台湾週報2180号(2005.3.3)
台湾の主体性は断じて必要 中華民国はすでに台湾化している
謝長廷・行政院長は2月13日、メディアのインタビューに応じ、台湾のあるべき姿と進むべき道について語った。この中で謝院長は「中華民国」はすでに「台湾化」しており、両岸関係の現状はすでに二つの国家であり、台湾の主体性は不変であると述べた。さらに正名運動も新憲法制定も台湾の主体性を確立し、台湾の発展を促すためであり、主体性を強化してこそ対岸の圧力に対抗し得ると強調した。以下はその要旨である。
●国民の大多数は統一に反対
与野党和解の目的は、台湾の団結を強めるところにある。毎回選挙のたびに与野党が対立し、争点の中心は台湾アイデンティティーの是非論であり、いわゆる統一か独立かといったものだが、こうした二分法は台湾にとってまったく不利益である。実際において台湾で中国との統一に賛成する人は一〇%にも満たないのだ。もし総統選挙の野党側得票率を見て四九%の人が統一に賛成していると判断されたなら、これは国際社会に大きな誤解を招くばかりか、これからの中国との交渉においてもきわめて不利となる。
一部の人は台湾正名(台湾の名を正す)や新憲法制定に疑問を提示している。だからといって、それらの意見が統一に賛成しているかといえば決してそうではないのだ。それらの人々は、台湾が国際社会で尊厳を有することには賛成しているのであり、台湾が主権独立の国家として存在してしかるべきだとの考えに反対しているのではないのだ。かれらはただリスクを心配しているだけであり、将来に対する自信の強弱に相違があるだけなのだ。
明らかに九〇%近くの国民が統一に反対しており、これを単純に二分することはできず、誰しもリスク評価の権利は持っており、特殊な歴史感情もあり、覚醒する時間もまた個々に異なるものだ。
●正名は台湾発展のため
台湾正名についてだが、これには二つの分野がある。一つは政府機関や民間企業、団体などで、これらは個別に処理すればよいが、国際社会に対して正名の理由が生存と発展のためであることを詳しく説明し、混乱や誤解を生じさせてはならない。これにはなんら争点はない。
もう一つは国名の正名である。現在「中華民国」と「台湾」を併用しており、また「中華民国」に代わって「台湾」名を使用している。これについては政府と民間、与党と野党がそれぞれの役割を分担すべきだ。民間においてコンセンサスが形成されるのが望ましいのだ。コンセンサスのできる前に政府が意思表示をしたのでは国際社会の反発を招き、もし政府が対策を誤ったなら正名活動は後退し、かえってマイナスとなる。それに対し、民間と野党の中で声の高まるのを待って、政府がその考えを受け入れるとするなら、それは民主主義の作法に完全に合致したものとなる。政府が先走っては内部分裂を招き、国際活動の場においても萎縮してしまうことになる。これまでの正名の推進が、中国や米国の誤解を招いたのは残念なことだ。
行政機関や組織の改名に「運動」の必要はなく、これは政府が行うべきもので、現在まさに進めている。ただし実情と必要性を考慮しなければならない。たとえば「中国造船」や「中国鋼鉄」だが、改名できるかどうか、さらにリスクも考慮しなければならない。できないとなれば当然しないわけだが、対外的な配慮は必要だ。現在名のままだと、中国は国際社会に対し「世界に中国は一つ。中華人民共和国が中国の唯一の合法政府。台湾は中国の一部分」との三段論法を展開しており、この術中に陥る危険があるからだ。
台湾にとっては「台湾」の名称が最も好ましい選択であり、「中国台湾」になるのはまずい選択となる。もちろんこの中間にもいろいろな選択肢があるが、与野党が膝を交えてどのようにすべきかを検討し、優先順位を決めなければならない。
「中華民国」についてだが、民間では「中華民国は存在しない」「虚構だ」と意見発表をすることはできるが、政府がそれを行うことはできない。言えば問題となる。現実は「中華民国の台湾化」である。中華民国で国民投票を行う場合、投票資格があるのは二千三百万人であり、このことは中華民国の範囲が確定していることを示すものだ。本来の中華民国は中国大陸を領土とする国家であり、これは過去のことである。現実には二つの国になっているのだ、われわれは数度の憲法改正ですでに台湾化しており、これは「第二共和制」と言ってよい。「中華民国」という文字は国際的にはすでに商標のようなものであり、国際社会はすでに中華人民共和国が中国を代表すると判定しているのだ。
●憲法で台湾の主体性を強調
国民の多くは、まだ憲法問題を深く理解しているとは言えない。米国やフランスは独立や革命で憲法を生み出し、日本も大きな代価を払っている。だが中華民国憲法は上から下にもたらされたものであり、ただ入学試験の時に見るだけで、そこに特別の感情はない。
与野党間に論争が発生した場合、常に大法官会議(憲法法廷)に解釈を委ねている。もし国民に憲法に対するコンセンサスがないなら、その国はきわめて不安定となる。将来、国民は現実に合った憲法のあり方を論じ合う必要がある。
政党間の協調が進んでも、台湾の主体性は不変である。特に教育の主体性については、どの国でも身近な地域の歴史から教え始める。主体性とはすなわち台湾優先の概念だが、それは周囲との協調となんら矛盾するものではない。それらを合わせたところに生命共同体としての国家の一体性が生まれるのであり、協調のあるところに主体性も存在するのだ。陳総統も「台湾の主体性は不変であり、台湾は正常な国にならなければならない」と主張している。では、どうすべきか。台湾は中国の強大な圧力に直面している。だから台湾は一エスニックの国家などではなく、強く団結した、発展した国家にならなければならないのだ。台湾を第一に考え、総合的な国家意識を持ってこそ外圧に対抗できるのだ。
●対中投資よりも国内整備
両岸の経済関係だが、中国への投資に反対する人もいる。それは、産業の流出や失業問題を心配しているからだ。政府もこの点は考慮している。理想的なのは産業がすべて国内に留まることだが、企業が経済の法則に沿って行動している限り、海外投資を禁止できるものではない。海外で利益が上がるとなれば、少々のリスクを冒してでも進出するのが経済行為だ。そこに政府がなすべきことはコントロールであり、有効な管理をすることだ。
現段階では、わが国の自由貿易港を拡充し、各産業が台湾で優遇される措置を講じ、中国に進出しなくてもよい環境をつくることだ。次に、従来型産業が東南アジアの開発途上国や人件費の安い国に投資するのを奨励することだ。
さらに政府は劣勢産業への支援を強化しなければならない。たとえばWTO加盟で衝撃を受けた農業や、産業構造の変化で不利な影響を受けた産業である。農村や地場産業を支援し、それらの安定を図り、都市部では治安を確保することが肝要だ。それぞれの地域が強くなれば、台湾全体が強くなる。
●「一国二制度」は不可能
両岸関係において、中国は「一国」の概念しか持ち合わせていない。そうした状況で「一国二制度」を論じ合ったとしても、そこには覇道があるだけだ。単純に考えても、一人当たり所得が一万四千ドルの国と千ドルにも満たない国が、結合などできないことは容易に分かろう。
