台北週報2118号(2003.11.6)
台湾国際投資フォーラム開催
世界との連携で台湾の一層の発展を
台湾国際投資フォーラムは、台北国際会議センターを中心に開催され、二つの大会場での総合フォーラム、12項目の産業シンポジウム、六カ年国家発展計画投資チャンス説明会、成功企業の講演、企業視察、投資相談などが並行して行われた。フォーラム冒頭において、游錫堃・行政院長は本フォーラムの目的を、台湾経済と世界経済の連携強化にあることを明らかにし、陳水扁総統は閉幕式典で以下のように語った。
三日間にわたった国際投資フォーラムは、国内外より二千人を越す企業代表ならびに投資家の方々の熱心な参加を得て、フォーラム開催前から確定もしくは承諾に漕ぎつけた投資金額は、一千三百八十億元(約四千八百億円)に達し、これは当初予測していた一千億元(約三千五百億円)を越えるもので、投資件数とともに予期以上の成果を上げることができました。
さらにフォーラム期間中の二十、二十一日には、二十八件の投資契約もしくは確認が行われました。この中には、国営企業の漢翔公司がベル・ヘリコプター社ならびにボーイング社と合意に達したものもあります。台湾がベル軍用ヘリコプターの補修、改装および性能向上センターとなり、またボーイング旅客機のパート・ライセンス生産を行うというものであり、これはわが国の航空産業の国際分業にとってきわめて大きな意義を持つものです。
このほか世界印刷業界の最大手であるカナダのケベック・ワールド公司も、わが国の企業と連携し、桃園中壢工業区にアジア太平洋中継輸出・運輸センターを開設することに合意しました。
総じて今回の国際投資フォーラムは光ファイバー、ロケット航空機材、通信と半導体などのハイテク機材、さらにエネルギー開発、バイオテクノロジー、金融・保険関係と倉庫・物流関係にわたり、台湾経済の構造が多種多様化していることを十分に示すとともに、台湾産業の転換とレベルアップによる豊富な成果を示すものともなりました。
同時に、この投資フォーラムで、ヒューレット・パッカーズ、ソニー、IBM、デル、マイクロソフト、エリクソンなど十五社にのぼる国際的大手企業が、研究開発あるいは技術センターの設立に台湾を選択しました。このことは台湾が積極的に創造と研究開発を奨励していることに好感を持っただけではなく、台湾の自由と民主主義、開放された社会環境をも高く評価したことを示しております。
各会場でのフォーラムやシンポジウムでも、企業のリーダーは今年下半期および来年の経済状況に楽観的な見通しを示しておりました。台湾はこの国際経済回復の中にあって、優れた成績を収めるため、さらに規制緩和を進め、積極的に外資企業の需要に応え、国際経済の流れに順応し、成長への力を強化しなければなりません。
今回の国際投資フォーラムは、台湾発展のため世界経済と連携するレールを敷いたばかりでなく、台湾における政治、経済、産業など各方面における成果を世界に示すものともなりました。このフォーラムが大きな成果を収めたことは、各国の在台機関も非常に高く評価するところとなっております。
私はここに、今回ご参加いただいたすべての企業ならびに投資家の方々に心より感謝するとともに、主催した政府機関とすべての協賛団体の努力を高く評価し、最高の敬意を表明します。皆様方の努力により、今回の国際投資フォーラムによって「台湾投資、世界に向けて」の門戸を開くことができました。将来、台湾に投資したすべての企業が、台湾と共に大きな成果を収めることを確信しております。
今回ご参加いただいた各企業のリストから、台湾はすでに国際企業の大部分と緊密な連絡のあることが見て取れます。多くの外資系企業が、台湾経済発展に大きく貢献されましたことを、ここに深く感謝する次第であります。今後とも台湾はこれらの企業と協力関係を強化することを強く望んでおります。
また本日、米国、日本、欧州の三大華僑商会の会長ならびに理事長にもご参加いただいたことに、われわれは心より感謝いたします。これら三大華僑商会は、わが国と各国との経済貿易関係の発展に大きな貢献をされており、毎回わが国行政部門に貴重な建議をしていただいているばかりでなく、台湾の投資環境と機会を世界に紹介する重要なパートナーともなっていただいております。
ますます熾烈化する国際競争のなかにおいて、われわれは現在の成果に満足してはおられません。台湾は現有する豊富な資本市場、高度な専門的人材、斬新な研究開発能力、有利な地理的条件等を活かし、地域の研究開発センター、また企業オペレーション・センターとしての地位を着実に築かねばなりません。
台湾の目標は大きく、われわれは着実に進み、自信と決意をもって世界の舞台に出て行かねばなりません。われわれはこの目標に向かい、世界の友人たちと共に歩み、台湾を新世紀における世界島にすべく共に努力することを願っております。
【総統府 10月21日】
●「台湾を深く耕す」
この台湾国際投資フォーラムは十月十九日から二十二日まで、台北国際会議センターを中心に、経済部と対外貿易協会の共催によって行われた。十九日の開会式において、游錫堃・行政院長は同フォーラム開催の背景について「政府は陳水扁総統が提示した『台湾を深く耕し、世界に進出する』経済発展戦略に則り、人材育成、研究開発推進、インフラ整備、生活環境改善を主軸とし二〇〇〇年から〇七年までに二兆六千億元(約九兆円)を投じる『挑戦二〇〇八国家発展重点計画』を目下推進中であり、台湾全体を緑のシリコンアイランドに発展させようとしている」と語った。
