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  台湾週報2159号(2004.9.16) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
:::


台湾週報2159号(2004.9.16)

陳水扁総統が元首外交展開
パナマとの友好関係を一層強化

陳水扁総統は8月30日夜、中米のパナマとベリーズ訪問のため出発した。今回の主たる目的はトリホス・パナマ新大統領の就任式に出席するところにある。この式典で陳総統は中米各国元首との式典外交を精力的に進め、会見した各国は、いずれも台湾とのFTA締結に前向きな姿勢を示した。また、往路にハワイに立ち寄り、メモリアルとなっている戦艦ミズーリを参観したときには「中華民国の存在」を強調した。

●陳総統が中米二カ国に出発 

 陳水扁総統は八月三十日夜、中米のパナマ、ベリーズ訪問のため桃園国際空港を出発した。パナマでは九月一日のトリホス新大統領の就任式に出席する。帰国は五日朝となる。また往路にハワイ、復路にシアトルに給油のため立ち寄り、それぞれ七、八時間滞在する。 

 なお、今回の外遊は八月二十九日出発の予定であったが、台風十七号の被災地視察などのため日程が短縮された。

 陳水扁総統の外遊は五度目であり、二〇〇〇年には中米のドミニカ共和国、ニカラグア、コスタリカ、アフリカのブルキナファソ、チャド、ガンビアの六カ国、〇一年には中米のエルサルバドル、グアテマラ、パナマ、パラグアイ、ホンジュラス、〇二年六月にはアフリカのセネガル、サントメプリンシペ、マラウイ、スワジランドを訪問した。さらに二〇〇三年十二月にはパナマ独立建国百周年記念式典ならびに、米ニューヨークでの二〇〇三年国際人権賞受賞式に出席した。

 今回、陳総統は出発に際し次の談話を発表した。

   ○   ○   ○

 今回の外遊は、中華民国第十一代総統に就任して以来、最初の正式訪問であり、主たる目的は友邦パナマのトリホス新大統領の就任式に出席することと、もう一つは友邦のベリーズを訪問することです。

 台風の来襲のため私も落ち着かず、連続二日間総統府で執務し、昨日と今日は被災地の視察に出かけ、被害の大きさを直接知ることができました。崩れ落ち氾濫した山河はいずれもわれわれの生まれ育った大地であり、また家を失い家族を喪った方々の心情は察するに余りあります。

 当面の急は、早急に被災者の生活を取り戻し、人々の生活を正常に戻すことです。だから私は特に内閣と被災地の各行政首長に、全力をあげて救済に励み、軍の支援を受けて最短時間に救済措置を完了し、復興に尽力するよう要求しました。ここに改めて游院長ならびに各省庁の首長に、最短時間内に救済、復興を終えるようお願い致します。特に桃園県では土石流も洪水もなかったとはいえ水が出ない状況にあり、早急に給水工事を完成することが望まれます。この期間、外国を訪問していても、私の思いは被災地から離れられないものと思います。

 この台風により、外遊の日程を短縮し、出発を一日延ばし、米国通過には一晩も泊まらず、帰国も早めます。外交はきわめて重要であり、友邦との関係強化も絶えず進めねばなりません。外遊期間中、内閣の全員があらゆる危機に対応し、すべての施政において最大の効果を発揮されるようお願いします。

 「外交第一」は、台湾が起ち世界に進出するために絶対必要なことであり、また全国民が担わなければならない重要な使命でもあります。ちょうど今回のアテネ・オリンピックで、台湾の選手が金メダル二個、銀メダル二個、銅メダル一個をとるという過去最高の成績を収めました。わが国の選手がオリンピックの場で最高の栄誉を受け喝采を浴びるのもまた、台湾が世界の頂点に立つ栄えあるものであります。

 九月一日、私は国外にいますが、オリンピック選手団が帰国し、凱旋して来ます。ここに私は国民同胞の皆さまに、かれらが台湾というこの土地に最大の貢献をし、台湾に栄光をもたらしたことをこぞって称え、拍手をもって敬意を示すよう呼びかけます。台湾に最初の金メダルをもたらした陳詩欣選手は「自分自身が最大の敵であり、他人は敵ではありません。自分に勝ってこそ、他人にも勝てるのです」と話していました。彼女の座右銘は「苦を厭わず、忍耐、必勝」というものです。台湾の国民として、われわれは常に災害に見舞われながら苦難に耐え、困難を克服し、経済第一、外交第一、改革促進を進めねばなりません。特に改革は一朝一夕にできるものではなく、忍耐と持続と必ず勝つの精神が必要です。自己に対する自信、国民としての自覚が必要です。私は、国民の皆さまが陳詩欣選手に学ぶことを願うとともに、皆さまとともに努力したいと思っております。

【総統府 8月30日】

●ハワイで戦艦ミズーリ参観

 給油のため八月三十日夕刻(現地時間、以下同)にハワイに立ち寄った陳水扁総統一行は、現在は第二次世界大戦メモリアムとなっている戦艦ミズーリ(東京湾で降服文書を受理した軍艦)を参観し「中華民国の徐永昌代表の署名もここにある。中華民国が存在することは明らかなことであり、私は中華民国第十一代総統である」と語った。

 さらにアリゾナ記念館を参観したときには「中華民国政府を代表し、第二次大戦に散華した米国将兵に感謝と哀悼の意を捧げる。日米両国は五十数年前、激しく敵対したが、現在では最も強固な友人となり、最も好ましい相互協力の相手同士となっている」と述べた。さらに「ひるがえって台湾と中国を見れば、双方は同文同種でありながら、なぜ敵対し続けなければならないのか。敵対を続ける理由はない。私の究極の目的は、オリンピックと同じ平和の精神をもって両岸の平和を追求し、戦争のない世界に台湾国民を導くことである」と語った。
《台北『自由時報』9月1日》

 ●パナマで元首外交展開

 陳水扁総統一行は八月三十一日午後、パナマに到着しバラリノ第一副大統領と儀杖隊の出迎えを受け、市内のホテルに向かったときには、現地小学生や僑胞ら数百人の歓呼を受けた。陳総統はホテルで暫時休憩のあと、大統領府にモスコソ大統領を訪問した。このときの会談で陳総統は、モスコソ大統領の任期中五年間に台湾とパナマの友好関係が大きく前進したことに感謝の意を表明し、大統領辞任後も台湾を訪問するよう要請した。

 また陳総統は大統領府でアレンカー・ブラジル副大統領と歓談し「台湾とブラジルの貿易は往復十億ドルに達し、多くの台湾企業がブラジルに投資している。ブラジルには豊富な天然資源があり、将来両国の経済関係がいま以上に強化されることを望んでいる」と述べ、アレンカー副大統領に時期を選んで訪台することを要請した。

