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  台湾週報2130号(2004.2.12) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
:::


台湾週報2130号(2004.2.12)

公民投票は民主改革の一環
シラク仏大統領の発言は非民主的

 シラク仏大統領は、民主主義国の指導者でありながら、中国の「巨大市 場」に幻惑され、また独裁強権の中国の圧力に屈したのか、台湾が民主主 義深化のため実施する公民(国民)投票の意義を曲解し、胡錦濤との会見お よび中国との共同声明において、「重大な誤り」などと不可解な意思表示を した。これに対し外交部は厳重抗議をするとともに、陳水扁総統は公民投 票の意義を改めて説明し、3月20日の投票実施を再度確認した。

●外交部がフランスに遺憾の意

 フランスのシラク大統領は一月二十六日、パリの大統領府で中国国家主席の胡錦濤と会見したおり、台湾が三月二十日に行う「三・二〇平和公民投票」に対し、「重大な誤りだ。現状を破壊し、一方的に(地域情勢を)不安定にさせるものだ」などと発言した。これに対し外交部は同二十七日、以下の声明を発表した。 

 中国国家主席・胡錦濤は本年一月二十六日から同二十九日の予定でフランスを訪問しているが、シラク・フランス大統領はフランス時間一月二十六日の胡錦濤を招いての夕食会、ならびに同二十七日午前に署名した共同声明および署名後の共同記者会見において、台湾が三月二十日に行う公民(国民)投票に反対する発言をした。これに対し外交部は以下の四項目の声明を厳正に発表する。

一、中華民国は主権独立の民主国家であり、三月二十日に行う公民(国民)投票は、台湾民主化進行の過程における最も重要な里程碑であり、外国政府に干渉する権利はない。

二、フランスは世界における民主主義大国であり、西側民主主義の発祥の地でもあり、悠久な民主主義の伝統はもとより世界各国から尊崇されるところとなっている。一九五八年の第五共和国成立から今日まで、フランスは国内の重要問題について九度の国民投票を行い、民主主義国における国民投票の意義を理解しているはずである。台湾が三月二十日に実施する公民投票は、純粋に民主主義を深化させるための具体的な手法であり、一方的に台湾海峡の現状を変える意図などなく、さらに独立を追求するものでもない。フランス政府は台湾が実施する公民投票に反対する語句を共同声明に盛り込んだが、外交部はこれに対し深く遺憾の意を表明するとともに、フランス政府に対し、強い不満を伝達する。

三、中国政府は一貫して独裁強権の本質を改めようとせず、民主主義の世界普遍的な価値観を受け入れようとせず、さらに進んで台湾の民主主義深化の措置に干渉し、台湾の総統選挙に影響を及ぼそうとしている。外交部はこれに厳重に抗議する。中国は絶えず他の国を通じて台湾を圧迫しつづけ、両岸人民の心情を深く害しており、両岸の相互連動と交流に重大な障害を構成している。これに対し中国はすべての責任を負わねばならない。

四、外交部は再度中国に対し、台湾二千三百万国民の基本的人権ならびに国際活動の場を尊重し、国際間における妨害行動を停止し、ただちに台湾に照準を合わせたミサイルを撤去し、台湾に対する武力侵犯の放棄を宣言し、もって台湾海峡およびアジア太平洋地域の平和と安全を維持するよう呼びかける。

【外交部 1月27日】

●陳総統が改革断固推進を表明

 陳水扁総統は一月二十九日、総統府で国際青年商工会議所のフェルナンド・サンチョス・アリアス世界委員長と第五十二回国際青年商工会議所台湾代表団一行と会見し、台湾経済の現状と、今年すでに景気が上向き傾向を示していることを説明したあと、公民投票を含む改革ならびにシラク仏大統領の発言に言及し、以下のように語った。 

    ○   ○   ○ 

 改革の推進は必然的に抵抗や雑音をともないますが、それらはわれわれが正確な道を放棄することを示すものではありません。公民(国民)投票について言えば、これは世界普遍的な価値観であり、天賦の人権の一部であるとともに、国民主権の行使でもあり、いかなる国家であれ、政府であれ、また個人であれ、どのような理由によろうとも、これを阻止し、また妨害し、剥奪してもよいという理由はありません。 

 周知のとおり、フランスは一七九一年から国民投票という民主制度を持ち、二百十三年の悠久の歴史を持っています。フランスの国民投票は第五共和国になってからも今日まで九回実施しており、ドゴール大統領の時代には四回も行っており、大統領の直接選挙は国民投票の結果生まれた制度です。その後のポンピドー大統領、ミッテラン大統領なども前後して国民投票を実施しており、現在のシラク大統領も二〇〇〇年に全国的な国民投票を実施しています。その時の内容は、大統領の任期を七年から五年にするというもので、それを国民投票で決定しているのであります。それゆえに今回、その国の指導者に国民投票に対する不誠実な発言があったことは、きわめて残念で遺憾に思えてなりません。 

 フランスはみずから国民投票を行い、しかも二百年余にわたる国民投票制度の歴史を持ちながら、その国の指導者が他の国の内政に干渉するなどは、まったく理解に苦しむところです。皆さまがたにはこの点を理解され、また台湾の民主制度確立が本当に困難であり、多くの障害に直面していることを知っていただくよう希望しております。 

 かつてわれわれは台湾の民主制度確立の過程において、戒厳令の解除を要求しました。三十八年という長きにわたった戒厳令の解除は、いかに困難だったことでしょうか。またどれだけの犠牲を払ったことでしょうか。とくに白色テロの時代に、どれだけ多くの人が逮捕され、獄につながれ、家庭を失ったでしょうか。さらにわれわれは集会結社の自由と報道の自由を求め、美麗島事件の発生を含め、どれだけ多くの代価を払ったでしょうか。それらの要求するところはきわめて簡単であり、すべてが民主改革を推進するためだったのです。 

 ところが、それらのすべてがいわゆる反乱を企てているという根拠にされてしまい、戒厳令解除の要求、集会結社と報道の自由を求める活動、刑法百条(反乱罪条項)撤廃の要求、完全に自由な言論の要求、国会改選と総統直接選挙の要求など、それらのすべてが反乱の根拠とされてしまったのであります。 

 これら数十年にわたる努力によって国会は全面改選され、一九九六年には総統の直接選挙が実施されました。当時、総統の選出は国民の直接選挙かそれとも国民大会による間接選挙かについて、われわれは論議を戦わせました。そのとき私は立法委員の一人として、当時閣僚の一人であった馬英九氏(現台北市長)と台湾大学で開かれた討論会で大いに論戦いたしました。当然私は総統の直接選挙を主張し、間接選挙に反対しました。その後の事実が示す通り、われわれは民意を主流とする歴史の正しい方向に立脚しております。 

 ここに私は、公民(国民)投票は、台湾の民主制度が前進するためにやらねばならない正確な一本の道であると確信しております。正確な道は、あくまで堅持しなければなりません。正確な道をわれわれは歩みつづけねばならず、後戻りすることは許されません。 

 この道は、台湾が民主主義を強固なものにし、深化させるために、きわめて重要な過程であります。またそれは、台湾のためであることはもとより、われわれの子孫のためであり、幸福のためでもあります。さらにこの公民投票は、台湾国民全体の福祉と国家の安全に対する最大の保障となるものであります。これほど重要な公民投票実施の権利は、まさにわれわれのポケットの中にあるのです。 

 誰であれ、この道を阻止することはできません。誰であれ、われわれを他国に売り渡すようなことはできません。そうあってこそ、台湾が他国の一部分に陥るのを防ぐことができるのです。他国の地方政府となって今日の現状を変えてしまうのを阻止することができるのです。そうしてこそ、われわれの子弟を、また兄弟を、戦場に送り出すのを防ぐことができるのであります。

【総統府 1月29日】

公民投票の民主的価値は国家発展の大戦略
蘇進強・文化復興総会秘書長

 台湾にとって公民投票制度は、民主発展の自然の趨勢であり、台湾における現在の政治改革の問題を解決し、民主政治風土の主要なメカニズムを築き、本土化、民主化の基盤を固める助けとなるものである。 

 しかしこうした状況を、米国は必ずしも理解していない。われわれがいかに公民投票の意義を説明しようとも、彼らはこれを台湾の独立問題と関連づけて考える。彼らのさまざまな論評のなかでは、公民投票の民主的意義はまったく論じられず、多くの人がそれを選挙活動における一種の政治工作だと誤解している。こうした見方はすでに台湾の現状と大きく異なるものだが、国際社会、とりわけ米国の台湾民主化に対する偏見を顕著に示していると言える。 

