台湾週報2157号(2004.8.26)
第二回「民主太平洋大会」開催
「民主太平洋連盟」設立へ向け発進
昨年に引き続き第二回「民主太平洋大会」が8月14、15日、台北で開催された。陳水扁総統は開会式の祝辞の中で、「海洋に向かって進む」「世界に向かって進む」台湾の姿を強調し、呂秀蓮副総統は「民主、平和、繁栄」の追求が同大会の一貫した共通認識であることを明示するとともに、特に現在が「太平洋の世紀」であることを強調した。また、本年の大会では来年8月に「民主太平洋連盟」を設立することが決議された。
第二回「民主太平洋大会」が八月十四・十五日、台北の円山ホテルで開催された。第二回目の本年も、昨年の第一回同様に二十八カ国より百十六名の国際的オピニオンリーダーらが参加し、民主主義、安全保障、海洋資源、産業経済、科学技術の五大テーマについて討議した。参加者の中にはエルサルバドル大統領、パナマ副大統領、ニカラグア副大統領らも含まれる。
本大会開催の意義として、呂秀蓮副総統は開会式の祝辞の中で「二十一世紀は太平洋の世紀であり、太平洋の世紀は、民主、平和、繁栄の満ち溢れた新世紀でなければならない。価値観を同じくする環太平洋の国々が『民主太平洋連盟』を結成することは、まちがいなく世界に互助と協力関係強化の見本を提示することになろう」と語った。
なお、大会に出席した陳水扁総統の祝辞は以下の通りである。
●陳水扁総統祝辞
本日はまさに歴史的な一日と言えるでしょう。環太平洋地域二十四カ国が台北に集い、第二回「民主太平洋大会」を開催し、新たな民主主義と繁栄した太平洋の新紀元を切り拓こうとすることに、まず私は中華民国政府ならびに台湾国民を代表し、すべての来賓の方々に歓迎の意を表します。同時に、各ご来賓の方々が遠路お越しになり、第一回「民主太平洋大会」において確立された「民主、平和、繁栄」の共同の価値観のもとに、「民主太平洋連盟」を結成しようとしておられる精神とご努力に最高の敬意を表明いたします。
二十数年前、世界的な民主化の波は、台湾を含む多くのアジア諸国の民主化を呼び起こし、環太平洋諸国の政治、経済、文化、ひいては安全保障にいたるまで、緊密に相互連動するようになりました。このように新たな世紀における国際秩序再構築の重要な時期において、国際テロの影がふたたび世界の平和と安全に脅威を及ぼし、環境と生態の問題もまた、われわれが生存する地球への大きな試練となっております。
西暦二〇〇四年、環太平洋の新興民主主義国は、もう一つの重要な転換という課題に直面しております。それはすなわち「民主の深化」と「改革の堅持」が継続できるかどうかにかかっています。民主主義を深め、改革を堅持してこそ、国民の強い支持が得られ、長期安定の政治制度と永続的発展ができる基礎を構築することができるのです。
太平洋の東岸においては、米国では大統領選挙がまさに進行中であり、中華民国の友好国であるエルサルバドル、パナマ、ドミニカ共和国を含む多くの国では新たな指導者が生まれました。西岸においては、韓国、日本、フィリピン、インドネシアで国家指導者もしくは国会議員の選挙が行われ、シンガポールではごく最近首相の交代があり、中国統治下の香港特別行政区では、一年以上にわたって民主、自由、反統制の声が続いています。間違いなく、環太平洋地域のすべてが今、民主主義の強化と深化の重要な時期にさしかかっているのです。
ここに私が誇りをもって言えるのは、民主主義の強化と深化の過程において、絶えず障害に突き当たり挑戦を受けながらも、台湾が総統選挙を完遂したということです。これは太平洋の新興の民主主義国に好ましい模範例となるものです。なぜならわれわれは一貫して「台湾に自信を持ち、改革を堅持」してきたからです。このことも第二回「民主太平洋大会」が台北で挙行されることに、特別な歴史的意義を添えるものとなっております。
「海洋に向かって進む」「世界に向かって進む」ことは、常に台湾の発展と国際参加の原動力になってきました。またこれにより、台湾は民主と経済の発展、海洋開発、安全保障と永続的発展に全力を注いできたのです。今われわれが期待しているのは、早期に「民主太平洋連盟」が組織され、われわれの友邦や友人たちとともに、民主と平和、繁栄の成果と経験を分かち合えるようになることです。
皆様ご承知の通り、長期にわたって台湾は中国の圧迫下にあり、長きにわたって国連の外に排除されたままとなっており、国際組織において中国の圧迫と妨害はとどまるところを知りません。中国は台湾が世界保健機関(WHO)に参加するのを阻止し、APECやWTOなど各種国際組織に台湾が平等に参加することにも絶えず妨害を加え、台湾の外交は大きな障害に見舞われ続けております。
中国は絶えず台湾の国際活動に圧迫を加えるとともに、この数年来、精力的に軍備を増強し、軍事費は毎年二ケタ台の増加を見せ、台湾に照準を合わせたミサイルを配備し、台湾攻撃の海空軍を整え、さらに日米など国際社会が台湾海峡問題に介入するのを阻止する能力を整えようとしております。このように中国が武力をもって台湾を威嚇しているのは、台湾の民主主義体制に対する挑戦であるばかりでなく、アジア太平洋地域の安全と安定に対する挑戦でもあります。
さらに注意すべきことは、中国が最近、積極的に「心理戦、世論戦、法律戦」という、いわゆる「三戦」の推進を検討していることです。これらは武力の直接行使の場以外で、さらに一歩進んで積極的に民主主義体制の弱点を突き、台湾軍民の士気を動揺させ、いわゆる「一つの中国」の原則の喧伝によって台湾を矮小化し、やがて台湾を併呑しようとするものです。
特に中国は今、いわゆる「統一法」と呼ばれる「中華人民共和国国家統一促進法」を制定しようとしています。それは台湾を中華人民共和国の一つのいわゆる「特別政治区」と見なし、武力行使の法的根拠にしようとするものです。これは、台湾はもとより、環太平洋諸国が共同で直視しなければならない問題です。
中国が香港を特別行政区として統治した結果、五十万人もの市民が街頭に出て民主主義を要求し、言論の自由が剥奪されたことに直接抗議するところとなりました。それなら、中国が「民主台湾」を中華人民共和国の「特別政治区」にしようとしている意図が進行すればどうなるでしょうか。現段階でも台湾の安全に対する恫喝のほか、台湾の民主主義の発展を押し潰そうとしているのであり、それはまたアジアの新興民主国家の転換にとっても重大な脅威となります。
台湾は中国による国際的封鎖や軍事的圧迫に直面していますが、「平和、民主、繁栄」と「海洋に向かって進む」「世界に向かって進む」の政策を堅持し、積極的に国際社会に参与する政策に変更はありません。「民主太平洋連盟」の結成は、太平洋両岸の対話と相互協力推進のジャンプ台となるばかりでなく、台湾と環太平洋の民主主義国間の「価値同盟」「経済同盟」さらに「安全同盟」の構築にも繋がるものとなるのです。
