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  台湾週報2177号(2005.2.10) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
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台湾週報2177号(2005.2.10)

週間ニュースフラッシュ

◆兵器購入予算は下方修正後新国会で検討

 李傑・国防部長は一月十九日、今期の立法院院会(国会)で通過しなかった六千百八億元の兵器購入特別予算に関し、今後レートの調整および潜水艦のライセンス製造を取り消したうえで改めて次期院会に提出する考えを示した。
《台北『青年日報』1月20日》 

◆EUの対中武器禁輸解除に米国が再度反対

米国務院のバウチャー報道官は一月二十五日、欧州連合(EU)が検討している中国への武器禁輸措置解除に関し「EUが中国に特定の武器システムを輸出することが、周辺地域、とくに台湾に対する軍事情勢を大きく変えることを懸念する」と述べ、改めて反対を表明した。
《台北『自由時報』1月27日》 

◆陳水扁総統が「台湾海峡の平和」を強調

陳水扁総統は一月二十一日、「春節(旧正月)のチャーター便就航は両岸間の良好な関係を促した」と評価した。一方、中国が制定しようとしている「反国家分裂法」に「中国が同法で両岸問題を処理しようとすることは、両岸関係に負の要因となる」と懸念を示し「われわれは全力で台湾海峡の平和と両岸の現状を護るべきだ」と強調した。
《台北『青年日報』1月21日》

◆第五回立法院で計六一一件が通過

 一月二十二日、第五回立法院最後の院会(国会)が終了した。今期の院会では通算で計六百十一件の方案が通過した。このうち労働三法、通信伝播委員会組織法草案、国民大会職権行使法草案などについては二月一日に発足する次期立法院院会に持ち越されることが決まった。
《台北『青年日報』1月22日》 

◆失業率が四・〇九%に改善 

 行政院主計処が一月二十一日に発表した最新の失業率は四・〇九%で、過去三年半でもっとも少なかった。また昨二〇〇四年の年間平均就業人数は前年比で約二十一万人増加し、過去十二年で最高を記録した。就業状況が徐々に回復に向かっていることを示している。
《台北『経済日報』1月22日》 

◆陳定南・法務部長が宜蘭県長選出馬へ

 陳定南・法務部長は一月十八日、游錫堃・行政院長を通じ陳総統に報告書を提出し、今年年末の県長選立候補のため、法務部長の職を退く意向を伝えた。同報告書では「年末の北宜高速道路開通に向け、民進党員として故郷宜蘭で執政に尽力したい」と述べ、すでに陳総統の同意を得ている。
《台北『自由時報』1月22日》

◆台米の価値観は「自由と民主」で一致

 一月二十日、ワシントンでブッシュ米大統領の就任式典に参加した呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員は「ブッシュ大統領は式典で何度も『民主と自由』を強調した。これは台米共通の価値観であり、中国との最大の相違点だ」と述べ、米国政府は依然台湾と同じ立場にあると指摘した。
《台北『自由時報』1月22日》 

◆先住民族基本法が通過

 立法院院会(国会)は一月二十一日、先住民の自治制度確立と居住地および文化、教育、医療の保障などを盛り込んだ「原住民族基本法」を採択した。今後先住民の居留地で民間による土地開発、資源利用、学術研究などをおこなう場合には、先住民の同意が義務付けられる。
《台北『自由時報』1月22日》

◆中国政府への善意は無用

 中国が制定を進める「反国家分裂法」が論議を呼ぶなか、国際的人権活動家の魏京生氏は一月二十三日「中国は専制国家であり経済よりも政治が優先される。中国政府に善意を示すのは無用だ」と述べ、警戒を呼びかけた。
《台北『自由時報』1月24日》

総統が述べる謝新内閣への期待 協調と対話による安定内閣を目指す

 2月1日から新内閣が発足し、同時に新国会も開かれるため、游錫堃内閣は1月24日に総辞職した。これにより陳水扁総統は同25日、游錫堃氏のこれまでの業績を高く評価するとともに、次期行政院長には謝長廷・高雄市長を指名した。謝氏は高雄市長として与野党協調により多くの業績を上げており、協調と対話によって安定した内閣を運営するものと期待されている。陳総統は指名にあたり、次のように期待を述べた。 

 私はここに游錫堃・行政院長ならびに各閣僚の方々の過去三年間にわたる辛苦と努力を高く評価するとともに感謝の意を表明します。游院長と各閣僚の方々はこれまで重い責任を負い、逆境に負けず、日夜努力を重ねて来られました。

 この三年間、台湾の経済成長率、外貨準備高、予算執行率、国際競争力などすべてが向上し、失業率、銀行不良債権率、労災死亡率などは持続して下降しました。こうした折り返しは、国民に希望と自信をもたらしました。

 游院長は昨日、内閣総辞職を表明しましたが、マスコミの報道でも見られるように笑顔を見せておりました。三年前の組閣のおり、国家は多くの困難に直面しており、游内閣は「困難の引継ぎ」と言うべきものでしたが、三年の努力により「微笑の引継ぎ」ができましたことは、得難い貴重なものであると同時に、国民が高く評価するところです。

 この後を引き継ぐ内閣には、すでにある基礎の上に新たな視野をもって新たな活力を注入し、新たな動きを示し、国内政局に新たな状況を生み出すものと期待しております。本年の元旦祝辞で私は「協調と対話による安定した新局面を切り拓く」と申しましたが、これは今後の国政の基礎となるものです。この数日、私は各方面の意見を聞き、沈思熟慮の結果、重要な任務を果たした游内閣がここに光栄ある交代をすることに同意した次第です。新たな使命を担っていただく方には、政令都市の最高の市長である謝長廷市長にお願いしました。謝市長、すなわちこれからの謝院長と私は、過去四分の一世紀を共にしてきました。民進党以前から今日に至るまで肩を並べて戦い、時には君子の争いもし、最後には互いに協力し助け合うようになりました。謝市長の行政の功績とその知恵は国民とマスコミが広く知るところであり、私がここで一つ一つ申し上げるまでもありません。本日、謝市長に游院長のあとを受け継いでもらうことには、三つの重要な意義があります。 

 第一は地方の向上です。ある人は民主政治とは地方政治であると言います。最も優れた政令都市の市長が組閣するということは、地方のレベル向上を意味し、中央と地方の距離を縮めるものとなり、台湾の政治史にきわめて有意義な一頁を記すものとなります。 

 第二は地域のバランスです。これまでの国内政局は往々にして「台北から天下を見る」状況にあり、立脚点の相違から長期にわたって南北のアンバランス、東西の格差という現象を生じてきました。南部台湾の観点を中央に注入することにより、地域のバランスの取れた発展が期待でき、さらに都市と農村の接近も進められると思います。 

 第三は協調の重要さです。謝市長はかつて体操選手であり、柔軟性は言うまでもありません。ここで強調したいのは、これまで高雄市は少数与党の状況下において謝市長は協調を中心に市政を進め、輝かしい業績をあげてきたことです。将来、協調と対話による安定した新局面を拓くには、謝市長は最も好ましい人選と言ってよいものです。 