 これらの穿った見方が培われた背景には、国際社会において過去十年来、台湾の民主化が政党間の対立と、両岸関係の衝突を通して認識されてきたことがある。二〇〇〇年に台湾が平和的政権交代を果したことは、すでに国際社会で広く評価されているが、台湾の民主化を推進する社会の力、その核心的価値などはほとんど知られていない。 

 また、米中台三方の関係において、台湾の民主化をどう捉えるかということも、一つの問題だ。米国のいわゆる「中国通」と呼ばれる親中派のほとんどが、「台湾の民主化は、台湾独立問題を誘発する」と懸念している。すなわち、民主化の過程において台湾民族主義の波が起こり、台湾独立運動の普遍化と激化を招き、台湾の独立問題が表面化すれば、中国が台湾を攻撃した際、米国がこれに介入すべきか否かの難しい選択を迫られると恐れているのだ。このため、米国親中派の間では「台湾の民主化は管理すべき」という考え方が主流となっている。かれらにすれば台湾の民主化とは、米中台三方間のバランスを崩す危険を孕んだ不安定な問題であり、こうした要素はいっそ排除したほうがいいと考えているのである。

 この間に米・台間で起こった「安全保障に関する公民投票」についての論争は、その実、「台湾の民主化に対する見方」についての論争だと言える。政府は公民投票などの主要政策について早急に対外的アピールを強化し、また国家安全保障、外交、中国対策の政策統合を最重要課題として処理すべきである。こうしてこそ台湾の民主化に対する国際社会、とりわけ米国の政界および学界における認識を是正することができる。 

 われわれは米国に、台湾ではいま民主化が主流の趨勢であり、いかなる施政者であれ、この客観的構造に従わねば支持されないという現状を伝えねばならない。米国が意図的に台湾の発言を無視し、旧来の方法で台湾問題を処理しようとすれば、中国を名実ともにアジア太平洋地域の覇者とさせ、米・日などのこの地域における政治、経済的利益に影響をきたすことをかれらに知らしめ、さらに台湾の民主化、本土化の意義と核心的価値および社会の動力への理解を促すべきである。 

 公民投票は台湾国民が長年かけて勝ち取った民主的権利であり、強権国家の圧力によってこれを放棄することはありえない。台湾が今回中国の圧力により公民投票を中止すれば、台湾の民主化は、今後ことごとく中国の妨害を受けるだろう。 

 さらに言うなら、米国の「台湾関係法」には台湾の自衛と台湾海峡の平和的解決への協力が明記されていおり、米国政府は陳総統が「四つのノーと一つのナッシング」を前提に公民投票をおこなうと宣言した際、パウエル国務長官に「台湾の公民投票に反対しない」「いかなる公民投票をも支持しない」とコメントさせ、また陳水扁総統が公民投票の設問事項に柔軟性を持たせたことを評価した。これこそ台湾の民主化、本土化に対する激励であり、台湾海峡沿岸の戦略的位置付けの重要性を認識した姿勢だと言える。台湾国民は決して悲観し己を軽んずる必要はない。また当然、中国の言動に踊らされ、公民投票の正当性と台湾民主化、台湾海峡の安全に対する戦略的意図を曲解してはならないのだ。 

《台北『自由時報』1月25日》

ニュースフラッシュ

 ◆バングラデシュに経済文化代表処設立へ

 情報筋によると、バングラデシュ政府は首都ダッカに台湾が経済文化代表処を設立することにすでに同意しており、これを受けて台湾は現在人員を現地に派遣し設立の準備を進めている。バングラデシュは中国と国交を結んでいるが、台湾とバングラデシュは経済面で密接な関係にあり、これを機にさらなる交流の拡大が期待されている。
《台北『自由時報』1月9日》 

 ◆中国の台湾での違法広告に法的処理

 一部のメディアが中国の台湾における投資募集広告を掲載していることについて、行政院大陸委員会は一月八日「主管機関の経済部によって、法的に処理されるだろう」と語った。中国の台湾での広告活動は目下規定により禁止されている。
《台北『自由時報』1月9日》 

 ◆中華民国ライオンズクラブの名称変更に抗議

 二〇〇二年四月世界ライオンズクラブの理事会の席上、中国の圧力によって中華民国ライオンズクラブの名称が「中国台湾ライオンズクラブ」に変更されたため、同会は今年一月十一日の代表大会で投票により「台湾ライオンズクラブ」に名前を正すことの是非を問うことにしている。
《台北『中国時報』1月10日》

◆エスニック平等連盟が設立

 与野党が選挙戦でエスニック問題(出身地の区別)を持ち出し、社会の不安や対立を招いていることに対し、国内の学者や芸術家など約七十人が集まり、侯孝賢監督を召集人とする「エスニック平等連盟」が一月十日設立された。同連盟は、近くエスニック問題を差別的に見たり、いたずらに論じることに反対する宣言を行う。
《台北『中国時報』1月11日》 

◆ハイテク関連産業は今後三年間で八百億元の目標を達成

 游錫堃・行政院長は一月十二日、「政府の積極的な努力により、二〇〇二年以降、十四の国際企業が台湾に研究開発センターを設立した。このことは台湾の人材と技術、投資環境が国際的に優位にあることを示しており、台湾のハイテク関連産業は今後三年間で八百億元(約二千八百億円)の目標を達成できるだろう」と語った。
【行政院新聞局 1月12日】 

◆美麗島同志会が設立

 美麗島事件に関わった弁護士や犠牲者の遺族ら数十人からなる「美麗島同志会」が一月十二日に設立された。同会は過去の民主を求める精神を昇華させ平和を会の精神となし、「平和的に台湾を救う」ことをスローガンに掲げている。同日行われた設立大会には呂秀蓮副総統も出席し、祝辞を述べた。
《台北『中央社』1月12日》 

◆世界のインテリジェント都市に台北が第四位に

 World Teleport Associationの二〇〇三年の調査結果によると、世界のインテリジェント都市に台北が第四位にランキングされた。同調査は世界の主要都市について、ブロードバンドの普及度や知識型労働者の割合など五項目について評価したもので、台北市が進めてきた電子化政府や市民の情報教育推進などが評価された。
《台北『中央社』1月13日》 

◆農産物の管理と密輸の取締り強化を

 游錫堃・行政院長は一月十四日、最近の米国での狂牛病の発生や北欧の養殖魚に発ガン性物質が含まれている可能性が指摘されたことなどを踏まえ「農産物管理と密輸の取り締まりを強化し、国民の食の安全を確保しなければならない」と述べ、現行の農産品に関する衛生法規をニーズに合うよう修正するよう関連省庁に指示した。
【行政院新聞局 1月14日】

ニュース

今年の台湾経済を予測する
米国が安定すれば景気向上

 台湾経済は二年余にわたる蓄積と培養を経て、今年は飛躍することができるかどうか。また成長のなかにどのような問題が発生するか。 

 今年は三月に総統選挙があり、十二月には立法委員選挙があって政治は熱気を帯び、経済もそれに連動することになろう。すべての経済戦略は両岸問題にかかわりがある。公民投票がワシントン・台北・北京の関係にどのような影響を及ぼすか。また現政権の新十大計画は今後どうなるか。いずれもが民間の投資に大きく影響するものである。 

 台湾の経済は米国と連動しており、米国が安定すれば台湾は不確定要素を排除することができるとの見方が強い。また選挙で消費が増大し、今年の流通産業は去年よりはよくなるとの見方もある。行政院主計処の予測によれば、今年の民間消費は前年比二・七%の成長が見込まれ、これはこの二年来最大の成長幅である。一方、中華経済研究院では、もし総統選挙が両岸関係の緊張をもたらしたなら、公共建設の進度は鈍化し、国内投資は伸び悩み、経済成長率は三・八九%にとどまると指摘している。なお各機関の今年の予測経済成長率は以下のとおりである。

中央研究院   四・三五%
中華経済研究院 四・二六%
台湾総合研究院 四・一二%
 行政院主計処  四・一%
 英エコノミスト 五・四% 

 消費物資に関して言えば、台湾の国内市場は小さく、在来型産業が伸びるには中国、インド、ブラジルなどに市場を開拓して行かねば、今後発展することは望めない。ハイテク部門でも、たとえばノート型パソコンの利益率は一昨年一五%~二〇%であったのが、昨年は六~七%に落ちている。業界はすでに薄利の時代に入っているが、利益率を高めるには台湾企業が自社ブランドを開発する以外にない。 

 以上の問題点のうち、市場拡大については両岸関係の動向がカギとなるが、自社ブランドの開発は台湾の有力各社が徐々に成果を上げてきており、この面の見通しは明るい。
《台北『工商時報』1月26日》 

