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  台湾週報2137号(2004.4.1) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
:::


台湾週報2137号(2004.4.1)

陳総統再選に世界から祝電
日本では再選祝賀会を開催

 三月二十日に投開票された選挙で陳水扁総統・呂秀蓮副総統が再選されたことについて、同二十五日までに、パナマ、パラグアイなど友好国のほか、日本、韓国、インドネシア、タイ、オーストラリア、イギリス、イタリア、オランダ、ドイツ、ロシアなど無国交国も含め、合計六十二カ国の政府および中央政府要人から祝電が寄せられた。また、米国上下両院議員からも多くの祝電が寄せられた。一方、米国務省は二十日夜、エリレ副報道官が「大勢の台湾の国民が民主的に投票権を行使したことを祝福する」との声明を発表した。

【外交部 3月25日】

●日本では盛大に再選祝賀会

 日本では森喜朗・前首相、平沼赳夫・日華議員懇談会副会長、麻生太郎・総務大臣、扇千景・前国土交通大臣および玉沢徳一郎・衆院議員ら多数の衆参両院議員が陳総統に祝電を寄せ、多くが選挙後の紛争が民主主義の精神に則って解決されることへの期待を表明した。 

 さらに三月二十四日夜には東京・池袋のホテルで「在日台湾同郷会」主催、「日本李登輝友の会」「在日台湾婦人会」共催による「陳水扁総統再選祝賀会」が開催され、金美齢・総統府国策顧問、羅福全・駐日代表ならびに西村真吾・衆院議員、中津川博郷・衆院議員、小田村四郎・拓大前総長ら国会議員、学者、専門家ら約五百名が出席した。席上、中津川氏は「台湾人の偉大な勝利」と評価し、金美齢氏は「人間の鎖運動が勝利への原動力になった」と指摘した。また羅代表は「台湾人の台湾アイデンティティーが固まりつつあることを証明するもの」と語った。
《台北『中央社』3月21~24日》


台南銃撃事件と総統選挙
政府と国民は冷静に対処

●銃撃事件の発生

 邱義仁・総統府秘書長は三月十九日午後三時三十分、総統府で記者会見を開き「陳水扁総統は本日午後一時四十五分、呂秀蓮副総統とともに台南市文賢路と金華路付近で車輌による選挙遊説中に銃撃され、総統は腹部を負傷し、副総統も右膝を負傷した。両名とも生命に危険はなく、意識もはっきりしており、現在台南市内の奇美病院で治療中である」と発表した。 

 同時に邱秘書長は「すでに国家安全機関は活動を開始しており、現在国家安全会議が開かれている。会議の結論が出次第ただちに発表する。なお国家安全局はすでに、もう一組の正副総統候補に身辺を警戒するよう伝えた。連戦氏と宋楚瑜氏の安全確保については政府と国家安全局が努力し、他に責任を転嫁したりはしない」と表明した。 

 また、邱秘書長は総統と副総統がともに全国民に冷静を保つよう呼びかけていることも同時に伝えた。

【総統府 3月19日】 

●国家安全会議の対応

 游錫堃・行政院長は十九日午後、国家安全会議の結論として、次の六項目を発表した。 

一、ただちに検察総長に検察、警察、調査局、海岸巡防署など治安機関上層部を召集し、犯人逮捕に全力をあげ、最短時間内で事件を解決するよう指示する。

二、検察、警察機関に、今夜中に捜査過程および最新情報を国民に発表し、人心の安定を図るよう指示する。

三、検察、警察機関に、全力をあげて各候補者、政党本部、選対本部の安全を確保し、いかなる事件の発生も防ぐよう指示する。

四、行政院副院長に対し、来週月曜日の株式、金融市場開始前に、財政部、中央銀行など関連省庁の会議を召集し、規定の財経対応計画に沿って株式市場と金融市場の正常な運営を確保するよう指示する。

五、選挙管理機関に、警戒を強め、明日の投開票をとどこおりなく推進するよう指示する。

六、全国民に冷静と理性を保ち、共同で社会の安定を維持するよう呼びかける。
【行政院 3月19日】

公民投票実施で民主制度深化
両岸問題も平和解決する利器  

 公民(国民)投票に参加した人数は有権者総数の四五・一六%と四五・一一%となり、この公民投票は法的には無効となったが、すべての手続きを順調に進めたということは、制度の問題において台湾直接民主の先例を作ったと言える。この意味においては台湾民主主義の深化であり、各種選挙のほか国民が直接政策を決定するという直接民主制度を確立し、台湾民主化の新たな一ページを記したことになるのだ。

 今回の公民投票の二つの設問に効力は与えられなかったものの、つい最近まで「洪水」とか「猛獣」などと喧伝されていた公民投票ではあるが、結局は広範な討論と合法的な手続きを経て実施された。つまり今回の公民投票の意義は、政策決定の制度を固めたところにある。また、今回の公民投票は効力を発揮できなくなったものの、陳水扁総統が再選されたことにより、中国は台湾国民が中国を脅威と見なさず、多くの台湾人が統一を希望しているなどと誤った判断ができなくなった。公民投票は中国に台湾攻撃の口実を与えるだけだという主張もあったが、中国に誤判断させなくなったことにより、危険は逆にある程度縮小できたと指摘できる。

 台湾が公民投票の制度を確立したということは、統一か独立かといった問題、新憲法制定問題など、これまでイデオロギーの問題とされていた争点が、具体的な民主制度によって解決が可能となったことを意味する。中国は公民投票を台湾が独立に向かうための準備と見なして警戒しているが、もし中国が自国の制度に自信を持っているなら、台湾の公民投票は統一のための利器ともなるのである。中国が武力で台湾を侵犯しようとするなら、かならず国際社会の介入を招く。もし台湾国民が、中国は一緒になってもよい社会だと判断するなら、両岸統一はまったく平和的かつ合法的に解決することができるのだ。中国は台湾の公民投票制度に敏感になる必要はない。逆に問題を平和的に解決できる材料を台湾に提供すべきであろう。

