台北週報2121号(2003.11.27)
キリバス共和国と国交樹立
南太平洋諸国との友好関係拡大へ
外交部は南太平洋のキリバス共和国との間に11月7日を期して外交関係が発生したと発表し、台湾と国交のある国は27カ国となった。キリバスは小国とはいえ、各国が海洋資源を重視しはじめたなか、アジア太平洋の国際戦略において重要な位置にあり、今回の新たな国交は大きな意味を持つ。また中国はキリバスに宇宙観測基地を持っていることから、南太平洋進出だけでなく宇宙開発計画にも影響を受けることになろう。
●南太平洋に友好国
外交部は十一月七日、南太平洋のキリバス共和国と正式に外交関係を結んだと発表した。これは民進党政権が誕生して以来三年余、最初の新たな国交締結であり、同時に南太平洋地域と台湾の友好関係がいっそう進展したことを意味する。これにより、中華民国(台湾)と正式国交のある国は二十七カ国となった。また台湾にとって、リベリアとの断交のあとであり、国際活動の場を拡大するためにも、キリバスとの新国交締結は重要な意味を持つ。
キリバス外務省によれば、華僑の血筋を持つアノート・トン・キリバス大統領と杜筑生・中華民国外交部次長が一週間にわたって話し合いをつづけ、国交締結に合意した。キリバスの首都タラワには十一月七日より駐キリバス大使館が開設され、中華民国国旗が掲げられた。
簡又新・外交部長は同日、「台湾とキリバスとの国交締結には、話し合いの過程においてかなりの紆余曲折があった。つまり中国がなりふり構わぬ妨害工作をしてきたが、そうした妨害は奏功しなかった」と明らかにした。同時に「わが国がキリバスと国交を締結したのは、中国と無意味な外交上の消耗戦を演じたのでもなく、中国と意味のない金銭外交戦を展開したわけでもない。わが国の生存と国際活動の場の拡大を求めてのことである」と強調した。
また簡部長は「私は陳水扁総統のニューヨークとパナマ訪問(10月31日~11月6日)に随行したが、その間常にキリバスとの交渉内容は総統ならびに行政院長に報告し、政府上層部から強い支持を得ていた。上層部は、外交部がさらに多くの国交締結国を獲得するよう努力することを望んでいる」と語った。
さらに「わが国は昨年からキリバスとの接触を開始し、私自身もアノート・トン大統領と台湾以外の地点で秘密裏に会談したこともある」と明らかにし、「中国はキリバスと一九八〇年に国交を結んだが、そのとき中国側は多くの経済協力を約束したが、結局それは口先だけで実が伴なっていなかった。キリバスはそうした中国の実相と周囲に台湾と国交を結んでいる国々があることから、最終的にわが国と国交を締結することに踏み切った」と述べた。
実務面においては「わが国はすでにキリバスに実務官僚を派遣し、本格的外交活動開始に向け準備を進めている。初代駐キリバス大使については目下人選中である。キリバスの駐台湾大使館については近日中に準備が進められる」と明らかにした。同時に「キリバス共和国は南太平洋において、政治情勢が比較的安定しており、社会治安も良好で国民教育も普及しており、対外債務も他の南太平洋諸国ほど深刻ではない」と、同国の現状を語った。
現在キリバスはこれまでの閉鎖性を打破し、農漁業と観光資源の発展に力を入れている。同国は南太平洋で三十三の島嶼から成り、面積八百十八平方キロ、人口約九万九千人。GNPは八千百十二万ドル(二〇〇一年)、国民一人当たり平均所得は八百四十ドル(同)、主な輸出品は硫酸塩、銅、魚介類、主な輸入品は工業製品、食品、燃料等である。
●南太平洋諸国と台湾
