第百五十九条に規定する行政規則に関するものであって、行政院が権限によってこれを策定するのに、立法による権限付与は必要としない。
(二)「中央法規標準法」と「立法院職権行使法」が、立法院の審査に付さなければならないと定める行政命令の名称には、規定、規則、細則、弁法、綱要、標準、準則の七種類があり、「要点」は行政規則に属し、この範囲には入らない。したがって「公投実施要点」を立法院の審査に送付する必要は生じない。また立法院は行政院が定めた行政規則の審査を要求することはできず、これは権力分立の原則に抵触するものではない。
三、行政院が「公投実施要点」を策定し国民投票を実施するのは、決して行政の独断専行ではない
(一)行政院が実施しようとしている国民投票は、重大公共政策の問題に限定されており、公共政策は本来行政権の範囲に属し、行政院が国民投票の方式で民意を調査するのは、行政の独断専行とは言えない。もし独断専行をするなら国民投票の方式を採用するはずはなく、さらに自らを拘束する「公投実施要点」を策定するはずもない。一部の人は行政院が計画している国民投票を、独裁国家のいわゆる「世論誘導」と同一視し、場合によってはヒトラーがよく世論調査を行ったことにもなぞらえているが、それらは故意にものごとを曲解しようとする論法にすぎない。行政院が策定する「公投実施要点」は、国民が投票の自由を有しており、同時に告示、討論会、説明会、啓蒙などの情報公開を定めるものであり、目的は国民の政策決定への参与権を保障しようとするものである。独裁国家が用いる世論誘導などとは、本質的に異なる。今日、多くの民主主義国家がますます国民投票制度の価値を重要視するようになっており、議会の主権をことさら重視する英国も、かつて国民投票を実施したことがある。一部の者が国民投票と独裁をイコールで結ぼうとしているのは、国民投票に対する侮辱である。
(二)また一部の人は「公投実施要点」が行政機関による国民投票実施に限定し、国民による連署(承認)を含んでいないことに対し、行政院は世論操作をしようとしているなどと批判している。行政院は国民連署の制度に反対しておらず、それは行政院が立法院に送付した「創制複決法」草案の内容からも明らかである。行政院策定の「公投実施要点」は行政機関および公務員の行政規則を定めるものであり、その性質には限界があり、国民連署の規範をそこに含むことはできない。
四、行政院は立法院に創制複決あるいは国民投票の法制化を早急に完了し、完全な国民投票制度を確立するよう呼びかける
(一)「公投実施要点」は国民投票あるいは創制複決の法制に代わるものではない‥行政院が「公投実施要点」を策定した目的は、国民が早く国民投票の基本的権利を行使して国民の意思を明確にし、国民主権の理念を具現するためであり、決して国民投票あるいは創制複決の法制に代わるものではない。
(二)さらに完備した国民投票制度のため法制化が待たれる‥行政院が「公投実施要点」を策定し、国民投票を実施しようとするのは、ただ憲法によって付与された行政権の範囲内のものであり、さらに完備した国民投票のためには法制化が待たれる。一部において行政院が国民投票実施の方式を策定することに批判の声があるが、それはこの点を理解せず、的の外れたものである。「公投実施要点」はただ行政機関が主動する国民投票の実施方法を定めたものであり、内容は行政権の範囲内での事務処理を定めているのみである。国民連署の諸規定については、法制によって定めることが待たれる。「公投実施要点」の不足の部分を補うのは、まさに立法部門の任務であり、行政院は立法院に対し、早急に創制複決あるいは国民投票の法制化を促進し、もって完璧な国民投票の制度を確立し、国民の基本的権利を確保するよう呼びかける。
五、行政院が「公投実施要点」によって国民投票を実施する場合、各行政機関は協力と共同措置の義務を有する
(一)全国的な国民投票の実施は中央の権限に属し、地方自治の項目ではなく、地方自治体が自己の判断で実施するかどうかを決定することはできない。「公投実施要点」の規定に沿って実施される国民投票は、中央選挙委員会が各クラスの選挙委員会を指揮して行うものであり、地方自治体を指揮するのではなく、地方自治権の侵犯には当たらない。
(二)「行政一体の原則」に基づき、地方行政機関は中央行政機関が行う中央専管事項に対して協力する義務があり、それが法に依拠しているかどうかを問う問題とは異なる。
(三)地方自治体には中央行政機関が中央立法機関の権限を侵犯しているかどうかを判定する権限はなく、一部の地方行政首長が公開の場で行政院が立法院の権限を侵犯していると批判しているが、それは明らかに越権行為である。
(四)国民投票という国民の基本的権利の遂行を促進するのは、あらゆる機関の憲法上の義務であり、地方自治体もまたこの例外ではない。
六、行政院が国民投票を積極的に推進するのは、決して選挙のためではなく、民主主義を深め、国家利益を促進するためのものである
(一)陳水扁総統が「国民投票は総統選挙より重要である」と表明したのは、台湾国民への公約と歴史への責任に基づくものである。行政院はその陳総統の指示を遂行し、もとよりその責任は他に転嫁できないものである。
