台湾週報2184号(2005.3.31)
陳総統が中国の愚挙に見解示す
「反国家分裂法」に六つの正式見解
陳水扁総統は3月16日、国際僑胞団体である「全僑民主平和聯盟」のメンバーと会見し、中国が制定した「反国家分裂法」に対する六つの見解を示した。その中で陳総統は、中国の措置は両岸関係を悪化させるのみであり、台湾2300万国民のみが台湾の前途を決定する権利を持つことを強調した。さらに3月26日の100万人デモは台湾の理性と主張を示すものであることを明示した。以下はその全文である。
本日、総統府において皆様とお会いできる機会を得たことを嬉しく思います。私はここに出席された方々、また内外のすべての民主主義と平和を愛する人々と同様に、いま最も関心のある問題は、すなわち中国が先日一方的に制定した、いわゆる「反国家分裂法」であると思います。国際社会が圧倒的に反対し、厳正に呼びかけていたにもかかわらず、中国は独断専行し侵略的な法案を可決しました。これに対し、国際社会がこぞって関心と遺憾の意を表明しているほか、私も特にこの機会を借り、以下の厳正な見方を提示します。
一、「中華民国は主権独立国家である。台湾の前途のいかなる変更も、二千三百万台湾国民のみが決定権を持つ」。これは今日の台湾における国家主権および台湾の前途に対する最大のコンセンサスであり、同時に与野党の最大公約数です。最新の民意調査は、九割以上の台湾国民が明確にこの主張をしていることを示しています。もし中国当局が真に「台湾人民に希望を寄せる」なら、絶対多数の台湾国民の声を聞き、中華民国が存在する事実を受け入れ、台湾国民の自由意志による選択を尊重すべきであります。
二、中国が「反分裂国家法」を制定した過程は、あることを一層鮮明にしています。それは現在の台湾海峡両岸には、確実に多くの制度の差が存在しているということです。われわれには「民主」と「非民主」、「平和」と「非平和」の差が大きいことを、故意に突出させる必要はありません。われわれは海峡両岸が民主、自由、平和の原則を守るべきことを堅持し、対話を通して双方の相違点を解いていかねばなりません。いかなる「非民主」や「非平和」的な方式も、いかなる口実を設けようとも、国際社会において容認されるものではなく、同時に両岸関係をさらに分裂させ、両岸人民の感情をますます遠ざけるばかりであります。
三、国際社会が圧倒的に反対し、再三にわたって厳正に呼びかけたにもかかわらず、中国はいささかも自覚せず、自制することもできず、独断専行で侵略的な法案を可決しました。国際世論がその錯誤を明確に指摘してからも、北京当局は依然としていかなる反省も見せておりません。ここにおいて、われわれは対岸当局に対し明確に指摘します。いかなる文字を用いて他人の基本的権利を侵犯してもよいなどとする法を定めようとも、いかなる理由や口実を設けようとも、すべて自由、民主および人権など世界普遍的な価値観に対する侮辱であり、人類文明の後退でしかありません。
四、台湾国民は民主主義を崇敬し平和を愛することに決意を持っており、国際社会と共同で民主体制を擁護し、台湾海峡の平和と地域の安定を維持する決意をしております。われわれは中国の安定に期待を寄せていますが、中国当局が国際社会に対し、明確に示さなければならないのは、「平和への覚醒」という点です。長期にわたり、中国は潜在的侵略者に対し、武器の輸出を継続してきました。
五、中国が一方的に制定した台湾海峡の現状を変える「反国家分裂法」は、地域の緊張および国際的騒擾を惹起するものであり、歩み始めた両岸関係の緩和に重大なマイナス要素を作り出すものであります。私は国家指導者として、国家の安全保障と国民の福祉に大きな責任を負っており、政府とともに厳粛に対応し、真摯に対策を講じなければなりません。「和解するも尻込みせず、毅然とするも対立せず」という既定の方針に変更はありませんが、中国の常用する硬軟両用手法に対し、特に「非平和」的な武器を持ち出し、小手先器用な策を弄したからには、台湾国民は断じて目覚めないわけにはいかず、侮りを許すこともできません。長期にわたり、われわれは台湾各方面の発展と経験を対岸と分かち合い、両岸人民の福祉を向上させようとしてきました。実際において、対岸の人民が最も必要とし、同時にわれわれが最も提供したいとしている三つの台湾特産は、民主制度と整った自由、ならびに人権の保障であります。このことを、われわれは変更するものではありません。
六、かつての歴史は、邪悪な勢力に拡散を許し、壊滅的な影響を被ってきたのは、善良な人々が沈黙を選択し拱手傍観してきたからであることを証明しています。今日、暗雲が台湾海峡の上空にたれこめており、われわれのすべてがこの外に身を置くことはできないのであります。国際社会が一斉に声を上げている今、台湾はさらに団結し、老若男女の別なく、党派の立場を分かたず、あらゆる職種に関係なく、台湾国民はさらに声を大にしなければなりません。「三・二六民主と平和で台湾を護る」一大デモ運動は、台湾国民の最も平和的で、最も理性的で、最も謙虚な声の表明であり、百万民衆が厳として街頭に歩を刻み、非平和的な侵略法を断固拒否し、対岸の中国に対し「二千人余の中国全人代委員が二千三百万台湾国民の運命を採決することはできず、偉大なる台湾国民のみが台湾の自由、民主、平和の前途を決定できるのである」と言明するものであります。
