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  台湾週報2167号(2004.11.18) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
:::


台湾週報2167号(2004.11.18)

大統領選後の台米関係を強化 陳水扁総統がブッシュ大統領に祝電

 米大統領選挙は開票当時懸念された混乱もなく、ブッシュ現大統領の再選が決定した。これを受けて陳水扁総統はブッシュ大統領に祝電を贈り、台湾と米国が民主と自由、人権において共通の価値観を持っていることを強調し、今後ともアジア太平洋地域の安全と安定維持のため共同で努力したい旨を表明した。また呂秀蓮副総統もチェイニー副大統領に祝電を贈り相互協力によって国民の最大福祉を願うと表明した。

●台米の関係強化を望む 

 蘇貞昌・総統府秘書長は十一月四日、米国大統領選挙において現任のブッシュ大統領とチェイニー副大統領コンビの当選が確定したことを受けて記者会見を開き、ただちに陳水扁総統がブッシュ大統領に、また呂秀蓮副総統がチェイニー副大統領にそれぞれ再選の祝電を打ったことを明らかにした。 

 このなかで蘇秘書長は「台米両国政府と国民相互の関係は一貫して緊密であり、さらに両国は民主政治の推進と人権の重視において共通の価値観と理念を持っており、このことは両国関係が今後いっそう発展する基礎となるものである」と語った。同時に「われわれは、共通の価値観とすでにある基礎の上に、国際テロへの対抗、大量破壊兵器拡散の防止、平和の促進、人道支援の遂行などの面においていっそうの努力をし、継続して米国と協力し合い、共に国際社会のよき一員としての責任を果たすことを願っている。台湾と米国は共にアジア太平洋地域の構成メンバーであり、わが国政府は、引き続き米国政府と協力し合い、この地域の安定と平和を維持し、さらに積極的に中国との対話を求め、共同で台湾海峡両岸の平和と良好な進展の未来を築いて行くことを願っている」と表明した。 

 陳水扁総統のブッシュ大統領への祝電内容は以下の通りである。 

「閣下がアメリカ合衆国大統領に再選されたことを、心よりお祝い申し上げます。閣下が貴国最高の指導者への再選を果たされたことは、貴国国民がこれまでの閣下の忠誠と業績を評価したことを意味し、ここに私は中華民国政府と国民を代表し、最大の慶びを表明します。 

 過去四年間、貴国は閣下の指導の下に、自由と人権、ならびに民主政治の擁護に邁進され、国際テロへの対抗を宣言し、大量破壊兵器の拡散防止に努力し、国際正義の進展と人類の永続的発展のため力を尽くして来られました。それらの輝かしい成果は、今日の世界の安全と安定に最良の保障を与えております。閣下の卓越した成果は、すでに私を含め世界各国の指導者が賞賛するところとなっております。 

 貴国とわが国は、親交は深遠で関係も悠久なものとなっております。民主主義の推進と人権の尊重においては共に相通じる価値観と理念を保持しており、さらに台湾海峡の平和ならびにアジア太平洋地域の安全と安定の維持におきましても、両国は長きにわたって共通の政策を有して参りました。わが国は今後とも貴国と協力し合い、共にこの地域の平和と世界の繁栄ならびに進歩を図ることを願っております。 

 私は、今後四年間、閣下の卓越したご指導の下に、すでにある貴国とわが国の緊密なる友好関係がさらに深まることを確信しております」

 また、呂秀蓮副総統のチェイニー副大統領への祝電内容は以下の通りである。 

「閣下がアメリカ合衆国副大統領に再選されましたことに、衷心よりお慶びを申し上げます。 

 閣下がこれまで四年間、ブッシュ大統領を補佐し、輝かしい業績を上げ、特に国家ならびに国際社会の安全には大きな業績を積み、貴国国民の高い評価を受けられましたことは、まさに感銘の至りであります。長きにわたり、米国と台湾の国民は深い協力関係を結んで参りましたが、今後ともこれまでの友好を維持し、相互信頼と相互協力によって両国国民の最大の福祉を増進することを願っております」 

【総統府 11月4日】

ニュース

欧州議会との関係強化

 陳水扁総統は米国大統領選挙の行われた十一月二日、欧州議会台湾友好委員会のヤーゼンボウスキー委員長を団長とする欧州議会議員台湾訪問団一行六人と総統府において会見した。同一行は十月三十一日より六日間の予定で台湾を訪問した。 

 陳水扁総統はヤーゼンボウスキー委員長と、欧州ならびに国際情勢、台米関係、両岸関係などについて意見を交換した。このなかで陳総統は要旨以下のように語った。 

「ヤーゼンボウスキー委員長には今年五月二十日の就任式にも欧州議会訪台団団長としてお出でいただきましたが、EUが東に向かって加盟国を増し、欧州議会が改組されたあとふたたび訪台団団長としてご来訪いただき、台湾への友好と支持を明確にされました。私はここに、中華民国政府ならびに国民を代表し、欧州議会台湾友好委員会の方々が台湾海峡問題に深い関心を持たれ、台湾を強く支持されていることに、敬意と感謝の念を表明いたします。 

 本日十一月二日は米国大統領選挙の日であり、台北時間明日には結果が分かるものと思います。欧州議会を含む世界のすべてがその行方に関心を抱いていると思いますが、私はいずれが米国大統領に当選しても、米国の台湾ならびに中国に対する政策にはいかなる変化もないものと確信しております。欧州議会もこれと同様に、加盟国が拡大しどのように改組されようとも、台湾に対する友好と支持にはいかなる変化もないものと確信しております。なぜなら、欧州の国々と台湾は、世界普遍の価値観である民主主義ならびに自由、人権を共に信奉しており、また地域の平和と安全および安定に共通の期待を持っているからです。 

 私は、台湾の世界保健機関(WHO)への加盟申請およびWHO年次総会へのオブザーバー参加に欧州議会が関心を持つとともに支持して下さり、激励して下さったことに感謝しております。台湾はこれ以上、世界防疫体系から離れた存在になっていることはできません。 

 EUの中でいくらかの国が中国に対する武器禁輸措置を取り消そうとしていますが、欧州議会は人権を根本的に考え、対中国武器禁輸措置の解除に反対しておられます。また欧州議会が、台湾海峡両岸が対話を通じて両岸の問題点を解決すべきであり、さらに台湾二千三百万国民の意見を尊重すべきであることを決議され、同時に中国に対しては大陸沿海部に配備したミサイルを撤去し、かつ軍備増強を停止するよう要求されたことに、私は特に敬意と感謝の念を表明いたします」 