(二)行政院が国民投票を積極的に推進するのは、国家発展への真摯な考慮に基づくものである。台湾はすでに総統直接選挙と国会全面改選を完遂したとはいえ、法制面における矛盾により、台湾の選挙は完全な国民による政策決定の効力を発揮するものにはなっておらず、代議政治の構造に瑕疵を来たしている。第四原発問題が、その顕著な例である。このほか、台湾をめぐる国際環境は日々困難の度合いを増している。WHO加盟の挫折はその一つであり、民主主義、人権、国民の意思表明は、台湾国民の最も有力な言語となるものである。このため国民投票による台湾民主主義の発展と国家利益増進の促進は、きわめて切迫したものとなっている。貴重な改革の機会をとらえ、行政院が極力国民投票を実施しようとするのは、民主主義を深め、世界の潮流に乗り、また国家利益を強化するためのものであり、選挙のためなどと曲解すべきでない。
【行政院新聞局 7月21日】
●参考資料‥中華民国憲法
第二条 中華民国の主権は、国民全体に属する。
第十七条 人民は、選挙、罷免、創制(法制定)、複決(法案に対する審査)の権利を有する。
第二十四条 およそ公務員が違法に人民の自由又は権利を侵害したときは、法律によって懲戒を受けることを除いて、刑事及び民事責任を負わなければならない。被害人民は、その受けた損害については法律の定めるところにより、国家に対して賠償を請求することができる。
第百三十条 中華民国の国民で満二十歳に達した者は、法により選挙権を有する。この憲法及び法律に別段の規定がある場合を除いて、満二十三歳に達した者は、法により被選挙権を有する。
第百三十三条 被選挙人は、原選挙区において法により罷免することができる。
第百三十六条 創制、複決の両権の行使については、法律を以て定める。
(完)
国民投票実施は平和の武器
呂秀蓮副総統が意義を強調
呂秀蓮副総統は七月二十日、「李登輝友の会」の会合で講演し、「一部の人は国民投票と独立・統一問題の対決とをイコールで結ぼうとしているが、そういう人たちには台湾の法的地位に対する認識にまず問題がある。客観的に見て、われわれは国土、国民、主権を有しており、本来が独立自主の国家である。このことから台湾は国民投票によって答えを導き出す必要性はないのだが、もし国際間において台湾を侵犯しようとする国があった場合、国民投票は台湾人の意思を世界に示す最も好ましい平和的な方途となる」と語った。
また「かつて憲法修正のおり国民大会が召集され、立法院でも長期間論争されたが、国民投票法さえ採択すれば、即国民投票によって解決することができた」と述べ、「国民投票の根拠は国際人権規約第一条であり、そこには『すべての人民は政治的地位を自ら決定する権利を有する』と明記されており、わが国の憲法も国民が創制(法制定)、複決(法案に対する審査)の権利を有すると規定している」と指摘した。同時に「国民投票を蛇蝎のごとくに言う人もいるが、モンゴルの国名変更、バルト三国のソビエト連邦離脱など、いずれも国民投票によって決定しており、いわばそれは平和の武器としての効力を持っているのだ。またある人は、陳総統は国民投票によって中国と対決しようとしているなどと言っているが、陳総統は台湾人も国民投票の権利を持っていることを示そうとしているだけなのだ」と強調した。
《台北『自由時報』7月21日》
高速鉄道、初のレール敷設が着工
土木工事ほぼ完了し、建設工事いよいよ佳境に
台北―高雄間で進められている高速鉄道(台湾版新幹線)の建設工事で七月十七日、初のレール敷設工事が始まり、記念式典が行われた。
高速鉄道建設には、車両や信号など運行システムをはじめ、五区間あるレール敷設工事のうち四区間を日本企業連合が受注するなど、日本が多くの主要工事に参加している。この日、日本から十九企業合わせて約百四十人が記念式典に臨み、このうちの五十人は日本から台湾入りし列席した。このなかには前国土交通省政務次官の同省顧問、経済産業省室長ら政府高官も含まれており、日本政府が台湾の高速鉄道を重要視していることを伺わせた。
レール敷設工事が開始されたのは台南と高雄の工場を結ぶ全長六十㎞区間で、列車の試運転に提供されるもっとも重要な区間に相当し、来年八月の完成を予定している。記念式典は日本式の鏡開きをもって行われ陳水扁総統をはじめ高速鉄道公司(以下、高鉄)の殷琪会長、林陵三・交通部長らが出席した。
陳水扁総統は「高速鉄道工事はすでに佳境に入り、将来台湾西部が日帰り圏内に発展すれば、台湾は正真正銘の都市国家となる」と述べるとともに、工事関係者の労をねぎらった。さらに「高速鉄道建設は台湾のBOT(民間が建設し、一定期間後、政府に委譲)方式の手本であり、国内経済を刺激し、多くの雇用を生み出した。他の民間企業もこれに倣い、積極的に公共建設の列に加わってほしい」と訴えた。
現在、高速鉄道建設は土木工事が八四%完了し、全体の進ちょく率は四五%で、予定の二〇〇五年十月の開通に向けて順調に進んでいる。高鉄によると、来年春にも日本の新幹線車両が台湾に搬入され、同年後半に電機システムの基礎工事、およびレール敷設工事を完了し、その後各システムの統合について確認テストを実施し、開通を目指す。現在高速鉄道建設には日々約二万人の技術者と労働者が投入されており、行政院経済建設委員会では、五年間の工事期間中、約四十八万人の雇用と五千億元(約一兆七千億円)の経済価値が生み出されると予測している。