同時に「政府が今回、国際投資フォーラムを開催したのは、台湾には膨大な国際連携のチャンスがあることを、世界の人々に知ってもらうためである。世界の友人に、台湾社会は豊かになったばかりでなく、自由と民主主義によって運営され、多元化した法治社会になっており、これが投資に対する最大の保障であることを理解していただければ幸いである」とフォーラム開催の目的について述べた。
また游院長は「台湾経済にとって、地域経済との連携、ならびに世界流通ルートの重要性がますます増してきている。同時に台湾企業の研究開発能力は長足の進歩を遂げている。最近、マイクロソフト、ヒューレット・パッカーズ、IBM、インテル、ソニーなど国際的大企業がつぎつぎと台湾に研究開発センターを設立しており、それらの企業にとって台湾はアジア太平洋地域における研究開発、技術、物流、倉庫、品質管理の支援センターになりつつある」と最近の状況を説明した。
さらに「かつて台湾は相手のニーズに応える弾力性とスピードのある製造能力をセールスポイントにしたが、現在では台湾自身が資金、人材、研究開発能力、優れた投資環境を保持するに至り、さらに自由と民主主義を深め、多元的で開放された社会に変化し、十分な国際競争力を備えるに至った」と述べ、この時点における国際投資フォーラムの開催は、台湾の国際社会との連携を強化し、台湾経済の発展をいっそう促進するものであることを強調した。
【行政院 10月19日】
APEC非公式首脳会議に李遠哲氏
胡錦涛、ブッシュ大統領とも短時間会見
●台湾は全加盟国の繁栄を支援
陳水扁総統は本年もタイでのAPEC非公式首脳会議出席を見送り、昨年と同様に李遠哲・中央研究院院長が台湾代表として出席した。十月十八日午後に開催地のバンコクに到着した李代表は翌十九日に、タイ、シンガポール、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン等との二国間首脳会談を展開した。
これらの会談に先立ち、李代表は記者会見に応じ、経済全般について「ここ数年世界経済は低迷し、アジア太平洋地域も大きな影響を受けた。一昨年の九・一一米同時多発テロ事件と今年のSARS流行により、影響の範囲が拡大した。しかし世界経済は現在徐々に回復の兆しを見せている。今回のAPECバンコク会議が成功し、景気回復の契機となることを望む」と語った。
さらに「台湾は多大な経済実績を持つAPEC加盟国として、他の国々と経済、科学技術等を分かち合い、開発途上国への支援を惜しまず、APECの全加盟国が繁栄することを目標としている」と表明した。
《台北『自由時報』10月20日》
●フィリピンと協力関係促進
李遠哲代表とアロヨ・フィリピン大統領との会見で、双方はバイオテクノロジーの応用範囲拡大による農業生産力拡大に相互協力を促進することで合意に達した。さらに水産、養殖業方面においても、両国は今後相互協力の協議を進めることになった。また、製薬関係についても今後協力関係を検討することで双方は合意した。
台湾代表団のスポークスマンである李雪津・行政院新聞局副局長によれば、アロヨ大統領は「台湾の通信産業はアジア第一であり、競争力も強い」と台湾の情報通信産業を賞賛し、「台湾の企業がフィリピンを委託生産の拠点として活用することを希望する」と表明した。同時にアロヨ大統領は、投資ミッションの相互訪問を支援するよう李代表に要請し、「スービック湾加工輸出区の電力、水、労働力など投資環境は目下改善中であり、台湾が南向政策を推進し、フィリピンへの投資を拡大することを望む」と語った。
《台北『自由時報』10月20日》
●将来は「一中」も討論可能
李遠哲代表は二十一日、中国の胡錦涛・国家主席とも短時間会談した。会談内容については、双方とも別々の記者会見において明らかにした。それによれば、李代表が「海峡両岸双方の代表が膝を交えて話し合うことを望む」と述べたのに対し、胡錦涛は「双方は『一つの中国』の原則の下にのみ、話し合いが可能だ」と語った。これに対し李院長は、陳水扁総統の言葉として「将来において『一つの中国の問題』も討議することは可能だ」と述べた。
これまでのAPECの記者会見では、中国側は記者団から両岸問題に対して質問があった場合、まず「一つの中国」の原則を主張し、その上で台湾に対し威嚇的な言動を見せるのが常であった。ところが今回、胡錦涛は李遠哲代表との会談内容を淡々と述べただけで、台湾に対する威嚇的表現はなかった。これは中国の態度が変化したことを意味するのではなく、総統選挙を五カ月後にひかえ、台湾に対する威嚇が陳水扁総統に有利に展開するのを警戒したためと思われる。
また李代表は同日、ブッシュ米大統領とも短時間会談した。このとき李代表が米国の台湾支持に感謝の念を表明したのに対し、ブッシュ大統領は「We will stay」(われわれは以前のままで行こう)と語り、台湾支持継続を明確にした。
《台北『中国時報』10月22日》
台湾海峡にはバランス維持が必要
シャヒーン米在台協会理事長が台湾で主張
●米国は台湾を必ず防衛
台湾を訪問したシャヒーン米在台協会理事長は十月十六日、政府首脳と集中的に会見し、各種問題について意見を交換した。この一連の会見のなかで、シャヒーン理事長は台湾側に、台湾新憲法の問題に米国政府は強い関心を持っていることを伝え、「台湾が新憲法の必要性、条件、手順などを十分に説明したなら、国際社会がこの問題に理解を示すのに大きな助けとなるであろう」と述べた。同時にシャヒーン理事長は、台湾海峡に危機が発生した場合、米国から援軍が到着するまで台湾が自主防衛できるかどうかにも強い関心があることを伝え、「台湾のほうから挑発しない限り、米国は必ず台湾の自衛を支援するだろう」と語った。
呂秀蓮副総統はシャヒーン理事長に訪台歓迎の意を伝えるとともに、九月に開催した「民主太平洋大会」の成果を伝えた。
