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  台湾週報2171号(2004.12.16) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
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台湾週報2171号(2004.12.16)

総統が語る衛生、憲法、安保
国際衛生協力、憲法改正、防衛力強化  

 陳水扁総統は12月2日、ポリネシア衛生閣僚会議に参加した各国閣僚と会見し、台湾先住民の保健衛生改善の成果を基礎に、「医療に国境なし」の精神によってポリネシア友好国の衛生改善に協力することを明言した。さらに米国の在郷軍人会総会長、ユタ州知事、共和党下院議員らと会見した際には、台湾にとっての憲法改正や防衛力強化の必要性を説明した。兵器購入特別予算案については、平和維持のためであることを強調した。

●ポリネシア衛生閣僚会議 

 陳水扁総統は十二月二日、このほど台湾で開催された「二〇〇四ポリネシア衛生閣僚会議」に出席した各国代表と総統府で会見した。陳総統は談話の中で、台湾が「医療に国境なし」との信念により、友好国の医療環境向上に協力することを明言するとともに、世界保健機関(WHO)加盟を必ず実現すると強調した。この会見にはサンドラ・ピエラントジ・パラオ衛生相、アレサナ・セルケ・ツバル衛生相、アルビン・ジャクリック・マーシャル諸島衛生相、ウォルトン・レファシア・ソロモン諸島衛生次官らが出席した。以下は会見時の陳総統談話全容である。 

   ○   ○   ○

 中華民国(台湾)政府と国民を代表し、今回台湾で開催された「二〇〇四ポリネシア衛生閣僚会議」に出席されました皆様方を心より歓迎します。それぞれがポリネシアの医療と保健衛生に強い関心を持っておられます。皆様ご存知のように、台湾の先住民はポリネシアンに属し、このエスニシティーは世界で最も種族が多く、最も広い範囲に分布しております。近代科学はその研究成果として、太平洋とインド洋に分布するポリネシアンは、文化、言語、生活習慣にとどまらず、糖尿病、肥満、痛風など遺伝性の疾病にも共通性があると指摘しています。これらの症例は環境の要素以外にも、血統的要素もあることを示しております。このためポリネシア系各国が医療面についての情報交換だけでなく、学術研究を共同で進めることも現実として非常に重要なことです。 

 世界の先進国ではすでに保健衛生は基本的人権と見なされ、もちろん台湾も例外ではありません。しかし平均寿命などを指標とした場合、台湾の先住民ならびにポリネシア系地域の人々の健康状況は、その他の地域の人々に比べ確かに一定の距離があります。この問題は医療体系の構造と医療資源の配分に関係するものであり、個人の体質やエスニックの特性にのみ原因を転嫁することはできません。この問題に対し、わが国は山地と離島の衛生設備の改善や医療サービスの向上を図るほか、先住民および離島住民における医療人員の育成、急患の大型病院緊急移送の補助、遠隔医療体制の充実などを積極的に進めております。すでに僻地の医療問題は多くの面で解決できました。われわれは、先住民の保健医療問題、エスニシティーの平均寿命向上、流行性疾病のコントロールなどの問題は、国家社会全体の課題であり、国際社会が共同で関心を持ち対処しなければならないものと認識しております。 

 台湾の先住民はこの土地の最初の主人であり、同時にポリネシアンの一グループでもあります。われわれは「医療に国境なし」の精神に基づき、台湾の医療実績をポリネシアの友邦と分かち合い、共同で先住民の生存と発展、健康への権利を擁護することを義務と見なし、努力したいと願っております。ポリネシアとの衛生医療協力を強化するため、行政院衛生署は昨年初めて「原住民族委員会」と「二〇〇三ポリネシア健康国際会議」を共催し、今年はさらに一歩進み「ポリネシア健康台北連合会議」の開催と「相互衛生協力協定」に調印しました。これは国際医療交流の具体的成果と言えます。われわれはポリネシアの抱える問題に積極的に関与し、国際間の医療健康問題の情報交換と交流を強化し、恒久的な協力体制を確立し、さらに世界のエスニックとの調和を図ることに自信を持っています。 

【総統府 12月2日】

●憲法改正は国民投票で決定 

 陳水扁総統は十一月三十日、米下院共和党のジョン・カルベーソン議員、ジョン・カーター議員、ピル・ギグレイ議員と総統府で会見し、ブッシュ大統領の再選に祝辞を述べるとともに、米下院が台湾のWHO年次総会参加を支持したことなどに謝意を表明し、台湾の憲法問題にも言及した。憲法問題に関する発言要旨は以下の通りである。 

   ○   ○   ○ 

 私は今年五月の総統就任演説の中で今後の内政重点政策ならびに憲法改正問題と両岸問題について述べ、さらに双十国慶節および十一月十日の国家安全会議においても同様の問題について言及しましたが、今後ともこの内容に変化はありません。 

 二〇〇六年末に新憲法草案を創出して国民投票でそれを審査し、私の任期が終了する二〇〇八年から同憲法を正式に施行するというこの方策は、わが国の憲政体制に完全に合致したものです。二〇〇六年末に憲法草案を国民投票にかけて審査するのは、五月二十日の就任演説、十月十日の国慶節談話、十一月十日の国家安全会議での結論になんら違反するものではありません。十二月十一日の立法委員選挙は民主改革を進めるのに大きな力となるものであり、両岸交渉を再開し海峡情勢に安定をもたらすことにも有益であると確信しています。 

【総統府 11月30日】 

 ●防衛力強化は平和維持のため 

 陳水扁総統は十一月二十九日、総統府でトーマス・カドムス米在郷軍人会総会長とサンドラ・ダットン同会婦人会総会長と会見し、米在郷軍人の平和に対する功績を称えるとともに、台湾の防衛力強化などについて語った。米在郷軍人会は毎回の年次総会で台湾支持の決議をし、米政府に台湾が防衛に必要な武器を売却することや台湾の国連加盟を支持するように呼びかけるなど、常に台湾に友好的な活動を展開している。会見時での防衛力強化に関する陳総統の発言要旨は以下の通りである。 

   ○   ○   ○ 

 国家の安全保障は、どの国の国民にとっても共通の願いです。軍隊の存在は決して戦争をするためではなく、戦争を防ぎ恒久的な平和を追求するためです。軍隊が必要な装備を整え、防衛を強化するのは、台湾も例外ではありません。わが国行政院が立法院に米国からディーゼル潜水艦やパトリオット3型ミサイルを購入する案を送付しているのも、台湾海峡の平和を確保し、海峡両岸の恒久的平和を追求するためであり、断じて戦争のためではなく、戦争を防止するためのものです。 

【総統府 11月29日】 

 ●中国のミサイルは脅威 

 陳総統は十二月一日、オレン・ワーカー米ユタ州知事と会見した際にも、台湾の防衛力強化の必要性と、さらに憲法問題を国民投票にかける理由を説明した。これらに関する陳総統の発言要旨は以下の通りである。なお、ユタ州は州政府も議会も国連およびWHOへの台湾加盟支持を表明し、また議会は台湾との自由貿易協定締結支持と中国の台湾に照準を合わせたミサイルの撤去要求を決議している。 