● 連絡交通網整備計画が完成
交通部は七月十七日、高速鉄道駅に連絡する各種の交通網整備計画を完成させた。それによると、台北(台北駅、南港駅、板橋駅)、高雄(左営駅、高雄駅)、苗栗(豊富駅)、台中(烏日駅)の各駅は、それぞれ在来線(台湾鉄道)の各駅構内で連絡し、さらに台北、高雄については新交通システム(MRT)とも接続できるようになっている。桃園(青埔駅)は二〇〇八年に完成する国際空港MRTと接続し、新竹(六家駅)と台南(沙崙駅)はそれぞれ在来線の各駅とを結ぶ支線を新たに建設する計画だ。なお、台中(烏日駅)は在来線との接続以外に、烏日―北屯間に新たにMRTを建設する予定で、嘉義(太保駅)については周辺道路を接続の主要手段として整備し、将来的には太保駅と嘉義市を結ぶ全長二十六㎞の狭軌MRTを建設することにしている。
桃園、新竹、台南の三つの連絡交通網の建設費については、すでに行政院の公共建設三年計画の三千億元(約一兆円)の予算内に組み込まれており、二〇〇七年末までにそれぞれ開通する予定となっている。
《台北『中国時報』7月18日ほか》
台湾の知名度を高め、民主化を示す
呉淑珍夫人が欧州歴訪から帰国、ローマ法王に謁見
ドイツで開催される台湾の故宮博物院所蔵品の特別展開幕式とその関連イベントに出席するため七月十六日、九日間の欧州歴訪の旅に出発した呉淑珍夫人は翌十七日、最初の訪問地ベルリンで同展の開幕式に出席した。式典には、ドイツの関係者以外に、欧州議会副議長をはじめオランダの前首相、チェコの文化大臣、台湾と友好関係にあるオーストリアとアイスランドの国会議員代表も駆け付け、開幕を祝った。
故宮博物院の所蔵品が欧州で出展されるのは、一九三五年のロンドン、九八年のパリに次いで今回が三回目となる。実現までに十年の準備期間を経て開催されたもので、来年は故宮博物院でドイツ・ナショナルギャラリー所蔵品の特別展が開催される。ドイツは台湾にとって欧州で最大の貿易相手国であり、今回の特別展は両国の文化交流においてかつてない大規模な記念すべきものとなった。
ベルリンに過去二回立ち寄り、今回初めてファーストレディーとして訪問した呉淑珍夫人はドイツ連邦議会を訪れ、副議長をはじめ台湾と親交のある議員らと会見した。副議長は「今回の呉夫人の訪問は、ドイツと台湾の関係において重要な意味をもつ」と述べ、歓迎の意を示した。これに対し、呉淑珍夫人は「台湾とドイツには正式な国交がないだけに、双方の国会議員による交流は両国の理解と協力を深めるのに不可欠だ」と述べ、交流の強化の必要性を強調した。
このあと呉淑珍夫人は十九日、イタリアのローマを訪問した。台湾とイタリアは国交がないが、欧州で唯一、台湾と国交のあるバチカンとイタリアとの協定に基づき、イタリア政府は呉淑珍夫人を国賓として歓待し、空港にはイタリアの国旗の横に中華民国の国旗が上げられ、イタリア軍用空港基地司令官がみずから出迎え、呉淑珍夫人は入国検査を受けずに通過し、ホテルへ向かった。ローマ訪問は陳総統の特使としてローマ法王ヨハネ・パウロ二世の在任二十五周年に対し祝意を伝えるためで、あいにくローマ法王はそのとき休暇中で、教徒以外には会わないのが原則だったにもかかわらず、台湾からはるばる車椅子で訪れた呉淑珍夫人の熱意に応じて、特別に二十日の日曜のミサに招待し、謁見の機会を得た。
呉夫人は法王の健康と在任二十五周年に対し祝意を述べるとともに、陳総統の親書を手渡した。陳総統は親書のなかでローマ法王の提唱する平和の四つの柱、すなわち真理、正義、愛と自由に対し支持を述べるとともに、「台湾は長い間、中国の軍事脅威にさらされており、台湾海峡の平和は両岸の相互尊重と四つの平和の柱が守られてこそ可能であり、それこそが最終目的である」と強調した。また、カトリックの人道精神に基づく国際社会の台湾に対するさまざまな援助に感謝を伝えるとともに、バチカンのイラク復興支援への呼びかけに応えるため、ローマ・カトリック教会に対し、台湾を代表し呉夫人が十万ドルを贈った。
呉淑珍夫人はまた台湾と親交の深いイタリアの国会議員らと会見したほか、新型肺炎(SARS)を最初に発見し死亡したイタリア人医師・カルロ・ウルバーニ氏の妻のもとを訪ね、世界の公共衛生に対する氏の貢献を称えるとともに、氏を記念し政府が三億元(約十億円)を出資し、流行性疾病を専門に研究する「ウルバーニ基金会」を立ち上げたことを報告した。一方、呉淑珍夫人はローマ政治愛徳協会から「人道服務賞」を贈られた。
一連のスケジュールを終え、二十二日帰国の途についた呉淑珍夫人は今回の歴訪について「前回の米国訪問よりプレシャーが少なく、気が楽だった。ただ、ドイツの政府関係者と会見できなかったことが残念だった」と感想を述べた。
游錫堃・行政院長は呉淑珍夫人の欧州歴訪について「台湾と欧州との文化交流がさらに強化されただけでなく、台湾の知名度を高め、民主化の成果を国際社会に示すものとなった。まさに、全民外交の成功例と言える」と高く評価した。
《台北『中国時報』7月21日ほか》
ニュース
地方議会が台湾と交流拡大
「日台地方議連」が旗揚げ
