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  台湾週報2138号(2004.4.8) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
:::


台湾週報2138号(2004.4.8)

選挙公明化のため票再集計
陳水扁総統が結果の受け入れを言明

 選挙後の混乱が続くなか、総統府において総統と五院院長との懇談会が 3月23日に開催された。同懇談会には、陳水扁総統、呂秀蓮副総統、邱 義仁・総統府秘書長、游錫?・行政院長、王金平・立法院長、翁岳生・司 法院長、姚嘉文・考試院長、銭復・監察院長が出席した。このなかで陳総 統は、事態収拾のため早期の票再集計を望んでいることを明らかにした。 選挙後の資料としてその談話の内容をここに掲載したい。

 ●爆竹かと思った銃撃

 正式な談話の前に、まず話したいのは、私が本当に負傷したことに疑念を抱いている人がいるということだ。傷口を公開すべきかどうか、こうした場合、国家の指導者として見せなければならず、また病院長の説明もあり、負傷は事実であったとほとんどの人が信じた。だが、まだ疑っている人がいることは、まことに遺憾である。 

 三月十九日、私たちは台南市街を遊説し、沿道の人々は熱狂し、爆竹の音は大きく、それは非常に感動的であり、事件が発生するなど思いもよらなかった。最初、私は爆竹が当たってケガをしたと思った。選挙を戦った人なら、興奮状態のなかに爆竹でケガをするのは、毎回経験することであり、私も過去に何度か経験している。だから私はあのとき、最初は爆竹の大きいのが当たったと感じたのだが、痛さは尋常ではなかった。耐えたのは、車上での状況が沿道の人々の意気に影響を及ぼしてはならないと思ったからだ。 

 そのあと、となりの呂副総統の膝から血が出ているのが目に入り、私は「あなたにも当たりましたか」と言ったものだった。その後耐え切れなくなり、後部座席の護衛の人に傷の程度を見てもらった。このとき初めて腹部から流血していることを知った。車を停めることなく、沿道の人々はまだ異常に気づいていない。選挙運動最後の日でもあり、私はなお運動を続けようとした。副総統は「尋常ではない。早く医者に診せるべきだ」と主張した。このあとフロントガラスに疵が入っているのに気がつき、ようやく爆竹ではなく、別に原因があることが理解できた。シークレットサービスも、早急に医者に行かねばならないことを認識し、車のスピードを上げた。 

 奇美病院に到着し、車を降りるとき病院は担架を用意し、断ると車椅子を持ってきた。私はそれも断り自分で歩いた。私は国家指導者であり現役の中華民国総統である。だから簡単に倒れることはできない。また私は総統候補者であり、この意味でも倒れることはできなかった。このために私は痛さを堪え、歩いて病院に入り、診察を受けたのだ。 

 私はこの事件の捜査が迅速に進み、早急に犯人の動機などが解明されることを望んでいる。すべての事実が早期に解明されることは、誰よりも私が一番強く望んでいるのだ。

 ●一時は敗北を覚悟

 三月二十日、開票が進む過程において、心情的に非常に複雑なものがあった。選挙前、わが方の民意調査センターの調べによれば、わが方が優勢であり、銃撃事件の発生する前の十八日の調査でも、わが方が優勢と出ていた。この選挙戦において、私は勝利を確信していた。だが私は楽観主義者ではない。関係者を引き締めた。開票のようすを、私は家族と一緒に見ていた。四百万票、五百万票と開かれ、わが方は二十万票、三十万票と差をつけられていた。心中穏やかではおられなかった。まだ未開票が百万票、二百万票と残っており、二、三十万票の挽回は容易だと口で言うのは簡単だが、私は内心敗北の心の準備をした。 

 私は過去に二度の選挙に敗北を経験している。台南県長選挙と、二期目の台北市長選挙だ。一九九八年の第二期台北市長選挙では、私は負けるなどとは思っていなかった。われわれの民意調査でも、わが方有利と出ていたからだ。だが敗れた。支持者も私も、これを冷静に受け入れられるだろうか。私は悩んだ。だが、負けは負けであり、一票でも負ければ負けなのだ。当時、人々は泣き、私も泣いた。だが、それを他の人々に見せることはできない。私は人々の前に出るとき、堅忍不抜の精神を持たねばならなかった。そうして私は支持者たちを説得した。こうして台北市長選挙は、平穏裡に終えることができたのだ。 

  私は二度の敗北を経験しており、当事者として、また支持者の人々も、その時は選挙の結果が受け入れられなかった。だからこそ私は、そのとき自分のことよりも支持者の気持ちになって考えることが必要だと悟った。だから私は運動員にも支持者の人々にも、また意見のある人々にも、柔軟に対処することが必要であり、過激な行為を起こしてはならず、愛と包容力をもって事態を受け入れなければならないと説得したのだ。

 ●票再集計は法に照らして

 ここで気になるのは、ある人々が私を票の操作をした総統と言っていることだ。これは私の人格に対する最大の侮辱だ。私はもとより、行政部門も二十万人を越える選挙処理人員も、票の操作などまったくしていない。だが疑いの声を上げる人々がいる。これは私も選挙処理人員もとうてい受け入れられないことだ。それでも疑念を持つなら、票の再集計を請求すればよい。また無効の訴えを起こせばよい。それらは法によって付与された合法的な権利なのだ。われわれはそれを尊重しなければならないのだ。 

 二十一日午前、私は党幹部に電話をかけ、関係部門にこの問題の解決方法を研究することを要請するよう指示した。私は票の操作などありえないことを知っており、再集計を恐れたりはしない。だが、票の再集計は法によって処理されなければならない。その規定は厳格であり、誰かが再集計を要請したからすぐできるというものではなく、誰かが全部の票の検査を要求したから全部の票をすぐ検査できるというものではない。それらはすべて、法によって進められなければならないのだ。 

 政治的解決ができるかどうかという問題もあるが、行政部門は検討の結果、不可能との答えを出した。もしそれを行えば、法の規定というものが死んでしまうからだ。総統副総統罷免法は他の議員の罷免法とは異なり、検察官と裁判官は再集計をできるが、選挙委員会や行政部門にはそれをする権限は与えられていない。それは厳格な規定であり、したがって選管や行政が再集計を発動することはできないのである。 

 また一方、裁判所にその申請が出されており、このため裁判所は票に封印をし、証拠保全の措置をとっている。つまり問題はすでに司法に移されているのだ。総統も行政部門も司法を尊重しなければならず、司法に干渉したり、まして指揮するようなことは断じてできない。

 私が党幹部に政治的解決の可能性を検討するよう電話をかけたのは、侮辱的な疑いを早く晴らすため、裁判所が早期に票の再集計を行うことを望んでいるという心理からだ。実際に私は、票の再集計が早く行われることを望んでいる。たとえ全部の票を再集計するとしても、また再集計が前倒しされるにしても、私はそれを歓迎する。なぜなら、票の操作などありえず、私は再集計を恐れていないからだ。だが法に照らし、それを即時に行うことはできない。私も気持ちは焦っているのだ。