また游錫堃・行政院長との会見は約一時間におよび、知的財産権、台湾新憲法、台湾海峡の安全維持の三大問題について話し合われた。このなかで游院長は台湾新憲法問題について、陳水扁総統の構想として「二〇〇八年を効力発行の年とし、二〇〇六年に新憲法制定の是非を国民投票にかけ、〇八年までの二年間に草案を作成する」と述べた。これに対しシャヒーン理事長は「台湾の考え方に、今後米政府関係者の多くが理解を示すだろう」と語った。
安全問題については、シャヒーン理事長は「海峡両岸の軍事力の変化と台湾の安全は、米国が最も強く関心を持っている問題だ。なぜなら、米国は現在フィリピンに軍事基地を持っておらず、海軍は世界各地に分散しており、もし台湾海峡に危機が発生した場合、米国が援軍を派遣するまで台湾が自主防衛できるかどうか、このことが現在すでに軽視できない問題になっているからだ」と述べた。同時に「台湾の立法院は、国防の現代化を支持すべきだ」と建議した。
蔡英文・行政院大陸委員会主任委員は、シャヒーン理事長との会見において、「人民元が短期間内に地域における強力な通貨になるとは考えられない。現在、中国経済の大部分は米国や欧州市場に頼っており、中国自身の内需市場は未発達であり、国内私企業への投資もまだ不十分だ。したがって中国経済は外から見るほど強大なものではない」と語った。これについて、シャヒーン理事長は「中国に投資している人たちの意識を改善するのは、容易なことではない。まず企業人に投資のリスクを十分に考えさせるようにすべきだ」と表明した。
《台北『自由時報』10月17日》
●米台関係はきわめて良好
シャヒーン米在台協会理事長は十月十七日、台北の国立政治大学で「現在の米台関係」と題した講演を行い、「米国は台湾新憲法問題にきわめて高度な関心を持っている。台湾に来て多くの政府関係者の方と意見を交換し、理解することができた。台湾政府が新憲法の問題を各界に十分に説明したなら、必ず好ましい結果が得られるだろう」と語った。
同時に「米台関係はきわめて良好であり、米国は各種問題について台湾と意見交換することを望んでおり、同時に可能な範囲で台湾を支援したいと思っている。たとえば軍事問題だが、米国は台湾が十分な自主防衛能力を整えることを望んでいる。そうでなければ、今後数年で両岸の軍事力のバランスが崩れることになろう」と注意を喚起した。
またシャヒーン理事長は同日、陳水扁総統と会見したが、陳総統は新憲法問題について、「台湾には台湾の背丈に合った新憲法が必要であり、これは統一か独立かの問題ではなく、民主化の問題だ」と強調した。
《台北『中国時報』10月18日》
台湾とアフリカの貿易は将来性高い
アフリカ友好国手工芸品展示即売会を通し交流深める
米台の軍事協力を強化せよ 中国の軍備増強は脅威
米中経済安全審査委員会のブライアン委員は十月十七日、「米国と台湾は軍事面で協力を強化し、指揮と管制レベルを向上させ、高度な安全通信システムを整備し、両岸の台湾海峡での衝突を想定した訓練を強化しなければならない」と語った。
ブライアン委員は個人の資格で米ヘリテージ財団の主催する討論会に出席し、中国の軍事力に関して、「台湾の中国のミサイルに対する脅威を解消するには、台湾をミサイル防衛システムに組み込むかどうかが問題ではなく、ミサイルを撤去させ、そのリスクを軽減することだ」と強調した。
さらにブライアン委員は、十一月に中国の国防部長が米国を訪問することについて「米政府は中国にミサイルの移転および撤去を求めるべきだ」と述べたうえで、「もし米国がこうした態度を示さなければ、中国からミサイルには関心がないと見なされる」と指摘した。
《台北『中央社』10月19日》
台湾海峡の平和解決を決議 欧州議会に外交部が感謝表明
欧州議会は十月二十三日、外交委員会主席が提出した「共通外交安全保障政策」年度報告決議案を可決した。同決議は、台湾海峡問題について「対話による平和的解決を堅持する」との欧州議会の立場を改めて示したもので、これについて簡又新・外交部長は感謝を表明するとともに、「欧州連合は台湾と多国間協議の枠組みのなかで、より密接な関係を樹立したいと考えている。これは、特殊な安全と政治的な意味合いが含まれている」と述べた。
欧州議会は昨年九月、中国に対し台湾海峡沿岸に配備しているミサイルの撤去を呼び掛ける決議文を採択した。今回の決議案では「中国が台湾海峡沿岸の各省に配備しているミサイルの撤去を欧州議会はとくに要請するものである」と表現され、中国のミサイルが台湾海峡の安全に与える影響を、欧州連合が重視している姿勢を改めて強調したものとなっている。
【外交部 10月23日】
南島文化園区を建設 台湾を南島語族の聖地に
游錫堃・行政院長は十月二十三日、「台湾の先住民文化は非常に貴いものであり、政府は一貫してこれを重視してきた」と述べるとともに、現在準備を進めている南島文化園区の建設を十大建設計画の一つに組み入れ、積極的に推進していく考えを明らかにした。
さらに游院長は「多くの学者の説によると、台湾の先住民はニュージーランドやポリネシアの先住民と同じ南島語族に属しているという。台湾の南島文化園区を南島語族の聖地として発展させることを目標に、それを実現するため、中身の企画については国際的な学者、専門家に委任したい」と述べた。
初期の構想としては、園内に各民族の芸術館を設置し、各々の芸術品を展示して、相互に刺激しあいながら各民族の芸術レベルを向上させることを目指している。また、DNAの系図を分析し、各民族ごとの血縁関係も明らかにしたい考えだ。
【行政院新聞局 10月23日】
在外公館の名称を台湾に 一年内に半数以上を目標