台湾に友好的な日本全国の都道府県と主要都市の地方議会議員によって構成される「日台の共存共栄を促進する地方議員連合会」(略称‥日台地方議連)が八月三十一日に東京都内で設立大会を挙行することになった。初代会長には名取憲彦・東京都議会議員が、事務局長には和田有一・神戸市議会議員が就任する。参加人数は自民党と民主党の議員を中心に、百五十人から二百人が見込まれており、最終的には五百人以上を目標としている。また同連合会は設立後、九月六日に台湾訪問団を組織し、「台湾正名運動」(台湾の名を正す運動)のデモを支援する予定である。台北駐日経済文化代表処は日台地方議連の結成を歓迎し、出来る限りの協力をしたいとしている。
初代会長に就任する名取憲彦氏は「目的は日本全国が日台両国の歴史を認識することを喚起し、日台の共存共栄を促進するところにある」と語った。同議連は毎年少なくとも春夏秋冬の四回、日台交流会、読書会などを開催する予定である。
《台北『自由時報』7月22日》
スロバキアと実質関係強化
相互に駐在代表処を開設
政府は最近、スロバキアの首都ブラチスラバに領事館業務を備えた代表処を開設することを決定した。同代表処は八月一日付けで開設され、スロバキアも台北に近く代表事務所を開設する予定である。
政府は近年、外交政策において実務重視のほか、逐次効率性を追求するようになっている。効率性の悪い在外公館、あるいは業務上、屋上屋のような現象がある公館は整理する方針をとっている。バルト海のリトアニア、バルカン半島のクロアチアなども台北に連絡事務所を開設する意思表示をしているが、政府はまだ回答を示しておらず、ここからも政府の慎重な姿勢が伺える。
政府がスロバキアとの代表処相互設置を決定したのは、同国がチェコ、ポーランド、ハンガリーと緊密な関係にあって外交的メリットがあり、九三年一月の独立建国当初から同国政府が台湾に理解を示し、相互交流も進んでいることによる。
《台北『中国時報』7月24日》
花卉産業を経済発展のリード役に
彰化県を「東洋のオランダ」王国に発展させよう
来年一月十七日~三月十四日、中部の彰化県で「二〇〇四台湾フラワー・エキスポ」が開催される。これに合わせて七月十日、台北市で翁金珠・彰化県長の主宰のもと、政府関係者、国内の園芸専門家、花卉商業組合の代表らを招き、エキスポ開催に向けて座談会が催された。以下は、その要旨である。
フラワー・エキスポでチャンスの扉を開く
翁金珠・彰化県長
日本では一九九〇年にフラワー・エキスポが開催され、国内に緑化ブームを起こし、大きなビジネスチャンスを生んだ。フラワー王国オランダの名は世界に知られ、オランダ人は、世界の花の半分はオランダ産だと誇りにしている。これらは、花卉産業も適切な計画を立てれば、経済発展を促せるという見本といえる。
彰化県は面積の六割が農地で、人口の五割が農業従事者である。私は、台湾がWTOに加盟後、彰化県がどのように転換し、新たな挑戦に対応するべきか考えてきた。彰化県の花卉の栽培面積は五千ヘクタールにも及び、全国一であること、全国の花卉需要の七割を供給していること、苗木の生産量が全国の九割であることなどをもってしても国際的な販路はなく、そのため花卉産業を一層盛りたてる決意をした。
こうして、彰化県に「国家花卉園区」を建設する計画が始まった。現在、本計画は行政院の二〇〇八年国家重点発展計画に組み込まれ、農業委員会の五年計画、十二億五千万元(約四十三億七千万円)の予算も得られた。フラワー・エキスポは国家花卉園区を実現する重要なスタートラインである。国家花卉園区内の多くの基盤が、エキスポの準備の過程で次々と作り上げられていく。彰化県が花の町になる夢は、早い段階で実現できると確信している。
草花をめでる暮らしの実現を
翁台生・聯合報副編集長
台湾は高速鉄道や科学園区などのハードの建設だけでなく、草花を飾るソフト面の新スタイルによって国民の生活レベルを向上させるべきである。
私はかつてオランダの花卉産業を取材したことがあるが、現実に花の町を作り上げるには、政府や花卉農家の努力以外に、住民の役割が非常に重要である。オランダのように、家々の窓辺に花が飾られるようになれば、それは人生の一風景となり、来年の春が待ち遠しくなる。そして台湾にも春が訪れるだろう。
[翁金珠・彰化県長]
現在、県内の百以上のコミュニティが総力を挙げてクリーンアップと庭園や球技場作りなどに取り組んでいる。来年のエキスポ開会の頃には、彰化県のイメージが一新するだろう。
花を観賞して人生に彩りを
李◆・台湾大学園芸学部教授
常に花や盆栽に接していると、人は快楽や満足感を得て、将来に対する自信がつく。これが多くの先進国で園芸が振興している理由である。
日本は第二次大戦後、生活苦で娯楽もなかったため、政府が家庭園芸を推奨し、国民に生活苦を感じさせないようにした。家々で花を育てたことで、現在のような、花に囲まれた清潔で美しい日本のイメージが作られた。日本では各都市でフラワーフェスティバルが開催され、日本国民は一年中いつでも花を観賞でき、生活は趣きに満ちている。
台湾国民の生活の質は、欧米と比べると大きな格差があり、台湾の居住環境の中で不足しているのは色彩である。花を愛し、育て、花とともに暮せば、台湾は麗しの島になれる。また、こうした習慣ができれば、花卉産業や園芸産業が振興し、国内の経済や就業率にも貢献する。