 また、無効票の多かったことは問題にはならない。今回、なぜ無効票が多かったかは、人々が十分に理解していることだ。今回は所定の箇所に印判を押す方法がとられ、それは新しい方法だったのだ。紛らわしいのはすべて無効票とされたからだ。これら無効票の大部分が誰の票であるか、早く明確になることを、私は望んでいる。

 ●選挙の実施は合法的

 また、台南銃撃事件のあと、なぜ選挙を中止しなかったかと、選挙を実施したことを非難する人もいる。だがこれは、立法院を通過した「総統副総統選挙罷免法」に明確に規定されている。候補者が死亡したときにのみ選挙は中止されるのであり、それ以外は、たとえ候補者が負傷したとしても、選挙は実施されるのである。これは厳然たる現行法の規定なのだ。 

 なかには「九・二一大地震」のときのように、票の再集計も含め、総統が緊急命令を出すべきだったと主張する人もいるが、今回の事件は私が当事者であり、事件の真相が不明なうちに、当事者が緊急命令を出せば、問題の解決をかえって複雑にさせるばかりだ。大地震とは事情が異なるのだ。

●当面の急務は社会の平穏

 最後に、私は台湾の団結、両岸の平穏、社会の安定、経済の繁栄を強く願っているが、当面の急務は、選挙に勝ったものの台湾を敗北させてはならいという点である。選挙の勝敗は小さなこととは言えないが、選挙に敗れ台湾まで敗れさせるのは問題である。私は、連戦氏、宋楚瑜氏ら野党陣営の方々、さらにその支持者の人々、また私の支持者の人々も含め、共同で努力することを願っている。だから私は各界の人々と、台湾の団結について話し合い、多くの意見を聞きたいと願っている。

 両岸関係の安定については、両岸の平和的な相互連動のメカニズム構築を進めなければならない。このため私は、李遠哲氏に、効果的に両岸関係の正常化に向け邁進する方途を検討していただくよう要請している。私は、両岸関係の重要性を十分に認識している。

 台湾の団結、両岸の平穏、社会の安定があってこそ、経済の繁栄も得られるのだ。したがってここに聞こえてくるさまざまな不満の声、意見などに私は大きな関心を持ち、細心に耳を傾けている。それだからこそ私は、票の再集計が早急に行われることを望んでいるのであり、また与野党協議による政治的解決も考慮したのである。そのためには、与野党が共同で法律の問題を克服し、さらにまた司法を尊重しなければならないのである。

 ●事態収拾の四原則

 ここに私は、四つの原則を提示したい。それは耳を傾ける、理解を示す、法理に基づく、団結するの四点である。異なる意見に耳を傾け、反対の声も聞く。選挙に敗れた人の心情、とくにその支持者の人々の心境を理解する。ただし台湾は民主法治の国であり、法理の追求と遵守は非常に重要なことであり、われわれは民主法治の社会を崩壊させてはならないのである。

 またわれわれは、台湾に亀裂を生じさせ、分裂させてはならない。二千三百万人の台湾国民が団結することが必要なのであり、そうしてこそ社会の安定が得られ、さらにまた経済の繁栄も得られるのである。だから私は、連戦氏のおっしゃった言葉を、非常に重要と見なしている。それは、人々が冷静を保ち、理性を保つことを望むとおっしゃった一言である。この冷静さと理性は、与野党に限らず、勝った側も敗れた側も、共に努力し追求しなければならないことなのである。

 ●票再集計の結果は断固受理

 票の再集計についてだが、私はここで明確に述べておきたい。私はそれを一〇〇%受け入れる。その結果がどうであれ、私は必ず受け入れる。連氏にも宋氏にも、再集計の結果を必ず受け入れるよう、ここでお願いしておきたい。その結果によって、また別の問題を持ち出したりすべきでない。そのようなことをすれば、問題はいつまでも解決されない。

 私は街頭に出ている群衆にきわめて強い関心を持っている。社会全体の秩序のため、経済の繁栄のため、国家の法治のため、こうした集会が合法的かどうか、連戦氏と宋楚瑜氏に十分考えていただきたい。私は社会が正常に復することを願っている。各自が職場に戻り、学生は学校に帰り、また人々が家庭に帰ることを願っている。それは私の願いであり、人々に強く呼びかけたい。

 本日、ご参加いただいた五院各院長に心より感謝するとともに、皆様が少しでも私の話したことを理解して下さるよう希望する。

【総統府 3月23日】

週間ニュースフラッシュ

 ◆大陸委員会が公民投票の結果について論評

 行政院大陸委員会は三月二十日夜、陳水扁総統が両岸相互連動構造確立を選挙公約に掲げていたことに言及し「中国は民主体制による台湾の民意を直視し、わが方との対話を再開し、両岸関係の改善に応じるべきだ」との論評を発表した。さらに「公民投票について異なる意見が出たが、与野党ともに設問の内容に高い支持を表明しており、中国は軍事威嚇に反対し平和を求める台湾国民の意志を直視し、両岸の現状を尊重して平和安定構造の構築に前向きに取り組むべきだ」と述べた。
【行政院大陸委員会 3月20日】 

 ◆三四五経済目標を三年以内に達成

 民進党首脳部は三月二十日夜、総合的な刷新研究開発費を対GDP比三%以上に引き上げ、失業率を四%以内に抑え、経済成長率を五%以上に引き上げるという、陳総統の公約を、三年以内にすべて実現すると表明した。
《台北『経済日報』3月21日》 

 ◆両岸交渉が順調に進めば、年内に両岸直航可能

 林志明・交通部航政司長(局長)は三月二十二日、「陳総統は昨年八月に両岸直航政策について準備、交渉、実践の三段階政策を発表し、行政院大陸委員会もすでに両岸平和安定相互連動推進小組を立ち上げており、両岸交渉が順調に再開されたなら、年内に直航は可能だ」と述べた。
《台北『工商時報』3月23日》 

 ◆専守防衛を基礎に戦力向上を継続

 総統選挙後最初の立法院国防委員会が三月二十二日に開催され、林中斌・国防部副部長が出席した。林副部長は「中国は台湾への武力侵攻を放棄しておらず、わが方は生存と発展確保および二千三百万同胞の生命と財産を護るため、専守防衛と有効な抑止力維持を基本に、戦力向上を継続し、戦争抑止と台湾海峡安定維持の目標を達成する」と強調した。
《台北『青年日報』3月23日》 

 ◆台湾の農業従事者人口は六十六万七千人に

 行政院主計処が三月二十三日に発表した統計によれば、二〇〇四年一月現在の農業従事者人口は六十六万七千人、全就業者数に対する比率は六・九%と過去最少となった。なお一九九三年は百万五千人、同一一・五%、二〇〇一年は七十万六千人、同七・五%であった。
《台北『工商時報』3月24日》 

 ◆新十大建設予算の立法院早期通過を

 游錫堃・行政院長は三月二十五日「選挙後の混乱で国家建設が遅延することがあってはならない。行政院は立法院との協調に努力しているが、立法院に新十大建設関連予算案通過の予定がないのは、国家建設に深刻な影響を及ぼす。立法院は早急に同予算案を通過すべきだ」と指摘した。
【行政院新聞局 3月25日】 