【総統府 11月2日】

 危険高まる中国の動き

呂秀蓮副総統は十一月一日、国防産業の発展に関するシンポジウムに出席し、中国の危険性について以下のように述べた。 

「中国は毎年軍事予算を二ケタ成長させ、その規模は米国、ロシアに次ぎ、世界最大の武器輸入国になっている。現在、二十五万八千人の敵前上陸用である迅速作戦部隊を持ち、沿海部にはすでに六百十基のミサイルを配備し、それらは今後さらに増強されようとしている。このミサイルが八百基に達したなら、台湾に連続五波にわたる集中攻撃を仕掛けることが可能となる。 

 海軍方面では中国は今年四月に遠洋型駆逐艦を就役させ、今後毎年二~三隻の就役を予定しており、二〇一〇年には二十四隻になっているものと思われる。それらは垂直発射型ミサイルを備えた駆逐艦であり、遠洋型海軍形成の主力となるものである。中国は『平和的台頭』などといった煙幕を張り、実際には軍備増強を続けているのであり、情報通信戦においても新型の遠洋調査船を太平洋にまで派遣し、特に台湾海峡の情報収集に力を注いでいる。その技術は偵察衛星によって向上しており、近年では大胆にも台湾東部水域ならびに日本海にまで情報収集活動を拡大している。こうしたことに国民は警戒感を高めねばならない」 

《台北『中国時報』11月2日》 

兵器特別予算案の通過延期 立法委員選挙前の解決不能

 台湾の将来の防衛に重要な意義を持つ兵器購入特別予算案(六千百八億元〈約一兆八千億円〉十五年分割でディーゼル潜水艦八隻、P3C対潜哨戒機十二機、パトリオット3型ミサイル八組を米国から購入)が十一月二日、立法院審議準備委員会で討議されたが、同委員会は野党連合の国民党、親民党の方が人数的優勢を保持しているため、立法院本会議への送付は否決され、同案が十二月の立法委員選挙前に立法院を通過することは不可能となった。 

 游錫堃・行政院長は同日「非常に失望している」と野党の反対に遺憾の意を表明し、国防部は次の五点の声明を発表した。 

一、国家の安全は全国民の責任

 軍事、社会、経済の安全は国民全体のコンセンサスであるにもかかわらず、国家の安全保障戦略が政党の争いのため埋没してしまった。 

二、専門家が排除された争議

 兵器調達の額、種類は専門家を入れて理性的に討議されるべきであるが、政争化された中に専門家は排除され、立法院での実質的審議が不可能となった。 

三、台湾海峡の安定は国家政策

 一九九五年に台湾海峡の安全保障のためわが国が必要な兵器を米国に提示して以来、米国は何度も専門家を台湾に派遣し検討した結果、二〇〇一年に売却に同意した。二千三百万同胞が脅威下にあるにもかかわらず、主権国家の権利を考えない勢力があることは極めて残念だ。 

四、国防は全国民の防衛

 安全保障には専門家集団による立案が必要である。それによって提示された案が政争の具とされるのは、国家の危機であるばかりか、国家の将来の発展にも極めて不利となる。 

五、安全保障には堅実な国防必要

 平和はイデオロギーで得られるものではなく、平和交渉にも堅実な後ろ盾と国民の支持が必要である。国防部が提示した予算案は民主政治の基本に則って作成されたものである。同案には緊急性があり、立法院が理性的にこれを審議し、国家の安全のため共に努力することを望む。 

《台北『青年日報』11月3日》

総統選挙の野党請求棄却 陳水扁総統の当選は有効

 三月の総統選挙に小差で敗れた連戦・国民党主席らは、陳水扁総統・呂秀蓮副総統の当選無効を求めて訴訟を起こしていたが、高等法院(高裁)は十一月四日、「不正行為の証拠はない」として連主席らの請求を棄却した。理由として①再集計の結果陳総統陣営は六四六万一一七七票、連主席陣営は六四三万五六一四票となり、選挙結果に影響を与えない。②連主席側は投票前日の陳総統銃撃事件を「自作自演」と主張するが、なんら証拠はない。③総統選挙と住民投票の同時実施は当選無効の理由を構成しない――等と説明した。 

 これについて蘇貞昌・総統府秘書長は同日、次のように表明した。 

「陳水扁総統は選挙終了後、『傾聴、理解、法理、団結』を紛争に対する原則とし、全面再集計に同意するとともに、司法がいかなる審判を下そうとも、百%それを受け入れると表明した。法治は民主主義の根幹であり、法治を逸脱したところに民主主義は存在しない。総統と副総統は高等法院の判決が出たあと、国家の団結と社会の安定を願い、与野党の指導者および全国民同胞に、共に台湾の民主法治の基礎を守り、社会に当然あるべき理性を早急に取り戻し、すべての争議と選挙の傷痕を消し去り、民主法治の下に国家の団結を回復し、平和的理性の下に国民の団結を呼び戻し、国家の将来の発展のために共に努力しよう、と呼びかけている」 

 また陳其邁・行政院スポークスマンは次のように述べた。 

「国民党・親民党陣営は高等法院に当選無効の訴訟を起こし、審理は七カ月に及び、わが国の司法および憲政史上、前例のない票の全面再集計まで行い、本日その判決が下り、審理の結果、対立や衝突を作り出す問題のないことが明らかにされた。与野党ともこれを尊重することを希望する。審理の期間中、国親側は中央選挙委員会、裁判所、総統府などに 群集を集めて警察との対立を作り出したが、それは膨大な社会資本の消耗であり、判決の出た今、それらが再演されないことを望む」 

【総統府、行政院 11月4日】

十二年間の努力の末、バヌアツと国交を樹立 漁業分野で協力、友好国は二十七カ国に

 外交部は十一月三日「南太平洋の島国の一つ、バヌアツ共和国と国交を樹立した」と発表した。両国は同日、台北で、バヌアツのボオール首相と陳唐山・外交部長が共同コミュニケに調印し、正式に外交関係が樹立した。これにより、台湾の友好国は二十七カ国となる。 

 台湾とバヌアツは、実はボオール首相が外務大臣だった十二年前、共同コミュニケに関する覚書にすでに調印しており、今回実際に外交関係を樹立するまでに十二年間かかったことになる。台湾は共同コミュニケに「中華民国(台湾)」と記し、みずからの位置付けを強調した。 

 バヌアツはオーストラリアとフィジーの間にあり、台湾の友好国であるソロモン諸島の南に位置し、人口は約二十万人、八十余りの大小の島々から成る。一九八〇年七月に英仏の統治から独立し、英連邦下に入った。共和制を採り、農水産業を主な産業としている。 