 またトリホス次期パナマ大統領とも就任式に先立って会談した。トリホス次期大統領とは、昨年パナマ建国百周年記念式典のときにも会見しており、これで二度目の会見となる。このなかで陳総統は「昨年台湾とパナマが自由貿易協定(FTA)を締結して以来、十分な効果が見られ、両国の今年上半期の貿易量は、すでに昨年一年間の貿易量を上回った」と強調し、さらに「パナマ運河の拡張計画はパナマ経済の発展に大きく寄与するものであり、台湾は支持するとともに出来るかぎりの支援をしたい」と表明した。さらにトリホス次期大統領に就任後の台湾訪問を要請し、トリホス次期大統領はこれを快諾した。このあと話題は呉淑珍・総統夫人がアテネ・パラリンピックの台湾選手団団長として近くアテネを訪問することに移った。

 このあと陳総統はパナマならびに国際メディアのインタビューを受け「台湾とパナマの経済関係は著しく拡大しており、現在台湾企業六十数社がパナマに投資しており、その額も十億ドルを超えている。パナマ運河の拡張計画にも、わが国は専門グループを派遣して支援する」と語った。さらに「トリホス次期大統領の選挙における公約である『新祖国計画』を台湾は支持しており、具体的な協力関係を今後策定することになろう」と明らかにした。
【総統府 9月1日】

●式典外交で台湾を強調

 トリホス・パナマ新大統領の就任式は九月一日であるが、同日、陳総統はカリブ海の友好国家であるアレクサンダー・ハイチ大統領、ムーサ・ベリーズ大統領夫妻、カステロン・ニカラグア副大統領、ステイン・グアテマラ副大統領夫妻ら十数名と朝食会を開き、台湾が中米、およびカリブ海諸国の強固な友好国であることを強調した。

 さらに正午からの就任式典と祝賀会をはさみ、トリホス・パナマ新大統領、フェルナンデス・ドミニカ共和国大統領、マドゥロ・ホンジュラス大統領、アレクサンダー・ハイチ大統領、ステイン・グアテマラ副大統領、ロドリゲス・コスタリカ前大統領らと個別会談をおこなった。なおロドリゲス氏は近く米州機構幹事長に就任することが決定している。祝賀会ではレシチア・スペイン皇太子妃とも歓談し、皇太子ご夫妻での台湾への観光旅行を勧めると、皇太子妃は強い関心を示した。

 一連の個別会談のなかで、陳総統はパナマとのFTA締結が両国の貿易に大きな効果をあげていることを説明し、各国とFTA締結交渉を進めたい旨を話すと、友邦各国はいずれも台湾との同協定締結に前向きな姿勢を示した。

 このなかでアレクサンダー・ハイチ大統領は、台湾の農業技術チームの活動によってハイチ農民の収入が倍増したことに感謝を示し、今後も一層の農業技術支援を要請した。フェルナンデス・ドミニカ共和国大統領とマロゥド・ホンジュラス大統領は、八月に游錫堃・行政院長が同国をそれぞれ訪問したことが双方の友好増進に非常に役立ったことを強調し、今後の相互協力強化の推進を話し合うとともに、台湾企業の投資拡大を要請した。またフェルナンデス大統領とアレクサンダー大統領は「台湾の発展の過程はわが国にとってドリーム・モデルであり、わが国の目標は『カリブ海の台湾』になることだ」と語った。

 ステイン・グアテマラ大統領は「わが国政府と国民は一貫して中華民国を支持する」と述べ、ドミニカ共和国、ホンジュラス、ハイチの各大統領も、一貫して台湾を支持し、台湾の各国際機関加盟に今後とも協力することを表明し、同時に台湾とは民主・自由・人権で価値観を共有していることを強調した。

 ロドリゲス氏は「米州機構加盟国の三分の一は中華民国の友好国であり、それらの国々は台湾と緊密な経済関係を保持している。米国はすでに台湾が米州機構にオブザーバーとして参加し、この機構に貢献することに支持を表明しているが、私が幹事長に就任すればこの件を具体的に進めたい。台湾はわれわれの友人である」と表明した。
【総統府 9月2日】

●外交部長とパウエル国務長官

 陳総統に随行した陳唐山・外交部長は、祝賀会開始の前に、出席していたパウエル米国務長官と歓談し、日頃の米国の台湾支援と、今年の世界保健機関(WHO)年次総会で台湾のオブザーバー参加を積極的に支持したことに感謝の気持ちを表明した。パウエル長官は式典後すぐに会場を離れた。
 
 また同じく随行した林陵三・交通部長は一日、記者会見し「台湾と米国がすでにパナマ運河の拡張工事に参加することを表明しているが、中国もその意向を示している。台湾は米国などと共同で技術参加する方式をとることになろう」と語った。
《台北『中央社』9月2日》

週間ニュースフラッシュ

 ◆外国籍配偶者のための基金会創設を準備

 游錫堃・行政院長は七月三十一日、台湾在住の外国籍配偶者の同郷会を組織し、かれらの意見を政府に反映させる体制を整えると同時に、基金会を創設し、今後十年以内に三十億元(約九十億円)を投入し、外国籍配偶者の生活やかれらの子女の教育を強化すると述べた。ちなみに、現在台湾在住の外国籍配偶者は三十万人に上っている。
《台北『青年日報』8月1日》

 ◆国際的なサイバー犯罪防止組織に台湾が加盟

 世界主要先進国八カ国で組織するG8の管轄下に置かれている「24/7Computer Crime Network」に、台湾が三十五カ国目に「TAIWAN」の名義で加盟した。インターネットが普及し、世界各地で深刻な問題となっているサイバー犯罪防止に各国が協力して取り組もうというもので、ちなみに中国は同組織に加盟していない。
《台北『青年日報』8月2日》

 ◆「駐日台湾媒体特派員聯誼会」に名称変更

 日本駐在の台湾メディアの特派員組織「中華民国駐日記者会」が八月三日、「駐日台湾媒体特派員聯誼会」に名称を変更した。同会員の投票により決定したもので、会長の張茂森氏は「取材先で中国の記者との混同を避け、仕事をスムーズに行うため」と話している。
《東京『中央社』8月3日》

 ◆七月の消費者物価指数、四年半で最高に

 行政院主計処は八月五日、七月の消費者物価指数について、「台風による七・二災害で野菜や果物の値段が急騰し、さらに国際原油価格の高騰も加わり、対前年比で三・三二%の大幅上昇となり、この四年半で最も高い水準となった」と述べた。このうち野菜、果物は前年比五五・四%も上昇し、全体の指数を押し上げたが、主計処では「急激な上昇は短期的なもので、インフレに繋がるものではない」と見ている。
《台北『聯合報』8月6日》

 ◆台湾産米の日本への流通が可能に

 行政院農業委員会は八月六日、「台湾産米が日本の輸入検査対象に正式に加えられることになり、今後日本市場への流通が可能になった」と述べた。同委員会によると、八月末にも日本の業者による台湾産米の入札が行われる予定で、政府としても今後台湾産米の輸出に全力をあげることにしている。
《台北『中央社』8月6日》