高英茂・外交部政務次長は十月二十三日、立法院において「在外公館の名称が統一されていないため混乱が生じている」と指摘し、一年以内に半数以上を目標に、在外公館の名称を「台湾」に統一する方向で努力する考えを明らかにした。
高政務次長は「台湾は長年、中国の圧力と歴史的要因から、国交のない国の在外公館の名称が統一されておらず、混乱が生じている。世界の多くが中国と台湾を区別している状況に鑑みて、外交部としても『台湾』の名称を使用する方向で努力したい」と述べた。しかし、変更後の名称については「駐在国の意見を聞く必要もあり、われわれが一方的に進めてよいというものではない。国連加盟問題もそうだが、名称を変更すればすむ問題ではなく、高度な政治性と国際政治の現実を踏まえる必要がある。名称は各国の考えや中国の圧力などの状況を見て決定したい」と表明した。
《台北『中央社』10月24日》
中国宇宙技術の軍事脅威を正視せよ
『自由時報』(10月16日)
中国初の有人宇宙船「神舟5号」が、十月十五日打ち上げに成功した。中国が一九五〇年代から進めてきた宇宙衛星計画以来、半世紀目に獲得した初の成果である。
中国のような発展途上国にとって、この快挙は確かに重要な一歩であり、国を挙げて喜ぶことは理解できる。だが、宇宙開発技術の進歩は、軍事技術の向上を象徴するものであり、台湾にとっては好ましくないニュースである。二十数年に及ぶ改革開放を経ても、中国はいまだに専制国家であり、宇宙開発技術を平和利用のみと確信できる者はなく、アジアおよび国際社会は、今回の発射成功を、警戒心を持って見つめている。
世界中が疑惑の目で発射計画を見つめる中、驚くべきことに、国内の統一派メディアは、「大栄誉」としてその興奮を伝えていた。火薬を発明した祖先を、中国振興の神話題材としてとりあげるなど、彼らにとってはまさに意気揚々とした気持ちであったろう。
統一派メディアの打ち上げ成功を称える報道は、「台湾優先」の意識に衝撃を与えるだろう。ここ二十数年、中国は外国資本の導入を進め、今や世界最大の資金吸収国となった。このことは、中国経済の成長を促すと同時に、廉価品と労働力の放出により、世界規模のデフレと失業につながっている。特に台湾では、数十万の企業関係者と千億単位の米ドル、年間延べ五百万人もの観光客が中国に吸収され、産業の空洞化と投資意欲や内需の縮小を生んでいる。政府が緊急重要政策を講じたことで、現在は徐々に持ち直してきている。
台湾が中国寄りになって以来、経済だけでなく、台湾国民の自尊心も打撃を受けている。失業者の増加や治安の悪化もあり、統一派メディアの宣伝ニュースは、台湾にはひとつも良い所はなく、中国には生気が満ち溢れているように感じさせる。民主政治の発展と団結を、経済と関連付ける必要はない、しかし、十分な経済基盤のない民主政治と団結が、外部からの衝撃に抵抗することは難しい。
統一派メディアの強力な宣伝ニュースでは、中国内部に潜在する、経済格差や社会不安、金融不安などの重大な危機には目を向けず、強大なイメージのみを作り出している。このままでは、北京オリンピックや上海万博の開催に向け、中国の民族主義は高潮し、統一派も気焔を上げ、台湾の団結の危機はますます深刻化する。李登輝前総統などの本土派政治家が、自ら街頭に立って台湾精神の回復を呼びかける運動を起したのは、こうした情勢を憂慮してのことである。
中国は貧困からは脱したものの、先進国とはまだはるかにかけ離れている。台湾国民は、台湾への自信を失うような、むやみな崇拝をするべきではない。
国家の存在は、国民の福祉の増進がその目的であり、権力集団の繁栄のためにあるのでは決してない。軍事力が強大化しても、国民が基本的人権を享受できていなければ、それは虚構である。
有人宇宙船の成功は、科学技術の発展の一段階であり、台湾国民は過度な反応や連想をする必要はない。中国の科学技術が今以上に発展しても、専制国家に変りはなく、さらに言えば、中国がいかなる成果を収めても、結局はよその国のことである。台湾国民は静観こそすれ、メディアに翻弄される必要はない。むしろ、中国の宇宙開発技術が台湾にもたらす軍事脅威と、中国経済への過度な依存こそ、深く顧みるべき課題なのだ。
APECを積極的に生かすべき
『中国時報』(10月21日)
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が十月二十日、タイのバンコクで開始され、参加国の各首脳や代表が地域経済貿易協力の推進について意見を交換した。これは、台湾が唯一参加できる国際サミットであり、会議の成功を祈ると同時に、この貴重な機会に、台湾が国際社会との連携を強め、国際間での役割を果たすことができるよう期待する。
今回のAPECでは、各国共にFTAの加速について多くのコンセンサスを得た。経済貿易協力には二国間と多国間があるが、他の国際協力同様、各国が綿密な対話と協調および実質的な方法を交わす事によってはじめて、具体的な協力プランが達成できる。二国間協力の達成や多国間連盟への加盟は利益上の観点から生じることは明白であり、この点において、台湾は実務的に最も適確な判断が必要である。
ここ数日、国内のAPEC関連報道は、中国の台湾に対する圧力問題に視点が集中している。果たして、中国が現実に仕掛けてきている圧力なのか、あるいは台湾自身が作り上げている話題なのか、困惑するような各種意見がある。
これらは台湾内部のみでの関心事であり、国際メディアは無関心である。かりに中国が現実に台湾に圧力をかけても、国際社会は意に介さない。それは、自国がその害を受けないためである。中国が台湾を封じ込めようとするのは確かに不愉快なことだ。だが、台湾はもともと中国の友好親善に依存してはいない。中国の圧力に対抗するには、その圧力を無効にする方法を考えるべきであり、無意味な抗議のみを発するべきではない。