 陳水扁総統は同日、ボオール首相と会見し、両国の国交樹立を祝うとともに、ボオール首相の長年にわたる台湾への友好と支持に感謝を示した。このなかで陳総統は「両国の国交樹立までに十二年もかかったが、この間、両国民の間には密接な友誼が築かれた。両国はともに島国であり、民主と自由、平和を尊重し、アジア太平洋地域の安定を望んでいる点も一致している。その両国が正式に国交を樹立できたことを、心から嬉しく思う」と述べた。これに対しボオール首相は「同じ島国として両国が交流を深めれば、共同で利益を追求できる。平等互恵の基礎のうえに友好を深め、今後国際社会で台湾の活動を支援し、また台湾の経済発展の成果を学びたい」と語った。 

 外交部は同日以下の声明を発表し、バヌアツとの相互交流、発展への期待を示した。 

「バヌアツの経済水域は六十八万平方キロに及び、漁業資源が豊富である。台湾はバヌアツ海域に二十八隻の延縄漁船を出して操業しており、遠洋漁業の発展からみて、非常に重要な地域だ。バヌアツは天然資源が豊富で、森林も農地も豊かであり、自然景観にも恵まれている。

 バヌアツは太平洋地域の島国の一つであり、台湾とは文化的背景も似ており、自由と民主、人権を尊重する点でも一致している。バヌアツは台湾の五十年来の経済発展の成果に注目し、台湾との外交関係樹立を決定した。両国は今後漁業をはじめ、農業、経済、技術など各方面で密接な交流が期待できる」 

【外交部 11月3日】

新潟の震災に各界から慰問と義捐金相次ぐ 
一日も早い復興願い、赤十字を通じて義捐金を募集中

 ●政府首脳が慰問の言葉を表明 

 十月二十三日に発生した「新潟県中越地震」に対し、陳水扁総統、呂秀蓮副総統ならびに游錫堃・行政院長、陳唐山・外交部長は同日、ただちに日本各界に慰問の言葉を表明した。また駐日代表処および亜東関係協会を通じて被災者へお見舞いの言葉を述べるとともに、台湾から支援の用意のあることを日本の消防関係機関に伝えた。 

 ●台湾が最初に新潟を訪問 

 陳鴻基・駐日副代表は十月二十六日、陳総統の代理として新潟県庁を訪問し、義捐金二百万円を手渡した。地震の慰問で外国の機関が新潟県を訪れたのは台湾が最初であり、この日、泉田県知事は小泉首相と震災地の視察に出かけ留守だったため、代わりに関根洋祐・出納長が応対した。 

 陳副代表は、政府と国民を代表し被災者にお見舞いを伝えた。関根出納長は「今年七月の豪雨災害の際にも交流協会を通じて台湾から義捐金をいただいた。今回震災のためにふたたび援助をいただき、台湾の政府、国民の温かい思いやりに心から感謝したい」とお礼を述べた。 

 ●許駐日代表も県庁を訪問 

 さらに十月三十一日には許世楷・駐日代表がみずから新潟県庁を訪れ、泉田裕彦・県知事に対し、台湾の経済団体「工商協進会」から預かった義捐金五百万円を手渡した。

 許代表は「新潟の震災に対しては台湾の政府も国民も大きな関心を寄せており、台湾医界連盟をはじめ、国内の多くの民間団体も積極的に義捐金の募集を行っている」と語った。  

 これに対し泉田知事は「二百五十万人の新潟県民を代表し、台湾の政府と国民に感謝を申し上げたい。義捐金はすべて被災者の救済と復興に役立てたい」とお礼を述べた。 

●政府が追加で義捐金を提供 

 新潟県では地震発生後も大規模な余震が続き、現在も多くの被災者が避難生活を続けている。十月末現在、死者は三十人を越え、被災者数は十万人以上、さらに新潟県南部では四十七カ所の村が孤立無援の状況となっている。このため、政府は前回の二百万円に続き、八百万円の義捐金を追加で提供することを決定し、駐日代表処を通じて新潟県へお見舞いの言葉を伝えた。このほか、日本在住の華僑団体、在日台湾同郷会、山梨台湾総会、国際仏光会東京分会からも義捐金が集められた。 

 外交部はこのたび新潟県の被災者に追加で義捐金を送ることを決定したことについて、以下のプレスリリースを発表した。 

 「台湾は五年前、九・二一大地震の際、日本から多くの救助と支援を受け、昨年の新型肺炎(SARS)拡大でも少なからぬ援助を受けた。またここ数年は、台湾の世界保健機関(WHO)加盟に対し、日本は何度も支持を表明し、今年のWHO総会では台湾支持に投票していただき、あらためて日本の台湾への友好と善意を示していただいた。日本は今年、台風や地震など度重なる自然災害に見舞われており、わが国政府は人道的見地より、被災者に義捐金を追加することを決定した」 

●台湾からの義捐金を受付中 

 新潟県の震災に対し、台北駐日経済文化代表処には連日、在日僑胞から関心と義捐金申し出の問合せが相次いでいる。このため、当代表処は「中華民国赤十字総会」を窓口に義捐金を募集することにした。集まった義捐金は代表処を通じて日本政府に送られる。ちなみに、台湾の統一企業とキリスト教長老教会にはすでに一千万円の義捐金が集められ、現在も各地の教会を通じて義捐金募集の活動が続けられている。 

●駐日代表が交流協会を訪問 

 許世楷駐日代表は十一月八日、交流協会を訪ね、高橋雅二理事長に追加分の義捐金八百万円を手渡した。許代表は「台湾は一九九九年の大地震で日本から多くの支援をいただいたことを忘れていない。一日も早い復興を願っている」と述べると、高橋理事長は「台湾からは地震だけでなく台風の際にも心遣いをいただき、感謝している。しかるべきルートを通じて、台湾の皆さんの心を届けたい」と述べた。 

【台北駐日経済文化代表処 11月8日】

平和への危機にどう対応すべきか② 軍事力拡大を続ける中国と台湾の対応策  

二、台湾防衛の重点(続)


五、国防と民政の融合を推進 

(一)国防への国民の理解を高めるため、「国防と民政の合一」政策を進める。内容は「宿営地の根本的検討」「立ち入り禁止地域の縮小」「演習場の総合的企画」などである。国防の最低必要限度を原則に土地の運用効率を高めるため、小規模宿営地を大規模宿営地に統合、市街地宿営地の地方移転、軍事立ち入り禁止区域の縮小、国防建設と地方建設の融合などを進める。 