フラワー・エキスポの開催は、花を愛する習慣を提唱することに役立つと同時に、花の美の展示に止まらず、花卉産業の科学技術水準もアピールできる。日本では、一八三日間の会期中、技術を駆使して毎日花を咲かせた。これは参考に値する。
台湾では以前にもフラワー・エキスポが開催されたが、いずれも小規模で、閉幕後は継続されなかった。政府は長期的観点に立ち、本エキスポを位置づけるべきである。
渓州周辺の景勝地との連携が重要
陳建斌・行政院農業委員会農糧処技師
主催機関の計画書から、フラワー・エキスポの開催地である彰化県渓州が、真珠のごとく美しい土地だということが分る。県政府にはその真珠を「繋ぎ連ねる」業務を進めてもらいたい。観光客がエキスポを見学するのはせいぜい半日か一日である。周辺の景勝地と連携し、数日間の旅程にすることによってはじめて、彰化県に一層の経済効果が生じる。
[翁金珠・彰化県長]
県政府でも観光プランを立てているが、彰化県には旅館が少なく、宿泊施設の解決が当面の課題である。
原生植物を活かした外交策を
李坤地・台湾園芸花卉商業同業組合連合会理事長
台湾の菊は、日本の菊市場で五割のシェアを持つが、最近はコストと輸送費の安い韓国に注文の半分が流れている。また、マレーシアの菊との競争も激しく、今では台北市内の市場でもマレーシア菊が販売されている。
台湾の花卉産業は、研究開発と基礎作りをしなければ既存の市場地位を確保できない。政府が有利な投資環境を整備することを望みたい。また、台湾原生種の植物を見つけ出し、国民外交を展開することを提案したい。大陸のパンダのように、販売はせず国民外交として輸出すれば、原生種植物の貴重性をアピールできる。
[涂明達・彰化県副県長]
来年のフラワー・エキスポは、国家花卉園区のスタートに過ぎない。県政府が国家花卉園区の成功を目指すのは、花卉産業の生産と販売、および後続のサービス業を発展させるためである。
国家花卉園区計画は、彰化県政府では都市計画と位置づけ、範囲を濁水渓以北、東西高速道路以南、八卦山以西、中山高速道路以東の八村落と定めた。現在は内政部に計画を委託して計画綱要を制定中である。
彰化県政府は、政府がインフラ投資しても業者が入居しないという状態を回避するために、旧来の地区別開発方式に替えて「開発許可制」を採用する。原則として、交通幹線の利便性を優先開発の検討根拠にする。
中部空港を迅速な輸送拠点に
邱阿棗・行政院経済建設委員会部門計画処第二副処長
当初、行政院経済建設委員会が「国家花卉園区」の設立を計画した際、台湾の花卉産業は一九九三年から二〇〇二年の間に栽培面積と生産額が急成長し、将来性の高い産業であることが分った。今では台湾の一人当たりの花卉消費額は一千元(約三千五百円)になり、少なくともこの倍の成長の可能性がある。
国家花卉園区の設立を彰化県に決定した理由は、彰化県の花卉栽培面積が全国一であることと、計画中の中部国際空港に隣接しており、輸送の便が良いためである。
台湾の花卉をよりいっそう彰化県に集中させ、中部国際空港から輸出すれば、台湾の花卉は数時間内にアジア太平洋市場に届き、十数時間内には世界中に届けられる。そうなれば、彰化県の花卉産業を通じて、台湾が東洋のオランダになることもできる。
オランダと台湾は面積や人口密度がほぼ同じであり、オランダをモデルにすれば台湾の花卉産業の発展にも大きな将来性がある。国家花卉園区が順調に推進されれば、商品貿易や観光収入の増加だけでなく、良質な生活環境が生まれ、「鉄枠窓」を「花の窓」に変える事ができる。
花卉産業は小額投資で利益大
陳建斌・農委会農糧処技師
タイのバンコク空港では、観光客が箱入りの花を買うところをよく目にする。今後、台湾の花も空港で販売できるようになると良い。観光客が台湾と花卉産業とをひと続きに連想できるようになれば、外国人の持つ「台湾は単なる製造工場」との印象を払拭できる。
《台北『聯合報』7月14日》
アジアフォーカス・福岡映画祭二〇〇三
今年も注目映画が勢ぞろい、台湾映画も三本出品
アジアの映画だけに絞り、しかも日本の映画館ではほとんど紹介されない地域の映画にも焦点をあて、草の根の国際交流を展開している「アジアフォーカス・福岡映画祭二〇〇三」が、今年も九月十二日〜同二十三日に開催される。
十三回目を迎えた今年は、協賛企画、協力企画合わせて過去最多の六十の作品が上映される予定で、このうち台湾映画も三本紹介される。
連錦華監督の『小雨の歌』は、台湾の年老いた退役軍人に嫁いできた中国の若い女性の姿を通して、現在の台湾社会の一面を描いた作品だ。主役のヒロインを演じるのは、『エドワード・ヤンの恋愛時代』や蔡明亮監督の『河』、『ふたつの時、ふたりの時間』などの作品で圧倒的な魅力を放った台湾の看板女優・陳湘琪で、小雨の降るように、やさしく静かなタッチで描かれる彼女の日常に新天地での厳しい暮らしや差別が映し出される。監督の連錦華は、長年テレビ番組の現場監督や脚本などを手がけ、二年前に共同監督で作品を発表。この作品は、初の単独監督作である。
鴻鴻(本名:閻鴻亜)監督の『人間喜劇』は、中国に古くから教訓として伝えられている孝行者の古典「二十四孝」に基づき、四つの物語を通して現代の台北を描いたコメディーで、第二十三回ナント三大陸映画祭で観客賞を受賞した。監督の閻鴻亜は詩人、エッセイスト、雑誌編集者、舞台演出家として広く活躍しており、エドワード・ヤン監督の『牯嶺街少年殺人事件』では共同脚本、『エドワード・ヤンの恋愛時代』では小説家役で出演している。九八年に映画監督としてのデビューし、この作品は四作目となる。