今年経済成長率目標は五%
失業率は四・五%に抑制

 陳水扁総統は一月二十七日、テレビ対談の番組で今年の経済成長率に言及し、「昨年台湾経済の成長率は、第二・四半期はSARSの影響を受けてマイナス〇・〇八%となった。だがこの数値は香港のマイナス〇・五%、シンガポールのマイナス四・二%よりも下げ幅は少なく、第三・四半期には急速に持ち直して成長率四・一八%、第四・四半期は四・八一%となり、年平均では三・二%となった。今年の経済は一般的に見て去年よりはよく、五%に挑戦することは可能だ」と述べた。 

 失業率の問題については「昨年十一月の失業率は四・七一%で、十二月は四・六%が予測され、年平均では五%となっているだろう。今年はこれをさらに四・五%まで引下げることが可能であり、来年には四%まで引下げられよう」と語った。 

 両岸経済関係については「国家の安全が確保されてこそ、両岸関係は正常化が図られるのだ。両岸直接三通(通商、通航、通信)についてだが、行うにしても三通のための三通であってはならず、まして三通のために自国の立場を放棄するようなことがあってはならない。中国が要求するように、かれらが原則とする『一つの中国』を前提として三通を開始したなら、それは台湾が基本原則を放棄したことになる。なぜなら『一つの中国』と『一国二制度』はイコールであり、台湾は香港のようになってしまい、中国の特別行政区となってしまうからだ。台湾の国家指導者として、そのようなことが受け入れられるだろうか。それがまた多くの台湾人の意志といえるだろうか。答は絶対にノーである」と述べた。 

 また陳総統は「新十大建設」の予算案が立法院で否決された件にも触れ、「この予算案が通過すれば、今後五年間、毎年六万四千人分の就業の機会を創出し、経済成長率を毎年一・〇三%押し上げることになる」と強調し、さらに「私は総統選挙で再選されたあと、あらゆる混乱にピリオドを打ち、安定したなかに重大法案も順調に通過できるものと確信している」と語った。
《台北『自由時報』1月28日》 

両岸経済は将来垂直分業で
游錫堃・行政院長が方針強調

 游錫堃・行政院長は一月二十六日、苗栗県を訪問した折、台湾経済の未来像に言及し「政府の台湾経済構造転換政策は順調に進んでいる。将来は多くの企業が台湾にオペレーションセンター、研究開発センターを設置し、台湾経済と中国経済の関係は水平競合ではなく、垂直分業の関係になる。台湾には前途があり、国民は自信を持ってよい」と、具体例を示しながら語った。さらに「野党はこれまで民進党には経済専門家がいないなどと非難してきたが、政権が交代する前の十数年、国民党は産業転換を標榜していたが企業の多くが次々と中国大陸に移転していった。またアジア太平洋オペレーションセンター計画を打ち上げ、製造、通信、航空、海運、メディア、金融をその対象としたが、どこに成功の跡があるだろう。構造改革が進みだしたのは陳水扁政権誕生後だ。いま家は半分完成している。ここでリーダーを変えてはならない」と語った。
《台北『自由時報』1月27日》 

中国の反対は必要の証明
台湾は公民投票実施再確認

 林佳龍・行政院スポークスマンは一月二十七日、シラク仏大統領が公民投票に批判的な発言をしたことに関し「中国国家主席の胡錦濤がシラク仏大統領に、わが国の公民投票に批判的な発言をするよう強要したことに、わが国政府は遺憾の意を表明する」と語り、「中国が台湾の公民投票に反対し、圧力をかけているのは、台湾にとって公民投票が必要であることを証明するものだ」と指摘した。

 また游錫堃・行政院長は同二十九日「シラク仏大統領が中国の圧力の下、ビジネスチャンスのため自由と民主主義の精神に反し、わが国の公民投票に批判的な発言をしたのはきわめて遺憾だ。今後フランスの誠意を見極め、相互利益を前提として今後の両国の関係進展を決定していきたい」と表明し、予定していた陳郁秀・行政院文化建設委員会主任委員と魏哲和・同国家科学委員会主任委員のフランス訪問を暫時停止する措置をとったことを明らかにした。

【行政院新聞局 1月27・29日】 

欧州連合は台湾に理解示す
中国への武器禁輸解除せず

 欧州連合は一月二十五、二十六日の二日間にわたってブリュッセルで外相会議を開催し、フランスが中国に対する欧州連合の武器禁輸措置を解除することを要求したため、台湾の総統選挙と中国の人権問題が主要な議題となった。討議の結果十四対一で、中国の人権状況と中国が台湾に対する武力使用を放棄しない姿勢を問題視することを再確認するとともに、欧州連合は中国への武器禁輸措置を解除せず、三月二十日の総統選挙前に重要な決議はしないことを決定した。 

 注目すべきは、米国が昨年末に欧州連合が中国への武器禁輸を解除することに反対を表明しており、米国と欧州連合が意見不一致になる問題は多いが、唯一台湾海峡の問題では完全に一致している点である。だが確定的なことは、三月二十日の総統選挙後の結果が、国際社会の台湾海峡問題を判断する上での重要な指標となることである。
《台北『中央社』1月28日》 

高速鉄道第一号車輌が完成
川崎重工兵庫工場で公開

 目下急ピッチで工事が進んでいる台湾版新幹線である台湾高速鉄道は来年十月に全線開通予定であるが、その第一号車輌というべき先頭車輌を含む四車輌が川崎重工兵庫工場で完成し、一月三十日に林陵三・交通部長、蕭万長・元行政院長、殷琪・台湾高速鉄路会長ら出席の下に公開された。車輌はカモノハシのくちばしに似た日本新幹線の七〇〇系を基礎にした七〇〇T系で、一編成十二輌で構成される。一編成分すべてが完成するのは五月の予定で、台湾に搬入されたあと台南六甲―高雄大社間六十キロの路線で試運転が行われ、その後続々と後続車輌が陸揚げされる予定である。開通後台湾は世界第十六番目の高速鉄道導入国となり、その経済効果には大きなものが期待されている。また台北―高雄間の所要時間と運賃は、飛行機が五十五分、千九百元(約六千六百円)であるのに対し、高速鉄道は八十分、千四百元(約四千九百円)となる。
《台北『聯合報』1月31日》

不良債権比率四・三三%に
目標の五%をすでに達成

 財政部の統計によると、二〇〇三年末現在、国内金融機関の不良債権の総額は六千三百六億元(約二兆二千億円)で、不良債権比率は四・三三%にまで減少し、過去最高を記録した二〇〇二年第一・四半期の八・〇四%に比べ、三・七一ポイントも減少した。陳水扁総統が掲げていた五%の目標を達成したことになり、今後は要注意先債権を加えた額の総与信に占める比率を五%にまで減らすことを目標としている。ちなみに二〇〇三年末現在、国内金融機関の不良債権比率は五%未満が三十七行、五~一〇%未満が六行、一〇%以上は七行となっている。
《台北『工商時報』1月21日》

陳水扁総統の施政回顧と今後の展望②
台湾よ、立ち上がり世界に向けて歩もう(外交編)
総統府 二〇〇四年一月  

 「台湾よ立ち上がれ。中華民国よ世界に向けて歩み出せ。台湾は世界を見つめ、われわれは世界に中華民国を知らしめなければならない」

 一、理念と展望 

 台湾は国際社会において非常に特殊な境遇にある。中国は台湾の国際的地位を圧迫し、われわれを国際社会から排除しようとしており、このためわれわれは与えられるべき権利と地位を得られないでいる。二〇〇〇年、陳総統は就任後まもなく「世紀を越えた台湾の外交政策の未来図」を発表した。それは、国際実務への全面参画を目指す「新国際主義」を主軸とし、台湾を「忠実に国際秩序を守る」役割に位置付けたものであった。「主権独立国」の地位の確保が最優先目標に据えられ、ここに台湾は国家の安全保障と経済安定とを兼ね備えた「新中間路線」が必要となったのである。 

 陳総統はこの未来図に沿って積極的に外交を行ってきた。元首外交を繰り返し友好国との絆を深める一方で、無国交国との実質関係の強化にも尽力し、国際機関への参加など具体的な成果をあげてきた。陳総統、呂秀蓮副総統の積極的な外国訪問によって台湾は世界貿易機関(WTO)にもスムーズに加盟することができただけでなく、米国との実質関係も深まり、台湾の国際的知名度を高め、台湾の国際社会における活動空間の開拓にも繋がった。政府の外交政策は、今後も台湾の政治と経済の成功、いわゆる「台湾経験」を開発途上国と共有しあいながら、同時に世界の民主陣営との協力を進めるものである。また、国内外を問わず民間団体と「パートナーシップ」を確立し、国際社会との協力と交流の対象を拡大し、国家の主権と安全を守り、世界平和と発展のためにより貢献していくことである。グローバル化の趨勢にあって、台湾の外交政策も、より創意と弾力性に富む手法を採りながら、急速に変化する国際環境に対応していかなければならない。