キリバスは南太平洋の小さな島国とはいえ、米国の太平洋における主要な軍事基地であるハワイとグアム島に近く、中国は一九九六年にキリバスと「宇宙観測協定」を締結し、同国に宇宙観測基地を設けるなど、戦略的にきわめて重要な位置を占めている。現在、太平洋諸国の多くは第三世界に組み入れられているが、海洋資源が国際的にも日増しに重視されるようになり、これまで伝統的に大陸国家に属していた国々も海洋資源の権益獲得に積極的に乗り出すようになった。そうした趨勢のなかに、太平洋においては米国あるいはオーストラリアの勢力圏にある島嶼国に、近年中国が進出をこころみる例が目立っている。中国がキリバスと「宇宙観測協定」を結んだのもその主たる例の一つであり、そのキリバスと台湾が国交を結んだことは、世界的な国際競争の上できわめて重要な意義を持っている。
アジア太平洋諸国の環境を見れば、中国は国力の上昇にともない、盛んに近隣諸国との経済を主体とした往来を強化し、冷戦時代に維持されていた西側の防衛ライン、すなわち日本を基点に台湾、フィリピンから東南アジア諸国に至る線は確実に動きはじめている。今年タイでAPEC非公式首脳会談が開かれたあと、すぐに中国が海南島で博驁アジア・フォーラムを開催し、APEC加盟諸国に参加を要請した点にも、中国の意図が十分にあらわれている。一部の国はすでに米国と中国を両天秤にかけようともしている。
米国の角度から見れば、西太平洋防衛ラインの動揺は、南太平洋の戦略的重要性がいっそう増し、そこが米中戦略拠点獲得競争の場になったことを意味する。中国もまた同様の意図から南太平洋を見ている。
中国外務省の組織からも、それは伺える。台湾は外交部(省)のなかの司(局)として「アジア太平洋司(局)」を設け、実務的に太平洋島嶼国はアジアに分類している。中国外交部(省)は「北米大洋州司(局)」を置き、実務的に南太平洋島嶼国を米国と同じ部署に置いている。このことは、中国が南太平洋諸国との関係を、米中関係の中の重要な一環と見ていることの証明となろう。
また台湾にとっては、キリバスと国交を締結したことは、南太平洋諸国との関係において、国交国の数字が一つ増えたというだけではなく、中米およびアフリカとの国交国と同様に、線の関係から面の関係に広がってきたことを意味する。当然それは台湾の外交が安定してきたことを意味し、さらに中国の台頭を見据えた前述の国際関係から、台湾の国家利益と米国のアジア太平洋地域における戦略的利益とが合致することをも示すものである。また当然ながら、南太平洋において台湾との国交国が増えるということは、民主連盟勢力の拡大をも意味することになる。
南太平洋諸国群において、台湾と国交のある国は、ツバル、ソロモン諸島、パラオ、マーシャル諸島、それに今回のキリバスの計五カ国である。一方、中国と国交を結んでいる国は、バヌアツ、フィジー、トンガ王国、パプアニューギニア、西サモア、ナウル等である。
数でこそ中国の方が多いが、中国と国交を結んでいる国の一部は、かつて台湾と国交があり、また台湾との二重承認を望んでいる国もある。ここにおいて台湾がキリバスと国交を結んだことは、中国の南太平洋に対する拡張政策に支障を来たしたことを意味し、台米関係がさらに強化されることを意味している。
●米中軍事バランスへの影響
中国は最近、有人宇宙船「神舟5号」を打ち上げたが、中国は海外に二カ所の宇宙観測基地を持っている。アフリカのナミビアと南太平洋のキリバスである。中国は「一つの中国」の建前から、キリバスと断交することになろう。それは中国の宇宙進出政策に一定の影響を及ぼすことになる。またキリバスの隣国のマーシャル諸島に米軍の基地があり、このことからキリバスの外交政策は米国寄りとなり、中国の南太平洋進出計画にも相応の影響を及ぼすことになる。そのためにも台湾とキリバスの動きを察知した中国は、猛然と妨害工作を展開してきたのである。
「神舟5号」打ち上げのとき、中国はキリバスにわざわざ公式外交ルートで感謝の意を表明したほどである。今後中国にとって、南太平洋における宇宙観測をどうするかが大きな課題となろう。将来、台湾海軍の練習親睦艦隊がマーシャル諸島、ツバルなどを訪問するとき、キリバスに寄港することも予想される。
《台北『自由時報』11月8日》