それに「一国二制度」は中国人民にとっても不公平になる。中国人民は結局、民主と自由を享受できないままに置かれることを意味するからだ。両岸が努力しなければならないのは、内部の各種の環境を一致させるようにすることだ。これには歳月が三十年、五十年とかかるだろう。中国人民も選挙権を行使し、思想や信仰の自由を享受できるようになることだ。台湾には民主化の経験も選挙制度確立の経験もあり、これらについて中国を支援することは十分に可能だ。
●自信をもって平和を維持
台湾海峡の平和維持についてだが、まず世界に台湾が国際社会の一員であり、台湾が民主主義と平和を堅持しており、中国に台湾を攻撃する理由などないことを知らしめなければならない。そうすれば米国をはじめ、世界各国が台湾を支持するようになるはずだ。
台湾はいま新憲法制定に動いているが、これが多くの人々に台湾が現状を変更しようとしていると誤解されている。だから米国の一部に、中国が「反国家分裂法」を制定しようとするのにも一理あるとする発想が生まれるのだ。これは台湾にとって非常に大きな問題だ。
台湾は中国の「平和方式をもって台湾問題を解決する」という統一戦線工作に直面しているが、当然ながらわれわれは台湾の主体性を強調し、台湾の保護、平和の維持を強化し、台湾は中国の一部でないことを強調しなければならない。状況の好ましい時にはこれらを世界に広めることができるが、状況の困難な今日ではまず台湾の保護が肝要だ。
台湾は平和を堅持しており、平和を維持する能力もあり、国際投資も行っている。台湾はこうした自国の環境に自信を持ち、国際社会の誤解を解いていかねばならない。みずからを助けるところに平和もあり、多くの支援も集まるのだ。たとえば米国の「台湾関係法」だが、同法は台湾が平和を維持しようとしており、それが挑戦ではないことを強調し、それによって米国は台湾防衛の義務を負うと規定しているのだ。
《台北『自由時報』2月14日》
春節に正副総統が所信表明
●陳水扁総統の主張
本年は二月九日が旧暦元旦であったが、この春節期間の二月十四日、総統府では恒例の閣僚を招いての新春祝賀会が開かれた。
陳水扁総統は当日の祝辞の中で、「私は本年の元旦祝辞の中で『協調と対話の安定した新局面を切り拓く』と述べたが、この願望と訴え、呼びかけは多くの国民の支持と共鳴を得るところとなっている。特に他政党とその陣営の人々も賛意を示しており、積極的にそれへの意欲を表明している。私は近いうちに宋楚瑜・親民党主席と会見し、そこに協調と対話の新局面が拓かれることを期待している。国民の期待がしぼむことはあり得ず、私は自信を持っている」と表明した。
さらに「協調、対話、和解、相互協力は台湾内部に限らず、両岸関係にも必要なことである。もし台湾内部に与野党の和解と相互協力がなかったなら、対岸との話し合いの門戸を開くことができなくなる。台湾全体がこの方向に向かい、一致して努力することを望む。最近の雰囲気は好ましいものがあるが、確たるものではない。われわれはこの機会を掌握すべきだ」と強調した。
同時に陳総統は次の三方向を示した。①与野党が和解と相互協力を進め、両岸関係の安定と社会の安寧を促進する。②台湾の民主改革をいっそう深く進める。特に治安、健保、税制、行政、憲法の五大改革は鋭意推進し、それらの完遂を期す。③台湾第一を念頭に台湾アイデンティティーの主流路線を確立する。
●呂秀蓮副総統の主張
続いて呂秀蓮副総統は祝辞の中で「健全な国民生活」の重要性を強調した。呂副総統はこの春節休暇を武陵農場で過ごしたことを披露し「世間と隔絶した中に過ごし、自己を開放するとともに自己を再発見することができた。そのあと宜蘭を訪問したが、このとき杖も要らずあちこちを歩き回ることができた」とみずからの体験を述べ、「政党間の和解と協調、さらに両岸の平和ばかりでなく、国民の心身の健康にも私は強い関心を寄せている」と語った。
同時に「総統府は国民のために存在するのであり、総統府関係者はみずから心身の健康を維持することが重要だ。なぜなら、関係者一同が心身共に健康で職務に専念し、総統を補佐してこそ、台湾建設の任務を遂行し、国民の期待に応えることができるからだ。これは各閣僚にも言えることであり、それぞれがみずからに責任を持ち、本分を尽くし、共に努力してこそ、国家国民のために貢献できるのだ。そこにわが国の発展がある」と述べた。
【総統府 2月14日】
春節チャーター便から新たな進展を
本年は春節チャーター便が運行され、両岸関係の改善に新たな兆候が見られるようになった。この時期にあたり、陳水扁総統は二月十六日、「二〇〇五年大陸進出台湾企業春節懇親会」に出席し、その挨拶の中で「春節チャーター便運行を基礎に、さらに一歩進み両岸貨物輸送の迅速化を実現したい」と語った。その談話の要旨は以下の通りである。
○ ○ ○
春節を迎え、国内問題にも両岸関係にも新たな兆しが見えてきました。国内的には与野党対話の雰囲気が醸成され、両岸問題では春節チャーター便の運行が順調に進み、大陸進出の企業関係者の方々には滞りなく郷里に帰り新年を迎えていただくことができ、今後の両岸関係に新たな燭光が見えてきました。この得がたい貴重なチャンスを逃がすことなく活用していけば、国内政局にも両岸関係においても、対話、和解、協調、相互協力によるまったく新しい局面が切り拓けるものと確信しております。
皆様方が最も関心を寄せておられるのは、両岸関係の進展だと思います。私はこの問題に関してはこれまでも多大の努力を払い、相手方に重なる善意と誠意を示し、最大の柔軟性をもって対応してきました。二〇〇〇年五月の就任演説において示した対岸への対話呼びかけから「小三通」の開始、続いて「急がず忍耐強く」の政策から「積極開放、有効管理」政策への転換、さらに「大胆な対話」提唱から対岸指導者との対話呼びかけなどです。また二〇〇四年二月には「両岸平和安定相互連動メカニズム」の構想を改めて提示し、同年五月には「両岸貨物輸送の迅速化」を提議しました。この四年余、われわれは両岸和解に最大の努力と誠意を示すとともに、特に両岸関係につきましては「立場を堅持し、実務的に前進する」との路線を展開してきました。
本年の春節チャーター便につきましては、政府は早くから再三にわたって提議し、企業関係者ならびに航空業界の方々の一致した努力もあり、両岸の政府より委託された代表団が交渉する運びとなり、そこにコンセンサスを得て一月二十九日より運行が始まりました。昨年はチャーター便が中断し、今年初めまで多くの人々はこの交渉の再開にも悲観的な見方をしていましたが、交渉は実現し、しかも両岸間で誠意を示し合えば不可能はないということを具体的に証明しました。