 謝市長の多才な政治的手腕、謝市長の輝かしい市政の業績、さらに地方のレベル向上、地域のバランス、協調の重要性を基礎とし、私は本日ここに憲法の定める総統の権限により、正式に謝長廷市長を次期行政院長に任命し、ならびにこれからの組閣の使命を託します。国民の皆様に支持をお願いするとともに、マスコミの方々にはよろしくご教導下さるようお願いします。 

 これからの新内閣は「協調内閣」「対話内閣」であり、また「安定内閣」でなければなりません。 

 私は元旦祝辞で協調と対話による安定内閣に言及しましたが、そこで特に政局の安定、社会福祉の増進、エスニックの協調、両岸平和の必要性を強調し、「与野党が和解できないことはない。協力し合えないことはない」と述べました。これまで私も民進党も最大の誠意と善意を示し、可能な限り各種のルートを通じて各方面の声を聞き、もちろんすべての野党とも接触し、与野党協調と政局安定のあらゆる可能性を求めてきました。 

 私は、自己を捨て、政党の利益を放棄し、イデオロギーの対立を捨て去ってこそ、与野党の和解と相互協力が可能となることを深く理解しております。しかし、これまでわれわれが体験したのは、政党間協力は台湾社会ではまだ模索の段階であり、政治的リーダー、党内事情、民意の汲み取りもまだ成熟し安定した段階に到達しておらず、政党間同士も民意の政党間協力に対する期待もまだ希薄であり、したがってたとえ和解と協力の機会があっても、そこからの一歩が踏み出せず、依然として躊躇しているということでした。 

 しかし、われわれは意気消沈しておりません。政局安定のため、社会福祉のため、エスニック協調のため、両岸平和のため、あるのはただ台湾団結という一本の道であり、また与野党の和解と相互協力という道のみです。この道を、われわれは堅持し踏みしめて行かねばなりません。 

 二月一日に、新内閣と新国会が同時に誕生します。私は元旦祝辞に述べたいくらかの重要な点を、改めて述べます。それは、これからの政党間関係は無論のこと、新国会と新内閣の相互連動も、双方勝利の局面を期待し求めねばならないということです。与野党が共に発展してこそ、健全な政党政治が得られるのです。行政部門が強く、立法部門もまた強く、与野党が共に強く、それぞれの人が私より強くあってこそ、国家も強くなれるのです。 

 与党として言えば、総統府、行政院、党、内閣が強くなってこそ、その内閣も強くなれるのです。われわれは游錫堃内閣の光栄ある交代に同意しますが、党内の同志や国民同胞は重量級の政治的リーダーが功なって退くことに決して同意するものではありません。蘇貞昌・総統府秘書長には党主席として民進党政権の永続性を指導し、努力を継続してもらいます。だからこそ、私は最大の誠意をもって游院長に総統府秘書長の任に着き、引き続き国民に奉仕し、内閣の重要な支柱となっていただくよう要請しました。 

 謝長廷市長は緊張の中に首班指名を受理しましたが、確たる決意と自信をもって期待に応えてくれることでしょう。謝市長は、游内閣が政治経済とも最も困難な時期に組閣しながら、昨年には経済成長率五・九三%を達成したことなどを高く評価しており、これからは歴代行政院長の築いた良好な基礎の上にさらなる発展を積み重ねてくれるものと確信しております。 

 謝市長はこれまで六年間、高雄市長として行政院院会(閣議)に列席し、その間に行政院長について登場があれば必ず引き際もあり、引く時には游院長のように評価を受けながら引かねばならないことを深く会得してきました。国民の政治への期待が落ち込んでいる今日の困難な局面において、彼は逆にこれを発展の契機ととらえております。人類の歴史は、困難な環境であればあるほど、さらに精緻な発想をもって相互の矛盾を解決し、発展を重ねてきたことを示しております。この形が台湾の現状に最も必要であり、同時にさらに多くの時間と高度な知恵と強い忍耐力が必要とされております。 

 謝市長は多年来、台湾新文化運動を推進してきましたが、その中心理念は共生と合作です。彼は時間をかけ忍耐力をもって台湾の各種の矛盾を解決し、内部対立を氷解させ、共生と和解の理念をもって協調と対話を実現し、安定した内閣をつくり、両岸平和と社会の安定を追求するものと確信しております。 

【総統府 1月25日】
 
陳総統が南太平洋友好国を歴訪 パラオとソロモン諸島を訪問、友好の絆を強化 

 陳水扁総統は一月二十七日から同三十一日、南太平洋の友好国であるパラオとソロモン諸島を訪れ、両国と友好の絆を深めた。台湾の総統が南太平洋を訪問するのは今回が初めてで、「海洋のパートナー、協力の旅」と名づけられた今回の歴訪のなかで陳総統は同じ海洋国家でともに民主主義を価値観としている点を強調し、両国に対し協力関係のさらなる強化と相互発展を呼びかけた。 

 今回の歴訪には、陳総統以下、陳唐山・外交部長、林佳龍・行政院新聞局長、徐慶元・台東県長、陳明文・嘉義県長らが随行した。二十七日午前、出発を前に陳総統は桃園国際空港で以下の談話を発表した。 

 「まもなく私は今年初めての友好国訪問の旅に出発します。パラオとソロモン諸島を訪問しますが、太平洋の友好国に中華民国総統が足を踏み入れるのは私が初めてです。友好国となるのに、国の規模は関係なく、友誼を深めるのに貴賎も問題ではありません。台湾が外へ歩み出しさえすれば他国と友好の縁を結び、国際社会で活躍の場を開拓できることを私は総統就任以来、一貫して外交の基本姿勢に据えています。

 愛に国境はありません。台湾の愛の種はすでにボランティアや農業技術指導員、医療団などによって長い間黙々と耕され、南太平洋の地に深く根を下ろしています。私の今回の訪問は、両国との友好の絆をさらに深めると同時に、台湾の人びとにわれわれの愛がいかにして国境を越え、それらの地で花を咲かせたかを見てもらいたいと思います」

 ●パラオ最大の観光客は台湾 

 陳総統の一行は政府専用機で同日午後三時すぎ、最初の訪問地パラオに到着した。空港にはレメンゲサウ大統領のほか百人を越す現地の児童・生徒、僑胞らが詰め掛け、台湾とパラオ両国旗を手に一行を歓迎した。 

 陳総統はこのあとパラオの国会議場を訪れ、現地の国会議員を前に演説を行った。以下はその要旨である。 

 「台湾は貴国と一九九九年十二月に国交を締結して以来、インフラ建設、農漁業、教育、医療の各方面で支援し、それらはすでに多くの成果を収めています。台湾からの観光客も年々増加しており、昨年は四万人を超える台湾人観光客がパラオを訪れました。これは同国を訪れる外国人観光客全体の半数近い四七%を占め、民間投資も増加しています。私は両国の友好が互恵と相互利益の良好な基礎のもとに、今後も長くずっと続くことを信じています。 