『現実の続き 夢の終わり』は日本との共同作で、宮沢りえがマドンナ役として出演し話題となった『運転手の恋』の監督、易智言の作品だ。台湾マフィアの抗争に巻き込まれた恋人の死を確認するため、一人台北に渡った日本人女性、加奈子。悲しい現実に幕を引くために拳銃を握り過去の自分に決別する……。『踊る大捜査線』の水野美紀が初めて本格アクションに挑戦した「台湾版ニキータ」。
●上映日時および会場(いずれも福岡市中央区天神)
※ソラリアシネマ1(ソ)、エルガーラホール(エ)、NTT夢天神ホール(N)
『小雨の歌』13日(エ)、17日(ソ)、 22日(エ)
『人間喜劇』13日(ソ)、18日(ソ)、 21日(エ)
『現実の続き 夢の終わり』20日(N)、22日(N)
●チケット料金、申し込み
一作品券(前売八百円/当日千円)
五作品券(前売三千五百円/当日四千円)ほか
●前売券取扱い
福岡・北九州市内および近郊の主要プレイガイド、チケットぴあ(Pコード982—979)、ローソンチケット(Lコード85437)
※ 留学生当日割引あり
●問合せ:NTTハローダイヤル(8月1日〜9月30日)
毎日7:00〜23:00
092—733—5543
0570—008886
公式ホームページ
http://www.focus-on-asia.com
◆ 招待券プレゼント
「アジアフォーカス・映画祭二〇〇三」招待券を、二枚一組、合計二十名に先着順でプレゼントいたします。ご希望の方は往復ハガキに住所、氏名、年令、職業、電話番号を記入し、下記にお申し込みください。
宛先 〒108-0073 東京都港区三田5—18—12 日華資料センター
来来台湾
観光トロッコ列車が再開
今年三月に起きた阿里山登山鉄道の事故を受けて実施された検査で、旅客の輸送免許を取得していなかったため運行が中止された彰化県渓湖郷の観光トロッコ列車が七月十九日再開した。
この観光トロッコ列車は、台湾糖業がその昔、サトウキビの運搬用に利用していたトロッコを改良したもので、同社はこのほど旅客輸送免許を取得し、安全許可がおりたため運行を再開した。観光の目玉として新たな息を吹き込もうと、現地製糖工場の社員がみずから先頭車両のお色直しをし、白地に黒の斑点模様を描き、その名も「乳牛号」と命名された。渓湖郷に広がる草原の中を走る「乳牛号」は、外から眺めるとまさに牛が草をはむ姿を連想させ、ほのぼほとした雰囲気がただよう。
このアイデアを考えた南彰化鉄道探索工作隊の黄金宝氏は「この地は台湾酪農の故郷であり、地方の産業を象徴するのに乳牛のモチーフは最も相応しい。今後、二両目以降の車両にも斑点模様を加え、キュートなボディーに仕上げたい」と語っている。
渓湖郷の観光トロッコ列車は、渓湖駅から濁水駅まで往復七・二㎞で運行され、途中は豊かな田園風景が広がっている。渓湖製糖工場内には日本統治時代の木造駅などが展示されており、見学できる。休日のみ、一日七本運行されており、大人が百元(約三百五十円)、子供は六十〜八十元(約二百〜二百八十円)。
《台北『民生報』7月13日》
台湾地名ものがたり 3
●「台南」の地名は新しい①
台南といえば、日本でなら京都か奈良に相当し、古い歴史の町として観光客も多い。台湾本島の開発はここから始まったのだから、当然と言えようか。だが「台南」という地名は意外に新しい。
唐の中葉にはすでに大陸から移住民が澎湖島に入っていたことは文献からも確認されており、そこへオランダ人が入ったのは十七世紀になってからであった。ヨーロッパの大航海時代のことで、ジャワ島に東インド会社を設立(一六〇二年)したオランダは、さらに勢力を伸ばそうと艦隊をマカオに向けた。ところがそこはすでにポルトガル人が要塞を築いており、オランダ艦隊は海上をさまよった。このとき、同乗していた漢人通訳で、澎湖島の存在を教える者がいた。オランダ人は喜び、さっそく針路を澎湖島に向けた。上陸してみると、一応開発もされており、けっこう住みよい。ここを拠点にと軍営や住居を築きはじめた。
驚いたのは明朝である。大陸沿岸住民が澎湖島に拠ったオランダ人と交易することを禁じるとともに、大軍を派遣して撤退を要請した。オランダは戦いを避け、交渉に応じた。このとき結ばれた協定が、オランダ人は澎湖島から撤退する代わりに、台湾を占拠しても明朝は異議を唱えず、大陸沿岸との交易も認めるというものであった。このことから、明朝の台湾に対する認識がどの程度のものであったか伺い知れる。
この時オランダ人が入植したのが鹿耳門(現在の曽文渓)で、一六二四年十月のことである。やがてここから台南市街が形成されるが、先住民は当時この地を「セッカム」と呼称し、漢人移住民は「赤嵌」の漢字を当てていた。だからオランダ人が構築したプロビデンジャ城も「赤嵌楼」と呼んでいた。「台南」の地名が出てくるのは、まだ先のことである。
進む遺伝子組替えと脱遺伝子への試み
多方面で進む技術応用を規制、安全性を重視
●「光るメダカ」日本へ輸出