第二十八回「日台経済貿易会議」開催
FTA、投資、技術協力等々で大きく前進
●レベルアップした会議
台湾の亜東関係協会と日本の交流協会が主催する第二十八回「日台経済貿易会議」が十一月十一日、十二日の二日間にわたり、東京都内のロイヤルパークホテルで開催され、十二日午後五時、双方の団長が議事録に同意の署名をした。今回の会議には、台湾側からは許水徳・亜東関係協会会長を団長とし、外交部、経済部、財政部、交通部、行政院農業委員会、同経済建設委員会、原子力エネルギー委員会から派遣されたメンバーを含む三十九人が出席し、日本側からは服部礼次郎・交流協会会長を団長に、総務省、外務省、経済産業省、農水省、財務省、国土交通省、厚生労働省、文化庁などの日本政府係官五十六名を含む七十六名が出席した。このほか台湾側は、昨年台湾で行われた第二十七回会議に日本が経済産業省審議官(副局長クラス)を派遣したのに応え、黄志鵬・経済部国際貿易局長を台湾代表団最高顧問の身分で派遣した。
開幕にあたり、日本側の服部会長は「今回の会議の参加メンバーは双方共にレベルが高く、重要な議題について十分な討議が尽くされ、大きな成果が得られるものと確信している。世界経済構造が絶え間なく変化しているなか、日本と台湾の経済構造にも大きな変化があった。特に台湾は昨年WTOに加盟したことにより、産業のレベルアップがいっそう加速された。今回の会議によって、双方がお互いの経済構造の変化の方向性を十分に認識し、日台経済貿易協力がさらに強化されることを望む」と述べた。さらに、今回の会議の議題について「経済、貿易、投資などの議題のほか、医療、知的財産権、観光振興など専門的な議題についても討議が進められる。双方の参加者がこれらの議題について広範に意見を交換し、会議の目的を十分に達成することを望む」と語った。
また、台湾側の許会長の開会挨拶の全文は以下の通りである。
台湾の経済は国際経済の長期的低迷および国内政治の不安定という二重の要素により、一昨年(二〇〇一)は歴年初の二・一八%のマイナス成長となったが、昨年は国際経済のゆるやかな景気回復により、台湾経済も回復し三・五四%のプラス成長となった。今年はSARS流行の影響を受けたが、各方面とも年間成長率は三%を越えると予測している。だがアジア開発銀行が予測している日本を除くアジアの平均成長率五・三%には及ばない。来年は世界経済回復の影響により、台湾の経済は今年よりもよくなり、四%前後の成長を示すものと予測されている。一昨年貿易面ではわが国の輸出は前年比一七・二%のマイナス、輸入も二三・四%のマイナスとなったが、昨年は好転し輸出は同六・三%、輸入は同五%のプラス成長となった。今年はSARSの影響を受けたが、一~九月の累計で輸出は同八・一%増、輸入は同九・二%増となっている。だがこの二年間、わが国の対日輸出は連続後退し、逆に輸入は増加傾向を示した。しかも注目に値するのは、台湾、日本、中国の三国貿易関係が、日本と中国との貿易関係の迅速な拡大を促しているという点である。
今年九月にメキシコのカンクンで開催されたWTO新ラウンド交渉が決裂したが、そのあと十月にタイで開かれたAPEC閣僚会議では各国とも交渉の継続を呼びかけ、二国間交渉によって問題を解決しようとする傾向を示した。日本は先月メキシコと自由貿易協定(FTA)の交渉を進めたが、まだ双方は合意を得るには至らず、早急に交渉を再開することに同意した。また日本と韓国は今年中に政府間におけるFTA交渉に入りたいとの希望を明らかにしている。台湾は今年パナマとFTAを締結したが、今後はその他の国々と積極的に政府間交渉を進めたいと願っており、とくに日本の産官学とのシンポジウムを進めていきたいと希望している。亜東関係協会は政府上層部の重視と支援を得ており、今年四月には「科学技術交流委員会」と「文化学術委員会」が設立され、台日間の科学技術と文化交流の促進を共に進めることとなった。日本政府および関係各界が強く支持され協力されることを希望する。