(二)国防科学技術の発展を促すため、各省庁にまたがる連絡機関を設置し、産・官・学の技術を吸収する。これは二〇〇三年より「公共事業への民間参加促進法」を根拠に進めており、将来的にはこれを商業の部門まで広げ、景気向上に役立たせて経済成長と社会繁栄を促進し、双方利益の目標を達成する。
 

六、国防科学技術の研究開発 

(一)国防科学技術の研究開発面では、二〇〇四年下半期より「自主国防」の目標達成に向け、十五項目にわたって現場の要求に応じられるように研究開発をスタートさせ、軍の総合戦力を高めようとしている。

(二)民需に活用できる科学技術の研究開発面では、国防科学技術部門と民間の研究開発部門との連携を強化する。当面の目標として中央科学院無線通信技術センターと連携し、軍用および民需用のハイテク無線通信技術開発に取り組んでいる。 

(三)未来型兵器の研究開発面では、優先順位を情報電子戦、対ミサイル防御兵器、連合防空作戦、連合制海作戦、地上防衛作戦の順とし、系統的かつ重点方式で進めており、かつ民間との連携も図っている。 

(四)ハイテク兵器関連研究開発の効率を高めるため、すでに専門委員会を設けるとともに国防部軍備局の強化を進め、国防科学技術の永続的発展の態勢を整えている。
 

七、外国との軍事交流促進 

 アジア太平洋地域の友好国の力を結集し、共同防衛システムを構築するため、政府の「総合外交」政策に合わせ、公式非公式を問わず積極的に近隣諸国との軍事交流と相互協力を進め、安全保障面での国際参加の場を拡大する。将来的には太平洋周辺諸国との直接的パイプを構築して台湾の国際参加を強化し、アジア太平洋地域における国際軍事交流と安全維持能力を高める。
 

八、志願制と兵役制の併用 

 現行の兵役制度は義務制と志願制を並行しているが、国防部は行政院兵役制度全面検討改革推進小組の指導によりすでに専門小組を組織しており、二〇〇四年十二月末までに兵役期間縮小と志願制を中心とする具体的改革案を作成する。兵役制度改革と同時に、志願制度によって優秀な人材を集めるため、陸海空三軍将兵の員数の調整も行う。
 

九、連合作戦指揮系統の調整 

(一)軍の連合作戦指揮構造の確立は二〇〇一年より着手し、〇四年二月に全面改組を完成した。目的は指揮系統の簡素化、迅速化、戦時における持続力強化であり、これらの成果は各年度の「漢光演習」によって成果が実証されている。 

(二)敵の台湾侵攻の動きを早急に察知するため、偵察行動には正規非正規の併用、有線無線の連携活用、目標設定と無差別偵察など多元的方式によって奇襲に備える。「平時と戦時の別なく、権限と責任は一つ」との精神を持ち、攻撃のあった場合は遠距離攻撃、近距離防御を同時進行し、連合作戦指揮系統に沿って最高レベルの戦力を発揮する。
 

十、連合作戦演習の推進 

(一)毎年の定期演習では三軍連合作戦の効果を高めることを中心に据えている。今後とも演習には連合戦力の保存、連合防空作戦、連合対封鎖作戦、連合攻撃作戦、海空・陸海・陸空の連携作戦、基地防衛作戦、地対空総合作戦、陣地戦などを重点とし、三軍連合演習を強化する。 

(二)三軍連合演習の実施できる場を整備するとともに、各機関との連携によるシミュレーション演習の回数を増やし、将兵の経験を積んで三軍連合作戦の効果を高める。 

十一、国家国民のための軍隊を徹底 

 (一)軍は国家のため、国民のための軍であることを、憲法の規定によって徹底する。「国家の生存を守るために戦う」「国民の安全と福祉を守るために戦う」との信念の下に、これまで軍は国民の支持を得てきた。今後とも国防部は全将兵の政治的中立を徹底し、軍を社会の安定と民主主義発展の後ろ盾となす。 

 (二)法による運営を徹底し、軍の現代化、専門化を進める。すでに「軍事徴用法」など時代に合わない各種法規を廃止するとともに、軍人の職務規定や死傷への保障に関する各種法規を定めており、今後とも旧法の廃止および新法の制定を大法院に諮り、推進する。 

 (三)法により情報公開を原則とし電子化政府の需要に対応する。 

十二、将兵および家族の福祉向上 

 (一)政府の税制改革に合わせ、軍人の優遇税制を廃止する代わりに基本給の増額を図り、生活に対する軍関係者の懸念を払拭する。離島、山岳部勤務の優遇を強化する。 

 (二)軍人およびその家族の保健医療に関する補助と優遇を強化する。 

 (三)道路網の整備により、僻地勤務の生活水準向上を図る。 

 (四)老朽官舎の修改築を鋭意進めているが、個人負担軽減も含め、志願兵時代にふさわしい住環境を整備する。

 三、国防予算概要 

 最小の投資で最大の効果を目指し、装備充実は逐年達成の計画で進めている。台湾の国防予算の消長を中国と比較しながら説明する。 

▼過去八年間の台湾と中国の軍事費比較(額は概算、%は前年度比) 

一九九七年
台湾 八千億円    四・一%増
中国 九千七百億円 一四・三%増 

一九九八年
台湾 八千二百億円  二・二%増
中国 一兆千億円  一五・〇%増 

一九九九年
台湾 八千五百億円  三・五%増
中国 一兆三千億円 一四・四%増 

二〇〇〇年
台湾 八千三百億円  三・〇%減
中国 一兆四千億円 一二・二%増 

二〇〇一年
台湾 八千百億円   二・三%減
中国 一兆七千億円 二〇・四%増 

二〇〇二年
台湾 七千八百億円  三・五%減
中国 二兆円    一七・五%増 

二〇〇三年
台湾 七千七百億円  一・二%減
中国 二兆六千億円 一一・五%増 

二〇〇四年
台湾 七千九百億円  二・七%増
中国 二兆五千億円 一一・四%増 

(数値は英「国際戦略研究所」より) 

▼過去八年間の台湾と中国の軍事費の対GNP比比較 

一九九七年
台湾 三・二三% 中国 四・三七% 

一九九八年
台湾 三・〇七% 中国 四・七七% 

一九九九年
台湾 三・〇六% 中国 五・二五% 

二〇〇〇年
台湾 二・八〇% 中国 四・六〇% 

二〇〇一年
台湾 二・八四% 中国 六・〇一% 

二〇〇二年
台湾 二・六七% 中国 六・七三% 

二〇〇三年
台湾 二・六一% 中国 六・四八% 

二〇〇四年
台湾 二・五七% 中国 六・七三% 

▼過去八年間の台湾軍事費の中央予算に対する比率 

一九九七年  二二・五一%
一九九八年  二二・四三%
一九九九年  二一・六〇%
二〇〇〇年  一七・四一%
二〇〇一年  一六・四八%
二〇〇二年  一六・三七%
二〇〇三年  一五・五二%
二〇〇四年  一六・五九% 