《台北『中国時報』3月21日》

選挙民はすでに選択を示した
選挙結果を覆す行為は不適切

 今回の選挙の結果に異議を唱える声がある。どこが不公平で、どこに問題があるのだろう。台湾の選挙民は、民進党政権にふたたび今後四年間の舵取りを委ねたのだ。陳水扁総統の得票率は五〇・一%に達した。四年前の三九%を大きく上回っている。いかなる政治的カラーを持った人といえど、この事実は否定できないだろう。ところが、国民党と親民党はこの選挙の公平性と有効性に異議を唱え、司法機関に票の封印を要求し、選挙委員会に再審査を求めようとしている。たとえそうであっても、現在の結果をくつがえすことはできないだろう。 

 台湾はすでに米国を範として民主政治を施行している国である。それなら二〇〇〇年の大統領選挙でブッシュとクエールの勢力が均衡し、接戦の末ブッシュが勝ちを制したことも範とすべきであろう。もし台湾の選挙制度で当時の米国の選挙を測れば、現在の米国大統領はブッシュではなくクエールだった。クエールは得票総数ではブッシュを五十万票上回っていた。しかし米国は各州の選挙人を獲得するという選挙人制度を採っている。フロリダ州でブッシュはわずか五百票の差で同州の選挙人を獲得し、そして選挙に勝ったのだ。クエールはその後裁判にまで持ち込んだが、結局現制度による選挙民の決定をくつがえすことはできなかった。これが民主主義であり、法治主義であるのだ。台湾もそれに倣うべきである。

 今回の選挙で、差はわずか二万九千余票で、得票率では〇・二%の僅差であった。当然悔しさはあろう。だがこれによって国民党や親民党が終日を迎えたわけではない。両党は将来に目を向けるべきである。後継者を育成し、四年後の捲土重来を期すべきであろう。 

 陳水扁総統においては、半数近くの選挙民が自分と対立しているということを認識し、選挙によって生じた傷跡の修復に尽力すべきである。過度の夢を追おうとすれば、それは危険というほかはない。どんな夢も現実に合わせなければならない。
《台北『中国時報』3月21日》

ニュース  

台湾弔問団が山中氏葬儀に参列
姚院長率いる弔問団に厚遇

 三月十七日、「日華議員懇談会」会長の山中貞則・元衆議院議員の告別式が東京都内でおこなわれ、姚嘉文・孝試院長率いる台湾の弔問団がこの葬儀に参列した。

 告別式は自民党と遺族の合同であり、小泉首相をはじめ、中曽根康弘氏ら歴代の首相など、政財界から千八百名が参列した。 

 姚嘉文院長を団長、許水徳・亜東関係協会会長、陳鴻基・立法委員、羅福全・台北駐日経済文化代表処代表らを団員とする台湾の弔問団一行は、小泉首相、遺族とともに最前列で葬儀に出席し、そのなかで姚院長がとくに「中華民国総統代理」と紹介されて追悼の辞を述べるなど、随所で日本側からの厚遇を受けた。

 一行はまた、同日夜に、日華懇副会長の平沼赳夫・経済産業大臣主催の宴席に出席し、麻生太郎・総務大臣、中川昭一・経済産業大臣、扇千扇・参議院議員、藤井孝男・衆議院議員らの歓待を受けた。
《台北『中央社』3月18日》

カナダで台湾を主権国家とする判決
航空機事故で「国家免責法」適用

 シンガポール航空は二月十日、二〇〇〇年十月三十一日に桃園国際空港で起きた同空港会社の飛行機事故で負傷したカナダ人が、同航空会社に対し起こしていた訴訟に関し、同社が台湾民用航空局を共同の賠償責任者として起こしていた提訴を取り下げた。本件について、民航局はカナダのケベック高等裁判所裁判所に「国家免責法」による責任の免除を申し入れていた。

 本件についてカナダ連邦ケベック高等裁判所は、外国として台湾に対する国家免責法の適用を認め、その判決文のなかで「国家が他の国から承認されているか否かは、国家が存在している事実を妨げるものではなく、国家の誕生と存在こそが重要なのである。台湾は固定の領土、国民、有効な政府、および他国と交流する能力という国際法の四つの要素を備えている」として、同国の裁判所で初めて台湾を主権独立国家として確定する判決を下した。
《台北『中央社』3月13日》


基隆が初の自由貿易港区に
十一億元の投資を創出

 游錫堃・行政院長は三月十五日、「基隆自由貿易港区の申請通過祝賀および埠頭建設展示」の記念キャンペーンで、「基隆自由貿易港区が今年九月から運営を開始すれば、わが国で初の自由貿易港区となる。これに伴う新規投資額は十一億五千万元(約四十億円)、二千百以上の就業機会が創出され、園区内のメーカーの生産高は七億元(約二十三億円)に達する見込みで、基隆地区に経済利益をもたらし、同地域の競争力を向上させるだろう」と述べた。 

 游院長はまた「基隆港は地理的条件に恵まれ、台湾の政治経済、文教および消費の中心に近接している。自由貿易港区となれば、多くの産業を誘致し無限のビジネスチャンスを生み出すはずだ」と強調し、「政府は基隆への交通ルート整備のため、二〇〇九年までに萬瑞高速道路に大華交流道路を建設し、中山高速道路と連結させる工事を完成させる予定だ」と今後の計画を語った。
【行政院新聞局 3月15日】

政治献金法が通過
選挙時は許可、政党は専用口座開設

 立法院は三月十八日、政治献金法について審議をおこない、個人への献金を参選時の一定期間内に限り、政党が献金を受ける際には専用口座開設を義務付けることなどを定めた法案を可決した。

 同法によれば、献金を受けられるのは、政党、政治団体および参選予定者に限るが、中国資本、香港資本や外資企業からの献金は認めず、違反者には五年以下の懲役が科せられる。このほか、国営企業、政府が資本の二割以上を有する民間企業、政党が経営または投資する企業、政府、政党と巨額の取引があるかまたは主要公共事業の契約履行期間中の企業や財団法人、宗教団体などの献金は認めず、受領者には献金没収のうえ同額の罰金、寄付者側には献金額の二倍の罰金を科す。また、同一政党もしくは政治団体に寄付できる金額は、個人で年間三十万元(約百万円)、企業は年間三百万元(約一千万円)以内と規定している。
《台北『聯合報』3月19日》

