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  台湾週報2164号(2004.10.28) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
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台湾週報2164号(2004.10.28)

対照的な日米と中国の反応
中国側の前向きな回答を忍耐強く待つ

 陳水扁総統の国慶節祝辞に対し、日米両国政府は高く評価する姿勢を示すとともに、両岸平和交渉再開が具体化されることを望むと表明した。だが一方、中国は逆に台湾の真意を曲解する姿勢を見せた。また春節チャーター便運航についても旧態依然とした政治的前提条件を示した。これに対し行政院は中国側に新たな発想と観念で台湾側の善意を汲み取るよう要求し、大陸委員会も実務的に対応するよう中国側に強く求めた。

●日米共に両岸対話望む 

 陳水扁総統が十月十日の国慶節祝辞の中で、中国に対し、武力による威嚇よりも両岸の平和的対話の開始に応じるよう呼びかけたことについて、日米両国政府は共にこれを評価する姿勢を示し、両岸対話の具体化を求める旨を表明した。 

 日本政府は同日、陳総統が「『九二年の香港会談を基礎』とし、『完全ではないが受け入れられる』方策を求め、協議と交渉の準備を一歩進めることを提議する」と述べ、さらに「目下行政部門は両岸間における『人と貨物のチャーター便』という便利で快速な方案を検討しており、早急に対岸と協議を進め、両岸三通(直接通商、通航、通信)実現に一歩前進することを希望する」と表明したことに対し、外務報道官談話で「新たな考えが示されていることに注目しており、その具体的な実現が期待される」と述べ、同時に「今後とも日本は『日中共同声明』に基づき、台湾と非政府間における実質的関係を維持する。台湾問題について、当事者同士が直接交渉し、平和的に解決することを強く望む。日本は中台双方が地域の平和と安定を重視し、早急に平和的対話を再開することを強く希望する」と表明した。また米国務省も同日の報道官談話で次のように表明した。 

「われわれは陳総統が演説(国慶節祝辞)の中で提示した建設的な意見を歓迎する。われわれはそれが、台湾海峡の緊張緩和と両岸対話再開の創意を示したものと確信する。われわれは台湾と中華人民共和国がこの機会を捉え、対話を再開し、かれらの間の対立点を平和的に解決することを望む。 

 われわれの政策は不変であり、米国は『一つの中国』政策、三つの共同コミュニケ、および『台湾関係法』の中に示した義務を遵守することを公約する。われわれは台湾独立を支持せず、いかなる一方も一方的に現状を変えようとすることに反対する。われわれは常に、中華人民共和国と台湾間の意見の相違は、台湾海峡両岸人民の平和的和解により、武力による脅威を受けず、台湾海峡両岸人民が受け入れられる形で解決されるべきだと認識している」 

《台北『中国時報』10月11日》 

●両岸対話再開に意欲 

 邱太三・行政院大陸委員会副主任委員は十月十日、記者会見において「陳総統の国慶節祝辞での両岸関係に関する談話は、両岸関係における新たな観念と新たな視野を示したものであり、両岸の将来に対し新たな契機と機会の窓口になるものだ。この談話は①公約の遵守、②両岸の敵意解消のための実際行動、③三通開始への意欲、④国内のコンセンサス形成、⑤九二年の香港会談を基礎とした両岸交渉再開といった五項目に要約できる」と述べた。

 さらに邱副主委は「九二年の香港会談の精神は、両岸双方が政治的な見解の相違に一致したコンセンサスを求めるものではなく、双方人民の権益に関して取り決めを行うなど、実務的な事項から進めようというものである。われわれはこの精神によって両岸関係が進展することを望んでいる」と表明した。 

 また葉明峰・行政院経済建設委員会副主任委員は同日、「現在、海運域外航運センターではすでに両岸間の貨物の運輸を認可しているが、この措置を空路にまで延長すれば、航空貨物や人の往来が確実に至便となりスピード化される。敏感なチャーター便の問題にしても、将来的には観光旅行者用のチャーター便運行も排除しない」と述べた。 

 経済部も同日「市場のグローバル化にともない、両岸経済の相互連動はますます頻繁となってきている。もし両岸間に平和的な対話が行われなかったなら、大陸市場の政治的リスクが高まるのみとなる」と表明し、両岸対話の必要性を強調した。 

《台北『青年日報』10月11日》 

●中国は新たな観念を持つべき 

 中国国務院台湾事務弁公室の張銘清・報道官は十月十三日、北京での記者会見において、春節チャーター便(旧正月期間中の両岸直行チャーター便)運航について「わが方の立場は明確で『国内問題、双方運航、互利互恵』の十二文字だ。昨年の春節チャーター便は特例で、十二文字の前提条件に合致していたわけではない」と語った。さらに陳総統の国慶節祝辞に対しても、「緊張緩和の発言は嘘」とか「あからさまな台湾独立の言論」などと述べた。 

 これに対し陳其邁・行政院スポークスマンは同日、「昨年の春節(旧正月)に大陸在住の台湾企業関係者らが直行チャーター便で一時帰国したのは貴重な経験であった。十二文字の前提条件を今後の春節チャーター便運航の障害とすべきでない」と語った。さらに「中国の十二文字の前提条件は以前からのもので、そこに新味はない。昨年は争議を据え置き台湾企業関係者らの必要性に実務的に対応し、民間航空業者が政府の監督の下に春節チャーター便を運航したが、これは両岸双方にとって、きわめて貴重なことだ。中国は明確な手順と法令作成に着手し、わが国航空会社の春節チャーター便運航申請を受理すべきだ」と語った。 

 同時に陳スポークスマンは「行政院はすでに、双方が直行便を運航することで交渉をするという立場を明確に示している。中国当局がこれを機会の窓口として捉え、陳総統が国慶節談話の中で示した積極的な善意を正確に掌握し、九二年香港会談を基礎として早急にわが方との協議を開始することを望む。固い頭では問題を正しく認識できず、強硬な態度は対立を解く助けにはならない」と指摘した。 

【行政院新聞局 10月13日】 

●両岸平和交流は必然の道 

 行政院大陸委員会は十月十三日、国慶節祝辞について「陳総統の両岸関係に関する談話は、わが方の主動的な善意と誠意が十分に表明されており、さらに積極的な建議をしたものであり、内外の各方面から高く評価されている。陸委会は中国当局が陳総統の建設的な談話の内容を正確に解読し、実務的な思考をもって、同様の開放的で積極性のある姿勢で回答を示すことを希望する。そうしてこそ両岸関係進展の助けになるのだ」との認識を示した。 