まだ記憶に鮮明ですが、四年前の五月十七日、私は第三回「世界華僑大会」に出席し、祝辞の中で特に、台湾を愛し、中華民国を支持するすべての海外僑胞に「民主を進め、平和を愛する」連盟を設立されるよう呼びかけました。今日私は喜びをもって、皆様方の努力により「全僑民主平和聯盟」が設立され、わずか数年に世界中に六カ所の地域組織と九十七の支部が設立され、すでに三回にわたり世界大会を挙行し、積極的に海外僑胞団体との団結を進めるばかりでなく、台湾国民が自由と民主を追求している成功例として、また世界の友人と分かち合っておられるのに接することができました。
私はここに、熱心に「全盟」に参画された僑胞リーダーの皆様、ならびに先進的な方々に最大の尊敬と感謝の念を表明するとともに、皆様がそれぞれの地域にお帰りになってからも、引き続き台湾のために声を上げ、さらに多くの国際社会における正義と応援を求められることを期待いたします。われわれは強く団結し、国内海外を分かたず、すべてが共に努力し、台湾のため、中華民国の前途のため、絶え間なく奮闘しようではありませんか。最後に、皆様のご健康とご発展を祝します。
【総統府 3月16日】
国民の93%が反分裂法反対 台湾国民の主権意思は明確
中国全人代の「反国家分裂法」採決が迫った三月十三日、国策研究院は最新の世論調査結果を発表した(調査日時三月九~十二日。電話質問形式。有効サンプル千六十七人。誤差±3%)。
それによれば、中国が「非平和的方式」で両岸問題を解決しようとしていることに「反対」とする意見は九三%に達し、中国が「台湾は中国の一部分」と主張していることに、「受け入れられない」とする意見は八四%に達した。また「反国家分裂法」では「台湾人民の利益に損害を与えない」としているが、これに対し八五%が「信用できない」と答え、政府が進めようとしている防衛力強化のための「兵器購入特別予算案」には五五%が「賛成」と答えた。
この結果について黄偉峰・行政院大陸委員会副主任委員は「中国の反分裂法は同国の侵略性を如実にあらわすものであり、それに反対する意見はすでに台湾国民の高度なコンセンサスになっている」と指摘した。また学者、研究者の多くも同様の見解を示し、中国への警戒感と懸念を表明した。
《台北『青年日報』3月14日》
台湾は中国当局を厳重に譴責する 「反国家分裂法」制定は平和への挑戦
中国全人代は三月十四日、台湾の世論と国際社会の懸念を無視し「反国家分裂法」を可決、制定した。中国と台湾は互いに隷属せず、台湾の主権は台湾二千三百万国民に属しており、台湾の前途を決定できるのは台湾二千三百万国民のみであることは明白である。この事実を「非平和的方式」で覆そうとする同法は、明らかに戦争推進法であり、平和への挑戦であると言わねばならない。これにつき行政院大陸委員会は同日、以下の声明を発表した。
三月十四日午前に中国全人代を通過した「反国家分裂法」に対し、行政院大陸委員会は厳正に声明を発表する。中華民国の主権は台湾二千三百万国民に属するものであり、中国当局がいかなる手段によって侵犯を進めようとも断じて容認しない。中国が絶対反対を唱える台湾の民意および国際社会の懸念、関心、批判を顧みず、一方的に現状を変更しようとする意図を持った「非平和的手段」の立法化は、台湾海峡水域の平和と安定に脅威を与えるものである。この種の重大な挑発と台湾海峡の平和と安定を破壊する行為に対し、政府は中国当局に最も厳重な非難を表明するとともに、再度国際社会が共同し厳しく叱責するよう呼びかける。
大陸委員会はさらに以下の通り表明する。
一、中華民国の主権独立がすなわち現状である
中華民国は主権の独立した国家であり、中華民国の主権は二千三百万台湾国民に属しており、台湾の前途のいかなる変更も、二千三百万台湾国民のみが最終決定権を持っている。
台湾は断じて中華人民共和国に隷属しておらず、これは全台湾国民に共通した明確な主張である。中華民国と中華人民共和国は共存し互いに隷属しておらず、これは台湾海峡の長期にわたる現状である。
中国が本日、一方的に定めた「一つの中国」の原則を法制化し、さらに「統一」が「台湾人民の法的義務であり神聖な職責である」などと規定した行為は、一方的に台湾海峡の現状を変更しようとするものである。この種の重大な挑発と措置は、台湾の自由と民主主義の後退を意図したものであり、両岸関係の発展にいかなる利益にもならないばかりか、台湾国民の感情を害し、さらに東アジア地域の安全に重大な影響を及ぼすこととなる。
二、平和が問題解決の唯一の方途である
近年来、中国は大幅に軍事予算を増加し敵対的軍事配置を強化し、それらを「平和への努力」などと言辞を弄しているのは、きわめて風刺的な笑い話であり、また東アジア地域に不安定をもたらす最も主要な根源ともなるものであって、これは国際社会においてきわめて明瞭なことである。