「価値同盟」については、台湾と日米および多くの友好国の間には、長期にわたる国際友好の基礎があります。共通の利益を守るだけではなく、さらに大事なのは、自由、民主、人権、平和の「価値同盟」なのです。「価値同盟」の最大の意義は、自由、民主、人権の普遍的価値観を享有するとともに擁護し、先ほど述べた基礎の上に、互助と共栄の協力関係を構築するところにあります。
つぎに「安全同盟」についてですが、われわれは、環太平洋の民主主義諸国はお互いに「安全同盟」を構築し、将来環太平洋諸国の安全と安定に影響を及ぼすかもしれない問題について共に論じ合い、対話を通じて相互信頼を勝ち取り、安定した太平洋地域のコンセンサスと構造を確立すべきだと認識しております。
「経済同盟」につきましては、経済のグローバル化が加速され、同時にブロック経済の形成も強化されようとしている今日、どのようにして各国が共同でグローバル化の利害を掌握し、自由化によってもたらされる利益を享有し、さらに国民と社会一般の経済的福祉を充実するかが大きな課題となっております。これらは各国ならびに政府が直面している問題でもあります。環太平洋の民主主義諸国は、こうした「経済貿易同盟」を結び、「価値同盟」「安全同盟」「経済同盟」の三者間に整合性を持たせ、相互に支えあい、共に「民主、平和、繁栄」に向かって邁進しなければなりません。
最後になりましたが、私はふたたびここで皆様をお迎えすることができましたことを、この上ない名誉に感じますとともに、本大会が成功裏に終わることを祈っております。第二回「民主太平洋大会」の目的は、できるだけ早期に「民主太平洋連盟」を結成するところにあります。各国代表の方々の、一層のご発展とご健康を祈念いたします。ありがとうございました。
(完)
【総統府 8月14日】
●「民主太平洋連盟」結成へ
本大会は五大テーマについて十二の分科会に分かれて討議し、それぞれのコンセンサスを得るとともに、次の「太平洋宣言」を採択した。
〇 〇 〇
太平洋は世界最大の海洋であり、交通の動脈であり、海洋資源も豊富であり、環太平洋地域には国家が林立して人口も多く、経済力も豊富であり、民主と科学技術の先進地域でもあり、人類文明の未来の発展に重要な地位を占めている。
振り返れば、太平洋は何度も熾烈な戦いの場となり、多くの生命と財産が失われ、生態もまた破壊されてきた。現在また、西太平洋地域の人類の安全は、ふたたび深刻な危機に直面している。
われわれ二〇〇三年、二〇〇四年の「民主太平洋大会」に参加した各国代表は、本地域の民主主義諸国が連携し、平和を維持し、高度な科学技術を活用して海洋文化を高め、互助協力の構造を確立し、強弱と貧富の格差を是正し、戦争と略奪を回避し、太平洋の安定と永続的発展を確保すべきだと認識する。
このため、特にここに宣言する。われわれは二〇〇五年八月十四日、第二次世界大戦終戦六十周年を期し、台湾台北において正式に「民主太平洋連盟」を結成し、東、西、南太平洋の各地域の民主主義国の政治、経済、学術および民間組織の指導者を招請し、共同で環太平洋地域の民主主義、平和、繁栄を推進し、太平洋の世紀の新紀元を切り拓く。
この目的を達成するため、民主太平洋大会は即日、次の国際準備委員会を設立する。
一、地域委員会
ニ、規則委員会
三、研究発展委員会
四、財務委員会
五、国際宣伝委員会
われわれは、「民主太平洋連盟」の成立は、世界に互助と協力関係強化に活力あるサンプルを提供することになると確信している。
二十一世紀は太平洋の世紀であり、二十一世紀の太平洋は民主と平和、繁栄の新たな推進者である。われわれは共に手を取り、美しく永続的な「海洋新境地」を創造して行く。
〇 〇 〇
呂秀蓮副総統は閉会式のあと「来年は第二次世界大戦終戦六十周年であり、その年に民主太平洋連盟が設立されるのは非常に意義深いものがある。民主太平洋連盟に加わるには三つの条件が必要だ。それは、①太平洋地域に位置していること、②国家指導者が国民によって選出されていること、③民主、平和、繁栄を追求しようとする民主太平洋連盟の主旨に賛同していることである。今後一カ月以内に各準備委員会が発足することになるが、特に財務委員会には多くの人々の参加が必要となる」と語った。
【総統府 8月15日】
週間ニュースフラッシュ
◆外国籍配偶者のための基金会創設を準備
游錫堃・行政院長は七月三十一日、台湾在住の外国籍配偶者の同郷会を組織し、かれらの意見を政府に反映させる体制を整えると同時に、基金会を創設し、今後十年以内に三十億元(約九十億円)を投入し、外国籍配偶者の生活やかれらの子女の教育を強化すると述べた。ちなみに、現在台湾在住の外国籍配偶者は三十万人に上っている。
《台北『青年日報』8月1日》
◆国際的なサイバー犯罪防止組織に台湾が加盟
世界主要先進国八カ国で組織するG8の管轄下に置かれている「24/7Computer Crime Network」に、台湾が三十五カ国目に「TAIWAN」の名義で加盟した。インターネットが普及し、世界各地で深刻な問題となっているサイバー犯罪防止に各国が協力して取り組もうというもので、ちなみに中国は同組織に加盟していない。
《台北『青年日報』8月2日》
◆「駐日台湾媒体特派員聯誼会」に名称変更
日本駐在の台湾メディアの特派員組織「中華民国駐日記者会」が八月三日、「駐日台湾媒体特派員聯誼会」に名称を変更した。同会員の投票により決定したもので、会長の張茂森氏は「取材先で中国の記者との混同を避け、仕事をスムーズに行うため」と話している。
《東京『中央社』8月3日》
◆七月の消費者物価指数、四年半で最高に
行政院主計処は八月五日、七月の消費者物価指数について、「台風による七・二災害で野菜や果物の値段が急騰し、さらに国際原油価格の高騰も加わり、対前年比で三・三二%の大幅上昇となり、この四年半で最も高い水準となった」と述べた。このうち野菜、果物は前年比五五・四%も上昇し、全体の指数を押し上げたが、主計処では「急激な上昇は短期的なもので、インフレに繋がるものではない」と見ている。
《台北『聯合報』8月6日》
◆台湾産米の日本への流通が可能に
行政院農業委員会は八月六日、「台湾産米が日本の輸入検査対象に正式に加えられることになり、今後日本市場への流通が可能になった」と述べた。同委員会によると、八月末にも日本の業者による台湾産米の入札が行われる予定で、政府としても今後台湾産米の輸出に全力をあげることにしている。
《台北『中央社』8月6日》
◆イラクの学生に「台湾奨学金」を支給
游錫堃・行政院長は八月十日、イラク統治評議会メンバーの一人でクルド民主党指導者のバールザーニー氏と会見し、今後双方の相互交流を強化することで意見が一致し、台湾への理解を深めてもらうため、毎年クルド人学生三名に「台湾奨学金」を支給することを提案した。
《台北『自由時報』8月10日》
◆日本の二団体が殺害された台湾人女子学生の遺族に慰問金
日本李登輝友の会と台湾研究フォーラムの二つの団体の代表が、先日旅行先の日本で殺害された台湾人女子学生の遺族に対し、慰問金百四十万円を持って八月十一日、台北駐日経済文化代表処を訪ね、許世楷代表に手渡した。
《東京『中央社』8月11日》
◆日本の税関職員が台湾に派遣
