台日漁業協議調印から一周年、馬英九総統が成果を強調
馬英九総統は4月12日、宜蘭県蘇澳区漁会(漁業組合)が主催する『台日漁業協議』調印一周年を記念する会合に出席し、政府による漁民の権益保護についての成果を説明した。
このなかで馬総統は、「43年前、米国国務省が釣魚台列島(日本名:尖閣諸島)を日本に返還することを発表した。当時私は台北市北門にあった米国大使館に赴き抗議した。その後、米国に留学した際に、釣魚台列島問題のテーマに関心を持ち続け、博士論文の結論の中で解決方法を提案した」と述べた。
さらに、「台北市長に在任中の2005年、蘇澳地区の漁民が日本の沖ノ鳥島から130カイリ付近の海域で操業していたところ日本側に逮捕され、私のところへ陳情に訪れた。この事件をきっかけに、いかにして漁民の権益を勝ち取っていくかを深く考えた」と述べ、「6年前、総統に就任してまもなく遊漁船『聯合号』が日本の巡視船に衝突され、沈没する事件が発生した。当時、政府はただちに日本側に対して乗組員の釈放および謝罪と賠償を求め、日本政府もこれに同意し、漁民の正義を取り戻すことに成功した」と強調した。
「台日漁業協議」の調印に関して、馬総統は「総統就任前に台日間ではすでに15回もの漁業会談を開催していたが、双方のコンセンサスは得られていなかった。2年前(2012年)、日本政府が釣魚台列島の『国有化』を宣言したことにより、中国大陸と日本の間で深刻な争いとなり、当時中国大陸では20あまりの都市で反日運動が展開された。そこで同年8月15日、私は『東シナ海平和イニシアチブ』を提起し、『主権を分割することはできないが、資源は共有できる』の理念を強調し、関係各方面が平和的な方式で争議を解決することを期待した。この理念は当時の日本政府からの賛同も得られ、台日双方は漁業交渉を展開し、昨年(2013年)4月10日に『台日漁業協議』の調印に至ったのだった」と述べた。
さらに、「これは我が方の『主権は譲歩せず、漁業権は大きく進歩』の成果を達成したのみならず、私が40年前から始めた保釣運動(釣魚台奪還運動)の願いの一部が実現したものである」と指摘し、「『台日漁業協議』発効後、台湾の漁船の操業水域面積が約4,530平方キロメートル増加したほか、双方の『協議適用水域』の総面積は7万4,000平方キロメートルに達した。また、昨年台湾漁船が同協議水域で捕獲した黒マグロの漁獲量は前年比で約3.6倍増加し、売上高は約3倍成長した。そのうち蘇澳地区の黒マグロ漁獲量は台湾全体の黒マグロ漁獲量の4割を占めるようになった。また、台湾の漁民が同水域で日本側の取締りに遭った件数は協議発効前の18件から発効後は1件のみとなっている」と、その成果を強調した。
馬総統は「このように暫定的な『共同保護管理区』を設立する方法は、『国連海洋法条約』第74条にある近隣国との重複する排他的経済水域の境界画定に関する規範にも合致する」と指摘し、「台日双方が昨年5月に台日漁業委員会を設置し、第3回会議の中で双方の漁民が『分時分区』(時期と区域を分ける)の原則で操業することを定め、相互信頼メカニズムを強化されたことは、国際社会からも評価された」と述べ、米国国務省のダニエル・ラッセル国務次官補(東アジア太平洋担当)が最近の上院での証言で「『台日漁業協議』および『東シナ海平和イニシアチブ』は米国政府の核心的価値と一致するものであり、国際法を尊重したものであり、なおかつ平和的方法で争議を解決するものである」との見方を示したことを説明した。
また、馬総統は「釣魚台列島の主権問題は未解決である。但し、『台日漁業協議』の中にある『ディスクレイマー条項』(without prejudice)により、台日双方の釣魚台列島に対する主権の主張は変わらず維持され、なおかつ資源については共有、分配できる。特に我が国は『釣魚台列島は中華民国の領土であり、一寸たりとも譲らない』と主張しているが、この方式により、台日間は先に漁業権問題を話し合うことができるのであり、これによってお互いの争議の範囲を小さくし、平和共存の目標を達成することができ、さらには主権または石油資源などの関連テーマの解決に向けて進んでいくことができるのであり、将来の釣魚台列島の争議を解決させるための最も効果的な方法であるといえる」との認識を示した。
【総統府 2014年4月12日】
写真提供:中央社