中国当局は数日にわたり、反分裂法は「非平和的方式をもって台湾問題を処理する」法的根拠を付与するものであるとの妄言を声高に叫び、条文本体を空虚に粉飾しているが、実体はすでに中国人民解放軍に随時かつ随意に台湾を武力侵略し併呑してもよいとの手形を与えたものであり、将来直接侵害されるのは台湾二千三百万国民の生命と財産であるのだ。さらに中国当局が鉄面皮にも再度「台湾人民に希望を寄せる」などと口外し、台湾侵略の時には台湾人民を保護するなどと言っているが、こうした古い欺瞞に満ちたやくざ的ロジックは、ただ台湾国民の極度の反感を招くのみである。
中国は国際社会における台湾海峡問題平和解決への共同の願望を顧みず、非平和的手段で台湾海峡問題を処理しようと誤った意図を持っているが、それは明らかに国連憲章ならびに国際人権規約を踏みにじるものであり、国際社会はすでに中国のこうした立法措置に対し大きな関心を示すとともに、絶えず譴責している。世界各国の政府と国民がわが国のため不平の声を上げていることに対し、行政院大陸委員会は特に中華民国政府を代表し感謝の意を表明する。
三、中国専制集団はアジア太平洋地域の最大の脅威である
中国当局は口を開くたびに「台湾人民に希望を寄せる」などと言っているが、それは皮肉にも言えば言うほど台湾国民の感情を害するばかりであり、ここに明確なのは専制政権が自由と民主主義の本質を理解していないということである。また確信できるのは、中国大陸が民主化されない限り、中国が真に台湾を理解することができず、台湾武力侵略の意図も放棄できず、急速な軍拡も止められず、アジア太平洋地域に真の安定と平和をもたらすことはできないという点である。
二十一世紀の今日、中国当局は自由民主と人権がすでに世界普遍的な価値観となっており、ただちに抜本的な政治改革を実施し、大陸人民が本来享有しているべき言論の自由と政治の民主的権利を人民に返し、両岸問題に平和的解決の機会を与え、アジア太平洋地域に真の安定をもたらさなければならないことを認識すべきである。中国大陸が早い時期に民主化し、両岸の永久平和が早期に来ることを、台湾は中国大陸人民に高度の期待を寄せるものである。
四、平和と発展はわが国の政策の主軸である
台湾は国際社会において責任を有する国家であり、中華民国政府もまた責任を負う政府である。陳水扁総統は就任においてすでに任期中は「平和と発展」を両岸政策の主軸とすることを公約しており、さらに「和解するも尻込みせず、毅然とするも対立せず」と明示したが、これがわが国政府の両岸関係対策における基本的立場である。中国が台湾海峡に不安をもたらそうと意図していることに対し、わが政府は国家利益の護持を対策における原則とし、かつ長期的政策として、国際社会の一員として平和、自由、民主ならびに人権の護持を含む責任を果たすものである。
今日、中国は反分裂法の立法化を推進したが、それはすでに両岸関係の安定を破壊するものであり、わが方は国家の安全保障を確保するため、また改めて両岸相互連動の雰囲気を調整するため、それぞれに必要な措置をとり、中国の愚かな行為が両岸関係に及ぼす不利益な影響を最小限に抑える。現在最も重要なのは、中国は台湾国民に対し誤った措置をとったことに深く懺悔しなければならないということであり、われわれは中国当局が何を言うかということよりも、何をするかを見守る。
【行政院大陸委員会 3月14日】
●「反国家分裂法」要旨(参考)
1、台湾独立勢力による国家分裂に反対し、祖国の平和統一を促進するため憲法に基づき本法を制定する。
2、世界に中国は一つであり、国家の主権と領土保全の維持は、台湾同胞を含めた全中国人民の共同の義務である。
3、台湾問題の解決と祖国統一の実現は中国の国内問題であり、いかなる外国勢力の干渉も受けない。
4、祖国統一の完成という大業は、台湾同胞も含めた全中国人民の神聖な職責である。
5、「一つの中国」の原則堅持は、国家の平和統一実現の基礎である。最大の誠意と最大の努力で平和統一を実現する。平和統一後、台湾は大陸の制度とは異なる高度の自治を実現できる。
6、国家は、海峡両岸人員の往来、両岸経済交流および三通(直接通商、通航、通信)等の推進を通し、台湾海峡地域の平和と安定を守り、両岸関係を発展させる。
7、両岸の対等な協議と交渉を通して、平和統一を実現する。
8、台湾独立勢力がいかなる名目やいかなる方法であっても、台湾を中国から分裂させる事実を作り出した場合、または分裂につながる重大な事変を起こした場合、または平和統一の可能性が完全に喪失した場合、国家は非平和的方式およびその他の必要な措置をとり、国家主権と領土を守る必要がある。非平和的方式などをとる場合、国務院と中央軍事委員会は実施を決定、組織し、全国人民代表大会に速やかに報告する。
9、非平和的方式などの際、国家は最大限、台湾住民や台湾在住外国人の生命と財産、安全等を守る。中国在住の台湾同胞の権益を保護する。
10、本法は公布の日から実施する。
(完)
中国の覇権主義に必要な日米の対応 台湾のみならず東アジア全体への脅威
●ナチスに似る中国の手法
陳唐山・外交部長は三月十五日、各国の駐台使節を外交部に招き、中国の「反国家分裂法」制定に対する政府の立場を説明した。以下はその概略である。
中国が「反国家分裂法」を制定し、台湾海峡問題を「非平和的方式」で解決しようとしていることは、まさに侵略行為そのものであり、わが国はこの行為の法制化を厳重に非難するものである。国際社会は、中国のこうした拡張主義の本質を正確に見極めるべきであり、台湾は一貫して平和を主張しており、あくまでも中国との平和共存を願っており、決して相手を挑発するものではなく、台湾二千三百万国民が平和を愛しており、台湾が平和愛好国であることを世界が理解するよう呼びかける。