▼二〇〇五年度の台湾国防費 

〇五年度国防予算は七千八百億円で、前年度比一・二八%減となり、国防費の減少傾向はさらに進んだ。 

 国防予算配分の内訳と割合は以下の通りである。 

 人件費   四千三百億円
         五四・八九% 

 装備投資  千八百億円
         二三・五七% 

 業務維持費 千五百億円
         一九・七一% 

 その他   百四十億円
          一・八三% 

 この内、装備投資比率は情報電子戦四二・八%、海軍一六・九%、空軍一一・〇%である。 

(以下次号)

【行政院新聞局 10月】

高齢者対策は新台湾のカギ いかに良い老後を提供するか

 国連が認める「高齢化社会」とは、六十五歳以上の人口が総人口の七%を占める社会をいい、一四%を占めると「高齢社会」と分類される。一般に、この比率が七%~一四%に達するまでの所要年数が、その国の「高齢化速度」とみなされている。 

 台湾の高齢者数は、一九九三年にすでに七%に達し、二〇一八年には一四%に達すると予測されているが、高齢化速度は先進諸国のなかでもかなりのハイスピードだ。十年後の二〇一三年には、一九四八、九年の戦後ベビーブーム世代が高齢者となり、高齢者数は現在の倍、ほぼ四百万人に達する。高齢化にともない、経済生産者の減少や消費の先細り、年金制度の運営など、さまざまな問題が指摘されるが、増え続ける高齢者にどのようなケアを提供し、社会でいかに位置づけていくかは、今後の台湾にとって大きな課題である。

 こうしたなか、六十五歳以上が県総人口の十二%を占め、高齢者問題に積極的に取り組んでいる台南県で、十月十五日、「台湾における高齢化問題とその対策―台南県の経験から出発する」と題したシンポジウムが開催された。

 本シンポジウムには、台南県の福祉関係者や専門家、行政院衛生署や内政部社会司(局)司長ら関係省庁の幹部が多数参加し、現状と対策、台南県で実施中の地元密着型ケアセンター、移動病院サービスなどについて報告と討論がおこなわれた。以下はその要旨である。

一、台湾の高齢化問題と対策

●年金以外に高齢者が求めるもの ―蘇煥智・台南県長(知事)

 高齢者問題は、台南県長としてもっとも重要な課題であり、私自身の政治活動のなかでも、もっとも重点を置いてきた分野だ。高齢者にとって年金制度の確立は必須条件だが、それ以外にも健康、ケア問題や一人暮らしの孤独など、さまざまな問題がある。一九九六年には民間の養老院が建設ラッシュを迎えたが、これらの施設が本当に高齢者のケア問題を解決できるのか。家でケアできれば一番いいが、働き盛りの子供たちは家にはおらず、病気になっても世話してくれる人がいない。専門家の多くが「地元コミュニティによるケア」を何度も提唱しており、私も常々、高齢者がもともと住んでいて、よく知った隣人のいる場所で老後を過ごす方法を考えてきた。台南県長に就任後は、県内のそれぞれの地域に地元密着型のケアセンター建設と、移動病院システムの導入に着手した。

 地元密着型ケアセンターの特色は、①それぞれの地域(村)にセンターを設置し、専門の職員を置く。②各地域自体ごとに高齢者のレジャースペースを持てるよう、助成する。③ボランティアグループによる定期訪問と食事の宅配をおこなう。その他ケアセンターでの食事会など、各地域での活動を助成する。

 地域ぐるみのケアセンターには、心温まる話がたくさんある。あるケースでは、センターに来て食事することができない高齢者に食事の宅配をするついでに、近所の一人親家庭を除いて子供の宿題を見てやったり、外国籍配偶者のケアもしたりと、地元密着型ケアセンターならではのメリットがある。ただ、専門職員の確保が不足しており、臨時で長く勤めない場合が多い。これを県でどう育成していくかが今後の課題だ。

 また、医療面では台南県は「移動病院」システムを実施している。現在国民の死因の第一位は癌だが、国民皆保険制度では癌の検診が網羅されていないうえ、村には医者が不足しており、高齢者は一般に病状が深刻でないと進んで病院で検診しない。検診カーが来て地元で検査を受けられれば、早期発見、早期治療することができる。

●ケアサービスは真の需要―傅立葉・行政院政務委員

 台南県で推進している「地元密着型ケアセンター」と「移動病院」システムは、陳水扁総統が二〇〇二年に全国社会福利会議で提言した福祉政策に合致している。その主要概念は、これまで年金の支給だけに重点がおかれていた高齢者対策に、ケアやサービスの提供を加えることだ。高齢者にとって、話し相手がいたり、食事サービスがあったりという細やかなケアこそが需要であり、政府の仕事はそうした需要を満たすために、民間や地元コミュニティと協力しバックアップすることだ。

●全国的にサービス統合が必要―林萬億・台湾大学教授 

 二〇一七年には、高齢者人口が十五歳以下の人口と等しくなり、その後は徐々に高齢者が多くなるという。こうしたなかで、いかに高齢者の経済力を保障し、健康な老後を過ごさせ、来るべき高齢化社会を豊かなものにするかは政府の急務と言える。高齢者に長期的ケアを提供するには、システムの制度化、ケア提供者の確保、施設の高度化、経費の捻出などの問題がある。システムの制度化の面では、村、地域コミュニティという末端のレベルから、市町村、県そして中央へとケアサービスのシステムを構築すれば、八~十年で老人介護サービスはもっと良くなる。さらに、ボランティアやアマチュアの人材を、専門家として育成し、医学、介護、また高齢者心理の面からも、全国的に科学的分析をおこなうべきだ。財政面では、現在台湾で採られている国民皆保険制度の予算から高齢者のケアサービス経費を捻出するのか、独立した予算を組んで処理するのか、意見は分かれるところだが、こうした問題は五~八年の間に処理すれば間に合うだろう。予算を確保しても、政策が十分練れていないと意味がない。