   ○   ○   ○ 

 中国は台湾の対岸に位置する浙江、福建、江西、広東の各省計六個所に少なくとも六百十基の戦術弾道ミサイルを配備し、年間百二十基の割合で増強しています。これは台湾にとって重大な脅威であり、この脅威に対し、わが国は警戒を緩めることはできません。このため政府は防衛力強化のため、立法院に兵器購入特別予算案を送付するとともに、中国に対し対話の再開を呼びかけています。両岸関係の安定、海峡の平和維持、両岸関係の正常化は、私の任期内における最大の使命です。 

 二〇〇六年に国民投票によって憲法草案を審査するのは、わが国憲政体制の必然の道です。現行法規による憲法改正の手続きは、立法院で四分の三以上の同意を得たのち国民投票にかけるというもので、仮に与党が立法院で安定多数を獲得したとしても野党が四分の一以上を占めるのは固く、これでは台湾の民主改革の道は遅れるばかりとなります。 

【総統府 12月1日】

台湾はASEANにどう対応すべきか 重要な日米との自由貿易協定締結への努力

 ラオスのビエンチャンで十一月二十九日に開催されたASEAN首脳会議において、二〇二〇年までにASEANプラス3(日中韓)の経済統合を目指す「東アジア共同体」実現に努力する方向性が示された。いわゆる「ビエンチャン行動計画」だが、その方向に沿った第一回「東アジアサミット」が来年マレーシアのクアラルンプールで開催されることになった。また、このための準備としてASEAN外相会議が来年初頭に開かれる。この時ASEANプラス3のほかに加える国があるかどうかが討議されるものと見られる。 

●台湾の参加に希望あり 

 こうした方向性が示されたことについて、外交部筋は同日「台湾は世界貿易機関(WTO)と同じようにASEANの正式メンバーとなる努力が必要だ。このため政府間交渉を進める以外にも、各国との議員外交を積極的に進め、ASEAN各国において台湾の参加支持の声を高めなければならない」と語った。同時に「中国はすでに日韓とともに『プラス3』のかたちでASEANとの連携を強めており、台湾の参加については中国が確実に大きな障壁になるだろう。このため台湾は可能なあらゆる国際活動を展開し、中国の壁を崩さねばならない」と表明した。なおビエンチャンの観測筋は「現在のところ東アジアサミットに台湾の参加は予定に入っておらず、さらにこのサミットは政治的な意味合いが強く、中国の圧力が加わることが予想される。だが、来年初頭のASEAN外相会議で台湾の参加が議題に上れば、東アジアサミットの経済会議に台湾が加わる可能性がないわけではない」と見ている。 

●FTAによる国際関係強化を 

 特に中国が自由貿易協定(FTA)締結交渉などによって積極的にASEANとの関係を強めようとしていることについて、葉明峰・行政院経済建設委員会副主任委員は同日「中国がASEANとFTAを締結すれば人口十八億人の自由貿易区が出現する。これは台湾にとって大きな衝撃となる。国際経済は実力と実益の追求が中心である。台湾は強い経済力を持っており、国際経済舞台に欠席するわけにはいかない」との警戒感を示した。 

 同時に「ASEANプラス1(中国)にしろプラス3にしろ、中国の意図するところは、台湾の僻地化である」と指摘し、「台湾は世界経済の中で十五位から十七位の実力を持ち、WTOの正式メンバーでもあり、国際経済社会の中で積極的に重要な役割を担うのが、台湾にとって非常に有利なカードとなる」と語った。さらに葉副主委は「政府は目下、グアテマラ、パラグアイなど友好国ならびに国交はないが重要な貿易相手国である日本、米国、シンガポール、ニュージーランド、オーストラリア等とのFTA締結に向け努力している」と明らかにした。さらに「ただし、短期間内にこれらの国とFTAを締結するのは困難だ。このため、まずFTAに次ぐ経済協定を結び、各国との経済関係を強めておくのも一つの選択肢である」との意見を述べた。 

 ●重要な日米とのFTA 

 これに関連し、経済部国際貿易局筋は同日「中国がASEANとの自由貿易区形成に向かって進んでいる今日、台湾は観客席で手をこまねいていることはできない。早急に席を立って競争の場に加わらなければならない」と語り、「このためわが国は日米など主要貿易相手国とのFTA締結を積極的に進めることが重要である。これ以外にもWTOでの多国間交渉を支持するとともに、APECの構造下に貿易の自由化を促進するのも必要だ」と指摘した。 

 何美玥・経済部長は同日「ASEANプラス3による自由貿易区ができれば、アジア諸国のみの自由経済区が出来上がり、そこにインドが加われば台湾のみがアジアで参加していない唯一の国となる。だがASEAN各国の経済環境は異なり、自由貿易区形成には困難がともない、時間がかかる。台湾は市場をアジアのみでなく、世界に拡大すべきだ」との見解を示した。 

《台北『自由時報』11月30日》

ニュース 

十六品目に生産履歴を導入 農産物の日本輸出促進を目指す

日本が二〇〇六年から農産物全体に生産履歴制度(トレーサビリティーシステム)を実施するのに合あわせて、行政院農業委員会はこのほど国産の農産物十六品目を優先的に同システムに組み込むことを決めた。 

十六品目の内訳は、パイナップル、マンゴー、グリーンボール、枝豆、メロン、米(益全香米)などの、すでに海外に輸出されているか今後日本に輸出が見込まれている八品目と、キャベツ、空心菜、蕪、とうもろこし、トマト、イチゴ、茶、米(銀川米)などの有機農作物八品目だ。海産物については、日本へ多く輸出しているウナギを中心に、今後同システムを導入していく考えだ。

廖安定・農業委員会企画処長は、「日本は台湾農産物の最大の輸出先であり、遅れをとってはならない。生産履歴制度は日本の消費者にとって安心であるだけでなく、台湾の農業のレベルアップも促す」と話している。
《台北『民生報』11月25日》 

●台湾パパイアが日本に輸出 

農業委員会は十二月一日、国産パパイアの日本への輸出が可能になったと発表した。 

台湾は八年前から日本に輸出を働きかけてきたが、ウリミバエの寄生が認められるとして規制されてきた。今回輸出が解禁されたのは、台湾が日本側の認める殺虫処理を行い、安全が確認されたためだ。台湾は現在スターフルーツ、マスクメロンなどについても検疫処理結果を日本に提出し、輸出を申請中である。
《台北『中央社』12月2日》
 

三年間に百億元の農産物を輸出 東京、大阪、香港を目標 

游錫堃・行政院長は十一月二十九日、「今後三年間に新たに百億元(約三百億円)を投入し、とくに東京、大阪、香港の三大市場を目標に、国産農産物の海外輸出を促進する」と語った。さらに国際競争力を高めるため、政府は東京と大阪の二カ所に台湾の農産物を紹介、PRするアンテナショップ「台湾農産物館」の設置を計画している。
《台北『工商時報』11月29日》 