二、具体的な実績

(一)友好関係の強化と開拓

 中国の圧迫により台湾の国際社会における境遇は非常に厳しく、とりわけ友好国との関係維持には心血を注いでいる。陳総統は就任後の会見で、政府の外交政策は連続性と安定性がなければならず、政権交代の影響を受けてはならない。既存の基礎の上に友好国との関係強化を図り、さまざまな協力を行えるよう努力していく」と語った。それは、政府要人の相互訪問や元首外交の推進、国際協力などを通じて実践されてきた。 

(二)無国交国との実質関係の強化

①対米関係

1、元首のトランジット待遇が向上:「快適、安全、便利」の元首待遇の既存の原則に、従来とは異なる「尊厳」が新たに加わった。

2、台湾への武器の供与、台米の軍事協力と対話が強化された。

3、米国は台湾の国際組織への参加を積極的に支持するようになり、台湾との友好を示す政府要人の発言も多くなった。また、国会の台湾への支持も深まった。 

②対欧州関係

1、欧州連合(EU)が駐在事務所を設置:EUの執行委員会は二〇〇三年三月、台北に経済貿易事務所を設置した。同事務所は、欧州各国の台湾での駐在事務所と同格であり、台湾とEUの関係において重要な一里塚となった。

2、欧州議会が台湾に友好的な決議を行う:陳総統就任後の四年間に、欧州議会は九項目にわたる台湾に友好的な決議を行った。

3、東欧との関係開拓を強化:東欧のEU加盟に備え、二〇〇三年八月、スロバキア共和国に正式な代表処を設立した。EU加盟を予定している東欧十カ国のうち台湾が代表処を設置しているのは、ラトビア、ポーランド、チェコ、ハンガリー、そして今回のスロバキアである。 

③対日関係

1、対日関係の強化:陳総統は就任後、総統府内に「台日関係会議」を発足させ、対日関係促進のための計画策定に当たらせた。

2、日本の政治家が台湾の国際組織への参加を初めて公開の場で支持:二〇〇二年五月、民主党の管直人幹事長(当時)が上海で、中国に対し台湾の国連参加を支持するよう要請した。日本の有力政治家が中国で台湾の国連参加を支持したのは、これが初めてである。

3、日本が台湾海峡の安全重視の姿勢を公開の場で示す:小泉首相は二〇〇二年九月、ニューヨークで外交関係協会の講演の席上、両岸の対話と平和による解決を呼びかけ、「こうした環境を作ることが日本の役割だ」と語った。

4、東南アジア諸国との経済交流:陳総統は二〇〇二年八月、東南アジアとの関係を深めることは、米国や日本、EUとの関係強化にもつながり、それこそが台湾の外交の重点であると指摘し、「『南向政策』はアジア太平洋諸国との関係強化の努力目標の一つである」と語った。

④元首外交

 対外関係において陳総統は、台湾がみずから立ち上がり、世界に向けて歩むことを強調し、就任以来何度も諸外国を訪問し元首外交を展開した。これはひとえに、台湾の国際的知名度を高め、世界に台湾を認めてもらうためであった。元首外交は総統に限らず、総統を代表して行われたものも重要な一環と見なされる。主な元首外交は以下の通り。

● 陳総統

(1)「民主外交、友好の旅」(二〇〇〇年八月。ドミニカ共和国、ニカラグア、コスタリカ、ガンビア、ブルキナファソ、チャドを訪問。米ロサンジェルスに立ち寄る)。
(2)「合作共栄、友好の旅」(〇一年五月。エルサルバドル、グアテマラ、パナマ、ホンジュラス、パラグアイを訪問、米ニューヨークとヒューストンに立ち寄る)。
(3)「合作互助と思いやりの旅」(〇二年六月。セネガル、セントメプリンシペ、マラウイ、スワジランドを訪問)。
(4)「喜びを分かち合う旅」(〇三年十月。パナマを訪問し、ニューヨークとアラスカのアンカレッジに立ち寄る)。

●呂秀蓮副総統

(1)柔軟外交の旅(二〇〇〇年九月)
(2)ガンビアを訪問(〇〇年十二月)
(3)中南米訪問(〇一年一月)
(4)ハンガリー訪問(〇二年三月)
(5)インドネシア訪問(〇二年八月)
(6)民主太平洋の旅(〇三年八月)

●呉淑珍・総統夫人

(1)国際自由連盟による「二〇〇一年自由賞」授賞式に陳総統の代理で出席(二〇〇一年十一月、フランスを訪問)
(2)民主と親善の旅(二〇〇二年九月、米国を訪問)
(3)文化の旅(二〇〇三年七月、ドイツ、イタリアを訪問) 

⑤国際組織への積極参加

1、世界貿易機関(WTO)へ加盟:台湾のWTO加盟への道のりは辛く苦難に満ちたものだった。われわれは十二年間の努力の末に、二〇〇二年一月、百十四カ国目の加盟を実現させた。WTO加盟は台湾が世界の経済体系の一部となり、将来の経済発展に重要な一里塚となった。

2、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の枠組みにおける地域協力を促進:APECは台湾が加盟している国際組織のなかで、世界経済の最も重要な多国間協力会議の一つである。とくに中国も同会議のメンバーで、双方が政治的攻防を避けることができるため、陳総統は台湾の経済利益を保護できる場としてこれを特に重視している。これまで台湾はAPECにおいて、推進計画の提議や重要実務の担当、メンバー国とのハイレベルの二国間協議の実現など具体的成果をあげている。

3、世界保健機関(WHO)加盟を推進:陳総統は「医療と健康に国境はない」との信念のもと、台湾が世界の衛生体系において建設的な役割を担う能力も意欲も持ち合わせていると考えている。二〇〇三年、台湾のWHO加盟はまたしても中国の圧力により大会議案にも盛り込まれなかったが、われわれの努力は国際社会からすでに評価されており、将来台湾がオブザーバー参加を実現する糧となるだろう。 

⑥全民外交を推進

 陳総統は「外交は政府サイドにとどまらず、よいシステムがありさえすれば国民一人ひとりが尖兵となり、国の外交に尽力することができる」と考えている。これが、いわゆる全民外交である。台湾の国際社会における境遇について国民の理解と支持を深め、民間資源を結合し多元的な力を発揮するため、民間団体の外交への参画を促し、外交実務に大きな活力と弾力性を持たせることが必要だ。陳総統就任降、外交部は代替役の実施や外交ボランティアの募集など全民外交に尽力し、成果をあげている。総統府主催のレセプション会場を地方に移したことも、全民外交の実質的な成果と言える。 

⑦国内非政府組織(NGO)の外交への参画を支援

 中国による圧迫のなか、台湾が世界の国々と正式な外交関係を築くことは非常に困難である。このため「われわれの力の一部を世界の無数のNGOに振り向け、それらの国際組織へ積極的に参加していくことで、さまざまな国際実務に貢献することができ、それをもって台湾の国際社会での知名度も高まり、台湾への友好も勝ち取ることができる」というのが陳総統の考えだ。これを受けて外交部は「NGO国際実務委員会」を設置し、世界のNGOに対する台湾での事務所設立や、国内NGOの国際的イベントの開催と参加を奨励しており、政府はこの方面に多くの資金を投入している。

⑧民主人権外交の推進

1、「台湾民主基金会」を設立:二〇〇二年九月、陳総統主催の「三芝会議」において、民主と人権問題の国レベルの組織「台湾民主基金会」の設立が優先目標に位置付けられ、外交部は二〇〇三年六月に設立準備を完了した。

2、世界の人権体系と連携:陳総統は就任挨拶のなかで、人権立国の理念を打ち出し、世界の人権体系との連携を主要目標とする人権政策を示した。さらに「われわれは世界の人権の趨勢から外れてはならず、国際社会の義務と責任を果たさなければならない」と語った。これを受けて行政院は「市民的及び政治的権利に関する国際規約」と「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」の批准案を立法院に送付し、二〇〇二年十二月に両案が可決され、台湾の人権保障は大きく前進した。