 ◆中央選挙委員会が陳水扁総統の当選を公告

 中央選挙委員会は三月二十六日、選挙罷免法の規定に沿って陳水扁総統・呂秀蓮副総統の第十一代正副総統当選を正式に公告した。これに関して林佳龍・行政院スポークスマンは同日「行政院はあらゆる突発的事態に対処する用意を整えているが、国民は冷静に対応して欲しい」との談話を発表した。
【行政院 3月26日】 

 ◆日本交流協会と米ホワイトハウスが陳水扁総統に祝電

 日本政府の対台湾窓口である交流協会と米国ホワイトハウスは三月二十六日、陳水扁総統に再選の祝電を打った。陳総統は同二十七日、これに対し「すでにある基礎の上に今後四年間、台米、台日相互関係の強化を図り、共同でアジア太平洋地域の安定、安全、繁栄をさらに一歩進めたい」と表明した。
【総統府 3月27日】

総統選挙票再集計は粛々と実施
立法院は早急に総統罷免法改正に着手せよ

 三月二十日に行われた第十一代正副総統選挙の結果について、政府に対して票再集計を要求する声があることに関し、游錫?・行政院長は三月二十三日、記者会見を開き「与党立法院党団はすでに正副総統選挙罷免法の部分改正案を提出し、同時に行政院は関連措置を検討している。立法院は早急に与野党協議のうえ改正案を通過すべきであり、それによって今回の総統選挙にさかのぼって票再集計を行い、現在の紛争を解決すべきだ」と表明した。 

 游院長はこのなかで「現行の正副総統選挙罷免法の規定によれば、行政機関には行政の一環として票再集計を行う権限はない。三月二十日に選挙の結果が発表され紛争が惹起されたあと、陳水扁総統は二十一日に行政院に対し、行政として票再集計が行えるかどうか検討するようにとの指示を出した。行政院はただちに『与野党が協調して政治的に解決し、法律の問題を克服するように』との処理方針にしたがい、与党立法院党団は同罷免法の改正案を提出し、同案の立法院通過後、法の適用を今回の選挙までさかのぼり、行政としての票再集計を実施する計画である」と明らかにした。 

 さらに游院長は「一部には中央選挙委員会がただちに票再集計を行うべきだとする声があるが、これは同罷免法の規定に合致しない。同罷免法第五十三条第五項前段は『前項選挙の票は検察官あるいは裁判所が法によって職権を行使する以外、開くことはできない』と規定しており、選挙推進機関あるいはその他の行政機関に再集計を行使する権限はなく、もし実施した場合、それは違法行為となる」と説明した。 

 さらに「一部の人は、前立法委員の黄信介氏がかつて花蓮での立法委員選挙のあと票再集計を要求したことを例としてあげているが、政府は法に照らし、これも不適切だと解釈する。なぜなら適用される選挙罷免法は異なっており、正副総統選挙罷免法にはそのような規定はなく、当時検察官が刑事訴訟法によって票を差し押さえ、司法による再集計を行ったのであり、行政として行ったのではない」と指摘した。 

 さらに「王金平・立法院長は、総統が緊急命令を発動して票再集計を行うべきだと建議しているが、行政院は検討した結果、これも不適当との結論に達した。なぜなら緊急命令は国家が緊急危難に遭遇した場合、法の不備を補うためのものであり、今回はやむを得ざる例外的措置には当たらない。もし総統が緊急命令を発動したなら、今回は総統自身が利害関係者であり、総統の権利濫用との疑いが生じ、国際的にも多大な誤解を招き、わが国の国際イメージならびに対外活動にも影響を及ぼしかねないものとなる」と指摘し、「立法院は現在会期中であり、現行法に不足の部分があれば、立法院が立法措置によってその不足を早急に補うことは十分に可能であり、総統が緊急命令を発動する必要性は見当たらない」と表明した。

 このほか、連戦・宋楚瑜陣営が台南銃撃事件の検証を求めている件に関して、游院長は「陳総統が銃撃された物的証拠は明白であり、検証を行使する人員は公務員であり、わが国は民主政治で報道の自由も保障されており、公務員は法によって行政を行っているのだ。他からの圧迫を受けるようなことがあってはならない」と表明した。 

 さらに游院長は「総統選挙の結果に対する争議が発生してより、行政院は陳総統が示した公開、透明、柔軟な処理という原則に沿って、最大の誠意と善意をもって事態に対応している。司法機関も関連の申請を受理し、徹夜で票を封印した。このように政府の関係各機関は最大の努力をしている。与野党とも最大の誠意と弾力性をもって事態の収拾に努力すべきだ」と指摘した。

【行政院 3月23日】

ニュース  

財界が事態の早期収拾要請
野党のデモ隊支持は問題

 林義夫・経済部長は三月二十二日、海外華僑代表、国内経済団体代表らと会見し、選挙後の混乱のなかに政府が経済発展の環境維持に努力していることを表明した。

 このなかで呉王小珍・米国商会会長は、司法による票封印について「これは民主政治の過程の一部分であり、平和、民主、透明のもとに票再集計が進むことを期待する」と述べた。   幸殷訶・欧州商務協会理事長は「議会は反応する時間があるはずだ。抗争を早く終結してほしい」と希望を述べた。黄茂雄・工商協進会理事長は「現状が心配だ。野党は経済回復の契機を逃してはならず、非理性的な抗争は慎むべきだ」と指摘した。許勝雄・電子電器公会理事長は「司法が票を封印したことで、野党の抗争活動は一段落を告げねばならない」と述べた。徐義雄・中小企業協会副理事長は「国民は冷静に。事態はすでに司法に提訴されており、司法を尊重すべきだ」と主張した。
《台北『自由時報』3月23日》

抗争と銃撃事件の早期解決を
游錫?・行政院長が強調

 游錫?・行政院長は三月二十四日、行政院院会(閣議)で中央選挙委員会と内政部、法務部の現状説明を聴取したあと「行政院はすでに与党立法院党団と協議し、党団は正副総統選挙罷免法修正案を提出した。行政院は票再集計の関連措置を進行中であり、選挙結果に関する紛争の早期解決を図っている。台南で総統と副総統が銃撃された事件については、治安機関が全力をあげて捜査を進めている。最短時間内に事件の真相を明らかにし、不必要な臆測を排除しなければならない」と語った。

 同時に「選挙に勝敗はつきものであり、敗れた側とその支持者たちの心境を政府は十分に理解している。ただし台湾は民主法治の国であり、結果がどのようであれ、選挙に関する紛争は合法的な手順で解決されなければならない。過激な言動や群集心理への支持は慎むべきだ」と、国民党と親民党がデモ隊と歩調を合わせていることを批判した。
【行政院 3月24日】

日台間の関係強化を望む
両国の緊密化は双方の利益

 許水徳・総統府資政は三月二十五日、台北で開催されている第三十一回「中国大陸問題」フォーラムで「東アジア新形勢下の台日関係」と題した講演を行い「中国は経済が成長し、胡錦濤の登場後、米国との協調も進め、大国としての役割を積極的に担おうとしているが、台湾は八〇年代にすでに民主化を進めている。日本は時代に合わない対台湾政策を改め、相互交流のレベル向上を進めるべきだ。さらに台湾との自由貿易協定締結を促進するとともに、台湾の国際組織参加を支持し、台日安全保障体制を確立すべきだ。日本は自国の国益を中心にすべきで、中国への遠慮は不必要だ」と主張した。同フォーラムで藤井孝男・衆院議員は「台湾海峡両岸の政治的安定は日本にとって最大の安全保障となる。地政学上、日本と台湾の関係は密接不可分であり、利益を共有している。このため両国は共同で双方にとって有利な戦略を追求すべきだ」と述べた。
《台北『中央社』3月25日》