東亜経済人会議が東京で開催 台日のさらなる連携を確認

台日の経済界代表が集まり、台北、東京で毎年交互に開かれている「東亜経済人会議」が、今年は東京で十二月一日、二日に開催された。 

台湾からは同会議委員長の辜濂松氏をはじめ五十五人が参加し、日本側は香西昭夫委員長はじめ八十五人が出席した。 

開会式では、香西委員長が「同会議が日台経済交流の架け橋となることを期待する」と挨拶し、辜委員長は中国の急速な経済発展のもと、台日協力の重要性を強調した。  

会議は三つのテーマに沿って行われ、双方の報告と意見交換がなされた。第一セッションの「台日双方の政治経済情勢」では、日本側が「経済の減速感が強まっているが、企業セクターを中心に体質改善が進んでおり、来年度にはふたたび力強さを実感できるはず」と強調し、これに対し台湾は「今年のGDPは五・九三%増になる見通しで、『新十大建設計画』により産業インフラが進んでいる。台日企業のさらなる緊密な連携が望まれる」と期待を述べた。 

第二セッションの「中国経済の現状と課題」では、外資による中国投資が従来の「生産拠点型」から「国内市場型」へと変化し、中国企業による対外直接投資も強まっていること。また中国経済の課題として、経済の加熱、原材料の高騰、不良債権問題、エネルギー不足、為替レートの不均衡、失業率の上昇、環境問題が挙げられ、そうしたなかで台日双方はより慎重な対応が求められることなどが指摘された。 

第三セッションの「東アジアの経済連携強化」では、台日が早期に実現すべき事項として取り組んでいる知的財産権保護について報告がなされた。このなかで日本側は、台湾の海賊版対策や特許審査基準の明確化、審査レベルの向上に一定の成果があったと評価し、台湾は日本の特許審査期間の短縮や中国語出願の受理などで利便性が向上したと評価した。今後はこれらを基礎に「基準認証」や「投資」、「人の移動」などの個別分野についても双方が緊密な協力を行っていくことを確認した。

《取材・編集:本誌編集部》 

インフルエンザ大流行の恐れ WHOが数百万人死亡を予測  

 世界保健機関(WHO)は十一月二十五日、「ワクチン開発に少なくとも三年を要するという状況において、インフルエンザが世界各国で蔓延し、数百万人の死亡者を出し世界の四分の一の人口が感染するだろう」との見解を発表した。 

 WHOのインフルエンザ対策を担当しているストール教授は、タイのバンコクでさきごろ開催されたASEANおよび日本、中国、韓国の十三カ国による閣僚会議でインフルエンザの大流行についてコメントし、「今年タイとベトナムで三十二人の死者を出した鳥インフルエンザは、ヒトに感染し大流行する原因となるだろう。ただそれがいつ起こるのかは現時点では定かではない」と警戒を呼びかけた。 

ストール氏はさらに「世界的伝染病が発生するルートとしては、東南アジアのタイ、ベトナムおよびかつてSARS蔓延に見舞われた中国での発症がもっとも可能性が高い」と指摘し、「ヒトが病気に感染した鳥に長期的に接触すれば、鳥インフルエンザに罹る危険があり、ヒトの伝染病へと変化する恐れがある。また、鳥インフルエンザは非禽類の動物にも感染の可能性がある。可能性が最も高いのはブタだが、その食肉からもヒトへの感染が予想される」と述べた。さらに、「世界の総人口六十四億人のうち、約四分の一の人が感染するだろう」と予測した。 

ストール氏によれば、インフルエンザの流行によって全世界の二百~七百万人が死亡し、世界総人口の二十五~三十%、すなわち十億人以上がこれに感染する可能性がある。

一方、鳥インフルエンザのワクチン開発に関し、タイの疾病管理機関では「来年にはワクチン精製に成功し、二年で検査を終えれば、早くて三年内にワクチンを発売できる」と前向きなコメントをしている。 

WHO駐タイ代表のアルディス氏はこれに関し、「インフルエンザ蔓延を防止する最良の方法は、国際協力にほかならず、WHOは各国が協力し伝染病対策を推進するよう期するものである」と述べた。
《台北『青年日報』11月26日》 

台湾高鉄が欧州高鉄連盟と和解 賠償金六千五百万ドルで終止符

 台北―高雄間を約九十分で結ぶ台湾高速鉄道(台湾新幹線)の建設に関し、独仏欧州高速鉄道連盟(以下、欧州連盟)が台湾高速鉄路公司(以下、台湾高鉄)に損害倍賞を求めていた件で、双方は十一月二十六日、台湾高鉄が六千五百万米ドル(約二十一億元=約六十三億円)を支払うことで和解に達した。

欧州連盟は車両システムの国際入札で当初優先交渉権を得ていたが、最終的に日本が受注した。このため「優先交渉権に違反した」として八億ドルの損害賠償を求めて二〇〇一年一月に国際商業会議所(ICC)に裁定を依頼していた。ICCでは三年の審議を経て今年三月に八千九百万ドルの賠償金支払いを勧告していたが、その後双方の協議により、勧告金額より約二千四百万ドル少ない六千五百万ドルで合意に達した。台湾高鉄ではこれにより今後の資金調達や融資のリスクが減る」とコメントした。
《台北『青年日報』11月27日》 

台湾観光客のビザ恒久免除に 来年の国会で関連法規を修正

日本の町村信孝外相は十二月三日、閣議後の閣僚懇談会で「日本政府は台湾からの観光客に対し来年三月開幕の日本国際博覧会(愛知万博)の期間中、半年間のノービザを適用する。さらに万博閉幕後も恒久的なビザ免除措置をとるため、来年四月に関連法規の改正を行う方針だ」と表明した。来年一月の通常国会で、特別立法の形式で愛知万博期間中のノービザ適用をおこない、四月には国会に「出入国管理及び難民認定法」改正案を提出し「ビザ免除の対象」を現行の「国家」から「地域」に広げる方針だ。これにより台湾からの観光客は愛知万博閉幕後の来年秋以降も、ノービザ措置を享受できることとなる。 

一方、行政院観光発展推進委員会は十二月二日、フィリピン、タイ、ベトナム、インドネシアおよびインドから台湾への観光客に対し、ビザ発行所要日数の短縮など、一連の優遇措置をとることを決めた。
《台北『中国時報』12月3日》

中国は台湾に向け軍備増強 米国は武力攻撃を座視しない

 ダニエル・ブラメンサル元米国防総省中国課課長は十一月三十日「米国企業研究所(AEI)」がワシントンで主催した、中国の軍事動向に関するシンポジウムで「中国は近年、軍事力を年々増強し、野心を明確にしてきている。最新型の武器と指揮通信システムを配備し続けているが、その重点は台湾に北京の示した条件(一つの中国)を短期間に受け入れさせるところにある。装備の更新は台湾海峡の軍事力バランスにおいて優位に立ち、さらにひとたび台湾海峡で武力侵攻を発動した際に、米国の介入を阻止するところにある」と指摘した。 