電力の安定供給は経済発展の要
台電会長が語る電力事業

 最近中国で発生した深刻な電力不足は、中国に進出している台湾企業を困難に直面させ、電力の普及と安定供給が産業と経済の発展においていかに大切であるかを改めて浮き彫りにした。こうした状況に鑑み、聯合報では林能白・台湾電力公司会長と呉再益・台湾総合研究院企業および経済研究所所長を招き、台湾の電力供給と整備に関し「経済第一、電力重視」と題した座談会をおこなった。以下はその要旨である。

 翁台生(聯合報副編集長、司会):これまで若干の取材をしたなかでわかったことだが、海外の環境保護団体に言わせると、台湾電力公司(以下、台電)と言えば、「大きすぎる権力を持つ国営企業」のイメージが強いようである。電力供給力が国力を示す一種のバロメーターであった時代、台電が国内の電力事業を一手に占有し、政府の全面的支持を受けてきたためだろう。

 実際、台電の功績は確かに大きく、国民の期待に応えてきた。近年、中国やフィリピンなどの発展途上国で電力不足が起こっているだけでなく、米国のような大国でさえ、電力のインフラ整備不足が原因で大規模な停電が発生しているなか、台電は九・二一中部大地震の電力復旧に尽力し、とりわけ新竹、南部科学園区などの電力復旧については、速やかな対応が海外でも評価されている。台湾経済が持続的、安定的に発展していくためには、電力の十分な供給が不可欠であり、台電は未来の台湾における経済力と生命力の主要な源となる。

電力は経済の動脈 

 林能白:確かに、電力と経済の発展は絶対的関係にある。電力設備が整備されてこそ、企業経営は永続的に発展することができる。過去の一時期、電力不足に悩まされた時代もあったが、この数年、電力の安定供給度は大幅に向上している。さきほどの話にも出たが、米国やカナダなどの先進国でも、管理の不適切さや投資戦略のまずさなどから大規模な停電が発生している。つまり電力設備はただ建設すればよいのではなく、常に改善とメンテナンスをおこない、質を保つことが重要なのである。私は自分が台電に来て以来、「電力の安定供給と信頼性」を最優先の経営目標として事業を展開してきた。

 呉再益:この数年、台電は一度も電力制限の事態を起こしておらず、これはまさに、林会長が言うところの「電力供給の品質が主要な任務」ということを実証している。台電は国営企業のなかの優等生であり、経営業績は常にトップクラスで、毎年少なくとも三百億元(約一千億円)以上の収益がある。

 むろん、ここまで来るには様々な苦労があった。一九七〇年代の発電所建設が主流だった時代があり、その後二度のオイルショックによって国内経済が大きな打撃を受け、供給予備率(ピーク需要時の電力負荷に対し発電設備が余分に保有する容量の割合)が増えすぎたため、発電所建設は暫時見合わせられた。その後の経済復興に伴い、電力需要もふたたび目覚しく増加した。九〇年代初期には電力システムの供給予備率は四~五%まで下がり、電力供給が非常にタイトになったため、政府は国際競争力を確保し民間投資を促す目的で、電力事業を初めて民間企業に開放した。そして現在、供給予備率は一五%と安定した数値で、先進諸国と同様のレベルになり、国内における電力のインフラ面もすでに十分整備されたと思われる。

電力不足はすでに解消

翁台生:ただ一部には、電力不足が解消したのは、最近の経済不振で電力需要が減少したためだという見方もあるが。

林能白:電力制限の回数が減少したことは経済成長の鈍化となんら関係はなく、その主張は当たっていない。実際、台電の統計では、電力使用量は二〇〇二年、〇三年とも前年比で五%台の伸びとなっており、成長幅は決して低くない。

 電力供給が十分であるかどうかは、電力供給量を見るだけでなく、電力供給網の整備も重要な判断要素である。発電所の建設は「点」の仕事、供給網の整備は「面」の仕事であり、より時間と手間がかかる。わが社では全社を挙げてこれにとりくみ、二〇〇三年に整備した変電施設と電力供給網は前年の二倍に達した。また顧客の満足度を表す電力供給の信頼度も、〇二年、〇三年はそれぞれ、前年比一九%増および四〇%増であり、二年連続で大幅に上昇した。

呉再益:電力供給の質向上については、台電の設備内部の電線消耗率、外部の停電回数という二つの面から検証することができる。過去五年における電線消耗率は五%で、日本とほぼ同率であり、米、英よりも低くなっている。また停電回数も大幅に減っており、停電後の復旧速度も格段に速くなった。

企業管理について
 
林能白:電力供給の質の向上と、関連設備の整備はわが社の主要業務だが、設備は人が管理するものであるため、究極はやはり社員の質という問題が重要になってくる。わが社の社員は、伝統的に仕事に誇りを持ち誠実だが、こうした良い伝統を維持するために、私はいつも社員に「台電はサービス業」だと強調してきた。これまで台電は発電所や変電施設などの建設によって主導的に顧客の需要に応えてきたが、今は顧客の観点に立ち、それぞれの需要に合ったサービスをおこなう時代となった。台電はこうした顧客の需要に積極的に関心を寄せ、理解するよう務めなければならない。例えば停電後の復旧状況など、設備の建設、整備以外に電力供給に対する情報提供もその一つだ。

呉再益:民間企業の電力産業への参入が進み、最大の競合相手として台湾プラスチックなど大手企業も参画してくるなか、主導的に顧客の声に耳を傾けるという姿勢は非常に有効だと思う。しかしこの際、決して独りよがりでなく、顧客と双方向の意見交換をおこない、相手が必要としているのはなにかを見極めなければならない。今後は販売主導の時代となり、いかに電力を販売し、顧客を獲得し利益を上げるかが重要となってくる。台電には四つの訓練センターがあり、社員に対し販売管理などの専門知識を養うことも可能だ。

未来への展望

林能白:今後みずからの地位を確立することが、電力事業自由化後の台電の課題である。現在台電が定めている今後の目標は、世界レベルの電力グループとなることである。なぜなら電力事業の自由化後は、国内業務は他社と分けることになり、台電の業務を引き続き拡大するには、二つの道しかない。一つは国内で企業の多角化を図ることだ。海外の大手電力会社は多くの子会社を持っているが、台電は国営企業であるためこの分野の開拓が比較的遅い。またもう一つは国際市場に進出し、メンテナンス業務などを拡大していくことも考えている。