 ◆イラクの学生に「台湾奨学金」を支給

 游錫堃・行政院長は八月十日、イラク統治評議会メンバーの一人でクルド民主党指導者のバールザーニー氏と会見し、今後双方の相互交流を強化することで意見が一致し、台湾への理解を深めてもらうため、毎年クルド人学生三名に「台湾奨学金」を支給することを提案した。
《台北『自由時報』8月10日》

 ◆日本の二団体が殺害された台湾人女子学生の遺族に慰問金

 日本李登輝友の会と台湾研究フォーラムの二つの団体の代表が、先日旅行先の日本で殺害された台湾人女子学生の遺族に対し、慰問金百四十万円を持って八月十一日、台北駐日経済文化代表処を訪ね、許世楷代表に手渡した。
《東京『中央社』8月11日》

 ◆日本の税関職員が台湾に派遣

 テロ対策の一環として八月七日、日本の税関職員四名が台湾の桃園国際空港に派遣され、台湾から日本へ出国する旅行客に対し旅券とビザの審査を開始した。テロリストが偽造旅券を使って日本に入国するのを未然に防ぐための措置だが、同時に台湾人旅行客に対する日本での入国審査手続きを大幅に短縮、簡素化するメリットもある。
《台北『聯合報』8月8日》


「漢光二十号」恒春実弾演習を中止
警戒解かぬが中国軍の東山島撤収に連動

●中国軍が東山島演習中止?

 中国軍は五月より台湾海峡に面した東山島に三千人近くの軍を結集し、制海権と制空権の奪取と台湾への恫喝を意図した陸海空三軍の大規模合同演習を展開していたが、八月末、台風の来る数日前に突然撤収を開始し、同島には数百人の兵力を残すのみとなった。九月になれば海が荒れ演習に適さなくなることから、今回の撤収は演習中止を示すものとも推定できる。だが中国政府はこの件について何らの正式発表もしておらず、東山島は広州軍区に近く、すぐに軍を繰り出すことが可能なことから、国防部はまだ警戒と観測は必要と見ている。
《台北『中国時報』8月30日》

●恒春での実弾演習を中止

 李傑・国防部長は八月三十一日、記者会見を開き「漢光二十号演習の恒春での実弾演習を中止する」と発表した。これについて李部長は「八月三十日夕刻に総統官邸で陳総統と情勢を分析し、中国の一種の『善意』であることも排除できず、この時点で漢光二十号演習を中止しても軍の訓練における影響はないと判断し、総統の指示により演習中止を決定した」と明らかにした。

 陳其邁・行政院スポークスマンは八月三十一日、中国軍の東山島撤収について「その他の中国軍の演習は継続されており、減少した兆候はない。特に第二砲兵隊(ミサイル部隊)と海軍の巡航ミサイル発射演習について、わが方はすべてを掌握している。中国のわが方に対する脅威が緩和したわけでは決してない」と表明した。演習中止については「行政院は総統の統帥権を尊重する。今回の決定は国家安全系統による判断に基づくものだ。東山島に中国軍約一個師団が駐屯していたが、現在では七百人ほどになっている。中国政府筋からこれについての発表は何もなく、真意はまだ分からないが、陳総統は両岸の平和を願い、演習中止の決定を下した」と明らかにした。

 また、呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員は同日、漢光演習中止について「東山島での演習中断について中国政府から何の発表もないが、わが方は高度の『善意』を示し、われわれが台湾海峡の安定と平和を求める誠意を示したものだ」と語った。さらに「近年来、中国は経済発展にともない軍事力を拡大している」と指摘し、「中国は台湾に対して世論戦、心理戦、法律戦の『三戦』を絶えず仕掛けてきている。したがって、今回の突然の東山島撤収がこの三戦のうちの一つであることも否定できない。これについて、現在これ以上詳しい論評はできない」と語った。

 さらに呉釗燮主委は「中国の軍事力増強に対し、われわれは積極的に防衛力の向上に努めなければならない。国民の士気を高めて東アジア地域の安全を維持し、国際的な支持を勝ち取らなければならない。長期的には両岸の軍事連絡機構を確立し、偶発的な衝突を避けるようにする必要がある」と述べた。

《台北『青年日報』9月1日》

●陳総統の平和への談話 

 陳水扁総統は八月三十日午後十時五十分に中米二カ国訪問のため桃園国際空港から飛び立ったが、離陸してからすぐに機内で随行記者団と会見し、台風被害、オリンピックでの成果、これから始まるパラリンピックについての感想を述べたあと、「漢光二十号演習」の中止について次のように述べた。

   ○   ○   ○

 本日、私は中国軍が東山島での演習を取りやめたというマスコミの報道と、わが政府が把握している類似の情報に接しました。中国が台湾を対象にした東山島での軍事演習を中止したことについて、これは中国の台湾に対する善意の表現だと解釈する意見もあります。もちろん中国が善意を示すかどうかに拘らず、台湾は善意を示すべきです。したがって私は今日、空港に来る前に官邸で李国防部長と会見し、十分な検討をしました。その結果、李部長も私の見方と考えに賛意を表明してくれました。それは中国が東山島での演習を中止したことに対し、わが方としても善意を示す必要があるというものです。したがって私は、九月九日に予定していた漢光二十号演習のなかの実弾演習中止を決定しました。このことをここに正式に発表します。この決定について特に重要なことは、われわれはあくまで、平和の原則のもとに海峡両岸が相互協力し、双方勝利の局面を両岸共同で創造することを望んでいるということです。
【総統府 8月31日】

密かに進む中国の統一戦線工作
「中国軍事力報告」に見る作戦の数々

 中国は台湾に対する統一戦線工作(以下、統戦)の魔手を直接台湾南部に伸ばそうとしている。

 国防部は八月三十日、最新の「中国軍事力報告」を立法院に提出した。それによれば中国は最近の統戦の対象を台湾南部の本省人に合わせ、各種の文化ならびに宗教活動を利用して「南台湾民衆の大陸に対する観念を改変」しようとしている。このほか投資優遇政策をもって台湾企業を大陸に呼び込み、台湾の経済を葛藤させ、台湾に全面三通の開始を迫り「経済を以て統一を促す」作戦を進めている。同報告は中国の手口を次のように解説している。

●巧妙になった中国の戦術

 中国はこれまで統戦強化のため「反独立促進統一」運動を進める対象を、野党系人物、統一派団体、企業幹部としてきたが、最近は作戦を変え、南部の一般本省人に照準を合わせだした。それは宗教や文化の大陸との融合を宣伝し、南部民衆の中国に対する観念を改めさせようとするものである。

 また中国は、中国各地に進出している台湾企業を組織化し、さらに台湾からの投資を促し、台湾の資金力と技術力の優勢を中国に取り込み、企業家個人の利益を利用して台湾当局に圧力をかけ、経済面から台湾奪取の目的を達成しようとしている。その作戦には、従来の低賃金を餌に台湾企業を取り込むことも含まれており、中小企業だけでなく大手企業もその対象となっている。中国は「政経分離」を表面的な戦術としているが、実際には集めた台湾企業や学者らにシンポジウムを開かせ、両岸交流や三通開始の発言をさせ、台湾当局に政治的圧力をかけるのが目的となっている。

 中国はポスト冷戦により主要兵力を沿海部に集中させることが可能となっており、全面三通が実現すれば、民間機や商船を利用して合法的に台湾に侵入し、それを軍事侵攻の先発隊とすることができる。

●四年後には台湾侵略の能力?