テロ対策の一環として八月七日、日本の税関職員四名が台湾の桃園国際空港に派遣され、台湾から日本へ出国する旅行客に対し旅券とビザの審査を開始した。テロリストが偽造旅券を使って日本に入国するのを未然に防ぐための措置だが、同時に台湾人旅行客に対する日本での入国審査手続きを大幅に短縮、簡素化するメリットもある。
《台北『聯合報』8月8日》
国家正常化のため「三大正常化」推進
陳水扁総統が工商建研会と会見
陳水扁総統は八月十七日、工商建設研究会の代表らと会見し、「両岸関係の正常化」「憲政体制の正常化」「両院相互連動の正常化」という三つの正常化の重要性について述べた。以下はその要旨である。
○ ○ ○
台湾が今後、さらに完成された国家となり、国家の正常化という目的を達成するためには、われわれは「三大正常化」を推進する必要がある。
三大正常化の一つ目は「両岸関係の正常化」である。われわれは現在積極的にこれに努力しており、今後も両岸平和発展委員会による関連活動を推進する予定である。両岸の平和発展綱領策定と、両岸関係正常化の早期実現を願うものである。
両岸三通(通信、通航、通商の開放)に関しては、すでに直航の実現を待つばかりとなっている。船での直航はもとより、貨物、ヒトに関わらず空の直航も必ず実現し、双方の往来が便利になるだろう。しかし、直航開放は、国家の主権および公権力の行使に及ぶ多くの問題に関わるものであり、それらが解決しないままでは、これの実現はあり得ない。われわれはすでに中国に譲歩し、「国際航路」でも「国内航路」でもない「両岸航路」の開通を提案しているが、中国側はこれに対し態度を硬化させ、あくまでも「国内航路」という大前提のもとで三通あるいは直航交渉を進めようとしている。これでは交渉は振り出しに戻ったことになり、私個人だけでなく、多くの国民同胞はこれを受け入れることはできないはずである。こうした中国の頑な態度は、直航交渉の大きな障害となっている。
二つ目は「憲政体制の正常化」であるが、これは私自身が総統選挙時の公約として、四年間の任期中に「身の丈に合った、実用的で新しい時代に合った」台湾の新憲法を制定することを挙げた。任期が満了する二〇〇八年を期限として、個人や一政党に偏ったものでなく、多数の意見を取り入れた新憲法を早急に完成させたい。どのような憲法が制定されるにせよ、またどのような行政改革がなされるにせよ、私個人としてはいかなる偏見も持っておらず、ただ多数の人々のコンセンサスを得たものであれば、何も不可能はない。それよりも、国内での衝突やそれによる無駄な消耗を避けることが、肝要なのである。
三つ目は「両院相互連動の正常化」である。いわゆる「両院」とは、行政院と立法院を指す。行政改革を推進して以来、すでに二年が経過したが、企業がその経営レベル向上をはかるために組織再編や合併をおこなうのと同様、台湾の国際的競争力を高めるために、両院相互連動の正常化もまた、両岸関係や憲政体制の正常化とともに、わが国にとって重要な課題である。われわれは現在、経済発展委員会との間で得たコンセンサスに基づき、政府組織再編を推進中である。三十六の省庁を二十二にスリム化し、四つの委員会に五つの独立機構を加えること、また新しい国会の誕生を待って、今後「行政院組織法」の改訂に取り組む予定だ。
このほか、国会改革も大きな関心を呼んでいる課題である。とくに「立法委員の議席半減」、「単一選挙区二票制度」、「国民大会の廃止」、「公民投票を憲法に盛り込む」という四大課題はきわめて重要で、どの一つが欠けても、真に国会改革が成功したとは言えない。また、国会の議長は他の職務を兼務せず、政党や政府を完全に超越し、国家と国民の利益を最優先させなければならない。
政府に対する各界からの提言を歓迎し、今後も官民が手を携えて経済振興と改革推進をおこなうことを期するものである。
【総統府 8月17日】
游錫堃・行政院長が中米三カ国訪問へ
ドミニカ共和国、ホンジュラス、ニカラグア
●游錫堃・行政院長が外遊談話
游錫堃・行政院長は陳水扁総統の特使としてドミニカ共和国のフェルナンデス新大統領の就任式に出席するため、八月十二日午後、桃園国際空港を出発した。このほかホンジュラスとニカラグアを訪問し、帰国予定は同二十五日で、往路にロサンゼルス、帰路にニューヨークに立ち寄る。出発に際し、游院長は次の談話を発表した。
○ ○ ○
これより十三日間の外遊に出かけます。今回は陳水扁総統の命により特使一行の団長として、ドミニカ共和国を訪問し、フェルナンデス新大統領の就任式に出席するとともに、中米の友好国であるホンジュラスとニカラグアも訪問します。
ドミニカ共和国とわが国との間には、深い友好の絆があるばかりでなく、多方面にわたる協力関係でも結ばれており、早くから農業技術チームを派遣して稲作技術の改善に協力するとともに、職業訓練指導員養成のため、専門家を派遣して職業訓練センターの設立も支援し、さらに今年に入ってからは「台湾奨学金」を開設し、友好国の青年が台湾に来て各種技術を学ぶことを奨励するようにもなりました。両国は農業交流から経済貿易交流へ、また人材交流へと進み、ますます緊密な関係になってきていると言えます。
私は外交を進めるにおいて、つねづね「人」の要素こそ外交活動のカギになるものと思っております。人材のグローバル化は時代の流れであり、われわれは台湾の人材を世界に押し出すとともに、世界の人材を台湾に呼び込み、大規模な国際的人材交流を進めねばなりません。これをわが国外交の新たな方針とする必要があります。
近年来、陳総統の指導により、わが国の外交は、発想とその方法において大きく変化しました。従来の農漁業技術チームの派遣を継続するとともに、時勢の進展と相手国の需要に合わせ、兵役代替による海外派遣ならびにボランティアの人員を増やし、それによって職業訓練センターの設立を支援し、指導要員を育成することにも力点を置くようになりました。今年はすでに「デジタル農業チーム」の設立に着手しており、わが国と友好国との人材交流を一層緊密化しようと図っております。
この理由から、今回は訪問国との友好を強化する以外にも、人材交流の強化を訪問国の元首、政府高官との会談の重点に置きたいと思っております。われわれは、さらに多くの友好国の優秀な青年たちが台湾にきて教育を受けることを望んでおります。それはわが国の友好国が国家建設の人材を育成するのに有益であるばかりでなく、それら留学生が深く台湾を理解し、共通の価値観を培われれば、各方面での相互協力の関係強化にもつながります。
また、今回の外遊は立法院の臨時会と重なりました。今回の臨時会では、金融改革の推進に関連する緊急性のある多くの法案を、野党の反対により議事の日程に上げることができませんでした。このことを遺憾に思っております。議事日程に上がっている新十大建設予算案、七・二災害救済予算案、治安法案などが、王金平・立法院長の協力と各党の支持のもとに滞りなく通過することを望んでおります。
台湾は中国の強い圧迫を受けておりますが、中華民国の永続的な生存と発展のため、われわれは断じて気を緩めてはなりません。私はこの外遊中、わが国の外交に精力を傾注するとともに、立法院での審議の経過と結果を掌握し続ける所存です。この十三日間、わが国にとって外交および内政面で多大の効果が上がることを望んでおります。