 中国国務院台湾事務弁公室の記者会見内容については、「陳総統はすでに五月二十日の就任演説において、中国当局が『一つの中国』を堅持していることへの理解を示し、同時に中国に対しては台湾国民の民主、平和、生存、発展を求める強い信念を理解するよう呼びかけた。われわれは中国側が同じ心をもって陳総統の国慶節の談話における提議を直視するよう希望する。われわれは忍耐と善意をもって中国側が前向きな回答を示すのを待つ」と述べた。 

 両岸の人と貨物のチャーター便問題については、「わが国政府は十月十一日に、両岸双方がいかなる政治的な前提条件も設定しないという状況下に『双方が直行便を運航する』との案を作成した。中国側から交渉を委託された適切な人物がわが方と協議することを歓迎する。われわれは最大の柔軟性と誠意をもって中国側との意志の疎通を図るだろう」と述べた。また「人と貨物のチャーター便には技術的および公権力の問題が派生する。両岸双方の利益と安全を確保するため、双方は早急に交渉を開始し、共同で双方が利益を得る成果を上げるべきだ」と語った。 

 また陸委会は「両岸問題の平和的解決は両岸交流の相互連動における必然的な方向である。双方は共に両岸関係の長期的な平和と安定に責任を持たなければならない。われわれは中国当局が新たな発想と観念をもってわが方の示した積極的な善意に応え、共に両岸関係の緊張緩和を図り、両岸関係の平和と発展を進めることを望む」と指摘した。

【行政院大陸委員会 10月13日】
 
両岸チャーター便運行に新方針
陳総統の三通実現の公約に従い積極的内容へ

 陳水扁総統は十月十日の国慶節祝辞のなかで、両岸間における人と貨物のチャーター便の運行について、「早急に対岸と協議を進め、両岸三通の実現に向けて一歩前進したい」と述べた。これを受けて、游錫堃・行政院長は翌十一日、臨時の財務・経済閣僚会議を召集し、両岸のチャーター便運行の具体的な措置について協議した。 

 これまで両岸のチャーター便は、今年の旧正月に初めて台湾から中華航空機が台北、高雄と上海間を往復就航したが、いずれも香港、マカオ経由で行われ、中国側の航空機は就航されていない。 

 ●交渉の三原則を提示 

 今回閣議の中で(一)台湾と中国双方の航空機を往復、就航させる(二)第三国・地域の経由地に着陸しない、という二点が新たな方針として示された。游院長は「将来どのような方式で中国と協議するにしろ『実務的に、柔軟性を持って、相互に尊重する』という三原則が基本となる」と強調した。また協議の方式については「台港航空協定」の締結、あるいは委託方式により、航空協会や公益法人団体に授権する形で行い、交渉に柔軟性をもたせる方向で検討されている。「台港航空協定」は、香港が中国に返還後初めて二〇〇一年に台湾と航空機就航について締結した協定で、このとき台湾は交渉のテーブルに政府関係者を同席させたうえで、あえて民間の「台北市航空運輸商業同業組合」の名義で協定に締結した。 

 ●民間と具体的協議について検討 

 この閣議決定を受けて、行政院大陸委員会は、近く国内の六大商工業団体と航空協会の関係者を集め、民間に委託する方式を含めて、中国との協議をどのように進めるかについて、共同で検討することにしている。呉釗燮・大陸委員会主任委員は「今後私的なルートを通じて、両岸のチャーター便運行に対する中国の考え方を積極的に理解し、今回の陳水扁総統の国慶節での善意ある呼びかけによって、中国がこれまで堅持してきた『一つの中国』の原則や『国内路線』の立場がどう変わるのか見極めたい」と語った。

 また双方の実務的な協議については「中国が相応レベルの人物を台湾に派遣して話し合うことを歓迎するし、また第三国で協議を行うことも排除しない」と述べ「中国はチャーター便について、今年双方向での就航と経由地に着陸しないことをすでに求めてきたが、われわれはまず旧正月の就航を優先し、徐々にそれ以外の就航と、上海以外に飛行できる地域の拡大を目指したい」との考えを示した。 

 ●貨物が人より優先 

 一方、邱太三・大陸委員会副主任委員は「チャーター便は貨物の方が人よりも問題が少なく、また両岸の経済競争力の向上にもプラスとなる。実際のニーズと効果から見て、貨物の方が人よりも優先される」と指摘している。行政院が以前行った両岸直航に対する評価によると、貨物の直航が実現した場合、運輸コストにして年間八・一億元(約二十四億円)を節約できるという。これにより輸送時間も大幅に節約できるため、企業にとっては在庫を減らし、生産効率を高め、全体コストを節約できる大きなメリットがある。 

 政府はこれまで両岸のチャーター便の就航について、政府間交渉の立場を堅持してきたが、今回の閣議には特別に工商協進会をはじめとする民間の経済団体代表を招き、中国との協議を民間に授権する方式に初めて同意し、柔軟姿勢を示した。 

 ●交渉は早くて来春 

 なお、中国との具体的な交渉時期について、政府内では「先方が善意ある対応を示したなら、早くて来年の春に協議できる」と見ている。邱副主任委員は「中国はすでに胡錦涛が全権を委譲され、今後政策や人事面で内部抗争が起きる心配はそれほど大きくなくなった。台湾の政治も安定してきており、中国も今が経済発展の最大のチャンスと強調している。つまり今が双方ともに経済問題で交渉を開始するのに絶好の時機だ」と指摘している。 

《台北『工商時報』10月12日ほか》

新憲法制定が中国との和平樹立の道
李前総統が米上院で演説、新憲法制定の必要性訴える

 李登輝前総統は十月八日、ワシントンの米上院で行われた「台湾制憲シンポジウム」でテレビ会議を通じて演説し、「中華民国の堅持は中国の主権を侵犯し、戦争を招く。新憲法を制定してこそ、台湾は国際社会から疎外を免れ、中国による威嚇を止めさせることができる」と述べ、新憲法制定の必要性を強く訴えた。 

 シンポジウムは「手護台湾大連盟」と「台湾国際関係センター」が主催したもので、李前総統はこの日台北から映像回線を通してテレビ会議に出席し、英語でおよそ十五分間演説した。このあとワシントンの会場では「台湾には新憲法が必要―その時期と方法」「台湾の新憲法と台米関係」「台湾新憲法と米中関係」の三つのテーマで、それぞれ討論が行われ、台湾から陳隆志・台湾新世紀文教基金会理事長、辜寛敏・総統府資政らが参加した。 