遺伝子組み替え技術で全身が蛍光色に光るメダカが台湾から日本に輸入され、ペットショップなどで販売されることになった。この「光るメダカ」は、二〇〇一年に台湾の鑑賞魚販売業の邰港公司と台湾大学漁業科学研究所が共同で開発したもので、今年五月に日本の総代理店が百匹輸入した。一匹約六千円で、日本で遺伝子組替え動物がペットとして売られるのは初めてのケースとなる。
監督省庁である環境省は、「絶滅危惧種である在来のメダカと交雑するおそれがある」として、環境への影響を重視し、警戒姿勢を示している。これに対し、日本総代理店側は、「生殖能力はない」と反論しているが、現時点で完全に生殖能力がないことを証明するのは難しく、同省は輸入自粛を求めている。
《台北『中央社』7月12日》
●遺伝子組替え食品を規制
さまざまな遺伝子組替え製品が開発され、市場に出まわるなか、台湾ではこれまで、これを規制するシステムが確立されていなかった。このため、行政院国家科学委員会はさきごろ院内に専門委員会を立ち上げ、早急に対策を検討するよう求めた。
現在台湾では、遺伝子組替え食品に対する規制はあるものの、食品の原料、たとえば豆乳製造用の輸入大豆や、蛍光魚など遺伝子組替え動物が、人体や環境にどのような影響を与えるかなど、総合的な評価を行う機関はない。国外からの不法な遺伝子組替え製品の輸入を規制するとともに、国内の遺伝子組替え製品に対し、適切な認証制度を確立することが求められている。
《台北『聯合報』7月10日》
●「彩色米」の開発に成功
行政院農業委員会農業試験所はこのほど、世界で初めて、遺伝子組替え技術によらない着色米の開発に成功したと発表した。これまでにも、スウェーデンの「黄金米」など、遺伝子組替え技術による着色米は開発されていたが、安全性に疑問があった。今回、台湾が開発に成功した「彩色米」は、米に栄養素を添加したのち天然色素で着色したもので、安全性にはまったく問題がない。開発には六年かかった。
口当たりは玄米に近く、玄米同様、ビタミンA、Bなど栄養が豊富だ。また、色は、黒、褐色、橙、赤、黄の五種類で、それぞれ異なる栄養分が添加されている。たとえば、黒には、抗酸化作用があり老化防止の効果がある。同試験所は、来二〇〇四年末には本格的な栽培を開始する予定で、健康ブームに乗って、人気が高まることが期待される。
《台北『聯合報』7月10日》
埋蔵金発掘に法律改正
日本統治時代に財宝を埋蔵?
日本統治時代に埋められた財宝が台湾のどこかに埋まっているといううわざが近年来、台湾各地でささやかれ、一種の「財宝捜し」ブームが起きている。とくに台北博愛区で昨二〇〇二年、二人の退役軍人が黄金を発掘しようとして、大きな話題になった。
そこで財政部ではこのほど、三十年以上修正されていなかった埋蔵金発掘に関する法律を改正し、発掘の際の保証金を従来の二十万元(約七十万円)から「最低百万元(約三百五十万円)で、発掘品の価値の十分の一」に引き上げるとともに、本当に金銀財宝を発掘した場合には、その六割を国庫に収めるという規定を作った。
こうした「日本統治時代の埋蔵金」捜しブームの始まりは、一九六〇年に一人の香港人が、日本の友人にもらったという「埋蔵金の地図」を頼りに南投県で発掘をしたことと言われている。
国有財産局の統計によると、これまでに七十七件の財宝発掘の申請があり、五十件が許可されている。なかには、熱中するあまり一家離散の憂き目に遭ったり、命を失った人もいるが、過去五十年来、実際に財宝を掘り当てた人は一人もいないという。
《台北『聯合報』7月4日》
台湾でおいしい米、おにぎりが繁盛
米のブランド志向、米食への人気高まる
●コシヒカリに負けない高級米
行政院農業委員会は、日本が誇るブランド米「コシヒカリ」に負けない品質を持つ高級米を、日本など国外に輸出する計画を明らかにした。「益全香米」は同委員会農業試験所が九年の歳月をかけて開発した新品種で、二〇〇〇年に陳水扁総統から命名された。台湾で米の輸入が全面解禁されたのち、コシヒカリに対抗しうる国内米として大きく期待されている。
台湾に輸入されているコシヒカリが一キロ二百五十元(約九百円)以上もするのに対し、「益全香米」は一キロ百元(約百五十円)と半分以下の値段で、外国人にもおいしいと大好評だという。今年四月に「良質米推薦品種」として審査を通過しており、今年秋の作付け面積は一万ヘクタールを超す見込である。農業委員会では今後、上海、香港、シンガポールなど華人の多い地域だけでなく、こしひかりの本場の日本にも売りこみたいと意欲を見せている。
《台北『聯合報』7月10日》
●おにぎりで国際進出
「飯團(おにぎり)」は、台湾でも、手軽に食べられる食べ物として庶民に愛されている。台湾のおにぎりは、「油条(細長い中華風揚げパン)」や「肉鬆(肉でんぶ)」を具にしたものが一般的で、街角の小さな屋台で売られている。しかし、高雄市の余政隆さん(三十六才)は、この庶民的な食べ物に研究と創意工夫を重ね、街角の屋台を国内三百店のチェーン店に育て上げた。「おにぎりの魔術師」の異名を持つ余さんは、国際市場進出の夢も抱いている。