 また米「ランド研究所」の中国問題専門家であるムレイ・スコー・タナー研究員は「今年三月の総統選挙の期間中、北京は中国に進出している台湾企業に対し、民進党支持の企業に圧力を加えるなど、選挙干渉をおこなった。だが陳水扁総統は再選された。ここで問題としなければならないのは、北京が台湾に対する選挙干渉に効果はないと覚った場合、残された効果的な方法は何であるかと判断するのかという点である」と中国による武力発動の可能性があることを示唆した。 

 さらに米ヘリテージ財団のハーベイ・フェルドマン研究員は「中国は将来的に台湾を武力統一する能力を備えるかもしれない。しかし台湾海峡で大々的に軍隊を展開し台湾を攻撃するのは、北京の長期的利益に合致しない。戦争を発動し、台湾を廃墟にしてしまったなら、中国には一体何が残るだろうか」と指摘した。さらに「ここで重要なのは、米国は中国に台湾を武力攻撃するのを絶対に座視しないということを覚らせることである。もし米国が中国の武力発動に手をこまねいていたなら、日本、韓国、それにフィリピンなど東南アジア各国は米国をどう見るだろうか」と述べた。その一方、フェルドマン研究員は「米国は台湾にも両岸問題に慎重に対処するよう自粛を要請すべきだ」と語った。
《台北『中央社』12月2日》

盧千惠・代表夫人が「王康陸人権賞」 三十年にわたり人権運動に尽力

 三十年以上にわたり地道に人権活動に携わってきた許世楷・台湾駐日代表夫人の盧千惠氏がさきごろ、米国台湾人権協会の二〇〇四年「王康陸人権賞」を受賞した。 

 同賞は台湾独立運動を推進した王康陸博士に因んで創設され、人権運動に尽力した台湾人に贈られる賞としては、最高の賞とされている。歴代の受賞者にはアジア安保フォーラム幹事の宗像隆幸氏、長い間台湾の政治活動家を支援した三宅清子氏らがいる。盧・代表夫人は一九六一年に日本で許世楷氏と結婚後、当時の政権からパスポート剥奪などの圧力を受け、人権運動に身を投じることを決意したという。民主化指導者ら政治犯の救援などに力を尽くした。 

盧・夫人は十一月二十五日、代表処主催の記者会見で「台湾人の五十年にわたる知恵と勇気によって、台湾は自由と民主の国家になろうとしている。こうしたなかで何がしかの貢献ができれば嬉しい」と語った。 

  《台北『中央社』11月29日》 

 ●国際活花展で台湾をアピール 

十一月三十日には、「国際活け花チャリティー展」が東京都内のホテルで開催され、盧・代表夫人は、駐日代表処駐在員の夫人で構成される「福爾摩沙婦女協会」のメンバーとともに、同展に参加した。 

この催しは各国大使館の駐在大使夫人の協力で毎年行われており、台湾は毛清芬・羅福全前駐日代表夫人の時代に初めて参加し、盧・代表夫人がそれを引き継いだ。今年は、台湾をはじめ、マレーシア、米国、スウェーデンなど欧米、アジア、アフリカの三十六カ国が参加して各国の特産品展示即売もおこなわれ、盛況となった。  

盧・代表夫人はみずから選んだ先住民の伝統衣装で「TAIWAN」と表記されたブースで来賓を迎えた。盧・夫人は「このような国際親善活動に参加できてとても嬉しい。台湾はこうした機会を活用して国際社会に声を発していくべき」と語った。 

同展の収益はすべて長野のパラリンピック開催に寄付されることになっており、主催者側は台湾の熱心な協力に感謝し、来年の参加も強く希望した。 

《台北『中央社』11月29日》

国際社会と連動した医療衛生体制を 青年日報(11月27日)

世界保健機関(WHO)のインフルエンザ対策調査役クラウス・ストール博士はさきごろ、「今年東南アジアで猛威を振るった鳥インフルエンザが、今後世界的に蔓延する恐れがあり、感染源となる可能性がもっとも高いのはタイ、ベトナムおよびSARSが蔓延した中国である」と述べ、警戒を呼びかけた。これによりタイのバンコクで開会中の東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国による閣僚会議では、鳥インフルエンザ対策が主要な議題の一つとして取り上げられた。一方、各国は先ごろのアジア太平洋経済協力会議(APEC)で台湾が提案した鳥インフルエンザ予防の協力に関する提言に応じ、台湾を含めた国際的連携の強化が徐々に注目されつつある。 

台湾の友好国ニカラグアは、今年十一月中旬、感染症勃発に関する国際的枠組みである「国際保健規則」(International Health Regulation : IHR)を修正し、その適応範囲を拡大して台湾を組み入れるよう提案した。これは中国の強い干渉を受けたが、米国などの支持を得、来年二月に再度討議されることとなっている。米国代表は「疾病に国境はなく、IHRにはいかなる漏れもあってはならない」と明確に示し、WHOがIHRの改正により台湾を国際的な衛生体制のなかに組み入れることを強く主張した。 

確かに医療衛生に国境はなく、われわれにはそれを享受する権利があり、貢献の義務がある。台湾は国際社会と連動して伝染病の蔓延を予防すべきであり、また国際医療体制のなかで欠かせない力となるはずだ。 

 周知のとおり、台湾の医療レベルは高く、バイオテクノロジーの研究においても定評がある。トルコ大地震をはじめ世界各国の災害や中東難民に対する支援および医療救援活動など、官・民問わず、財と力を惜しまず推進しており、こうした貢献は国際社会から高く評価されていると言えるだろう。

 しかしこうした貢献と裏腹に、「地球村」に身を置く一員でありながら、台湾二千三百万国民の医療権益は長期にわたり疎かにされ続けている。例えば一九九八年、病原性大腸菌が大流行した際、台湾はWHOの疾病対策網から長期的に排除されただけでなく、必要な情報や協力も受けられず孤軍奮闘するしかなかった。こうした状態は国際人道の原則に反しており、グローバル化が叫ばれる現在、台湾は公衆衛生、医療、医薬、伝染病対策などあらゆる分野で、世界各国と相互連動し情報を共有すべきであり、決して国際疾病防疫網の盲点となってはならないのだ。 

 いずれにせよ、鳥インフルエンザは今後三~五年以内にヒトの間で大流行の危険があり、その被害はSARSを上回ると予測されている。われわれは疾病予防対策から除外されている現状を深刻に受け止め、生存するために努力していかなければならない。台湾はWHO加盟国ではないが、SARS、鳥インフルエンザなど新型伝染病対策において、情報を公開し真摯に対応することで世界の良民としての立場を示すべきである。グローバル化時代の今、医療衛生の情報は政治問題を越えて共有されるべきであり、台湾が一日も早く国際医療ネットワークに組み入れられることを願ってやまない。

中国「平和的台頭」の本質を探る 覇権確立まで国際社会懐柔のための戦略

 中国国務院総理の温家宝が二〇〇三年十二月十一日に米ハーバード大学で講演し「平和的台頭」論を打ち上げて以来、国家主席の胡錦濤がこれを国家戦略として推進し始めた。その一方で中国は軍備を増強し、周辺諸国の警戒心を高めている。ならば「平和的台頭」戦略の本質はなにか。それを解くカギとして、台湾軍事専門紙『青年日報』軍事小組のまとめた文書をここに紹介したい。