日台友好の歴史に新たな頁
レベルの高い青少年の意識

 日本工業新聞、産経新聞主催、行政院新聞局共催による「日台文化交流青少年スカラシップ」が「台湾で思う存分やってみたいこと」をテーマに募集した絵画、書道(自由課題)、作文の優秀賞が次のように決まった。▽絵画:「台湾の街を歩く」片山紘美(高校生)、「創夢茶」吉岡美紗世(高校生)、「想い出と笑顔」石田佳子(中学生)

▽書道‥「魏霊蔵薛法紹造像記」田中智貴(高校生)、「臨 寸松庵色紙」武士田綾子(高校生)、「真剣な姿勢」土井明世(中学生)

▽作文‥「十字路に立つ」(大賞)宮川和子(大学生)、「日本統治時代の正と負の遺産」神長久美(大学生)、「たった一つのしたいこと」李怜佳(高校生)、「日本の朋友、ビバ台湾」池山歩(高校生)、「小さな国の大きな使命」工藤晋太朗(中学生)、「台湾で心の交流を……」神戸友加(中学生)

 いずれもレベルが高く、日台新時代を思わせるものが感じられた。
《台北『中央社』3月25日》

政局の早期安定と迅速な三通開放を
選挙後の経済政策に何を求めるか

 三月二十日の総統選挙は熱戦の末に陳水扁・呂秀蓮正副総統が再選を果たしたが、野党候補が選挙の無効を訴えるなど、かなりの混乱をもたらし、経済発展と社会秩序への影響を憂慮する声が高まっている。

 こうした状況に鑑み、経済日報ではこのほど、経済界の専門家および業界トップを招き、選挙後の経済、金融政策における問題点について、総統選挙特別フォーラムをおこなった。以下はその要旨である。

企業は社会の安定を優先
施振榮・宏碁(エイサー)集団会長

 民主政治の発展には時間が必要であり、社会のリーダーたるもの、模範となる役割を果たさねばならない。施政者もまた、台湾の民主化の範となるべき存在だ。今回の選挙はあまりに接戦だったため、確かに「慎重な票の再集計」が必要と思われるが、政治的衝突が長引き民主政治の発展を妨げることのないよう、事態は早急に収拾されるべきである。 

 企業の立場で言うなら、企業の責任者も一社会のリーダーであり、決して周囲の波に呑まれ動揺することがあってはならない。企業とは常に社会の安定に寄与すべきもので、いかなる事態にも平常心で対応してこそ、安定した力を発揮できるのである。今回の選挙後起こった争議が、民主と法治のもと、理性的に処理されることを願ってやまない。 

 台湾の未来は「法治精神」と「民主の素養」のなかにあり、その過程では少なからず問題にぶつかるだろう。しかし台湾の民主化と法治化は進歩しており、この点について私は楽観視している。民主政治にはその優位性があり、また弱点もある。台湾における民主化は、他国家に比べて急激に進化したため、多少の衝突が起こるのはやむを得ないことで、こうした衝突や矛盾が、国民に民主政治への認識をより深めさせ、台湾の民主化を成熟させていくのである。 

 政治とは国民のものであり、経済に直接影響するが、また法治精神と民主化の素養は、経済発展の基礎とも言えるのだ。政治は国のもっとも根本的な要素であり、全国民と政治家は台湾の民主政治のレベル向上のために努力しなければならない。

 今回の事態がどのように終結したとしても、今後野党は与党を監視する立場に立ち、与党は『誠実、公平、透明、責任』の基本原則のもとで施政にあたることを求めてやまない。政府は三通、企業の大陸進出などの主要な経済政策に関し、産業界と緊密な意思疎通をおこない、しかるべき政策を明確に打ち出し、その推進に責任を担うべきである。そうしてこそ初めて、企業の安定した発展を促すことができるのだ。

両岸交流は実務レベルで
洪奇昌・立法委員 

 両岸問題について、政府は今後、安定した実務的態度で臨むべきである。今回の総統選挙での熾烈な戦いは、台湾の経済、産業、株式市場などに暫定的な影響を及ぼしたが、総体的に見て、台湾の資本市場は健全であり、台湾経済の基盤が揺らぐことはないだろう。 

 長い眼で見れば、陳総統の再選により、民進党はいっそう安定した姿勢で両岸問題に当たることができると思われる。台湾と中国の経済貿易関係は、ヒト、モノ、カネすべての面ですでに緊密化しており、いかなる政権が施政に当たろうともこの関係は途切れることはない。 

 だからこそ私は政府に提言したいが、まず人の交流について、われわれは事務的手段でこれに着手することができる。例えばチャーター便の就航だが、毎週固定で互いに二~三便を飛ばす方法なら、制空権の問題に触れず主権の問題にも抵触しない。また貨物輸送の直航も、台湾の安全保障に支障をきたさないことを前提に、早急に開放されるべきだ。 

 両岸関係を正常化するには、政治的立場に固執せず、両岸交流の実質的問題について一日も早く対話メカニズムを起動させることだ。中国からの観光客受け入れなど、実行し易い問題から先行して着手する方法が、三通の即時全面開放よりさらに意義があると思う。 

 政府はこれまでも一貫して経済、金融および資本市場の健全化に尽力し、中国に進出した台湾企業の台湾での株式上場なども進める方針だが、今後はさらに、持ち株会社制度など台湾の大手企業の世界進出を促す措置を積極的に推進すべきである

 今後政府が実務的態度で両岸関係に臨み、国内企業、外国企業が投資し易い環境を整備し、国際社会において台湾を重要な存在とならしめ、未来に向けていっそう発展していくことを切に願うものである。

現状を打開し両岸ともに発展の道を
黄茂雄・工商協進会理事長 

 政府は今後、両岸関係、世界保健機関(WHO )加盟などの問題について、積極的に国際社会と足並みを揃え、台湾の僻地化を回避しなければならない。問題となっている選挙後の票再集計については、政府は法の規定に基づきこれを処理し、早急に社会の安定と沈静化に努めるべきである。 

 三通は企業界がもっとも注目する問題だが、それ以外にも台湾企業に対する投資保護協定、税の減免措置など、両岸で迅速な方法による対応が待たれる問題は多く、政府は政治的立場を暫時棚上げにして、より良い方法を講じて処理することが望まれる。人と航空機が第三地区を経由しなければ往来できない非効率的な現状を解決するため、政府は柔軟な措置をとる必要がある。中国の指導者も世代交代したばかりであり、双方は政治的対立を回避しつつ、実務的方法で交渉を再開すべきだ。両岸関係がより良く進展し、台湾企業が中国の経済発展のなかで主要な存在となることを期待する。 