さらに国際社会が知らなければならないのは、「反国家分裂法」が台湾だけに向けられた限定的なものではないということである。それは第二次世界大戦の歴史を見れば理解できよう。国際社会がナチスのポーランド侵攻に手をこまねいていたから、その結果として世界は全面的な大戦争に突入してしまったのだ。
また、中国は米国の南北戦争の時の「連邦離脱禁止法」を例にとって「反国家分裂法」を説明しようとしているが、それはまったくのこじつけでしかない。当時のリンカーン大統領は「団結は揺るぎなく、分裂は失敗する」と述べたが、台湾はこれを引用したい。台湾は中国の脅威に対し、党派を分かたず一致団結し、外からの圧力を跳ね返す。
《台北『中国時報』3月16日》
●日本も台湾関係法を
許世楷・駐日代表は「反国家分裂法」についてメディアのインタビューに応じ、次のように語った。
問‥日本政府はこれまでになく強い口調で「反国家分裂法」に反対を表明しているが、この背景は何か。
答‥中国の日本に対する脅威は以前から存在していたが、それが近年明確になってきたからだ。日本は天然ガス開発問題で自国の国家利益が侵蝕されていることを知り、潜水艦領海侵入事件で安全保障が脅威にさらされていることを感じ取り、中国大使の王毅が昨年就任早々に小泉首相の靖国神社参拝を非難するなど高圧的な態度を示したことで、日本国民は中国の覇権的な本質を知るところとなった。
かつて日本の政治家は、敢えて中国非難はしなかったが、現在は異なる。それは日本国民の普遍的な対中嫌悪感の影響によるものであり、反分裂法は台湾に対する脅威だけではなく、台湾海峡に万一衝突が発生したなら、日本も被害を受けることを日本政府も国民も知っており、政界の多くは台湾の安全がすなわち日本の安全であることをすでに認識している。日本政府の「台湾海峡問題において平和的な方法以外のいかなる手段による解決にも反対する」との言葉は、日本が反分裂法に反対していることを示すものであり、日本の中国に対する忍耐もすでに限界に達していることが分かろう。
問‥中国の軍事拡張について、日米両国の反応をどう見るか。
答‥これまで日米両国は、中国の軍事拡張の目的は一貫して台湾に対してだけと見なしていた。ところが最近、中国の軍事拡張の本質が、台湾に対するものだけではなく、最大の目的は覇権の追求と強大な海洋国家への発展にあり、台湾問題は単なる口実にすぎないということが明確になってきた。日米はこれにより中国に対し、徐々に強い姿勢を示すようになってきたのだ。
問‥現在の日台関係はこれまでに比べ最良のものだろうか。
答‥これまでも日本の立場は台湾と非常に近いものであった。ただ言おうとしなかっただけだ。同時に日本は中国との関係を非常に重視している。このため故意に台湾を軽視していたのだ。現在の日本の立場は以前よりも明白であり、中国の日本に対する脅威と反分裂法の制定が、日台関係をさらによい方向に向かわしめていることは事実だ。
アジアの中で唯一日本のみが中国に対抗し得る国だ。中国は今なお古代の「朝貢関係」による国際観念を持っており、近代国家の四海平等の意識を持ち合わせていない。小国はすべて中国の下にあると見なし、命令方式による外交を進めている。小泉首相に、靖国神社に参拝するなと言っているのもこのためである。アジア諸国は怒りを感じても敢えて口には出せず、いずれも日本を見ている。日本がもう少し強気に出れば、他のアジア諸国にとってはカンフル剤の役目を果たすことになる。将来中国が覇権国家になるか、それとも四海平等の国際国家になるかは、日本の姿勢が非常に重要なカギとなっているのだ。
問‥最も理想的な日台関係とはどのようなものか。
答‥最も理想的なものは、もちろん国交回復だ。これは長期的な努力目標であり、少なくとも日本は米国と同じような「台湾関係法」を制定すべきだ。これは不可能なことではなく、日本が国際情勢の変化を理解すれば、日台関係は断交以前の状態を回復できよう。現在すでに「台湾関係法」が論じられない時代ではなく、どのように法制化するかの時代になっているのだ。
《台北『自由時報』3月14日》
●日米の役割に期待
外交部は三月十五日、立法院に施政報告を送付したが、「台湾問題」に対する日米の役割について次の文言を盛り込み、問題の国際化と両国への期待感を示した。
○ ○ ○
日本政府は昨年十二月十日に発表した、新たな「防衛計画の大綱」の中で「中国軍の近代化や海上活動範囲の拡大などに注目が必要」と、初めて中国軍の動向を警戒する必要性を示した。米上院情報特別委員会も今年二月二十六日に「米国の安全保障に対する脅威」をテーマに聴聞会を開き、この中でゴスCIA長官は中国の軍事力近代化と軍拡路線に言及し「台湾海峡の軍事バランスが崩れたなら、当該地域における米国の軍事力に対する脅威になる」と報告した。さらに日米両国は二月十九日「日米安全保障協議委員会」が共同声明を発表し、特に「台湾海峡問題の平和的解決を促す」と明記し、台湾海峡の平和確保を共通利益と見なし「共通戦略目標」として初めて安全保障関連の会議において「台湾問題」に言及した。これらは両国が高度に台湾海峡の安全を重視していることを示すものである。