両岸関係の緩和と相互連動の開幕は、すべて両岸指導者の一念にかかっています。大陸側が膝を交えて話し合おうとさえ願えば、どのようなことでも話し合うことができます。私はパラオとマーシャル諸島の友邦を訪問したおり、「どんな頑固でも頷くことはできる。どんな岩の門でも開くことはできる。両岸和解の門、合作の門、平和の門も当然開くことはできる」と表明しました。私はここに改めて、両岸双方がこのカギとなる時期を逃さず、共同で春節チャーター便交渉成功の経験を生かし、進んで両岸新関係の「機会の門」を開き、人々の望む平安と幸福のため、地域の平和と安定のため貢献することを、対岸に呼びかけます。私は近い将来に、与野党ならびに社会各界のリーダーと膝を交え、共同で「両岸平和発展委員会」を立ち上げ、さらに「両岸平和発展綱領」を策定し、両岸の長期的な平和確立の基礎を固めたいと願っております。
さらに私は大陸当局者に、台湾に対する誤解と敵意を解き、一方的な「反国家分裂法」の制定を取り下げ、定期的に両岸交渉を進めるよう呼びかけます。それらは両岸関係の改善に障害となるのみで、ますます双方を遠ざけるばかりのものです。
私は春節に際し、三つの願いを明示します。第一は企業関係者の方々の活動が大いに進展することです。第二は対話再開の門戸を開き、春節チャーター便運行を基礎に、さらに進み両岸貨物輸送の迅速化を実現することです。第三は国民のコンセンサスの下に「両岸平和発展委員会」を組織し、平和のため両岸相互連動の基礎を築くことです。
【総統府 2月16日】
ニュース
釣魚台問題に対する見解 理性的な話し合いで処理
日本政府は釣魚台(尖閣諸島)の燈台管理を民間から海上保安庁に移行し、改めて同島の主権を強調した。これに対し、呂慶龍・外交部スポークスマンは二月十日、台湾が釣魚台の主権を有していることを表明するとともに「台日双方が平和的かつ理性的な話し合いによってこの争議を処理することを望む。われわれは交渉の過程において、わが国漁民の関連権益擁護を優先させる」と明らかにした。さらに「釣魚台は中華民国の主権に属しており、われわれが中国と共同でこの問題を処理することはない。中国のこの問題に対する立場ならびに日中間の意見の相違は、わが方には関わりのないことだ」と述べた。
政府の立場を要約すれば以下の四点となる。①わが国が釣魚台の主権を有している主張を堅持する。②平和かつ理性的に処理する。③問題の解決に、中国と連携しない。④漁民の利益を優先的に考慮する。
【外交部 2月10日】
反分裂法は赤色テロ 中国に放棄を呼びかける
行政院大陸委員会は二月十四日、「中国の『反国家分裂法』の制定に対する政府の立場」と題し、以下の声明を発表した。
○ ○ ○
「反国家分裂法」は中国の国内法とはいうものの、中国に投資している台湾企業をはじめ、留学観光で訪れている台湾人にとっては赤色テロ以外の何物でもない。これは両岸の正常な交流を大きく損なうだけでなく、両岸関係と台湾海峡の平和と安定にも深刻な打撃を与えることになる。とくに中国が台湾海峡で唯一の指導者になろうと意図している点は、国際社会の台湾海峡に対する認識を全く無視したものだ。
台湾海峡の平和と安定は人民の共同の願いであるだけでなく、国際社会の一致した期待でもある。政府は今後も引き続き「両岸平和安定相互連動メカニズム」を推進し、両岸の現状に合った協議と規範のモデルの構築を進める。
【行政院大陸委員会 2月15日】
国内初「米販売専業区」が設立 海外進出の足がかりに
台湾きっての米の産地として知られる彰化県二林鎮、埤頭郷にこのほど国内で初めて「米販売専業区」が設立された。同地で「大橋ブランド」で米を生産販売している陸協碾米工廠が設立したもので、米の生産から経営までを専門とするシステムが整う。同地はコシヒカリの栽培で二十年以上と最も歴史が古く、作付面積も最大で、三百㌶の田のうち二百二十㌶でコシヒカリを栽培しており、残り八十㌶で益全香、台梗九号を生産、販売している。
行政院農業委員会は世界貿易機関(WTO)加盟後、米農家に対し産地の特色とブランド強化を指導し、産地や品質による違いを消費者にアピールしてきた。今回の「米販売専業区」の設立は、内外に競争力をもつ生産販売システムを構築して海外進出の足がかりとし、米の生産履歴と管理を徹底させることで消費者に信頼と付加価値を高め、安定した供給を図ることを目的としている。
《台北『経済日報』2月16日》
両岸貨物チャーター便交渉準備整う 二〇〇三年の方案を基礎に
呉釗燮・行政院大陸委員会主任委員は二月十六日、両岸の貨物チャーター便の就航について「中国が応じさえすれば、両岸の春節チャーター便の方式に基づき双方向、経由地なしでの運行を実現できる」と語った。
また交通部も同日、「実現を楽観視している。航路としてニーズの高いのは台北、高雄、北京、上海で、毎日少なくとも二便以上の往復が見込める」と語った。
三月は航空貨物のシーズンにあたる。航空業界では昨年同期に比べて上海地区での貨物量が大幅に増加すると見ており、三、四割は香港やマカオ経由で台湾へ輸出される見通しだ。このため三月前のチャーター便就航実現を政府に要請している。
交通部によると、台湾の航空会社のみチャーター便を就航させ上海との間で毎日一往復した場合取り扱える貨物量は百㌧と見込まれるが、将来双方向での就航が実現すれば、七万㌧を輸送できるとしている。
《台北『聯合新聞網』2月17日》
人民元切り上げは台湾に有利 中国経済の混乱に要注意
人民元が切り上げられるかどうかいま世界の経済界が等しく注目しているが、台湾を含むアジア諸国にとってはその影響はとくに大きい。
台湾シンクタンクの陳博志理事長はさきごろこの問題についてメディアのインタビューに応え、「人民元の切り上げはアジア経済に打撃となると多くの人が懸念しているが、これは間違った見方だ。むしろ人民元の切り上げは台湾にとっては有利」と強調した。
その理由として陳理事長は「確かに人民元が切り上げられ中国の輸出が減少すれば、台湾から輸入する中間財も減るだろう。しかしこれにより米国が中国からの輸入を減らし、その分が台湾に振り向けられれば、われわれにとってこれは有利とも言える」としている。
しかし中国が切り上げを行わなかった場合については「台湾や日本、韓国の通貨が引き続き上昇し、不平等な貿易環境が形成される。そうなれば輸出主導型の国は打撃となり、政府はこれを座視するのではなく、米国と十分に協議しなければならない」と指摘した。
陳理事長は人民元の切り上げも問題としながらも、「今年最も懸念されるのは、中国が経済をコントロール出来ずハードランディングすることのリスクである」とも語っている。
●利ざや目的の資金流失が深刻
李登輝前総統は二月十日「現在台湾から中国に振り込まれている資金は、人民元の切り上げを期待し、その利ざやを稼ごうとの心理が働いているためで、民間では大量に資金が中国に流失している」と述べ、政府に注意を促した。銀行関係筋によると、人民元切り上げを期待した中国への短期資金の移動はすでに一千億元(三千億円)に達していると見られている。
これに対し中央銀行の周阿定・外匯(外国為替)局長は「李前総統の見解は的を射たものだが、台湾の中国への投資が台湾経済を支えているのも事実だ。中央銀行はすでに外為規制を解除しており、市場の自由化は後戻りできない」と語っている。
《台北『自由時報』2月11日》
高雄ソフト園区等建設前進を指示 謝市長時代の懸案を処理