はじめに 

 いわゆる「平和的台頭」は現在中国政府の国際戦略となっている。それは国際社会の平和的関係進展に波長を合わせたものだが、中国の場合はその裏に別種の意図が隠されている。それを研究し把握しなければ対応策を見出すことはできない。現在すでに、米国をはじめ国際社会は中国の「平和的台頭」戦略に大きな関心を寄せている。なぜなら、それは世界の中国に対する見方を変えさせ、また国際情勢の進展と力関係に大きな影響を及ぼす可能性があるからだ。このため欧米西側諸国からラテンアメリカやアフリカなど第三世界にいたるまで、急速に大国への道を進む中国の動向と影響力の可能性に注目しているのだ。中国の指導階級にとって「平和的台頭」の推進には、対外関係はもとより対内的にもある種の意図を持ったものとなっている。

 時代の背景 

 温家宝は二〇〇四年三月の第十回全人代における記者会見で「平和的台頭」戦略について、以下の五項目の要点をあげた。 

一、世界の平和的環境の中に中国の発展を見出し、中国の発展によって世界の平和を保障する。

二、平和的台頭は自己の力と努力に拠らなければならない。

三、平和的台頭は経済改革とその開放政策、ならびに国際社会との経済関係強化の中に推進されなければならない。

四、平和的台頭には世代にまたがる努力が必要だ。

五、平和的台頭は他国の発展を制限するものではなく、まして脅威を与えるものでもなく、特定の国の犠牲の上に成り立つものでもない。 

 以上だが、その政策にはいくつかの矛盾点が見出せる。だが総合的に見た場合、これが現時点における中国の国家発展戦略の基本理念となっていることは認められる。 

 中国の周辺諸国にとって、その平和的な政策はおよそにおいて受け入れ易いものに見えるが、その目的は「中国脅威論」の拡大を防ぎ、中国の強大化に対する国際社会の懸念を払拭するためであり、いわば消毒剤のようなものである。「平和的台頭」は現実的で各国との共同利益もそこにあると見えるが、中国の国力が強大化したあと、国際社会への影響力もまた拡大するのも現実である。ここに中国の意図が汲み取れる。 

 つまり中国は、各国との経済関係強化の中から利益を見出し、経済力向上と各国との協調姿勢によって、大国としての中国のイメージを際立たせようとしている。したがって中国が「平和的台頭」の段階にとどまっている間は、中国の周辺は比較的安定し、欧州各国との関係も緊密化するだろう。

両岸問題には手を緩めない 

 だが、中国の「平和的台頭」戦略は、決して台湾海峡両岸問題の平和的解決を保障するものではなく、むしろ自己強大化の過程における一種の柔軟路線と言える。中国の台湾に対する武力による威嚇は、その「平和的台頭」戦略にマイナスイメージを与えるものである。中国は目下経済発展に全力を注いでおり、このため両岸問題が現在の「平和的台頭」戦略に影響を及ぼすのを恐れ、特に頑迷な態度をとって米国との対立を表面化させるのを避けようとしている。それは米国と衝突したのでは、経済発展が頓挫せざるを得なくなるからである。 

 こうした理由から、中国は軍事闘争の準備を十分にして台湾独立派を牽制しつつ、さらに両岸統一問題において常に強硬な姿勢をとり続け、場合によっては経済発展を犠牲にしても一戦を惜しまずとの態度を見せ、武力使用しか解決の道はないといった緊迫感まで作り上げ、「平和的台頭」の後の状況に備えようとしているのである。つまり、両岸問題に対する中国の「決意」を世界に認知させ、最小の代価をもって「一つの中国」という政治目標を達成しようとしているのだ。 

 もう一つの角度から見れば、両岸問題を「平和的台頭」の中に組み込んでいるようにも思える。つまり反台湾独立を堅持したまま、台湾経済の中国依存度を高めさせ、将来的に台湾経済の命脈を握り、それによって前述の政治目的を達成することを意図しているのである。

 地域の覇権が目標 

 中国にとって「平和的台頭」は一つの過程であり、それはまた一気呵成にできるものではなく、さまざまな要素が絡んでいると同時に、克服しなければならない問題をも含んでいる。たとえば今後の経済発展の状況、指導者の特質と政治能力、民族主義の傾向、社会の安定度、自然環境、公衆衛生、エネルギー供給、過剰労働力、都市と農村の格差、公務員の腐敗、金融危機、法治の未熟、人口の高齢化、言論の不自由、治安の悪化等々であり、これらはいずれも早急に解決しなければならない問題であり、また解決しなければ先に進めない懸案でもある。 

 中国は現在、急速な経済発展の潜在力を持っている。だがそれを維持するためには、政治の安定と継続した外資導入が必要である。それによってこそ「平和的台頭」の動力が得られるのであり、国内的にもさらに一段階昇り、二〇二〇年には真の大国となれるのである。 

 国際政治には危険と不測の事態が充満しているが、中国は二〇二〇年を待たずして日本を追い越し、東アジアで最も影響力を持った国になるというのが一般的な見方である。もしこの時点で米国がまだ世界で唯一の超大国としての地位を維持していたなら、こうした有力な競争相手の出現は容認できないであろう。この時かりに中国の指導者たちが「平和的台頭」に含まれている「理性」を表面的に維持していたとしても、国内的には突き上げを受け、内心にも変化を生じさせるはずである。つまり、かれらは心理的に、いかにして「平和的台頭」を進めるかという問題よりも、大国としてどのような役割を演じるかといったことをより熱心に考え始めるであろう。 

一国の台頭は他国の利益を損なわずには置かず、またそれは脅威となるものである。この問題は中国の指導者たちの念頭にもあるはずであり、これをいかに調整するかは、かれらの内部の問題、さらに能力の問題と言えよう。 

 現在、中国は十三億人の人口を擁し、二〇二〇年には世界最大の国外進出国家となり、米国に代わって世界最大の経済体となる可能性は否定できない。中国の経済力が順調に拡大していけば「平和的台頭」の達成は困難ではない。中国自身この点については自信を持っており、近い将来にアジア太平洋地域あるいは国際間で強権を掌握することは十分に可能だと見ている。だからかえって現時点において、中国の指導者は国内的には経済発展を第一義に唱え、対外的には覇権を求めず拡張はせず、経済グローバル化の趨勢に順応し、各国との互恵互助を図り、共に繁栄することを求めると宣伝し、平和的イメージを高めようとしているのである。このことから、近未来において中国は国際社会に対し柔軟な姿勢を見せ続けるであろう。