 李前総統は演説のなかで、「米国は独立戦争に勝利して十二年後に憲法を制定し、それは米国民の精神と崇高な理想を体現しており、二百年以上経過した現在も国民から賞賛されている。翻って台湾の憲法は、一九二一年に成立した中華民国が四六年に中国大陸で制定し、翌四七年に施行されたが、このとき台湾は中華民国の一部ではなく、台湾は憲法の枠内に含まれておらず、台湾人民は憲法制定になんら関与してはいない。つまり、これは中国で制定され、当時の中国の国情に適用されるものであり、台湾の現状からすれば、まったく不合理で、過去の憲法にすぎない」と指摘した。 

 さらに「台湾は今まさに国名を選択する歴史的時期を迎えている。オリンピックを例にとると、さきのアテネ大会でも『Chinese Taipei』の名称でしか参加できず、中華民国が虚名であることが改めて浮き彫りになった。中華民国は世界で承認されておらず、台湾の国としての正常な発展を阻んでいる」と強調した。 

 そのうえで李前総統は「台湾は台湾であり、台湾の新憲法は各エスニック、各政党、男女ともにそれぞれの人権が保障されなければならない。台湾が中国と永久的な和平関係を築こうと思うなら『中華民国』という虚名を使うことで中国の主権を侵してはならない。台湾の国民の共同の主張は『多元的なエスニック、国家の一体』を謳った身の丈に合う新憲法を制定することであり、新憲法を制定してこそ台湾の民主制度が確立できる」と語った。 

《台北『自由時報』10月9日》 

●台湾は日本の生命線 

 また李登輝前総統のシンクタンクである群策会は十月十一日、台北で「台日の憲法制定とアジアの安定」と題するシンポジウムを開き、日本からも専門家や国会議員が出席し、それぞれの立場から意見を述べた。 

 その中の一人、杏林大学の平松茂雄教授は「台湾は日本の生命線であり、中国が一旦台湾を攻めたら、台湾海峡は中国の内海となり、日本の安全も脅かされる」と指摘し、台湾が新憲法を制定することに支持を表明した。また、京都大学の勝田吉太郎教授も「台湾は新憲法を制定してこそ、台湾人民の道徳と倫理を真に回復することができる」と語り、中津川博郷・衆議院議員は「現行の中華民国憲法は台湾の現状にまったくそぐわない。台湾はすでに三回も自らの国のリーダーを選出しており、世界のどの国と比べても遜色がない。国名を台湾と呼ぶのは当然だ」と述べた。 

《台北『自由時報』10月11日》

ニュース

台湾は自ら守る決意が必要 国防強化は世界平和のため

 目下、立法院は兵器購入特別予算案の審議で紛糾しているが、ローレス米国務次官補代理は十月五日、アリゾナ州で開かれた定期台米国防工業会議において、「台湾の兵器購入特別予算は最終的に台湾国民の決定と責任に任されるが、もし通過しなかった場合、重大な結果を招くことになろう。立法院が否決した場合、北京に台湾の国防への意志に疑念を抱かせ、威嚇が最も有効な手段とのシグナルを送ることになり、台湾は将来さらに多くの軍事的威嚇を受けるようになるだろう」と語った。 

 同時に「米国は台湾への公約を守り、軍事衝突発生の防止に努めており、台湾の自主防衛の強固な後ろ盾となる。この政策は現在も将来も変わりはない。われわれがこのように努力しているのは、単に米国だけの利益のためでもなければ、台湾だけの利益のためでもない。それは世界の平和と安定を守るためのものである」と表明した。
《台北『青年日報』10月6日》 

九月の貿易額も順調な伸び 対中国出超幅が大きく拡大

 財政部は十月七日、九月の貿易統計を発表した。それによれば九月の輸出額は百四十九億六千万ドル、前年同月比一九・二%増となり、今年五月に次いで史上第二位となった。同輸入額は百四十二億一千万ドルとなり、同二九・四%増となり、今年六月、五月に次いで史上第三位となった。出超幅は七億五千万ドルで、今年前半にくらべ大きく下落している。これは国際原油価格上昇が原因と見られる。 

一~九月の出超幅は中国(香港を含む)に対しては三百四十億ドルとなり、前年同期比三十%増となり、唯一の成長地域となった。米国に対しては出超四十八億ドルとなり、出超幅は同三二・五%減となり、日本に対しては二百十八億六千万ドルの入超となり、入超幅は同五六・四%増となった。一~九月の輸出額地域比例は中国(同)が三六・一%で突出し、米国一六・一%、欧州一三・二%、ASEAN一一・二%であった。
【財政部 10月7日】

両岸の偶発衝突防止に努力 双方に信頼構造の確立必要

 陳水扁総統は、任期中である二〇〇八年までに両岸に戦争は発生させないと公約している。これについて立法院での質疑で親民党立法委員が十月七日、「実際に危機はないのか」と質問した。これに対し呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員は「偶発衝突発生の危険性は排除できない。だが、このことは陳総統の公約と矛盾しない。二〇〇一年には米国と中国の空軍機が南シナ海で摩擦を発生させている。わが国は両岸間の軍事的相互信頼システムの構築に尽力しており、それは両岸の衝突を防止し、収拾できない事態に至ることを防ぐためである」と答弁した。 

 また呂秀蓮副総統は同日、女性立法委員との座談会で「ここ二年間、中国は絶えず海峡中間線で挑発を繰り返しているが、わが方は反応していない。さらに中国は台湾の東部水域でも挑発を展開しており、これらは台湾海峡を内海化しようとの意図を明確にするものだ」と指摘した。
《台北『聯合報』10月8日》 

立法委員選挙に四九六人 与野党とも過半数目指す

 十二月十一日に投開票される立法委員選挙の立候補届けが十月十二日に締め切られ、四百二十六人で定数の二百二十五議席を争うことになった。定数の内訳は選挙区百七十六議席(先住民枠八議席を含む)、比例代表区四十九議席(海外華僑枠八議席を含む)である。焦点は民進党と台湾団結連盟の与党連合が過半数を確保して現在のねじれ現象を解消できるかどうかである。これについて民進党は「二〇〇一年には八十七議席を得たが、これに上積みし百十議席は得たい」としている。台湾団結連盟は「前回十三議席だったが、今回は二十五から三十議席に迫りたい」との目標を立てている。野党第一党の国民党は「前回は選挙区五十三議席、比例区十五議席、計六十八議席だったが、今回は六十七議席から七十二議席の間」との見通しを立てている。第二野党の親民党は前回四十六議席を得たが、今回は三十五から四十議席と見られている。 