五年前に着工しながら完成の目処が立たず計画が頓挫している高雄ソフト園区、小港空運園区、成功物流園区の三つの建設案について、謝長廷・行政院長はこのほど関係機関に建設の前進を指示した。
高雄ソフト園区などこれら三つの建設案は産業の南北格差を是正する目的で計画された。このうち高雄ソフト園区は経済部加工輸出区の主導で中国石油の七・九㌶の土地にビル五棟を建設し、情報産業企業に進出を誘致する予定だった。二〇〇〇年に着工したものの、企業誘致などが予測通りに進まず、現地は基礎工事の段階で建築が中断したままとなっている。当初計画では〇二年までに完成し、年間生産高は百四十億元(四百二十億円)が見込まれていた。
経済部はこれまで同園区の建設に二十九億元(約八十七億円)を投資しているが、工事の中断による利息の負担も少なくなく、計画の早期見直しが課題となっていた。
《台北『聯合報』2月14日》
高速鉄道来年開通延期か 建設の進捗率一〇%遅れ
林陵三・交通部長は二月十七日、台湾高速鉄道(新幹線)について「今年十月の開通予定は変らないが、建設の進捗率が予定より一〇%遅れているため、今年末ないし来年二月ごろに延期される可能性もある」と語った。
交通部によると、一月末現在、新幹線の建設進捗率は全体で一〇%遅れており、その内訳は車両、信号、通信などのコアシステムが一九~二〇%、メンテナンス基地の建設が九~一〇%、駅舎建設が四~五%、軌道工事が二~三%、それぞれ遅れている。
経済界などからも予定通りの開通を危ぶむ声が出されているおり、台湾高速鉄道公司は、「春節休暇中も休まずに作業を進めており、車両の試運転も次々と行っている。十月開通の目標は変らない」と述べ、林交通部長の指摘については「われわれへの関心と期待、催促であると受け止めている」と語った。
《台北『中国時報』2月18日》
「京都議定書」発効と台湾の環境問題 非締約国の立場でいかに取り組むか
地球温暖化につながる大気中の温室効果ガス濃度の安定化を目的とした国連の「気候変動枠組条約」に基づき、一九九七年十二月にCOP3(第三回締約国会議)で採択された京都議定書が、二月十六日、百四十一カ国の批准により正式に発効した。第一期計画では、二〇〇八~二〇一二年の五年間に、先進国合計で温室効果ガスの排出量を一九九〇年比五・二%削減することを義務付けている。削減目標は国ごとに異なり、議定書締約国の相互協力体制のなかで、共同で目標を達成することが定められている。
議定書発効後の「ポスト京都時代」においては、締約国の目標達成状況を検証し、開発途上国における温室効果ガス排出量の制限義務および第一期満了後の二〇一二年以降のタイムスケジュールに関し、引き続き協議がなされることとなる。一方、米国、カナダ、オーストラリアの三大主要工業国が内容に異議を唱え議定書から離脱しており、中国、インドなど排出量が際立って多い途上国も対象外となっている現状がある。
台湾は国連の枠組から外れているため国際的に特殊な立場にあるが、温室効果ガスの排出量は現在世界で二十二位であり、国民総生産(GDP)に対する比率もきわめて高い。こうしたなか、台湾が京都議定書の「非締約国」として、今後いかに温室効果ガスの削減に取り組んでいくかが大きなカギとなっている。
●台湾経済にも影響大
京都議定書は、各国のエネルギー構造、産業政策および省エネなど生活全般の転換を図る世界最大規模の環境活動の指針である。台湾は現在エネルギーの約九割を輸入に頼り、エネルギー消耗が激しい従来型産業が多数を占めており、国民生活においても省エネの概念がまだ十分に浸透していない。さらに、工業先進諸国がこの十年すでに温室効果ガス削減の準備を進めてきたのに比べ、この分野ではまだ立ち遅れている状態だ。
同議定書の締結直前に開かれたCOP10(第十回締約国会議)に出席した李賢明・台北大学教授は「議定書にはまだ罰則に関する規定はないが、今後『エコ貿易』が実際の拘束力を発揮することになるだろう」と指摘する。李教授によれば、先進諸国の多くがそれぞれ課せられた削減量を達成するため、法的手段をもって産業界に協調を促しているなか、国際貿易のもっとも重要な要素はもはや“価格”だけではなく“環境への優しさ“がそれに加わることになる。
SONY、DELLなど大手国際企業は、かなり早くから部品や資材などの購入に際し、エコロジーな要求が満たされているかどうかを基準にしてきた。これは同業組合からの要求と、会社としてのイメージを考慮したことに拠るものだろう。こうした企業から契約を取りたければ、商品の製造工程を環境保護の要求に合うよう調整し、川下産業にもこれを要求しなければならない。
COPに数多く参加した顧洋・国立台湾科技大学教授は「台湾もこうした趨勢を無視することはできない。今後ヨーロッパの大手光電(オプトエレクトロニクス)メーカーが韓国の三星(サムスン)電子などに製造過程における温室効果ガス排出量の制限を要求すれば、宏碁(エイサー)、奇美、台積電など台湾企業も当然その影響を受けるだろう。同業企業が大規模な投資をして温室効果ガスの排出が少ない製造工程への転換を図っている時に、台湾企業だけが蚊帳の外にいることは許されない」と述べ、注意を促した。
また、清華大学科学技術法律研究所の范建得所長は「同業組合のエコ生産に対する要求が歯止めとなるだけでなく、国際商会(ICC)でも今後の国際経済においてエコ貿易に関する条約を追加し、会員国全体にこれを要求するというコンセンサスに達した」と述べ、COP10の台湾グループ副団長を務めた曲新生・工業技術研究院院長も「台湾の二酸化炭素排出量が世界二十二位だということは、国際エネルギー機関(IEA)が六千人の会議参加者のまえで発表しており、台湾のガス排出量の多さは各国の知るところとなっている」と指摘している。
●省エネはコスト削減に繋がる
京都議定書には罰則または制裁規定が設けられていないが、各国で積極的に省エネが進められるのは理由がある。企業イメージもさることながら、エネルギーの有効活用がコストの大幅削減に繋がるからだ。専門家によれば、一~二%の省エネで数億元(約数億円)を節約できるという。さらに、省エネは世界の趨勢であり、長い期間と資金を投入して対応するに値する。
曲新生・工業技術研究院院長は「エコ生産への転換は台湾企業にとって利益」と強調する。台湾のエネルギー科学技術はかなりのレベルであり、燃料電池、省エネサービス業の分野で今後多くの商機を得ることができるだろう。米国が締約国から外れたとはいえ、ヨーロッパ諸国などが議定書の規定によりエコ生産に転換する際ソフト構築面で、台湾は新たなチャンスを模索できるははずだ。
今後の情勢は変化も予想されるが、温室効果ガス削減の転機を、ひいては商機をのがしてはならない。
《台北『聯合報』2月15日》
エコ化の趨勢は台湾に有利 エネルギー効率と産業転換がカギ
京都議定書の発効は、台湾経済や環境への取り組みに大きな影響を与えることが予想される。政府の担当省庁である葉俊榮・行政院国家永続発展委員会執行長は二月十六日、聯合報のインタビューに応え、今後の環境問題への取り組みについて語った。以下はその要旨である。