《台北『中央社』3月15日》
ニュース
呂副総統が南米友好国を訪問 往復路で米国二州へ立ち寄り
呂秀蓮副総統は三月十二日、南米友好国エルサルバドルとグアテマラ訪問のため桃園国際空港から出発した。今回の外遊は、中南米友好国との友好強化を目的とし、往路と復路でそれぞれ米国テキサス州とマイアミ州に立ち寄り、三月二十四日に帰国の日程となっている。
十二日夜(以下現地時間)、呂副総統と百五十名の代表団一行はテキサス州ヒューストン空港に到着した。米国在台協会(AIT)関係者および李大維・駐米代表らの出迎えを受け、ホテル到着後はエッケル・テキサス州ハリス郡知事およびジャクソン・リー連邦州議員らと会見した。ホテル前の道路には四百人以上の台湾僑胞が集まり「呂副総統がんばれ」と叫んで大歓迎し、呂副総統も握手で応えた。
また、呂秀蓮副総統は十四日午前、米国国家航空宇宙局(NASA)に招待され同施設を見学。台湾の高官では初めての米国政府機関への訪問となった。訪問を終え同日午後、今回の公式訪問先であるエルサルバドルに向かった。
同国では、軍による歓迎儀式が厳かに挙行されるなか、カリクス外務次官らが空港に出迎えた。エルサルバドルでは現在台湾と共同で同国に「台湾園区」建設を計画しており、三月十五日、呂副総統はアナ・ビルマ・デ・エスコバル同国副大統領とその建設予定地を視察し「台湾園区計画シンポジウム」「台湾とエルサルバドル投資フォーラム」を共同主催した。エスコバル副大統領は呂副総統と同様、同国初の女性副大統 領であり、十五日昼には台湾とエルサルバドル双方の女性代表を招いて女性問題などに関する討論会をおこなった。また同日、呂副総統はホセ・マティアス・デルガード博士記念大学を訪れ、同校から名誉博士の称号を贈られた。
三月十六日、呂副総統はエルサルバドル国会に招かれ講演し、中国が十四日に通過した「反国家分裂法」に触れ「第二次大戦終結以来、中国は台湾を常に威嚇し続けてきたが、われわれは今後もその脅威に屈さず努力し続けていく」と強調し、同国国会議員から大きな拍手と歓迎の声が上がった。また同日夜エリアス・アントニオ・サカ大統領と会見し「台湾の自立した立場を尊重する。台湾は国際的に承認されるべきだ」との激励を受けた。
呂副総統は今後、グアテマラでベルシェ大統領ら政府要人と会見し、マイアミ経由で帰国する予定だ。
《台北『中央社』3月17日ほか》
新聞局長に姚文智氏が就任 政策伝達の橋梁役として意欲
行政院は三月十四日、今年末の台中市長選挙立候補のため離職する林佳龍・新聞局長の引継ぎ式をおこない、後任には姚文智氏が正式に就任した。
新しく新聞局長に就任した姚文智氏は挨拶のなかで「新聞局は施政伝達の橋梁としての役目があり、業務のペースは速く任務は厳しいが、謹んでこの大役をお受けする。今後は引き続き予算を集め、創意工夫の精神を発揮し、林前局長が築いた基礎のもとに努力したい」と述べた。
姚文智氏は記者出身で、台湾テレビ文化公司総経理から新聞局長に転任した。就任に先立ち三月八日、姚氏は林佳龍氏と会見し、林氏が推進したメディア環境改革に強い支持を示し「今後は『テレビチャンネルの統廃合』『ラジオ・テレビ資源の公共化』などの政策を引き続き推進する。コンテンツ産業の面では、映画とテレビ産業振興に重点を置き、現在年間二十本に留まっている国内映画の制作数を、年間百本まで増加させる」と意欲をみせた。
《台北『中央社』3月14日》
米下院が中国を厳しく非難 台湾の将来は台湾人が決定
米下院は三月十六日、中国全人代が一方的に「反国家分裂法」を採択したことを厳しく非難し、政府に適切な措置をとるよう求める決議を、賛成四百二十四票、反対四票という圧倒的多数で採決した。
同議案は「反分裂法は台湾海峡の緊張を高め、両岸対話を阻害し、さらに中国が沿海部に配備した大量のミサイルおよび軍拡は西太平洋地域の平和と安定に脅威を構成する」とし、決議事項は以下の四項目である。
(一)中国の「反国家分裂法」は台湾への武力使用を合法化し、地域の現状を変えようとするもので、米国は重大な関心を持つ。
(二)米国大統領は中国に重大な関心を持つことを示すべきである。
(三)米国政府は台湾の将来について、平和的かつ台湾国民の同意によって解決されるべきことを、重ねて表明しなければならない。
(四)米国政府は引き続き中台対話を支援すべきである。
《台北『中国時報』3月17日》
教育部長が「台湾主体」教育を堅持 本土化教育の必要性を再度強調
杜正勝・教育部長は三月十二日、同氏が推進する「教育の本土化」が批判や争議を呼んでいることに対し「自らの理念に基づき、すべきことをするだけだ」と述べ、本土化教育実施への考えは変わらないことを強調した。
杜教育部長はこの日メディアの取材に応え「われわれが現在、『不正常な国』に暮らしていることは紛れもない事実であり、外からの批判は免れない。しかし本土化教育は生活に根づいたきわめて自然なことがらなのであり、いつかはみんながこの考えを支持するときが来るはずだ」と語った。