 二〇〇八年の北京五輪までに、両岸問題の安定したバランスを図る時間はまだあり、双方ともに積極的に交渉を進め、ともに勝利を分かち合う新たな局面を切り開くべきだ。 

 私は、台湾がこの二年歩んできた経済路線は正しく、政府は産官学界と連携し経済発展のための主要なポイントを掴みつつあると思う。台湾の発展は、経済の発展にかかっており、どの党が政権をとるにせよ、経済第一が主要な目標であることに変わりはない。私は工商協進会理事長として、客観的な中立の立場で、今後も政策に関する提言をし、企業界と政府との橋梁としての役割を担っていきたい。

台湾を世界の金融センターに
許勝雄・台湾電機電子工業同業組合理事長 

 現在、ハイテク産業は国際的競争が非常に激しく、安定した国内環境によってこれを支える必要がある。したがって産業界は安定的発展ができる環境を求めており、選挙結果がこのような争議にまで発展したことには憂慮を隠せない。この問題が短期間で解決し、経済への衝撃を最小限にとどめることが望まれる。事態の収拾が最終的にどうなろうとも、民主的プロセスにより得られた結果を承認すべきだ。

 産業界の立場で言うなら、今後政府は次の四項目を早急に推進すべきである。第一に、産業界と連携し、台湾を世界の金融センターとなし、金融機関の合併をおこなうことだ。台湾は産業の国際化に合わせ、国内への資本輸出を促すと同時に、海外への資本輸出をおこない、内外の資本が集まる金融センターとなるべきで、これには政府が金融機関の合併に介入し、国際レベルの金融機関を育てる必要がある。台湾のハイテク産業は世界各地に研究開発および製造拠点を確立しているが、政府はこれらの企業活動に伴い金融体系の改革を推進し、海外で通用する金融機関を育てなければならない。

 第二に、ハイテク産業が直面する水と電力の供給問題を解決する。政府が推進する二兆双星産業(2つの兆はLCDとIC、2つの星はデジタルコンテンツとバイオテクノロジーを指す)はいずれも水と電気の消費が高い。LCD(液晶ディスプレイ)の〇三年の生産高はすでに世界第二位で、〇四年は韓国に代わって一位になると見られており、政府は水と電力供給の問題を解決し、二兆双星産業を円満に成功させなければならない。

 第三は、台湾を世界の物流センターとすることだ。海外の大手メーカーや国内企業に台湾の自由貿易港区の利用を促し、日本、韓国、中国製品の部品や半製品を台湾で組み立て、それらの貨物を台湾から世界各地へ素早く空輸する。

 第四は、産業界が関心を寄せる三通の早期実現である。台湾がオペレーションセンター、物流センターとしての役割を確立しても、三通が実現しないままでは、外国企業は香港や上海に事務所を移し、国際ユーザーと国内企業との関係はますます疎遠になるだろう。とくに中国は台湾にとって非常に重要な市場であり生産拠点であるため、ヒトの直接往来が暫時できないのなら、貨物輸送を先行してもよいと思う。 

 新政府が心を開いて多くの意見を聞き、党を問わず専門的人材を広く集めて経済政策を推進することを希望する。

争議終結させ株への影響回避を
黄崇仁・台北市コンピューター組合理事長 

 今回の選挙は意外な波紋を残したが、台湾は安定し信頼できる政府を求めており、争議を速やかに解決し、国内投資への意欲と市場メカニズムの安定を図るべきである。台北市コンピューター組合理事長として、私は双方が争議を早期に終結させ、国家の正常な機能回復を望む。 

 今後も政府は安定した経済発展を重視すべきだが、なかでも両岸政策は経済貿易上避けて通れない問題である。三通実現に関し、政府がさらに積極的な方法を講じ、産業発展と国際化の過程を重視するよう提言したい。台湾が長期的に発展するには、やはりハイテク産業を主軸とし、人材育成とインフラ整備および投資誘致をおこなうべきで、課題は多い。ここ数年推進中の二兆双星計画などもその一環だが、こうしたよい政策をさらに推進すべきである。 

 台湾のハイテク産業は専門的管理とコスト管理、販売力、研究開発力に優れ、十分な競争力を持っている。今後現在の成果を維持するだけでなく、国際的産業として世界の大手企業をリードしていくだろう。

総統に求められるのは実行力
薜琦・金融研究訓練院院長 

 両岸問題は陳水扁総統再選後の最大の試練であり、三通の実現は現在もっとも急務とされる問題で、国家のリーダーの知恵が試されるところである。私が強調したいのは、文化や省籍、出身にはアイデンティティの問題があるかもしれないが、アイデンティティが経済の領域を超えることは、非常に危険だということだ。キューバと米国を例にとると、キューバは自己の確立のため、意識的に米国と距離を置いたが、これが災いし国内経済は惨憺たる事態に陥った。これは台湾が教訓とするに値する。 

 陳総統はこれからの四年間、過去の四年よりさらに大きな挑戦を強いられるだろう。とくに両岸関係を実現させれば歴史に名を残すことになり、それは選挙の結果よりさらに重要なことである。よい政策があっても、それを施行する人がいなければ無駄になってしまう。国の指導者は鋭敏な洞察力で社会を観察し、正確な判断を下さなければならない。陳総統は計画を練ることに時間をかけすぎてはならない。実行することこそが重要なのだ。

企業に協力し意思疎通コスト削減を
李焜燿・明基(ベンク)・友達会長 

 改革推進派の陳総統が再選されたことで、今後改革はいっそう速やかに推進されるだろう。

 三通直航は多くの人の願いであり、その実現は早ければ早いほどよい。現在、韓国から中国の煙台、南京、上海などへは直行便があるのに、台湾は途中第三地を経由しなければ目的地に到着しない。こうした「意思疎通コスト」の問題が克服されれば、企業が国内に経営拠点を置くメリットを維持し、国際競争力も強化されるだろう。

 数年前、英国の経済誌「エコノミスト」では、台湾に金融危機が訪れると予測していたが、政府はただちに金融改革をおこなうべきである。この数年、世界経済が好転しており、台湾がこの波に乗れるか否かは、安定した金融体系にかかっている。

 中国は巨大な経済体であり、中国への企業の流出を避けることはできないが、この現象は現在すでに落ち着いてきており、過度に心配する必要はなく、またわれわれは台湾の失業率や経済状況も必要以上に悲観するべきではない。政府が今後、施政の透明化を図り、新しい時代に見合った政策を打ち出し努力していくことを期待する。
《台北『経済日報』3月22日》

教育改革について思う ②
李遠哲・中央研究院院長

 四、五育の重視と授業の正常化

 「教育改革全体審議報告書」は要約部分を除くと百頁に満たないが、理論的で深い思索を促す多くの提議がなされている。教育改革委員会のメンバーは、「報告書が出されればすぐにも改革が実行され、塾は一日にしてなくなり、進学志向も終わりを告げる……」などと考えるほど無知ではない。塾はなにも今に始まったものではなく、受験競争の圧力があるから生まれるのであり、圧力がなくならない限り塾はなくならない。塾はもはやわれわれの深層文化の一部になっており、病気になれば薬を飲んで治療する、その感覚と同じである。 