 中国は、台湾が独立を宣言した場合、外国勢力が介入した場合、長期間統一交渉に応じない場合に武力を発動するとしているが、台湾が国際的支持を失った時、軍事バランスが崩れた時、いずれかに重大な政情変化があった時なども、中国が軍事力を発動する可能性がある。

 中国が取り得る作戦は、威嚇戦、麻痺戦、攻略戦の三種に分類できる。二〇〇八年までは戦力の関係から中国の取り得るのは威嚇戦のみで、内容は大規模軍事演習、ネット攪乱、部分的挑発、封鎖の脅しなどである。〇八年以降も台湾がもし防衛力を強化せず、軍事均衡が崩れた場合、麻痺戦から攻略戦を展開する可能性がある。ネットの麻痺作戦、ミサイル攻撃、特殊作戦による台北中枢麻痺作戦がこれである。攻略戦は、中国軍は現段階においてすでに二~六日で上陸部隊を東南沿海部に集結させる能力を持っている。考えられる作戦は島嶼部の占領、つぎに澎湖島攻略、最後に台湾本島上陸となるが、中国は短期間で台湾を占拠できないことは認識している。したがって現在は威嚇戦を継続する一方で、麻痺戦の能力拡充を進めるだろう。同時に台湾の内部対立を煽る作戦を展開し、非武力による三戦(世論戦、心理戦、法律戦)を現在展開しつつある。これは台湾内部の士気を崩壊させ、また国内法によって台湾攻略に正当性を持たせるものである
《台北『自由時報』8月31日》

国民による憲法改正で民主の深化を
―憲政改造座談会―

 八月二十三日、立法院は立法委員定数半減、小選挙区制の導入とともに、国民大会の廃止と公民投票による憲法改正の最終決議権採用を盛り込んだ七度目の憲法改正案を通過した。これにより憲法改正の最終的権限は、長期にわたり台湾の制憲機関であった国民大会から、公民投票による決議へと移行することとなった。

 こうしたなか、「わが国の憲政改造における理性的基礎と範囲」と題した座談会が、八月二十六日、中国時報の主催で開催され、政・学界の専門家らが今後の憲政改造について語った。以下はその要旨である。

憲政改造を全国民の運動に
葉俊榮・行政院研究発展考核委員会主任委員 

 陳水扁総統は五月二十日の就任演説で、憲政改革の理念を打ち出したが、これは直ちに国内外の高い関心を集めた。総統府では憲政改革実現のため、蘇秘書長を執行長とする憲政改革推進委員会を設立し、各界の建設的意見と全国民の参加を希望している。 

 本日の座談会のテーマとして、まず私は「憲法改正の時機」ということを取り上げたいと思う。

 九○年代初期以来、これまで六回の憲法改正がおこなわれたが、どれもほんの一部分を変更しただけだった。だが今回の改正案では、ついに国民大会が廃止され、立法院の主導のもとに本案が可決されるに至った。

 今後は、二期目の当選を果たした陳総統のもと、憲法改正における国民の存在がさらにクローズアップされ、社会の動員力が強まるときであり、すなわち今がまさに「憲法改正の時機」だと言えるだろう。このチャンスを無駄にしてはならない。

 陳総統の任期が終了する二〇〇八年までに、憲法の抜本的改革をおこなうべきだが、ただ急ぎすぎるのは禁物た。まず国民がそれを咀嚼し理解する時間がなければならない。今後は、国民をいかに憲政改革に参加させるかが重要であり、憲政改革を全国民による運動とし、幅広い討論を通して台湾の民主化と十分に連動させたうえで、国民が誇りに思える台湾の身に合った憲法を創ることが肝要なのだ。

 また、今後の憲法改正においてはその範囲をさらに広げ、人権、福祉問題をはじめ中央政府と地方自治体間の権力、財政、人的協調などを含めた行政改革にも及ぶべきである。

憲法改正の過程がより重要
顧忠華・政治大学社会学部教授

 中華民国憲法が制定された当初、憲法に関する権利は国民大会に封印され、国民との間には大きな距離があった。台湾の憲政環境はこれまで決して正常とは言えなかったが、民主化が加速するに伴い、八月二十三日、ついに国民の意思に沿った憲法改正が実施されるに至った。 

 今後の憲政改革は、「国家の形成」と「全国民に対する福祉」を法制化するという目標に向かうだろう。台湾は両岸関係の圧力や日米など国際関係による影響を常に受けているため、これらの法制化という目的を達成することは容易ではないが、こうした憲政改革のプロセスを通して、台湾の二千三百万国民が憲法と国民の関係を実感することが、大きな意義を持つのである。

 今回の憲法改正が、国民の憲法改正に対する意識を高め、国民による憲法改正を促進させたことは、台湾の発展にとってプラスであり、全国民はこの好機を利用し、台湾の民主化をレベルアップさせることができるのだ。

 憲法は、基本的に「政府の権力」と「国民の権利」に二分されるが、今後はさらに、国民の権利保障に重点を置く必要がある。


国民の主体性とアイデンティティーを形成せよ
張文貞・台湾大学法学部助教授 

 九〇年代初頭からこれまでを、憲法改正の「第一段階」とするなら、今後の「第二段階」においては、わが国の憲政改革は民主化深化の目的に向かって進むべきである。

 今回の憲法改正案では、非常設の国民大会が廃止されたが、とくに重要なのは憲法改正の最終的決議権が公民投票に移ったことで、これは台湾国民が憲法において完全な主権を持ったということを意味している。ただし、現段階ではまだすべての国民がこうした大きな意義を理解しておらず、国民の主体性とアイデンティティーを形成することが、「第二段階」における最大の課題となるだろう。これからの憲法改正は、国民の声を反映させるプロセスが重要であり、専門家やマスコミなども、国民に分かる平易な言葉でこれを論じるべきだ。

 さらに、台湾における憲政改革は今後、グローバル化に直面することとなるだろう。グローバル化とは科学技術、情報だけでなく、政治や法律などもその対象であり、新興民主国家の多くが、新たな憲法を制定する際、人権問題などに関しておのずと世界に準じている。外交面での制限が多いわが国では、新憲法に国際人権条約の規定を盛り込むなど、国際社会と足並みを揃えることが、非常に大きな意味を持つこととなる。