三、将来の努力の方向 

 中華民国の総統として、国家の主権と尊厳、安全を守ることは、何にも代えられない責務である。陳総統はみずから何度も外国を訪問しているが、これは元首が出かけることに特別な意味を感じているからである。つまり、中華民国が主権独立国であるという事実を顕彰する以外に、より重要なのは中華民国を代表し自身が民主と経済の成果を国際社会と分かち合い、平和と繁栄を築いていく強固な意志を示すことにあった。陳総統はこの方法によって世界に声を発し続けた。また、世界経済が地域経済体へと向かうなかで、それらの貿易協定に参加することは、台湾を永続的に発展させるだけでなく、国際競争力を高める基礎ともなる。これこそが台湾の外交の新しい目標である。つまり将来の外交政策は、台湾の民主の成果を国際社会との交流の糧となし、台湾の経済力をもって台湾への投資を誘致し、これにより経済発展を促す。さらに多元外交を与野党のコンセンサスとなし、全方位外交戦略の開拓につなげるという理念を持ちながら国際情勢の試練に立ち向かいチャンスを生かし、「民主・人権、経済共栄、平和・安全」を三大主軸とし、今後も各種の対外活動を展開していくことである。「外交活動には派閥を超えた利益と与野党のコンセンサスが必要だ。全国民が力を合わせ、台湾が世界に向けて歩き出すことを期待したい」と陳総統は語っている。
(完)

アメリカから見た台湾・中国・日本 ③
日本台湾医師連合特別講演会
古森義久・産経新聞論説委員講演録

7、アメリカが気にする中国のミサイル配備

 一方、中国ですが、今までさかんにアメリカを批判していますね。「一極世界」という言い方をして。これは「アメリカだけを超大国とする、今の世界の仕組みを打破しなくてはいけない」「多極世界にしなければならない」と言うものです。多極となれば恐らく四つか五つの極に分かれるでしょうが、もちろん中国もその一つに入っているわけです。「では、日本は入っているのか」と中国の指導者に聞くと、あまり答えは返って来ません。恐らく入ってないでしょう。総合的国力というものがありますから。 

 総合的国力に関して言えば、中国には、二〇〇五年頃に中国がアメリカを上回るとのプロジェクションの予測があります。つまりアメリカ哀退論です。これは日本にもついこの間まであったんですが、今はありません、しかし中国はアメリカ哀退論というものを、かなり頻繁に打ち出してきました。つまり中国側も基本的にはアメリカを敵視しているんです。 

 もちろん経済の面では、台湾と中国との関係と同様、アメリカ企業が中国に投資をして、そこで安いものを作り、それをまたアメリカに輸出して、それでお互いが儲かったら良いではないか、という現実的な絆はあります。 

 ただ台湾や日本と決定的に違うのは、基本的権利が認められていない中国の安い労働者を、アメリカ企業が使うのは怪しからんとの意見が米側の一部にあることです。アメリカの議会では労働組合の代表がいつも出てきて、非常に強い意見を言っています。これは日本の労働組合には全然ない発想です。中国の労働者には保険も医療費もなく、ILOで認められている基本的権利、たとえば労働組合の結成の権利、あるいは雇用側との団体交渉権などは認められていません。そのような状況で労働者を酷使していいのか、という疑問がアメリカ側で提起されるわけです。 

 アメリカと中国の経済の絆は太くなっていても、その一方で先程申し上げたように、アメリカの中国への警戒心は非常に強い。その端的かつ具体的な実例としては、国防総省が年に一回、必ず中国の軍事力の状況を発表するという規則があります。つい二週間か十日位前にも、今年のレポートが出ました。非常に詳しい報告書で、既に日本の新聞でも報道されていますが、今年も去年と同様、一番大きな項目として挙げているのが、台湾向けと思われる中国の短距離ミサイルの配備についてです。福建省、南京などに短距離の弾導ミサイルが四百五十基ぐらい配備されており、しかも年間七十五基位のペースで着実に増えていると。 

 アメリカはブッシュ政権以前から、これを非常に気にしているんです。私はその頃北京にいましたが、ブッシュ政権、ブッシュ陣営の要人が時々メッセージを持ってきて、中国側に「台湾海峡付近ではミサイル配備を止めてくれ」「もう既に配備されたものは撤去しなくて良いから、新しいものを増やすのを止めてくれ」という要望を伝えていました。 

 現在台湾に駐在しているアメリカの政府代表のダグラス・パール氏も、そういうメッセージを届けたことがあるそうです。その時は「もし台湾に照準に合わせたミサイルを減らさなくてもよいから、単に増やさなければ、アメリカは台湾に新しい兵器の売却を延期しても良い」とまで伝えているんです。これはジュージ・ブッシュが大統領になると決まったあとの、二〇〇〇年十二月の終わりか二〇〇一年一月の初め頃のことです。 

 しかし中国側は、それを一切聞かなかった。そしてそれまで通りに一カ月に二、三基位のペースで新しいミサイルを増強している。更にロシアから、あるいはウクライナやグルジアから、中国にとっての新型兵器をいろいろ買っています。これはもう古い話ですが、スホイ27という戦闘機などですね。最近はスホイ30なども買っている。それからキロ級潜水艦とか、ソブレメンヌイというミサイル駆逐艦ですね。スホイ27の方は中国はすでにライセンス生産をしています。弾道ミサイルとは別に巡航ミサイルもあります。自動操縦みたいに飛んで行く巡航ミサイル。これもかなり増やしているのです。 

 ですから間違いなく、中国人民解放軍の当面の最大目標として、台湾軍事侵攻のシナリオが存在するわけです。そのシナリオに沿って軍備増強をしているのです。もちろんすぐに戦争を始めるわけではありませんが、いざという時には、そうできるようにしなければならない。準備を整えておく必要があるのです。 

 そこで、陳水扁政権ですが、アメリカ側には「第二期陳水扁政権はまずあるだろう」という見通しもありました。中国側もそうみていました。私自身もぜひそうであって欲しいですけれども。しかしこの見通しは今は非常に分からなくなりました。 

 それでも中国は万が一に備えて、「陳水扁政権は第二期目になった時が一番危険だ」という見方をとっています。「陳水扁は第一期は慎重にやっていても、もし再選されたら本音を出して、ある日、突然、独立を宣言するのではないか」と、中国高官がもらすのを聞いたことがあります。 

 そういう場合には、中国はこれまで一貫して「軍事攻撃をする」と宣言してきたわけです。なのに、実際に軍事攻撃をかけられる態勢がなかったら、これほどお恥ずかしい話はない。「だから今から態勢を整えておくんだ」と平然と語る人たちが、中国の高官のなかにはいるのです。

 だからアメリカが見るのは、まさにそのような中国側の、軍事攻撃も辞さず、という考え方、行動様式ということなのです。

8、アメリカに勝てない中国の融和、和解姿勢

 アメリカの国益としては、台湾海峡を含む東アジアに関しては、現状維持が一番良いことは明白です。だからその現状を引っくり返そうとするパワーに対しては、アメリカは正面から立ち向かわなくてはならないという構えもあります。このアメリカの現状維持に対して、中国は現状打破が狙いです。だからこそアメリカにとっては中国はやはり潜在的な敵としてみることになるのです。 

 それに対して中国は近年、非常に面白い変化をして来まして、先ほど申し上げたように、アメリカとの対決、対立、衝突をできるだけ避けるようになってきたんです。

 たとえば我々はいつも中国に、「日米安保には賛成ですか、反対ですか」と質問するのですが、私が北京にいた頃はだいたい「反対」という回答です。ところがそれが最近変わってきた。二〇〇一年に当時の唐家旋外相がパウエル国務長官に、「アメリカ軍が東アジアにいても、在日米軍がいても良いんだ」ということを言いはじめた。二〇〇二年十月の上海でのAPECでも、江沢民はブッシュに「アメリカの東アジアにおける軍事プレゼンスは、東アジアの安定に役立つ」などと、今までとは全然違う話をしている。 

 こうした中国側の発言をアメリカは信用していません。中国の本音などではなく、アメリカと衝突したくないがための中国の戦術だと思っているわけです。 

 中国側が表面的に姿勢を和らげてきた最大の理由は、湾岸戦争、コソボ、アフガニスタンなどで、アメリカの軍事パワーの強さを見たからでしょう。一気にクウェート侵攻軍を破り、空爆だけでユーゴスラビア連邦を屈服させてしまうという、地上戦闘なしで空からだけで戦争をやって、自分達の方はほとんど死者を出さないという、あの革命的な戦争の仕方に、「驚異だった」と、中国の人達は言っていますね。 

 アメリカ当局が一昨年、アフガニスタンのタリバンとか、アルカーイダに爆撃を始めた直後に中国側でおもしろい動きがありました。中国の人民解放軍には、相手の軍隊が何をやっているかを知るため、信号や無線の傍受と暗号の解読を行う特別な部隊があるそうです。そのなかで最精鋭の部隊は普段、だいたい台湾海峡に近いところにいますが、アフガニスタンでのアメリカ軍の爆撃が始まったら、すぐに新彊へと動いたというのです。新彊とアフガンは繋がっていますので。このように中国は、やはりアメリカがどのような戦争をするか、固唾を呑んで、息を詰めて見ているわけです。そして「これではアメリカと事を構えたらまずい」という判断が明らかにそこでまた補強されたようです。 