 貴国の国民は長年の奮闘と八回にわたる国民投票を経て一九九四年に米国の統治から独立し、全力で民主改革と憲政政治を推進し、民主国家の仲間入りを果たしました。海洋文化の発展の背景には、民主主義のもと自由で開放的な制度が確立したことがあげられます。この基礎は普遍的であり、貴国とわが国民が偉大で神聖な点でもあります。 

 真の友人は相手が最も助けを必要としているときに味方になる人です。パラオは台湾の真の友人です。私はこの機会を借りて中華民国政府と国民を代表し、貴国が国際社会で台湾を一貫して支持してくださることに心から感謝申し上げます」 

【総統府 1月27日】 

●海での初体験、現地文化を堪能 

 翌二十八日、陳総統はレメンゲサウ大統領の就任式典に出席した。同大統領は二〇〇一年にパラオ第五代大統領に就任し、今回は二期目となる。米国統治以前、パラオは一九二〇年から第二次大戦終了まで日本の統治下にあり、前任の大統領は日系のクニオ・ナカムラ氏で、九三年から二〇〇一年まで大統領を務めた。 就任式典のあと陳総統はレメンゲサウ大統領がみずから操縦するモーターボートに乗り、ロックアイランド周遊を楽しんだ。陳総統は台湾から持参したダイビングスーツに身を包み、透き通る青い南太平洋の海に潜ったり、イルカから歓迎のキスを受けるなど、南洋の海のレジャーを満喫した。 

 夜はパラオに駐在している台湾の技術団のメンバーや教師らと会見し激励したあと、レメンゲサウ大統領や国会議員、ナカムラ前大統領らを囲んでの晩餐会に出席し、なごやかな談笑を楽しむかたわらパラオ特産の「蝙蝠スープ」にも挑戦し、現地の文化を堪能した。 

 二十九日、一行はパラオからソロモン諸島入りし、空港で熱烈な歓迎を受けた。陳総統は三日間滞在し、最終日の三十一日には国会で「和解と対話、永続的平和の太平洋新世紀を切り開く」と題して演説した。このなかで陳総統は同国が民族紛争の内戦を乗り越え、平和な連合政権を打ち立て、安定した社会を築いたことを高く評価し「対話こそ偏見を取り除きコンセンサスを得るための最も有効な道であり、和解は国家の団結と永続的発展の基盤となる」と強調した。また同国のケマケザ首相と共同コミュニケに調印し、今後も双方が協力し両国の友好関係を強化していくことを確認した。 

 陳総統一行は三十一日、帰国途上トランジットのため初めてグアムに立ち寄った。空港ではブラウン米国在台協会理事長、米下院議員、現地の僑胞らが出迎えた。およそ五時間の滞在中、米関係者らと意見交換したほか、第二次大戦の歴史記念公園を訪れ、記念碑に花を捧げた。 

 陳総統一行は同日午後十時すぎ、桃園国際空港に到着し、一連の旅を終えた。 

【総統府 1月31日】

両岸チャーター第一便が就航 三通に向けた一歩踏み出す

 両岸の春節(旧正月)チャーター便の第一便が一月二十九日、台湾、中国の双方からそれぞれ就航した。 

 台湾からは中華航空機が午前八時ごろ桃園国際空港を飛び立ち、同十一時五十八分に北京に到着、中国側は南方航空機が午前九時二十七分に桃園国際空港に到着し、五十六年ぶりに双方の航空機が乗り入れる歴史的一頁となった。 

 北京では台湾からの第一便を陳雲林・中国国務院台湾事務弁工室主任らが空港で出迎え、歓迎式典が行われた。一方、五十六年ぶりに台湾に乗り入れた南方航空機は駐機地点にゆっくり移動し始めると、空港の待合室から一斉に大きな拍手と歓声があがり、中国の副操縦士はコックピットの窓を開けて手を振り、感動の瞬間をカメラにおさめた。

 春節チャーター便は二月二十日まで、両岸双方の航空機合わせて九十六便が就航する予定である。 

《台北『中国時報』1月30日》

●安全、快適、便利を達成 

 邱太三・行政院大陸委員会副主任委員は一月二十九日、以下のプレスリリースを発表し、春節チャーター便の就航を評価した。 

 「国民の熱い期待と歓迎ムードのなか、両岸春節チャーター便が双乗り入れで第一便を就航させ『安全、快適、便利』の三条件を達成した。台湾企業ビジネスマンとその家族がスムーズに帰郷し、台湾で待つ親族と団欒できたことを嬉しく思う。企業関係者は今回のチャーター便を高く評価しており、将来にも大きな期待を抱いている。政府としても今回の経験を今後の政策の参考にしたい」 

【行政院大陸委員会 1月29日】

謝長廷氏が新行政院長に 堅実さと熱意併せ持つ知日派 

一月二十四日の内閣総辞職を受け、陳水扁総統は同二十五日、謝長廷氏を行政院長に任命した。

 謝長廷氏は一九四六年台北市生まれ、台湾大学法学部を卒業後、京都大学法学研究科で修士号を取得。陳水扁総統と同様、司法試験に首席で合格、当局の反体制勢力を弾圧した「美麗島事件」の弁護団に加わったことから政界入りした。

 三十五歳の若さで台北市議会議員に当選、立法委員を連続三期務めた。その後一九九四年の台北市長選挙党内予選に敗れ、一九九六年の正副総統選挙で副総統候補として出馬したが落選という低迷期を経るが、一九九八年、五十二歳で高雄市長に当選を果たし、その進取の精神に基づいた行政手腕で数々の実績をあげた。

 高雄市長就任後、謝氏は執政の主軸を「未来型都市」の概念に置き、河畔整備やスタジアム建設、各種イベントの開催により、高雄を美しく文化的な都市へと脱皮させた。また市独自の企業優遇策を打ち出し、世界に「未来型港湾都市・高雄」をアピール。二〇〇九年「ワールドゲームズ」の高雄での開催権も獲得した。

 民進党結党当時からのメンバーであり、二〇〇二年までの二年間、党主席を務めた。流暢な日本語を話す知日派としても知られ、日本の政界にも知己が多い。二〇〇一年に民進党と日本の政党との交流窓口「台日友好協会」を発足するなど、日本との交流関係強化にも尽力した。

 ●正名は強制せず

 謝長廷氏は一月二十五日、立法委員選挙の際各界の物議をかもした「正名(台湾の名を正す)」問題に関し「海外の代表処など対外機関では正しい名称の変更が必要だが、国内の公的機関や学校などに『正名』を強制する必要はない」と述べ、野党側との協調路線を示した。

