陳水扁総統が彭佳嶼を視察
陳水扁総統は8月10日、わが国の領海基線であり最北端の有人島である彭佳嶼を視察し、現地に駐在する職員をねぎらうとともに、国家主権および北方海域における秩序と安全の保護に対する決意を、改めて宣言した。
陳総統は彭佳嶼に到着後、海巡署北巡局からブリーフィングを受け、同島に建てられた記念碑「海疆屏障」(領海の守り)の除幕式をおこなった。陳総統はまた、現地での挨拶のなかで、海巡署の新書『台湾海洋』を推薦し、その後レーダー管制塔に赴き、オペレーターを慰問し、同施設の作業状況を視察した。
陳総統は挨拶のなかで、釣魚台問題に触れ「政府の立場と姿勢は非常に明確で揺ぎなく、これまで変更したことはない。釣魚台諸島の主権は当然われわれに属しており、台湾に属している。この一点は疑う余地のないことだ。しかし台日間の漁業紛争と漁民の権利の問題は、釣魚台の主権問題とは切り離して処理すべきである。これは過去の政府がすでに決定した政策であると同時に、漁民同胞の一致した期待と訴えである。過去にはこのように処理されてきたのであり、政府は今後もこれと同様の原則を堅持し、漁民の同胞のために最大の権益を勝ち取る決意である」と述べた。
陳総統はまた「台湾は自由、民主と平和を尊ぶ国として、協議と交渉を通し、積極的に国際的な争議を処理する責任と義務があり、一方的にはいかなる対抗的行動をとったりはしない。台日間の漁業協議は、すでに新たな軌道に乗り、今後漁業ワーキンググループを通して、互いの相互連動と意思疎通はさらに強化されるだろう。これは台日双方の長期にわたり存在している意見の相違や争議の解決に役立つものと信じている」と語った。
以下は陳総統の挨拶全文である。
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本日の訪問は、先月末の東沙島に続き、離島の海巡署駐在機関への訪問としてはこれが二回目となります。本日の視察では「北方三島」と呼ばれる花瓶嶼と棉花嶼および彭佳嶼を訪問しましたが、このうち彭佳嶼はわが国の領海基線の最北端にあり、有人島として最北端に位置しています。近隣の釣魚台とはちょうど対角をなしており、東海(日本名:東シナ海)の大陸棚を擁しています。また近海域は世界四大漁場の一つとされ、その経済的、戦略的位置付けはきわめて重要であります。本日、私が彭佳嶼を訪れた一つの目的は、われわれ海巡署の同胞をみずから激励するためです。数日前に発生した台風が彭佳嶼付近の海域を襲い、暴風雨で皆さんが非常に大変な思いをされたことと思います。また今回の視察でさらに重要なのは「海疆屏障」の碑を立てることで、この除幕式をおこない、わが国領土の主権と海域境界線を護る意思と決意を具体的に示すことです。
本日私は彭佳嶼を訪れましたが、一部の人はこれを通して釣魚台の問題に目を向けるでしょう。釣魚台の問題に対し、政府の立場と姿勢は非常に明確で揺ぎなく、これまで変更したことはありません。釣魚台列島の領土主権は当然われわれに属しており、台湾に属しています。この一点は疑う余地はありません。しかし、台日間の漁業紛争と漁民の権利の問題は、釣魚台の主権問題とは切り離して処理すべきです。これは過去の政府がすでに決定した政策であり、漁民同胞の一致した期待と訴えです。過去にはこのように処理されてきたのであり、政府は今後もこれと同様の原則を堅持し、漁民の同胞のために最大の権益を勝ち取る決意であります。
台日間に長期にわたり存在する漁業争議を解決するため、台日双方は7月29日、日本の東京で「台日第15回漁業協議」を行ないました。協議は非常に複雑かつ敏感な議題、例えば排他的経済水域のオーバーラップの問題をはじめ、漁業操業の範囲、種類、数量など海洋資源保護に関する課題などに及んだため、一度の協議で双方が満足できるような大きな進展を見ることは非常に困難でしたが、今後も協議を続けていきさえすれば、必ず進展を遂げることができると思っています。今回の漁業協議は、これまで14回にわたり行なわれた協議と比べると、明らかに大きな進展がありました。すなわち来年3月に第16回漁業協議をおこなうことを明確に決定し、さらに「台日漁業ワーキンググループ」を設立し、定期的な協議体制を確立することで合意し、また三カ月に一回協議をおこない、緊急事故や救助の処理に具体的な協力を提供することが決まりました。
台湾は自由と民主、平和を尊ぶ国として、国際法の規則と慣例に基づき、協議と交渉を通して国際紛争を積極的に処理する責任と義務があり、一方的に対抗的な行動をとったりはしません。台日間の漁業協議はすでに新たな軌道に乗り、漁業に関するワーキンググループの設立を通して、今後さらに相互の連動と意思疎通が強化されるものと期待しています。そしてこのことは、台日双方に長期にわたり存在している意見の相違や争議を解決するのに必ず役立つと信じています。
2000年2月、海巡署は軍の彭佳嶼駐屯部隊に代わり、領海の主権の保護と海域の安全業務を引継いで行なっています。巡視能力を高め中国の漁船および公務船の越境行為を効果的に阻止するため、海巡署はすでに彭佳嶼に海巡署の前進基地を設置することも計画しており、このほかにも港と埠頭の改善工事を進めています。これら関連の建設が推進され、海域の法律執行範囲と巡視の深度を拡大することにより、漁民の権益と海洋資源が有効に保障されるものと考えています。
今回の視察において、私は再度、国家の主権を護り、北方海域の秩序の保護と安全に対する決意を宣言しました。この機会を借りて皆さんに一冊の本を紹介したいと思います。海巡署が心を込めて編纂したもので『台湾海洋』という実によい本です。ここには、政府が推進してきた海洋に関する実務や海洋文化の振興、国民の海洋に対する認識の深まりが最もよく記されています。
この本は非常にわかりやすく書かれており、皆さんはこの本を通して台湾周辺海域の状況をひと目で理解できると思います。そこには、さまざまな群島や列島、珊瑚礁に関する歴史や景観、風俗習慣や人びとの暮らし、地理的な特色が紹介されており、それらは一層この本に価値と魅力を添えています。これらの群島や列島、珊瑚礁はわが国の神聖な領土の一部であるだけでなく、皆さんが身の安全を寄せる家でもあります。国民の皆さんがどうかこの本を読み、国土に対する強い帰属感とアイデンティティーを養い、台湾が21世紀において海洋国家としてどのように位置付けられ、発展すべきであるか、改めてその戦略を見出していただけけることを期待しています。
最後になりましたが、北方の島、彭佳嶼に勤務しておられるすべての皆さんに、改めて心からの敬意と評価を申し上げたいと思います。そして、とくに海巡署のすべての職員の方々に、かねてより海域の法律執行の推進と海事の業務、海洋の実務に対し払われている努力と心労に感謝と慰労を申し上げ、在席の先輩方、同僚の皆さん、メディアの方々の健康を祝して私の挨拶と致します。
【総統府 2005年8月10日】