二、地元密着型ケアセンター

 ●高齢者ケアを地域化する―陳榮枝・台南県社会局局長 

 高齢者が自分の慣れ親しんだ地域でケアを受け、地元ぐるみで高齢化社会を支えていこうという理念に基づき、台南県では二〇〇二年十月から地元密着型ケアセンターの建設をスタートした。センターの活動は各地域の余分な公共スペースを利用し、ボランティアによって支えられている。現在、百九十八カ所が運営されており、来年末までには、全県五百三十二の村と地域の半数以上にケアセンターを設置する予定だ。現在運営中の三分の二は成功しているが、一部のセンターでは専門人材が不足し、サービスの時間も短いため、今後さらに人材育成や地元の人々との連携が必要だ。ケアセンターは今後永続的にサービス提供を継続するため、政府からさらに資金面でのバックアップを期待したい。

●老いてこそ「生きる価値」―陳錦煌・社区営造学会理事長 

 一般に、高齢者とは他人からケアしてもらうだけの存在というイメージがあるが、高齢者とは決して無用の存在ではないはずだ。高齢者は他人からケアを受けるだけでなく、豊富な経験をもとに、地域に貢献することができる。台南県には多くの特色ある漁村や山があり、また伝統工芸も盛んだが、六十五歳以上の高齢者なら地元の風土にも詳しく、観光振興に最適な人材だと言える。高齢者の存在価値をいかに見出すかが、今後の高齢化社会におけるカギとなるだろう。 

●多元的サービスで需要に応える―黄彦宜・長栄大学教授

 ケアセンターでは、高齢者が高齢者をケアする姿をよく目にする。それは近所づきあいが発展した昔ながらの互助ネットワークで、非常に心温まるものだ。地域とは社会のひとつの節であり、隣近所や友人、親戚といった地域のヨコのつながりがあり、そこに県市や公的機関とのタテのつながりが加わる。高齢者サービスは奥が深く、高齢者が本当に必要としているのは何なのかを追求しなければならない。ケアセンターはその意味でも良い作用をしており、「行く場所がある」という帰属感が持てるほか、高齢者に社会参加の機会を与え、社会の宝としての自覚を芽生えさせることができる。


三、「移動病院」による検診サービス

●サービスの多元化を目指す―林麗珠・台南県衛生局課長

 「移動病院」システムは県民の健全な暮らしと健康のために、地域のサービスとして始められたもので、早期発見、早期治療で病気発症と死亡を減らすこと、検診システムの一元化を図り重複した経費を削減すること、時間的、精神的負担を減らし、受診者が検診を受けやすくすることを主要目的としている。検診の内容は成人病のほか、子宮頸がん、乳がん、肝臓がん、直腸がんの五項目を含む三十数項目で、各地域の衛生所が主導し、県衛生局の支援のもと、県の医師会、歯科会などと協力しておこなっている。

 「移動病院」は去年三月に試験的にスタート後、SARSの蔓延で一時中断したが、八月に再開し、今年十月十日までに、すでに百五十回実施された。一回に二百五十~三百五十人を検査しており、これまで検診を受けた県民の数は六万七千百六人に上る。

 子宮頸がん検査では、これまでに九十一名のがん発症が確認され、現在治療中だが、受診前にはがんにかかっているとは思いも寄らなかったという。このほか乳がん二名、口腔がん三名、直腸がん四十名、肝臓がんは百十三名が確認された。

●辺境地域の医療サービスを強化―陳惠敏・中華医事学院教授

 移動病院の看護士は非常に仕事が丁寧ですばらしいと思う。台南県内の各地域で、受診時間も異なり、明け方六時から開始する地方もある。にもかかわらず歩くのが不便な高齢者には送迎サービスまで提供し、県民の需要に合わせている。

 移動病院システムは現在検診のみだが、今後は辺境地区への医療サービスを強化し、高齢者の健康と保健の助けとなってほしい。
 

 ●「移動病院」は予算の有効活用―徐瑞祥・行政院衛生署国民健康局組長

 高齢者が老後をよりよく過ごすために、検診による健康管理は必要だ。「移動病院」システムはこの理念から生まれたもので、危険な病気をいち早く発見し、予防と治療を目的としている。医療予算をいかに振り分けるかは、意見が分かれるところだが、最良の方法は皆健康保険のなかで「移動病院」システムを制度化することだと思う。現在、二十一の県と市でこうした活動が行われているが、台南県は予算を有効活用し、一年目に二万人、今年は四万人の検診をおこない、受診者は三八%増加した。これは他県が学ぶ価値がある。

 患者の輸送や転院サービスについては、政府は各県・市ごとにもっとも効率的な方法を決め、さらに多くの予算を投入し、細かくバックアップする必要がある。
《台北『中国時報』10月17日》

教育関連ニュース

「ハイレベル大学」建設を奨励

 国際レベルの教育機関「ハイレベル大学」設立のため、大学の統合、法人化が進められようとしている。 

 游錫堃・行政院長は十月二十二日、「いかに世界の一流大学を誕生させるか」と題した討論会で、「頂尖(ハイレベル)大学」の推進について、「わが国の大学は規模、人材、財力、設備ともさらなるレベルアップが必要だ。今後一定規模の大学に対し、統合と行政法人化を奨励し、組織改革案などを行政院で審査した後、相応の大学には年間三十億元(約九十億円)の助成金を拠出する」と述べた。また「今後十年のうちに一ないし三カ所の大学を、世界大学ランキングの百位に入れたい」と語った。 

 同討論会には、杜正勝・教育部長、張景森・経済建設委員会副主任委員らも出席し「教育部では二〇〇五年度に百億元(約三百億円)の特別予算を組んでおり、立法院と各党団で協議のうえ、早くて今年中に通過する」と説明した。また、かねてから統合を計画中の清華大学、交通大学の徐遐生、張俊彦・両学長も出席し、「政府の支援のもと、最高の大学を建設したい」と意欲を見せた。 

 ハイレベル大学および研究センターの建設は、政府の新十大建設における主要課題であり、五百億元(約一千五百億円)の特別予算が組まれている。
《台北『中国時報』10月22日》

「留学奨励」計画が来年スタート 

 行政院経済建設委員会はさきごろ、来年二〇〇五年から、若者の海外留学を奨励する「菁英留学計画」をスタートすると発表した。〇五年の予算は二億五千万元(約七億五千万円)、〇六年の予算を三億六千万元(約十億八千万円)とし、四年目の〇八年からは毎年四億四千万元(約十三億二千万円)規模の経費を維持するとしている。ここ数年、国内に大学や研究所が増えたことで、海外留学生の数は減少していたが、国際社会に通用する人材育成のため、政府は学生の海外留学を全面的に奨励する方針だ。 

 これを受けて、教育部では「海外留学奨励計画」をさらに促進し、各レベルに分けた公費留学枠を拡大する。また、行政院国家科学委員会など他機関でも関連の留学奨励措置をとり、〇五年から毎年少なくとも千人の学生を留学させる予定だ。 