然るべき政治体系の確立を
黄秀端・東呉大学政治学部主任

 今後の憲政改革は、台湾の主体性という観点、すなわち「わが国が何を求めているか」ということから語るべきである。このほど立法院を通過した憲法改正案は、まだ十分でない部分はあるものの、すでに過去の統一、独立問題などの議論を脱して、台湾が結局いかなる国会と選挙制度を持つべきなのかという実質問題に着眼した点が評価できる。 

 国民大会廃止については、国内外で不可能だと見られていたが、今回このように速やかに実現したのは、やはり民意と言うしかないだろう。今後、新しい憲政改革の段階においては「いかに正常な政治体系を構築するか」を考えるべきであり、然るべき政治体系が整ってこそ、さらなる民主化の深化が可能となる。

 憲政改革の時機については、いつと限定することは難しいが、やはり第二期を迎えた陳水扁総統の任期中に実現するのが望ましい。任期を過ぎ、もし新たな総統が就任すれば、処理すべき議題はうやむやになってしまう可能性があるからだ。与野党間の確執は依然残っているが、今年末の立法委員選挙後には、双方とも心機一転して、それぞれの政治的利益は二の次にし、国の大事に取り組むべきである。

 総統制(大統領制)、議員内閣制、三権分立か五権分立かなどの問題は、正しく見極めて処理しなければならない。しかし、いかなる体制であろうとも、憲法は国の柱となる法として、政府の権力制限、国民の権利保障という二つの問題に及ぶものであり、国民の意思を凝集した実質的な法でなければならない。

歴史の客観的背景から考える
 林継文・中央研究院政治所準備処副研究員

 憲政の発展には、その客観的背景があり、歴史的流れからこれを考察することができる。 

 台湾は現在、いわゆる「半総統制」というべき政治体制であるが、これを理解するには、立憲君主の憲政史を見ることだ。 

 台湾では、国民党による一党独裁制時代の後、社会は有力なリーダーシップを求め、一方で憲法には内閣制が定められたが、憲法が制定された一九四七年から一九九一年の第一回憲法改正まで、実質的な議院内閣制としては機能しておらず、半総統制の道を歩んできた。こうした状況は台湾だけでなく、例えばフランスでは、革命により君主制が廃止され、急進的革命派が形成された議院内閣制が混乱をきたし、次第に別の指導者が求められた。独裁制と急進的民主主義との狭間で半総統制が生まれる例は多く、ほかにドイツなど約五十カ国がそうした体制をとっている。 

 台湾が今後総統制に向かうのか議院内閣制に向かうのかは別として、憲政改革の設計理念を討論するにあたっては、制度自体のよしあしだけでなく、歴史的背景を十分に考慮し分析しなければならない。

 今後は憲法本文の全面的な改正をおこない、憲法改正に関する公民投票については、その方法を吟味して国民の意思が十分反映できるよう、与野党はともに努力すべきだ。
《台北『中国時報』8月30日》

ニュース

民主の時間表こそ最重要
台湾の民主経験を生かすべき

 陳水扁総統は八月二十八日、台湾民主基金会などが主催する「両岸の民主化への挑戦と展望」と題するシンポジウムに書面で祝辞を寄せ、その中で「二十一世紀の中国、香港、台湾にとって最も重要な課題は『民主の時間表』であり『統一の時間表』ではない」と語った。 

 陳総統はさらに「中国は二〇〇二年末に『胡温体制』を確立し、中国内部に政治改革に対する期待を持たせようとした。それがたとえ人民の民主化とかけ離れたものであったにしろ、それ以上に残念だったのは、その期待が『安定がすべてに優先する』との掛け声の中で掻き消えてしまったことだ」と述べたうえで、「台湾の民主経験は直接的、間接的に中国、香港の民主化と政治改革を後押しするものだ。台湾の民主化は香港人に『自らが主人となる』ことの期待を植付け、世界のすべての華人に民主化への自信を持たせるものだ」と強調した。
《台北『自由時報』8月29日》

来年度政府予算案立法院に送付
両岸の安定と経済発展が目標

 九十四年度の政府予算案が八月三十日、立法院に送付された。一般会計予算における歳入は約一兆四千二十七億元(約四兆二千八十一億円)、歳出は一兆六千三百五十六億元(約四兆九千六十八億円)で、ともに前年度より小幅な増加となっている。なお差額は二千三百二十九億元(約六千九百億円)で、これに債務返済分の六百億元(約一千八百億円)を加えると二千九百二十九億元(約八千七百億円)の超過となるが、前年より百十億元(約三百三十億円)少なくなっている。 

 支出の内訳をみると、教育科学文化予算が三千百七十七億元(約九千五百三十億円)で、全体の一九・四%を占めて最も多く、次いで社会福祉予算の二千八百九十一億元(約八千六百七十三億円)(同一七・七%)となっている。ちなみに国防予算は二千五百十九億元(約七千五百五十億円)で、全体の一五・四%を占め、前年より〇・五%増となっている。
《台北『青年日報』8月31日》

両岸の一方的な現状変更に反対
米共和党が党綱を発表

 米国与党・共和党が八月三十日に発表した党綱について、両岸関係に関する記述を四年前と比べると「両岸いずれかの一方的な現状変更に反対する」との一文が加えられたほか、中国に対する「戦略的ライバル」との呼び名が抹消された。同党綱の主な内容は以下の通り。 

 「『一つの中国』という米国政府の政策は、共同コミュニケにも台湾関係法にも反映されている。米国は中国あるいは台湾のいずれかが一方的に現状を変更することに反対する。米国の政策は、中国が武力をもって台湾に対峙してはならないという原則に基づいている。われわれは北京が自由の台湾住民に対し統治権を有しているとは考えていない。台湾の将来のすべての問題は平和的に解決されなければならない。もし中国がこれらの原則に反して台湾を攻撃した場合、米国は台湾関係法をもってこれに対応する。つまり、米国は台湾の自己防衛を支援するだろう」
《台北『中国時報』8月31日》

台韓提起航空便が再開
両国関係の発展にプラス

 一九九二年の断交以来、十二年間途絶えていた台湾と韓国の定期航空便が再開されることになった。

 台湾の李在方・駐韓代表と韓国の黄龍植・駐台代表が九月一日、台北で両国の航空協定に調印したもので、今年十月から正式に再開される。

 両国は断交後も、香港の航空会社による定期便と、双方のチャーター便が頻繁に往来していた。調印では、双方の航空会社による定期便は台北―ソウル間で週十八便までとするが、その他の航空会社による就航便数や規模には制限を設けないことなどが取り決められた。

 外交部は「定期便の再開は、両国の関係発展と強化に非常に大きな意味を持つ。韓国の金泳三・前大統領が近く『大統領の特使』として二度台湾を訪れることになっており、このことは韓国側の定期便再開への誠意の表れであると同時に、両国関係改善の足掛かりとなるものだ」と歓迎のコメントを発表した。
《台北『中国時報』9月2日》