《台北『自由時報』10月13日》

EUの対中武器禁輸解除は危険
加盟各国は利を見て義を忘れてはならない

 一九八九年の天安門事件以来、EUは中国に対し武器禁輸措置をとったが、二〇〇三年よりそれの解除が論議されるようになった。たとえば十二月にシラク仏大統領がEUサミットで対中武器禁輸解除を提議し、シュレーダー独首相は同月、訪中した折に武器禁輸政策解除の意志があることを表明し、二〇〇四年一月二十六日にはEU外相会議でも同措置の解除が論議され、翌二十七日には訪仏中であった中国国家主席の胡錦濤がシラク大統領に武器禁輸解除を直接要請した。本年上半期はアイルランドがEUのホスト国となり、同政策の解除は正式な議題とはされなかったが、六月十八日にベルサイユで開かれたEUサミットでは、この問題を引き続き検討することが話し合われた。 

 台湾としては、EUが対中武器禁輸を解除することに断固反対する。理由は以下の通りである。 

一、EUは世界の平和と安定、安全を軽視すべきでない

①中国は軍拡を進め、台湾海峡での衝突の危機を高めている。

 EUの「武器輸出規則」第四項は「地域の平和と安定、安全を確保するため、加盟国は領土問題で武力をもって他国を攻撃もしくは武力を使用している国に武器を輸出してはならない」と定めている。中国は現在短距離ミサイルM9とM11を五百基近く台湾に照準を合わせており、二〇〇六年にはそれが八百基以上に増え、さらに中長距離ミサイル二百基も配備すると見られている。しかも中国の指導者は常に台湾に対する武力侵攻を放棄しないと強調している。中国が軍事費を増大させ軍備を増強しているのは、台湾海峡での衝突に備え、台湾に統一の条件を受け入れさせるためのものである。EUが中国への武器禁輸を解除したなら、中国はさらに精密で高性能の武器を入手することになり、それは台湾海峡での優勢を確保し、台湾武力侵犯の意図を高めさせることになる。

②中国が台湾に武力侵攻すれば、被害は世界に及び、EU各国も損害を受けることになる。

 もし台湾海峡で戦争が発生したなら、米国、日本、韓国は巻き込まれ、さらにASEAN、南アジア、ロシアなどにも緊張が高まる。EUのアジアとの貿易額は総額の四分の一に近く、双方のこうした緊密な経済関係から言えば、EU諸国が中国に対する共通の外交および安全政策を確立する前に武器禁輸を解除し、ひとたびアジア太平洋情勢に変化が発生した場合、世界の経済、政治、軍事面に重大なマイナス要素の衝撃が走り、EU自身もその波を免れることはできない。 

③EUは利益を得るよりも害を先に受ける。

 周知の通り、ロシアが中国の最大の武器供給源になっており、中国のロシアからの武器購入額は四年連続で二十億ドルを越えている。中国がEUに武器禁輸解除を求めるのは、ロシアに対し武器輸出のレベルアップと技術移転を促すものでもある。このためEUが中国への武器禁輸を解除したなら、先進兵器の技術開発能力を中国に提供することになり、中央集権の中国がどこへ進むか分からない状況において、EUは武器輸出と技術協力によって「多極化」された中国の戦略パートナーにされ、それがさらに中国の武器輸出を増進することになり、EUの先進兵器や軍事技術が第三国あるいは国際テロ分子の手に渡り、結果として世界の危機を増大させ、EU各国にも脅威を与えることになる。 

④地域での衝突や軍拡競争を生み、重大な結果をもたらす。

 中国は外国からの巨額の援助を受けながら、同時に巨額の予算を軍事につぎ込んでいる。二〇〇四年には五百億ドルから七百億ドルもの軍事予算を組み、米議会で公表された資料によれば、中国は二〇〇〇年から〇三年まで、世界で武器最多輸入国になっていた。ここにEUが対中武器禁輸を解除したなら、東アジア、ASEAN、南アジアに第一波の軍拡競争をもたらし、さらに衝突の危険性を生み、世界的な不安材料を造成することになる。もしEUが、武器禁輸解除をもって中国との経済関係増進を意図しているなら、それは逆にアジア太平洋地域の平和と安定に重大な危機をもたらすものとなるのだ。EU諸国はこの点を留意しなければならない。 

二、EUは中国の実相を見据え、人権軽視と極権政治を座視してはならない 

 EUの「武器輸出規則」第二項は「加盟国は明らかに武器輸入を国内鎮圧あるいは人権抑圧のためとしている国には武器を輸出してはならない」と規定している。中国は独裁極権の政治体制であり、一九八九年の天安門事件のあとEUが対中武器禁輸措置をとった主たる原因は、中国の人権迫害が明確となったからである。中国は今なお国連の「市民的権利および政治的権利に関する国際規約」を批准しておらず、民主活動家を次々に逮捕して政府転覆罪によって起訴し、さらにチベット人を弾圧し続けており、それらは法的手続きによるものではなく、中国での人権問題がなんら改善されていないことを示している。EUが対中武器禁輸措置をとった理由は、現在もなんら解決されていないのである。 

三、EUは欧州議会の決議を尊重すべきである 

 欧州議会は昨年十二月十八日、対中武器禁輸措置の継続を圧倒的多数(出席議員四百三十四人、賛成三百七十三票、反対三十二票)をもって可決し、EU理事会ならびに各加盟国に対中武器禁輸措置を継続するよう呼びかけ、「中国は人権の改善に大きな進展のあったことを証明しなければならない。それによってEUは武器禁輸を解除するかどうかを考慮すべきだ」と強調した。これは欧州議会が平和的手段をもって、中国に世界の普遍的価値観となっている人権重視の思想を受け入れるよう促したものである。 

 さらに欧州議会は本年二月十日、昨年十二月十八日の対中武器禁輸継続決議をEUが尊重するよう促す議案を可決した。EUならびにその加盟国は、こうしたEUの民意を尊重し、中国に対する武器禁輸措置を継続すべきである。 

四、ヨーロッパ文明の崇高な理想を守れ 

 ヨーロッパ各国は民主主義と自由を崇高なものとし、人権の保障をきわめて重視している。EUがもし対中武器禁輸を解除したなら、それは中国の数々の人権迫害を容認したことになり、EUの掲げる民主主義と自由、人権の理念にみずから背くことになる。

 EU二〇〇三年「武器輸出規則」第五回年次報告は、二〇〇二年のEU諸国からの中国への武器輸出額は二億五千万ユーロ(約三百二十億円)であったこと明らかにしている。EUが対中武器禁輸を解除したなら、EU各国が公然と中国に武器を輸出し始め、重大な結果をもたらすことになるだろう。EUが道徳と良識をもって、一部の国の一時的な経済的利益のために世界の平和と安定ならびに人権を犠牲にしてはならないことを認識するよう呼びかける。 