 米国は中国を脅威と見る 

 台湾海峡両岸統一問題と対米関係は、中国が「平和的台頭」を実現する上での二大障壁となっている。なぜなら、それは世界唯一の超大国としての米国の地位に影響を及ぼし、またアジアだけでなく世界の権力バランス地図を塗り替え、同時にそれらが米国の世界における利益に挑戦するものとなるからだ。こうした理由から、米国は中国の「平和的台頭」を、米国に対する脅威と見なしているのである。さらに米国は、もし統一問題で両岸間に軍事衝突が発生した場合、それは中国と米国の対立を生み出し、双方とも勝利を得ないまでも、戦後に受ける代償は米国よりも中国の方がはるかに大きくなると見なしている。 

 現在すでに中国は東アジアにおいて、地域繁栄のための重要な力となっている。だが中国は周辺諸国と多くの領土問題を抱えている。このためにも「平和的台頭」戦略で周辺諸国の警戒心を和らげ、国際社会と共に歩むという姿勢をとる必要があるのだ。長い目で見れば、中国と米国の国家利益は異なっていることが指摘できる。だから両国は台湾海峡での偶発的衝突を防ぐ意味からも、台湾海峡の安定を優先課題として受け止めている。このため双方は、突発的事態や緊急問題を処理するための構造を打ち立て、両岸問題が戦争に発展するのを防ごうとしている。また、この状況下において米国が「両岸問題は平和的に解決されなければならない」と強く言えば言うほど、中国にとってはそれが圧力となり、台湾に強硬な態度はとれなくなるであろう。

台湾のとるべき道 

 台湾の政府当局も言論界も社会全体が、中国の「平和的台頭」の本質と将来の進展方向を十分に見抜き、積極的に台湾の各種建設を進め、それらの指標において中国よりも前を進んで優勢を維持し、有利な条件と自信をもって中国側と対話を進め、台湾の有利な地位を確保しなければならない。同時に、国際社会においては各国との実質的友好関係を強化拡大し、それら諸国の両岸問題に対する影響力を強めるようにしなければならない。これらは中国に中華民国(台湾)が存在する事実を認めさせる要因となり、また両岸問題を平和的に解決するための最も重要な道でもあるのだ。 

 台湾が懸念すべきは、中国の「平和的台頭」のスピードや時間ではなく、台湾が先んじているカードがどれだけあるか、またどこまで長くそれらを維持できるかという点である。台湾の能力が中国より優れている部分が多ければ多いほど、中国は中華民国(台湾)が存在する事実を尊重せざるを得なくなり、また台湾が実力をもって台湾海峡の平和を世界に保障し、国家の長期的な発展を確保することができるのである。このことを台湾は最大の努力目標としなければならない。 

《台北『青年日報』11月21日》

地震被災者の生きる力写し続ける 張蒼松「家族の記」写真展東京で開催

一九九九年九月二十一日、台湾中部を襲った大地震は、二千人以上の死者を出し、人々は瓦礫と化した家を前に呆然とするほかなかった。それから五年、仮設住宅に住んでいた人々も徐々に家を建て直し、それぞれの生活を営んでいる。 

被災直後に五十世帯の家族を取材、撮影し、五年後の今年、同じ家族をもう一度レンズに収めた台湾の写真家・張蒼松さんの個展「家族の記―台湾大地震から五年」が、十一月二十九日~十二月十一日まで、東京銀座で開催された。地震直後に取材した五十家族のうち、三十六家族を再びカメラに収め、当時と現在の写真を対比して展示した。 

被災直後、自分も被害に合ったにも関わらず、総出で炊き出しやボランティアに尽力した家族。五年後のいま、そうしたボランティア活動は組織化され、地元の人々の支えとなっている。台湾の名家・林家に代々勤め、林家花園を管理していた初老の男性は、花園前広場に避難キャンプを張った被災者数十人に、三度三度の食事を提供した。家屋が全壊したタイヤル族の女性は、事故で夫を亡くし、女手一つで小さかった二人の子供を育てていた。 

「こうした人々の姿から、私は被災した苦労というより、むしろ生きる力を感じる。彼らから多くのことを教えてもらった」という張さん。被災者に対する思い入れには、彼の母親が被災したことも強く関わっているようだ。彼の母親はマグニチュード7.1を記録した一九三五年の台中州大地震で九死に一生を得た。ちょうど食事の準備中に被災して、包丁を握り締めたまま助け出された母親は、九十二歳の今もなお、家族においしい料理を食べさせようと毎日包丁を握っているという。 

被災地の実情を写すことを自分の使命と感じ、「五年後のいま、もう一度彼らの姿を報じることは自分の責任」と語る。被写体となった人々とは、すでに親しみ深い間柄となったが、「写真に撮ってなんの役に立つんだ!」とくってかかられたこともあった。しかし張さんは「痛みは記憶を完全に吐き出した後、ようやく引いていく。報道写真はその促進剤となる」と信じている。 

張蒼松さんは台湾台中県生まれの五十歳。東京の写真専門学校で学び、台湾と日本でカメラマンとして活躍する一方で、中部大地震の被災地の現状を紹介する特集コラムを中国時報に掲載するなど、執筆活動もおこなっている。そのなかで一九九五年に起きた阪神淡路大震災の復興の様子を特集し、また大地震後の土砂災害の危険性など、中部大地震の被災者にとって有益かつ励みとなるテーマを取り上げた。この内容は数冊の本にまとめられ、神戸の被災記念施設などに寄贈したいという。 

「台湾大地震から五年、阪神大震災から来年で十年。同じ地震帯に位置する台湾と日本、地震の知恵は人生の知恵へと昇華しただろうか。今回の写真展が、阪神大震災、台湾中部大地震、そして新潟中越大地震を経験した人のため、祈りと祝福になれば嬉しい」。個展の紹介文には、張蒼松さんの問いかけと思いが込められていた。 

(取材:本誌編集部 葛西)

文化ニュース

二〇〇四年の「金鐘奨」が発表

 台湾のラジオおよびテレビの最高賞「金鐘奨(ゴールデンベル賞)」の授賞式が、十一月二十三日と二十六日、それぞれ国父紀念館で盛大におこなわれた。 

 ラジオ「金鐘奨」では、番組、個人、技術、コマーシャル部門計二十一の賞のうち、台北愛楽ラジオが九つ、漢声ラジオが七つの賞を受賞した。このうち「最優秀流行音楽番組賞」には「台北爵士夜(ジャズナイト)」、個人部門では「電影最前線」の藍祖蔚さんが「流行音楽最優秀パーソナリティー賞」を受賞した。 

 一方、テレビ「金鐘奨」では、番組、個人、技術など計二十三賞のうち、ドラマの質の高さで定評のある公共テレビが十一賞を獲得。例年どおりの好成績で「赴宴」で最優秀ドラマ番組賞、「崑劇/長生殿」で伝統演劇番組賞を受賞した。個人賞では「日正当中」の張晨光さんが「最優秀ドラマ主演男優賞」を、「冷鋒過境」の萬芳さんが同女優賞を獲得した。また最優秀エンターティメント番組司会賞には「綜芸大哥大」の張菲、黄品源両氏が選ばれ、注目を集めた。 