今回の会議では、わが国の交通部が初めてWTO通信サービス業および情報通信技術協力に関する議題を提示し、行政院文化建設委員会も「文化創意産業」の交流・協力に関する議題を提示した。私は、台日間における相互協力の領域がますます拡大され、本会議を通して解決が必要とされる問題も年々増加するものと思っている。また一方、在台湾の日本商工会議所も今回の会議に多岐にわたる議題を提示されており、在台日本企業が台湾の投資環境に期待を持ち、台湾企業と共に進もうとされていることを示している。ここに政府を代表して感謝を申し上げるとともに、亜東関係協会は協調のなかに在台日本企業の問題が解決され、また日本政府も共に努力されることを願う。今回の会議において、双方政府の係官が忌憚なく意見を交換しあい、多くの成果を得ることを望む。
【外交部 11月13日】
●今次会議の成果は多大
今回の会議では日台双方から出されたWTO、FTA、投資、技術協力、知的財産権、水利、税関業務、通信、観光、農漁業、原子力エネルギー、医薬、文化交流など七十六項目について、「一般政策」「技術・農漁業」「知的財産権・安全・医薬」の三つの分科会に分かれて討議が進められた。このうち財政部からは「税関業務相互協力協定」の調印、経済部投資業務処からは「投資促進と保障協定」の協議、電信総局からは「情報通信技術協力に関するメモランダム」の協議、観光局からは「観光客倍増と姉妹都市締結」の促進などが提議された。
二日間の討議によって双方は以下の六項目についてコンセンサスを得た。
一、WTO新ラウンド交渉について日台が意見を交換し、相互協力を強化する。
二、日台自由貿易協定締結に向け交渉を進める。
三、日本は台湾と麻薬探知犬の訓練について相互技術協力をすることに同意する。
四、日台双方は観光客倍増計画を共同で推進することに同意する。
五、日本は台湾が大西洋マグロ資源保育委員会(ICCAT)会議に参加し発言の機会を得ることを支持する。
六、日台は戦略性ハイテク製品輸出管理および大量破壊兵器拡散防止を強化する。
以上だが、台湾が希望している日本とのFTA締結について、許水徳会長は「まず日本の産官学および経団連と、わが国の東亜研究所など民間団体が協議を進め、そのあと政府レベルでの交渉を進めることになる」と語った。
また、日台双方は前記の同意事項に調印したあと、「重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する共同研究了解メモランダム」に署名した。これについて許水徳会長は「SARS流行の時期に日本は三名の専門家を台湾に派遣して調査し、台湾のSARS対策のレベルが高く、学ぶに足ることを認識した。このためわが国とのメモランダムに署名した」と表明した。
十二日夜に亜東関係協会と駐日経済文化代表処がホテルオークラで開いた答礼晩餐会には服部礼次郎会長のほか、森喜朗・前首相、綿貫民輔・前衆院議長ならびに衆参両院議員多数が出席した。
《台北『中央社』11月12日》
ニュース
中国からの春節直行便可能
大陸委員会新たな見解示す
今年の春節(旧正月)には中国に滞在している台湾企業関係者とその家族の里帰りのため、台湾から両岸直行のチャーター便を飛ばしたが、来年の春節について、中国国務院台湾弁公室は十月二十九日、「わが国のチャーター便に対する考えは明確だ。双方が飛ばし、互恵でなければならない」と表明した。これに対し蔡英文・行政院大陸委員会主任委員は十一月六日、経済部主催の「二〇〇三年大陸経済状況シンポジウム」のなかで「大陸委員会は現在、来年春節の台湾企業関係者一時帰国のためのチャーター便運航計画を作成中だ。これについて、双方が飛ばす計画を排除しない」と語った。実現すれば、来年春節には中国からも両岸直行便が飛ぶことになる。また蔡主委は「直行チャーター便について中国と協議することを歓迎する。中国が望むなら、交渉を民間に委託してもよい。ただし、そこに政治的前提条件があってはならない」と表明した。