また「教育の本土化問題が陳水扁総統や、就任時に台湾正名(台湾の名を正す)運動推進の緩和を発表した謝長廷・行政院長からの支持を得られるか」との問いには、「個人的に会見したなかでは、両氏の台湾主体教育に対する支持に変化はなかった」と述べた。
《台北『自由時報』3月12日》
謝行政院長が治水の加速化指示 八百億元投入し八年間で完了を
謝長廷・行政院長は三月十四日、就任後初めて経済関係省庁との会議である「財経会報」を召集し、八年で八百億元(約二千四百億円)を投入する治水計画を承認した。
経済部によれば、現在の治水政策では各地方自治体に対し毎年十億元(約三十億円)の助成をおこなっているが、治水整備がすべて完了するのには八十年以上かかる。このため同部では八年間で完了する治水政策を提示した。それによれば、まず三年で緊急を要し優先的に処理すべき県(市)の二十二河川、五十一地域の排水システムおよび海岸堤防五十一キロを対象とした総合治水整備計画を推進し、その完了後引き続きその他の治水政策を進めるもので、八百億元の予算投入を必要とする。
謝院長は「国民生活の安定のためには、治水政策は急を要する。高速鉄道の建設も一段落しており、公共投資による就業機会の創出は今後も必要だ」とこれに同意した。
《台北『青年日報』3月15日》
台北PC展、ゲームショウが閉幕 華やかなブースで今年も盛況
二〇〇五年の台北国際ゲームショウとPCマルチメディア展が、二月二十四日~二十八日まで、台北の世界貿易センターで開催され、合計百六十社のゲームメーカーおよび関連業者が参加した。主催者の台北市電脳商業同業公会(TCA)によれば、今年はあいにくの雨天で出足が遅かったものの、二つの展示会を合わせた来場者数は延べ三十六万人と好調だった。
ゲームショウでは今年もPCオンラインゲームの展示が中心で、華やかなステージイベントなども行われ各ブースには多くのゲームファンが詰め掛けた。今年はメーカー側にとっても収穫が多く、初参加のSCEH(ソニーコンピュータエンタテインメント香港)は「太鼓の達人」や「グランツーリスモ4」など対戦型ゲームを出展し、売上が一千万元(約三千万円)を超えた。
また、マルチメディア展も昨年に比べ一~二割の業績アップと堅調な伸びを見せ、HP(ヒューレットパッカード)がノートパソコン、デスクトップパソコン合わせて一千台を販売するなど盛況となった。
●海外では台湾ブランドが注目
一方、台湾ブランドの東南アジア市場進出も盛んだ。三月十三日にシンガポールで開催されたPC展では、エイサーなど台湾メーカーのブースに顧客が殺到した。
《台北『中央社』3月13日ほか》
台日演劇人が共同でテント公演 「台湾ファウスト」で自我を問う
台日の演劇人が台北市の同安街に共同で手製のテント劇場を造り、三月二十三~二十八日、「台湾ファウスト」台北公演をおこなう。これは日本の演劇人・桜井大造さんが呼びかけたもので、総勢二十数人のキャスト、スタッフの協力によって準備が進められてきた。
近代西洋の夜明け、ゲーテの著書「ファウスト」に描かれた人間像は、資本主義世界を生きる人間たちの範となっている。今回の「台湾ファウスト」とは、国家テロリズムのなかで自由と民主を求めた人々が描かれた物語であり、それは同時に現代医薬界で開発中の「頭脳活性化作用のある新薬」の名称でもある。自我拡大の近代人間像ファウストにちなみ、近代台湾が受けた歴史の影響と世界的資本主義のなかでの位置付けを問う舞台だという。
一九九九年、桜井さんは劇団「野戦の月」を率いて台湾で初舞台を踏む。その後台湾の演劇界とつながりができ、今回二百人規模のテント劇場を建設して台湾公演をおこなうことを決めた。桜井さんは「内容は深刻だがあくまで喜劇。笑いを三十回とれなければ謝ります」と語った。
《台北『中国時報』3月7日》
東呉国際マラソンで日本選手が優勝 台日交流の絆スポーツで深める
三月五日から開催された二〇〇五年東呉国際ウルトラマラソンの二十四時間フルマラソン競技で、日本の関家良一さんが優勝した。関家さんは各国でウルトラマラソンに参加している国際的ランナー。二百六十四・四一キロを完走した。東吾マラソンでの優勝は〇二年に続き二回目だ。また女子部門でも、四十三歳の主婦・藤田直美さんが二百二十三・七六キロを走り優勝し、男女ともに日本選手が優勝を飾った。
台湾の魅力追い続ける九十二歳 ささやかな観光促進の担い手に
屏東で育った日本人が集まり、毎年団体で台湾を訪れている「日本屏東会」が今年三十九回目の訪問をおこない、三月三日、屏東県庁などを訪問し歓迎を受けた。
会員の一人で九十二歳の岩崎正夫さんは、屏東で生まれ、台北で師範学校を卒業後、屏東の小学校で教鞭を取った。バレー部顧問も務め、「屏東バレーの父」と異名をとったという。二十八歳のとき日本へ帰国したが、山と緑の美しい第二の故郷屏東への思いは強く、これまで十五回以上も屏東を訪れた。当初千八百人いた屏東会の仲間も年々減り、去年の旅行参加者は二十二名だったたため「次世代の日本人にも屏東の魅力を伝えたい」と、今年は大学生になる孫を連れて台湾を訪問。七十余年前に過した屏東の町を歩いた。一人でも多くの台湾ファンを増やしたいというのが岩崎さんの願いだ。
《台北『中国時報』3月4日》
二〇〇五年観光情報
観光ホテルの業績回復へ