五、結論として 

 EUの中国に対する武器輸出禁止措置は、世界の平和と民主主義の維持に大きく関係している。中国はこの数年来、大幅な軍拡と装備の現代化を進め、毎年の軍事予算は一五~二〇%の増加を示し、今年は五百億ドルから七百億ドルに達し、そこに覇権の意図があることは明白である。ひるがえって台湾は一貫して世界の普遍的価値観である民主、平和、安全ならびに人権を信奉し、またそのための国際的責任を果たしていることは、世界が知るところである。近年来、中国は再三にわたって「平和的台頭」や「新安全観」のスローガンを公言しているが、同時に台湾への武力侵犯を放棄しないと何度も宣言し、その一方において五百基近くものミサイルを台湾に照準を合わせている。これはまさに平和の理念に反し、武力乱用で不安を煽るテロと同じであり、同時に、世界の民主主義と自由に挑戦するものであり、二度の世界大戦で塗炭の苦しみを味わい、反戦の決意を固くしたヨーロッパの人々の到底受け入れられないものである。 

 台湾はここに、EUおよびEU加盟各国に、利を見て義を忘れ、軽々に中国の要求に屈することなく、自由、民主、人権および世界平和と安全の理念を基礎に、中国への武器禁輸措置を継続するよう呼びかけるものである。 

【外交部 9月2日】

二〇〇四年女性政策白書 行政院婦女権益促進委員会

第一章 万物平等共生の総合性  

一、基本理念 

 「相互尊重」の倫理制度を確立し、男女がともに決定し互いに利益を享受するシステムを構築する。万物の総合的資源としての互いの存在を尊重する。また「参加型民主」を幅広く実践し、二極分立、相互補完の経済体を形成する。 

二、現況と問題 

育児・介護サービスなどの商業化が進み、とくに育児コスト高騰のため非婚、晩婚がエスカレートしている。またマスコミの自由化により性を売り物にした報道、広告が横行し、女性の身体的安全は大きな脅威に晒されている。さらに出産後のキャリア低下による低賃金と高齢女性の経済力低下現象はますます悪化の傾向にある。 

三、政策 

①「万物平等共生の総合性」の理念を広め、意義を実践する
②参加型民主メカニズムを構築し、参加型政府の誕生を促す
③育児、介護サービスの複利化、公共化を推進する
④平和教育を推進し、両岸および世界平和を促進する
⑤少数派エスニシティーの女性を「平等共生」の枠組みに組み入れる
⑥長期的で適切な制度の確立 

第二章 女性の政治参加政策 

一、基本理念 

 行政院主計処が国連の基準をもとに算出した台湾のGDI(ジェンダー開発指数)はアジア四小龍のトップであり、GEM(ジェンダーエンパワーメント測定値)は日本を越えており、女性の政治および社会進出はかなり進んでいることを示している。今後この成果をもとに、アジア諸国のさきがけとして女性の社会進出を促進する。 

二、現況と問題

  現在台湾における女性の政治参加率は二〇〇一年の立法委員選挙で二割程度、与党の内閣構成員では四割が女性であり、先進諸国に勝る数値であるが、今後さらに決裁権を持つ女性管理職の増加を図る必要がある。各省庁に女性問題関連委員会を設置し、女性の需要と視点をより早急に政治に反映させるべきである。

三、政策

① 中央政府の性別平等専門メカニズムを確立する
②男女平等意識に基づいた選挙機構と文化を確立し、女性の参政率を引き上げる
③公務員体系および予算の男女平等を促す
④ 各省庁に広く民主的組織メカニズムを確立する
⑤女性の社会組織結成を奨励し、国際活動への参加を促進する 

第三章  女性の労働と経済政策

一、基本理念

  労働市場への進出と社会安全制度の整備により、女性の経済を守る法的権利を保障し、女性の経済的自立を図る。 

二、現況と問題 

 台湾の女性労働参加率をさらに引き上げ、労働現場に存在する性別による不平等を是正する。女性の就業における婚姻、出産などの特殊性をどう処理するかも大きな課題であり、家庭の協力を促し、社会保険、失業保険、年金制度など福利厚生をさらに強化する。 

三、政策 

①男女就業機会均等の法制化を図り、平等な労働環境を整備する
②女性の労働力開発と労働市場の開拓、女性の起業を支援して女性の能力拡大を図る
③合理的な社会保障制度を確立し、柔軟な就業制度を整備して女性の労働参加を促進する
④家庭の協力体制を強化する
⑤女性の労働力研究を促進し、女性の労働の質を高める 

第四章 女性の福祉と脱貧困政策 

一、基本理念  

 国際的統計でも分かるように、子育てや介護に関わり、平均寿命も長い女性は、児童福祉、介護、年金など福祉政策の中心的対象である。「福祉」と「脱貧困」を重視した政策により、女性の経済的自立を支援し、また女性の社会進出に有利な福祉制度を確立する。 

二、現況と問題 

 家庭と仕事の両立が女性の労働参加率に影響しており、非婚、未婚、出産しない女性が増加している。外国籍、中国籍配偶者およびその子女の生活と教育、また先住民女性の社会進出、婚姻制度や、女性の老後の保障制度、女性福祉に関わる人材と経費不足も深刻な問題である。 

三、政策 

①福祉サービス制度の構築と普及 
②就業機会の充実と労働市場政策の促進、また女性の特性と需要に合った福祉サービスを提供する 
③女性の就業機能を促進させ、老後の経済保証制度を確立する 
④社会的弱者としての女性に対し、支援、住宅、生活などの福祉措置を提供する 

第五章 女性教育と文化政策  

一、基本理念 

 女性教育関連団体および学術会、教育部両性平等教育委員会などの努力により、この数年女性教育は一定の成果を上げたが、年々増加する外国籍配偶者の教育問題は新たな課題である。平等を追及し蔑視を排除して、エスニックの違いを超え、女性の進学を促進する。また男性に対しても男女平等教育を施す。  

二、現況と問題 

 中央と各都市自治体の協力体制強化および関連法規の有効活用と統合が必要である。教育機関における男女平等と専門知識を持つ人材不足、また小中学校の教員管理職や大学院などの専門課程に女性が少ない、外国人配偶者の識字率が低い、公共施設における女性教育と文化に関する活動が少ないことなども課題として挙げられる。 

三、政策

①「性別平等教育法」を制定し、男女平等教育の法的根拠を作り、従来の慣例法規を見直す
②女性の多元的教育と文化政策を確立する
③女性蔑視の固定観念を払拭する
④マスコミからエスニックと性別への偏見的報道を排除する
 