国と国との相互作用には、実際には多くの面での利益バーターがある。台湾が国際的孤立からの脱却を望むなら、各国のそろばん勘定にも合わせる必要がある。台湾との関係樹立が自国の勘定に合えば、各国は自ずと中国の圧力に抵抗する。それには「十分な方策」と「高度な対応」が必要である。
「方策」を論じる場合、台湾の経済力や技術、労働市場はもともと大きな吸引力を持っており、長年この経済「方策」によって国交のないアジア諸国とも外交成果を築いてきた。しかし、中国の経済発展によって、台湾の「方策」はやや色を失っている。台湾が他国に重要視されなくなれば、中国はますます圧力を加えてくる。したがって、台湾は経済力を強化し、他国との協力連携を確立しなければならない。しかし、台湾の成績は進展がなく、貴重な方策も効果を発揮できないでいる。
台湾はよりフレキシブルな戦術を採る必要がある。APECでは、相互利益の角度から、自由貿易や労務協力、環境保護、海洋資源などの面での協力構想を提出すべきである。各国には個々の事情や需要があり、台湾もまた計画しやすい相互連携の議題を提示し、対話を進めるべきである。台湾が存在を確保するには、実質的意義のある行動をとらなければならない。
中国の対応はますます柔軟になってきている。強硬路線を避け、米国との大国外交を通じ、ますます増大する経済力や北朝鮮問題での影響力などを通じて、台湾を圧迫する枠組みを徐々に作り出している。この枠組みが打破できなければ、台湾は生存の危機にすら直面する。
台湾が国際的苦境を突破するには、先ず自らを高いレベルに置き、自身の気持ちを受圧者側に置かないことが肝要である。自身を冷静に見つめ、対抗策や、瀬戸際に追込まれることを阻止する機会を考える事である。APECは、台湾にとって数少ない元首サミットであり、重要な多国間会合の舞台である。この貴重な機会をしっかりとつかみ、国際社会における高い視野に立とうではないか。
六十年を経て甦った台湾少年工の想い
「第二の故郷」で卒業証明書、在職証明書授与
平成十五年十月二十日、神奈川県座間市・市民文化会館で、ある式典が挙行された。六十年を経てからの卒業証明書、在職証明書の発行である。授与された人々にとって、それはまさに「青春の証し」であった。
大東亜戦争末期、B29の本土爆撃は激しさを増し、なかでも神奈川県高座郡大和村への空襲は熾烈をきわめた。大規模な航空機生産工場「高座海軍工廠」があったからだ。そこでは零戦に代わる戦闘機・雷電が生産されていた。工廠は工科学校を兼ね、一万人の少年工が生産に勉学に励んでいた。開設は昭和十九年四月で、当時内地ではすでにほとんどの少年が動員されており、一万人もの優秀な少年工を新たに動員するのは難しく、このうち八千四百人余が台湾での選抜試験に合格した十五歳前後の少年であった。この経緯については、卒業・在職証明書授与式に特に寄せられた李登輝前総統の「お祝いの言葉」から引用したい。
「第二次世界大戦勃発から二年経過した一九四三年、日本は向学心に燃える台湾の小・中学生を対象に、働きながら勉強すれば旧制中学や専門学校を卒業する制度を作り、不足していた優秀な労働力を補おうとしました。数多くの心身共に優れた台湾青少年が応募し、厳しい選抜試験を突破した八千四百名余が、神奈川県高座郡に新設された海軍空C廠(高座海軍工廠の前身)に赴きました。
彼らは昼夜兼行で懸命に働き、戦闘機雷電、零戦、紫電、月光など当時の日本海軍の主力機を殆ど手がけました。そしてひたむきに働く過程で、共に働く本土の日本人との間に、深い信頼関係、共感と友情を築き上げました。戦局は日々に苛烈となり、本土へ赴いた青少年の中にも、少なからぬ者がその犠牲となりました。そして一九四五年八月十五日、戦争は日本の敗戦で幕を閉じ、高座へ赴いた台湾青少年は異国籍者となって台湾へ帰ることになりました。その時、私は台湾高座会の皆様と同じ帰還船・米山丸に乗り合わせたのです。私は、あの時の経験をまだ鮮明に覚えています。帰国されてからも、台湾高座会の皆さんは、厳しい環境の中で鍛えた規律と精神力、習得した高い技術力を活かし、まず郷土の復興に励み、次いで世界が驚嘆する台湾の工業化に、それぞれの分野で貢献されました。私は、それを非常に高く評価しております」
台湾高座会とは、当時の台湾少年工で結成された同窓会「台湾高座台日交流協会」(李雪峰・会長)の略称である。八千四百余名のうち、六十四名が空襲の犠牲となり、約百名が日本に残り、八千名余が帰国した。終戦の混乱で、彼らの身分を証明するものは何もない。十年前、五十周年を記念して千二百名の高座会メンバーが来日した。「青春の証し」が欲しい。その声は高まり、日本にも多くの支援者が現れ、ようやく台湾高座会歓迎大会(石川公弘・実行委員長)が元台湾少年工「第二の故郷」座間市で挙行された。今日、台湾からの参加メンバーは約六百名に減じていた。この歓迎大会の席上において、厚生労働省社会援護局より、高座海軍工廠養成所の卒業を確認できた三十九人には卒業証明書が、他の人には在職証明書が、さらに全員に感謝状が授与された。
まさに全員が七十歳を越してからの卒業式であり、修了式であった。証書を手に、思わず雄たけびを上げる人もいた。全員が涙に濡れていた。いま現実の役に立つ証書ではない。だが、「これを部屋に飾り、これからの日々を生きて行きます」。元少年工の人は言っていた。関係者の努力により、目に見えない日台の強い絆の存在を証明する一日であった。
