【台湾の舞台芸術】愛知万博で会いましょう！②

■ 優人神鼓

――「優」とは古来の伝統戯曲において「表現」を意味し、「神」とは人が静かな無我の境地に達した状態をいう。「優人神鼓」とは、自己の静けさのなかから打ち出される太鼓の響である――。

　「優人神鼓」は、台湾有数の舞台のプロ集団だ。創始者であり芸術総監督を務めるのは、八十年代に劇団「蘭陵劇坊」の看板女優として活躍した劉若[王禹]氏。単身渡米の後、１９８８年、台北木柵の山中に表現のプロ集団「優劇場劇団」を結成した。

　１９９３年、太鼓と黄志群氏を芸術指導に迎え、以後劇団の代名詞ともなる創作舞台「優人神鼓」を完成させる。黄氏は幼少の頃から太鼓に親しみ、国内の有名舞踊団で各国での公演にも参加。その後心の故郷を求めてインドとチベットに修行していたところを、劉氏に招かれた。以来、黄氏は同劇団で太鼓と武術を取り入れた表現の基礎を固めた。

　「表現とは外へ発する力ではなく、自我の探求だ。真の芸術家は『道』（自己の生命の修練）と『芸』（芸術技能）を兼ね備えていなければならない」。「道芸合一」は同劇団の創作、生活の目標でもある。台北市内から小一時間離れた山中の本拠地で、団員たちは今日も早朝から座禅を組み、訓練に励む。

　複合創作舞台「優人神鼓」。今回愛知万博では、２００３年に「台新芸術賞」の「舞台芸術部門最優秀賞」に輝いた『金剛心』と、代表的作品のひとつ『聴海之心（海の心）』のスペシャル版を披露する。

　『金剛心』は演劇、太鼓、武術、舞踏と音楽を融合させた作品である。舞台は勇者の修行を通して、人が生命における未知の恐怖に対峙したとき、いかに進むべき道を探し、平静な心の境地である『金剛心』を見つけ出すかが描かれる。また『聴海之心』では、水滴が川となって大海へと流れ込み、さらにその先の未知の世界に悟りを求める心を表現する。荘厳な太鼓の響きと特の身体表現は、見る者に生命のエネルギーを与えてくれることだろう。

　　～愛・地球博での公演～
　日時：　２００５年６月２１日（火）　１５：３０～１７：１０、１９：００～２０：３０
　場所：　長久手会場　Ｅｘｐｏドーム