《台北『自由時報』11月7日》
与野党が選挙の争点を提示
双方が独自の主張を展開
来年三月二十日に予定されている総統選挙で、再選を目指し与党民進党公認として出馬すると見られている陳水扁総統は十月二十五日に高雄で「台湾を信じ、改革を堅持する側」対「台湾を矮小化し、改革に反対する側」、「一辺一国、現状維持」対「一つの中国、現状変更」、「国民投票実施、新憲法制定派」対「国民投票阻止、改憲粉砕派」の戦いだと独自の争点を提示した。
これに対し、野党連合の総統公認候補となっている連戦・国民党主席は十一月八日、「全国民失業なし、国民投票で総統を変える」と銘打った大会で「陳水扁政権に不信任の投票をしよう」と語り、「中華民国か台湾共和国か」、「台湾の平和維持か青年を戦場に送るか」、「台湾経済を救うか台湾経済を衰退させるか」という野党連合側の争点を示した。宋楚瑜親民党主席も「台湾に必要なのは改革で革命ではない。中華民国を守らねばならない」と強調した。
《台北『中国時報』11月9日》
台湾海峡両岸は台湾と中国
陳総統が「一辺一国」強調
陳水扁総統は十一月九日、台北県土城総合体育館で開催された「台北県陳水扁後援会」設立大会に出席し、「台湾海峡の両岸には台湾と中国が存在している。すなわち一辺一国である。台湾は主権の独立した偉大な国である」と語り、「一つの中国」政策との決別を明確に宣言した。さらに「もし中国の主張する『一つの中国』、『一国二制度』を受け入れたなら、台湾は第二の香港に落ちてしまう。断じて受け入れられない」と主張した。同時に、国民党が「台湾の平和維持か青年を戦場に送るか」との独自の争点を掲げたことに対し、「私が総統に就任してより四年近くになるが、戦争が発生しただろうか。われわれの子弟が戦場に送られただろうか。台湾国民は脅しに乗ってはならない」と反論した。また国民投票の問題について「国民投票は基本的人権であり、世界共通の価値観である。来年の総統選挙までに実施したい」と改めて表明した。
《台北『中国時報』11月10日》
憲法制定国民投票の日程示す
新憲法は二〇〇八年から実施
陳水扁総統は十一月十一日、米国の有力シンクタンクの一つであるブルッキンス研究所の台湾訪問団一行と会見し、「現在の憲法は一九四六年に大陸で制定されたものであり、二千三百万人の台湾国民には不適切である。台湾国民には自分の身に合った新憲法が必要だ。現憲法条文の三分の二が改正を要する。半分以上の改正が必要ということは、これは改正ではなく、新憲法制定となる。これまで六回も改正され、条文は支離滅裂となった。もう毎年改正するようなことはやめ、国民投票でこれを決定すべきだ」と述べた。
同時に「二〇〇六年の世界人権デーである十二月十日に新憲法制定の是非を問う国民投票を実施し、新たな総統が就任する二〇〇八年五月二十日に新憲法を発布するのが望ましい。これは現総統や現政権のためのものではなく、台湾の長久な発展と平安のためである」と、憲法に関する国民投票の日程を明示した。
【総統府 11月11日】
非核国家推進委員会設立の要点
二〇〇三年非核国家推進委員会
一、行政院(以下本院とする)は次世代の正義を保障し、核エネルギー災害を回避し、非核国家の理念を実現するため、非核国家推進委員会(以下本会とする)設立に至った。
二、本会の任務は次の通りである。
(一)非核国家の展望と戦略を検討し、法制化を推進し、わが国の核エネルギー政策の主要問題について審議する。
(二)既存の電力会社とエネルギー消費構造の改善をおこない、エネルギー効率の引き上げを図り、環境にやさしいエネルギーの普及と利用を促進する。
(三)原子力発電所の監督および既存の原発の運転と停止に関する業務をおこなう。
(四)核廃棄物の処理をおこなう。
