蔡英文総統、新年の談話で「日常生活」を強調
蔡英文総統は1日午前、総統府にて「2021年新年の談話(=年頭所感に相当)」を発表した。蔡総統は、全国民が一致団結して感染症対策に取り組み、ウイルスに打ち勝った結果、台湾はいち早く、世界が待ち望む「日常生活」を取り戻すことができたと感謝した。蔡総統はまた、総統として最も重要な責務は人々が日常生活を送れるようにすることと、世界経済の回復の脈動とともに前進することだとした。複雑且つ変化に富む国際情勢については、「強靭性を維持し、数々の挑戦を克服していきたい」と述べた。談話の概要は以下のとおり。
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きょうは2021年の元日です。まずは皆さま、明けましておめでとうございます。
昨年のきょう、全世界がまだ新たな感染症が発生した可能性があることに注意を払っていなかったとき、我々は中国・武漢から到着した航空機の機内に乗り込み、乗客の検疫を開始しました。
当時はまだ疑念の声もありました。しかし、いま振り返ると、こうした先手の対策が正しい決定であったことが分かります。台湾において我々は、専門性を信じ、互いを信頼し、社会が一致団結することで、このウイルスに打ち勝つことができました。
この1年、台湾は全世界が切望しながらも、なかなか手が届かずにいた「日常生活」をいち早く取り戻すことができました。私はここで、感染症対策、支援・救済から景気振興に至るまで、少しの努力も惜しまずに参与し、協力してくれた台湾のすべての人々に改めて感謝申し上げます。
今年も経済方面では多くの課題が山積していますが、我々は全力で立ち向かいます。デジタル・トランスフォーメーション、「六大核心戦略産業」の発展に向けた配置、5G(第5世代移動通信システム)の導入、「前瞻基礎建設(=将来を見据えたインフラ建設)」に至るまで、予算が可決・成立すればすぐに取り掛かることになります。
総統として2021年、私にとって最も重要な責務は、人々が「日常生活」を送れるようにすること、そして世界経済の回復の脈動とともに前進することです。こうしたことが、我々が努力すべき急務となるでしょう。
新年の最初の日に、私は皆さまにいくつか重要なことをご報告します。
先週の水曜(12月23日)、皆様が40年間待ち望んだ在来線「南廻線」の全線電化が実現し、ダイヤ改正と共に正式に開業しました。台湾本島を一周する環状鉄道の最後の一区間が、ついに電化開業したのです。
そして本日より、最低賃金が再び引き上げられます。引き上げ幅はそれほど大きくありませんが、それでもなお得難い成果と言えます。
1月11日からは新デザインのIC旅券(パスポート)の発給が始まります。
我々は今年、台湾各地に1万5,000戸の社会住宅(=低所得者など社会的弱者向けの廉価な賃貸住宅)を建設します。これは台湾史上最大といえる社会住宅建設計画にとって大きな一歩となります。
昨年の元日に行った談話で、私は農家の人々を対象にした退職制度の確立について検討しているところだと述べました。この制度はきょうからスタートします。これにより台湾では、どんな仕事をしている人でも退職制度を利用できるようになります。
まもなく始まる立法院(=国会)の本会議で予算が順調に可決・成立すれば、今年から育児津貼(=育児手当)が再び増えます。また、公共化「幼児園(幼稚園と託児所が統合した施設)」を新たに3,000クラス増やすという目標は、当初の予定より早く達成に近づいています。
このほか、地球温暖化について話し合う第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が今年開催されることになっています。我々は積極的に各方面との対話を展開し、温室効果ガス削減によってもたらされる課題を産業投資や雇用創出の新たな契機に代えていきたいと考えています。
このところ、国際基準に合致した牛肉・豚肉の輸入規制緩和の決定が賛否両論と対立を呼んでいます。過去に政府が下した規制緩和の約束が実現できずにいた理由を、私は身に染みて感じることになりました。
しかしながら、台湾は貿易依存度の高い国です。過去3つの政権が解決できなかったこの問題に、回避あるいは向き合わないという空間はもう残されていません。
ですから、私は最も謙虚な気持ちをもって、国民の皆様の理解を求めたいと思います。我々が再三熟考した末の決定を、皆様に理解していただきたいと願っています。
当然ながら、我々が直面しているのは貿易の問題ばかりではありません。昨年何度も繰り返し述べたように、世界情勢はまさに変化しつつあります。私は総統として、さらに身を引き締め、この複雑且つ変化に富む国際情勢の中で、台湾が永遠に存続できるような布陣をととのえたいと考えています。
我々は遠い未来を視野に入れながら、一歩一歩進んでいかなければなりません。
グローバル戦略という角度から見れば、台湾の地位はますます重要になっています。台湾海峡両岸の安定は、もはや当事者だけの問題ではありません。それはインド太平洋地域の安定を左右するものであり、世界が関心を寄せる問題となっています。
とりわけこの1年は、台湾周辺で対岸の軍用機や軍艦の出没が頻発しました。これは両岸関係に衝撃を与えただけでなく、インド太平洋地域の平和と安定という現状をも脅かすものでした。
私は改めて申し上げます。両岸関係において、我々が暴走することはありません。我々はしっかりと原則を守ります。北京当局に対立を解消し、両岸関係を改善しようという気持ちさえあれば、我々は対等且つ尊厳ある立場という原則の下、有意義な対話をともに実現したいと考えています。
新型コロナウイルスが終息すれば、両岸の住民は正常且つ秩序ある交流を次第に取り戻すでしょう。これが双方の理解の増進、誤解の減少につながると期待しています。両岸問題に関して、我々には一貫した原則があります。それはつまり、ともに議論し、方法を探し出し、実務的に問題を解決するということです。
私は世界の皆様に対しても、お伝えしたいことがあります。
台湾は国際社会と肩を並べてコロナ禍がもたらすさまざまな挑戦に立ち向かい、改めて「Taiwan Can Help」のスローガンを実践出来たことを誇りに思っています!
我々は国際社会における善良なパワーです。現在あるいは未来のいずれにおいても、国際社会においてなくてはならない存在となるでしょう。
国際社会が台湾を支持しつづけてくれていることに、我々は非常に感謝しています。台湾が地域や世界規模の困難に直面しているとき、あなた方は我々の側に立ってくれます。これは、自由を愛する2,300万の台湾住民にとって非常に大きな意義を持つものです。あなたがたの支持があるから、我々の民主主義はより強大になるのです。
皆様ありがとうございます。全世界のすべての人々に、静かで安らかな新年が訪れるよう祈っています。
Taiwan Today:2021年1月4日
写真提供:総統府
蔡英文総統(写真)は元日、総統府で「新年の談話」を発表した。