余さんは二十代の初め、普通のおにぎりを屋台で売っていたがうまくいかず、店をたたんだ。彼は、「なぜ西洋式のファーストフード店は流行っているのに、台湾風のおにぎりはうまくいかないのか」と考え、仕事のかたわら、二年間来る日も来る日も、米の品種や、米を炊く時の火加減、具や調味料について研究を重ねた。海外旅行に行けば、観光そっちのけで現地の米を買い集め、あるときには、海外で買い求めた十種類以上の米を、すべて税関で没収されたこともあったという。
このような苦労を重ね、二年後、余さんは自信作の第一号の宣伝チラシを持って、近所の屋台をたずねて回り、「加盟」を呼びかけた。最初に加わったのは、彼の熱意に動かされた十人の中年女性だった。余さんは、彼女たちにおにぎりの作り方を伝授し、また「伝香」というノボリを作って、人の集まる場所で売ってもらった。これが評判を呼び、二、三カ月後には、「伝香おにぎり」の加盟店は三十軒近くになった。
かれのおにぎりは、もち米に蓬莱米を加えたもので、具は三十種揃えて客に自由に選んでもらうスタイルにした。加盟店が高雄を中心とした南部で百軒以上になると、余さんは「スーパー第二代シリーズ」として、従来の白米に黒米、五穀米を加え、具も五十種類に増やした。
今では、さらにバリエーションが増えて、米は台湾の白米や黒米、五穀米のほか、米国の有機米、小麦胚芽など八種類、具は百種以上になった。また、最新技術を取り入れ、米をとぐ時に、酵素やオゾンを加え、粘り気やゴミ、細菌を取り除いている。現在、「伝香おにぎり」のチェーン店は全国で三百店になり、全体で毎月約四千万元(約一億四千万 円)の売上がある。約六百人の加盟者のほとんどが中年の女性や失業者だが、最近では、新卒や除隊後の若者の加盟が増えている。近々、香港とタイに進出する予定で、また大陸からも引き合いが来ているという。小さなおにぎりにこめられた夢が、世界にはばたく日もそう遠くはないだろう。
《台北『聯合報』7月21日》
お知らせ
アン・リー監督作品 『ハルク』全国上映
台湾のアン・リー監督の最新作『ハルク』が、八月二日から全国でロードショー上映される。人気マーヴェル・コミックの映画化作品で、緑色の巨体に怒りと悲しみをみなぎらせ強大な力を操るモンスター、ハルクの映像効果が見所だ。
第17回台湾映画上映研究会
日 時 8月9日(土)午後4時~
作 品 皇天后土
ゲスト 田村志津枝氏(ノンフィクション作家)
※参加無料
会 場 日華資料センター3階(東京都港区三田5-18-12
交 通 都営三田線、営団南北線「白金高輪駅」2番出口徒歩3分
連絡先 日華資料センター(TEL 03-3444-8724 )
第48回新日台交流の会
日 時 8月24日(日)、25日(月)
テーマ 東京のなかの沖縄と東アジア
(東京都内と近郊にてフィールドワークをします)
ゲスト 又吉盛清氏(沖縄近現代史研究家、沖縄大学講師)
※ 参加希望者は事前申込み必要
スケジュールや参加費など詳細は以下にお問合せ下さい
問合せ 日華資料センター
(TEL03-3444-8724)
春 夏 秋 冬
台湾が1,000人の観光客無料招待ツアーを打ち出し、話題になっている。このあとも5,000人の超格安ツアーを売り出す予定である。いずれもSARSの風評被害を一日も早く払拭し、観光客の足を以前の状態に取り戻すための、国を挙げてのキャンペーンだ。この5月、6月の外国人観光客が前年同月比10分の1に減ってしまったのだから、その被害は甚大と言わねばならない。ポストSARSの経済活性化のため、台湾にとって観光客の回復が当面の急務となっている。このことは同時に、レジャー産業の経済全体に与える影響の大きさを示すものでもある。もちろんそれは、日本とて例外ではない。
日本の観光業界にとって、いまや台湾からのお客は重要な経済活性化の資源となっている。特に沖縄では、外国からの観光客で台湾がトップの座にあり、それが同時に、投資を含む両地の経済的結びつきのバロメーターともなっている。沖縄の地に立てば台湾が身近に感じられるのは、なにも気候が似ているせいばかりではない。次に台湾からの観光客が重要な位置を占めているのは北海道である。この北海道と沖縄の旅行代理店はもちろんホテルやレストランなど観光関連業者、それに航空業界もSARSの流行期間中、台湾からの観光客が途絶えたため、相当な打撃を被った。だから七月五日に世界保健機関(WHO)が台湾のSARS感染地域指定を解除して以来、沖縄県は「沖縄・台湾親善訪問団」を、北海道は「北海道観光連盟」や「千歳観光連盟」が道庁観光振興課の肝煎りでそれぞれ台湾に使節団を派遣し、台湾からの観光客誘致に取り組み始めた。
これについて『沖縄タイムス』(7月10日)は「待望だった感染地域からの解除を受け、今後の交流を活発にしていきたい。沖縄からも支援ツアーを派遣していきたい」、「感染地域解除の祝福と末永い交流を築いていきたい」との関係者の言葉を紹介すると共に、「県は五月、新型肺炎の感染拡大に伴い、感染防止対策の一環として台湾に対し、沖縄への『不要不急の来訪についての自粛』を要請。那覇市も台湾客船の入港自粛を求めていた」との解説を付していた。北海道も自治体単位ではないが、ホテルやレストランが個別に「台湾人客お断り」の姿勢を示していた。双方の使節団派遣には、このときのシコリ払拭の意味もある。双方の熱意が通じ合い、両国国民の往来がSARS以前よりも活発になることを期待したい。それがまた、双方の経済活性化につながるのだ。
(K)