(五)非核国家の教育的宣伝の普及について国際社会と協力し、地球村の一員としての責任を全うする。
三、本会は召集人一名を置く。行政院長が任命した政務委員一名がこれを兼務する。
四、本会は十七~十九名の委員を置く。行政院長の命により次の人員がこれを兼務する。
(一)内政部長、(二)経済部長、(三)教育部長、(四)法務部長、(五)環境保護署長、(六)衛生署長、(七)原子力エネルギー委員会主任委員、(八)新聞局長、(九)民間代表および専門家、学者八~十名。
本会委員の任期は二年とし、任期満了後はこれを継続することができる。本会は、召集人によって行政院長に申請、審査の上、顧問若干名を置くことができる。
五、本会は執行秘書一名を置く。経済部政務次官がこれを兼任し、召集人の指示によって本会業務を監督する。副執行秘書二名は原子エネルギー委員会副首長およびエネルギー委員会執行秘書がこれを兼務し、秘書が遂行する関連業務を幇助する。
六、本会は秘書処を設置する。その業務は経済部が指名した同部の関連人員によって兼務され、召集人の指揮監督を受ける。その任務は下記の通りである。
(一)本会の行政業務を処理する。
(二)国際核エネルギー状況の動向と趨勢を整理する。
(三)各小組の業務の関連資料を整理する。
(四)決議事項の進捗度を整理する。
(五)その他の関連作業を臨時に引き継ぐ。
七、本会は三カ月に一回委員会議を召集し、必要に応じて臨時会議を開くことができる。これらの会議はすべて召集人によって召集され、開会に際しては、関連機関の首長または一般人を招聘できる。各業務小組の会議は、各小組が決定し開催する。
八、本会は任務によって、以下の小組に分かれている。
(一)エネルギー構造調整小組、(二クリーン・エネルギー推進小組、(三)原発停止小組、(四)核廃棄物処理小組、(五)非核国家立法小組、(六)第四原発監督小組、(七)非核国家宣伝指導小組、(八)非核国家教育小組。
各小組にはそれぞれ小組召集人が設置され、総召集人によって行政院長に申請、審査の上これを任命する。
九、本会は非核問題について国際あるいは国内の関係団体と協力することができ、委員会議での決議を経てこれを実行し、必要な経費は関係機関がこれを負担する。
十、本会は国家および社会の需要によって、非核国家の関連問題について検討し、委員会議で決議した後に関連する小組および政府機関、あるいは専門家によって具体的業務を遂行する。その進捗状況は定期的に報告され、必要な経費は関連機関によって負担する。
十一、本会で決議された事項は各関係機関がそれぞれ処理するが、主要な決議内容については行政院に報告し審査を受ける必要がある。各関連機関は業務の実行状況について四半期ごとに秘書処に報告する。
十二、本会の業務経費は、経済部および関連省庁によって予算編成され負担する。
十三、本会委員および顧問は無給職とする。ただし非政府団体の委員および会議に一般人が招待された場合は規定の出席料を支払うものとする。
(完)
新刊紹介
台湾 朝鮮 満州 日本の植民地の真実
黄 文雄 著
戦後の日本には、奇妙な歴史観が蔓延している。度を越したマゾヒストで、かつそれを「正義」とする歪(いびつ)な発想である。これにより「日本の植民地」といえば「搾取、差別、略奪」と同義語にされ、中国、韓国、北朝鮮はそれをうまく外交カードに利用している。だが実際はどうだったのか。事前に設定した暗黒史観から事実は見えてこない。筆者は十年の歳月をかけ、内外の膨大な資料を調査し、巨視的な観点から台湾、朝鮮、満州での植民地の実態を実証的に解明した。そこに見えてくるのは、旧弊を排して進めた殖産興業であり、社会の近代化であった。さらに本書では世界植民地史、植民地主義と社会主義の対比をも描き出し、世界史における日本近現代史の役割は何であったかまで言及する。正常な歴史観を求めた一大労作である。
〈扶桑社刊 ¥2600+税〉