国内の観光ホテルの業績が伸びている。五つ星クラスの観光ホテルでは今年三月以降、連日満室の状態となっており、売上高は新型肺炎(SARS)が発生する前の一昨年と比べても、二~三割ほど高くなっている。ホテル関係者によると、宿泊客の多くは金融や情報産業の関係者で、電子部品などの買い付けやシンポジウムへの出席のため台湾を訪れる外国人が多いという。
●日本人観光客順調に回復
こうしたビジネスマンに加え、観光客も徐々に増えている。今年一月の海外からの観光客は約二十四万四千人で、このうち日本人は約八万九千人、前年同月より六五%の大幅増となった。この数字は一昨年とほぼ同じレベルで、観光が順調に回復していることを示している。
《台北『経済日報』3月10日》
「台湾国際蘭展」が開催中
蘭の花はパソコンと並んで台湾が世界に誇る輸出品目の一つである。とくに胡蝶蘭は技術の高さと生産力で名を知られており、日本へも年間約三百万株の苗が輸出されている。台湾をはじめ世界トップクラスの蘭の花を展示した「台湾国際蘭展」が三月二十六日~四月十日まで、台南県で開催中だ。
九回目を迎えた今年は日本、米国、オランダ、韓国、フランス、シンガポールなど世界十数カ国から出展されており、会場はさまざまな蘭で埋め尽くされている。同展は業者間の情報交換や商談の場ともなっており、昨年台湾は六億元(約十八億円)を受注し、国際市場での地位を高めた。
会場となっている「蘭花生物科技園区」は、品種改良などの研究開発から育苗、生産、販売、管理まで、蘭の花に関わる産業の集積を目指し、台南県後壁郷に昨年設立された。蘇煥智・台南県長は記者会見で「今後はこの地で毎年開催し、台湾の展示会が蘭の世界三大展の一つになるよう発展させたい」と挨拶した。
会場では、花の種類別、寄せ植え、ディスプレイの各種コンテストのほか、国際シンポジウムの開催や蘭の手工芸品の展示など、さまざまなイベントが行われ、業者はもちろん花の愛好者や親子連れなど一般の参観者も大勢訪れ賑わった。
《台北『民生報』3月11日ほか》
職場の英語、ますます重視へ 英語検定試験の受験者数大幅増
台湾で職場での英語能力を重視する傾向が強まっている。台湾を代表するパソコンメーカー「宏碁電脳」(エイサー)は今年イタリア人の社長を迎え、課長以上は会議もメールもすべて英語で行うことにした。また別のハイテク企業ではエンジニアの英語力不足から三億元(約九億円)の受注に失敗したとして、社員全員に英語の特訓命令が下された。
「一〇四人力銀行」によると、同社のデータバンクに登録されている数十万件の求人広告のうち、半数以上が一定レベル以上の英語能力を条件に挙げているという。「以前のベターという表現から、現在は必須となっている」と担当者は話す。
英語能力重視の傾向は各種の英語検定試験の受験者数にも現われている。「TOEIC」の台湾窓口機関によると、毎月二割以上のペースで受験者が増えており、今年の受験者総数は昨年の六万人を大幅に上回る十万人以上と見込まれている。
●韓国語、日本語も人気上昇中
一方、ドラマの人気でこのところブームになっている韓国語、そして日本語への学習意欲も大きく伸びている。ネット上で各種の言語教室や教育講座を紹介している「一〇四教育資訊網」によると、今年に入ってから韓国語を学習したいという人が前年より二三%増えており、日本語は同三二%増えている。「一〇四人力銀行」に登録されている約二十四万件の求人広告に対し、五三%が外国語能力を条件に挙げており、このうち八%が日本語能力となっている。産業別に見ると、電子、半導体、貿易業などで日本語能力を求めているケースが多く、全体の四割に達している。
《台北『民生報』3月1日》
歴史の変遷から見た台湾の姓
姓の種類は約千余り、五人に一人が陳か林
台湾では俗に「陳と林が天下を二分する」と言われるほど、陳と林の姓が多いという感覚がある。では実際に、両者の割合がどれぐらいあるかご存知だろうか。
●台湾は五人に一人が陳か林
国史館台湾文献館の資料によると台湾で多い姓のベスト10は、陳、林、黄、張、李、王、呉、劉、蔡、楊の順となっており、陳が全体の約一一%、林が約八%で、この二つの姓で全体の五分の一を占めている。「天下を二分する」というのは誇張だとしても、陳と林の姓が多いことは明らかだ。台湾では九人に一人が陳、十一人に一人が林姓である計算だ。
●中国の上位は李、王、張
では、台湾の姓はどこから来たのだろうか。台湾の家系史に詳しい寥慶六氏は「台湾人の祖先の多くは閩南地方からの移民で、中国福建省では林が最も多く、第二位が陳で、広東省も陳が最も多い」と指摘する。
ここで中国に多い姓のベスト10を見てみよう。トップは李で、次いで王、張、劉、陳、楊、趙、黄、周、呉の順となっている。上位の李、王、張はそれぞれ全体の七%以上を占めている。台湾と比較すると順番が多少入れ替わるが、八割が一致している。
一般に「漢民族は姓の種類が多い」というイメージがあるが、専門家によると「西洋人こそ姓が多様で、フィンランドには約五十万もの姓がある」という。ちなみに、明治維新以降、自由に姓を名乗れるようになった日本は約十六万種類と言われている。