 その判断の裏には、アメリカがブッシュ政権になって、中国向けの軍事力を強化していることもあります。グアム島に原子力潜水艦を新たに持ってくるとか、B1という爆撃機の数を増やすとかです。 

このようなアメリカの、力で対立して行くという姿勢は、私が見ても恐ろしい位です。良く言えば毅然たる、悪く言えば冷酷にとでもいえましょうか、とにかくすごい勢いで、平然と軍事力を使うというところがあるんですね。 

 話は戻りますが、アメリカの大統領選挙中、「ブッシュ政権になったらこういう中国政策をやりますよ」ということを立案していたブッシュ陣営の人が、北京に来たので話をしました。当時人民解放軍の副参謀総長の熊光かい(木に皆)が非公式な場でにせよ、「もし台湾海峡で有事になってアメリカ軍が出てきたら、ロサンゼルスにICBMでの攻撃を考える」などという趣旨を述べていたのです。熊将軍はその後、その発言をあわてて取り消したりもしましたが、当時のクリントン政権の内外には衝撃波を広げました。そのブッシュ陣営の人にこの件を述べて、反応を問うと、彼はせせら笑って「上海沖にはいつもアメリカの原子力潜水艦がいる」「北京でも上海でも、核ミサイルはほんの五分で届くのだ」と半分冗談みたいに言うんです。 

 上海沖にアメリカの原子力潜水艦がいることは間違いなく中国側も十分知っているわけです。だから「あちらはロサンゼルス、こちらは北京と上海」というようなことを言う。本当にそういう風になるかは私は知りませんが、少なくともアメリカ側にはそういう備えがあり、しかも実際にその核ミサイルを最悪の事態には発射する覚悟がある、ということをその人物は冗談にひびくような口調で宣言していたのだといえます。真実はその言葉の半分しかなかったにしても、ブッシュ陣営の特質を象徴する、と感じました。そういう断固たる姿勢がブッシュ陣営にはある、そのようなメンタリティがある、ということでしょう。 

 もちろんその種のアメリカの軍事戦略はクリントン政権時代にもあったと思います。ただしブッシュ陣営はそれをもっと強固かつ明確に表明するのです。中国側ではそう言う体質に触れて、びりりと電気を感じたような反応が指導部の今の言動から十分に窺われる。アメリカと軍事面で対等に戦えるかと言ったら、中国はまだまだそこまで行っていないし、ちょうどアメリカ側も対テロ戦争での協力を一生懸命求めてきているので、「だったらこの際はアメリカを叩くような強い言い方を引っ込めて、少し融和、和解の姿勢で行こう」というのが今の中国の状態なのです。 

 ですから、ずっと申し上げてきた基本の「アメリカ・台湾・中国」という危険を孕んだ三角関係の基本構図は基本的には変わっていない。表面の穏やかそうに見える動きだけで、実際に全部がそうだ、と見るのは間違いだというわけです。 

 経済面に象徴される台湾と中国との結びつきの深まり、広まりにつれ、台湾ではひょっとしたら、「とにかく中国と一緒になって行くほうが良いんだ」という意見が多くなってしまうかも知れませんが、それでもアメリカは「いざという時には台湾を支持する」という姿勢を崩してはいない状況があります。

9、日本が「普通の国」になることを認めているブッシュ政権

 最後に日本ですが、ブッシュ政権が日本をどう見ているかについて簡単に言うと、これも歴代のアメリカの政権のなかで初めて、日本に「普通の国になってくれ」「普通の国になっても良いですよ」ということを言っているのがブッシュ政権です。 

 日本側では自衛隊をイラクに送っても、「危ないところには行ってはいけない」「戦闘の起きるところには一切行ってはいけない」と言うくらい、おかしな話がまかり通っている。これは全て日本が自らに課した憲法と言う規制のためです。しかし何も危険のないところなら、自衛隊という一種の軍隊が行く必要もないわけです。 

 安全保障ということに関しては、普通の国は普通に軍事力を行使できるんですが、日本は集団的自衛権の行使、つまり仲間と一緒になって何かをするということができない。土井たか子さんのように、「憲法の解釈を変えて、集団的自衛権を認めると、日本は軍事大国になる」などと今でも言っている人がいる。日本が普通の国になることに日本の左翼が反対するのは、できるだけアメリカとの防衛関係を強くさせたくないからです。 

 中国や韓国も同じことを言います。「日本人には危険な体質があって、普通の国のように軍事力の行使を認めると、すぐに攻めてくる悪い性質がある」などと意味のことを言う。日本人のDNAへの不信ですね。これは冗談で笑っている分には良いけれども、まじめに考えると、これほど屈辱的な話はないわけです。日本というのは、普通の状態になると悪いことをする体質だなんて。成熟した民主主義の国である日本が、いったいどこを攻めて行くんですか。中国を攻めるわけにもいきません。韓国を攻めても、そこはアメリカと同盟国関係にありますから、そうしたら今度はアメリカが日本を攻めてくることになるわけですよ。 

 ところがアメリカの歴代の政府は、そのような中国や韓国の言う方にばかり耳を傾けてきたんです。そこでブッシュ政権になって初めて、日本が安全保障面などで普通の状態になることに対し「もし日本がそれを望むのだったら、アメリカは全く構いませんよ」となったんです。 

 ただ、日本が普通の国になったとしても、日米安保を破棄して、それこそ核兵器を自分で持つということになったら、やはりアメリカは困るわけですから、それに対してはものすごい勢いで反対するでしょう。しかし今の日本の状況を見ると、そのようなことを求める政治的勢力はほとんどないですね。

 だから「日本は普通の国になった方が良い」と思っている人間にとっては、ブッシュ政権は救世主みたいなところがある。ところが不幸なことに、「今、イラクを攻めて怪しからん」だとか、「ブッシュの英語は間違っておかしい。馬鹿だね」という話ばかりが広まってしまい、ブッシュ政権が日本との関係をどう見ているか、どう望んでいるか、というところに中々話が行かない。これはもったいない気がします。 

 もしこれで来年の大統領選挙でブッシュが負けたりすると、これは台湾にとっても日本にとっても大変です。特に私は台湾にとっての方が大変だと思います。ブッシュ政権ほど台湾を守ろうとする政権は今後も生まれるだろうか。今の民主党の候補者を見ても、だいたいブッシュさんと反対のことを言っている人が多いんですね。 

 私は民主党嫌いで共和党贔屓、というわけでは決してありませんが、日本にとって得か損か、東アジアにとって得か損か、ということだけを見れば、やはり民主党では少し不安です。ついこの間まで上院の民主党側で外交委員長をやっていたある上院議員の補佐官など、「台湾は中国と一緒になれば良いんだ」ということを平気で言っていました。 

 しかし日本にとっても台湾にとっても、今の状況は良いわけです。ただアメリカは民主主義の国で、振り子が激しく揺れますから、それを何とかうまく自分達の得になるように活用して行くことだと思うんですね。 

 今の日本の場合には経済が弱いので、一九八〇年代に日米関係で一番大きな問題だった経済摩擦というものがほとんどありません。それで相対的にますます安保が重要視され、うまく行っている。まあ、ブッシュ大統領と小泉純一郎首相は、個人としても非常に波長が合っている。これは間違いない事実だと思います。
(完)

数字で見る台湾

サラリーマンの二五%が喫煙者
職場での嫌煙意識も高まる

 陽明大学環境衛生研究所が行政院衛生署国民健康局の依頼を受け、十五歳以上六十五歳以下の社会人を対象におこなったアンケート(電話質問形式で実施、有効回答数五千八百四十二人)の結果によれば、.台湾のサラリーマンの喫煙率は二五%であり、男性では四二%、女性では四・六%が喫煙者だった。また二割近くの人が毎日喫煙し、一日平均十七本と、一箱近く吸っていることがわかった。 

 職種で見ると、鉱業、土砂採取業、水利・電力・ガス関連業の社員の喫煙率が四〇~五〇%と最も高く、教育、医療保健、社会福祉サービス業が最も低く一割未満だった。 

 一方、職場での副流煙について約四割の人が「他人の吸うタバコの煙で被害を受けている」と答えたほか、八五%のサラリーマンが「職場での禁煙に賛成」、雇用主側も九七%が「職場の無煙化を支持」と回答するなど、嫌煙意識の高まりも伺えた。調査を実施した研究者は、「労資双方が喫煙の健康への影響を重視していけば、将来的に喫煙率を二割は減らせるだろう」と分析している。