 また一方で、企業イメージの刷新も図りたい。台電は長い間、人々から尊敬される企業だったが、最近はIT産業が急速に発展して脚光を浴びており、台電は次第に重視されなくなってきた。われわれのさらなる努力により、イメージを刷新できると確信している。

 新たな経営理念としてもっとも重要なのは、思いやりと刷新である。思いやりとは、すなわち自分の立場をサービス業と認識し、積極的に顧客の要求に関心を持ち、その需要を理解してそれに応えることであり、刷新とは、台電は百年の歴史を持つ老舗企業だが、新しい挑戦ができるということを社員に知らしめることで、刷新を提唱する目的とはすなわち会社の機動力を上げることだ。

 さらに、会社体系の面できわめて重要な六項目としては、供給信頼度、顧客満足度、利益、労働者の安全、社会からの関心度と刷新が挙げられる。

呉再益:台電はその企業性質から制限が多く、多角経営は比較的難しい。しかし今後、台電が運送、燃料など周辺の関連産業を多角的に統合することは可能だと思われる。また台電は全国各地に営業拠点を有しており、これは多角経営化にはメリットがある。台電が業務の付加価値を追求するためには、本業以外の業務範囲を模索し、異なる分野の事業を開拓する必要がある。
《台北『中国時報』3月10日》

政治の知恵が試されるとき
『自由時報』(3月21日)

 三月二十日の総統選挙で、陳水扁総統と呂秀蓮副総統が再選された。われわれは二人に祝意を述べると同時に、落選した連戦・宋楚瑜両氏にも労いの言葉を贈りたい。そして有権者には早く平常心を取り戻し、普段の生活に戻ることを呼びかけたい。

 今回の選挙戦はこれまで以上に複雑で、最後まで勝敗の予測がつきにくく、さらに投票前日には総統、副総統が銃撃される事件まで発生し、有権者の心は激しく動揺した。また過去二回の総統選挙と同様に中国の脅威は台湾海峡に緊張をもたらし、国際社会も台湾の総統選挙に大きな関心を寄せた。こうしたさまざまな圧力にもかかわらず、台湾の国民は最後まで理性を失わず難関を克服し、ふたたび民主の輝かしい勝利を収めたのである。

 選挙結果は陳・呂陣営が三万票近い僅差で連・宋陣営を下したことから、今回の選挙戦がいかに激しい接戦であったかが伺い知れる。得票率をみると、陳・呂陣営が五〇・一一%で、前回の三九・三〇%を大きく上回った。このことは、陳総統の施政、とくに台湾の主権と民主改革の堅持を多くの有権者が支持したことを示している。連・宋陣営の得票率は前回の両者の得票数を合わせた数をなお下回ったが、このことは彼らの選挙公約とは関係ない。選挙の勝敗にどれほど深い政治的要素が含まれ、このことが台湾の民主と将来の発展にどのような影響を及ぼすのか、両陣営、国民も一緒に考える必要がある。

 陳総統は三万票という僅差ながら半数以上の得票率を獲得した。しかし、逆にいえば残りの四九・八九%の有権者は陳総統を支持しない、つまり過半数は得ても絶対多数の支持は得られていないことになる。陳総統には今後四年間、意を尽くした施政を行い、支持者の期待に応えるだけでなく、その他の意見にも充分配慮し、より大きな包容力と尊重を示してほしい。

 今回の総統選挙はもともと台湾のことではあるが、さまざまな要因から国際社会の関心を集め、とくに銃撃事件は全世界を震撼させた。幸い台湾の国民と民主はすでに成熟しており、そうした暴力には屈せず、秩序正しく選挙を終わらせた。両陣営の得票差はわずかしかないため、双方ともより民主的、謙虚な態度で国民の決定を受け止め、支持者に自制を促すべきである。そうしてはじめて選挙は円満に成功したと言えるだろう。

 連・宋陣営は僅差で敗れ、今回の選挙が不公平だったとして選挙の無効を訴えた。選挙に関する争議は法に基づき解決されるべきで、同陣営の支持者は冷静さを取り戻し、社会の安定を揺るがしてはならない。

 台湾の直接総統選挙は今回を含めて三回しか実績がない。しかし今回の投票結果から、有権者の主体意識がより強まったことが伺われ、このことは台湾の民主のさらなる成熟の現われにほかならない。われわれは今後成熟した与党と野党を持ち、国民と国家の発展のために尽力してくれることを強く望んでいる。さきの二・二八人間の鎖運動以来、世界は台湾を注視している。今回の総統選挙の模様も、各国が生中継でこれを伝えた。台湾の国民はすでに国際社会から支持されている。いま両陣営ともに政治の知恵が求められている。

教育改革について思う①
李遠哲・中央研究院院長

 一、社会通念と社会の価値観

 昨年の正月過ぎ、私はある女子高生の親から一通の手紙を受け取った。その内容は、私の心をひどく痛ませた。有名な女子高に通うその生徒は成績も非常に優秀で物理が好きなため、大学は物理学を専攻したいと考えていた。だが、母親は彼女に医学部の推薦試験を受けさせた。 

 彼女はとても正直で、推薦試験の面接の際、医学部が第一志望ではないことを話し、結局推薦を受けられなかった。そこで大学の共通試験を受け、有名な私立医科大学に合格した。だが母親はそれで満足できず、彼女に公立のもっとよい大学の医学部を再挑戦するよう望んだ。新学期が始まって間もなく彼女は精神に異常をきたし、とうとう精神科の病院に通うまでになったのである。 

 こういう話は何もいまに始まったことではない。子どもの将来に物質的な豊かさを願わない親はいないし、幸福を願わない親もいない。ただ、時として子どもが何を幸福と考えているか理解できない親がいるのも事実である。一つ慰めといえば、台湾大学医学部の教授の話だが、社会がより開放的に、価値観がより多様化するにつれ、さきの女子高校生のようなプレッシャーから精神科を訪れる若者のケースはだいぶ減少しているという。 

 女子高生のその後については訊ねるに忍びなく、わからない。ただ彼女が苦境を無事に乗り越えてくれることを願うばかりである。だが結末から言えば、われわれは必ずしも一人の優秀な医師を育てるとは限らず、逆に情熱あふれる一人の物理学者を失なったかもしれない。これは社会通念に関わる問題であり、この社会通念というものは往々にして社会の価値観に左右されるものだ。 