中国はもともと姓がそれほど多くなく、宋の時代に主な姓を記述した「百家姓」を見ても五百八種類しかない。中国は現在十三億余りの人口のうち、上位百種類だけで全体の八七%を網羅している。一方、台湾は上位十種類だけで全体の半数以上、五二%を占めており、上位百種類に広げると、九六%が網羅される格好だ。
●台湾における姓の歴史
台湾各姓淵源研究学会の理事で雑誌『台湾源流』の発行人でもある林瑤棋氏によると、台湾は日本統治時代には百~二百種類しか姓がなかったが、戦後外省人が渡来して千七百種類に増え、その後五百種ほど減って現在約千種類余りだという。上位百種類で全体の九六%を占めていることを考えると、残りの〇・四%に千種類近い珍しい姓のあることがわかる。
こうした姓には、主に清の時代に台湾へ移民した閩南人、戦後の外省人、日本統治時代に姓を登記する際に書き間違ったものなど、三つのケースが考えられるという。たとえば清の雍正帝時代、孔子の本名である「孔丘」と同じ字を使うことを避けるため「丘」を「邱」に改めさせた例がある。また「鍾」を「鐘」と書き間違えた例は最も知られており、台湾ではその両方が上位百種類にランクされているが、中国に「鐘」の姓は一つもない。ちなみに中国の「欧陽」は台湾では「欧」として普及している。
このほか、先住民の姓に特殊なものが多いことも指摘されている。清の時代、漢化政策の一つとして、政府はまず平地に住む先住民・平甫族を対象に漢姓を与えた。そこにはいくつか特徴があり、たとえば台中のバサイ族と屏東のマカド族には「潘」が、宜蘭のカバラン族には宣教師・馬偕(マカイ)氏の姓をとった「偕」、台南のシラヤ族には「哀」の姓が多い。戦後は一九四六年に政府が強制的に漢姓を名乗らせ、なかには役人からいい加減に姓を与えられたため、親子兄弟間で姓が異なるケースも見られたという。林瑤棋氏の調査によると、アミ族には豊、剛が多く、タイヤル族は秋、パイワン族は勤、サイシャット族は日、風、楓、獅があり、そのほかに愛、電、筆、塩、停、増などの珍しい姓もあった。南投県信義郷の地利村では、ブヌン族の住民全員が「全」の姓を名乗っているという。
政府は一九九五年「姓名条例修正案」を可決し、先住民が申請すれば元の姓を回復できる措置を講じているが、四十四万人いる先住民のうち、これまで改姓を申請したのはおよそ八百人に留まっている。
《台北『聯合報』2月21日》
台湾資料センター催し
●台湾映画研究会(毎月一回土曜日に開催)
日 時 4月9日(土)午後5時~
●第58回新日台交流の会(二カ月に一回土曜日に開催)
日 時 4月23日(土)午後3時~
テーマ 台湾情勢について
※「台湾映画研究会」も「新日台交流の会」も参加無料。但し電話で事前にお申込みください。
詳細については左記までお問合せください
会場・連絡先 台湾資料センター(東京都港区三田5-18-12
TEL 03(3444)8724
交 通 地下鉄南北線/三田線「 白金高輪」下車2番出口から徒歩3分
春夏秋冬
やはり時代の流れであろうか。いつかこの日が来ると思っていたが、ついに来た。すでにお知らせしたように、読者の方々に紙面をもって台湾情報をお送りするのは本号が最後となる。といっても『台湾週報』がなくなるのではない。情報の提供がウェブサイトに移行するのだ。毎週16頁立ての形としての『台湾週報』がなくなるのはこの上なく残念だが、ウェブサイトに移行すれば、ほとんどリアルタイムで情報を提供することができる。IT時代の今日、これが通常なのかもしれない。このスピード化に、皆様のご了解をお願いするとともに、期待もお寄せいただきたい。
思えば本誌が『中華週報』として発刊されたのは1959年7月のことで、発行母体は東京都港区麻布の「中華民国駐日大使館新聞処」であった。この翌年、奇しき一致か在日民間からは『台湾青年』が創刊されている。
この時代、毎年国連では「中国」問題が論議され、マスコミも大きく扱い、その論調は徐々に偏向の度合いを強めていた。この世相を見れば、『中華週報』発行の主旨はお分かりのことと思う。偏向し始めた日本のマスコミに代わり、正確な中華民国(台湾)の動向を日本の方々に伝えるためであった。そして1972年、「日華断交」の日を迎え、日本の新聞からは「中華民国」の名は消え、台湾そのものの情報が絶えた。皮肉なことに、小なりとはいえ『中華週報』の重要性が増したのだ。
だが時代は変わり、日本のマスコミは教条的な「中国礼賛」から脱し、しだいに現実を見据え、台湾が存在し躍動していることにも目を向け始めた。だからといって『中華週報』の役割が後退したわけではない。台湾も変化していたのだ。いわゆる「静かな革命」による民主化の進展である。この流れの中に『中華週報』は2001年5月17日の第2001号から『台北週報』に改名し、さらに2004年の最初の号となる第2126号から、本誌の性格をより明確にするため『台湾週報』に再改名した。この2度にわたる改名自体が、読者の皆様に台湾の動向を如実に伝えることになったのではないかと思っている。
そして各家庭にインターネットが普及し、IT時代となった今日、本誌の様相は一変する。情報のスピード化において、本誌の重要性はさらに増すものと自負している。これまでのご愛読に深く感謝するとともに、これからもいっそう本誌のウェブサイトに目を通していただき、台湾への理解を深めていただくよう切にお願いするしだいである。
(K)