《台北『青年時報』11月27日ほか》 

故宮南部分院の設計決まる 台湾、アジアの特色を全面に

嘉義県太保市に建築が予定されている故宮博物院南部分院の設計国際コンペの最終選考が十一月二十四日行われ、米国の気鋭建築家アントン・プレドック氏の作品に決定した。

台湾の現代舞踊団「雲門舞集」の作品『行草』と、中国の青銅器にインスピレーションを得てプランを練ったという氏の作品は、台湾の大自然とアジア的要素が全面に打ち出されたものとなっている。中央に玉山に見立てた四角錐のガラス体が据えられ、その中には書を連想させるさまざまな線が描かれており、ガラス体の周囲には青銅器を思わせるブルーの屋根の展示館を配置し、山と海に囲まれたイメージを創出している。審査員からは「博物館の神髄である『永遠性』が感じられ、建物に呼応した庭園には仏教やイスラム教、日本文化の要素が取り入れられており、台湾とアジアの関係が示されている」と評価された。 

コンペには各国から著名建築家グループが参加し、四十の作品の中から六つのプランに絞って最終選考が行われた。参加者の中にはニューヨーク世界貿易センタービルの設計者や日本の安藤忠雄氏らが名を連ね、審査員には前大英博物館館長や米コーネル大学建築学院院長らがあたるなど、世界一流の建築家と専門家によるコンペが行われた。 

《台北『聯合報』11月25日》 

台湾の金脈に世界が注目 金瓜石の採掘で国際入札を計画 

このところ米ドルの急激な値下がりで金の価値が上昇し、にわかに脚光を浴びている。日本統治時代、金・銅の採掘で大きく発展した台北県の金瓜石には、専門家によると現在少なくとも一億元(約三億円)相当の金が埋蔵されているという。金山を所有している台糖にはこれまでにも外国企業から採掘要請があったが、最近カナダや米国企業が採掘に強い意欲を示しており、経済部では来年国際入札を行い、海外と共同で採掘する方向で検討している。 

《台北『民生報』11月29日》 

ドラえもん漫画が復活 毎月単行本十冊を出版 

 台湾では「小叮(口+當)」の名称で親しまれてきた日本の漫画ドラえもんが『哆啦A夢』となってふたたび台湾にお目見えする。十二月から毎月単行本十冊が発売されるほか、来年以降は長編の出版も予定されている。 

 ドラえもんが誕生したのは一九六九年、小学館が連載したのに始まり、今年で三十五年目を迎える。台湾でもすでに三十年前から翻訳本が出版され、多くの子どもたちを魅了してきた。当時はまだ著作権保護の概念が徹底しておらず、台湾では複数の出版社が日本の原作をもとに翻訳を行った。そのなかで最も人気を集めたのが青文出版社の本で、香港で「叮(口+當)」と呼ばれていたのをヒントに「小叮(口+當)」と命名し、『機器猫小叮(口+當)』として出版された。 

ドラえもんは台湾で予想外の人気を得、一千万冊を超えるベストセラーとなった。日本で出版されるスピードでは読者のニーズに追いつけないと判断した同社は、内容の三分の一を日本の原作に頼りながら、残り三分の二は読者からストーリーを募集するなどしてオリジナル作品に仕上げ、次々と発売してきた。しかし、一九九一年に台湾で著作権法が施行され、版権が別の出版社に渡ったため出版を停止した。九七年に小学館が中国名を『哆啦A夢』に統一し、今年版権を手にした青文出版社はドラえもんの登場人物などを紹介した『哆啦A夢大事典』をすでに出版し、十二月以降は単行本と長編を予定している。 

同社の黄寄萍社長は「ドラえもんは世代を超えて支持されており、少なくともあと十五年は人気が続く」と語っている。

《台北『聯合報』11月13日》

台湾観光年  

訪台者数、近く三百万人に

交通部観光局は今年を「台湾観光年」に位置付け、海外からの観光客に対し、さまざまな優待措置やイベントを行ない観光PRに務めているが、ここへきてその成果が出始めている。今年一~十月の海外から台湾への渡航者数は約二百四十万三千人となり、前年同期より約三六%も増加した。交通部が今年目標とする三百万人まで、あと一歩の勢いだ。 

国別に渡航者数を見ると、最も多いのが日本で同約七十万七千人、前年同期比で約三五%の大幅増となっている。以下香港・マカオの約三十五万一千人(同約三九%増)、米国の約三十一万五千人(同約五一%増)の順となっており、いずれの地域も三〇%を越える大幅増となっている。 

●訪台者数百万人を突破 

一方、台湾から海外への出国者数も大幅増加の傾向にあり、一~十月の出国者総数は約六百六十三万五千人で、前年同期より三六%増となり、今年全体では八百万人に達すると見込まれている。国別では、香港の約二百十六万七千人(同約四三%増)に続き、日本が約九十一万二千人(約五〇%増)となっており、十二月六日、百万人の大台を突破した。 

《台北『民生報』11月25日ほか》

高雄「打狗英国領事館」リニューアルオープン 

 百四十年余りの歴史を持つ台湾初の洋館「打狗英国領事館」が装いも新たにオープンした。これは、高雄市文化局と民間企業が協力し、四カ月の修復作業を経て完成したもので、今後は民間企業が運営を引き継ぎ、飲食や文化展示エリアとして利用される。当領事館は高雄の中山大学右側の鼓山にあり、西子湾の落日風景や港を一望するのに最適の場所だ。夜になるとタワーに設置されたサーチライトが夜空を照らし、高雄の新名所となっている。 

《『台湾観光月刊』11月号より転載》

台北万華民俗公園(十二号公園)が年末完成 

 六年の歳月と数十億円をかけた万華十二号公園が、今年末に完成する。地上は民俗公園、地下はショッピングセンターと駐車場となる。いろいろな日用品や文化用品の売り場のほかに、占いコーナーも設置される。正式オープンは来年一月を予定している。万華十二号公園は龍山寺のそばにあり、公園内は緑の庭園を取り囲むように回廊が設置されている。南広場の地面に埋め込まれた銅製の古い地標から、この一帯の歴史や文化を感じることができる。 

《『台湾観光月刊』11月号より転載》

台鉄アンテナショップがオープン 

 鉄道の旅に欠かせない楽しみの一つに駅弁がある。台湾鉄道が販売している弁当は昔から人びとに親しまれており、ここ数年は「懐旧弁当」の名称で豚肉の角煮、煮卵、雪菜の漬物などの昔ながらの弁当が特製の容器で販売されており、人気を集めている。 

 一世紀以上も人びとの足として利用されてきた台湾鉄道の歴史や弁当文化を紹介し、鉄道グッズなどを販売するアンテナショップ「台鉄本舗台北旗艦店」が十一月二十日、台北駅構内にオープンした。 

初日はオープンを記念して、百食分に限り弁当一個が五角(一元=約三円の半分)で販売された。一元出せば五角のおつりが戻り、さらにマグカップなどの記念品がプレゼントされた。