○ ○ ○
問:政府は京都議定書発効に際しどんな準備をしているか。
答:われわれはまず、京都議定書における台湾の位置づけを明確にする必要がある。議定書に関係する国は三つに分けられるが、一つは、今回明確なガス削減目標を義務付けられたいわゆる付属書Ⅰ締約国(先進工業国)で、二つ目はそれ以外の、削減義務が設定されなかった途上国である。台湾はこのどちらにも属さない「非締約国」であり、国際社会では発言権がない反面、誰からも排出量を規制されることはない。したがって議定書が締結したからと大慌てする必要はなく、状況を把握し、国際社会に台湾がどのように努力しているかを伝えることが肝要だ。
問:社会ではこの公約に制裁権があるかどうかが論議されているが。
答:議定書について、制裁があるかどうかという観点から見るのは適当ではない。「制裁」というよりは「競争の機会を失う」ということだ。各先進国では今回、温室効果ガスの排出量削減に同意しており、これらの国の市場に参入するためには、エコ生産方式の導入を要求されることになる。生産工程でエネルギー消費量が多く、二酸化炭素の排出量が多ければ、間違いなく国際競争からはじき出されることとなる。こうしたなかで台湾も、国際貿易に参加するために徐々に転身を遂げなければならない。
問:省エネは可能なのか。
答:「省エネ」というより「エネルギー利用効率の向上」が必要だ。台湾ではエネルギー消費に対する生産効率がまだ非常に低い。私の考えでは、二〇二〇年には国際社会から台湾の省エネ度に注目が集まるだろう。台湾のエネルギー消費の対GDP比が現在と変わらなければ、大きな圧力がかけられるものと思われる。
問:エネルギー効率向上はどの程度まで実現できるか。
答:改善の余地は大きい。例えば、全国の交通表示灯をすべて発光ダイオードと交換すれば、明るさが増すだけでなく、電気代を九割節約できる。実際、政府が推進するエネルギー節減とは、特定の工場を閉鎖させるのではなく、各工場にエネルギーの効率的利用方法を指導することである。新しい生産機械の導入は確かに初期投資が必要だが、こうした投資は必ず回収でき、長い目で見ればコスト削減につながる。
問:産業構造の転換についてはどう考えるか。
答:これにはかなり長い時間を要する。実際、京都議定書では各国ごとの削減目標を定めているだけで、後は各国がそれぞれ、国内企業にエネルギー利用の効率化と生産方式見直しを促すことになる。つまり国にとって産業構造の調整が必要となる。台湾では従来型産業が依然多数を占めており、こうした産業構造の転換が必須となるだろう。
《台北『聯合報』2月15日》
中国の軍事拡張と台湾の防衛戦略⑥
〔中国の対台湾策略〕(続)
(四)文化面での策略‥中国は台湾の学者、企業家、オピニオン・リーダーらに中国訪問を促し、もって多元的な交流を進め、また両岸の学術面、文化面での交流を拡大するなど、台湾に対し積極的に文化統一戦線工作を進めている。さらに台湾の青年層に優遇措置などを講じて中国への留学を勧誘し、文化的アイデンティティーを植えつけるなどの活動も加速し、「民を以て官を圧迫し、民を以て統一を促進する」目的を達成しようとしている。
(五)心理戦の展開‥中国は「文攻武嚇」(メディアによる攻撃と武力による威嚇)ならびに「文統武圧」(文化面での統一促進と武力による圧迫)を繰り返し、「台 湾問題」の最終的解決には一戦を免れないとの心理的圧力を台湾に加えている。こ うした心理戦で今後考えられる手段は次の通りである。
①破壊浸透工作‥台湾情報収集を強化し、金融破壊の噂を散布し、不法な治安撹乱を並行する。
②民を以て統一を促進する‥善意を装った文化交流を強化し、中華アイデンティティーを喧伝して民 間から統一の声が出るように図る。
③商を以て政を包囲する‥利益誘導によって台湾企業を取り込み、経済界から政府に「三通」開始の 圧力をかけさせる。
④文攻武嚇の強化‥メディアによる台湾政府非難と軍事演習を繰り返し、台湾の人 心を揺さぶる。
⑤社会の分裂促進‥台湾の政治情勢を利用し、宣伝工作によって内部対立を深めさせる。
(六)浸透破壊工作‥この二年間で台湾の通信網がサイバーテロに遭った事件は三百三十件を超え、そのほとんどが中国からのテロ行為であった。このほか専門要員の台湾密入国は三百六十件、八百人を超える。これらは中国の台湾に対する浸透破壊工作がますます活発化していることを示し、その動向には警戒を要する。
〔今後の動向〕
中国は二〇〇二年十一月の第十六回全人代で、初めて「一つの中国」政策における「新三段階論」を明らかにした。それは「台湾への武力使用放棄の公約をしない」ことを強調し、台湾に対し「政経分離」と「和戦両用」の策略を継続し、同時に台独反対の立場を繰り返し、台湾企業関係者を動かして台湾政府の大陸政策に影響を与え、台湾の内部分裂を拡大させ、現段階における作戦は武力によらない「三戦」(世論戦、心理戦、法律戦)を中心とするというものであった。内容は、「世論戦」で敵の意思をコントロールして「血を流さず思想面で征服する」目的を達成し、「心理戦」で精神的打撃を与えて防衛意識を崩壊させ、「法律戦」で台湾問題の武力解決に正当性を設定し、将来の台湾出兵の口実にするというものである。それらの最近の進行状況は次の通りである。
(一)専門研究機関の設立‥軍の科学院は二〇〇四年四月に「台湾問題研究センター」と「政治工作研 究所」を設立し、台湾に対する「三戦」を中心とする政治作戦 理論の研究システムを確立した。そ こでは軍隊における政治工作の刷新、軍隊の 政治 工作人材の育成が進められている。
(二)「三戦」演習の実施‥「三戦」演習を実施し、戦術および支援体制の確立を推 進している。
(三)心理戦、通信、法律、特殊方言、外国語などの人材育成を本格化した。それらは武力による台湾 侵攻の障害を前もって取り除こうとする作戦である。
(四)外交、インターネット、地方メディアなどを使って台湾に対する世論攪乱工作を進め、台湾政府 の政策に影響を与え、社会混乱を拡大しようとしている。
中国はイラク戦争、コソボ紛争、アフガン戦争などで米軍が「三戦」を駆使して所 期の作戦目的を 達成したと見なしている。そのため、後日台湾に武力を発動した 場合の国際的反発を防止するため、 中国は台湾に対する「三戦」の研究を開始し たのである。
三、中国の対台軍事能力
中国軍は「中国の特色ある軍事改革」を指導方針に現代化を進めている。それらには部隊編成の改革、新型兵器の装備、幹部の質向上、演習の強化なども含まれている。
中国の台湾に対する現有軍事能力は次の通りである。
〔従来型作戦能力〕
(一)航空攻撃‥中国海軍と海軍航空隊を合計すれば、台湾に脅威を与える航空機の数は千機を超える 。その中でスホイ型戦闘機が最も優れ、その行動半径は六百から八百十海里に及び、視距離外の攻撃 、反レーダー、精密誘導ミサイル攻撃などの能力を持ち、ロシアからの購入とライセンス生産を進め ている。将来は台湾海峡での制海権、制空権奪取の主力となり得る。