《取材:本誌編集部》
台湾投資フォーラムに参加して
フリージャーナリスト 中島恵
十月十九日から三日間に渡って開催された「台湾投資フォーラム2003」に日本人メディアの一員として参加した。総参加人数は約二〇〇〇人。米国、日本、英国、ニュージーランドを始め世界三十八ヵ国・地域から企業、投資家、政府、マスコミ関係者などが一同に会し、盛大なフォーラムとなった。
開幕前日、記者会見した施顔祥行政院経済部次長は「初の開催となる今フォーラムで台湾の優れた投資環境を広く海外に知らせたい。台湾は中国とのビジネス協力体制でもすでに多くの実績がある。中国を含めた複合的な協力も可能だ」と開会に向けて意欲を語った。
開幕式では陳水扁総統が「台湾は農業を基盤とする国からIT情報産業を重んじる国へと変身した。ハイレベルの製造技術を駆使し、グローバル社会の中で脚光を浴びる条件を備えている」とあいさつ。さらに台湾の投資環境と国際競争力について、スイスの著名なビジネススクール、IMDが発表した「今年の世界競争力レポート」で台湾が世界第六位になったことなどを指摘し、台湾の優位性をアピールした。
会期一日目、午前中に行われたサミットフォーラムのテーマは「グローバリゼーションとローカライゼーション」。林義夫経済部長を議長に、ラム・リサーチ社CEOのジェームス・W・バグレー氏、NEC会長の佐々木元氏らが次々と講演した。九三年に台湾に子会社を設立し、短期間に優良企業に成長させたラム・リサーチ社のバグレー氏は「台湾の半導体産業はグローバル化している」と述べた上で、新竹を中心としてローカライゼーションもすすめていることを発表した。NECの佐々木会長は「台湾企業の九八%が中小企業で高品質の製品を生み出す製造業である」ことを指摘し、台湾経済の底力を評価した。
午後は①半導体②エンジニアリング③素材・ファインケミカルなどの産業分科会に分かれ、それぞれの産業の現状、パートナーシップできる分野などについて説明と質疑応答が行われた。各会場は約二〇〇人程度が入れる広さで、日系企業関係者らも多数参加していた。
会期二日目の午前中はモリス・チャン・台湾積体電路製造(TSMC)会長、マシュー・ミャオ・神通電脳グループ会長、ロバート・スコット・モルガンスタンレー会長などが講演台に立った。半導体業界の重鎮であるTSMCのチャン会長は「台湾は六〇年代から外資系企業を誘致し、優秀な人材も育っている。台湾人の英語は香港などと比較して劣っていると言われるが、われわれの中国語はずば抜けている。中国ビジネスはわれわれこそ、本領を発揮できるだろう」とユーモアを交えて話し、会場の笑いを誘った。
午後は①バイオ・健康②通信③金融などの産業分科会に分かれ、在台外国企業らが台湾でのビジネス経験、台湾の投資環境などを説明した。同分科会の席上で、米国の企業が台湾に合弁会社を設立するという具体的な投資案件を「決定」する一幕もあった。会場内には南部科学工業園区などのブースも置かれ、入場者に資料を手渡していた。
フォーラム終了後、投資は全部で二十八件が成立し、大きな成果を挙げたことが発表された。閉幕パーティーには陳水扁総統自らが出席し、台湾経済の発展に大きく寄与した世界の有名企業を讃える表彰式が執り行なわれた。日本企業ではソニー、東芝、NECなどの国際企業が表彰され、台湾と外資の結びつきを改めて強調した格好となった。
台湾経済は世界的なIT不況や中国の台頭の影響を受けているが、「R&Dセンターの設立やハイテクパークを推進していくことによって、台湾経済はさらに発展するだろう」と述べ、一貫して台湾への投資を強く呼び掛けた。フォーラムでは陳総統をはじめ、呂秀蓮副総統、黄茂雄中華民国工商協進会理事長など、政財界の大物がほぼすべて会場に足を運んだ。こうしたことからも、政府の投資誘致にかける意気込みがじかに伝わってくる、熱いフォーラムだった。
来来台湾
「台北101」が完成
高さ五百八メートルを誇る世界一の超高層ビル「台北101」が十月十七日に完成した。
● 人、マネー、情報が集中
「台北101」は世界貿易センターやグランド・ハイアットホテル、台北市役所、ワーナービレッジや新光三越など、主要なショッピングモールが集中する台北の信義区に建設された。別名「台北国際金融センタービル」とも呼ばれ、地下一階から五階が大型ショッピングモール、百一階までのタワー部がオフイスとなる。ショッピングモールは広さが二万六千坪あり、世界の高級ブランド店をはじめ、デパートや高級レストラン、文化スペースなど百五十のテナントが決まっており、十一月中旬にオープン予定だ。オフィスは全体で六万坪あり、今年八月より入居者を募集、来年十月から正式にスタートする。「台北101」がオープンすると、人やマネー、情報がここに集中し、台北がアジアおよび世界の金融センターとして重要な役割を果たすことになる。
● 世界的プロジェクト
この高さ世界一のビル建設プロジェクトには、国内を代表する大手企業十一社が投資し、世界の専門家によって進められた。設計は李祖原建築事務所が担当し、コンサルタントは世界の主要な建築物の工程管理の顧問を務めるTurner internationalが受け持った。施行は日本の熊谷組と台湾との共同で行われ、景観や照明のコンサルタントも世界の著明企業があたった。
建物の外壁には二層のガラスからなるカーテンウォールを採用、光を反射しない透明の断熱ガラスを使用し、快適な空間と美しい外観、防災対策を実現させた。また建物内には一階から八十九階の展望台まで、わずか三十九秒で上がれる「世界最速のエレベーター」が設置されている。
● 防災対策も万全