 塾は実際に必要であるというだけでなく、心理的、観念的な問題でもある。ある親は次のように語っている。「正月二日目、よその子どもが遊んでいるときに自分の子どもを塾に通わせる。そうして初めて他人を打ち負かせるのだ」。こうした心理は「学と芸は精進すればこそモノになる」精神を髄まで徹底したものと言えるが、それでは学習目的が捻じ曲げられ、子どもの学ぶ意欲と興味がそがれてしまうのではないだろうか。これは極端な例としても、受験競争が価値観を混乱させてしまうことは明らかだ。 

 塾はわれわれの社会に複雑に入り組み、巨大産業として深く根付いている。これは社会の心理的な基礎をなしているだけでなく、社会的にも億単位の経済利益と多くの人びとの生計に深く関わっている。このため完全に断ち切ることはできず、われわれにできるのは、せめて抜き差しならない状態に陥らないよう導くだけである。われわれは米国に移民し自由で開放的な教育制度を受けても、塾から離れることはできない。台湾人が多く移民しているロサンゼルスやニューヨークでは、親は子どもの塾通いの送迎に忙しく、塾に対する期待はは依然として強い。 

 こうした風潮はわれわれに深く根付いており、時代を越え、また台湾に限ったものでもない。日本では株式市場に上場している塾もある。だが一つわれわれはここで深く考えなければならない。日本と米国は学校教育がほぼ軌道に乗っており、塾と学校教育とは完全に分離され、学校の教師が塾で教えることはない。だが台湾では政府がいくら禁止しても、学校の教師が塾で教えている実態はなくならない。このことは、教師と生徒の正常な関係を崩壊させるだけでなく、教育に関するさまざまな問題をさらに混乱させる要因ともなっている。 

 教育において、進学のために努力することは決して悪いことではない。だが、進学が一旦悪しき競争となり、教育の唯一の最終目的にさえなってしまったら、学校教育は生徒を人として育てることをやめ、受験に慣れさせる訓練の場へと淪落する。さらに五育(徳、知、体、群、美)のバランスが崩れ、教育の機能も目的も大きく捻じ曲げられてしまう。授業を見ると、主科目は重視され、副科目、芸術や課外活動はあってもなくてもいいような扱いになっている。こうした状況はまさに受験競争がもたらしたものであり、受験に必要な科目が学校教育でも重視され、受験中心の授業になってしまっている。われわれが最も切迫した問題として考えているのは、授業の正常化である。つまり教育を正常な軌道に戻し、生徒それぞれに「核となる力」を育て、全人教育を施すことである。 

 このため委員会は多元的入学制度を提議し、生徒の基礎科目の能力を重視すること、多元的な評価を行うことを求めた。具体的には、サークル活動やボランティア、芸術やスポーツなどもすべて評価対象とすることである。その目的は、それらの活動や科目を学校で排除しないためであり、そうして初めて健全な五育のバランスのとれた教育が可能となる。 

 われわれはバスケットをするため、あるいは絵を描くために塾に行くからと言って、芸術やスポーツを重視しすぎだと責めることはできない。われわれが強調したいのは、たとえ経済的理由で塾に行けない子どもでも、学校で正しい授業を受けていれば、芸術やスポーツのすばらしい才能も育つということである。恵まれた家庭環境の子どもが塾で英語や数学を学んでも、恵まれていない子どもが学校で英語や数学をしっかり学べる機会が与えられなければならない。 

 それは、経済的に恵まれている患者が特別室で治療を受けられるのを阻止できないが、経済的に余裕のない患者も健康保険によって一般病室で相当の治療を受ける保障が与えられているのと同じ理屈である。 

 ある親が地域の会長に子どもがボランティア活動に参加しているとの偽の証明書を書いてくれるよう求めたからと言って、ボランティアや課外活動を過大評価したり、逆に過小評価してはならない。 

 これは本末転倒である。われわれの社会は地域との関わりが非常に薄く、人びとの多くは自分のことしか考えず、他人に対する尊重と協調性に欠けている。李国鼎氏が提唱した六番目の倫理とはこのことである。地域活動と課外活動はこれを補うもので、子どもに小さい頃から地域への関心を抱かせ、他人といかに協調するかを学ばせるものである。 

 われわれがなによりも強く願っているのは授業の正常化だ。生徒の受験への圧力を緩和し、不当な塾通いを止めさせたいのだ。授業の正常化は非常に重要だ。なぜなら、授業を正常化してはじめて経済的な理由にかかわらず、一人ひとりに公平に教育を受けさせることができるからだ。そして、そこから子どもたちの可能性が見出され、個性に合った教育を行うことができるのだ。俗に「玉も磨かなければただの石」と言われるが、異なる玉には異なる磨き方がある。この玉は作家、科学者、芸術家、あるいはスポーツ選手になるかもしれないのだ。もし正常な授業のもとに公平な教育の機会が与えられなければ、子どもの将来の可能性は埋没してしまうだろう。

五、多元入学を薦める理由 

 教育改革に対するさまざまな意見のなかには大学入試の「連招(全国統一試験)」の全面復活を望む声が少なくなかった。その理由は非常に単純で、手間を省けること、それに公平である点だ。「連招」の復活は容易には違いない。だが、それではようやく軌道に乗り始めた多元入学制度が頓挫し、教育改革の重要な基本までが崩壊してしまう。 

 「連招」は実際には廃止されたわけではなく、改良されたにすぎない。「連招」は数十年間実施されており、その功罪は別として、すでにわれわれの集団的記憶の一部となっている。実際われわれの「連招」への依存度は想像を超えるものがある。多元入学の実施後の問題に対しても、「連招」を全面復活させればすべてが解決すると考えている。だがシステムには寿命というものがあり、「連招」も一時代の産物にすぎない。よりよいシステムを構築するにはその時代とともに進化させる必要があり、そうして初めて新たな課題に挑戦し、新たな要求を満たすことができるのだ。 

 教育改革委員会は「連招」を望む多くの人びとの意見を尊重しながらも、それの教育へのマイナス面も充分に理解している。全面廃止が困難な状況において、「連招」の長所を活かしながら、かつ改良を加え、試験科目、得点配分、分配に柔軟性を持たせ、二段階で試験を行うという「改良型連招」を推進することが理想である。 

 厳密に言えば、「教育改革全体審議報告書」は入学制度改革には消極的で、われわれ委員会は一貫して慎重な立場をとってきた。実際にわれわれは以下のような提議を行ったにすぎない。「『改良型連招』と『推薦入学』を車の両輪となし、「連招」と単独募集の相互の長所を活かすことで大学は求める人材を確保でき、高校教育の発展も促される」。一見すると何ということはない文章と思われるかもしれないが、実際にはこうした改革はかつてはなかったものである。 

 「連招」が悪とされたのは、一回きりの試験で一生が決定される点にあった。それでも長い間実施されてきた背景には、簡単明瞭で、手間が省けるというメリットがあったからだ。「連招」は統一試験であり、合否の基準も統一されている。つまり、頭の良し悪しや家庭環境に関わらず、等しく同じ試験を受けられるという点で、形式的には公平だ。 

 これこそが数十年来、悪と罵られながらも他の方法に代わることなく続いてきた理由にほかならない。人びとは「連招」の公平性にほとんど疑問を持っていないが、一部で特権が存在し、それほど公平とは言いがたい現在の社会において、成績のよい生徒から順に志望校に入学できるため、公平であることは非常に重要であり、一般の民衆に対してはなおさらである。 