《台北『経済日報』1月25日》

走れ新幹線

新幹線車両の試運転に成功

 台北―高雄間を一時間半で結ぶ経済の大動脈として国民の注目を集め、開通が待たれている「台湾高速鉄道(台湾版新幹線)」が、一月二十七日、初回の試運転を無事終了した。試運転をおこなったのは十二車両一編成の営業用車両で、二十六日夜にリハーサル試運転を経て、二十七日午前八時五十分、高雄燕巣総合車両工場から出発し、台南の一部区間まで約二十キロを走行した。

 十時過ぎに到着した台南駅では、記念式典がおこなわれ、先住民が鳴らす爆竹のなか、五百人に及ぶ来賓が大きな拍手で歴史的瞬間を迎えた。式典には外遊中の陳水扁総統に代わって葉菊蘭・行政院副院長が出席、また林陵三・交通部長、許世楷・駐日代表、新幹線技術を輸出した日本企業連合、台湾新幹線(TSC)の佐藤和夫会長や東芝、三菱重工、川崎重工、三井物産など商社の社長らも出席した。

 台湾高鉄の関係者によれば、今回車両は台南駅入構時は時速二~三十キロ、その他の区域では七~八十キロで走行し、今後四~六週間かけて試運転の速度を時速三百キロまで加速する予定だ。

 台湾版新幹線は車両システムや駅構内、通信に日欧技術が混在するため、安全性などの面で物議をかもしているが、六年にわたる工事を経た試運転の成功は、開通までの重要な一里塚となった。台湾高速鉄路公司では十月の開通に「全力を尽くす」と意欲を表明した。

《台北『自由時報』1月28日》

中国への観光、留学に伴うリスクに要注意 治安、交通、衛生環境の不備で事故相次ぐ

政府の統計によると、毎年台湾から中国を訪れる人の数はビジネス、観光、留学など合わせて年間約三十万人に上っており、とくに最近は観光地としての人気が高まっている。しかし、一方で台湾人観光客が現地で事故に巻き込まれるケースが後を絶たず、安全面で大きな問題となっている。 

 行政院大陸委員会はこのほど専門家に委託し、中国への観光に伴う各種のリスクについて研究、調査を行った。そのなかで専門家はいくつか重要なリスクを指摘し、注意を促している。 

    ○     ○     ○ 

●十項目のリスト 

 交通部観光局の統計によると、台湾から海外への出国者数は二〇〇二年には七百三十万人に達し、そのうち半数近い三百四十四万人が中国となっている。両岸の民間交流が日増しに拡大するなか、中国は台湾人にとって最も人気のある観光地となっている。とくにここ数年は中国の急速な経済発展により、多くの学生が夏冬の休暇を利用して留学するケースが増えている。しかしながら、台湾人観光客の中国でのリスク保障は最低レベルにある。台湾人の中国での観光や留学に伴うリスクは次の十項目に集約できる。 

(一)旅行の安全保障がない 

 一九八七年に政府が中国への親族訪問を解禁して以来、多くの台湾人が旅行時のトラブルや安全面で問題に遭遇し、なかには命や財産を脅かされる事態も起きている。とくに中国では遊覧船を利用する際のリスクが最も高くなっている。というのも、業者が利益を優先し、乗客の人数を考慮せずしばしば定員をオーバーして乗船させ、しかも船上には救命道具などの設備が整っていないからである。しかしこうした現状に、中国政府がとくに監督を強化するなどの姿勢は見られない。 

(二)過剰な宣伝 

 たとえばここ数年、揚子江の三峡下り遊覧が人気コースとなっているが、中国はこれまで「ダムが完成したら三峡が見られなくなる」と対外的に喧伝し、「さようなら三峡」と銘打って毎年多くの台湾人観光客を惹き付けてきた。旅行業者も短期間で利益が得られるとあって、あたかも三峡がまもなく消失してしまうかのような誤ったイメージを消費者に植え付け、多くのツアーが組まれた。こうして台湾人観光客が大挙して三峡に出かけるという状況が生まれた。 

 三峡遊覧の交通手段は飛行機、客船、小型ボート、自動車など複雑である。中国の旅行業者は横の連携がないためトラブルが発生しやすく、多くの台湾人観光客は乗船してからホテルのクラス変更、部屋の有無、ベッドの追加などを知らされ、旅行者の利益が著しく損なわれている。 

 また、台湾の旅行社が中国の業者に前払い金と乗船者の予約を行ったあと、出発間際になってツアーを取り消されたり、三峡遊覧の人気が過熱し、予定していた遊覧船に乗れず、別の船も手配できないなどといったケースもしばしば起きている。旅行の品質がここでも著しく損なわれている。 

 (三)座席の過剰な予約 

 中国ではここ数年、航空機の出発時刻の遵守は大幅に改善されている。しかし、車や船の座席の予約が過剰に行われ、個人、団体に限らず、予約したにも関わらず利用できないことも少なくない。業者が利益を優先させ、実際以上に多く予約をとりつけるため問題が起きているのだ。国内の航空便利用を予定していた旅行ツアーが突然夜行列車に変更させられたりすることもあり、消費者からのこうした苦情は絶えない。 

 (四)ニセの劣悪品が横行 

 中国の商品にはニセの劣悪なものが横行している。たとえば漢方薬材、市販薬、酒、骨董品、玉製品などで、大半の観光客が買物をする免税店で販売されている商品さえ例外ではない。それらは観光客の利益を損なうだけでなく、なかには身体の健康を害するケースもある。 

 (五)国宝の所持で処罰も 

 中国の国家文物局は、一七九五年以前の骨董品について国外への持ち出しを禁止しており、持ち出した場合には「国宝密輸罪」で処罰すると規定している。さらに骨董品でなくても一七九五年以前の一部の文物についても国外への持ち出しを禁じている。 

 しかし、ガイドや業者は利益優先でそれらの規則を告知しない。このため、多くの台湾人観光客が大枚を払って購入した文物を税関で没収されたうえ、さらに刑事事件として法的処罰を受けることもある。 

 (六)スケジュール変更を事前に通知しない 

 これまで述べてきたように、中国国内の交通事情が不安定なため、予定していたコースやスケジュールが延期、変更されることは日常茶飯事である。観光地の参観も交通の遅れなどを理由に取り消されたり、現地に行ってから突然断られるケースも少なくない。たとえば、ある地方で行政官による観光地の視察や施設内の修繕工事が行われる場合、参観が中止されるが、そうした事情は現地のガイドに事前に通知されず、結果的に観光客の利益が損なわれる。 

 (七)伝染病の横行 

 新型肺炎(SARS)も中国が発祥地となったが、中国は現在もペストや狂犬病などの「国際伝染病」感染地域に指定されており、ここ数年はとくに蚊が媒介するデング熱が中国東南と西南地域で流行し、コレラの発症も確認されている。このため、観光客は健康と安全にみずから十分気をつけなければならない。また中国では最近エイズや性病も蔓延しており、観光客が感染するケースも時に見聞される。 