【行政院新聞局 8月12日】
●ロサンゼルスで熱い歓迎
游錫堃・行政院長一行は米西部時間十二日にロサンゼルスに立ち寄り、民進党米西党部、米国客家聯合会、台湾同郷聯誼会など在米僑胞約二百名の熱い出迎えを受けるとともに、空港に出迎えたウイリアム・ブラウン米在台協会主席代理と会見した。游院長は席上、米国と早期に自由貿易協定(FTA)を締結したいとする台湾の意思を伝え、「各国とも中国の圧力を受け、台湾とのFTA締結を躊躇しているが、まずこの局面を打破したい」と語った。
さらに「台湾は米国のアジア太平洋戦略にとって、きわめて重要な位置を占めている。したがって台湾が国際経済のなかで萎縮すれば、それは米国にとっても不利になる。台湾と米国の関係は軍事面よりも価値観によって結ばれている。米国のためにも、早急に台湾とFTAを締結すべきだ」と強調した。
翌十三日にはレーガン元大統領の墓に献花し、米国会議員団と両岸問題について意見を交換し、十四日にドミニカ共和国に向け出発した。
《台北『自由時報』8月14日》
●ドミニカ共和国に人道支援
現地時間十五日にドミニカ共和国を訪問した游院長は、同国政府および僑胞の歓迎を受けたあと、フェルナンデス新大統領と会見し、十六日に同大統領の就任式に陳水扁総統の特使として出席した。この時の模様について行政院新聞局は台湾時間十八日に以下の発表をした。
○ ○ ○
游錫堃・行政院長は八月十六日、フェルナンデス・ドミニカ共和国大統領の就任式に出席した際、同国にコメ、医療用品などの人道支援をすると発表した。陳其邁・行政院スポークスマンは、「国内の各関係機関は游院長からの指示を受け、現在すでに支援関連業務を開始し、コメは近日中に船積みしてドミニカ共和国に送り出し、医療用品は品目と数量が確定しだい迅速に処理する。これらが最短時間でドミニカ共和国に到着し、同国国民の当面における食糧と医薬品の不足問題解決に役立てば幸いだ」と発表した。
フェルナンデス・ドミニカ共和国新大統領は、八月十六日午前の就任演説において、同国の経済問題と医療問題に言及した。その夜の晩餐会に出席した游錫堃・行政院長はフェルナンデス大統領に、コメ一万トンを緊急援助し、当面の食糧問題の解決に寄与したいと申し出た。医療用品については、行政院農業委員会と衛生署が消毒剤、衛生用品、医療用品などの品目と数量を検討し、決まりしだい船積みする予定である。
【行政院新聞局 8月18日】
●式典外交に多大の成果
游錫堃・行政院長はフェルナンデス・ドミニカ共和国大統領の就任式で友好国、無国交国を問わず広範な式典外交を展開し、多大の成果を上げた。ペルチェ・グアテマラ大統領は、游院長に台湾企業のグアテマラへの投資を拡大するよう要請し、早期に台湾とFTAを締結したいと申し出た。モシコソ・パナマ大統領は五年の任期が迫っているが、任期中五年間における台湾のパナマに対する友好と支援に感謝の念を表明するとともに、「政権が交替してもパナマと台湾の友好関係は影響を受けない。以前、パナマは中国と国交を結んだことがあったが、得るものは障害ばかりであった」と述べた。パチェコ・コスタリカ大統領は、九月の国連での演説で明確に台湾支持を表明すると確約した。
アリスティド・ハイチ大統領との会談では、国交はないものの游院長はハイチに民主選挙の行政ノウハウを提供するなど、知識面および人道上の支援を推進すると約束した。また游院長はレチシア・スペイン王妃に適切な時期での訪台を要請し、レシチア王妃は快諾した。
《台北『中央社』8月17日》
蓮舫・参院議員が陳水扁総統と会見
「台湾の娘」に台日の架け橋を期待
今年七月の参議院選挙に当選し、日本で初めての台湾系国会議員となった蓮舫氏が、八月十四日から台湾でおこなわれた民主太平洋大会に招かれ訪台し、同十六日、陳水扁総統と会見した。
陳水扁総統は蓮舫氏との会見のなかで、観光や仕事目的で日本を訪れる台湾国民に対するノービザ開放について協力を求めた。陳総統は台日間の人的往来に関し具体的数字を挙げ、「二〇〇三年に台湾から七十三万人が観光や仕事で日本を訪れた。日本からの渡航客はSARSの影響で六十五万人に留まったが、今年はこれを上回るはずである。台日間の交流がこのように頻繁になっている現在、ビザの便宜をはかることは重要な課題だ」と強調した。また、さきごろ蓮氏が所属する日本民主党の国会議員と会見したことに触れ、同議員らが政権を取りたいと意欲を見せていたことに対し、「民主党が日本の政界で輝く日が近づいている」と述べて、同党の昨今の積極的な活動を評価した。
陳総統は「台湾は自分の祖国」と語る蓮舫氏を「台湾の娘」と呼び、蓮氏が今後台日の新たな架け橋となり、台日間の自由貿易協定(FTA)、漁業交渉、台日安全保障対話メカニズムの構築および台湾の世界保健機関(WHO)加盟への支持などについて、これまでどおりの協力を得られるよう要請した。これに対し蓮氏は「台湾がWHOに加盟できないのは非常におかしなことであり、台湾の人々の健康に関して、中国が反対する理由はない」と述べた。
蓮舫氏は、ビザの問題について「日本が台湾の観光客にノービザ措置をとるべきだ」と陳総統の意見を支持し、また台湾の国連加盟問題についても、日本政府は従来の外交政策を徐々に見直し、支持すべきだと表明した。
陳総統はさらに、蓮氏が台湾を父の祖国だと公言していることを評価し、「これは彼女が自分のルーツを忘れず、祖国を誇りに思う気持ちの現れであり、彼女の台湾に対する強い支持を表している」と語った。
《台北『中国時報』8月17日》
●高雄市長とも会見
蓮舫・日本民主党参院議員は八月十七日、高雄市庁舎で謝長廷・高雄市長と会見した。父親の仕事の関係で、日本に留学中も休みのたびに高雄を訪れていたという蓮氏は、「高雄市には格別の思い入れがある。当時に比べてこの街は目覚しく変化した」と驚き、市長の功績に敬意を表した。
かつてテレビ局でキャスターをしていた蓮舫氏は、二〇〇〇年と〇四年に総統選挙の取材で訪台しており、今年三月にも、謝市長に総統選挙についてのインタビューをおこなったという。その蓮氏が今は日本の国会議員として高雄を訪れたことに、謝市長も非常に喜び、蓮氏が今後台日の架け橋として活躍するよう期待を表した。
《台北『中央社』8月18日》
●民主太平洋大会に出席
蓮舫氏は八月十五日、台北市内のホテルで開催された第二回民主太平洋大会の「円卓フォーラム」に出席した。蓮氏は日本語で発言し、「同大会の開催は地域の平和と発展に大きく寄与している」と述べて、また日中韓などの海洋資源の開発をめぐる衝突について、「互いの協力を衝突に変えるべきだ」と訴えた。
会場に到着すると同時に取材陣に囲まれ、注目を集めた蓮舫氏は、会議の合間に受けた取材で「陳水扁総統を非常に尊敬している。今後総統が日本を通過する必要がある場合は、日本政府は柔軟に対応すべきだ」と語った。
《台北『自由時報』8月16日》
中国が「統一法」を制定したなら?