 だが公平性にもさまざまなレベルがある。「連招」の公平性は基本的には技術的なものであり、一部の知育科目の成績によって生徒の将来が決定されてしまう。つまり、その他の知能や徳育、体育、芸術などの能力はまったく考慮されないのだ。生徒の進学と合否基準は成績の良し悪しと志願の順序によって決定される。成績の上位者から志望校に入学できるこのシステムでは、学校や学部のランクと生徒の興味に基づく志願とが狭められ、両者の間で悪循環を引き起こす。結局「連招」は技術的な公平性はあっても、実際には公平ではないのである。 

 「連招」の公平性のみならず、いかにして単一の入学制度を打破し、より相応しい方式を見いだすか。異なる資質や性向の子どもにもその能力に合った適性な場所を与え、かれらの潜在能力を引き出してあげなければならない。とは言うものの、実際にわれわれのできる選択は限られている。 

 教育改革委員会は台湾の社会環境と文化的状況を考慮し、他国の制度を参考にしながら、最終的にまとめたものが報告書である。このなかには、「改良型連招」と「推薦入学」の両輪で進めることを建議した。これがいわゆる多元入学制度である。

 「改良型連招」は従来の「連招」のモデルと経験を基礎にしている。また「推薦入学」は長期にわたる議論を重ね、受験生は一校しか選択できないこと、すべての学校がこの推薦入学を採用すること、試験による合否を行わない学生の募集定員には上限を設けること、などが定められた。「改良型連招」と「推薦入学」はとくに大きな問題とはならず、後に人びとを困惑させたのは「申請入学」である。 

 「申請入学」が急いで実施されたのは、「推薦入学」が非常に成功し、教育部がこれに気をよくして充分な準備を行わないまま実施に移してしまったためである。「申請入学」は受験する大学と学部数に制限を設けていないため多くの不満が出された。その最たるものが、「時間と金の浪費だ」とする批判である。 

 「推薦入学」と「申請入学」は基本的には学生を積極的に募集するシステムと言えるだろう。受験生は自分の将来に対し主体的に大学、学部を選択でき、大学側も主動的に学生を選ぶことが可能だ。その意味では合理的なシステムである。最も理想的なのは、受験生が自分の志向に合った学部を申請でき、学校も自分たちが求める学生を選択できることである。こうした理想を実現するために、その過程は受験、志願書の提出、合否判定という「連招」の三段階より複雑になり、多くの学校で筆記試験や面接試験を行うことはやむを得ない。とくに「申請入学」では、受験のたびに親は子どもについて全国を移動し、申請した大学、学部数が多ければ多いほど、時間と金がかさむことになる。 

 新制度はスタート後、いくらか行政上の見直しが行われた。このため目下人びとは徐々にこれを受け入れ始めており、またプラス効果も出始めている。ある地球科学部の教授は、「『推薦入学』と『申請入学』によって、昔のように志望順位の低い学生に代わり、真に興味のある学生を募集することができた」と語っている。また、ある医学部の教授によると「新制度のおかげで受験生の学業以外の能力を見ることができるようになった。真に医学部を目指す受験生のなかには、中南部の農村家庭の子どもも多い」という。 

 現在新制度による入学者は一八%に過ぎず、ほとんどの学生は「改良型連招」を受験して入学した。今年教育部は「推薦入学」を「学校推薦」へ、「申請入学」を「個人申請」へとそれぞれ名称を変更した。「学校推薦」はやはり一大学・一学部が原則で、「個人申請」は申請できる数を五校以内に制限した。教育部は両制度による募集人員を増やし、全体の二〇%にまで引き上げたい考えだ。社会がこの新制度に徐々に適応できてきたら、この割合も検討してみてもいいだろう。(以下次号)
《台北『自由時報』3月5日》

台湾観光年

阿里山で森呼吸はいかが?

 ちょうど桜の花見シーズンを迎えている阿里山で、四月九日から二十九日まで、「阿里山?生之旅活動」が催される。豊かな自然の風景と森林浴、先住民の文化を楽しむエコツアーで、阿里山国家風景区と中華民国生態旅遊協会が主催する。期間中、毎週金曜から日曜日の二泊三日の日程で自然解説員が引率し、奮起湖、豊山、来吉を訪れる。 

 奮起湖は阿里山鉄道の列車交換駅として発展した。森林に囲まれ近くには遊歩道が整備されており、途中樹齢百年の楠木や台湾杉を見ることができる、森林浴にはもってこいのコースだ。近くには昔の駅舎も残されており、当時の機関車が保存、展示されている。 

 豊山は阿里山の土石流で知られる。周囲を山に囲まれ、谷間の到るところに大小の巨岩が横たわる。地元と阿里山管理処によって建設された「大石鼓園」と「土石流公園」には豊山を襲った土石流の爪痕が保存、展示されている。また、大小六つの滝からなる「石盤谷瀑布」には、新しく架け替えられた吊橋と石の歩道が整備されている。 

 コース最後に訪れる来吉は先住民のツオウ族の集落で、ここでは木彫り、竹編、陶芸など、かれらの伝統文化に触れることができ、またみずから体験できる教室も開かれている。断崖絶壁の景勝地として知られる「鉄達尼」では、昨年新たに歩道と施設が完成した。ここでは、映画「タイタニック」号が海の中に沈没するクライマックスが山の中で味わえる。附近には自然の滝と展望台があり、雄大な自然を満喫できる。 

 見所満載のこのツアーは食事も充実しており、奮起湖の駅弁をはじめ、豊山の郷土料理、ツオウ族の伝統料理を味わえるほか、台湾の伝統的なデザート、愛玉子(オーギョーチ)作りも体験する。夜はツオウ族の伝統芸能の鑑賞もある。

●台湾生態旅遊推廣中心: http://www.ecotour.org.tw
《台北『民生報』3月20日》

「明星??屋」ふたたび開店

 一九六〇年~七〇年代、作家や芸術家の創作と交流の場として親しまれた台北市武昌街の「明星??屋」(コーヒーショップ)が、四月末からふたたび営業を開始する。 

 一階が明星西点麺包店(パン屋)で、その二階にあった「明星??屋」は当時、黄春明、白先勇、林懐民など、新進気鋭の作家がよく出入りし、青春時代を過ごしたことでも有名だ。十五年前に一度閉店され、最近までレストランに貸し出されていたが、そのレストランも閉店したため、同パン屋の責任者でビルのオーナーでもある簡錦錐さんが、ふたたび「明星??屋」をオープンさせることにした。店は現在改装中で、内装は当時の雰囲気をできるだけ忠実に再現し、設備も倉庫にしまっておいた昔からのテーブルや椅子を取り出して使う予定だ。コーヒーやデザートも昔の味にこだわるという。
《台北『聯合報』3月17日》

台湾最大の書店がオープン

 シンガポールのPage One国際総合書店が「台北101MALL」4Fにオープンした。七百二十坪の店内には、中国語関連十七万冊、洋書十六万冊、デザインや文芸分野二万冊、計三十五万冊が並び、広さと冊数で台湾最大となる。倉庫での在庫管理は行わず、すべてを棚に並べて0歳から九十九歳までの需要に応えていく。文化や芸術、芸能、デザイン、建築、企業管理などの分野に力を入れているほか、洋書部門では、ロンドンとニューヨークのベストセラーを同時販売するなど、ボーダーレス化を進めていく。
《『台湾観光月刊』3月号より転載》