 (八)土産物の購入強要 

 中国旅行ツアー料金は業者間の過当競争により、ほとんどコストと変わらない値段にまで押し下げられている。このため、業者は旅行客の現地での買物を通してコミッションを受け取る形で利益を獲得しようとする。中には完全にコスト割れしてもツアーを実施し、旅行客の買物のリベートだけに利益を託しているケースも少なくない。こうした事情から旅行客が現地で土産物などを購入しない場合、ガイドから文句を言われたり、悪質な場合には食事時間を遅らせられたり、食事のレベルを下げられるなど懲罰的な行為を採られることがある。 

 (九)食事や宿泊のレベルを事前に取り決めない 

 ここ数年、中国国内の旅行は国民所得の向上と急速な経済発展により毎年五月一日のメーデー、十月一日の建国記念日、旧正月の三つの「ゴールデンウィーク」には、中国政府がみずから内需刺激策として国内旅行を勧めている。このためほとんどの観光地は休日になると、たちまち観光客であふれ、ホテルもレストランも満員の状態となる。海外からのツアーは現地の旅行社との連絡が密接に行われていないことが多く、目的地に到着しても予定していたホテルやレストランを利用できず、レベルダウンを余儀なくさせられることが少なくない。こうした場合、差額を返金する形で解決が計られるが消費者の利益が損なわれることに変わりはない。 

 (十)チップのトラブル 

 中国ツアーではチップに関するトラブルが絶えない。中国各地で、その土地のガイド、観光バスの運転手、ホテルのボーイなどからもチップを求められ、しかもその規定は一律ではなく、相場もかなり異なっている。このため、ツアー料金以外に各種名目でチップを支払うことになる。しかもサービスが悪くてもチップを要求され、断ろうものなら罵られたり恐喝されたりする。悪質な場合には危険な運転に及ぶ場合もある。 

〔銘伝大学 范世平助教授〕 

 ●危機意識と事前の訓練必要 

 中国と台湾は言語や風土、飲食面で他国に比べて共通点が多い。しかし中国は面積が広く、自然環境や社会風土、人情、価値観が各地で異なっている。とくに都市と地方の格差、貧富の差が大きく、仕事やサービス面でも台湾とは異なる価値観を持っている。台湾人から見れば親しみが先行し警戒心が足りないと、容易に生命や財産が脅かされる事態に追い込まれる。このため、事前に旅行内容を吟味し、みずから防犯に務め、事故が起きたときの対応の訓練をしておくこと、リスク意識をもつこと、海外医療保険に加入しておくことなどが重要である。 

〔嶺東技術学院 張執中助教授〕 

【行政院大陸委員会 一月】

中国の軍事拡張と台湾の防衛戦略③「二〇〇四年国防報告書」概要 

第三章 中国の国防政策と軍事動向

 中国は多年にわたる高度経済成長を続ける中に、軍事費を絶えず増大させて軍事力を大幅に高め、大国としての態勢を整えてきた。地域における軍事大国として、中国は中央アジアから南太平洋島嶼国まで軍事、経済、政治面の影響力を求めるほか、パキスタン、ミャンマー、北朝鮮などとの軍事同盟関係を強化し、積極的に東南アジアでカンボジア、ラオス、マレーシア、タイなどを取り込み、影響力をアジア太平洋全域に拡大しようとしている。軍事力をさらに高めるため、中国軍は「ハイテク技術での局地戦争勝利」の軍事戦略を立て、兵員数を縮小、効率化増進などの政策を進めている。二〇〇四年一月には「IT活用の作戦と訓練の改革」を重点に据え、研究と実験を重ね、海空軍のレベル向上と連合作戦能力を強化しようとしており、台湾の安全に対する脅威は日増しに増大している。 

一、国防政策 

 中国の国防政策は、国家利益に沿って制定され、「二〇〇二年国防白書」にその主要目標を次のように示している。 

(一)経済建設を中心として総合国力を増強し、社会主義制度を完全に堅持し、社会の安定と団結を保持し、長期的平和の国際環境と良好な周辺環境を打ち立て、主権の統一と領土の完璧保全を維持する。 

(二)国防を強化して侵略を防ぎ、分裂を阻止して統一を実現し、クーデターを防止して社会の安定を維持し、国防建設を強化して国防と軍隊の現代化を実現し、世界平和を維持して侵略の拡大に反対する。 

 二、軍事戦略 

 中国は世界の軍事改革と国家戦略の需要に対応するため、経済発展の基礎の上に国防の現代化を全面的に推進しており、それを「中国の特色ある軍事改革」として部隊の機械化とデジタル化を進め、画期的な現代化を達成しようとしている。戦略としては「積極防衛」という曖昧な表現を用い、先制攻撃はせず国家主権や領土が侵された場合に反撃するとしているが、戦術的には敵意が判明すれば戦いを主動するとしており、中国の攻勢の本質を示している。このことから中国軍は脅威に直ちに反応するという態勢を示すだけではなく、武力を背景とした高圧的態度をもって自己の安全な環境を構築しようとしており、その要点は次の通りである。 

(一)戦略目標を台湾海峡と南シナ海に置き、「新時期における積極防衛の方針」を示し、ハイテク化による武器の更新と人材の育成を加速し、三軍連合作戦の能力を高め、機動力と即応能力を強化する。 

(二)イラク戦争の状況を教訓として全面的な軍事改革を積極的に進め「遠方攻撃、短期決戦」を戦略要綱とし、機械化とデジタル化によって局地戦争での短期勝利を目指す。戦術面では「敵生産力の破壊」と「ポジションの奪取」をもって政治目的を達成する。

(三)戦術ミサイルと海空軍力をもって威嚇し、軍事および非軍事手段によって目的を達成する。現段階においては、第二砲兵隊(ミサイル部隊)と海空軍の拡充と地上部隊の機械化を重点的に進める。武器の更新は自主開発と輸入を並行する。 

(四)米軍の作戦方法を研究し、電磁波兵器とマイクロウエーブ兵器などを含む非対称戦能力を高め「抗米奪台」の目標を達成する。 

 三、軍事予算 

 中国の軍事予算はこの十数年間、公表分だけでも二ケタ成長を続け、隠蔽された部分と非軍事部門の予算を含めれば、米国、ロシアに次ぐ世界第三番目で、アジアでは第一位の軍事予算大国となっている。 

〔予算概況〕

 中国の二〇〇四年度軍事予算は二千百億人民元(約二百五十三億九千五百万ドル)で、前年の千八百八十一億人民元より一一・六%増加した。対GDP比では一・六八%を占め、中央政府総予算の七・八五%を占めている。 

〔隠蔽予算〕

 中国の場合、公表された額は実際には軍事費の一部分に過ぎず、兵器開発に関する科学技術や核開発の部門は公表分の中には入っていない。教育費なども文教予算の方に組み込まれている。武器輸入代金は自国の武器輸出収益が引当てられ、これも公表軍事予算に入っていない。これらを合計すれば、実際の軍事費は公表分の三倍から五倍(五千億から六千三百億人民元、六百五十億から七百六十億ドル)となる。 