 ●海外留学生誘致制度も 

 また、政府は海外から台湾への留学生に対し、毎月二万五千~三万元(約七万五千~九万円)を助成する「台湾奨学金」制度を設けている。行政院の資料によれば、外交部、教育部、国家科学委員会、経済部が今年支出した奨学金は合計一億四千六百万元(約四億三千万円)に達し、六百二十七人が台湾に留学する予定だ。奨学金制度は来年度以降も引き続き拡大し、二〇〇八年度には千二百人まで増やす目標である。
《台北『聯合報』9月22日》

中学の基礎学力試験に作文を導入 

 全国三十万人の中学生を対象とする中学校基礎学力試験について、教育部は十月十四日、試験科目に作文を追加する方案を通過した。二〇〇六年度に試験的に実施した後、翌二〇〇七年度から正式に導入する。 

 教育部は十月十四日、「義務教育の内容と品質に関する総合調査」の結果を発表し、基礎学力試験の作文導入について今後の計画を説明した。それによれば、従来の受験科目である国語、英語、数学、自然、社会に加えて、現在中学二年生の生徒が二〇〇五年の卒業前に受ける基礎学力試験から、作文科目を追加する。出題形式はテーマのみ与える従来方式ではなく、絵や文章など、一定の材料を与えられたうえで作文する形式をとる予定であり、正式に実施される〇六年度からは、作文の採点結果が進学の参考資料となる。
《台北『中国時報』10月15日》

外国籍配偶者に識字率向上策 

 非識字率二・六%を占める外国籍配偶者の識字率向上を図るため、教育部では現在教育法修正案を策定中だ。二・六%のうち二・二六%を占める三十四歳以下の外国籍配偶者について、二〇〇七年までに非識字率を一・八%まで改善することを目標としており、全国的に語学研修を実施する予定だ。
《台北『中国時報』10月19日》

台湾映画で繋ぐ文化の架け橋 早大でシンポジウムと上映会開催

 十一月一日、早稲田大学台湾研究所と(財)交流協会が主催する「台湾映画と日本」シンポジウムおよび映画上映会が、早大の大隈講堂でおこなわれ、映画ファンや学生ら約百名が訪れた。 

 早稲田大学の台湾研究所は人文、社会科学、及び学際的な台湾研究を推進し、学術活動を通じて学内外の研究者の相互交流と協力を図ることを目的に、国内初の台湾研究所として二〇〇三年十月に設立された。今回のシンポジウムは、台湾映画を通して台湾の社会や人々の考え方、日本観などを考察し、それにより台日の相互理解を深めることを目的とし開催された。 

●シンポジウムで台湾映画を分析 

 午前中のシンポジウムでは、門間貴志・明治学院大学助教授、台湾から陳儒修・台湾芸術大学助教授、廖金鳳・同助教授が招かれ、台湾映画に対する研究成果をそれぞれの視点から語った。 

 門間氏は「日台映画交流の検証」と題した講演のなかで、六〇年代の台湾映画について触れ、「日本映画業界との協力のもとに作られた当時の映画は、日本統治時代の面影を映し出している」と述べた。陳儒修氏は「台湾映画のなかの省籍像」というテーマで講演し「何度も外国の統治を経た台湾には複雑な歴史があり、そこで生まれた省籍間の衝突やエスニック像が、映画にも色濃く反映された」と指摘した。また「八○年代には台湾ニューシネマ運動が起こり、『少年(小畢的故事)』『童年往事』『牯嶺街少年殺人事件』などの作品に、本省人、外省人それぞれの姿が描かれた」と述べ、こうした映画に象徴的に登場する外省人の軍関係者と家族の居住区「眷村(けんそん)」についても解説した。さらに九〇年代以降は、「きらめきの季節(美麗時光)」などの作品に、国際化された新しい台湾人の誕生が伺えるという。 

 一方、廖金鳳氏は、「中央電影公司と台湾映画の盛衰」と題し、戦後中国から渡ってきた南京農業教育電影製作片廠と、日本統治時代の台湾電影事業公司を合わせて設立された中央電影事業股分有限公司が、どのように台湾映画界を主導してきたかを分析した。また「アカデミー賞受賞作の『グリーンディスティニー』はハリウッドで作られた。同様に、今後の台湾映画には外国資本の受け入れも必要」と語った。 

●映画鑑賞と視聴者交流 

 午後二時からは、十月下旬の東京国際映画祭に出品された「夢遊ハワイ」の上映会がおこなわれ、学生や研究者ほか百名以上が最新の台湾映画を鑑賞した。同映画の徐輔軍監督と、同じく国際映画祭出品作「時の流れの中で」の鄭文堂監督(両作品については本誌二一六六号参照)を招いてのQ&Aセッションでは、映画制作に興味があるという大学生や、台湾映画の大ファンだという主婦などから多数の質問が飛び、一時間以上にわたって台湾の新鋭監督との交流が行われた。印象的だったのは、「観た直後は心がほのぼのと温まり、家に帰って一人になると、ふと寂しくなるような映画を撮りたい」と言った徐監督の言葉だった。派手なアクションや奇抜な展開はないが、「生きているっていい」と思える映画を、好きなように作るという姿勢は、台湾映画に共通しているように感じた。 

 映画やドラマなどを観ることは、その国の言葉や文化、風土を知るうえで効果的な方法の一つであり、台湾の映画を学び、鑑賞するのは台日交流の身近な形である。早大台湾研究所では、今後もこうした催しを行う予定であり、次回もぜひ多くの人の参加を期待したい。 

(取材:本誌編集部 葛西)

台湾観光年

黄金博物園区がオープン

 日本統治時代、金鉱の町として栄えた台北県金瓜石に、十月二十七日、黄金博物園区がオープンした。 

 金瓜石は、現地の金鉱を所有していた台湾金属鉱業公司が一九八七年に倒産して以降閉鎖された。経済部鉱業司によると、調査の結果、金瓜石にはまだ二百四十億元(約七百二十億円)相当の金脈が埋まっているという。金鉱と周辺施設の資産は、現在台湾電力と台湾糖業の所有となっている。 

 博物園区は、鉱山の歴史を紹介し金塊や金でできた製品を展示する「博物館」と、金鉱石の採掘作業を体験できる「本山五坑坑道体験区」、金瓜石の生態環境や地質の特色を紹介する「環境館」、日本統治時代に視察で当地を訪れた皇太子のために建てられた「太子賓館」などからなり、それらを通して当時の様子を偲ぶことができるようになっている。 