 二、社会の変遷と教育改革 

 一九九四年、私は教育改革に携わり、改革には体制の建て直しも必要だが、最後には社会通念と価値観の問題に直面せざるを得ないことを痛感した。枝葉末節の改革は容易だが、社会通念や価値観という根本を変えるのは非常に困難である。教育改革は社会全体の改革に関わる問題であり、目下の社会環境において、教育の基本は先行して大幅に変更してはならないのだ。 

 過去数十年間、教育が台湾の経済発展、社会建設、文化の創造にきわめて重要な役割を果たしてきたことは誰しも否定しない。どの世代の教育者も、薄給の待遇にありながら、奉仕の精神で各分野に多くの人材を育成してきた。だが、社会が急速に変化するなか、教育もその他のシステム同様、いつのまにか疎漏が生じてしまったのだ。現在、社会の表舞台に立つ人びとの言動を見聞きするたびに、一体これまでの教育のどこが間違っていたのか自問せずにはおられない。 

 一九九〇年代をはさんで、世界は劇的に変化した。東西冷戦の終結は政治と文化に大きな衝撃を与え、多くの国々が冷戦のイデオロギーから脱却した。社会と文化が開放され、社会に活気と生命力がみなぎった。台湾の生命力は戒厳令の解除によってもたらされた。九〇年代、さまざまな改革要求が嵐のように巻き起こり、教育もその一つであった。 

 当時の教育問題は非常に深刻で、悲痛な決意のもとに改革を実行することが求められた。当時の郭為藩・教育部長は、教育のさまざまな問題を検討するため教育改革審議委員会の発足を提議した。 

 九四年九月二十一日、行政院教育改革審議委員会が設立され、私は当時の連戦・行政院長の求めで委員会の座長を務めた。当時私は海外から帰国し中央研究院の院長に就任したばかりで、座長の務めを果たす時間的余裕とその能力が自分にあるのか迷いあぐねていた。 

 私は両親がともに教師という家庭に生まれ育った。二十年近く学問に親しみ、仕事もこれまで科学と教育から離れることはなかった。この間、優秀な科学者も育成し、科学教育の改革にも携わった。歳月の大半を学校で過ごし、教育の目的について理解しているとは言え、自分の経験には限界があることも自覚している。幸い、委員会は合議制であったため、座長の仕事はメンバーを集めて状況を把握し、討論を通して多数意見を集め、いくつかの議題について分析と提議を行うことであった。メンバーは各種学校の校長、教師、経済人、文化人、政府官僚、私を含めて三十一人であった。 

 私は当時、連戦院長の教育改革への熱意に応え、座長という重責を引き受けた。こうしてそれから二年間、週末はほとんどそのために使われた。 

 現実との乖離を避け、各分野の教育改革に対する意見を聞くため、二年間、私は委員数名とともに週末と夜の時間を利用して、国内の各都市、町村をくまなく歩いた。こうして二百回ほどの座談会や検討会を行い、問題点を探し出し、意見をまとめ、委員会の各分会に持ち帰り、それを全体会議で再度検討し、議題を整理した。その一方で世界各国の教育改革事例を学び、その成果と問題点を討議し、解決の道を模索した。私たちは半年に一回、行政院に審議内容の報告書を提出した。そして二年後に最終的な「教育改革全体審議報告書」を提出した。 

 九六年十二月二日に同報告書を提出し、委員会は任務を終えて解散した。私は報告書の「序」の部分に、特に強調したい点として以下の文章を綴った。「われわれの委員会は二年間限りの臨時の組織である。教育改革に関する重大法案と政策の立案、審議、提議、諮問を預かったが、長期にわたり教育の実務を行う組織ではないことを、いまだ社会の大勢の人が理解していない」 

 不幸なのは、あれから何年も経つ今日、いまだに委員会の役割と任務を理解していない人がいることである。ここ数年に行われた大小の教育改革は、すべてがわれわれ委員会の提議に基づき実行されたとは限らない。たとえば、世論を賑わせている「小中学校九年一貫カリキュラム」がその例だ。報告書を見れば、われわれが一度もそのような提議をしていないことは明らかである。事実はそうだが、教育改革が叫ばれて久しいことや、社会の期待があまりにも大きかったため、「九年一貫カリキュラム」は充分な討議と準備がなされぬまま、あっという間に実行に移された。たとえそれが委員会とは無関係と言いながら、委員会の設立が教育改革への環境と期待を醸成した事実によって、委員会自体も間接的に人びとの信頼を失うことになったのである。

三、多元的文化の教育理念 

 私は豊かな時代に生まれなかったが、それでも多くの人より幸運だったのは、若い頃よい教育を受ける機会に恵まれたことである。新竹高校から台湾大学、清華大学、米カリフォルニア大学へと進み、そこでオープンな教育の尊さを痛感した。オープン教育とは規範や規律を無視するのではなく、一人ひとりの潜在能力と可能性を発揮させる機会を多く提供するものだ。委員会は合議制を採り、いかなる決定も合意によっていたため、報告書の建議は個人の意見は少なく、議題によっては長期間繰り返し討議されたものだ。 

 報告書は七年前に出されたが、内容は今も色あせていない。たとえば、第二章の教育理念は次のようである。「オープンな社会の特徴は多元的価値に寛容で、しかも社会的マイノリティーや弱小団体を尊重し、個性に合った教育を提供することにある。この目標を達成するため、エスニック、地域、収入、性別、体質や心理の区別なく、弱者の教育の機会と待遇には、より大きな関心と保障が与えられる。われわれはエリート教育も重視しながら、一方で教育の普及と全体のレベルアップにも務めなければならない。それは教育の機能を発揮させると同時に、社会的道義にもつながるものである」。 

 また報告書第三章の全体提議のなかで、われわれはより一歩突っ込んだ形で、教育に携わる各機関に、多元的文化の教育を要請した。それは以下の通りである。「多元的文化の教育理念は、人の価値を肯定し、個人の潜在能力の可能性を重視する。それはみずからが属する民族文化への愛惜だけでなく、他の民族文化や世界の異なる文化をも尊重する能力を身に付けさせる。われわれは社会正義の原則のもと、性別や社会的弱者、民族、心身障害者の各々のニーズに特に配慮し、かれらの教育の発展を支援していかなければならない」 