 四、現有兵力 

 中国は一九八五年に旧来の十一大軍区を七大軍区に再編して以来、総兵員数を一貫して二百五十万人以内としてきた。二〇〇三年には二十万人の削減を進めたが、これらはNATO軍の軍事改革を模倣したもので、部隊の小型化と合理化を進めるためである。

 中国の軍隊は人民解放軍、人民武装警察、予備役部隊と民兵といった三部門で構成されている。 

〔人民解放軍〕 

 総兵員数は二百二十三万人余で、その内第二砲兵隊(ミサイル部隊)が六%、地上部隊が六四%、海軍は一四%、空軍は一六%の構成となっている。 

(一)二砲(ミサイル部隊) 

①兵力配備‥総兵員数は十三万人余で、ミサイル発射部隊、技術装備部隊、工兵部隊、化学防衛部隊、訓練隊、後方支援部隊に分かれ、ミサイル基地は約百カ所に置かれている。衛星誘導の技術を取り入れ、精度は強化されている。特に精度が高められた東風十五型とその改良型は主として江西省に、東風十一型とその改良型は主として福建省に配備されている。それらのミサイルは、台湾の主要軍事基地を射程距離内に置いている。

②今後の発展方向‥東南沿海部での配備を年々強化しており、各種戦略、戦術ミサイルの小型化、機動化を進めている。 

(二)地上部隊 

①兵力配置‥総兵員数は百四十一万人余で二十個集団軍、約五十個師団に編成され、南京、広州、瀋陽、北京、蘭州、成都、済南の七大軍区に分けられている。このうち福建省には約六万人が配置され、南京軍区の指揮下にあって、台湾侵攻の際の主力部隊となる。なお福建省には短期間に済南軍区と広州軍区から応援部隊を投入することが可能であり、その場合の兵力は二十五万人になると見られる。 

②今後の発展方向‥機械化師団の編成、トラックの第三代装甲輸送車への変換などによって緊急機動作戦能力を強化し、同時にIT戦能力の強化、現代化通信指揮系統の確立などによって総合作戦能力を高めようとしている。 

(三)海 軍 

①兵力配置‥総兵員数は三十二万九千人余で北海艦隊、東海艦隊、南海艦隊、航空隊、陸戦隊二個旅団に分けられ、総艦艇数は千九百隻を越える。その内東海艦隊は潜水艦を含め七百三十隻余を保有し、台湾海峡での作戦を主とし、台湾封鎖、制海権奪取を任務としている。 

②今後の発展方向‥指揮系統の簡素化、緊急対応と機動能力の強化によって制海権奪取の能力を備えようとしている。さらに南シナ海での覇権を確立し、台湾封鎖作戦能力を整え、制海権奪取と上陸作戦能力まで整えようとしている。 

(四)空 軍 

①兵力配置‥総兵員数三十七万人余で各種航空機三千四百機余を保有し、殲轟型爆撃機は七百三十機余りである。飛行場は軍民共用を含め百カ所近くを有し、一度に二個空挺団を運び、一~三日以内に約千機の戦闘機を配置につける能力を持つ。 

②今後の発展方向‥機動力と中長距離攻撃および空挺団作戦能力を高めるとともに、三軍連合作戦の能力を強化しようとしている。 

〔人民武装警察〕

 員数は九十三万人余で、公安、消防を含めれば百五十万人を超す。管理と訓練は国務院公安部が担当し、実動指揮権は中央軍事委員会が持つ。政府機関、要員の防衛、社会治安の維持、突発的事件の処置、テロ対策を主要任務とする。 

〔予備役および民兵〕

 総兵力は六十万人余で、主として退役軍人によって編成され、後方支援を主要任務とする。 

〔民兵〕

 約一億人、総人口の一割がこれに属し、戦時動員を主とする。 

【国防部 04・12・14】

二〇〇五年観光情報

故宮南院の概要固まる

 台湾博覧会の開催される二〇〇八年の完成を目指し、今年九月に着工が予定されている「故宮博物院南部分院」(以下、南院)の位置付けや施設の概要が固まった。 

 南院は嘉義県太保市に建設され、敷地面積は台北より四倍も広い七十ヘクタール、建設費は第一期工事分として約二十四億元(約七十二億円)を見込んでいる。 

 故宮ではおよそ一年間かけて南院の位置付けや施設の概要について検討してきた。そして「アジアの文化芸術の交流と相互連動」を主軸とし、金や銅の仏像群、染付け磁器、チベット仏教経典を南院の主な目玉に据えることなどを決めた。施設の概要はインフォメーションホール、常設展ホール、特別展ホール、多目的ホール、メディアセンター、児童の創作スペースなどが計画されている。このうち常設展は「生命の指南―アジアの経典」「化身と再現―アジアの仏教美術」「富と華を極める―アジアの織物文化」「染付け―アジアの陶磁器美」「西洋化における芸術―近代アジアの精密アート」の五つのテーマを設定している。 

 南院では海外の収蔵品の展示も大きな柱に据えている。予算に限りがあるが、各国の博物館で相互に所蔵品を貸し借りすればコストも軽減できると見ており、年間一億元(約三億円)を上限に、海外の収蔵品の展示も行いたい考えだ。二〇〇八年のオープン時には「台湾の茶文化」と「ヒンドスタン玉」の二本の特別展のほかに、アジアの美術に造詣が深く文物が揃っているフランスのギメ美術館や英国・大英博物館などから所蔵品を借り受け展示することも検討している。 

 石守謙・故宮博物院院長は「故宮の文物に新たな生命を吹き込み、それらの地位を高めたい。南院を台湾におけるアジアの再発見の場に位置付け、アジア文化の発展に積極的な役割を果たしたい」と語っている。 

《台北『中国時報』1月21日》

台北・艋舺公園がオープン

 台北市の万華(旧名:艋舺)地区は市内でも早くから開けた街として発展し、龍山寺をはじめ夜市でも有名な観光スポットともなっている。しかし最近は町並みや施設の老朽化が進み、市民の足も遠ざかりつつあった。 

 こうしたなか、龍山寺近くの約一万三千平方メートルの敷地に、艋舺公園が一月二十二日オープンした。施設だけでも二億元(約六億円)を投じた台北市で最も豪華な公園で、門には龍山寺の方角に三対の霊獣が配され、龍山寺の四合院の建物と呼応する造りとなっている。 

 園内には「美人照鏡池」と呼ばれる広大な池があり、一時間ごとに十五分間音楽を奏でながら噴水が見られる。また水中に設けられた直径十五メートルのスクリーンは夜になると照明を浴びて千変万化の様相を見せる。このほか「星象誌広場」では地面を星座版に見立て、星の光を表す電球が地面に二千個余り配置されており、毎日夕方六時から深夜十二時まで、市民が自由に光を操ることができるようになっている。 