中国の「法律戦」に大陸委員会が見解示す
中国は台湾に対し、「文攻武嚇」のほかにも「法律戦」(立法によって台湾を追いつめる)を仕掛けようとしている。その顕著な例が、現在見られる「統一法」制定への動きである。それは国内法によって台湾併呑に法的根拠を持たせようとするものである。これについて行政院大陸委員会は七月に次の分析と見解を示した。
一、背 景
一九九五年に李登輝総統(当時)が訪米してから、中国の学者や「全人代」代表らが次々と「統一法」に似た法の制定を建議するようになった。それが本年(二〇〇四)二、三月以来、集中的に「統一法」制定の討論をする現象が見られるようになった。中国当局(温家宝や国務院台湾弁公室など)も公開の場で「統一法」制定の可能性を示唆するようになった。ここに中国内部において、「統一法」制定の声が高まってきた次第だが、それが両岸関係に及ぼすかもしれない影響には注意を要するものがある。
二、影 響
中国のいわゆる「統一法」はまだ具体的な立法化への段階には入っていないが、ひとたび具体化へ動き出すと、それはただちに立法化され、両岸関係、米中台関係、ならびに地域の安全にとって大きなマイナス要素を形成するであろう。両岸関係について言えば、中国が正式に「統一法」を制定し、それを両岸関係処理の法的根拠にした場合、中国の対台湾政策の範囲が狭められ、別途方法の場が縮小されたことを意味する。もしそこに「統一の時間表」が明記された場合、それの実行を意図するようになり、台湾海峡情勢に不確定要素を形成することになる。
アジア太平洋地域の安全と安定については、それは一方的に台湾海峡の現状を変更しようとするものであり、海峡の安定を望む国際社会の願望に真っ向から挑戦するものとなる。さらに「統一法」に予想される反平和的な要素は、アジア太平洋地域ひいては全世界の平和と安全に直接影響を及ぼすことになり、中国が現在国際社会に標榜している「平和的台頭」の政策ならびにそのイメージにまったく反するものとなる。
三、台湾の努力
平和と良好な発展は、わが国政府の二大支柱である。陳水扁総統は就任演説のなかで、「台湾国民の同意においてのみ、両岸関係のいかなる進展の可能性をも排除しない」と表明している。現段階においては平和的進展を目標にし、両岸の平和的で安定した相互連動の構造確立を目指し、両岸交渉を再開し、共同で台湾海峡の安定を維持しなければならないとしている。現在、政府は「両岸平和発展委員会」を組織し、「両岸平和発展綱領」を制定し、両岸の長期的に平和で安定した関係を具体的に進めるための、わが国の将来における政策の根拠にしようとしている。
四、結 論
現段階では「統一法」制定にまだ具体的な動きは見られないが、中国はこれを確実に意図し、両岸の対立を煽り、台湾を挑発し、国際社会に向かっては圧力の道具にしようとしている。国際社会はこうした緊張形成の可能性について関心を持つべきであり、各種の方途を講じて影響力を行使し、中国当局が地域の平和と安定をさらに破壊しようとする行為を阻止しなければならない。
【行政院大陸委員会 7月15日】
中国が文化面に不当圧力
国連が今年の国際平和デー(9月21日)に発行する記念切手の図柄を世界のすべての少年少女を対象に公募し、台湾の中学生の作品が入選したが、中国の政治的圧力によって突然採用が取り消された。
外交部は八月十五日、中国のこうした横暴な政治的圧力に対し「国際的にも認められず、両岸人民の感情を著しく傷つけるものであり、両岸関係になんら益するものはなく、さらに悪化するばかりである」と厳重抗議し、中国当局に不当な干渉を停止するよう呼びかけた。
【外交部 8月15日】
中国が文化面に不当圧力
国連が今年の国際平和デー(9月21日)に発行する記念切手の図柄を世界のすべての少年少女を対象に公募し、台湾の中学生の作品が入選したが、中国の政治的圧力によって突然採用が取り消された。
外交部は八月十五日、中国のこうした横暴な政治的圧力に対し「国際的にも認められず、両岸人民の感情を著しく傷つけるものであり、両岸関係になんら益するものはなく、さらに悪化するばかりである」と厳重抗議し、中国当局に不当な干渉を停止するよう呼びかけた。
【外交部 8月15日】
自然溢れる花蓮の観光バス一日旅行㊦
温泉、蜆とりを体験、絞りたてミルク、特製アイスを賞味
「瑞穂温泉」へ向かう途中、台東へ通じる幹線道路沿いの小さな店の前で観光バスは止まった。「杜媽媽」と書かれたその店先には蒸し器が並び、中から湯気が立ちのぼっている。運転手がバスを降り、店から包みを持って「あなたたちの昼食だ」と言って差し出したのは、台湾ではどこにでも見かける「肉粽(ちまき)」だった。観光案内のパンフレットに「風味午餐」とあったので、地元の特別な名物料理か何かと勝手に想像していた私は、肩透かしを食った気分だった。
だが温泉から上がると気分は晴れ、もはやちまきに対する不満など、どこかへ吹き飛んでしまった。とにかく腹ぺこだったので、おもむろに一口ほおばるなり、その美味しさに思わず唸ってしまった。中の具は肉だけという素朴さながら、ほのかに竹の皮の香りがするもち米の上品な味わいと、甘辛く煮込んだ肉のうまみが絶妙なのだ。友人も同じ思いらしく、顔をほころばせている。「空腹なら何でも美味しく感じるもの」と言われそうだが、この店のちまきはやはり特別だった。運転手の話によると、いまは亡き蒋経国元総統が絶賛した店だそうで、現在も地元で人気なのだという。さらにこの店の「四神湯」のスープも絶品だった。当帰や甘草などの漢方薬に、はと麦や豚のモツを加えて煮込んだもので、コクがありながらさっぱりしている。あとでこのスープが女性の体にいいと聞いて、ますます気に入ってしまった。
バスは知らぬ間に幹線道路を外れ細い山道に入り、やがて目の前に広い牧草地が広がった。ここは花蓮県瑞穂郷にある、通称「瑞穂牧場」だ。ここには十軒の酪農家が乳牛を飼育しており、その数は二千頭にも及ぶ。瑞穂は中央山脈を源流とする五本の河川が集まる場所で、その昔「水尾」と呼ばれていた。澄んだ空気と清らかな山水が豊富に注がれる瑞穂には質のよい牧草が育ち、酪農に有利な条件が揃っている。その証拠に、一頭あたりの搾乳量は一日二十リットルを数え、三年連続全国一を誇っている。瑞穂牧場の牛乳はすべて統一グループが管理しており、政府が推進する「酪農の観光化」政策に沿って、最近牧場の一部が観光客に開放された。
ここの「瑞穂牛乳」はコンビニでも手に入るが、絞りたてのミルクを使ったチーズやアイスクリームはここでしか販売されておらず、土産用に買い求める人も多い。牧場の隣には日よけのパラソルのついたテーブルと椅子が並んでおり、そこに腰掛けアイスクリームを食べながら一面の緑の牧草地に牛たちがのんびり草を食む姿を眺めていると、それだけで心が安らいでくる。と、ときおり目の前を軽やかな足取りで通り過ぎていくのはダチョウたちだ。最近牛肉に代わる食用肉として台湾でも注目されている。この牧場でも何頭か飼育されているようだ。子どもたちの差し出す餌めがけてヒョウヒョウと走り来るダチョウの姿はユーモラスで、観光客の笑いを誘っていた。