 こうした多元的文化の教育観は、異なる政治的立場においても、人と人、各民族、文化の違いを認め合うことの上に築かれるもので、それらの違いは肯定し尊重されなければならない。多元的文化論は民主的な生活の重要な基本であり、われわれの文化はこれによってより豊穣なものとなるのである。だが一方で、社会的強者や主流の社会に、弱者に対するより大きな尊重と保護を求めるものでもある。 

 このため報告書のなかで、われわれは特に心身障害者教育の強化と、先住民教育の重視、および男女の平等教育の徹底を建議した。先住民教育については、各教育機関が互いの文化を認める教育目標を定め、先住民文化を継承しながら現代生活への適応にも配慮するよう要請した。われわれは当時、文化アイデンティティーの対話を意識した。つまり、みずからの文化に対するアイデンティティーは往々にして別の文化との対話あるいは連動によって確立される。われわれは先住民により多く教育の機会を与え、かれらが社会から排除されることなく、円滑に現代の社会生活に溶け込めるよう建議した。

 男女平等の教育徹底については、報告書のなかで特に各地方自治体および学校が男女平等教育委員会を設置し、問題の処理と実施の監督を行うよう建議した。

 われわれはまた、小中学校の現行教科書、児童書、漫画を全面的に見直し、伝統的で画一的な男女の役割の記述を修正し、女性に関する題材を増やし、男女平等に近づける必要があると考えている。 

 イデオロギーと言うと、すぐに政治を連想する人もいるが、民族主義や父権主義はわれわれが日常生活のなかでしばしば直面するイデオロギーだ。われわれの教科書、児童書、漫画、メディアの内容は民族や女性への差別があふれており、それらが無意識に繰り返されるうちに、いつのまにか疑問を持たなくなり、民族主義や父権主義が強固なものとなっていったのだ。これらの建議は政治的な配慮でもなく、特に驚くに値するものではない。 

 われわれの社会はデリカシーに欠けている。民族と女性への差別は珍しいことではなく、ときに差別用語さえ使われる。まくしたてている当人はさらさら気にする気配はない。社会的強者やメジャーな人びとは自分たちと異なる人びとを差別し、化け物扱いにさえしてしまう。同性愛者やエイズ患者、外国人労働者、大陸の配偶者に対する差別や偏見は、ここ最近の現象である。こうした観点から見ると、七年後の今日、報告書で建議された内容は少しも色あせていない。 

 報告書を貫く精神は、一言でいえば、違いを尊重し多元的であることを肯定した理念のもと、一人ひとりに適性な教育を行うことである。より明確に言えば、いかなる生徒も放棄せず、一人ひとりの潜在能力と特質が尊重され、それを伸ばす充分な機会が与えられることである。報告書第二章第四節で、われわれは次のように建議した。「現代生活への適応に支障をきたさないとの原則のもと、伝統文化の優れた特質の保存または転化に配慮し、それらの特質を現代と融合させることにも気を配らなければならない。とくに中華の伝統文化には『いかなる人にも等しく教育を施し、個性に合わせた教育を行う』優れた教育思想がある。全体的配慮と全国民が参加するという原則のもとにこれを推進していかなければならない」  

「いかなる人にも等しく教育を与える」ことは理想に過ぎないという人もいるかもしれない。だが、改革には理想があってしかるべきであり、理想なくして何を改革できるだろう。教育の平等はエリート主義に反対するものではなく、生徒一人ひとりの潜在能力、性向や特質が異なっていることを認めているにすぎない。教育とは本来多面的であり、進学重視の知育偏向は、それとは異なる特質を持った大勢の生徒を犠牲にしてしまう。みな同じ生徒であることに違いはない。どうしてそれらの生徒を放棄していい理由があるだろうか。   

 (以下次号)

台湾観光年

主要ゲートで国際コンペ実施

 交通部観光局は「二〇〇八観光客倍増計画」の一環として、国内の主要観光地および施設の景観改善に取り組んでいる。第一弾として、四カ所の国家風景区内の観光地について昨年末国際コンペを実施した。その第二弾となるのが空港や港などのゲート部門で、このほど行われた国際コンペではスペイン、英国、オーストリア、日本、ドイツ、米国などから十一カ国、四十八の作品が寄せられた。 

 対象となったのは、桃園国際空港、台南の安平港、高雄の新光埠頭、基隆港の海洋広場の四カ所。このうち桃園国際空港のプランは、日本の団紀彦建築事務所が受賞した。一部で「米ワシントン・ダラス空港の模倣」とも揶揄されてきた桃園国際空港は、これによりイメージを一新させる。受賞作品は、詩的で禅の雰囲気が漂う優雅なデザインで「開放的で壮大、かつ現代的」と評価された。 

 また、安平港は「歴史と現代の対話」をイメージした、台湾の成功大学建築学科大学院生のグループが受賞した。高雄の新光埠頭も台湾のグループが受賞し、こちらもベテランではなく若手建築家が受賞し、話題となった。(ちなみに、基隆港は審査そのものが延期となった) 

 桃園国際空港は早くて三年、安平港と新光埠頭はそれぞれ二年を目処に完成する予定である。

《台北『民生報』3月8日》

山陽、山陰へチャーター便 

 長栄航空は三月末から四月末までの約一ヶ月間、台北と日本の鳥取、香川(高松)間にチャーター便を就航させる。五日に一便就航し、高松空港に降り立ち、帰りは鳥取空港または米子空港から台北へ戻る。 

 これまで台湾人にとって、山陰、四国地方はあまりなじみがなく、島根県を例にとると、台湾からの観光客は年間で千人に満たない。このため各地方自治体は、みずから台湾へ乗り出し観光をPRしたり、台湾のメディアを各地方に招待するなど、積極的に誘致を行っている。春爛漫のこの時期、桜の花見にはもってこいで、旅行社では山陰、四国の桜の名所はもちろん、出雲大社、松江城、鳥取砂丘、玉造温泉などの観光地をめぐるパックツアーを相次いで打ち出している。 