(二)降下部隊‥中国軍は台湾の拠点奇襲占領の演習も実施しており、パラシュート部隊の機動力と攻撃力強化を進めている。
(三)海上攻撃‥東海艦隊を主力とし、南海艦隊と北海艦隊がそれを支えている。目下、旅大級駆逐艦の改装を進めるとともに、ロシアからソブルメンヌイ級駆逐艦の導入を進めており、各種ミサイルの開発も合わせ、台湾封鎖能力を備えようとしている。
(四)水面下攻撃‥潜水艦による艦船攻撃と機雷による封鎖を含む。中国は通常動力潜水艦の改良と改装を積極的に進めており、将来的には明級改良型、宋級、キロ級などの新型潜水艦が主力となり、水面下からの攻撃力が大幅に増強される。そこに原子力潜水艦が加わり、戦時において戦力として導入した場合、長期にわたって台湾を封鎖する能力を持つことになる。このほか、現有の水上艦、潜水艦のほとんどが機雷敷設の装備を持ち、また民間の商船や漁船も機雷敷設艦への改装は可能であり、戦時においてこれらが機雷敷設任務につけば、台湾が受けるシーレーンへの脅威は甚大なものとなる。
(五)上陸作戦‥制空権の行方ならびに輸送能力、天候などを考慮した場合、中国の揚陸艦は一個師団の輸送が可能となる。さらに現有の商船や沿海各省の大型漁船を動員した場合、砲兵を含むおよそ四十万人の上陸部隊を輸送することができる。目下、南京軍区の部隊が福建省東山地区で上陸作戦演習を積極的に実施しており、さらに上陸支援作戦能力も強化し、台湾に対する軍事的脅威は日増しに増大している。この点は特に注目しなければならない。
(六)統合作戦‥中国軍の衛星、通信、情報技術は最近長足の進歩を遂げており、対台湾作戦の任務を負っている南京、広州、済南軍区を中心に、これらの技術力が大いに導入されている。その主たる目的は、陸海空三軍共同作戦で指揮、管理、通信、情報等を共有し、上陸作戦を的確に進めるためである。
(七)防空作戦‥紅旗系とS300系の地対空ミサイルを主力に、その他の対空兵器も装備し、高低および長短を補完し合いながら主要基地、重要拠点の防空体制を敷いている。
〔非対称型戦略〕
中国軍は従来型作戦様式を越え、優勢な敵に対しては戦場や後方の範囲を越え、軍事あるいは非軍事のあらゆる手段を用いて勝利を得ようとしており、すでにシミュレーションも重ね、三軍の作戦理念に一定の影響および変化が見られる。将来的には精密兵器を配合した多面的な非対称戦略によって台湾の政治、経済、軍事の主要施設の機能を麻痺させ、国民の士気を崩壊させ、最小の代価で最大の効果を得ようとしている。その戦略は次の通りである。
(一)宇宙兵器‥中国の偵察衛星、通信衛星の進歩はめざましく、将来対台湾作戦においてこれらが駆使された場合、遠距離精密攻撃が可能となり、容易に相手方の指揮、通信、情報系統が破壊でき、台湾の防御力は甚大な影響を受けることになる。
(二)弾道ミサイル戦略‥中国が台湾に対するミサイルを配備する目的は、まず外交カードとして台湾に対する経済封鎖、さらに政治、軍事、心理面で威嚇するところにある。現在配備されている戦術弾道ミサイルは六百十基(最新情報では七百基以上)におよび、すでに台湾全島をカバーしている。さらに中距離弾道ミサイルの配備も進めており、これらが浙江省沿海部、安徽省東部を前線基地とした場合、その射程範囲は台湾全島に限らず、日本、韓国、グアム島にも及ぶ。もし突発的事態が発生した場合、中国はこの範囲の敵性国家への威嚇あるいは作戦も発動するものと思われる。
【国防部 04・12・14】
世界らん展に台湾から多数出展
二月十八日~二十七日まで東京ドームで開催された「世界らん展日本大賞二〇〇五」に、今年も台湾から多数出展され、個別、ディスプレイ部門などで受賞した。
同展は世界で開かれる蘭の花の祭典のなかで最大規模と最高レベルを誇っており、毎年四十万人規模の来場者で賑わう。今年は十五回目の節目にあたり、世界二十四カ国・地域から十万株を超える蘭の花が出展された。花の栽培技術や美しさを競うコンテスト、蘭の魅力を最大限に引き出したさまざまなディスプレイ、蘭の花にまつわるトークショーやクイズラリー、セミナー、コンサートなど、さまざまな展示と催しが行われた。
台湾は蘭の自生地、生産地として世界でもよく知られており、とくに最近人気の高い胡蝶蘭の生産は年間三千六百万株に及ぶ。これは世界の花卉王国であるオランダの千八百万株、日本の二千八百万株を優に上回る規模で、中国、米国をはじめ日本へも年間約三百万株の苗を輸出している。
台湾は同展に例年出展しており、昨年は技術と美しさにおいて最も優れた花に贈られる日本大賞に次ぐ優秀賞を受賞するなど、レベルの高さはすでにお墨付きだ。
今年は台湾から個人の栽培業者を含む十団体が出展し、大賞こそ逃したものの、各種蘭のカテゴリー別に行われた個別部門では千点以上のエントリーから上位作品に贈られるリボン賞を六点、ディスプレイ部門において奨励賞とトロフィー賞三点を受賞するなどその実力を証明した。
一方、三月二十六日~四月十日の日程で、台湾で「二〇〇五台湾国際蘭展」が開催される。会場となるのは、台湾の国際競争力を高める目的で昨年二月に台南県に設立された「台湾蘭花生物科技園区」だ。品種改良などの研究開発から育苗、生産、販売、管理まで、蘭の花に関わる産業の集積を目指しており、園区内の施設の完成は二〇〇八年を見込んでいる。
同展では国際シンポジウムの開催のほか、花の種類別、寄せ植え、ディスプレイの各種コンテスト、蘭の手工芸品の展示会などが行われる。
《取材:本誌編集部・山田》
文化・芸能情報
「九・二一大地震」記念絵本が完成
一九九九年に台湾中部を襲った「九・二一大地震」から六年目の今年、地震で被災した子どもたちの心の再生を記録した絵本がこのほど完成した。
行政院九・二一震災復興推進委員会が脚本家で映画監督の呉念真氏に依頼し制作したもので、挿絵は何雲姿さんが担当した。絵本のタイトルは『鞦韆/鞦韆飛起来』(ぶらんこ/ぶらんこが飛んだ)。二冊セットになっており、遠流出版社から出版された。
ストーリーは主人公の女の子「阿妹」が小学校に入学し、楽しい学校生活を送る場面から始まる。やがて大地震が起き、学校がなくなり、先生までいなくなる。後半は重く沈んだ雰囲気に包まれるが、最後に悲しみを振り切るように空に向かってぶらんこをこぐ姿に、未来に生きる力を表現している。呉氏は「今さら悲しみを訴える必要はないと思った。子どもたちが受け止めている震災と大人の私たちとでは異なっている。子どもたちは忘れるのも早く、またそうあってほしい」と語っている。
何雲姿さんは「血生臭さは避け、残酷さは色や抽象的な構図で表現し、ストーリーを浮き立たせるようにした」と語る。二冊の絵本は金と銀色に塗り分けられ、装丁にはアートの雰囲気が漂い、一般の絵本とは一線を画す作りとなっている。
《台北『民生報』1月15日》
文化ニュース
「台湾大百科全書」ネット版が始動
台湾の歴史から政治、経済、社会、文化にいたるまで、台湾に関するさまざまな知識の網羅を目指す百科辞典がこのほどお目見えし、インターネット上で公開されている。