《台北『民生報』11月20日》

台湾地名ものがたり 13

●彰化は漢人中心の名 

 明の崇禎九年(一六三六)の文献に、現在の「彰化」の地には平埔族のうちバブザ(Babuza)族の蕃社が十社ほど点在していると記述されている。一帯は平地で、先住民にとっても住み心地のよかったことが容易に想像できる。この地に漢人入植者が入り開発が進み出したのは清の康熙二十二年(一六八三)に鄭成功が台湾に入ってからである。当時、開発の進んだ地を示す言葉に「一府二鹿三艋舺」というのがあることは、以前この欄で書いたことがあるが、二番目の「鹿」は現在の鹿港のことであり、彰化はここに隣接し、鹿港の開発が進むのに平行し「彰化」一帯の開発も進んだ。このため蕃社を営んでいた先住民は現在の埔里盆地の方に追いやられた。 

 さて「彰化」の地名だが、まだ鄭氏政権時代であった雍正元年(一七二三)、漢人がすっかり入り込んだこの地に行政区画として「彰化県」というのが設けられたのが始まりである。由来は置県の時に鄭氏政権の役人が「彰顕天子聖明、教化海外蕃隅」すなわち天子(明朝の皇帝)の聖徳を顕彰し、海外の蕃地を教化するという一方的な意味から「彰化」と命名したというのだが、先住民にすれば気分の悪い名だろう。 

●南投は単に北投の南 

 南投県といえば、台湾の行政区画のなかで唯一、海のない県だということをご存知だろうか。この命名はいたって単純で、かつてこの地にはタイヤル族やブヌン族が住んでいたが、その中でタウサバタ(Tausabata)社という有力な蕃社があった。そこに進出した漢人移住民がこの蕃社名を縮めてbataだけをとり「北投」の漢字をあてて地名とした。「南投」は単にその南ということで便宜上つけられた名だが、清の光緒十一年(一八八五)に台湾に省が設けられた時、正式地名となった。

新刊紹介   

「『アジアン』の世紀」 亜洲奈みづほ 著

 ここ数年、政治や経済分野において「東アジア経済共同体」がしきりに叫ばれているが、文化面ではさらに具体的な形でそれが進んでいることが、本書によってよく理解できる。これまでアジアは欧米と対比する形で劣勢や後進国に位置付けられてきたが、グローバリゼーションが進むなかで、世界に向けて発進するパワーを秘めた極めて魅力的な地域であることが、多くの事例によって語られている。そのなかで台湾はとくにグルメのジャンルで大きな影響力を持っており、具体例として茶芸館や黒タピオカ・ミルクティーが日本、東アジア全域にどのように伝播し、受け入れられたかについて本書は触れている。ひと括りに「アジア」と言ってもそこには多様な文化があり、それらを自国の文化とミックスした「アジア的なもの」のありようと神髄がこの本書によって明らかになる。

〈中公新書ラクレ ¥760+税〉

お知らせ

新潟県中越地震チャリティー試写会

新潟県中越地震チャリティー試写会として、来年一月、東京都内で台湾の大地震を扱った呉乙峰監督のドキュメンタリー作品『生命(いのち)』が上映される。 

一九九九年九月二十一日、マグニチュード7・3の大地震が台湾中部を襲い、二千四百人余りの尊い命が奪われた。倒壊した住宅は三万八千戸、住民の財産の損害額は三千六百億元(約一兆二千億円)にのぼった。呉乙峰監督は地震発生後ただちに現地を訪れ被災した人びとを見舞い、絶望の淵に佇む人びとの悲しみに寄り添いながら、かれらが生きる希望を見い出していくまでの過程を、およそ三年間にわたり追い続け、作品に完成させた。 

『生命(いのち)』は二〇〇三年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で「最優秀作品賞」を受賞し、今年公開された台湾では、ドキュメンタリーとして異例のヒットを記録するなど、高く評価されている。およそ二時間半にわたるこの作品には「希望の贈り物」という副題がついており、「どんなに理不尽で悲惨な光景を目にしても、人が生きていく暖かさを感じて欲しい」との監督の思いが伝わってくる。上映後には呉監督によるトークが予定されている。なお、試写会の売上は朝日新聞厚生文化事業団を通じて、新潟の復興活動に寄付される。 

日 時 2005年1月14日(金)午後6時30分~(開場は6時)
会 場 紀伊国屋サザンシアター(東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2タカシマヤタイムズスクエアビル紀伊国屋新宿南店7F)
入場料 千五百円(税込)
※ 前売券はチケットぴあ(Pコード:550-886)にて、当日券は会場にて発売予定。
後 援 朝日新聞厚生文化事業団
協 力 台湾資料センター 

    ◇    ◇    ◇ 

『生命(いのち)』は来年一月下旬から、ポレポレ東中野(東京)、第七藝術劇場(大阪)ほかにて、ロードショーを予定。

春 夏 秋 冬

 どのような構造を打ち立てようが、現実を無視していたのでは十分な効果を発揮できなくなる。ラオスのビエンチャンで11月29日に開かれたASEANプラス3(日中韓)の首脳会談で、2020年までにプラス3といった付属的な壁を撤廃した共同体実現に向け、包括的な経済統合を目指す「ビエンチャン行動計画」が採択された。この共同体は、ASEANとの自由貿易協定(FTA)を精力的に進めている中国を牽制する意味からも日本が提唱していたもので、ひとまず今回は日本にとって一応成功と言えよう。それを実際の成果に結びつけるのは今後の努力にかかっていることは言うまでもない。なにしろ日本にとっても中国にとっても庭先であるASEANとのFTA交渉について、日本は中国に大きく遅れをとっているのだ。今後の日本政府の活動が注目される。

 だが、この構想に物足りないところが一点ある。日本の貿易相手国の順位を挙げれば米国20.5%、中国15.5%、EU14.2%、ASEAN14.0%、韓国6.2%、台湾5.3%(日本財務省、2003年)であり、ASEANから見た場合は米国20.5%、日本18.9%、EU16.5%、中国8.4%、台湾6.1%、韓国5.9%(IMF2002年)の順となる。前記のうちEUと米国は域外だが、すでにお分かりの通りASEANプラス3からも共同体構想からも抜けているのが一つある。地理的に日本、中国、ASEANの三地域を結ぶ位置にある台湾が入っていないのだ。ASEANプラス3も共同体構想も、真ン中にぽっかりと空洞を開けたままなのだ。この空洞が埋められたなら、自由貿易の実効はさらに上がることに異論はないであろう。中国の政治的意図により、それが阻止されていることは言うまでもない。

 もう一つ気になるのは、中国がASEANと政治・安保、経済、科学技術協力に関する「行動計画」に調印したことだ。このうち安保面を見ると、ホットラインの設置や軍事演習の相互視察、軍事対話の機会増大などが謳われている。今それを最も必要としているのは、台湾海峡ではないのか。日本やASEAN諸国が実効ある安保構造の確立を望んでいるのなら、台湾が呼びかけている両岸対話をこそ、各国は中国に応じるよう促す方が効果的ではないのか。特に日本にとって共同体構想に台湾を組み込み、さらに台湾海峡の平和を維持することは、大きなプラスになるはずだ。日本の将来の安定と繁栄は、そこへの努力にかかっていると言っても過言ではないと思うのだが……。(K)