走れ新幹線

●九月下旬、試運転開始

 台湾高速鉄道、いわゆる台湾新幹線は車両の試運転区間の軌道工事もすでに完成し、台湾高速鉄道公司(以下、高鉄)は九月二十二日から、高雄の燕巣・整備工場で試運転を実施する。十月下旬には、高雄―台南の六十㎞区間を疾走する新幹線を目にすることができそうだ。

 高鉄は五月二十四日、高雄港で日本から第一陣となる車両を陸揚げしたあと、七月には第二陣が到着し、九月五日には第三陣が搬入される予定となっている。開通前の来年九月までに、あと二十八組を導入し、十月の開通時には三十組でスタートする計画だ。

 高鉄は一般車両とは別に「建築限界測定車」を導入している。これは超音波を使って軌道の安置や建築限界内の障害物などを測定するもので、この測定車を九月末から約一カ月間走行させ、軌道の安全確認を実施する。新幹線車両のシステム点検と試運転は十月二十五日からを予定しており、約半年間、高雄―台南間で行ったあと、来年四月末からは全区間で実施し、十月の開通に備えることにしている。

●財務問題も緩和

 新幹線建設にあたっては、これまで予定通りの開通を危ぶむ声も指摘されてきた。この二年間、国内外の不景気を理由に、立法院は国営事業が新幹線建設への投資を禁止する決議を行った結果、高鉄の増資計画が予定通り進まなくなり、四度も修正を迫られた。このため、工事の進捗にも影響が生じ、財務が行き詰まった。しかし八月十六日、高雄で新幹線車両を初めて参観した陳総統は関係機関に対し「新幹線開通に向けて問題を全力で解決するよう」指示し、これを受けて融資銀行団は同二十七日、高鉄が示した新しい財務計画を了承した。これにより、建設工程や財務問題の圧力は緩和され、来年十月の開通はほぼ問題ないと見られている。
《台北『中国時報』8月29日》

●探索館が一般オープン 

 台湾新幹線を身近に感じ、理解を深めてもらおうと、高鉄が新竹・六家駅特定区に建設した「探索館」が八月十五日、一般に公開された。

 館内には、切符の販売機や改札口、案内板など新幹線駅の設備の展示と、ゲームや模型、映像を通して新幹線の概要と世界の高速鉄道との違いなどを学ぶコーナーがあり、教育、知識、趣味を兼ね備えた博物館となっている。

 一般公開された八月十五日には、葉菊蘭・行政院副院長をはじめ、林陵三・交通部長、鄭永金・新竹県長、高鉄の殷琪・会長も駆けつけ、オープンを祝った。また夜には花火が打ち上げられ、ロックコンサートも催された。

【開館時間】毎週火曜~日曜・午前十時~午後六時(祝日は午後九時)
http://www.thsrc.com.tw/thsrex/index0.htm
《高鉄プレスリリース 8月15日》 

●高速鉄道建設の進捗状況(二〇〇四年六月末現在)
▼全体:六一・九七%
▼土木建設:九八・九六%。四十八カ所あるトンネルは、最後の天井をコンクリートで固める工事をすべて完成。橋梁工事も橋脚の設置、橋面の舗装まで完了済み。
▼駅の建設:四四・七五%。桃園、新竹、台中、嘉義、台南、高雄の六つの駅で、すでに基礎工事が終了。現在、駅舎のメイン構造部の建設が進行中。
▼軌道工事:五三・五九%。現在道床工事や、レール連結装置の設置作業が進行中。
▼操車場、メンテナンス工場:二五・一五%。左営と六家、烏日基地の工事の入札はすでに終了、現在建設中。
▼コアシステム(車両や信号、通信など):一五・五四%。
《交通部高速鉄路工程局8月20日》

桃園国際空港を拡張
第三ターミナルを建設

 観光客倍増計画や将来の両岸直航により大幅な旅行客の増加が見込まれることから、政府は現在桃園国際空港の拡張計画を進めている。 

 計画によると、第一、第二ターミナルの隣に、新たに第三ターミナルを建設する。敷地面積は五十㌶で、建設費は約四百四十五億元(約千五百億円)。第一ターミナル(十六㌶)、第二ターミナル(二十㌶)に比べ、二~三倍の広さだ。 

●十二年後、処理能力の限界に

 桃園国際空港は、第一ターミナルに続く第二ターミナルが供用を開始して今年で四年目を迎える。年間の旅客処理能力は第一、第二ともほぼ同じで三千二百万人。現在同空港で旅客が最も混雑するときでも千九百万人に留まっている。さらに昨年は新型肺炎(SARS)の影響で海外からの旅行客はさらに千六百万人に下回った。つまり、現在の処理能力から見て、まだまだ余裕があると言える。

 しかし、このまま推移した場合、七年後には二千九百万人に達すると予測されており、これに観光客倍増計画が加われば、三千二百万人を超えることも予想される。さらに十二年後は五千三百万人に達し、この時点で第一、第二ターミナルの処理能力は限界に達する。

 一般に、空港ターミナルの建設は、計画から発注、施行、審査完了まで、一連の工程に十年かかると言われている。第三ターミナルの面積は、第一、第二に比べて広いうえ、敷地内には管制センターのほか、高速鉄道、在来鉄道、MRTなどの交通機関のアクセスを考慮しなければならず、工事が非常に複雑なため、早急に計画を立てておくことが求められている。 

●建設方式などで意見対立 

 しかし、問題がないわけではない。建設方式や位置付けをめぐり、政府内で意見が対立しているためだ。行政院経済建設委員会(以下、経建会)は「政府の財政情況が厳しい」として、民間によるBOT(一定期間経営後、政府に移譲)方式を主張しているが、交通部民用航空局(以下、民航局)は「民航基金から資金を捻出し、あくまで政府主導で建設すべきだ」としている。また第三ターミナルの位置付けについても、経建委が出入国審査業務を第三ターミナルに一本化すべきだと主張しているのに対し、民航局は「問題が多い」としてこれに反対している。政府内で意見を調整するには、まだ時間がかかりそうだ。

●過境旅館が閉館 

 桃園国際空港に隣接する「過境旅館」(トランジットホテル)が、今年九月に二十年の歴史に幕を閉じる。

 同館は十一階建てで、客室数は五百十一。桃園地区では最大規模の大型ホテルを誇る。戒厳令下にあった一九八三年に営業を開始し、当時飛行機の緊急着陸に伴う旅客や乗務員、およびトランジット客や中国のパスポートを持つ旅客に対する宿泊先として建てられた。

 しかし、政治環境の変化や戒厳令の解除、ランディングビザの開放措置などにより、トランジットホテルの存在価値が弱まり、十億元(約三十億円)もの負債を抱えるまでに業績が悪化した。

 これまでにも同館を再建しようとの計画は何度か提案されたが、結局決着がつかず、最近ようやく交通部民用航空局により計画が示された。

 同局によると、建物は原則として航空産業に関連のある事業を行うものとし、BOT方式で民間に五十年間土地の使用権を与えるとしている。この九月にも入札が行われる予定で、現在中華航空が本社を桃園国際空港付近に移転させたい意向を持っており、同社でも前向きに検討しているという。
《台北『民生報』7月30日》