「台湾大百科全書網站」(http://taipedia.cca.gov.tw)がそれで、昨年五月、陳水扁総統が「台湾にも自分たちの百科事典が必要だ」と語ったのを受けて行政院文化建設委員会が作業を進めているものだ。完成は二〇〇八年の予定で、現在も編集の途上にある。編集を行いながら公開でき、時間と場所を選ばず、しかも無料で閲覧できるインターネットの強みを生かし、書物の出版よりさきにネット上で公開された。政府は将来これを台湾に関する最大の検索エンジンサイトに発展させたいとしている。
そしてこの百科事典の特異性はもう一つ、台湾の国民なら誰でも編集に参加できるという点にある。同百科事典のHP(ホームページ)上に身分証明書の番号を入力すれば会員として登録され、各人が台湾について自由に記述した内容が百科事典に盛り込まれるという仕組みだ。もちろんそれらの内容は編集委員会のメンバーや専門家によって厳しく審査され、不正確、不適合なものは採用されないが、自信のある人は挑戦してみる価値があるだろう。一月十九日に行われたネット公開式典で、陳水扁総統は「この百科事典は国民が参加できる新しい知識運動であり、国民みずからが創造する辞典である」とその意義を強調している。
現在ネット上で公開されているのはテスト版で、検索できる項目は歴史が約四千六百項目、工芸が十項目にとどまっているが、将来は外交、政府組織、経済、工業、情報、地理・地質、気象・気候、考古、民俗、美術、古跡、建築、体育、パフォーマンス芸術、教育、文学、農業、動物、植物、生命科学の二十二のジャンルをすべて網羅する計画だ。収録項目は三万~四万項目を予定しており、一項目について三百~五百字の解説を添え、書籍にして二十巻分になる。なお、英語版サイトの公開も現在準備中だ。
《台北『民生報』1月19日》
廟建築に欠かせない「剪粘」芸術 この道二十余年の匠の技
台湾ではどこの町でも、土地神などを祭った廟が数多く見られる。「剪粘」は廟の屋根のうえに付けられた棟飾りで、カラフルな龍や鳳凰の造形が独特の風情をかもし出している。
嘉義県の三級文化財「大士廟」の修復作業にあたっている許位成さんは、二十五年のキャリアを持つ修復技師だ。中学卒業後台北で技術を学び、四十前にしてすでに長い実績と経験を積んでいる。「剪粘」はまず鉄線で形を造ってからモルタルを塗り、さらにその素地の上にさまざまな色や形の
陶磁やガラス片を張って造る。屋根の上で長時間日に晒される重労働であるため、弟子をとっても長くは続かず辞めてしまう人が多いそうだ。
最近、許さんは空いた時間を利用して「剪粘」の縮小版を造っており、これが贈答品やコレクションとして、静かな人気を呼んでいる。以前、台中科学博物館に招かれ学生に技術指導をした折にもこれを教材として活用したが、屋根に登らずとも作品をじっくり見ることができ、好評だったという。多くの人が興味を注ぐ台湾の廟建築芸術。棟の上で参拝者を迎える「剪粘」が、芸術鑑賞品となる日は近いかもしれない。
《台北『中央社』2月15日》
近頃流行のネット代理購入族 台湾でも「並び文化」は健在
バーゲンセールの限定商品、話題の店のスイーツ。日本と同様、台湾でも人気商品を手に入れるのに、店に長蛇の列をつくっている人々を時々見かける。しかし忙しい現代人、並ぶ時間をお金で買えるならと考えるのは当然だ。こうした需要に注目し、ネット上で商品の代理購入を受け付けるサービスが台湾で流行っている。
学生の呉さんもそんな一人だ。ネット上で代理購入希望者を募り、毎日明け方に台北郊外の家を出て、高級住宅地にある人気のドーナツ店へ向かう。七時から開店の十一時まで並び、商品を市中心地のオフィス街へ届ける。「三時間並んで三百元(約九百円)稼げるから、毎日行けば冬休み中で一万元(約三万円)にはなる」という。このサービスの利用者は、仕事で忙しい三十歳前後のキャリアウーマンが主流だ。次に多いのは他県からの旅行者で、前もってネットで購入を依頼し、商品は滞在先のホテルまで届ける。
時間を有効活用でき、他人を気にせずそこそこの収入になるため、こうした代理購入は学生のアルバイトとして人気のようだ。最近では代理購入の需要も多様化しており、ある学生は十五日から開催された国際書展で、有名作家のサイン入り本の代理購入を受け付けたところ、依頼が殺到した。「代理購入族」成功の秘訣は、ネット上で受け付ける商品選びで、何が流行りそうかを事前にキャッチする先見の明が必要だという。
《台北『中国時報』2月15日》
2005年観光情報
愛知万博で台湾文化をアピール
三月二十五日~九月二十五日に開催される愛知万博に、台湾が舞台芸術、食文化、農産品などを紹介するステージとレストラン出店の形式で参加することが決まった。二月十六日、台北駐日経済文化代表処で記者会見が開かれ、許世楷・駐日代表が正式に発表した。
許駐日代表は「台湾は日本と国交がないため正式な参加が難しく、当初愛知万博への参加は予定していなかった。しかし日本に台湾大使館がないが駐日代表処があり、実質的交流を放棄していないのと同様、形式に拘って交流の好機を放棄すべきではないと考え、参加の方法を再度模索し、日本側の支持と協力により、参加が決定した」と述べ、「万博参加で台湾の存在をアピールし、国際的信用の向上に繋げたい」と強調した。
台湾は今回、おもに二つの分野で万博に参加する。一つ目は、台湾の代表的な舞台芸術団体五組によるステージだ。先住民族の舞踊や台湾の民間伝説を取り入れた「蘭陽舞踏団」、各国で百以上の舞台を踏み高い評価を得ている「優人神鼓」、鈴を使った独特の音楽パフォーマンス「舞鈴少年」、世界的に有名な「雲門舞集」、伝統と現代の融合をテーマとした「朱宗慶打撃楽団」が、台湾の民族舞踊や先端舞台芸術を披露する。
もう一つは小皿料理など台湾の新鮮な食材と特色をふんだんに取り入れたレストラン「イラ・フォルモサ(麗しの島)」。日本の老舗外食チェーンさぬきやに委託し、日本でもファンが多い「鼎泰豊」の小籠包など台湾の小皿料理や屋台料理、フルーツデザート、お茶などが味わえる。店内には台湾の観光や文化に関するプロモーション映像や資料も用意し、台湾の味とともに、台湾に関する情報を幅広く紹介する。
二〇〇五年日本国際博覧会(愛知万博)は「自然の叡智」をテーマとし、現在百二十七の国と地域、五つの国際機関が参加する予定だ。日本政府は二月九日、万博開催期間の六カ月間における台湾渡航者へのビザ免除を決定しており、今回万博への参加が決まったことで観光客の賑わいにさらに拍車をかけそうだ。
●イベント開催場と時間は次の通り。
蘭陽舞踏団 6/20(月) 12~14時 長久手会場愛・地球広場
優人神鼓 6/21(火) 15時30分~17:10 長久手会場ExpoDome
舞鈴少年 7/4(月) 14~14時30分、16時30分~17時、19時30分~20時 ExpoDome
雲門舞集 7/5(火) 19時30分~21時 ExpoDome
朱宗慶打撃楽団 7/6(水) 12~14時 愛・地球広場
「ILHA FORMOSA」 長久手区会場グローバルコモン(外国館)6内
中部国際空港に中華航空乗り入れ