瑞穂には酪農以外にも誇れるものがある。北回帰線に位置し、温暖で降水量が多く、年間を通じて霧が発生しやすい気候と、土壌の排水性にすぐれている点は、お茶の栽培に適している。名産の「天鶴茶」はすでに三十年以上の歴史があり、現在も二百ヘクタールの茶園で栽培されている。発酵の程度は包種茶と凍頂烏龍茶の中間で、両者のよさを兼ね備えたバランスのよいお茶として人気がある。「舞鶴茶園」では茶畑を見学できるほか、お茶の試飲、販売もしており、茶芸館でゆっくりお茶を楽しむこともできる。
花蓮の光復郷には、日本統治時代に建設された精糖工場が現在も残っている。精糖産業は戦後も栄えたが、工業化が進み、やがて安価な砂糖が大量に輸入されるようになってから生産が大幅に縮小された。光復工場は二年前に生産を完全停止し、現在はもっぱら「観光施設」として位置付けられている。
ここでは精糖工場名物の昔ながらのアイスキャンディー、アイスクリームが楽しめるほか、「台糖」が製造するさまざまな食品が販売されている。また、昨年からは工場への立ち入りも開放され、予約制で、団体客に限り解説員が随行し、砂糖の製造過程を見学できるようになっている。
さきの牧場で食べたアイスクリームでお腹は空いていなかったが、せっかく訪れた記念にと、アイスキャンディーを買い求めた。小豆の入った普通の「金つば」だが、ほどよい甘さで美味だった。関係者の話によると、台湾にある精糖工場のうち、ここ光復工場で作るアイスはとくに評判だという。その理由は水にあり、中央山脈の山の湧き水が美味しさの秘訣なのだそうだ。
お腹も満たされ、そろそろ疲れが出始めたのか、バスの揺れが眠りを誘う。向かう先は最後の目的地「立川漁場」だ。ここは「黄金蜆」の養殖で知られ、蜆採りを体験できる。
バスを降りるなり強烈な匂いが鼻をついた。畑などで肥料に使われる家畜の糞の匂いだ。聞くと、隣で養殖している魚の餌に使われているという。おかげで一気に眠気が覚めた。この匂い、ずっと続くのかと気になったが、施設の建物に入るとほとんどしなくなり、奥に広がる池ではすでにたくさんの親子連れが蜆採りを楽しんでいた。
私たちはジーンズの裾をたくしあげ、池に入った。水の深さは膝の高さくらい。腕を伸ばし底の砂をあさりながら埋まった蜆を探し出すのは思ったより重労働だった。油断すると胸が水につかってしまい、かがんだ姿勢を長く続けると腰も痛くなる。ときどき休みながら、それでも三十分もすると、蜆で箱が一杯になった。採った蜆は持ち帰れるほか、付設のレストランでは蜆汁を味わえる。空を見上げると、いつのまにか陽は傾き、時計の針は夕方の五時を回っていた。
○ ○ ○
花蓮へはこれまで何度か訪れているが、せいぜいタロコ峡谷と市内観光ぐらいで、遠くまで足を伸ばす機会、というより交通手段がなかった。今回のバス旅行は花蓮の豊かな自然と歴史を再認識できた旅行だった。だが正直に言えば、回る場所が多すぎて、一カ所に費やせた時間が短く、慌しかったのが残念だった。
とは言うものの、観光バスは外国人観光客にとっては一人でも気軽に参加でき、多くの観光地を効率的に楽しめる絶好の手段である。「台湾観光年」の今年は、各地でこれまでに最も充実した以下の二十五の路線で観光バスが運行されている。皆さん方もぜひ、まだまだ知らない台湾の魅力を発見してほしい。
【北部】十四路線
北海岸・野柳風景区一日ツアー
* 東北角海岸・金瓜石・九份一日ツアー
* 九份・東北角海岸観光半日ツアー
* 基隆港・野柳・北海岸公園半日ツアー
*指南宮・猫空茶芸の旅半日ツアー
* 三峡・鶯歌民俗芸術観光半日ツアー
*台北市内観光半日ツアー
*台北夜景観光半日ツアー
*烏来先住民部落巡礼半日ツアー
*陽明山国家公園・温泉浴半日ツアー
* 山水北横一日ツアー
* 桃園満喫一日ツアー
*北埔老街・美食一日ツアー
* 新竹竹塹芸術美食一日ツアー
【中部】四路線
* 雪覇国家公園・観霧一日ツアー
*雪覇国家公園観霧自然探訪一日ツアー
*南投清境農場・盧山温泉一日ツアー
* 埔里酒香紙都・日月潭山光水色一日ツアー
【南部】二路線
* 嘉義奮起湖・来吉一日ツアー
*懇丁観光半日ツアー
【東部】五路線
*花東山海風情一日ツアー
* 花蓮テーマパークの旅一日ツアー
* 太魯閣自然探索の旅半日/一日ツアー
*花東縦谷四季の旅半日/一日ツアー
* 花蓮太魯閣峡谷観光一日ツアー
●問合せ 交通部観光局
http://taiwantourbus.justaiwan.com/japan/index.html(日本語)
〈取材:本誌編集部・山田〉
台湾観光年
台北MRTが十周年
●記念グッズ発売中
台北市新交通システム(MRT)が今年開通十周年を迎えるのを記念して、さまざまな記念グッズが販売されている。
グッズは主にMRTの駅と車体をデザインしたもので、フォトフレームや小物入れ、腕時計などのほか、シルバーの「十周年記念切符」を収めた手帳(限定二百セット、各五百元〔約千七百円〕)など二十七種類。なかには、MRTの路線を人生ゲームに見立てたユニークなものもある。
これらの記念グッズは九月十日まで、MRT商品館、MRT忠孝復興駅、西門駅などで販売されている。
●二十四時間対応のホットライン
MRTを運営する台北捷運公司は十周年を記念して、このほど二十四時間対応の案内サービスセンターを開設した。専用のホットライン(02-2181-2345)を設け、年中無休で対応する。またこれを機に、乗客の利用の最も多い台北駅と、忠孝復興駅の二カ所に236インチという世界最大の最高の解析度を持つLED液晶ディスプレイが設置された。画面には消費者に役立つさまざまな情報と、台北市の市政案内などが流される。
台北捷運公司によると、MRTの利用客は五年前には一日約二十万人だったが、路線の増設にともない、現在百万人近くに達している。
《台北『民生報』7月30日》
北投温泉博物館がリニューアルオープン
台北市の三級史跡に指定されている北投温泉博物館がこのほど改修工 事を終え、八月八日、リニューアルオープンした。
同博物館はもともと台北市が運営する公営施設だったが、改修を機に市と北投住民が共同で運営することになった。
リニューアルオープンを記念して、現在同博物館では北投にゆかりのある人物を紹介する特別展を開催しており、このほかマグネット式の本の栞(十種類のデザインがワンセット)を四百元(約千二百円)で限定販売している。
同博物館では、家系図や日記、書簡、北投地域の平埔族と漢民族との交易の覚書やそれに関する文献、北投にゆかりのある人物、事件、風景など、昔の写真を一般から広く募集している。
《台北『民生報』8月9日》
人気観光地の上位半数は博物館