●世界最大の金塊でギネス記録 

 黄金博物園区のオープン目玉として、台北県はこのほど世界最大の金塊を完成させた。金塊は、底辺の長さが四十㎝、幅十八・五㎝、高さが二十㎝の台形型で、重さは二百二十・三㎏あり、一億五百万元(三億一千五百万円)相当の価値があるとされる。十月二十八日、ギネス会社の職員らの立会いのもと世界最大の金塊として認定された。この金塊は博物園内に展示され、自由に手で触れることができる。 

黄金博物園区:http://www.gep.tpc.gov.tw

《台北『聯合報』10月31日ほか》

台湾に共鳴し武士道精神に学ぶ アジアの社会派バンドが初アルバム

 十一月二十六日、アジア各国の社会派バンドによるコンピレーションアルバム「侍―spirits―」が発売される。弾けるパンクロックに乗せて、日本、台湾をはじめ十三のバンドが思いの丈を込めて歌う。参加バンドのひとつ、「秋茜-AKIAKANE-」は、四人の若い女性によるバンドで、台湾とはとくに縁が深い。前身の「SOFTBALL」は、台湾では知名度の高いバンドだが、国家のアイデンティティを求める台湾の姿に感銘を受け、その当時から毎年二・二八記念日に行われる音楽イベントに参加してきた。今年の二月二十八日には、李登輝前総統を中心に挙行された「人間の鎖」集会で、総統府前で行われた「台湾イエス、中国ノー」コンサートに出演し、台湾の人々の熱気をじかに感じたという。

 また、台湾初の女性パンクバンド、「B.B.BOMB」も注目株だ。現役女子大生で構成されるこのユニットは、これから日本でのプロモーション活動を全面的にスタートする。

 今回、若手バンドが集まって完成させたこのアルバムは、李前総統が提唱する「武士道」をコンセプトとし、自分の国を誇りに思い、強く優しくあれという精神に基づいて作製されたという。 

●コンサートのお知らせ

十二月二十日には、本アルバムの発売記念コンサートが行われる。詳細は下記のとおり。 

会場、問い合わせ:新宿LOFT03-5272-0382
開場/開演:17時/17時30分
出演:秋茜-AKIAKANE-(千葉)、仁籟(東京)、B.B.BOMB(台湾)、
滅火器(台湾)ほか

チケット:前売二千円、当日二千五百円(1ドリンク付き)。チケットぴあ、ローソンチケットで十一月六日から受付中。 

台湾地名ものがたり 11

●桃園の昔は茅の原 

 桃園……美しい地名で、なにやら桃源郷のようなところを連想する。だがここはかつて、茅(かや)の密生する湿地帯であった。ここもまた、大陸から移住民が入る前は平埔族のケタガラン族が活躍する場であった。鄭成功の時代、ここに砦が置かれたが、鄭氏政権滅亡とともに廃止され、ふたたびケタガラン族のみの地となった。記録に残る入植としては、清の雍正四年(一七二六)に漳州人が入っている。かれらはこの地を、茅の密生していたことから「虎茅庄」と呼んだ。 

 そこへ乾隆二年(一七三七)に客家人が入植し、仲間を増やすとともに大陸から桃の苗木を持ち込み、それが根付いて一帯には茅に代わって桃の原が広がり、春にはその香りが漂い、さらに客家人が多く集まって「桃仔園」と呼ぶようになった。やがて客家人の街が形成され、その町を「桃仔園街」といい、今日の桃園市となった。 

 その後一九七九年に桃園国際空港が完成してからは、台湾と世界を結ぶ航空路線の中心地となって現在に至っている。 

●新竹は竹囲いの砦 

 桃園のすこし南の新竹市の一帯も、かつては平埔族の蕃社が散在していた。その種族名はタオカス族といった。地名の由来については、そのタオカス族の有力蕃社で竹囲いの防備をしていたところがあり、それを「竹塹」といったという説と、清朝の台湾府がここに役所を設け、それを防備するのに竹囲いを城壁の代わりにし、それを「竹塹」といったという説があり、この「竹塹」がこの地の地名となり、近代になってから現在の「新竹」に改められた。ちなみに漢人が入植し始めたのは十八世紀なかごろからであり、当時は客家人が中心部に、その周囲に福佬人が、タオカス族は山地のほうにと住み分けられていた。

春 夏 秋 冬

 10月23日夕方は、関東でも大きな揺れを感じ驚いた。新潟県中越地震の発生だ。その後伝わってきたニュースは崖崩れや道路寸断など、当初に思った以上の被害でなんとも痛ましい。犠牲になられた方々にはお悔やみを申し上げるとともに、多くの被災民の方々には心よりお見舞いの言葉を申し上げたい。あとは被災地が一日も早く復興することを願うばかりである。 

 こうした災害の時、悲惨なニュースにばかり接するなかで、心温まるのは若いボランティアの活躍である。今回も各地からボランティアの人々が駆けつけ、被災者の方々への炊き出しや被災家屋の後片付けに精を出している姿に、テレビの映像や報道写真で接することができる。ボランティアの中には、以前に自分の町が台風被害に遭い、ボランティアの人に助けられたから、ともかくお返しに駆けつけたという人もかなり多い。まさに「情けは人のためならず」を実地に見ているような気がする。 

 地震といえば、五年前の台湾中部大地震の時、日本からのレスキュー隊がいち早く来援し、空港からそのまま現場に駆けつけて被災民の救助にあたり、また日本社会から膨大な義捐金が寄せられたことを、台湾では今なお鮮明に記憶している。 

 今回の新潟県での地震は台湾でも、その規模の大きさ、新幹線が脱線しながらも一人の負傷者も出さなかったこと、車ごと土石流に飲まれ数日後に幼い男の子が救出されたことなどが連日大きく報道された。 

 台湾の人々がこうしたニュースに接しまず想起したのが、五年前の日本の支援である。陳水扁総統、呂秀蓮副総統、それに游錫堃・行政院長、陳唐山・外交部長らはその日の内に日本への慰問の言葉を表明するとともに、駐日代表処を通じて被災者へのお見舞いのことばを伝え、さらにレスキュー隊など必要があればただちに派遣したいと申し出た。また26日には東京の駐日代表処から陳鴻基・副代表が、31日には許世楷・代表がそれぞれ数百万円の見舞金を持って新潟県庁を慰問し、台湾では経済団体の工商協進会がすぐに500万円の義捐金を用意し、許代表に託した。さらに台湾医界連盟、キリスト教長老教会などをはじめ、また私企業などが次々と募金を開始した。いずれも「台湾の地震の時にお世話になったから」と口をそろえる。まさしく地震にも台風にも「人の情け」にも国境はない。今はただ被災者の方々の一日も早い立ち直りを祈るばかりだ。
 (K)