 艋舺公園の地下には自動車、オートバイ合わせて八百五十台が停車できる大型の駐車(輪)場と、延べ面積六千百平方メートルの「龍山寺商場」と呼ばれるショッピングセンターが地下一階と二階に造られる。これらは今年三月末にオープンする予定で、完成後は台湾鉄道の万華駅と新交通システム(MRT)龍山寺駅と地下でつながる見込みだ。 

《台北『聯合報』1月23日》

文化ニュース 

台湾先住民作家を招いて 日台シンポジウム開催

 台湾で活躍する二人の先住民作家がこのほど東京で講演し、先住民族の置かれている現状などについて語った。二人はタオ族のシャマン・ラポガンさんとパイワン族のリカラッ・アウーさんで、昨年十二月十一日、日本の「植民地文化研究会」の招きで来日した。

 ラポガンさんは一九五七年蘭嶼島生まれ。八〇年代後半から先住民の権利促進運動に携り、地元蘭嶼への核廃棄物貯蔵反対運動にも積極的に参画している。主な著作は九二年にタオ族に伝わる神話を紹介した『八代湾的神話』、トビウオ漁と共に生きるタオの人びとの生活を描いた『黒色的翅膀』(九九年)などがある。生計を立てるため一時台北に移り住んだが、故郷の蘭嶼島に戻ってからは作家として活動している。 

 「海洋文学を中国語で表現する唯一の作家」を自負するラポガンさんは、講演のなかで、タオ族にとって生命そのものである海の大切さと魅力について語った。そして「日本の読者にも自分の作品が受け入れられ、共感してもらえたら嬉しい」と語った。 

 アウーさんは一九六九年、外省人の父とパイワン族の母のもとに屏東で生まれた。八七年にタイヤル族の男性作家と結婚し、先住民の文化運動のための雑誌を創刊したり先住民文化センターを設立するなど運動家としても活躍している。台湾の先住民族で数少ない女性作家として知られており、主な著書に九六年の『誰来穿我織的美麗衣裳』、九八年の『穆莉淡―部落手札』などがある。それらは自身の生い立ちや家族関係を含め社会観察を通して先住民族の抱えるさまざまな問題を投げかけている。 

 講演では、漢民族中心の社会制度のもとで先住民の生活が脅かされている実態を指摘するとともに、現代において先住民族の間でも都市と地方とで人々の意識に隔たりがあり多様化している現実が紹介された。 

 なおラポガンさんとアウーさんの著作は『故郷に生きる』(草風館・二〇〇三年)の中で日本語訳で紹介されている。 

《取材:本誌編集部》

古代帆船で南太平洋五万キロ航海へ 南島語族の大移動たどり文化交流

 台湾の先住民がルーツと言われる南島語族。人類文明探索関懐協会は一月十九日、その大移動の軌跡を辿る「太平洋交流再建航海計画」を発表した。今年五月~来年八月にかけて、古代帆船で約五万キロに及ぶ航海に乗り出すという。

 南島語族は別名オーストロネシア語族と呼ばれ、台湾から東南アジア島嶼部、マダガスカル、南太平洋に広がる言語群である。その一千語に近い諸言語のうち、台湾先住民の言 語がもっとも原形に近いことが近年証明された。今から五、六千年前に台湾からフィリピン、インドネシア、マレー半島と南下し、西暦五世紀にインド洋を越えアフリカ東部のマダガスカル島、さらに東の南太平洋の島々に拡散したというのが現在もっとも有力な学説である。

 同計画は、こうした南島語族大移動の海路を辿り、各国の南島先住民との交流を深めようというもので、五月に造船拠点のインドネシアを 出発し、南太平洋のイースター島、南米のペルー、ハワイを経て東南アジアを北上、来年八月に台湾に到着する予定だ。航海には南島語族特有の古代帆船を復元して使用する。航海期間には南島文化フェアを開催し、南島語族が分布する十数カ国の代表を招待して各種交流イベントも行う。

 本計画について、臧振華・史前文化博物館館長は「台湾から丸木舟で移動したとされる実際の航海とは条件も違うが、台湾を中心におこなう南島語族の文化交流としては最大規模で、台湾の先住民文化を知るための大きな手がかりとなるだろう」とその意義を評価する。

 また今回の計画には、日本の海洋冒険家・山本良行さんも発起人として加わっている。「環太平洋に分布する南島語族は三億人に達するとみられるが、何千キロと言う距離を帆船で航海しているのは学界の七不思議となっている。今回はこうした経路も通過するため非常に興味を持っている。南島語族のルーツといわれる台湾が本イベントを主催するのは、とても意味がある」と語った。

《台北『中国時報』1月19日》 

故宮博物院の国宝がゲームに 宝剣、鎧などバーチャル体験

 美しい衣に身を包んだヒーローが、幻の名剣を手に敵の妖怪を倒して宝物を手に入れる―。一見、よくあるゲームソフトのストーリーだが、実はこれは国立故宮博物院が現在開発している「神器活現」の一コマである。ヒーローが纏っているのは唐時代の風景画「鵲華秋色」をデザインした衣装、手に持つのは春秋末期時代の文化財「越王剣」。勝ち取る宝物も、すべて故宮博物院に所蔵されている実在の文化財を使っている。

 故宮博物院は、中華系文化財の所蔵量では世界一を誇るが、一般の若者にとっては固いイメージで馴染みが薄く、最近では博物館離れが進んでいるという。こうした若者にもっと歴史的文化財に親しんでもらおうと、故宮博物院では絵画、武器、生活用品など所蔵品を取り入れた若者向け3Dオンライン対戦型ゲームソフトの開発を決めた。

 ソフト開発にあたっては、ゲームメーカーに青銅器や玉器、書画など大量の所蔵品を貸し出した。ゲームの面白さを第一にするため、知名度よりストーリー展開にぴったりなものを中心に選んだという。このためよく知られた「肉形石」「翠玉白菜」などは選ばれなかったが、ヒーローが持つ名剣に「越王剣」「無首剣」、宝物には「毛公鼎」「青花蟠龍天球瓶」など、ほかにも多くの文化財が使われている。

《台北『中国時報』1月13日》

教育関連ニュース

留学生百人に一千万元を助成 

 大学の海外留学生受け入れ奨励のため、教育部ではさきごろ、あらたな助成規定を発表した。それによれば、修士課程を履修する留学生が五十人を超えるか学生総数の〇・六%を占めた大学には、最高三百万元(約九百万円)を助成し、さらに百人を超えるか学生総数の一%を占めた大学には、最高で一千万元(約三千万円)を助成するとしている。