交通部観光局の統計によると、昨年の台湾の人気観光地ランキングで、上位十四位の半数以上を広義の「博物館」が占めたことがわかった。これまで、台湾を初めて訪れる外国人観光客が必ず立ち寄ると言われた故宮博物院は、一九九八年までベスト四にランキングされていたが、昨年は新型肺炎(SARS)の影響で参観者は百三十二万七千人にとどまり、第十四位に後退した。
観光地で最も人気があったのは中正紀念堂(六百十八万人)で、以下、獅頭山風景区、観音山風景区、台北市立動物園、科学博物館、陽明山国家公園、剣湖山世界、瑞芳風景特定区、台北国父紀念館、海生館、霧社風景区、士林官邸、の順となっている。
また人気が上昇している広義の「博物館」は、科学関係の施設では参観者が増えているものの、芸術関係は下火にあるという。
《台北『聯合報』7月25日》
台北偶戯館がオープン
台湾の伝統的な人形劇・布袋戯や傀儡戯(あやつり人形)、皮影戯(影絵芝居)で使われるさまざまな人形を展示した博物館「台北偶戯館」が、このほど台北市の大型ショッピングセンター「京華城」の隣にオープンした。
同博物館は台北市と九歌児童劇団が共同で運営するもので、建物は「京華城」が建設した。館内には約四千体の人形が展示されており、その半数以上は林経甫・台原基金会理事長により寄贈された。現在同博物館では「霹靂布袋戯」の特別展が開催されており、かつて黄海岱氏によって九十年以上も演じられてきた由緒ある人形などを見ることができる。また二階の常設展では、傀儡戯や皮影戯の人形のほか、世界の人形を集めたコーナーもあり、館内には専門のシアターややワークショップのための学習室などもある。
同博物館では今後「京華城」と共同で、さまざまな親子で楽しめるイベントを行い、台湾の人形劇を普及させていく考えだ。
《台北『民生報』8月8日》
中華美食展が熱気の中に閉幕
さまざまな養生料理が並ぶ
伝統を受け継ぎながらも新たな創意と工夫によって進歩し続ける台湾の美食の魅力を紹介する年に一度の祭典「中華美食展」が、八月十二日~十五日、台北市の世界貿易センタービルで開催され、連日大勢の人で賑わった。
初日、台風の影響で荒れ模様の天候だったにもかかわらず、この日三万人の参観者が詰め掛けたほか、取材のために日本や韓国をはじめ、欧米などから八十を超えるメディアが殺到した。
美食展では毎年テーマを設け、食にまつわるさまざまな企画を行っている。今年は「養生」をテーマに、食材や歴史的背景を紹介しつつ、健康と食生活についての提案がなされた。会場には、体によく、しかも低カロリーの食材として注目されているパパイヤや竹の子を使った養生料理のほか、最近日本でもデザートとして人気の高いマンゴー料理が並び、専門家による解説が行われた。
各地の有名店が勢揃いし、食べ歩きを楽しめるのも美食展の大きな魅力だ。会場には百年の歴史を持つ基隆の小吃「鼎邊銼」(米を使ったクレープ生地に肉野菜をトッピング)、嘉義の「鶏肉飯」、屏東の「猪脚」(豚足)など地方の名物料理が並び、どこも長蛇の列ができる人気だった。また例年「食べ歩きは楽しくても人で混雑し、休む場所もなく疲れる」という参観者の声を反映し、今年は会場内に「参観順路」の標識を設け人の流れをスムーズにしたほか、休憩所を多く設置するなど改善を施した。
●各国の有名シェフが競演
美食展最大の見所である恒例の「美食コンテスト」には今年も各国から一流シェフが集まり、団体、個人枠に分かれ技を競い合った。海外からは日本、マレーシア、シンガポール、韓国、香港、中国の各チームが参加し予選を戦った。前評判の高かった日本チーム、それに台湾も力を発揮できず、ともに予選で敗退し、中国とマレーシアが決勝戦に勝ち抜いた。中国は世界のコンテストに出場しているベテランチームで、自他ともに「最強」を誇る。一方のマレーシアは、秘密兵器とも言える持参の二十種類以上のスパイスが強みだ。
決勝戦は与えられた食材を使い、四時間以内に七品目の創作料理を完成させる。今年のテーマは「アイデア中国料理」。選ばれた食材は澎湖のヘチマ、ウナギ、鶏、サクラエビ、日本産の貝類、竹の子、セロリ、マンゴー、パイナップルなど合わせて三十八種類だ。それらはブラックボックスに収められており、その場で開封されるため、出場者には知らされていない。両チームとも最初の四十五分間、チーム内でメニューを相談し、残りの時間で調理する。審査は「味」四〇点、「オリジナル性」三〇点、「外観」二〇点、「衛生」一〇点で評価された。中国チームは「普段使い慣れない食材が多く当惑した」と言うものの、ベテランの実力を見せ、審査員の全員一致で中国チームに軍配があがった。
《台北『民生報』8月16日ほか》
二〇〇四年大学「分配入試」が終了
合格率は史上最高の八七%に
二〇〇四年度大学「分配入試」の結果が八月九日、発表された。〇四年度大学聯合分発委員会の統計によれば、今年の分配入試の願書提出者は十万百三十二人、このうち合格者は八千九百三十九人で、合格率は八七・〇五%となり、昨年の八三・二二%を〇・〇四ポイント近く上回った。
「分配入試」では、おもにその年の夏に全国一斉でおこなわれる「指定科目試験」と、一部では春の「学科試験」の成績をもとに、受験者が志望する大学を選んで願書を提出した後、最終的に各大学が合格者を選出し、発表するシステムとなっている。今年は各校の合格ラインが去年よりさらに下がり、学生を募集した千四百六十の学部のうち、十三学部で最低合格ラインが百点に満たなかった。一方、合格ラインが高かったのは、台湾大学法律学部、同電機学部、同医学部などで、このうち電機学部では一科目平均九十点以上ないと合格は難しく、狭き門となった。
こうした状況について、杜正勝・教育部長は「今年は高校卒業生の九割が大学に合格した計算となり、わが国の大学合格率は世界一と思われる。今後は大学の質向上に努めることが、教育の主要課題である」とコメントしている。
●ネットで合格検索、願書記入ガイド講座―新時代の受験へ
今年の大学分配入試は、七月二十日までに指定科目試験の成績表が各受験者の手元に届いた後、同二十七~三十日までに願書(志願カード)に希望の大学を記入して指定の場所に提出することが義務付けられていた。希望する大学を、自分の試験成績のレベルに合わせて記入するため、一定のテクニックが必要で、中国時報などでは願書提出に先駆けて台北、台中、台南各市で無料の「願書記入テクニック講座」を設け、学生の便宜を図った。
また、入試発表はこれまでの合格者の張り出しに代わって、今年から各受験者がインターネット上で検索できるようになった。
●「特殊受験生」が増加
〇四年度大学聯合分発委員会の統計によると、今年入試で優遇措置を受けられる「特殊受験生」は昨年比で約五割増加した。このうち、先住民受験生は合格ラインを二五%、僑胞受験生は二〇%引き下げることができ、また軍除隊者の受験生は合格ラインを一〇%あるいは二五%引き下げか、試験の総点数を二五%上乗せする、などの優遇措置が認められている。分析によれば、これら特殊受験生の総数は昨〇三年の千五百九十二人から、今年は八百六十四人増加して二千四百五十六人となった。