世界一のノッポビル、多くの人びとで賑わうビルの安全性については、誰もが関心を持たざるを得ない。耐震設計については、台湾大学地震研究センターに施行前に耐震評価を依頼し、国内外の専門家を招き、十五回に及ぶ審査会議を開き、建築法に規定された九百五十年に一度の地震に備えるだけでなく、二千五百年に一度の極大地震に対しても大きな損傷がないように、十分な耐震設計がなされている。耐風設計についても八百tの耐風装置を使用し、方向と振幅を自動調整できる機能を持ち、建物の揺れを軽減、地震の際の揺れ時間を大幅に短縮し、十七級以上の大型台風にも耐え得るよう設計されている。
このほか、防火対策については防火構造を採用し、不燃無煙の内装材料を使用している。防火水槽、排煙設備、無線通信設備、最新の自動火災報知システムなども整備されており、八階ごとに避難専用道路、避難用ベランダ、防火区画を設置している。非常時においても電気、通信などが確保できるようになっており、十分な防災対策がとられている。
● ビジネスの中心として
十月十七日のビルの完成には馬英九・台北市長も立ち会い、最後の工程のビル先端部分の取り付け位置の微調整が完了し、竣工となった。台北101は政府と民間による初のBOT(一定期間経営後、政府に引き渡す)方式として九七年一月に着工され、七年の歳月を経て完成した。
高さ、スピード、セキュリティー、金融センターとしての機能など、あらゆる角度から綿密に計算された世界一の超高層ビル。台北101はアジアだけでなく世界の関心を集めている。ビジネスの中心として、台北、そして世界に明るい未来をもたらすに違いない。
《主に『台湾観光』2003年10月号より転載》
台湾の「地震史」をひもとく
20世紀以降M7以上は38回
北海道で九月末、M(マグニチュード)8、震度6の強い地震が発生したが、台湾人観光客が多い地域というのに加えて、おりしも一九九九年九月の「九・二一中部大地震」四周年を迎えた直後ということもあって、台湾でも大きく報道された。
中央気象局地震測報センターの統計では、二十世紀以降、台湾では、大小さまざまな規模の地震が幾度となく発生しているが、そのうち三十八回がM7以上の大地震であった。
M8以上の地震も、一九一〇年四月と一九二〇年六月の二回、それぞれ基隆と花蓮の近海で起こっているが、震源が海底であったため大被害には至らなかった。一九一〇年の地震は、震源の深さは約二百キロメートルで、家屋十三棟が倒壊したものの、幸い犠牲者はいなかった。一方、一九二〇年は、震源の深さが約二十キロと浅く、家屋倒壊三百棟、死者五名の大きな被害が出た。
マグニチュードは地震の被害そのものには直接関係するわけではなく、震源の深さや地盤、市街地に近いかどうかなど分かれ目となる。同センターの郭鎧文主任によると、これまで台湾で最大の被害を出した地震は、一九三五年四月の「新竹−台中烈震」だ。M7・1だが、震源の深さが約五㎞と非常に浅かったため、死者三千二百七十六人、倒壊家屋一万七千九百余棟という大惨事となった。
二千四百人以上が犠牲になった一九九九年の「九・二一中部大地震」では、全壊、半壊含めて十万棟以上が倒壊し、台湾地震史上、倒壊家屋がもっとも多い地震となった。幸い、二〇〇〇年以降、大きな被害を伴うM7以上の地震は発生していない。
●「地震教育」と訓練の充実を
北海道の地震では、日本人の落ち着いた対応も注目された。台湾大学の徐陳于助教授は、「これは日頃の訓練と教育の成果だ」と強調し、「台湾でも日本にならって地震教育の充実を」と呼びかけている。陳助教授によると、台湾は地震が多いにもかかわらず、地震に関する政府の広報活動が不充分で、避難訓練もほとんどおこなわれていない。また、断層に関する研究資料も少なく、住民は自分が住む地域の危険度を知らないため、いざとなるとパニックに陥りやすい。このほか、別の専門家は、地震の救援活動に当たる消防署員に地震の専門家がほとんどいないことや、大学に地震関連の学科が少なく研究が遅れていることも問題だと指摘している。
《台北『中国時報』9月27日》
「営埔断層」を確認
台中県大甲鎮から彰化県棚化鎮にかけて走る「彰化断」はこれまで、かつて地震が発生したという明確な証拠がなく、活断層かどうかで議論が分かれていた。国立彰化師範大学の楊貴三教授の研究グループは最近、台中県大肚郷営埔村で、彰化断層の一部と見られる地殻隆起した地形を発見し、「営埔断層」と名づけた。
この断層は幅・長さともに約一キロで、過去一万年前以内に動いたことのある比較的新しい断層と考えられる。今後再び活動する可能性が高いと推定されるが、これについてはさらに詳しい科学的分析が必要だ。
《台北『聯合報』10月3日》
大盛況の新日台交流の会
知られざる台湾の魅力を紹介
第49回新日台交流の会は、現在台湾でフリーランスライターとして活躍する片倉佳史氏をゲストに、「知られざる台湾の魅力」というテーマで講演が行われた。氏は台湾と関わって約七年。おもに台湾の旅行ガイドブックの執筆を手掛け、台湾各地を取材して撮った写真は四千枚以上にのぼるという。今回の講演では、そうした写真の中から選りすぐりをスライドで紹介しながら、これまでガイドブックには掲載されてこなかった台湾の穴場や秘境にスポットをあて、その魅力をたっぷりと紹介してもらった。