 教育部ではまた、台湾大学、成功大学、清華大学、交通大学、中央大学、など研究開発型大学七校に対し、二〇一〇年度までに外国人留学生の比率を最低五%に拡大するよう要請したことを明らかにした。同部高等教育司(局)によれば、二〇〇四年度の台湾における海外留学生総数は八千人、うち修士以上の履修者は二割足らずで、大部分が語学研修のための留学だという。米ハーバード、英ケンブリッジ、日本の東京大学など海外の名門校では、留学生の数は一〇%に達しているのに比べ、国内ではほとんどの大学で留学生の比率が〇・一%未満であるため、教育部では国際競争力向上に向け、今回の留学生受け入れ強化策に踏み切ったものとみられる。

《台北『聯合報』1月19日》

台日の小学生が音楽で交流 

 音楽に国境はない。一月二十四日、文化交流のために来日していた桃園県の西門小学校音楽クラブ五十四名が、東京都内の名門校・目黒区立東山小学校の児童と音楽交流会をおこなった。東山小学校は国際交流が盛んな学校だが、今回の催しは創立以来の盛大なものになった。子供たちは互いの演奏を鑑賞し合い、手作りのプレゼントを交換したり、一緒にゲームに興じたりしてまる一日交流を深めた。

《台北『中央社』1月24日》

大学の推薦入学応募者が増加

 台湾では、二〇〇五年度の大学入試戦線がすでにスタートしている。一月十一日、今年の大学推薦入試事務局校である中正大学が発表したところによれば、〇五年度の推薦入試申し込みはすでに終了し、九千二百四十三人の合格枠に対する申し込み総数は七万千九百四人で、昨年より約六千八百人増加した。

 台湾では四年前から「多元入学制度」が導入され、現在大学入試のルートには、一斉試験の成績で選抜される「考試分発入学(分配入学)」方式と、各大学に対し学校または個人が推薦・申請する「甄選入学(推薦入学)」方式に分けられる。推薦入学制度は今年で導入三年目となり、受験者が増加したのは制度が徐々に定着してきたためと見られる。

《台北『青年日報』1月12日》 

「自然、数学」新教科書が決定

 小中学校「九年一貫教育」の主旨を盛り込んだ新しい科目別教科書が今年九月から販売される。一月十三日、教育部の入札で、翰林出版社が二〇〇五年度から三年間の出版権を獲得した。新しく出版が決まったのは「数学」と「自然」の教科書。学問の実生活への応用に重点を置き、例題に国内の地名を使うなど、台湾の題材を多く取り入れている。

《台北『中国時報』1月14日》

文化・芸能情報

呉錦発「青春三部曲」が出版

 行政院文化建設委員会副主任委員で作家の呉錦発氏はこのほど、代表作「閣楼」「春秋茶室」「秋菊」で構成する『青春三部曲』を出版した。三作品はいずれもエスニック間の触れ合いと衝突を描き、農業から工業主体へ大きく変遷する台湾社会と、それに伴う人々の心理的変化が描写されている。

 これらの作品は、昨年十一月に二魚文化社から出版された『台湾成長小説選』のなかに掲載され、台湾社会の変容を辿る小説として読者の反響を呼んでいた。

《台北『中国時報』1月20日》

お知らせ

宏観電視の受信環境が変更

 政府が世界に向けて情報を発信しているテレビ放送「宏観電視」の受信環境が今年一月から一部の地域で変更になりました。 

 「宏観電視」は二〇〇〇年三月から衛星とインターネット、ケーブルを使って二十四時間、世界五大陸に情報を発信しています。台湾の最新ニュース、バラエティ、ドラマ、幼児教育番組、グルメ・旅行番組、その他生活に役立つさまざまな情報を提供しており、言語も国語(標準語)、台湾語、客家語、広東語、英語の五種類で放送しています。開局から五年が経過し、世界中の僑胞にとって台湾の情報を入手するための重要なツールとなっているだけでなく、各地の僑胞の活動内容や僑胞同士の交流促進にも役立っています。 

「宏観電視」を受信されている方は以下の周波数などを確認の上、調整をお願い致します。 

①衛星名:PAS―8(Cバンド)
周波数:3680MHz
●日本
(都市名) (仰角) (方位角)
福岡   35.6 127.4
札幌   34.4 145.9
東京 40.2 139.2
横浜 40.3 139.1 

②衛星名:PAS―8(Kuバンド)
周波数:12399.50MHz
●日本
(都市名) (仰角) (方位角)
  福岡 35.6 127.4
  札幌 34.4 145.9
  東京 40.2 139.2
  横浜 40.3 139.1 

問合せ 中華民国僑務委員会
http://mactv.cts.com.tw

春 夏 秋 冬 

 どうも北京は外国の主権など眼中に置いていないようだ。頭にあるのは自分の都合だけ。それですべてを押し切ろうとする。1月24日付の讀賣新聞に「万博期間ビザ『台湾免除』に中国抗議」という記事が出ていた。これを見て中国の図々しさにまた吹き出してしまった。ここに冒頭部分を抜粋させてもらえば、「台湾からの観光客に対する査証(ビザ)発給を『愛・地球博』(愛知万博、三月二十五日-九月二十五日)期間中に限って免除する議員立法の国会提出が、中国政府の抗議でずれ込んでいることが二十三日、明らかになった。抗議の内容は『中国には査証発給を義務づけ、台湾は免除という格差は納得できない』というもの」である。 

 北京の面々はこんな抗議をする前に、なぜ自国の国民が日本へ行くのにビザ免除が適用されないのかと考えないのだろうか。これを考えれば、抗議するよりも自国民が日本で殺人事件を起こしたりピッキングをやったり、ツアーで旅行しても脱走して不法滞在する者があとを絶たず、日本に迷惑をかけっぱなしで申し訳ない、とまず詫びの一本も入れるのが筋だと思うのだが、北京の外交感覚ではこうした人倫の筋道論は通用しないようだ。 

 中国のこの身勝手な抗議は、ビザ免除の対象が台湾だからというのではない。やはり北京政府の本質から出ているものなのだ。いま日本と独仏が中国への新幹線売り込みにしのぎを削っている。これについて中国の劉志軍・鉄道相が1月19日、北京訪問中の北側一雄国土交通相に「協力に伴うさまざまな困難、障害がなければ、もっと日本の技術を中国で使うことができるはずだ」などと述べ、日本の対中ODA縮小や小泉純一郎首相の靖国神社参拝などをからませてきた。かつて日中が「国交正常化」に向かい出した時、まず経済をと「政経分離」によって日本企業を取り込んだのは中国ではなかったのか。それが今は「政経不可分」を持ち出して日本を揺さぶろうとしているのだ。 

 今年3月に中国が制定しようとしている「反国家分裂法」もこの範疇に入る。同法は台湾の主権も台湾国民の意志も、かつ現状をも無視したものだ。あるのは中国のご都合だけである。こうした北京の態度を「したたかな外交」と言うのかもしれない。ならば日本と台湾は中国に対し、完全に利害が一致している。日台双方が意思疎通を図り、共にこの隣人に対処すれば、両国はもっと効果的な外交が展開できるのではないか。いつまでも中国に翻弄されていることはないのだ。(K)