●外箱の注意表示見直し、軍の「無煙化」も着手へ

 タバコの害の蔓延予防のため、行政院衛生署では、外箱に健康注意文の表記のみを定めた現行の煙害防制法を見直し、欧米などの例を参考に、注意文に加えて警告マークを並記し、さらにそれらの箱に占める割合を半分の大きさに規定する方針を打ち出した。 

 また同署では、二〇〇四年から国防部および軍医局と合同で、喫煙率調査、部隊での禁煙計画など一連の無煙推進活動を展開し、比較的喫煙者の多い軍を対象に「無煙化」に着手する予定だ。同署国民健康局では「台湾全体での十五~十九歳の喫煙率は約一五%だが、二〇〇二年に軍関係者を対象に実施した調査では、この三倍近い四十二%だった。軍には若者が喫煙者になりやすい環境がある」と指摘している。さらに同局では、今後一カ月以内に各省庁にまたがる嫌煙委員会を設立し、WHOの要求に沿った国際レベルの嫌煙体制構築を推進する方針である。
《台北『中国時報』1月4日》 

小学校入学者数が三十万人以下に
少子化本格化で待たれる対策 

 教育部は一月十五日、二〇〇四年度八月の小学校入学者数は、前年度比三万七千人減少し、史上最少の二十八万四千五百五十人となるとの統計結果を発表した。 

 同部によれば、過去十年における台湾地区の小学校就学者総数は百九十~二百十万人の間で、このうち新入生数は毎年三十~三十二万人を維持していたが、少子化に伴う入学者数減少で、今回初めて三十万人を割り込む予測値となった。これにより〇四年の全国の小学校におけるクラス数は約千クラス減少する計算となる。同部の統計では、少子化傾向は今後も続き、六年後の〇九年には入学者数は約二十三万人となり、二千四百七十七クラス減となる見込みで、小学校の総クラス数の四%がなくなることになり、地方での廃校や教師あまりの問題は深刻だ。 

 これについて同部では、クラス数と教員数は暫時現状維持の方向とし、教育機関などに教育構造の大幅改革を呼びかける一方で、少子化の背後にある一人親家庭などの社会現象を分析し、関連部門と協力し対策を検討することにしている。
《台北『自由時報』1月16日》 

携帯でネット利用する人は三八%
時間は一日十分、利用料は月百元

 台湾財団法人資訊工業策進会がこのほど、台湾で初めておこなった「携帯電話を使ったインターネット利用状況」の調査によれば、携帯電話でインターネットのサービスを利用している人は、ネット利用者全体の僅か三八%だった。これらユーザーのうち、五二%が「一日の利用時間は十分程度」、四七%が「利用料金は月百元(約三百五十円)以内」と答えており、日本で「iモード」利用者が月平均千五百円利用(二〇〇三年調べ)しているのと比べ、かなり少ない数字となっている。 

 利用するサービスで最も多かったのは、手軽に情報を送受信できるSMS(ショートメッセージサービス)で七五・二六%、次がメールで一九・八一%だった。またネットショッピングする人のうち二〇・八一%は飛行機や列車の切符購入に利用している。引き出す情報の内容で見ると、画面と音声のダウンロードが最も多く四三・一六%で、これ以降ニュース閲読一六・八%、株式情報検索と取引一二・二八%、ゲーム一一・〇二%となった。本調査は二〇〇三年十月十八日~十一月八日まで、インターネットによるアンケート形式でおこなわれ、有効回答数は六千七百五人だった。
《台北『民生報』1月2日》

台湾観光年キックオフイベントが開催
ミニライブ、台湾無料招待旅行抽選会など盛り沢山

 交通部観光局は今年二〇〇四年を台湾観光年に位置付けており、「Naruw’an Welcome to Taiwan」(こんにちは、ようこそ台湾へ)を合言葉に、官民一体で海外からの観光客誘致に積極的に取り組んでいる。なかでも日本は台湾を訪れる外国人観光客の数が最も多いだけに、期待が強い。台湾で旧正月が開けて間もない一月三十一日、林陵三・交通部長をはじめ国内の観光事業の関係者総勢百人以上が来日し、東京の新高輪プリンスホテルで「台湾観光年キックオフイベントNaruw’an Night(ナルワンナイト)」が開催された。イベントは、あらかじめインターネットなどで通知され、全国から寄せられた五千通を超える応募の中から観光年にちなみ二千四人(千二組)が招待され、盛大に行われた。 

 広い会場には特設ステージと三台の大型スクリーンが設けられ、周囲には一足早く台湾の元宵節(旧暦一月十五日)を祝う赤いランタンが飾られ、華やかなムードにあふれていた。台湾の祝い事に欠かせない獅子舞で賑やかにスタートが切られ、主催者を代表し林陵三・交通部長が「みなさんに台湾各地で行われるさまざまなイベントに参加していただき、台湾の魅力を体感してほしい」と挨拶。このあと羅福全・駐日代表が「台湾はこの三年余り、高速道路や新幹線などインフラが整備されつつある。美しい南国台湾でみなさんのお越しをお待ちしている」と呼びかけた。この日の司会は、テレビのバラエティやドラマで大活躍の藤井隆さん。藤井さんは台湾人の情の厚さと食べ物の美味しさに魅せられ、仕事、プライベートを含め、これまで六回も訪れているという台湾ファンだ。 

 大型スクリーンには、台湾の豊かな自然と人々の暮らし、世界に誇る文化芸能など、台湾の魅力を紹介するビデオが放映され、この日出席できなかったダイエー・ホークスの王貞治監督から寄せられたビデオメッセージも紹介された。このあと日本でも人気のビビアン・スーと、台湾のトップアーティスト、ワン・リーホン(王力宏)によるミニライブが行われた。日本は八カ月ぶりというビビアンは「緊張した」と語りながらも自身のアルバムから二曲をパワフルに歌い上げ、観客の声援に応えた。一方、ワン・リーホンはギター片手に日本語でバラードを情感たっぷりに歌い、続いてピアノも演奏し英語の歌を熱唱した。会場は二人のステージですでに高揚していたところへ、日本の人気アーティストGacktが登場すると、一斉に大きな歓声があがった。ワン・リーホンとは映画で共演して以来の親友で、これまで何度も台湾を訪れ、屋台が一番の楽しみだというGacktは中国語も得意で、ステージでも流暢な中国語を披露し、会場を沸かせた。 

 このほか、昨年台湾で結成された「男子十二国楽団」による古典楽器の演奏も披露された。国内で活躍している優秀な若手奏者十二人が、胡弓や笙といった古典楽器で「世界に一つだけの花」を含むポップス六曲を合奏。これと同時に始まった食事会では、正月に欠かせない大根餅、担仔麺、焼きビーフンなどの台湾の点心類が振舞われ、人気の小籠包の前には長い列ができていた。 

 イベントのクライマックスとなった抽選会では台湾のベテラン歌手、欧陽菲菲が姿を見せ、昔と変わらぬスタイルと笑顔に会場から歓声が上がった。抽選の結果、ホテル宿泊券、飛行機の往復チケットが十三人に、さらに台湾観光ナルワン賞として十組百十人に二泊三日の台湾無料招待旅行がプレゼントされた。歌ありトークあり、美味しい食事と台湾旅行の無料招待までついて、出席者は台湾の魅力にすっかり満足した様子だった。
《取材:本誌編集部・山田》

芸術と医療で「奇美」の名を残す
許文龍氏が考えるライフワーク

 台湾の代表的企業である奇美グループの許文龍会長が、いま年間収益一千億元(約三千五百億円)を誇る光電事業よりも興味を持っていることがある。芸術や医療といった商売以外の分野で世に貢献し、奇美の名を残すということだ。許氏はすでに最新設備を完備した奇美医院や、自ら集めた芸術品を無料展示する奇美博物館を設立しており、その芸術への造詣の深さは財界でも有名だが、将来は米国の「スミソニアン博物館」に倣い、奇美博物館を国際レベルの博物館にしたいという。 

 スミソニアン博物館は、もとは英国の科学者スミソンが個人の資産を投じて設立したもので、現在十六の分館と美術館、動物園、研究センターを有し、教育、芸術、科学、歴史など幅広い分野の学術研究にも関わっており、その名はすでに世界の博物館の代名詞となっている。 

 許氏は長年、「いくら業績が良くても、百年後には企業としての奇美は存在しないかもしれない。今後は商売で得た資金を芸術、医療の分野に投じたい」と考えていたが、数年前にスミソニアン博物館を訪れ、その功績に感銘を受け、今後のライフワークに思いを馳せた。奇美博物館には絵画、彫刻、楽器のほか、アジアで最多の収蔵数を誇る武器や動物標本などがあり、コレクションの豊富さではすでにスミソニアン博物館を彷彿とさせるものがある。許氏は最近親しい友人に「自分が死ぬまでにできなければ、次代に引き継いで実現させる」と語ったという。
《台北『工商時報』1月11日》