たとえば、台湾には日本統治時代の建物がまだ数多く残っているが、それらが機能性や耐震性、そして台湾の気候に十分配慮したきわめて緻密な構造になっていることは、あまり知られていない。総統府の建物もその一つで、講演では柱の構造や戦前の写真などによってきわめて精巧な設計がなされていたことが紹介された。また、各先住民族の住む山奥にも足しげく通い、寝食をともにしてかれらの話に耳を傾け、その生活を切り取った写真はどれも生き生きとしており、複雑な先住民族の世代間に見る言語事情や、かれらの言葉のなかに当時の日本語がどのような形で残されているのかなど、どれも興味深かった。このほかグルメの話題も豊富で、これまでにレストランや屋台を三百軒も取材してきた経験から『食べる指さし会話帳④台湾』を出版。今回も、そのおいしさの秘密を解き明かしてくれた。参加者の誰もがまるで会場にいながらにして台湾旅行を満喫した気分になった。
講演は予定を大幅に越えるおよそ百人が集まり、大いに盛り上がった。 なお、氏は現在、台北市内の歴史建築に関する本を編集中である。
●片倉佳史氏 http://katakura.net
新刊紹介
『台湾の近代と日本』
中京大学社会科学研究所 台湾史研究部会編
昨年十月に中京大学社会科学研究所が「台湾の近代と日本」をテーマに国際シンポジウムを開催した。本書はその研究報告をまとめたものである。第一章は「日本における台湾史研究の現状」が紹介され、課題も提示している。第二章と第三章では「日本の台湾領有後の東アジア海洋世界の再編」から「台湾社会の変遷」、領有初期の「原住民政策の展開」が豊富な資料と共に詳述されている。第四章は他の研究学術書ではあまり触れられない「近代の日本と台湾における宗教」について語られ、「台湾の忠烈祠と日本の護国神社・靖国神社との比較」には、学術的研究者でなくとも興味惹かれるものがある。第五章では、台湾関係の資料が今日どのようにまとめられ、保存されているかに触れている。
〈箱入り上製・問い合わせは中京大学社会科学研究所℡〇五二(八三五)七一一一まで〉
お知らせ
台湾の人気番組「流星花園」が スカイパーフェクトTVで放映
通信衛星(CS)放送のスカイパーフェクトTVで、十一月十日より台湾の人気テレビ番組「流星花園」(邦題:花より男子)が放映される。
「流星花園」は日本の神尾葉子原作の人気コミック「花より男子」をドラマ化した台湾の学園ラブコメディー。主人公の杉菜(つくし)役には台湾の人気アイドルSOSの姉、大Sこと徐煕媛が扮し、「F4」には言承旭、周渝民、朱孝天、呉建豪のアイドル四人が演じている。彼らはドラマの外でも「F4」を結成し、CDデビューを飾るやいなや、本国台湾をはじめ、アジア各国で大ヒットし、人気を博している。
(あらすじ)一般庶民の杉菜が入学したのは、お金持ちの子女が集まる有名大学。超金持ちの御曹子四人組が、わが者顔に振る舞う学園の雰囲気に違和感を感じながらも、杉菜はひっそりとキャンパスライフを送っていた。だが、ふとしたことから「F4」と呼ばれる御曹子四人組に逆らうことになり、学園全体のいじめの対象になってしまう。ところが、その四人組の一人が、そんな杉菜に恋心を抱き……。
● 放送予定
11月10日(月)より毎週月、水、金曜日の午後10時より、約1時間放送(水、金曜日はその週の月曜の再放送)。全24話で、毎週一話ずつ進行。約半年間の放映予定。画面にはすべて日本語字幕がついているため、台湾人はもちろん、中国語のわからない日本人も、逆輸入されたこの物語をドラマで楽しめる。
●問合せ・申込み:スカイパーフェクトTV!カスタマーセンター(0570—039—888)へ。
春 夏 秋 冬
「丹沢山塊から吹き降ろす寒風は、南国の少年たちの骨身に凍みた。少年たちは厳しい選抜試験を突破してきた。正に少年そのものだった」(台湾高座会歓迎大会プログラムより)。
あれから60年が過ぎ、全員が70代なかばになり、日本政府からの卒業証明書、在職証明書の授与(本誌10頁参照)に漕ぎつけるまでには、元台湾少年工の方々の熱い想いと、日本での多くの人々の努力があった。それらの一つ一つをここに記すことはできない。想いは筆舌に尽くし難く、努力と奉仕的活動は余りにも多いからだ。
授与のあと、お礼の挨拶に立った台湾高座会会長の李雪峰氏は、この日の歓迎会や授与式の実現に対し、「高座日台交流の会やご協力いただいた諸先生、それに厚生労働省社会援護局の皆様の、ご理解の賜物と感謝のほかございません」と涙ながらに語っておられた。だがこの日の「感謝」は、台湾側から日本側に対してのものだけではない。元台湾少年工の方々と接した「日本李登輝友の会」会長の阿川弘之氏は、歓迎大会の挨拶に立ち、高座会の方々に次のように述べた。
「私は皆様方に深くお礼を申し上げたい。なぜかと申しますと、皆様方は今日のわれわれ一般の日本人以上に、李登輝先生の言われる日本人の心、新渡戸稲造先生が著された武士道に代表されるような、日本人の良き面を心にしっかりと、この60年間しまっておられた。私どもに、それを取り返しなさい、もう一度認識しなさい、もうすこし日本人よ自信を持ちなさいと、言って下さっているような気がするからです。このあと、皆様方は“仰げば尊し”を合唱なさるそうですが、私もいっしょに合唱させていただきます。ただし私は、皆様方が私どもに、日本人の心を取り戻す手立てを与えて下さったことに感謝をこめて歌うのです」
これと同じ思いを、多くの日本人が抱いていることに疑いはない。阿川氏と共に挨拶に立った羅福全・駐日代表は、「今日の日本と台湾は、価値観を共にする民主主義国となり、政府間の国交こそないが、民間相互の心と心の触れ合いがある。これこそ本当の友好ではないでしょうか」と語った。その通りであろう。平成15年10月20日の「台湾高座会留日60周年歓迎大会」は、まさにそれを証明するものであった。「青春時代の一ページを日本で過ごした証しが欲しい」。この日の大会は、それを実現しただけではない。日本と台湾の間には、「心と心」の絆がある。それを基礎に、新たな関係がさらに築かれて行くだろう。
(K)