大学の学生募集数が十一万人突破
有名大では大学院募集枠が増加

 教育部は三月十二日、二〇〇四年度の大学入試募集人数を発表した。

 これによると、四年生全日制学部の募集数が前年比二千六百二十三人増の十一万六百三十五人となり、史上初めて十一万人を突破した。〇四年の高級中学(高校)の卒業予定者十二万一千人に対する募集枠の比率は約九二%、再受験者と高等職業専門学校卒業者を入れても約七〇%であり、選り好みしなければ、受験者の七割が大学に入れる計算になる。

 大学全体の募集枠が増えたのに対し、個々の大学別で見ると、台湾大学、政治大学、陽明大学、中山大学など国立有名大学では、研究開発型教育機関への転換を図り、いずれも学部の募集人数を減らし、大学院の募集人数を増やしている。このうち政治大学は減らした学部募集数が七十八人と最多だった。

 学部別で見ると、新しく募集枠が広げられたのは、光電工学、情報金融管理、放送科学技術、電機工学、 通信工学、バイオテクノロジー、外国語、台湾文学、レジャー産業などで、また国立大学で募集数を増やしたのは交通、高雄、台北、台東の各大学および台湾師範大、台北師範学院、台中師範学院などであり、今回聯合技術学院から大学に昇格した聯合大学も初めてこのなかに組み込まれた。

 一方、〇四年度の大学院の募集総数は四万八千百四十人となり、このうち修士の募集枠が四万二千七百六十三人、博士過程、修士課程の社会人枠がそれぞれ五千三百七十七人、一万一千七百七人となった。

 また、現在台湾で大学を受験するには、毎年七月に行われる指定学科能力試験を選考の主要材料とする「考試分発(試験分配)入学」と、各大学が独自に決めた選抜方式で受験する「瓶選(選抜)入学」の二通りのルートがあるが、教育部の統計によれば、〇四年度の全募集人数のうち、試験分配入学での募集が八万二千七百七十四人で全体の七五%を占め、選抜入学の募集数は約二割の二万三千三百五十七人となった。また選抜入学のうち「個人申請」枠が一万四千百三人、「学校推薦」枠が九千二百五十四人となっている。

 選抜入学の受験申込みはすでに受付が締め切られ、申請作業を管轄する中正大学によれば、「個人申請」での志願者数は八万二人で、前年比一万六千人減少した。これは主に高等 中学(高校)卒業予定者の人数が減少したうえ、大学側が受験申込みを一人五校まで、台湾大学など二十九校では一人一学部に限ったことが主因と見られている。さらに、受験者一人当たりの受験申請数は平均三・七六学部で、前年の五・六学部より減少した。また、「学校推薦」枠での志願者は、合計六万五千百十八人となった。
《台北『青年日報』3月13日》

交通大で一年生に英検資格義務付け
清華大では入試で能力振り分け

 交通大学では〇四年度から、台湾大学に続いて大学一年生に全国英語能力検定中級以上、またはTOFUL試験五百五十点以上、IEFLTS(国際英語試験)六級以上の検定資格取得を義務付ける。

 同大学ではこの制度の主旨について「将来学生が学術界、経済界どちらに進むにせよ、英語力は非常に重要なツールであり、その養成をバックアップするため」と説明しており、大学規定のレベルに満たない学生には、正規課程に加えてインターネッ ト上で一年間、英語の補修を受けることを義務付けている。同校では学生の負担を軽減するため、英語検定の第一次試験の検定料を全額負担するとしている。

 また、清華大学では入学試験の成績によって入学後独自の措置をとっており、成績トップの学生には大学一年の英文科目を免除し、成績が悪かった学生には英文基礎の補修を義務付けている。同校では、二年前から英語の履修単位数を従来から二コマ増やした八単位とし、作文センターを設立するなどして英語力強化を推進している。
《台北『聯合報』3月11日》

お知らせ

「台湾NGO中心」HP開設

 外交部は台湾の非政府組織(NGO)が国際社会と積極的に連動し、より世界に貢献できる体制を整えるため、「台湾NGO中心(センター)」を発足させた。同センターは、台湾の各NGOの組織と活動内容について、さらに世界のNGOについてもさまざまな情報を提供しており、台湾と国際社会との交流のプラットフォームとなっている。 

 現在台湾には二千を超すNGO団体があり、最近では昨年十二月にイランで起きた大地震への救援活動をはじめ、国際的な活動を展開している。このほどインターネット上に同センターのホームページが開設された。中国語と英語の二種類あり、台湾のNGOの理解に役立つ。
●http://www.taiwanngo.org.tw

春 夏 秋 冬 

 国際的にも注目された公民(国民)投票が、設問の「中国のミサイルに対する防衛強化」も「両岸平和対話構造の確立」も投票率が45%にとどまり、過半数に達しなかったことから規定により不成立に終わった。そこで懸念されることが一つある。公民投票の不成立によって、国際社会が台湾の民意を誤認しないかという点だ。すでに中国当局は3月21日、「事実はこの不法行為が人心を得られなかったことを証明した」と論評し、「台湾を中国から分割させる試みは必ず失敗する」などと断定するような声明を発表している。こうした中国の姿勢に対し、行政院大陸委員会は「中国は公民投票の過程を見るべきで、台湾の与野党は二つの設問に高い支持の立場を表明しているのだ」と発表した。投票が過半数に達しなかったのは、総統選挙がらみでおこなわれ、しかも片方が公民投票推進派で片方が反対派であったことや時期的なものも影響していよう。公民投票反対派が「防衛強化」や「対話構造確立」に反対していたわけではないのだ。 

 台湾の国立政治大学が「自分を中国人と思うか、それとも台湾人と思うか」について世論調査をほぼ定期的に行っている。近年におけるその割合の変化は次の通りである。 

       中国人   台湾人
1992年6月  26.2%   17.3%
2003年6月   9.9%   41.5%
2004年2月 4.4% 46.1% 

 これが「事実」であり、台湾の「森」なのだ。「中国から分割」とか「祖国分裂」などという言葉自体、台湾の民意からかけ離れたものであり、まったくの独り善がりというほかはない。台湾の前途を決めるのは、あくまでも台湾人でなければならないのである。 

 しかも今回の公民投票は、台湾政治史上第1回のものであり、行われたこと自体に意義が見出せよう。それは民主体制の強化であり、従来の間接民主主義のなかに、直接民主主義の制度を取り入れ、国の重要な問題については国民が直接投票によって決定できるシステムを作り上げた。今回粛々とその第1回が実施され、今後の直接民主の前例を確保したのである。 

 この意義は大きい。中国は武力統一の道を放棄しようとしないが、台湾がいつでも公民投票を実施できる体制を構築したことは、ミサイルに対する強固な盾を作り上げたことにも等しい。日本をはじめ、国際社会にはこうした台湾の本当の民意を見極め、誤認しないようにしていただきたい。    
 (K)