文化・芸能ミニ情報

雲門舞集がDVD発売

 国際的に活躍する台湾舞台芸術界の旗手、「雲門舞集(クラウド・ゲイト舞踊団)」がこのほど、金革レコードと合同で、DVD「雲門・傳奇」の発売を正式に発表した。 

 このDVDはワンセット七枚組で、『薪傳』、『白蛇傳』、『九歌』、『我的郷愁、我的歌』、『家族合唱』、『流浪者之歌』、『竹夢』の七つの作品が収録されている。 

 同舞踏団の林懐民・芸術総監督は、「これまで雲門舞集の舞台影像はほとんどがヨーロッパで撮影され、台湾に逆輸入されていた。今回のDVDは、われわれの舞台芸術を代表する内容となっており、今後、台湾で撮影、発売し世界へ販売するためのスタート地点となるだろう」と語る。 

 「文化クリエイティブ産業」の担い手として夢と野心を溢れさせる林氏は、金革レコードの陳建章執行長とともに、DVDの仕上がりに強い自信を示していた。
《台北『中国時報』03年12月17日》

台湾観光年

科学教育新館がオープン

 計画から十七年、着工から四年を経てこのほど国立台湾科学教育館の「新館」が完成し、一月十五日に正式オープンした。 

 旧館(南海学園)が手狭になったため建設が進められていたもので、二十一億元(約七十三億円)をかけて、台北市の士商路と基河路口に建てられた。地下三階、地上十階の大型施設で、敷地面積は三万坪、旧館に比べ二十倍という広さだ。オープンを記念して、初日の十五日と十六日の二日間、施設が無料で開放され、小学生から大人まで大勢の市民が見学に訪れた。 

 館内の主な施設を紹介すると、地下一階に3Dミニシアター、一階には最新の4D仮想シアターがあり、立体映像だけでなく、噴水や煙、匂いなどの特殊効果も備わっている。三、四階が「生命科学」、五階と六階が「物理と地球科学」をテーマにした常設展で、七、八階の特設展示場は広さが千七百坪あり、現在「機械動物」をテーマにした展示が行われている。 

 国立台湾科学教育館新館付近には台北市立天文教学館、台北海洋館、美崙科学公園などがあり、一帯は台北知識園区を形成する。 

●国立台湾科学教育館新館案内

一、二階の公共スペースは入場無料。常設展:百元(約三百五十円)
3Dシアター:百元(約三百五十円)
4Dシアター:百元(約三百五十円)
特設展:二百元(約七百円)
場所:台北市士商路一八九号
《台北『聯合報』1月13日》

ユニークな私立博物館 

 台湾には故宮博物院を筆頭に、国を代表する優れた公立の博物館以外にも、篤志家により世界から収集された文物を展示する私立の博物館が数多く存在する。なかには規模や内容において公立にひけをとらない立派なものも少なくない。 

 ●八畝園美術館

 昨年十一月末にオープンした「八畝園美術館は、仏教文物を集めた展示館としては国内最大規模を誇る。台北市内湖科技園区にあり、外観は一般のオフィスビルだが、一歩中に入ると仏教文物が所狭しと並んでおり、その広さは千坪以上に及ぶ。おもに中国、東南アジア、スリランカなどから買い集めた収蔵品の数は一万点を超え、明代の高さが五メートルに及ぶ金の大日如来像、鉱石の一つ田黄鶏血石の世界最大級の原石、また歴史の最も古いものでは東漢時代の土で造られた駿馬など、貴重なものも多い。

 館内は東館、西苑、南楼、北堂に分かれており、東館が玉や小物類、西苑が大型の仏像、北堂には彫刻家・葉金龍による台湾産の玉で造った百点余りの彫刻品、南楼には世界のオークションで手に入れた宝石類がそれぞれ展示されている。 

 また、この博物館は展示だけでなく、国内で初めて文物の修復をおこなう専門施設を設けている。施設内には紙類、陶磁器類、木製品、石器類、銅製品をそれぞれ専門とする五人の技師が常駐し、修復にあたっている。ここには外部からさまざまな文物がもちこまれており、なかでも紙類は年数が古いものになれば紙そのものが崩れ、修復が困難なケースもあるものの、おおかたは専門技師の卓越した技術でみごとに修復されている。 

●玉器の博物館

 また、玉だけを集めた珍しい博物館もある。台北市南京東路の「玉器博物館」は、羊脂玉(羊の脂のような色で半透明の玉)やヒスイを専門に収蔵しており、殷代から清代までの代表的な玉器のほか、二十~二十一世紀の玉を使った彫刻や現代的なデザインの宝飾品も展示している。サロンでは玉器やジュエリー、珍しい文物の定期展示も行っている。
《『台湾観光月刊』2003年12月号から転載ほか》

マグロ漁業文化館がオープン 

 マグロの遠洋漁業高で世界第二位を誇る高雄市の市役所内に、このほどマグロ漁業文化館がオープンした。マグロの生態や漁業の最新技術、マグロと人びとの関わりなど四つのテーマで展示されており、参観者はゲームや模型などを通じて、マグロ漁業について楽しく学べるようになっている。
《台北『民生報』’03年11月27日》

お知らせ

台湾支援ROCKコンサート
日本公演(無料ライブ)

 中国の武力に反対し台湾支援を呼びかけるROCKコンサート「SAY YES TO TAIWAN」が日本で公演される。台北の二二八和平公園で三年前から開催されており、野外ステージには五千人を超える若者であふれかえる。 

日 時2月22日(日)午後4時半~
会 場 原宿アストロホール(東京都渋谷区神宮前4-32-12ニューウエーブ原宿B1)
※ライブは無料(ドリンク代のみ)
交 通 地下鉄千代田線「明治神宮前」駅またはJR「原宿」駅から明治通り渋谷方向へ右折すぐ
出 演 秋茜(日本/AKIAKANE exSOFTBALL)、閃霊(台湾/ソニック CHTHONIC)、Nipples(台湾/ニプルス)
ゲスト 林建良、謝雅梅
主 催 TRA(Taiwan Rock Ally)
問合せ EINSTEIN RECORDS TEL・FAX 047-449-6168

春 夏 秋 冬

 先月中旬のことだが、テレビを見ていて唖然とした。「スパイ容疑」とやらで中国当局に身柄を拘束された台湾人の企業関係者数人の顔が次々と画面に映し出され、台湾政府に対する批判がましいことを喋っているのである。もちろんこれは「取材許可」との名目で中国側が仕組んだ政治ショーだ。この映像は台湾でも放映されたが、即座に感じたのは“人権”と“人質”の二文字だ。 

 まず中国当局が取材を許可した1月16日、台湾では陳水扁総統が公民投票の設問内容をテレビを通じて発表した日だ。わざわざこの日を選んだことに、中国当局の政治的意図が明確にあらわれている。そこで思われたのが、北京でテレビに出演させられた人たちの人権である。この人たちは中国で経済活動に従事しているとき突然身柄を拘束され、しかも裁判等の正当な司法手順を踏んで「罪名」が確定したわけではない。もちろん行政院大陸委員会の調査では、この人たちに「スパイ罪」に該当するような痕跡は何もない。百歩譲ったとしても、まだ「容疑」である。それを「台湾人スパイ」としてテレビカメラの前に引き出すなど、いったいどのような感覚なのだろう。中国の当局者たちの念頭には“人権”の文字がまったくないのではないか。あったとしてもそれは政治目的のためなら一介の塵のようなものでしかないようだ。日本のマスコミも「政治目的か」「住民投票牽制か」等々のコメントをつけていたが、日ごろ人権を重視してやまない日本マスコミ界が、なぜこの点を突かないのだろうか。今回の政治ショーは、司法を政治の道具としか見なしていない北京の本質を十分に示している。 

 つぎに“人質”だが、テレビに出演させられた人々は、明らかに政治的な人質である。企業関係者やその家族など、中国に居住する台湾人は少なくない。中国政府は台湾企業の誘致や投資を奨励する一方において、その人員をいきなり「国家機密」や「軍事情報」を「収集した」との理由で拘束する。なにが国家機密でいずれが軍事情報かは、当局がその都度決めるのだから人質の種は尽きない。それを政治的な必要に応じて行使する。この点は北朝鮮の日本人拉致よりまだタチが悪い。(財)海峡交流基金会はすでに今回テレビ出演させられた人々の家族に「台商急難救助金」を贈っている。こうした中国での拉致事件はすでに百三十数件発生しており、台湾側の問い合わせに中国は何の回答も寄せていない。日本のマスコミには、こうした面にも注意を払って欲しい。     
  (K)