第六章 女性の健康と医療政策 

一、基本理念 

 健康は個人の幸福のみならず国の社会生産力と国力に関わる重要な問題である。「病気の治療」のみならず国民の健康そのものに重点を置き、女性自身が自らの健康について主張できる平等な医療システムを構築する。家族の健康を守る存在として女性は大きな役割を担っており、こうした社会への貢献を評価、支持する。  

二、現状と問題

  従来女性は次世代を育てる保育者としてのみ扱われ、女性自身に対する医療が不足していた。二〇〇二年の台湾における女性の寿命は七八・九歳(先進国平均より七歳低い)で、肺がんによる死亡率がトップである。八十歳以上で長期介護を必要とする女性は男性より六二%多く、老後の経済保障と介護体制整備は大きな課題である。  

三、政策  

①性別を踏まえた健康政策の確立
②性教育を強化し、女性の性の自主性を向上させる 
③医療環境を整備し、健康保険制度の平等な資源分配を推進する 
④女性の病気と健康に関する研究を促進する
⑤家庭内、職場での女性の無償の労働に対し、それに見合った報酬、待遇を与える 

第七章 女性の安全政策 

一、基本理念 

 女性の自由、平等、安全の生活空間を確保し、家庭内暴力や性犯罪から女性を保護する 

二、現況と問題  

 この数年性犯罪は増加傾向にあり、二〇〇三年の申告件数は二千九百二十二件、また家庭内暴力による女性の被害者数は約一万八千人(〇一年)に上る。この分野における予算拡大、犯罪を処理する専門人材増員などが課題である。 

三、政策  

①専門機構の人材と予算を拡大
②女性の労働環境、青少年、エスニシティなど各層の女性の安全体制を整備する
③女性が参加する治安体制を確立
④各自治体の警察機構に女性を増やす
⑤公共環境の安全を整備する
⑥家庭内暴力の予防法令を見直し平等かつ客観的な司法体制を構築する
(完)

台湾観光年

「台北温泉シーズン」が開幕

 台北も十月に入ると涼しさが感じられ、いよいよ温泉を楽しむのに絶好の季節を迎える。日本統治時代にいち早く温泉地として開発され百八年の歴史を持つ北投では、十月八日から「台北温泉シーズン」が開幕し、十一月八日までの一カ月間、さまざまなイベントが行われる。 
 
 「北投温泉発展協会」では、期間中、新婚カップルと結婚満三十年以上の中高年夫婦を対象に、温泉利用の割引優待サービスを実施している。証明できるものを持参すれば、新婚カップルは二割引き、結婚三十年、四十年、五十年、六十年のカップルはそれぞれ三割引き、半額、七割引き、無料の各種優待が受けられる。 

 このほか、温泉の楽しみ方や北投の主な温泉地の紹介と、施設利用クーポン券がついたパンフレット「湯花恋」が、市内のコンビニエンスストアや新交通システム(MRT)駅などで手軽に入手できる。また期間中、北投駅と惇序高工の区間で十分間隔で「温泉観光バス」が運行されており、温泉博物館をはじめ主な温泉施設に停車する。 

●台北湯花恋イベント:http://www.104net.net/taipeilife
《台北『民生報』10月7日》

「台湾咖啡節」が開幕 

 高級烏龍茶の産地として世界に名を馳せる台湾で、このところ急速に人気を集めている台湾産コーヒーをテーマにした「台湾咖啡節」が十月八日から開幕し、来年一月初旬までのおよそ三カ月開催される。 

 雲林県の古坑は十七世紀半ば、オランダ人によって最初に台湾にコーヒーが栽培された場所で、日本統治時代には日本人が栽培を引き継ぎ、皇室に献上するまでに発展した。しかし戦後ほとんど茶畑に転換され、コーヒー栽培が衰退したなか、二十年ほど前、地元の農民がコーヒーの復活に乗り出したのを機に急速にコーヒー栽培が広がり、今では台湾独自の風味を生み出すまでに盛り返した。 

 昨年初めて「台湾咖啡節」を開催した雲林県は、わずか三百万元(約九百万円)の投資で二億元(約六億円)もの経済効果を生んだことから、今年は外交部、行政院農業委員会などの協力も得て、まずは国内で認知度を高め、将来は世界に向けて台湾の古坑ブランドをPRしたい考えだ。 

 現地の古坑郷では期間中、コーヒーの入れ方や楽しみ方を学ぶ「体験キャンプ」が開講されるほか、地元のレストランではコーヒーを使ったさまざまなコース料理が味わえるという。また古坑でとくに有名な「緑色随道」では、たくさんのブースが設置され、豆から道具まで、コーヒーに関するさまざまな製品が展示、販売される。
《台北『民生報』10月9日》

鶯歌製陶二百周年 

 「台湾陶芸の里」と呼ばれている台北県鶯歌鎮で、今年も十月十五~同三十一日「鶯歌陶瓷カーニバル」が開催中だ。今年は製陶二百周年目にあたるため例年より規模を拡大し鶯歌鎮の各地でさまざまなイベントが行われている。 

 今年のカーニバルは「昔を体験」「テーマツアー」「展覧」の三つを柱に、楽焼体験や面作りなど、親子で楽しめるイベントが盛りだくさんだ。このほか鶯歌の製陶二百年を振り返る写真展や陶芸作品のコンテスト、国際シンポジウムなども開催される。
《台北『民生報』10月9日》

台南―斗六の記念切符が発売 

 台湾鉄路局は、今年台南―斗六の開通百周年を記念し、特別記念切符を発行した。記念切符には、日本統治時代の嘉義駅と現在の嘉義駅がデザインされている。
《嘉義『中央社』9月23日》

文化ニュース

中央図書館台湾分館が移転 年末に中和に新館オープン

 台湾の文献を豊富に所蔵していることで知られる「国立中央図書館台湾分館」(台北市新生南路)が移転することになり、十月一日閉館式が行われた。翌二日以降は本の貸出は行わず、返却のみを受付ける。新たな移転先は台北県中和市の四号公園内で、名称を「国立台湾図書館」に改め、十二月二十日に新館がオープンする予定だ。 

 日本統治時代に設立された「国立中央図書館台湾分館」は、その後幾度もの変遷を経て、台湾の地方誌と統治時代の日本語資料を専門に収集した、台湾の文献資料の特色を備えた施設として位置付けられている。とくに一九九三年に「台湾資料室」が設置されてからは、国内外の学者にとって台湾の歴史研究に欠かせない場所となっている。