 なお、六月には中華航空が広島に定期チャーター便を就航させる予定だ。

《台北『民生報』3月7日》

伝統市場の味をネットで注文 

 台湾の各地の伝統市場には、地元の人びとに愛されている惣菜や食品がある。中には口伝えで評判を呼び、わざわざそれらを求めに外部から訪れる熱心な消費者もいるほどだ。たとえば、台北市南門市場の金華火腿(ハム)、新竹士林市場の貢丸(肉団子)、花枝丸(イカ団子)、嘉義朴子第一市場の花枝丸などがその例だ。これまでは、わざわざ現地に出かけなければ手に入らなかったそれらの食品が、四月末からはインターネットで注文、宅配方式で購入できるようになる。 

 これは、経済部が千二百万元(約四千二百万円)かけて国内十五カ所の伝統市場から一千店舗を選び出し、ネット上で主な惣菜や食品を公開するものだ。

 経済部は昨年、試験的に一部の伝統市場の食品についてネット上での注文、宅配を試みたところ、生産者にも消費者にも好評だったため、本格的なシステムとして整備することにした。

 ホームページの名称は「網路市集」(http://www.mymarket.com.tw)。現在一部の食品について、すでに注文、宅配を行っている。このウェブサイトは各地の伝統市場がそれぞれ管理しており、商品は産地直送形式で、信用できる。
《台北『聯合報』3月9日》

紅毛城が改修工事で休館 

 淡水の紅毛城は改修工事のため今年三月から休館中。開館は二〇〇五年七月の予定。

宝島あれこれ

台湾最大の蝶の谷を発見 

 台東林区管理処と趙仁方・明新科技大学助教授はこのほど「台東県大武苗圃に台湾最大の蝶の谷を発見した」と発表した。 

 ことの起こりは三年前の二〇〇一年十一月。同地で研究者の手によって一匹のアゲハチョウが捕獲され、マーキングから日本の大阪からおよそ一カ月間かけて二千キロ離れた台湾に飛来したものとわかった。その後の調査で、同地には六種類のアゲハチョウが越冬のため飛来し、その数は三十万匹以上と推測されている。かつて台湾には屏東の山中に百万匹を超える蝶の谷が確認されたが、その後消失してしまったため、大武苗圃が現在台湾では最大という。 

 蝶の飛行コースをさらに調査するため趙助教授は三月下旬、国内の蝶学界や保護団体と協力し、台北、高雄、台中、台東などで蝶にマーキングを施した。趙助教授らは今後十年間、毎年数回にわたって国内各地でマーキングを行い、蝶の飛行コースを観察することにしている。これを機会に日本や韓国などとも情報を交換し、蝶の生態について国際交流を深めたいとしている。
《台北『中国時報』3月9日》

大型犬専用バスを検討 

 台北市で現在、大型犬も乗車できる専用バスの運行が検討されている。台湾では小型犬はバッグや籠に入れればバスや新交通システム(MRT)に乗車できるが、それらに入らない大型犬は他の乗客への配慮などから乗車できなかった。 

 台北市の統計によると、犬を飼っている家庭の三分の一が体重十五㎏以上の大型犬で、その数は約七万匹となっている。 

 台北市は飼い主や動物愛護団体などからの要請に応え、市内のバス会社と協議した結果、大佳河濱公園や景美河堤などのドッグランが整備されている場所を通るバス路線について、大型犬も乗車できる専用バスを運行させる方向で検討している。
《台北『聯合報』3月11日》

文化・芸能情報

台湾の文献資料集が出版

 行政院文化建設委員会(以下、文建会)はこのほど、遠流出版と共同で台湾の各種文献資料を集大成した本を出版した。

 文建会は、三年前から中央研究院、台湾大学、国家台湾文学館など国内の主な学術機関と共同で台湾の文学、歴史などの各種文献資料を収集、整理し、編纂作業を進めてきた。

 今回出版されたのは、『全台詩』五冊と『台湾史料集成』の中から「明清台湾◆案彙編」八冊。台湾史の専門家でもある呉密察・文建会副主任委員は「政府と学術機関、民間が協力し、資料の収集から、整理、研究、出版へとこぎつけた。これは台湾の歴史の基礎を定める未曾有の大規模な事業だ」と、その意義について語っている。

 呉主委によると、歴史書については以前、台湾銀行経済研究室の周憲文によって『台湾研究叢刊』が出版されたが、その後長い歳月が経っており、内容も削除、修正すべきところが多く、「早急に資料を再整理し、台湾史の研究の参考にする必要があった」という。出版は、今後十年、二十年と続けられる見通しだ。

 台湾大学歴史学科の李文良・助教授によると、『台湾史料集成』八冊は一五四七年から一六八三年までを対象としており、清が台湾を領有する以前の台湾と周辺海域に関する内容が主なものとなっている。史料は当時の政府の保存資料と地方誌が基になっており、将来は二百冊の出版が見込まれている。

 『全台詩』は明清以降台湾に残されている漢詩をまとめたもので、今回出版した五冊は明末から一九二〇年までの約八十万字が対象となっている。同書を編纂した施懿琳・成功大学教授によると「台湾で漢詩は広く公開、出版されてこなかったため、資料収集と整理にはとても苦労した」という。時代的な交錯を避けるため人物を中心に編集されており、今後一九四五年までの詩について出版される予定だ。

 なお、今年六月には『台湾歴史辞典』の出版も予定されている。
《台北『民生報』3月10日》

雪山トンネル西行線が貫通
北宜高速道路は〇五年にも全線開通

 三月十四日、台北―宜蘭を結ぶ北宜高速道路の一部であり、もっとも難しい工事とされていた雪山トンネルの西行線(西側主トンネル部分)が正式に貫通した。

 歴史的貫通の瞬間には、林陵三・交通部長がみずから発破のスイッチを押し、爆音とともに最後の岩壁が吹き飛ぶと、粉塵を貫いて一筋の光が差し込み、トンネル内に歓声が響き渡った。

 国内で初の東西を横切る高速道路となるこの路線は、全区間三十一キロ、このうち十二・九キロを占める雪山トンネルは、全工程中もっとも重要な区間で、さらにそのなかの西行線は地質がもろく、断層に大量の地下水脈があるため、世界でも有数の困難な工事とされていた。一九九三年七月に着工以来、九十八回の倒壊と三十六回の湧き水に遭い、掘削機が埋没するなど、工事は非常に難航した。同工事の責任者の一人によれば、これまで旧正月は毎年トンネルで年を越し、着工当時中学生だった息子はすでに成人したという。