●各地で「大学博覧会」も開催
「選ばなければどこかに入れる」とはいえ、自分にマッチした大学を探すのはなかなか難しい。学生に各大学の情報を提供し、また全国の大学に学生獲得の機会を与えるため、指定科目試験終了後の七月下旬から、教育部と中正大学が中心となり、台北、台中、台南三地区同時に「全国大学博覧会」が開催された。この活動には約八十校が参加し、各学部の特色や今後の教学方針などを仔細に紹介した。
《台北『中国時報』8月10日ほか》
文化ニュース
「模擬国連会議」に台湾学生参加
積極的討論で外交の場を体験
世界各国の学生が国連参加国代表に扮し、さまざまな議題を討論して国連会議を体験する「二〇〇四年ウィーン模擬国連会議」が、八月九~十一日、オーストリアのウィーンで開催された。
本会議には、米国、ドイツ、スペイン、ロシア、イタリア、韓国、シンガポール、カナダ、オーストリア、ルーマニア、インド、ギリシャ、ブラジル、トルコなどから訪れた二百名近い学生が一堂に会し、それぞれが各国連加盟国代表や国連国際組織に扮して、人権問題、若者の起業精神の高揚と失業率の改善問題、工業のグリーン化と環境保護問題、イラク再建問題など国際議題の解決策について討論をおこなった。
台湾からは、今年四月にニューヨーク国連本部でおこなわれた同会議に続き、台湾大学、清華大学や世新大学などの学生九名が、金車基金会の引率で再び参加した。学生代表は前回より肩の力が抜け、会議で積極的に発言したが、とくに普段交流する機会が少ないヨーロッパ勢との討論は、青年たちにとって新しい交流の経験となった。
《台北『中国時報』8月11日ほか》
力に負けず今後も創作を
平和テーマに描いた力作
中国の不当な圧力により、採用が取り消された(本誌9頁参照)台北県立新埔中学美術部の生徒・楊智淵さんの画は、国際ライオンズクラブが毎年おこなう国連ポスターコンテストで、三百の地区のなかで第一位に選ばれた作品だ。
作者の楊智淵さんは、出生時に水頭症という重病になり、脳の手術で平衡感覚と運動神経がおかされて長時間の歩行が困難となった。しかし楊さん自身はこのことをバネに、画の創作に没頭していった。今回の作品には、子供を乗せたハトが戦争から離れて飛び立つ様子がダイナミックな構図で描かれており、「九・一一同時多発テロ事件に触発されて、平和を願う心を画に描いた」という。画のなかに各国の国旗とともに台湾国旗が描かれていたため、今回政治的圧力の的となったが、楊さんは八月十八日、潘文忠・台北県長から激励と画材の贈呈を受け、「これに負けず、今後も創作に励みたい」と語った。
《台北『中央社』8月12日》
国際化学オリンピックで好成績
金、銀、銅メダル計五個を獲得
第三十六回国際化学オリンピックが七月十八~二十八日まで、ドイツのキール市で開催され、六十一カ国から二百三十四人が参加したなか、台湾は金メダル一個、銀メダル二個、銅メダル三個の成績を収めた。
化学オリンピックは、国際数学オリンピックと同じく、東欧三カ国の高校生の学力試験から発展したもので、一九六八年からスタートし、一年に一度開催される化学の国際大会だ。
金メダルを獲得したのは、周芳頡さん。中国に進出している台湾企業の子弟で、義務教育修了後中国に在住していたが、中山紀念中学を卒業し、九月には台湾大学に入学する予定であることから、台湾代表としての出場が認められた。このほか、国立武陵高校三年生の温恪瑩さんと国立台中第一高校三年生の張凱博さんがそれぞれ銀メダル、また台北市立建国高校二年生の楊翔宇さんが銅メダルを獲得した。
《台北『中国時報』7月29日》
お知らせ
二〇〇四澎湖世界華人マラソン出場者募集中
黄金のビーチと真っ青な海が広がる澎湖でマラソン大会が開催されます。現在出場者を募集中で、海外から国籍に関わらず参加できます。
日 時 10月3日(日)
内 容 ①フルマラソン
②十㌔マラソン
会 場 澎湖馬公市観音亭
参加資格 フルマラソン:十六歳以上の男女/十㌔マラソン:十二歳以上の男女
申込法 申込書に記入し郵送、またはファックスで申し込む。
申込先・問合せ 澎湖世界華人馬拉松準備委員会
(住所:台北郵政第149-286号)
Tel 02-2798-9488
FAX 02-2658-4182
E-mail j6105@ms31.hinet.net
※出場者には、澎湖一泊二日、または二泊三日のプランを優待価格で利用できます(詳細は彩虹国際旅行社[TEL:02-2567-7177 ]へ)。
春 夏 秋 冬
最近日本の由緒ある温泉地で、水道水を沸かした湯を「温泉」と偽って謳ったり、「温泉の素」を入れて誤魔化したりと、不祥事が相次いで報道されている。だから、というわけでもないが、この一週間ばかり台湾に旅行し、いくつか温泉につかってみた。そして日本と遜色ないほど施設が充実していることに、あらためて驚いた。
台湾の温泉は日本統治時代にすでに開発されたところが多く、日本風のこじんまりとした温泉旅館も少なくないが、ジャグジーやサウナなどを備えた大型のスパリゾートホテルや施設が相次いで建設されたのはここ数年のことで、健康ブームを反映し、週末は大勢の人で賑わっている。
台北市から車で1時間ほどの烏来は日本統治時代から温泉地として知られている。昔ながらの旅館風の建物に混じって目を引くのはいくつもの大型レストランで、聞けば建物の奥に個室の温泉がいくつもあり、車で家族で台北などの近郊都市から訪れ、温泉につかり、食事をして帰る客が多いのだそうだ。日本でも温泉と食事だけ楽しむ施設はあるが、大浴場がほとんどで、個室タイプの温泉は露天風呂以外あまりない。日本には銭湯文化があり、他人と一緒に風呂に入ることに慣れているが、台湾人には抵抗があるらしい。私が泊まったホテルは新しく山の中腹にあり、大浴場はなく、すべての個室に温泉風呂が付いていた。部屋からは烏来の山々が間近に見える素晴らしいロケーションで、その絶景を楽しむ位置に室内風呂が配され、まるで日本の露天風呂を独り占めしているような贅沢さを味わえる。一人約2500元(約8700円、食事は含まず)で、誰に気兼ねすることなく、ゆったりとくつろげた。
花蓮の瑞穂温泉は観光バスで立ち寄ったのだが(詳細は本誌2156号を参照)、そこはジャグジーやサウナが完備されたスパ施設で、水着を着て入るプールタイプ。自然の真っ只中にあり、時間に制限なく、大人200元(約700円)で楽しめる。
日本で慣れ親しんだ温泉を異国で味わう醍醐味は、また格別なものがある。ただ一つだけ難を言えば、鉄道やバスを利用した場合、それらの施設までのアクセスが不便な点だ。施設によってはシャトルバスを運行しているところもあるが、まだ少ない。来年10月に新幹線が開通し、日本人にとって台湾旅行がより身近になれば、そうした温泉地へのアクセスも大いに改善されることを期待したい。
(Y)