 ここ数年、とくに台湾の歴史資料収集に力を入れており、現在同館には中国語、外国語合わせて約七万四千冊の書籍と視聴覚資料が揃っている。このほか視覚障害者のための資料も豊富で、一般の点字資料が約六万冊、電子書籍は一千種類に上る。 

 今の建物は一九六三年に台北科技大学(当時は台北工専)の校舎を借り受け現在に至っており、長い間市民の知識のオアシスとして親しまれてきた。移転先に建設される新館は敷地面積が四ヘクタール、地下三階、地上七階の大型施設で、台湾に関する資料だけでなく、貴重本や、民俗文物の展示なども行うことにしている。
《台北『民生報』10月2日》

宋美齢女史の特別展が開催

 一世風靡した生涯に熱い視線 

 昨年十月に百六歳で亡くなった蒋介石元総統夫人の宋美齢女史の愛用品を集めた特別展が、十月九日から台北市の国父紀念館中山画廊で始まり、初日から三千人を超える市民が詰め掛け、激動の歴史を表舞台で活躍し一世を風靡した女史の生涯に、改めて熱い関心が寄せられた。 

 会場には、女史が愛用してきた百五十点もの文物が展示されており、中でも一九二七年、蒋介石総統と宋美齢女史が上海の大華飯店で行った「世紀の結婚式」で、当時の模様を報道した新聞記事のコピーと、著名人から贈られたシルバーや陶磁器などの豪華な記念品に注目が集まった。このほかチャイナドレスや装飾品、士林官邸から借りてきた家具や調度品もあり、それらを通して、女史の好みだけでなく性格や生活態度、人生哲学といったものまで伺い知ることができる。また会場の大型スクリーンには生前の宋女史の英語での演説が映し出され、宋女史のさまざまな側面が浮き彫りにされている。この特別展は十一月四日まで開催中だ。
《台北『聯合報』10月10日》 

高雄市左營に大規模文化遺跡 古代、近代の二文化層が発見

 今年四月に高雄市左營区で発見された面積九千平方メートルにわたる文化遺跡について、同市は九月二十七日、これを「左營旧城遺跡」と命名し、市の指定文化財に認定した。 

 この遺跡は二つの時代の文化層から成っており、下の層は今から約五千~三千四百年前の大坌坑文化遺跡、その上に十七世紀の鄭成功時代、清朝時代、日本統治時代の文化層が重なる貴重なものだ。軍の公共住宅建設のため整地作業をしていたところ偶然発見され、中央研究院に採掘作業を依頼していた。 

 この調査に携わった同研究院の考古学研究専門センターの劉益昌教授は「遺跡の発見された地域には、少なくとも新石器時代中期には人類が住んでおり、十七世紀の鄭成功時代には、高雄地域の主要な漢民族居住エリアとなり、行政の中心でもあったと見られている。このため、先史時代から近代に及ぶ大量の文化財が出土した」と述べる。 

 軍では住宅建設と遺跡保護の両立を求めていたが、遺跡の面積が広く建設用地として使用するのは難しいため、同市の文化局では将来史跡公園を建設する予定だ。
《台北『民生報』9月28日》 

二大女流棋士は「台湾媳婦」 第23回本因坊戦で熱い火花 

 九月二十九日、女流囲碁界最高のタイトル戦である「女流本因坊戦」の第二十三期五番勝負が、日本でスタートした。女流プロの世界では、賞金額が最高のタイトル戦であり、優勝者には五百八十万円が授与される。今回の対局では、小林泉美本因坊に、知念かおり三段が挑戦する。 

 実はこの若き女流プロたちには共通項があり、囲碁ファンの間ではちょっとした注目の的となっている。それは、二人とも夫君が台湾人のプロ棋士だということだ。小林泉美氏は、女流三冠(女流本因坊、女流名人、女流早碁)を有する若手女流棋士界の中心的存在で、本因坊戦では第二十回~二十二回で三連覇を果たし、今回四連覇を目指す。夫君は日本のプロ棋士界で活躍する張栩本因坊で、今年沖縄で挙式を上げたばかりだ。結婚後は夫婦ともに以前に増しての活躍ぶりで、張氏は本因坊戦防衛のほか、十一月末には王座タイトル戦も控えており、小林氏も女流本因坊、名人、早碁のタイトル防衛戦で多忙だ。二十九日は偶然にも張氏が名人戦で依田紀基名人に挑戦し、夫婦が同じ日にそれぞれタイトル戦に出場することとなった。 

 一方、挑戦者の知念かおり元女流本因坊は、第十六~十八回目の本因坊戦優勝者だったが、小林泉美氏に僅差で敗れた経験があり、今回再びタイトル奪取を狙う。楊嘉源九段の夫人で、一九九七年に結婚後、二子を出産し、ママさんプロとしても有名だ。これまで二人の勝負は十一勝十敗でわずかに小林氏がリードしているが、二人の力は拮抗しており、台湾の囲碁ファンも見逃せない戦いとなりそうだ。
《台北『民生報』9月29日》

「代理母」条件付きで認可を 依頼報酬制限には賛否両論 

 代理出産について討論する台湾初の公的会議「代理出産公民共通認識会議」がさきごろ行われ、九月十二日、会議に参加した各界の専門家らは、条件付きで代理出産制度を認めるべきとする意見をまとめた。代理母に対する報酬については合意に達さなかったが、行政院衛生署国民健康局の委託を受けて会議の進行を務めた台湾大学社会学科の林国明助教授は「会議の結論は今後政府が代理出産制度を開放または禁止する際の参考となるだろう」と語った。 

 会議では十八名の法律専門家が報告と対談をおこなった。このうち陳美伶・行政院法規会主任委員は「代理母には報酬を与えるべきだが、国が管理すべきだ。商業ベースでの介入は価値体系を破壊する」と指摘した。また中原大学財経法律科の雷文玫教授は「代理母への報酬は家事労働に対する報酬と同様、女性の労働の価値を見直すうえで意味がある。代理出産の許可だけでなく、産休制度など福利厚生を強化すべき」と述べた。終日の討論の末、参加者は、健康な受精卵を有する夫婦で母親が子宮の先天性疾病などで出産できない場合など、条件付きで代理母を認めるコンセンサスに達した。 

《台北『聯合報』9月13日》

台湾のコメ、国内から世界へ 第一回全国コメ品評会が開催

 台湾のWTO加盟による市場開放にともない、台湾産米にも国際競争力が求められる時代となった。現在、台湾で消費されているのは国産米が主流だが、日本米やタイ米などの外国米も市場に出回っており、国内のコメ農家では、有機米や無農薬米など、健康志向の新しいコメ開発を進めている。  