台湾観光年

盛大な基隆の中元祭

 旧暦の七月は台湾では「鬼月」と呼ばれ、鬼(亡霊)の住む地獄の門が開くと言い伝えられている。かれらの霊を慰め、天上の神々を祀るため、この時期、各地で中元祭が行われる。なかでも基隆は百五十年の歴史があり、最大規模を誇る。

 今年は八月十七日~九月十四日まで開催され、中正公園の主普壇はきらびやかにライトアップされる。放水燈のパレードや民俗芸能のパフォーマンスなど、多彩なイベントが繰り広げられる。以下に、その主なものを紹介する。

 ①開燈夜:旧暦六月最後の一日の深夜十二時、普渡公燈の光に導かれ、「老大公」(義民の英霊)と、あの世の魂がこの世に戻ってくる。

 ②開龕門:旧暦七月一日に鬼の門が開く。「龕」とは塔のことで、埋葬されている義民の遺骸を指し、神龕をもって老大公の神格を表す。

 ③立燈篙:燈篙には「大柏尾」を残した青竹を使い、竹の上には旗と燈幟を掲げる。天上の諸神を迎えるとともに、成仏せず彷徨う亡霊たちを盛宴に招く。

 ④迎斗燈巡行:「斗燈」は天、地、人の三部からなり、最上層の斗中には、尺、鋏、秤、剣、鏡などの吉祥、魔よけの物を供え、民衆の幸福を祈願する。

 ⑤誦経:僧侶は読経団を組織し、亡霊がしかるべきところに落ち着くように祈願する。

 ⑥放水燈のパレード:水上の亡霊を陸地に招き、宴に招待する。放水燈のパレードには老大公の巡行の意味もある。

 ⑦主普壇の普施:旧暦七月十五日、亡霊に普施を施す主な場所は中正公園の主普壇である。壇上には「富」にデザインされた文字が浮かぶ。

 ⑧跳鍾馗清壇:門を出てきた亡霊たちを押しとめる。食べ物の施しを受けた亡霊たちが過去を反省し、再びあの世に戻っていく。

●お勧めツアー

 基隆市観光協会は中元祭に合わせて、基隆の屋台と海鮮料理、自然景観を楽しむ「日帰りツアー」〔交通費、食事代込みで一人九百五十元(約三千五百円)〕を打ち出している。コースは、槓子寮砲台、二砂湾砲台の見学、碧砂漁港での海鮮料理、嶼登島、八斗子潮境公園の散策。

《台北『聯合報』8月24日ほか》


屏東へ約千人の日本人観光客 

 サンゴ礁の美しい海と緑の草原が広がる台湾南部・屏東に、今年十一月、約千人もの日本人が観光に訪れる。屏東県が国際的知名度を高めようと旅行業者と協力し、十一月にチャーター便七機を日本へ就航させる。このうち、二機は広島から、残りの五機は熊本からそれぞれ高雄空港へ向かう。四日間のツアーで、前半二日間は恒春半島を巡り、後半二日間は高雄と台南を観光する。

 呉応文・屏東県長代理は「今回のツアーをきっかけに、今後より多くの観光客が屏東へ足を運んでほしい。屏東には豊かな自然と特産物がある。『黒マグロ文化観光シーズン』などの郷土イベントも積極的に打ち出していきたい」と述べた。
《台北『中央社』8月30日》

 
アテネ五輪―決戦を終えて
初のダブル金で盛り上がる

 八月三十一日まで開催された二〇〇四年アテネ五輪で、台湾はテコンドーとアーチェリー競技で金二、銀二、銅一を獲得し、五輪参加史上初の、二個の金メダルを獲得した。メダリスト氏名は次のとおり。


テコンドー女子49キロ級:陳詩欣
テコンドー男子58キロ級:朱木炎


テコンドー男子68キロ級:黄志雄

アーチェリー男子団体:陳詩園、王正邦、劉明煌


アーチェリー女子団体:袁叔琪、吳蕙如、陳麗如

 アテネ最大の功労者は、やはり二人の金メダリスト、テコンドーの陳、朱両選手(前号参照)だ。若い二人にはさらに四年後、北京五輪での活躍が期待される。テコンドー銀メダルの黄志雄選手は今回で引退、許婚と入籍後、ともに米国コロラド大学の大学院に留学の予定だという。

●凱旋パレードで市内は人の波

 選手代表団は九月一日、金、銀、銅メダルを携えて凱旋し、午後には台北市内で祝賀パレードがおこなわれた。陳全壽・行政院體育委員會主任委員、黃大洲・五輪代表団団長らの引率のもと、九名のメダリストと家族を乗せたジープが約一時間半にわたり市内をまわった。爆竹や銅鑼の音が響くなか、沿道は大声援を送る人々で溢れた。

●金メダルまでの道のり

 台湾史上初の金メダルは、国民を興奮の渦に巻き込んだが、ここまでの道のりは決して短くはなかった。「中華民国」としての代表が初めてオリンピックに参加したのは、七十二年前の一九三二年、ロサンゼルス五輪に遡る。代表選手はただ一人、大連出身の劉長春選手で、百メートルと二百メートル陸上に参加した。

 その後は国共内戦中の一九三六年、第二次世界大戦の一時停戦中に開催された一九四〇年、一九四五年、そして一九四八年のロンドン五輪にも、「中華民国」の名称で選手を出した。 

 一九五二年のヘルシンキ五輪開催時には、国民党政府はすでに台湾に渡り、一方で中華人民共和国が五輪参加を求めてきた。国際オリンピック委員会が両岸ともに五輪参加を認めたため、台湾の五輪委員会はただちに同五輪への参加を取り止め、いわゆる「五輪の中国問題」が発生した。

 その後、両岸はそれぞれ選手を出したが、一九六〇年のローマ五輪では、台湾は四十七名の選手を参加させ、「アジアの鉄人」と異名をとったアミ族出身の楊傳廣選手が、陸上で史上初の銀メダルを獲得した。しかし一九七六年のモントリオール五輪で、中国の不当な圧力により、「中華民国」の名称を使用することができなくなる。代わりに国際オリンピック委員会が定めた「中華台北」の名称が使われることとなり、一九八四年のロサンゼルス五輪から、この名称を使用している。また、国旗、国歌に変わって五輪委員会会旗と国旗掲揚歌が使用されるようになり、現在に至っている。

 国際活動の場で不当な圧力を受けながらも、絶え間ない努力の末に獲得した金メダルは、選手のみならず台湾の全国民にとって大きな意義があると言えるだろう。いかなる名称を使おうとも、台湾の存在を世界に広くアピールしたアテネ五輪は、台湾の歴史に残るものとなった。