 林部長は「施工グループの不眠不休の努力により、西行線は二カ月早く貫通した。東側主トンネル部分も〇四年九月には貫通の予定で、これで雪山トンネルの全工程が完成することとなる。このスピードで行けば、二〇〇五年には高速道路の全区間がほぼ間違いなく開通する」と工事の状況を発表した。

 一方、游錫堃・行政院長はこの三日後の三月十七日、雪山トンネル貫通の祝賀式典を主宰し、「非常に困難な工事となった雪山トンネル西行線がついに貫通した。これにより北宜高速道路の予定通りの開通が保証されただけでなく、東南アジアで最長、世界で五番目に長い高速道路のトンネルが完成することになる」と祝辞を述べた。

 游院長は、国家建設のために努力した工事の関係者に対し感謝とねぎらいの意を表し、「西行線の貫通は、わが国の歴史に残る記念すべき一ページとなった。来年、北宜高速道路が完成すれば、もともと二時間の台北―宜蘭間が三十分で移動できるようになり、台北盆地と宜蘭平原の距離が格段に縮まる。今後宜蘭の産業発展に大きく寄与することとなるだろう」と語った。また、「行政院は近日中に、新竹工業科学園区の宜蘭拠点を設立し、さらに近い将来宜蘭全体の経済発展を促すため、宜蘭にも科学園区を設立することを決定する」と表明した。

 游院長はさらに、一九七〇年代以降三十年の間、宜蘭の人々がもっとも待ち望んでいたのは、国立大学の設立と高速道路開通だったが、国立大学は二〇〇二年八月一日に設立され、高速道路も来年には開通して、まさに今夢が実現されようとしている。高速道路の開通は、宜蘭の歴史にとってきわめて大きな朗報である」と述べ、「北宜高速道路は竣工後国道五号線となり、将来的には台北―宜蘭のほか、蘇花高速道路とも連結し、宜蘭を中心に花蓮、台東に伸びる交通ルートが形成されることになる。これは宜蘭、花蓮、台東三地区に大きなメリットをもたらすこととなるだろう」と強調した。

 また、北宜高速道路の開通が台湾東部にもたらす変化と影響に対応するため、游院長は地方自治体に一連の関連措置をとり、宜蘭に移動する住民および産業に関し適切な対策を講じるよう呼びかけ、さらに行政院みずからも省庁にまたがる委員会を設立し、各自治体の対応をバックアップすることを明らかにした。

 式典終了後、游院長はみずから台北、宜蘭の民間人代表と政府関係者を率いて、ジープで雪山トンネル内を視察した。
《台北『中国時報』3月15日ほか》

お知らせ

「台湾総統選挙の分析」講演会

 三月二十日に行われた総統選挙は僅差で陳水扁総統の再選が決まった。今回の選挙は与野党の一騎打ちとなり、接戦のため最後まで予測がつかず、激しい選挙戦が展開された。選挙の結果について、その背景や勝敗の要因を分析し、台湾の外交、政治、経済への影響、とくに今後の中国との関係について、社会学者の中嶋嶺雄氏に語っていただきます。 

日 時 4月13日(火)午後6時~8時
会 場 日本プレスセンタービル9F宴会場(東京都千代田区内幸町2-2-1)
℡ 03-3503-2711
交 通 営団地下鉄「霞ヶ関」駅、都営地下鉄三田線「内幸町」駅下車
会 費 二千円(軽食、資料代込み)
主催・問合せ アジア問題懇話会
(東京都港区三田5-18-12 大陸問題研究協会内 )
℡ 03-3444-5745

春 夏 秋 冬 

 台湾が世界から注目された。日本のメディアも当日は無論、一カ月ほど前から盛んに報道しはじめ、その日が近づくにつれボルテージも上がっていった。日本のメディアが台湾にこれほど強い関心を示したのは、前回の選挙以上であろう。その総統選挙結果の詳細は本誌2ページからの記事で報道している通りだが、これに関する評論は次回に譲るとして、ここでは日本においてなぜ台湾の報道が大事なのかを考えてみたい。 

 ここ数年、日本のメディアが台湾に関心を持ち、今回の選挙に限らず経済や文化面でもかなり多く報じるようになったことは、台湾のためだけではなく、日本のためにも非常に喜ばしいことだと思う。かつて日本では、マスコミが台湾をほとんど報道しなかった一時期がある。「日中友好」ブームのころである。その時でも、台湾の新聞では日本の動向はことこまかに報じられていた。それだけ台湾は、日本の重要性を知っていたことになる。この観点から言えば、ここ数年日本のメディアに台湾が登場する頻度が増えたのは、とりもなおさず日本が台湾の重要性を認識するようになったからと言えよう。 

 たとえば、日本が安全保障問題の重要性を認識し、日米安保のガイドラインを見直し、防衛関連法をつぎつぎと整備するようになったのは、北朝鮮の問題もあろうが、八年前の台湾の総統選挙で中国がミサイルを放ったことも、影響していないとは言えまい。あのとき四発のうち一発が、石垣島の近海に撃ち込まれたのだ。しかも中国の特殊海洋調査船が日本のEEZ内で不審な活動をつづけていることも、日本の新聞はしきりに報じている。三月の全人代で中国の軍事費拡大が明らかにされた時も、日本の各紙は台湾の新聞同様に大きく報じていた。こうした日本社会における危機への認識が、マスコミにおける台湾報道の増大につながっていると言えるのだ。 

 現在日本のメディアは12社が台北支局を開設している。台北に支局を置いている新聞社がわずか1社であったころとは隔世の感があるが、多数の日本のメディアが台北に支局を置くようになってから、1999年の台湾中部大地震、2000年の総統選挙、昨年のSARSの流行と台湾のWHO加盟問題、さらに今回の総統選挙と公民投票等々、いずれも定点観測による詳しい報道がなされた。 

 これからも、新たな台湾の動きをできるだけ多く報じていただきたい。日本社会が台湾を詳しく知ることがまた、東アジアの安定につながるのだ。
  (K)