 こうしたなか、台湾産米の品質向上とハイレベル米の生産奨励のため、行政院農業委員会による「第一回全国コメ品評会」が九月十日、台北県板橋市農会(農協に相当)の台湾米農情文化館で開催された。これまで各地方単位でおこなわれていたコメの品評会を、今回はじめて全国レベルの公開品評会として開催したもので、全国十一カ所の主要産地の農会が、それぞれ地元で選考会をおこない、四百戸のうち、十一のコメ農家が最終選考を迎えた。 

●最優良米は台東「池上米」 

 最終選考会では、公正を期すため、関連省庁や医学界、バイオ関係の専門家や飲食業者など、産、官、学界から選ばれた九名の専門家が、粒の不揃いや形、色、光沢をはじめ、たんぱく質や水分など栄養素の成分、規定の時間と方法で炊いたコメの外観や香り、硬さについて厳正な審査をおこなった。  

 このうち栄えある「最優良銘柄」に輝いたのは、台東県池上農会の邱垂昌さんが作った「台稉九号」だ。池上のコメは土壌や気候の関係で収穫までの期間が長いため、粒が大きいことで有名だが、今回受賞したコメは有機質、鉱物質が多く含まれた新武呂渓谷の水を使い、病気に強い苗を管理センターで一括管理したものだ。作主の邱さんは七年前に脱サラして実家の農家を継いだという。自ら考案した品質管理システムで、みごと台湾一の米作りに成功した。このほか、第二位には無農薬にこだわった高雄美濃米の「台稉二号」、三位には彰化県の埤頭米が入選した。 

 九月二十四日には、板橋市農会主催の競り売り会が開催され、最優良銘柄の池上米には、一キロあたり六千元(約一万八千円)、茶碗一杯で約五百元(約千五百円)の最高値がついた。また新銘柄ながら品評会で第二位に輝いた美濃米も、最高値五千元で競り落とされた。

●台湾米、十一月に日本へ出荷 

 一方、台湾産米の海外輸出もスタートする。花蓮産の「富麗米」十八トンが、十一月中に日本へ出荷される予定だ。日本への輸出は一九七〇年代に盛んだったが、日本国内で品種改良が進み、輸入の需要が減ったため、台湾からの米輸入は三十三年ぶりとなる。今回輸出される品種は台湾国内でも人気の高い「高雄一三九号」で、食感や質の高さでは日本のコメに引けを取らない優良米である。農業委員会農糧署では「台湾のコメは長年の技術開発で、品質はすでに国際レベルだ。今回の輸出をきっかけに販売促進をおこない、海外輸出を増やす足がかりとしたい」と期待を語っている。 

●消費者向け販促にも各種販促 

 台湾米の美味しさを改めて知ってもらおうと、農業委員会農糧署では各種販促キャンペーンを展開中だ。台湾米のレシピ集出版のほか、十月九日には台北市内の高校で、ホテルやレストラン経営者を対象に、台湾米を使った宴席料理や各国料理の講習をおこなった。 

 また、板橋市農会の農場活力館には、台湾米のアンテナショップ「米的旗艦店」がオープンした。国内初の発芽米や紫米を使ったアイスクリームなどが売り出され、十月一日には、李登輝前総統も店を訪れてこの新商品を試食し、台湾農業の振興をアピールした。

《台北『聯合報』9月25日、『中央社』10月1日ほか》

春 夏 秋 冬 

 最近、きわめて興味深い本に出会った。といっても、政治や経済などの難しい書籍ではない。だが、こんど台湾に行く時には、必需品として是非この本を持っていきたい。というよりも、この本を見て、近いうちに是非台湾に行きたくなった。『GO! GO! 台湾食堂』という書名だ。「な~んだ」などと言うなかれ。副題に「台北で発見した美味しい旅」とある。決してありきたりのグルメ本などではない。著者は「哈日族」の元祖と言われている哈日杏子(ハーリー・きょうこ)さんで、彼女の本はこれまでにも何冊か目にしたことがある。いずれも日本人向けの台湾の街角紹介や台湾人向けの東京・六本木や新宿、銀座の街々紹介といったもので、著者がお若いせいか、青年時代をとっくに過ぎたような年代層は対象としない本だった。だが、今回は異なる。対象は老若を問わない。もちろん、これまでの『哈日杏子の爆烈台北』や『GO GO 台北』『哈日杏子のニッポン中毒』などが、日台の若い人々の掛け橋になっていることは疑いない。 

 さて今回の本だが、同書の中に「杏子の思い出録」という欄があり、そこに彼女は「私は、おばあちゃんの作った『いもがゆ』と『いもビーフン』が世界中で一番おいしいと思っている。なぜって、ほかでは同じものを食べたことがないから。むかし台湾がまだ貧しかったころ、米を買うお金がなくて、さつまいもをたくさんまぜて煮たおかゆを食べていたんだって。私はそんな時代に食べていたわけじゃないけど」と記している。なるほど、日本のスイトンに通じるものがある。もちろん当人が言う通り、彼女が直接その時代を知っているわけではない。だが、若い彼女の舌の原点がスイトン、すなわち台湾の「いもがゆ」にあることが、ことさらに嬉しい。 

 その杏子さんが、豊かになった今日の台湾の、街角の味を数多く紹介しているのが、本書である。たとえば「阿才的店-台湾レトロを味わうなら」「点水楼-泣きたいほどおいしい」「ZO 喫茶店-いざ、仮面ライダーの世界へ」「富覇王-トロトロ、ぷりぷり」等々と、いずれも台北市内で35店が場所とともに紹介されている。なかには創業84年のかき氷の専門店まである。著者が哈日杏子さんだからか、どの店の料理や点心を見ても、日本人好みのするものばかりだ。あるいは日本人と台湾人の好みは、もともと合っているのかもしれない。この書を手がかりに、台北の街を食べ歩けば、日本に「哈台族」が増えるのではないか。是非お勧めしたい。 
(K)

新刊紹介

GO!GO!台湾食堂
台北で発見した美味しい旅
哈日杏子 著

いわゆる高級レストランや豪華料理を紹介したグルメ本ではない。台北の街角を歩き、ふと目に付いた店に入る。そうしたところに台湾の味を発見する。それはレトロなものであったり、伝統の味を今に伝えようと工夫を凝らしたものもある。サンダルばきでふらりと入ることができ、かつ「これは!」と唸らせるような店を台北市内で見つけ、その三十五店を本書は紹介している。台北散策の楽しみがさらに増える本だ。 

〈まどか出版刊 ¥1400+税〉