●国民はフィーバー、企業も喜び

 台湾アスリートの雄姿は、視聴者をテレビに釘付けにし、時差のため寝不足になった人も多かった。テコンドー決勝戦では、夜中にも関わらず百七十六万世帯が視聴した。また、選手の活躍ぶりは、賛助企業にも大きなメリットとなった。とくに金メダルをとったテコンドー競技は、実はアテネ開催前はそれほど企業から人気がなかったが、二人の金メダリストを賛助したある企業は、思わぬ宣伝効果に喜んだという。この企業では事前の約束どおり、北京五輪までの四年間、両選手の訓練費用、約三百万元(約九百万円)をすべて負担する予定だ。

●テコンドー熱

 アテネ五輪の金メダルの影響で、台湾全土でテコンドー人気が高まっている。これまで多くの優秀な選手を輩出してきた台南市でも、市教育局がテコンドーを「重点競技」に据え、九月から台湾を代表するテコンドーのコーチ・王致詔さんによる選手育成講座を開講することが決まった。王コーチによれば、台南市にはもともとテコンドーに親しむ人が多く、親たちの多くが子供を道場に通わせているという。

 同講座は王コーチ自身の提案により、「子供たちが長く続けていけるように」と、勉強に影響しない早朝練習に無料で受講できるようにした。市教育局ではすでに各小学校にこの件を通知し、王コーチと共同で選手育成を進める方針だ。

●賞金は免税

 今回テコンドー金メダリストの陳、朱両選手が授与される賞金は千二百万元(約三千六百万円)。銀、銅メダリストにはそれぞれ六百万元(約 千八百万円)、四百万元(約千二百 万円)が授与される。

 財政部賦税署によれば、アテネ五輪のメダリストおよびその他の個人、 チームの成績に対し授与される賞金は、総額で一億元(約三億円)に上るという。国庫への負担を心配する声もあるが、同部では「体育界の人材育成のために必要」とコメントしている。また、「文化、教育や研究に対する賞金への所得税は免除」という所得税法の規定によって、五輪の賞金は免税となっている。

●陳選手の物語が映画化へ

 アテネ五輪初、台湾史上初の金メダリストとなった陳選手。二十五歳とまだ若い彼女だが、十五歳ですでに国際レベルの大会で優勝、連続して好成績を収めた後、ある日突然家を飛び出し、紆余曲折の後にテコンドー選手として生きることを決めた。こんな彼女の青春物語に、香港の映画会社から「ぜひ映画化を」とラブコールがあった。アウトサイダーから金メダリストまでの激動のストーリーをドラマ化する予定だ。また国内のテレビ局からも、CMや番組出演に声がかかっているという。
《台北『中国時報』9月1日ほか》

呉淑珍総統夫人がパラリンピックに
代表団団長としてアテネ訪問

 総統府は八月二十九日、今年九月にアテネで開催されるパラリンピックに、呉淑珍・陳水扁総統夫人が選手代表団の団長として同行することを発表した。

 呉夫人のファーストレディとしての外遊は、二〇〇二年の米国訪問、二〇〇三年七月の欧州三カ国訪問に続く三回目となる。去年十月に台北でおこなわれた車椅子運動会で、呉夫人が旗の授与をおこなった際、選手からアテネパラリンピックの選手団団長になってほしいという声があがり、かねてから障害者の活動に深い関心を持ち、積極的に参加してきた呉夫人はこれを快諾したという。 

 陳総統は夫人の意思を支持し応援しているが、健康面を心配しており、夫人の外遊は外交部が全面的に手配し、安全と便宜が図られる予定だ。呉夫人は「台湾と障害を持つ友人たちのために、長旅も厭わない。障害に負けない台湾代表の奮闘ぶりをぜひ、じかに見たい」と話している。
《台北『自由時報』8月29日》

 
お知らせ

クイズに答えて賞金を当てよう

「台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟したのはいつ?」「台湾が国交を結んでいる国は何カ国?」

 これらの質問に答えられる方、答えられなくても興味のある方は今すぐ新聞局のウェブサイト(http://www.taipei.org)にアクセスしてみてください。

 行政院新聞局は台湾の国連加盟への支持を訴えるキャンペーンの一環として八月三十日~十月四日まで、同局のウェブサイト上に国連加盟の特設コーナーを設け台湾と国連に関するクイズ問題を掲載し、皆さんからの回答を募集しています。

 クイズは五題あり、四択方式で、問題は毎週一回更新されます。回答の正解者の中から毎週抽選で三名に百米ドルの賞金を、また新聞局が制作した「台湾捜奇」(The Wonders of Taiwan)のDVD、または観光局特製のデイバッグ&ショッピングバッグを九名の方に差し上げます。皆さんふるってご参加ください。


春 夏 秋 冬 

 8月25日未明、ニューヨークを発った台湾の中華航空機が桃園国際空港に近づいていた。着陸は午前6時16分の予定だった。だがこの時、台風17号が台湾北部を襲い、空港はとても着陸できる状況ではなかった。飛行機はやむなく機首を返し、沖縄の那覇空港に向かった。緊急避難である。この飛行機には、中米三カ国歴訪を終えた游錫堃・行政院長の一行が乗っていた。これに対し、日本政府はただちに72時間のランディングビザを発行するとともに、荷物検査など一切免除という措置をとった。 

 行政院長一行は那覇空港におよそ6時間滞在し、台湾北部の暴風雨が収まるのを待って午後1時半ごろ、台湾に向け飛び立った。この間 に游院長は空港の貴賓室で牧野・沖縄県副知事と会見し、沖縄と台湾の交流拡大などについて意見を交換し、さらに多くの国会議員や学界ならびに僑胞の方々からも見舞いの電話を受けた。

 この措置に台北駐日代表処はただちに感謝のプレスリリースを発表し、陳水扁総統も27日、台湾を訪問した自民党青年部・青年局の一行(団長=金子恭之・衆院議員)と面談した折に感謝の意を述べた。

 この一連のニュースは、誰が見ても聞いても心温まるものを感じるだろう。だが例外はあった。例によって中国政府である。中国外務省は台湾機緊急避難の当日、ただちに日本政府に抗議してきた。「台湾の指導者がいかなる理由をもっても、中国と国交のある国で政治的な活動を行うことに断固反対する」というのである。的が外れている。

 相手が中国政府では、いまさら唖然とするまでもない。冷徹な、と言うよりも、まったく度量がなく大人げないこうした中国政府の態度は、毎度のことなのだ。勝手に言わせておけばいいのだが、そうも行かない。日本国内に、中国の日本に対する非難や中傷を、いまなお卑屈になって有り難がる勢力があるからだ。それがかなり日本外交から自主性を奪うところとなっている。

 最近、日本のマスコミで李登輝前総統が訪日を希望しているという記事が頻繁に出るようになった。下野してからすでに4年余がたつ。元総統の肩書きが付くが、まったくの私人としての「奥の細道」探索の観光旅行である。だが毎回ながら中国が「許せぬ」と声を上げ、日本政府に圧力をかけてくる。毎回のことだが、これは李登輝さんが芭蕉の跡を散策できるかどうかよりも、日本外交の自主性が試されているのだ。
 (K)