二月十七日、成田空港、関西国際空港に次ぐ三番目の国際空港「中部国際空港」が開港した。新空港は二十四時間体制で日本の工業後背地と海外二十五都市、国内二十四都市を結ぶ。長距離国際線の発着が可能な三千五百メートルの大滑走路を備え、国内線と国際線の旅客ターミナルを一体化した乗り継ぎのよさが特長だ。また、初の民間が経営する空港で、航空機発着料を安くするなどコスト削減も追求している。
同空港にはチャイナエアラインが乗り入れており、同日から営業を開始した。愛知万博開催期間には、台湾からの渡航客を迎える玄関として多数の利用者が期待される。
《台北『聯合報』2月16日》
日月潭で台日桜の花交流イベント
一年に一度の台湾と日本の桜の交流イベントが、二月十三日、日月潭の九族文化村で盛大に開幕し、日本のさくらの女王・望月玲奈さん、石川県和倉温泉ミスさくらの浅香葉子さん、有名温泉旅館「加賀屋」の「よさこい舞踊団」が招かれ、親善交流が行われた。
イベントは九族文化グループの舞台「春桜の鼓動」に始まり、日本のさくらの女王らが、昨年九族さくら祭りで「さくらの妖精」に選ばれた徐毓笙さん、徐瑋翊さんとともに台日友好の記念ボードに手形を押し、今年台湾でみなが手を取り合い、桜を愛でた証とした。
九族主催の台日桜の花交流イベントは今年三年目で、過去最大規模となった。台日間のさくら交流は二十五回目を迎え、さらに今年は第五回日月潭九族さくら祭り、日本桜の花協会創立四十周年と重なる記念すべき年となった。九族文化村ではイベントに合わせ、浴衣着用のカップルに入園料をサービス。多くの観光客が満開の桜を堪能した。
《台北『中国時報』2月14日》
お知らせ
台湾週報ウェブサイト移行のお知らせ
『台湾週報』は発足時の『中華週報』以来、紙面による週刊情報誌として皆様方に台湾情報を提供して参りましたが、社会がすでにインターネット時代に入り、各種ニュースの伝達にもスピード化が要求されるようになりました。本誌におきましても読者の方々からスピード化の要求が多く、これらの事情を深く考慮し、三月三十一日をもって従来の週刊誌形式を廃止し、今後はより多くの読者に、より速く台湾のニュースに接していただくため、本誌も四月一日より、伝達方法をウェブサイトおよびメールによる発信に切り替えさせていただくことになりました。
『台湾週報』ウェブサイトは台北駐日経済文化代表処のホームページで御覧いただくことができます。今後とも宜しくご愛読下さるようお願い致します。代表処ホームページは以下の通りです。
http://www.roc-taiwan.or.jp
(台湾週報編集部)
台湾映画研究会
日 時 3月5日(土)午後5時~
テーマ日本における台湾映画の受容
ゲスト 山形里香氏(ワコー配給部)
※参加無料、事前に電話予約必要
会場・問合せ 台湾資料センター
(TEL:03-3444-8724)
※同研究会は、交流協会の経費助成プロジェクトの研究活動の一環として、台湾資料センターと共催で開くものです。
台湾映画特集
台湾の最近の人気映画を特集して東京都内で上映されます。
〔作品〕
① 藍色夏恋(02年 監督:イー・ツーイェン、主演:チェン・ボーリンほか)2月12日~25日
② ダブルビジョン(02年 監督:チェン・クオフー、主演:レオン・カーファイほか)2月12日~18日
③ 運転手の恋(00年 監督:チャン・ホアクン、主演:宮沢理恵ほか)2月19日~3月4日
④ ミレニアム・マンボ(01年 監督:侯孝賢、主演:スー・チーほか)3月5日~11日
⑤ 珈琲時光(03年 監督:侯孝賢、主演:一青窈ほか)2月26日~3月11日
※いずれもイブニング、レイトショーで入替制です
料 金 一般と学生:1300円
水曜 シニア 会員:1000円
会場 問合せ キネカ大森(東京都品川区南大井6-27-25 大森西友5F
TEL 03-3762-6000)
交 通 JR京浜東北線大森駅3分
http://www.cinemabox.com/schedule/omori/asian.html
台湾の民主と人権問題研究に奨学金を支給
財団法人「台湾民主基金会」は海外の学術機関、NGO、またはそれに類する機関に在籍する博士、博士研究員、客員教授に対し、台湾の民主と人権問題についての研究に奨学金を支給します。
研究テーマは民主と人権に関するもの、とくに台湾の民主と人権の発展に関連し、これを励ます比較研究のものとします。詳細は以下の同基金会のホームページ(HP)の英語版を閲覧のうえ、指定された申請フォーマットで申し込んでください。疑問点は同基金会までEメールでお尋ねください。
● 台湾民主基金会
HP:http://www.tfd.org.tw
emailtfd@taiwanademocracy.org.tw
春 夏 秋 冬
2月上旬、東アジアの平和と安定維持に関するきわめて興味深いシンポジウムが東京であった。同時にそれは、原子力潜水艦の日本領海侵犯に象徴されるように、膨張する中国海軍の狙いがすでに第一列島線(日本列島、台湾、フィリピン)を越え、第二列島線(小笠原諸島、サイパン島、グアム島)を突破して本格的に太平洋へ進出しようとしていることが明白となった今日、必要なシンポジウムでもあった。アジア安保フォーラム(宗像隆幸代表幹事)と日本政策研究センター(伊藤哲男所長)が共催した「中国の脅威と日本の対応」をテーマとしたシンポジウムである。当日(2月5日)麹町の会場にはおよそ250人が参加し、立ち見が出るほどだった。
この中で、パネリストの森本敏・拓殖大学教授は、中国の軍事力増強が続き、その防衛領域も不断に拡大し、すでに直接的脅威が日本の周辺海域に達していることを指摘した。さらに台湾から出席した黄昭堂・台独聯盟主席も、中国がアジアの不安定要素であり、日本にとって重大な脅威であることを指摘するとともに「歴史的に見れば、中国が日本を理解することは永遠にない」とその脅威の本質を衝き、「事実上台湾は日本の防衛を担っており、日本は台湾と共同でこの地域の安全を維持すべきだ」と主張した。中国の本質ならびに地理的、歴史的経緯からこの意見には強い共鳴を感じる。また、そこにこそ日本の安全保障が存在しているように思えてくる。もし台湾が中国の支配下に入った場合、日本のシーレーンはどうなるかを考えれば、このことは容易に理解できよう。
これについて同じくパネリストの山内敏秀・元防衛大学教授は、中国の第二列島線突破の試みに「日本は軟弱な態度を見せてはならず、台湾の自決路線に変化はない」と指摘し、「中国に日本が台湾への武力侵攻に反対していることを明確に示す必要がある」と主張した。続けて佐藤守・元空将は、現在中国は台湾に照準を合わせたミサイルを約700基配備しているが、現在実際に使えるのは200基ほどであり、さほどの脅威ではないとしながらも、「2008年以降には中国の軍事力が台湾を凌駕する」ことへの強い懸念を示し、「日本は台湾に近い離島に一個航空中隊を配備すべきだ」と主張した。
いずれもアジアの平和にとって必要な措置であろう。中国を相手に「微笑」はなめられるばかりであり、毅然とした態度こそが地域の安全保障につながる。このことを日本のマスコミ界も十分に理解して欲しい。 (K)